説明

上部スペースの気体除去を伴う、液体分配のための方法およびシステム

外側容器と内側容器とを備える容器から分配するための、液体分配方法およびそのシステム。このシステムにおいて、内側容器の一部分が、液体によって占められており、そして、内側容器の残りの部分は、上部スペースの気体によって占められている。このシステムは、内部に流体通路を有するプローブ、および、内側容器の内部と外側容器の外部との間を連絡する気体通路を備える。流体(例えば、空気または窒素)は、圧力下で、外側容器の内壁と内側容器との間の空間内に流され、気体通路を介して、内側容器から上部スペースの気体を押し出し、そして、プローブ内の流体通路を通して、内側容器から製造プロセスへと液体を押し出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を保管および分配するための、保管および分配のシステムに関する。特に、本発明は、液体を、上部スペース(headspace)の気体を含む容器から製造プロセスへと分配するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の製造プロセスは、液状の化学物質(例えば、酸、溶媒、塩基、フォトレジスト、ドーパント、無機溶液、有機溶液、生物学的溶液、医薬品および放射活性化学物質)の使用を必要とする。保管および分配のシステムは、代替的な容器が、特定の時間に、液状の化学物質を製造プロセスへと送達するために使用されることを可能にする。これらの処理された液体は、通常、専用の分配ポンプによって、加圧された保管および分配の容器から分配される。
【0003】
充填施設においてこれらの容器を充填した後、容器は、代表的に、製造プロセスにおいて使用するための位置に輸送される。一旦製造プロセスの施設に移されると、これらの容器は、製造プロセスに接続される前に、長期にわたって保管され得る。しかし、上記の化学物質のいくつかの純度は、長期にわたって保管された場合、減衰する傾向がある。例えば、薄膜トランジスタのフラットパネルディスプレイの製造において、使用されるカラーフィルターの化学物質は、減衰する傾向にある。なぜならば、カラーフィルターの化学物質中のフリーラジカルは、温度の変動の結果として、輸送および保管の間に放出されるからである。このことが生じることを回避するために、上部スペースと呼ばれる、容器の空の部分に、上部スペースの気体が充填される。上部スペースの気体は、保管の間に、液体中で化学反応が生じることを抑制することによって、液状の化学物質の減衰を防止する。例えば、カラーフィルターの化学物質の場合、充填施設において、酸素を含む上部スペースの気体が、容器内へと導入される。なぜならば、酸素は、放出されると、化学物質内のフリーラジカルを除去し、それによって、カラーフィルターの化学物質の減衰を防止する傾向があるからである。
【0004】
容器が、製造プロセスに接続される予定である場合、上部スペースの気体は、もはや、不必要であるか、または所望されない。従って、上部スペースの気体は、液体を製造プロセスへと分配する前に除去されなければならない。しかし、上部スペースの気体を排出する間に、容器をかき回すこと、または、上部スペースの気体を液状の化学物質へと押し出すことを回避するために、注意が払われなければならない。液状の化学物質に気体を導入すると、化学物質中に気泡の形成を生じ得、これは、この液状の化学物質を製造プロセスにおいて使用するには不完全なものにし得る。
【0005】
さらに、上部スペースの気体を除去した後に、容器内に少量の気体を残すことが望ましくあり得る。全ての液体が容器から分配された場合、この少量の空であることを検出するための気体(empty detect gas)が、ディスペンサーによって検出されて、容器が空であることを示す。従来のシステムにおいて、空であることを検出するための気体の容器内に残る量は、容易には制御できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、上部スペースの気体を容易に除去すること、そして、所望される場合、上部スペースの気体を除去した後に、空であることを検出するための気体の容器内に残る量を容易に調節することが可能なシステムが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、外側容器と内側容器とを備える容器から製造プロセスへと液状の化学物質を分配するための方法およびしシステムであって、上記内側容器の一部分は、液状の化学物質で占められており、そして、この内側容器の残りの部分は、上部スペースの気体で占められている。上記システムは、内部に流体経路を有する、内側容器の内部に挿入可能なプローブ、および内側容器の内部と外側容器の外部との間を連絡する気体通路を備える。このシステムは、さらに、外側容器の内壁と、内側容器との間の空間と流体連絡する手段を備え、この手段は、圧力下で、流体が、外側容器の内壁と内側容器との間の空間に流入することを可能にして、気体通路を介して、上部スペースの気体を、内側容器から上部スペースの気体の排気管へと押し出し、そして、プローブ内の流体通路を通して、液体を、内側容器から製造プロセスへと押し出す。
