説明

三点式シートベルトの上部支持点用可調ベルトガイドおよび三点式シートベルト内蔵乗り物用シート

【課題】本発明は三点式シートベルトのベルトバンドのコースの調節性を改善することを目的としている。
【解決手段】
本発明は、三点式シートベルト2のベルトバンド10を導くことのできる案内部6と、乗り物用シートの背もたれ1にベルトガイド4を固定する接続部8と、接続部8と案内部6との間に配置された調節部7とを含む、三点式シートベルト2の上部支持点5用可調ベルトガイド4に関し、背もたれ1即ち接続部8と、案内部6との距離が背もたれ1と垂直な方向に可変で、また、案内部6が背もたれ1に対して様々な位置に固定可能であるように、調節部7を構成できる三点式シートベルト2の上部支時点5用可調ベルトガイド4に関し、更に、三点式シートベルト2のベルトバンド10が、背もたれ1に接続された可調ベルトガイド4によって導かれる、三点式シートベルト2内蔵乗り物用シートに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三点式シートベルトのベルトバンドを導くことのできる案内部と、乗り物用シートの背もたれにベルトガイドを固定するための接続部と、接続部と案内部の間に配置された調節部とを含む、三点式シートベルトの上部支持点用可調ベルトガイドに関する。本発明は更に、背もたれに接続された可調ベルトガイドによってベルトバンドを導く、三点式シートベルト内蔵乗り物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
内蔵式の三点式シートベルトを有する乗り物用シートについては、よく知られている。特に、トラックなどの商用車両の分野では、よく知られている。しかし、特に重貨物車(HGV)の場合、シートベルト使用率は非常に低く、約30%と推定されている。三点式シートベルトを装着しない一般的理由の一つは、背の低い人の場合、シートベルトで首が擦れることである。今までは、乗員に合わせて上部支持点を垂直方向に調節することで、この問題に対処してきた。
【0003】
上部支持点の平行移動により位置調節できる装置についても知られている。例えば、DE 35 30 495 A1では、乗り物用シートの背もたれの横(side)に取り付ける、背もたれの平面と平行な接続具について開示されている。この接続具にはS字型に形成されたガイドスリットがあり、このガイドスリットを通して、三点式シートベルトのベルトバンドが導かれる。乗員の座高に応じて、ガイドスリット内でベルトバンドを上方に導くことができ、同時に、これによって、シート中央に近い位置に導くことができる。また、ベルトガイドを下方に導き、これによって、同時に、シートの中央から離れた位置に導くこともできる。
【0004】
更に、DE 38 18 920 A1では、三点式シートベルトの肩領域内にベルトガイドが配置された乗り物用シートが開示されており、ここでもやはり、背もたれの平面内にベルトガイドが配置されている。ここでは、ベルトガイドは、互いに直交する三つの軸(即ち、垂直軸と、背もたれ平面内の水平軸、背もたれ平面と垂直な水平軸)の周りに回転可能なように構成されている。このようにして、ベルトガイドによって導かれるベルトバンドの、乗員に対する角度が調節できるようになっている。
【0005】
しかし、全ての既知の可調ベルトガイドに共通して、また、特に乗り物用シート内蔵の可調ベルトガイドにおいては、多様な乗員に対し、ベルトガイドの位置調節が最適に実施できないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明は、斜めベルトの上部領域における、三点式シートベルトのベルトバンドのコースの調節性を改善することを、目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する可調ベルトガイドおよび請求項7の特徴を有する乗り物用シートによって達成できる。背もたれと案内部との間の背もたれに垂直な方向の距離を可変に構成できることにより、乗員の特徴、特に乗員の身体サイズへの適合を優れたものとすることができる。案内部を様々な距離で固定できるので、乗員が、身体サイズに関係なく、ベルトガイドが各自のニーズに最適となるように、特に三点式シートベルトで首が擦れないように、ベルトガイドを調節することができ、また、ベルトガイドが乗員の意図と無関係に勝手に調節されてしまうことがない。
【0008】
