説明

下位層中の添加剤の損失を防止するためのバリヤー層

本発明は、構成要素組立品のための保護積層システムを提供する。この保護積層システムは、プラスチックパネルと、そのプラスチックパネルと一体的に形成された少なくとも2つの保護層を含む。1つの保護層は、任意の下位保護層又はプラスチックパネルの構造中に、懸濁し、かつ、共有結合していない添加剤の損失を低減するバリヤー層として配置される。構成要素組立品として示される耐候性能は、種々の着色した又は帯色したプラスチックパネル或いは保護層に関して類似している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用構成要素組立品のためのプラスチックパネルの下位層中の添加剤の損失を防止するためのバリヤー層に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのプラスチック材料は、現在、数多くの自動車用部品及び構成要素、例えば、Bピラー、ヘッドライト及びサンルーフなどの製造に使用されている。自動車用ウィンドーモジュールは、スタイリング/デザイン、軽量化、及び、安全性/セキュリティの面でさまざまな利点を有しているため、これらのプラスチック材料の新たな用途の代表的なものである。さらに具体的に言えば、プラスチック材料は、自動車製造業者に対して、機能部品を成形プラスチックモジュールへと統合することを通じて、ウィンドー組立品の複雑さを軽減すること、並びに、総合的なデザイン及び形状を複雑化させることによって、自社の車両を競合他社の車両と識別させることを提供する。軽量プラスチックウィンドーモジュールを使用することによって、車両の低重心化(車両の操作と安全性をより良好にする)と、燃料節約の改善との両方をもたらすこともできる。最後に、転倒事故に巻き込まれた場合、乗員又は乗客がプラスチックウィンドーモジュールを有する車両内部に保持され易くなり、ひいては、安全性が向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチックウィンドーを実装することによる多くの利点は認識されてはいるが、これらプラスチックモジュールを広範囲に商業的に利用するためには、ガラスウィンドー用に制定された現存する規則(例えば、米国連邦自動車規格、No.205、タイトル49、第5章、パート571.205;ANSI−Z26.1、米国規格協会−1977年)を満たさなければならない。プラスチックウィンドーを自動車に使用するための最低条件の要約を表1に示す。
【表1】