【0008】
好ましい実施形態において、上記システムは、さらに、上部スペースの気体の排気管と気体通路との間に接続された排気弁を備える。この排気弁は、上部スペースの気体を、気体通路を介して上部スペースの気体の排気管へと排出することを可能にするために選択可能な開位置を有する。この排気弁はまた、上部スペースの気体が、内側容器の内部から排出されたときに選択可能な閉位置を有する。このシステムはまた、好ましくは、気体通路と上部スペースの気体の排気管との間に接続された液体センサを備え、この液体センサは、液状の化学物質が、気体通路内に流入し始めるときを検知して、上部スペースの気体が、内側容器の内部から排出されたことを示す。
【0009】
このシステムはまた、好ましくは、液状の化学物質が、内側容器から排出されたときを検知するための、空を検出するための手段を備える。1つの実施形態において、空を検出するための手段は、空であることを検出するための気体のセンサである。使用の際、液状の化学物質を製造プロセスへと分配する直前に、少量の空であることを検出するための気体が、内側容器の内部に導入される。空であることを検出するための気体のセンサは、液状の化学物質が、容器から排出されたときに、この空であることを検出するための気体を検知する。空であることを検出するための気体が、空であることを検出するための気体のセンサによって検知されると、製造プロセスへの液体の分配が終了する。別の実施形態において、空を検出するための手段は、液体が製造プロセスへと分配される間に、流体容器の重量を計測するためのスケールを備え、その結果、このスケールにより測定された場合に、流体容器が所定の空重量に達したときに、液体の分配が終了する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(詳細な説明)
図1は、液体12を、上部スペースの気体18が充填された上部スペース16を備える容器14から製造プロセス13へと分配するための、本発明の好ましい実施形態によるシステム10の模式図である。容器16は、可撓性の内側容器20と剛性の外側容器22とを備える。システム10はさらに、圧縮空気または窒素の供給源30、圧縮空気の通路32、上部スペースの気体の通路34、排気弁36、液体センサ38、上部スペースの気体の排気管40、流体通路42、容器のスケール44、およびシステムコントロール46を備える。
【0011】
圧縮気体の供給源30は、圧縮空気の通路32を介して、圧縮空間31(すなわち、外側容器22の内壁と、内側容器20の外側表面との間の空間)に接続されている。内側容器20の内部は、気体通路34を介して上部スペースの気体の排気管40に接続されている。排気弁36および液体センサ38は、内側容器20の内側と上部スペースの気体の排気管40との間で、気体通路34に沿って接続されている。最後に、内側容器20の内側は、流体通路42を介して、製造プロセス13に流体連絡している。
【0012】
気体通路34および流体通路42は、好ましくは、単一のコネクタパッケージ内であわされ、その結果、内側容器20の内部は、上部スペースの気体の排気管40および製造プロセス13と、1つの接続部で流体連絡する。流体通路42は、代表的には、容器のポートを通して、内側容器20内へと挿入可能なプローブ内に提供され、液体12と製造プロセス13との間に流体連絡を提供する。
【0013】
外側容器22は、充填の間、輸送の間、処理の間、および分配の間に、可撓性の内側容器20(例えば、可撓性のポリマー製バッグ)によって必要とされる機械的な支持および保護を提供する。外側容器22は、代表的には、金属から構築されるが、容器14内に含まれる特定の液体の処理についての政府規制の規格に依存して、他の材料(プラスチック材料を含む)もまた、使用され得る。好ましくは、容器14は、1994年8月9日に発行された、Osgarに対する米国特許第5,335,821号(本明細書中に参考として援用される)に示されるような容器である。
【0014】
システムコントロール46は、好ましくは、マイクロプロセッサベースのコントロールシステムであり、これは、圧縮空気の供給源30、排気弁36、液体センサ38および容器のスケール44に接続されている。システムコントロール46は、システム10の種々の構成要素から受信されるシグナルに基づいて、システム10の動作を制御する。
【0015】
製造プロセス13に取り付ける前に、容器14は、充填施設において充填される。充填の間、内側容器20は、まず、窒素のような気体で膨張させられる。次いで、液体12が、容器14内のポートを通して導入され、外側容器22内で、内側容器20を満たす。
【0016】