本発明の好ましい発展例の一つとして、背もたれと平行な平面内における案内部の位置を変えることができ、この平面内の様々な位置に案内部を固定することができるように、調節部を構成してもよい。案内部がこのような動きも可能となる結果、本発明によって、案内部と背もたれとの距離の変更を決定、固定することができるばかりでなく、案内部の高さの変更や案内部を乗り物用シートの背もたれの中央寄りや中央から離れた方に配置するといった変更をも決定、固定することができる。この結果、乗員の体格に合わせた、乗員ごとのより良いベルトガイドの調節が保証される。
【0009】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、案内部が、任意の一つまたは複数の軸の周りに回転可能であるように、調節部を構成してもよい。これにより、ベルトバンドが上部支持点から乗員の肩まで行く角度も最適化できるので、ベルトガイドをより一層乗員の体格に合わせることができる。
【0010】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、調節部が案内部に対して回転軸周りに回転可能であるように、調節部を案内部に接続してもよい。これによって、一層、乗員に対するベルトガイドの角度を適正なものとすることができる。
【0011】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、調節部がベローズまたは雁首であってもよい。本発明においては、雁首とは、手動による変形後その位置に留まる、曲げることの可能な装置を意味し、例えばマイクロフォンや自動車のシガーライターで使用できるライトなどに使用されるものと同様のものである。本発明においては、雁首とは、細長い形状をした曲げることのできる構成要素であり、手動で変形可能で、調節された位置に留まるものを意味する。そのような調節システムのための様々な原理については、当業者のよく知るところであり、また、調節システムの設計については、本発明の特徴部分ではないので、これについては、これ以上詳述することはない。本発明によると、案内部したがって上部支持点と背もたれとの距離の変更は、これら雁首およびベローズ(アコーデオンの原理で働く)のいずれでも実施することができ、また一方、様々な位置で固定することもできる。更に、本発明のこの好ましい発展例によると、背もたれに平行な平面内における上部支持点の大変容易な位置変更、および、任意の軸の周りの回転が、容易に実行できる。
【0012】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、案内部がベルトバンドをO型に取り囲むようにしてもよい。これにより、三点式シートベルトを案内部内でしっかりと導くことができて、上部支持点の固定がすっきりとし、また、三点式シートベルトがガイドから外れないようにすることができる。
【0013】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、案内部を、ベルトバンドを完全に取り囲みつつ開放可能なように構成してもよいし、案内部を、ベルトバンドを完全には取り囲まないように構成してもよい。この結果、組み立て(fitting)または解体(removal)のために、ベルトバンドを、案内部から取外すのが非常に容易になる。
【0014】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、接続部に、ベルトバンドの背もたれからのベルト出口に取外し可能に接続できる接続部材が含まれてもよい。これにより、可調ベルトガイド全体を交換したり、乗員の要求に応じて可調ベルトガイドを完全に省略したりすることが、非常に容易となる。
【0015】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、接続部を、ベルトバンドのベルト出口に接続してもよい。三点式シートベルトは、ベルト出口で背もたれから出ているので、ベルト出口はベルトガイドの固定に適した取り付け点であり、ここで接続部を背もたれに取り付けることにより、非常に単純な構成とすることができる。
【0016】
本発明の他の好ましい発展例の一つとして、ベルトバンドを導く案内部に、追加のガイド部を解除可能に取り付けてもよい。これにより、上部支持点の位置や配置を、より一層個人に合わせて調節することが可能となる。
【0017】
本発明の他の利点と詳細については、以下、図示した実施形態を参照しながら説明することとする。
【0018】