【0004】
表1に指定された要件を満たすためには、プラスチック材料のいくつかの限界を克服するために、保護層(例えば、コーティング又はフィルム)をプラスチックウィンドーに設けなければならない。これらの限界には、紫外線(UV)放射に曝されることによって生じる品質劣化(色変化、光透過性の低下及び脆化の上昇(耐衝撃性の低下)によって例示される)、並びに、限られた耐磨耗性、及び、限られた加水分解安定性の両方、が含まれる。層間剥離、即ち、剥がれることによって示されるような保護層の早期破損は、上記の劣化メカニズムを加速させ、プラスチックウィンドーモジュールの寿命を限定する結果をもたらす。例えば、透明なクリアー、ソーラー(緑色)及びプライバシー(黒色)などのプラスチックウィンドーの着色又は帯色の違いは、保護層システムの早期破損を促進するようであり、これは、恐らく、環境に曝露されている間に、プラスチックウィンドーと保護層との境界の温度が上昇するためである。同様の議論が、さまざまな色の他の不透明なプラスチック構成要素(例えば、成形品、Bピラー、テールゲートモジュール、ボディーパネル等)において、観察されている破損メカニズムにも適用することができる。
【0005】
従って、産業界には、ウィンドーに関する自動車規制の要件を満たし、かつ、早期破損の発生に対して耐性のあるプラスチックウィンドーモジュールを可能にする、保護積層システムを開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、構成要素組立品のための保護積層システムを提供する。この積層システムは、いずれかの下位保護層の構造又はプラスチックパネルに結合していない添加剤の浸出又は消失に対して、バリヤーとして作用する少なくとも1層を含む。積層システムの性能は、プラスチックパネル又は添加剤層の着色又は帯色と実質的に無関係である。プラスチックパネル及び添加剤層は、透明でも、不透明でも、又は、それらの混合物でもよい。
【0007】
ある実施形態において、構成要素組立品は、透明なプラスチックパネル、任意選択の保護添加剤層及びバリヤー層を含むウィンドー組立品であって、その性能が自動車に使用する場合の性能要件を満たすウィンドー組立品である。
【0008】
その他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲の検討において、また添付図面の参照において明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の好ましい実施形態の説明は、事実上例示的なものであり、本発明又はその適用若しくは使用を制限することを意図するものではない。
【0010】
本発明によれば、1層が下位添加剤層及びプラスチックパネル内部からの添加剤の浸出又は消失に対するバリヤーとして作用する場合には、保護積層システムは、プラスチック構成要素組立品の耐用年数を増大する。保護積層システムの構造に関する可能な配置及び形状の幾つかを図1に示す。バリヤー層30(「B」)は、図1A及び1Bに示すように、いずれかの下位添加剤層20及び/又はプラスチックパネル10からの添加剤の浸出に対してバリヤーとして作用するために最外層としてもよい。バリヤー層30は、図1C及び1Dで表されるように、下位添加剤層20又はプラスチックパネル10のみからの添加剤の浸出に対してバリヤーとして作用するために、添加剤層20とプラスチックパネル10との間に挟むこともできる。格別の実現では、構成要素組立品に耐磨耗性というさらなる利益を付与するために、バリヤー層30は最外層である。構成要素組立品は、複数のバリヤー層を含むこともできるし、また、複数の添加剤層を含むこともできる。
【0011】
バリヤー効果を実証し、かつ、バリヤー層30を有する場合と有しない場合の両方について、さまざまなプラスチックパネル10及び添加剤層20によって示される性能を比較するために、表2に示すような、幾つかの特定のプラスチック樹脂(R1〜R6)、添加剤層(A1〜A9)及びバリヤー層(B1〜B2)を選択した。これらの樹脂及び添加剤層、並びに、2つのバリヤー層30が、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。これらは、本発明のさまざまな実施を単に例示するためのものである。バリヤー効果を実証するために選択された保護積層システムの組成を特定するために使用される命名は、表2に記載する、特定のプラスチック樹脂、添加剤層及びバリヤー層について、個別に標識する。例えば、R2+A2A7と特定される保護積層システムは、プラスチック樹脂パネルR2と添加剤層A2及びA7とを含む。R1+A8+B1と特定される保護積層システムは、プラスチック樹脂パネルR1、添加剤層A8及びバリヤー層B1を含む。
【0012】
従来のバリヤーコーティングは、水又は酸素などの分子が、環境からコーティングを通って被覆基材へと浸出するのを防止することを試みている。これらの環境汚染物は、分子直径が150ピコメートル未満であり(即ち、Oの分子直径は約121ピコメートル、HOの分子直径は約108ピコメートル)、一般的に寸法が小さい。しかしながら、バリヤー層30は、環境で発生するかかる分子を透過させる恐れがある。例えば、特定の実施形態において、約37.8℃、相対湿度約100%におけるバリヤー層30は、水蒸気の透過度が、1日当たり約3.7g/mに達する(PermatranW3/31,MOCON,Minneapolis,ミネソタ州)。
【表2】