いくつかの化学物質の純度は、長時間にわたり保管される場合、特に、温度の変動に供される場合、減衰する傾向がある。例えば、薄膜トランジスタのフラットパネルディスプレイの製造において、使用されるカラーフィルターの化学物質は、減衰または架橋する傾向がある。なぜならば、輸送および保管の間にカラーフィルターの化学物質中のフリーラジカルが放出されるからである。このことが生じることを防ぐために、容器の空の部分、上部スペース16が、上部スペースの気体18で満たされる。上部スペースの気体18は、容器14の輸送および保管の間に、液体12内で化学反応が生じることを防ぐことによって、液体12の減衰を防ぐ。例えば、カラーフィルターの化学物質の場合、酸素を含む上部スペースの気体18は、充填施設において、内側容器20内へと導入される。なぜならば、酸素は、放出されると、化学物質内のフリーラジカルを除去して、それによって、カラーフィルターの化学物質の減衰および架橋を防ぐ傾向があるからである。
【0017】
容器14が、製造プロセス13に接続される予定である場合、上部スペースの気体18は、もはや、不必要であるか、または所望されない。したがって、上部スペースの気体18は、液体12を製造プロセス13へと分配する前に取り外されなければならない。まず、圧縮空気の通路32、気体通路34、および流体通路42が、容器14に接続される。次いで、シグナルが、システムコントロール46(好ましくは、マイクロプロセッサベースのシステム)により送られ、排気弁36を開く。これにより、内側容器20の内部と上部スペースの気体の排気管40との間に流体連絡を生じる。その後、加圧された流体(好ましくは、圧縮された空気もしくは窒素)が、圧縮空気の供給源30によって圧縮空間31へと供給され、そして、気体通路34を介して、液体センサ38を通って、そして、上部スペースの気体の排気管40へと上部スペースの気体18を押し出す。上部スペースの気体18が、容器14の内側容器20から引き抜かれると、空気は、圧縮空間31へと入ることが可能になり、それによって、可撓性の内側容器20を潰す。内側容器20は、好ましくは、加圧された空気により潰されるが、上部スペースの気体18を、気体の通路34を通して押し出すための、内側容器20を潰し得るあらゆる手段(油圧式もしくは機械ベースのデバイスを含む)が使用され得る。あるいは、気体通路34に接続されたポンプが、容器14から上部スペースの気体18を引き抜き得る。
【0018】
上部スペースの気体18が、内側容器20から排気された後、液体12は、気体通路34内へと流入し始める。なぜならば、圧縮空気の供給源30は、圧縮空間31へと空気を供給し続けているからである。液体12が、液体センサ38に達すると、シグナルがシステムコントロール46へと送られ、そして、排気弁36を閉じる。これにより、内側容器20の内部と、上部スペースの気体の排気管40との間の接続が終了する。あるいは、システム10の使用者は、液体12が、気体通路34へと流れ始めたときを視覚的に決定し、排気弁36を手で止めて、上部スペースの気体の排気管40への接続を終了させ得る。
【0019】
内側容器20の内部と上部スペースの気体の排気管40との間の接続が終了すると、液体12は、流体通路42を通して押し出される。なぜならば、圧縮空気が、圧縮空気の供給源30によって圧縮空間31へと供給され続けているからである。液体12が、容器14の可撓性の内側容器20から引き抜かれると、空気は、圧縮空間31へと入ることが可能になり、それによって、内側容器20を潰す。内側容器20は、好ましくは、加圧された空気によって潰されるが、内側容器20を潰して、流体通路42を通して液体を押し出し得るあらゆる手段(油圧式もしくは機械ベースのデバイスを含む)が使用され得る。あるいは、流体通路42に接続されたポンプもしくはベンチュリが、容器14から液体12を引き抜き得る。
【0020】
ここで、上部スペースの気体18が、液体12を製造プロセス13へと分配する前に除去される場合、上部スペースの気体18は、ヘンリーの法則に従って、溶液中に溶け始めることに注意することが重要である。ヘンリーの法則は、一定温度において、溶液中に溶解する気体の量は、溶液の上部にある気体の圧力に直接比例すると述べている。従って、内側容器20は、圧縮空気の供給源30によって潰されて、液体12を内側容器20から外へと押し出すので、上部スペースの気体18の圧力は、このプロセスの間に高くなる。これにより、上部スペースの気体18が、液体12内へと溶解し、それによって、液体12がプロセス13へと運ばれるときに、有害な気泡の形成を生じる。
【0021】
液体12が、製造プロセス13へと分配されると、容器14の重量が減少する。容器のスケール44は、容器14が所定の空重量に達した時点を決定するために、液体12が製造プロセス13に分配されているとき、連続して容器14の重量を計測する。容器14の空重量は、内側にある内側容器20が空である、外側容器22の重量である。容器のスケール44による空重量の決定は、全ての液体12が内側容器20から分配されたことを確実にする。
【0022】
容器のスケール44が、容器14が空であることを決定すると、システムコントロール46が、シグナルを送って、圧縮空気の供給源30を止める。その後、圧縮空気の通路32、気体通路34、および流体通路42が、空の容器14から接続を断たれて、空の容器14が、システム10から取り外され、そして、液体12および上部スペースの気体18を含む新しい容器14が、システム10に接続される。次いで、容器14からの液体12の分配が再開する。