図1(a)は、第1実施形態の可調ベルトガイド4が取り付けられた背もたれ1の図である。背もたれ1は、自動車(乗用車、バス、トラックまたは他の商用車両など)内及び航空機又は鉄道車両など他の輸送手段内に取り付けられる乗り物用シートの一部を形成するものである。三点式シートベルト2は、この乗り物用シートに内蔵されている。三点式シートベルト2のベルトバンド10は、ベルト出口3を通じて背もたれ1から出るようになっている(図1(c)参照)。ベルト出口3は、出口開口部9によって形成されている。出口開口部9によって、乗り物用シートが美観に優れた魅力的なものとなり、また、機能面でも、出口開口部9でなければ起こったかもしれない鋭い角による怪我を防ぐことができる。
【0019】
本発明のベルトガイド4は、出口開口部9に取り付けられている。ベルトガイド4は、基本的に、三つの構成要素から成っている。つまり、接続部8、調節部7、案内部6である。ベルトガイド4は、接続部8を介して出口開口部9に接続されている。この接続は、ボタンを押すなどして解除可能なものであってもよく、接着剤等による解除不可能なものであってもよく、また、出口開口部9と一体な部材とすることで実現してもよい。調節部7は、接続部8に接合されている。図示の実施形態においては、調節部7は、ベローズ7aである。ベローズ7aは、アコーデオンのじゃばら状のものである。案内部6は、ベローズ7aの背もたれから離れた側の端に取り付けられている。
【0020】
図1(b)は、案内部6の作用を模式的に示している。これによって、上部支持点5が形成される。ベローズ7aとして構成された調節部7によって、上部支持点5は、Y軸に沿った背もたれ1と垂直な方向にも、背もたれ1と平行な平面(X−Z平面)に沿っても移動させることが可能となる。このような上部支持点5の平行移動(lateral movements)(案内部6の向きは変わらない)が可能なことに加え(上述のように、図示した直交座標系内の任意のベクトルに沿った動きが可能なことによる)、任意の軸の周りの回転も同様に可能である。任意の軸の周りの回転は、図示した直交座標系の各座標軸、即ちX−軸、Y−軸、Z−軸の周りの三つの回転から構成することもできる。
【0021】
ベローズ7aは、乗員が無理なく加えることのできる力によって、案内部6が平行移動も任意の軸の周りの回転も可能であるように設計されている。ベローズ7aに力が加わらなくなると、再び力が加わるまで、ベローズ7aは、その時とっていた位置を維持する。この結果、非常に簡単な方法で、上部支持点5を、人間工学的に乗員にとって最も快適な位置に持ってくることができ、また、その乗員が上部支持点5を異なる位置にすることを希望するまで、あるいは、他の乗員がその乗り物用シートに座るまで、上部支持点5をその位置に留めることができる。このようにして、背もたれ1の平面(X−Z平面)またはこれと平行な平面内での上部支持点5の調節(上部支持点5の垂直方向の調節または、上部支持点5の背もたれ1の中央方向または外側方向への配置に対応する調節)だけでなく、X−Z平面即ち背もたれ1の平面からの上部支持点5の距離の調節も可能となる。更に、上部支持点5の旋回運動も可能であるので、この結果、ベルトバンド10が案内部6から出る角度と案内部6の配置により、乗員にとって最適な調節が実現される。
【0022】
図1(c)に示す本発明の第2実施形態の可調ベルトガイドは、三つの構成要素(接続部8、調節部7及び案内部6)の具体的設計が異なるのみである。以下では、図1(a)との相違点のみを述べることとする。また、同一の要素または同じ効果をもつ要素は、同符号とする。
【0023】
ベルトガイド4は、接続部8としての複数の接続部材(図示せず)によって取り付け開口部9にしっかりと接続されている。調節部7は、ベローズ7aの代わりに雁首7bとして構成されている。雁首7bの動作方法は、図1(a)に示すベローズの動作方法と対応しいている。というのも、ここでも、小さな力を加えることにより、乗員が無理せずに雁首7bを曲げることができ、これにより、案内部6の任意の方向への平行移動(lateral movement)も任意の軸の周りの回転も可能となるからである。ここでも、雁首7bは、加える力が無くなると、自動的に選択された位置に留まり、また、新たな力を加えることによって同様に容易く新たな位置を取らせることができる。ここでは、案内部6は、寸法安定プラスチック製の閉じた楕円(self-contained oval)として形成されている。この結果、上部支持点5を、図1(a)の第1実施形態と全く同様に、個々の乗員に合わせて非常に容易に調節することができる。このため、乗員は、ベルトバンド10に起因する不快感を経験することがなく、快適に三点式シートベルト2を装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態の、ベローズ形の可調ベルトガイドを示し、(b)は、本発明の可調ベルトガイドの調節可能性を示し、(c)は、本発明の第2実施形態の、雁首形の可調ベルトガイドを示す。