【0023】
図2は、液体12を容器14から製造プロセス13へと分配するための、本発明の別の好ましい実施形態に従うシステム50の模式図である。容器14は、容器14の輸送および保管の間に、液体12を安定化するために提供される、上部スペースの気体18を備える。図1に示されるシステム10と同様に、システム50は、圧縮空気の供給源30、圧縮空気の通路32、上部スペースの気体の通路34、液体センサ38、上部スペースの気体の排気管40、流体通路42、およびシステムコントロール46を備える。さらに、システム50は、空であることを検出するための気体の供給源52、レギュレーターゲージ54、第1ブロック弁55、気体量制御装置(gas quantity controller)56、第2ブロック弁58、選択弁60、および空であることを検出するための気体のセンサ62を備える。
【0024】
圧縮空気の供給源30は、圧縮空気の通路32を介して、圧縮空間31に接続される。選択弁60は、選択弁60の位置状態に依存して選択弁ポート60aまたは選択弁ポート60bに接続されたデバイスに、(気体通路34を介して)内側容器20の内部を接続する、3ポート弁である。より具体的には、第1の位置において、選択弁60は、内側容器20の内部と、ポート60aに接続されたデバイス(すなわち、液体センサ38および上部スペースの気体の排気管40)との間の流体連絡を提供する。液体センサ38は、選択弁60と上部スペースの気体の排気管40との間に接続される。第2の位置において、選択弁60は、内側容器20の内部と、ポート60bに接続されたデバイス(すなわち、空であることを検出するための気体の供給源52、レギュレーターゲージ54、第1ブロック弁55、気体量制御装置56および第2ブロック弁58)との間の流体接続を提供する。レギュレーターゲージ54、第1ブロック弁55、気体量制御装置56、および第2ブロック弁58は、空であることを検出するための気体の供給源52と、選択弁60との間に接続される。最終的に、内側容器20の内部は、流体通路42を介して、製造プロセス13と流体連絡する。空であることを検出するための気体のセンサ62は、流体通路42に沿って接続される。
【0025】
気体通路34、流体通路42、および選択弁60は、好ましくは、単一のコネクタパッケージ内で合わされ、その結果、内側容器20の内部は、上部スペースの気体の排気管40、空であることを検出するための気体の供給源52、および、製造プロセス13と、1つの接続部で接続される。流体通路42は、代表的には、容器のポートを通して、そして、内側容器20内へと挿入可能なプローブ内に提供され、液体12と製造プロセス13との間の流体連絡を提供する。
【0026】
図2に示される実施形態において、システムコントロール46は、圧縮空気の供給源30、液体センサ38、レギュレーターゲージ54、第1ブロック弁55、第2ブロック弁58、選択弁60、および空であることを検出するための気体のセンサ62に接続される。システムコントロール46は、システム50の種々の構成要素から受信するシグナルに基づいて、システム50の動作を制御する。
【0027】
上記のように、容器14が、製造プロセス13に接続される予定である場合、上部スペースの気体18は、もはや、不必要であるか、または所望されない。従って、上部スペースの気体18は、液体12を製造プロセス13へと分配する前に除去されなければならない。システム50内の容器14から上部スペースの気体18を除去する手順は、システム10における同じプロセスと類似する。まず、圧縮空気の通路32、気体通路34、および流体通路42が、容器14に接続される。次いで、システムコントロール46が、シグナルを選択弁60に送って、弁を第1の位置に戻し、(選択弁ポート60aを介して)内側容器20の内部と上部スペースの気体の排気管40との間に流体接続を生じる。システム50の使用者はまた、手で、選択弁60をその第1の位置に戻し得る。その後、加圧された流体(好ましくは、圧縮された空気もしくは窒素)が、圧縮空気の供給源30によって、圧縮空間31へと供給され、上部スペースの気体18を、気体通路34を通して、液体センサ38を通して、そして、上部スペースの気体の排気管40へと押し出す。上部スペースの気体18が、容器14の内側容器20から引き抜かれると、空気が、圧縮空間31内に入ることが可能になり、それにより、可撓性の内側容器20が潰される。内側容器20は、好ましくは、加圧された気体によって潰されるが、内側容器20を潰して、上部スペースの気体18を、気体通路34を通して押し出し得るあらゆる手段(油圧式もしくは機械ベースのデバイスを含む)が使用され得る。あるいは、気体通路34に接続されたポンプもしくはベンチュリが、上部スペースの気体18を容器14から引き抜き得る。
【0028】
上部スペースの気体18が、内側容器20から排出された後、液体12は、気体通路34内に流入し始める。なぜならば、圧縮空気の供給源30が、空気を圧縮空間31へと供給し続けているからである。液体12が、液体センサ38に到達すると、選択弁60を第2の位置に動かすことによって、システムコントロール46が応答する。これにより、内側容器20の内部と上部スペースの気体の排気管40との間の連絡が終了し、そして、内側容器20の内部と選択弁ポート60bとの間の接続を開く。あるいは、システム50の使用者は、液体12が気体通路34内に流入し始めたときを視覚的に決定し、そして、選択弁60を第2の位置へと手で動かし、上部スペースの気体の排気管40への接続を終了させ得る。
【0029】
ここで、上部スペースの気体18が、液体12を製造プロセス13へと分配する前に除去される場合、上部スペースの気体18は、ヘンリーの法則に従って、溶液中に溶け始めることに注意することが重要である。内側容器20は、圧縮空気の供給源30によって潰されて、液体12を内側容器20から外へと押し出すので、上部スペースの気体18の圧力は、このプロセスの間に高くなる。これにより、上部スペースの気体18が、液体12内へと溶解し、それによって、液体12がプロセス13へと運ばれるときに、液体12内に有害な気泡の形成を生じる。
【0030】
多くの液体分配システムにおいて、上部スペースの気体18が除去された後に、容器14内に少量の気体を残すことが望ましい。全ての液体12が容器14から分配された場合、この少量の気体(空であることを検出するための気体と呼ばれる)が、センサ(例えば、図2における空であることを検出するための気体のセンサ62)によって検出され、容器が空であることを示す。従来のシステムにおいて、空であることを検出するための気体の容器14内に残る量は、容易には調節可能ではない。なぜならば、上部スペースの気体の排気管40に排出される気体の量が、容易に測定可能でないからである。
【0031】
システム50において、内側容器20内への空であることを検出するための気体の追加は、空であることを検出するための気体の供給源52、レギュレーターゲージ54、第1ブロック弁55、気体量制御装置56、および第2ブロック弁58によって制御される。まず、システムコントロール46は、第1ブロック弁55を開いて、空であることを検出するための気体の供給源52と気体量制御装置56との間の流体接続を生じる。次いで、空であることを検出するための気体が、空であることを検出するための気体の供給源52から気体量制御装置56内へと流入し始める。気体量制御装置56に空であることを検出するための気体が充填されると、気体量制御装置56内の圧力が高くなる。圧力は、レギュレーターゲージ54によって調節され、そして、気体量制御装置56内に一体的になった圧力トランスデューサによって測定され得る。気体量制御装置56内に流入する空であることを検出するための気体の量は、気体量制御装置56の最大容量、および気体量制御装置56内の空であることを検出するための気体の圧力に依存する。これらの要因に基づいて、空であることを検出するための気体の供給源52は、気体量制御装置56に、所望の量の気体(例えば、1平方インチのゲージあたり100ポンド)が充填されるまで、流入し続ける。
【0032】
所望の量の気体が気体量制御装置56に充填されると、システムコントロール46は、第1ブロック弁55を閉じて、空であることを検出するための気体の供給源52と気体量制御装置56との間の接続を終了させる。その後、または、同時に、システムコントロール46は、第2ブロック弁58を開いて、気体量制御装置56と内側容器20の内部との間の流体接続を生じる。これにより、気体量制御装置56内に含まれる空であることを検出するための気体が、内側容器20の内部に流入することが可能になる。空であることを検出するための気体が、気体量制御装置56から内側容器20内へと流入する間に、圧縮空気の供給源30が停止される場合、気体量制御装置56内に含まれる空であることを検出するための気体が、内側容器20に流入する。空であることを検出するための気体が気体量制御装置56から内側容器20内へと流入する間に、圧縮空気の供給源30が活性状態のままである場合、空であることを検出するための気体は、圧縮空気の供給源30と気体量制御装置56内の圧力との間で平衡圧に達するまで、気体量制御装置56から内側容器20内へと流入する。代表的には、圧縮空気の供給源30が、活性状態であるかどうかは、圧縮空気の供給源30と圧縮空間31との間に接続される、二方向弁もしくは三方向弁によって制御される。一般に、気体量制御装置56から内側容器20内へと流入する空であることを検出するための気体の量は、気体量制御装置56の大きさ、気体量制御装置56内の圧力と、圧縮空間31内の圧力との差に基づく。
【0033】
空であることを検出するための気体が、気体量制御装置56から流出し終わった後、システムコントロール46は、第2ブロック弁58を閉じて、気体量制御装置56から内側容器20への接続を終了させる。第2ブロック弁58が閉じられた後、圧縮空気が、圧縮空気の供給源30により圧縮空間31に供給されると、液体12が、流体通路42を通して上向きに押し出される。内側容器20は、好ましくは、加圧された空気により潰されるが、内側容器20を潰して、流体通路42を通して液体を押し出し得るあらゆる手段(油圧式もしくは機械ベースのデバイスを含む)が、使用され得る。あるいは、流体通路42に接続されたポンプまたはベンチュリが、容器14から液体12を引き抜き得る。