【符号の説明】
【0025】
1・・・背もたれ(backrest)
2・・・三点式シートベルト(three-point seat belt)
3・・・ベルト出口(belt exit)
4・・・ベルトガイド(belt guide)
5・・・上部支持点(upper hold point)
6・・・案内部(directing element)
7・・・調節部(adjusting element)
7a・・・ベローズ(bellows)
7b・・・雁首(swan-neck)
8・・・接続部(connecting element)
9・・・出口開口部(exit aperture)
10・・・ベルトバンド(belt band)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三点式シートベルト(2)の上部支持点(5)用可調ベルトガイド(4)であって、
該三点式シートベルト(2)のベルトバンド(10)を導く案内部(6)と、
該ベルトガイド(4)を乗り物用シートの背もたれ(1)に固定するための接続部(8)と、
該接続部(8)と該案内部(6)の間に配置された調節部(7)とを含み、
該調節部(7)が、該背もたれ(1)即ち該接続部(8)と、該案内部(6)との距離が該背もたれ(1)と垂直な方向に可変で、該背もたれ(1)から様々な距離に該案内部(6)を固定できるように構成された可調ベルトガイド(4)。
【請求項2】
前記調節部(7)が、前記案内部(6)の位置が前記背もたれ(1)と平行な平面内で可変であり、該案内部(6)が該平面内の様々な位置に固定可能なように構成された、請求項1の可調ベルトガイド(4)。
【請求項3】
前記調節部(7)が、前記案内部(6)が任意の一つの軸または複数の軸の周りに回転可能であるように構成された、請求項1または2の可調ベルトガイド(4)。
【請求項4】
前記調節部(7)が、前記案内部(6)に対して回転軸の周りに回転可能であるように該案内部(6)に接続された、請求項1乃至3のいずれかの可調ベルトガイド(4)。
【請求項5】
前記調節部(7)が、ベローズ(7a)または雁首(7b)である、請求項1乃至4のいずれかの可調ベルトガイド(4)。
【請求項6】
前記案内部(6)が、前記ベルトバンド(10)をO型に取り囲む、請求項1乃至5のいずれかの可調ベルトガイド(4)。
【請求項7】
前記案内部(6)が、前記ベルトバンド(10)を完全に取り囲みつつ開放可能である、請求項6の可調ベルトガイド(4)。
【請求項8】
前記案内部(6)が、前記ベルトバンド(10)を完全には取り囲まない、請求項6の可調ベルトガイド(4)。
【請求項9】
前記接続部(8)が、前記背もたれ(1)からの前記ベルトバンド(10)のベルト出口(3)に取外し可能に接続できる接続部材を含む、請求項1乃至8のいずれかの可調ベルトガイド(4)。
【請求項10】
前記三点式シートベルト(2)の前記ベルトバンド(10)が、前記背もたれ(1)に接続された請求項1乃至9のいずれかの可調ベルトガイド(4)によって導かれる、三点式シートベルト(2)内蔵の乗り物用シート。
【請求項11】
前記接続部(8)が、前記ベルトバンド(10)のベルト出口(3)に接続される、請求項10の乗り物用シート。
【請求項12】
前記ベルトバンド(10)を導く追加のガイド部が、前記案内部(6)に解除可能に取り付けられる、請求項10または11の乗り物用シート。

【図1】
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【公開番号】特開2006−219120(P2006−219120A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27177(P2006−27177)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(501377265)イスリングハウゼン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】