【0034】
内側容器20は、圧縮空気の供給源30によって潰されると、液体12は、液体12が、内側容器20から排出されるまで、製造プロセス13へと流れ続ける。液体12が、内側容器20から排出された後、内側容器20には、空であることを検出するための気体のみが残る。圧縮空気の供給源30は、内側容器20を圧迫し続けるので、空であることを検出するための気体は、流体通路42を通って、製造プロセス13へと向かって押し出される。空であることを検出するための気体が空であることを検出するための気体のセンサ62を通過するとき、空であることを検出するための気体のセンサ62は、システムコントロール46にシグナルを送って、圧縮空気の供給源30を停止し、それによって、システム50の動作を終了させる。その後、圧縮空気の通路32、気体通路34、および流体通路42が、空の容器14から接続を断たれ、空の容器14がシステム50から取り外され、そして、液体12および上部スペースの気体18を含む新しい容器14が、システム50に接続される。次いで、容器14からの液体12の分配が再開する。
【0035】
まとめると、いくつかの化学物質の純度は、長期にわたり保存される場合、特に、温度の変動に供される場合、減衰もしくは架橋する傾向を有する。この減衰もしくは架橋が生じるのを防ぐために、容器の空の部分(上部スペースと呼ばれる)に、上部スペースの気体が充填される。上部スペースの気体は、保存の間に、液体中で化学反応が生じることを防ぐことによって、液状の化学物質の減衰を防止する。容器が、製造プロセスに接続される予定である場合、上部スペースの気体は、もはや、不必要であるか、または所望されない。従来の分配システムは、液状の化学物質を分配する前の、上部スペースの気体の容易な除去を可能にしない。本発明は、外側容器、内側容器、および、内側容器の内部と連絡するポートを備える容器から製造プロセスへと、液状の化学物質を分配するための方法およびシステムであり、この内側容器の一部分は、液状の化学物質によって占められており、そして、内側容器の残りの部分は、容器が製造プロセスに接続されるまで、液状の化学物質の減衰を防止するために、上部スペースの気体により占められている。このシステムは、内部に流体通路を有するプローブ、および内側容器の内部と外側容器の外部との間を連絡する気体通路を備える。このシステムは、さらに、圧力下で外側容器の内壁と内側容器との間の空間内に流体が流入することを可能にし、気体通路を介して上部スペースの気体を内側容器から上部スペースの気体の排気管へと押し出し、そして、液体を、内側容器からプローブ内の流体通路を通して製造プロセスへと押し出すための、外側容器の内壁と内側容器との間の圧縮空間と流体連絡する手段を備える。
【0036】
本発明は、好ましい実施形態を参照して記載されてきたが、当業者は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形状および細部に対して変更がなされ得ることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、液体を容器から製造プロセスへと分配するための、本発明の好ましい実施形態に従うシステムの模式図である。この容器は、容器の輸送および保管の間に、液体を安定化させるために提供された、上部スペースの気体を備える。
【図2】図2は、液体を容器から製造プロセスへと分配するための、本発明の別の好ましい実施形態に従うシステムも模式図である。この容器は、容器の輸送および保管の間に液体を安定化させるために提供された、上部スペースの気体を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を分配する方法であって、該方法は、以下:
外側容器と内側容器とを備える流体容器を提供する工程であって、該内側容器の一部分は液体で占められており、そして、該内側容器の残りの部分は、上部スペースの気体で占められている、工程;
該内側容器から、該上部スペースの気体を排出させる工程;
該内側容器に圧力を供給して、該内側容器から製造プロセスへと液体を押し出す工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記内側容器に圧力を供給する工程が、以下:
該内側容器と前記外側容器との間の圧力下に流体を供給して、該内側容器から製造プロセスへと液体を分配する工程
を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、前記上部スペースの気体を排出させる前に、さらに、以下:
コネクタを前記流体容器に取り付ける工程であって、該コネクタは、内部に流体通路を有するプローブを備え、該コネクタは、さらに、前記内側容器の内部と、前記外側容器の外部との間を連絡する、気体通路を備える、工程
を包含する、方法。
【請求項4】
前記上部スペースの気体を排出させる工程が、以下:
上部スペースの気体の排気管と、前記気体通路との間に、排水弁を接続する工程;
該排気弁を開いて、該上部スペースの気体を、該気体通路を介して、該上部スペースの気体の排気管へと排出させる工程;および
液体が該気体通路内に流入し始めると、該排気弁を閉じる工程
を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、該方法は、前記排気弁を閉じる前に、さらに、以下:
前記内側容器と前記外側容器との間に圧力下に流体を供給して、前記気体通路を介して、前記上部スペースの気体を、該内側容器から前記上部スペースの気体の排気管へと押し出す工程
を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、以下:
前記気体通路と前記上部スペースの気体の排気管との間に液体センサを接続して、液体が該気体経路内に流入し始めたときを検知する工程
を包含する、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、前記内側容器と前記外側容器との間の圧力下に流体を供給する前に、さらに、以下:
該内側容器内へと、空であることを検出するための気体のある量を導入する工程
を包含する、方法。
【請求項8】
前記内側容器内へと、空であることを検出するための気体のある量を導入する工程が、以下:
空であることを検出するための気体の供給源と前記気体通路との間に、第1ブロック弁、気体量制御装置、および第2ブロック弁を接続する工程;
該第1ブロック弁を開いて、該空であることを検出するための気体を、該空であることを検出するための気体の供給源から該気体量制御装置へと流入させる工程;

一定量の空であることを検出するための気体が該気体量制御装置を満たしたときに、該第1ブロックを閉じる工程;および
該第2ブロック弁を開いて、該空であることを検出するための気体を、該気体通路を介して、該気体量制御装置から該内側容器の内部へと流入させる工程
を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一定量の空であることを検出するための気体が前記気体量制御装置を満たしたときに、前記第1ブロックを閉じる工程が、以下:
該空であることを検出するための気体が該気体量制御装置内に導入されたときに、該気体量制御装置内の圧力を調節するために、前記空であることを検出するための気体の供給源と該気体量制限装置との間に圧力調節ゲージを接続する工程;および
該気体量制御装置内の圧力に基づいて、該一定量の空であることを検出するための気体が該気体量制御装置内に導入されたときに、該第1ブロック弁を閉じる工程
を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法であって、該方法は、さらに、以下:
前記液体が、前記内側容器から排出されたときに、前記空であることを検出するための気体を検知する工程;および
該空であることを検出するための気体が検知されたときに、該液体の前記製造プロセスへの分配を終了させる工程
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、さらに、以下:
前記液体が、前記製造プロセスへと分配される間に、該流体容器を秤量する工程;
該流体容器が空の重量に達したときに、該液体の該製造プロセスへの分配を終了させる工程
を包含する、方法。
【請求項12】
外側容器と内側容器とを備える容器から製造プロセスへと液体を分配するためのシステムであって、該内側容器は、該液体および上部スペースの気体で占められており、該システムは、以下:
該内側容器内へと挿入可能なプローブであって、該プローブは、内部に流体通路を有する、プローブ;
該内側容器の内部と、該外側容器の外部との間を連絡する、気体通路;
該気体通路を介して、該内側容器から上部スペースの気体の排気管へと、該上部スペースの気体を押し出すため、そして、該プローブ内の流体通路を通して、該内側容器から該製造プロセスへと液体を押し出すための手段
を備える、システム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記上部スペースの気体の排気管と前記気体通路との間に接続された排気弁であって、該排気弁は、該気体通路を介して、前記上部スペースの気体を、該上部スペースの気体の排気管へと排出させるために選択可能な開位置と、該上部スペースの気体が、前記内側容器の内部から排出されたときに選択可能な閉位置とを有する、排気弁
を備える、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
該気体通路と該上部スペースの気体の排気管との間に接続された液体センサであって、該センサは、液体が、該気体通路内へと流入し始めたときを検知して、該上部スペースの気体が前記内側容器の内部から排出されたことを示すためのものである、液体センサ
を備える、システム。
【請求項15】
請求項12に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記液体が、前記内側容器から排出されたときを検出するための、空であることを検出するための手段
を備える、システム。
【請求項16】
前記空であることを検出するための手段が、空であることを検出するための気体のセンサであって、該空であることを検出するための気体のセンサは、前記液体を前記製造プロセスへと分配する直前に、前記内側容器の内部へと導入された空であることを検出するための気体を検知する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
気体量制御装置;
空であることを検出するための気体の供給源と該気体量制御装置との間に接続された第1ブロック弁であって、該第1ブロック弁は、空であることを検出するための気体が、該空であることを検出するための気体の供給源から該気体量制御装置内へと流入することを可能にするために選択可能な開位置と、一定量の空であることを検出するための気体が該気体量制御装置内へと導入されたときに選択可能な閉位置とを有する、第1ブロック弁;および
該気体量制御装置と前記内側容器の内部との間に接続された第2ブロック弁であって、該第2ブロック弁は、空であることを検出するための気体が、該気体量制御装置から該内側容器の内部内へと流入することを可能にするために選択可能な開位置と、一定量の空であることを検出するための気体が該気体量制御装置から排出されたときに選択可能な閉位置とを有する、第2ブロック弁
を備える、システム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記空であることを検出するための気体の供給源と前記気体量制御装置との間に接続された、圧力調節ゲージであって、該圧力調節ゲージは、該気体量制御装置内の圧力に基づいて、該一定量の空であることを検出するための気体が該気体量制御装置内に導入されたときに、前記第1ブロック弁が閉じられるように、該空であることを検出するための気体が該気体量制御装置内に導入されたときに、該気体量制御装置内の圧力を調節するためのものである、圧力調節ゲージ
を備える、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記ブロック弁、前記上部スペースの気体の排気管、および前記内側容器の内部に接続されたポートを有する選択弁であって、該選択弁は、該ブロック弁および該上部スペースの気体の排気管の、該内側容器の内部への選択可能な流体接続を可能にする、選択弁
を備える、システム。
【請求項20】
前記空であることを検出するための手段が、計量器で測定した場合に、前記流体容器が所定の重量に達したときに、前記液体の分配を終了させるように、該液体を前記製造プロセスへと分配させている間に、該流体容器を秤量するための計量器を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
液体取り扱いシステムであって、以下:
容器であって、以下:
外側容器;および
内側を有する内側容器;
を備える容器であって、該内側容器の一部分は、該液体によって占められており、そして、該内側容器の残りの部分は、上部スペースの気体によって占められている、容器;
該容器に取り付け可能なコネクタであって、該コネクタは、該内側容器内に挿入可能であり、かつ内部に流体通路を有するプローブを備え、該コネクタは、さらに、該内側容器の内部と、該外側容器の外部との間を連絡する気体通路を備える、コネクタ;ならびに
該気体通路を介して、該内側容器から上部スペースの気体の排気管へと該上部スペースの気体を押し出すため、および、該プローブ内の流体通路を通して、該内側容器から該製造プロセスへと液体を押し出すために、圧力下で、該外側容器の内壁と該内側容器との間の空間内に流体を流入させるための、該外側容器の内壁と該内側容器との間の空間と流体連絡している、流体空気供給源
を備える、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記気体通路と前記上部スペースの気体の排気管との間に接続された液体センサであって、該センサは、液体が該気体通路内に流入し始めたときを検知して、前記上部スペースの気体が、前記内側容器の内部から排出されたことを示すためのものである、液体センサ
を備える、システム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、該システムは、さらに、以下:
前記液体が前記内側容器から排出されたときを検出するための、空であることを検出するための手段
を備える、システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532433(P2007−532433A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508510(P2007−508510)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/012593
【国際公開番号】WO2005/100203
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】