【0013】
従来のバリヤーコーティングは、下位コーティング層又は基材から環境へと拡散する大きな分子を透過する。マイクロ電子製品の製造に使用されるバリヤーコーティングでは、ポリマー性分解生成物がバリヤーコーティングを通って環境に拡散できる。例えば、マイクロ電子製品の製造中に導電性金属ラインの間にエアギャップを形成するために、ポリノルボルネンの高分子量分解生成物は、上層の誘電性(バリヤー)コーティングを通って容易に周辺環境に拡散する。
【0014】
分子直径150ピコメートル超の添加剤が下位添加剤層及びプラスチックパネルからバリヤー層を通って環境へ浸出することを、バリヤー層30が低減又は防止することを意外にも判明した。バリヤー層30が、分子直径約200ピコメートル超の、ある実施においては、約300ピコメートル超の添加剤の浸出を低減又は防止することが好ましい。
【0015】
プラスチックパネル及び任意の添加剤層からの添加剤の浸出をも防止することは、構成要素組立品の関連した耐用年数を増大する。構成要素組立品の耐用年数は、色において観測される性能の変化の大きさ(黄変指数=YI)、及び、表1に記載の耐衝撃性特性に従って測定される。主に、黄変指数(YI)において約+5ユニットを超える変化が示されるか、又は、(例えば、脆化によって生じる)衝撃破損の兆候の開始が示された場合に、プラスチックパネルは構成組立品の有効実用寿命に達したと考えられる。
【0016】
大部分のプラスチック材料は、光化学に起因するプロセスにより、劣化しやすい。一般的に、これらの劣化プロセスは、プラスッチック材料の色特性又は耐衝撃性特性のいずれかに影響を及ぼす恐れのある分子種を形成する。これら光化学に起因するプロセスに対する保護は、通常、紫外線を吸収する(「UVA」)分子を、プラスチック材料のバルク又はプラスチック材料の表面に適用する添加剤層に組み込むことで達成される。UVA分子が保護添加剤層に適用された場合、この添加剤層とプラスチックパネル間の層間剥離又は密着性の消失は、構成要素組立品に関連する有用な耐用年数を制限する破損であると考えられる。
【0017】
保護添加剤層におけるUVA分子の種類及び濃度が、構成要素組立品の有用な耐用年数を本質的に定める。UVA分子は、時間が経つと、光化学作用に不活性な段階に達したり、或いは光化学作用によって促進される劣化メカニズムを完全に停止させるのには不十分な濃度となったりする恐れがある。添加剤層とプラスチック材料の間の界面が、添加剤層中に存在するUVA分子によって吸収されないUV照射によって、最初に劣化させられる区域である。この界面の劣化は、添加剤層の層間剥離を促進するので、添加剤層の破損は添加剤層に組み込まれるUVA分子の濃度と有効期間に強く依存する。本発明によれば、プラスチックパネルに関する黄変指数(YI)の+5ユニットを超える増加は、保護添加剤層の層間剥離並びに脆化の開始と同時に起こることが判明している。
【0018】
+5ユニットの色の変化(ΔYI)及び添加剤層の層間剥離又は衝撃破損の発生のいずれかに達するのに必要なUV放射線曝露量(UVEXP)は、以下の方程式1を使用して予測することができる。この式において、Dは減衰率、Aは初期吸光度の測定値、Tは、「保護していない」プラスチックパネルにおいて、色の変化又は衝撃破損を起こさせる曝露量を表す。この方程式を使用して求められる紫外線放射曝露量(UVEXP)は、メガジュール(MJ)で示される。Tの値は、「保護していない」プラスチックパネルにおける色の変化又は衝撃特性を、曝露量の関数として実験的に測定することで容易に求められる。
【化1】

【0019】
本発明によれば、+5ユニットを超える色の変化(即ちΔYI)によって破損とされる前において、バリヤー層30は、プラスチックパネルが受けることができるUV放射線の量を約63%増加させる。UVA分子を含んでいる添加剤層(A2A7)によって保護されているポリカーボネート(R2)パネルは、8MJの紫外線曝露において+5ユニットの黄変指数(ΔYI)の変化に達することが判明した(表3の試験#01参照)。比較として、同じプラスチックパネル(R2+A2A7)において、バリヤー層30がUVA分子を含む保護添加剤層を包んでいる場合、約12MJを超える曝露において、+5ユニットの黄変指数(ΔYI)の変化に達することが判明した(表3の試験#02参照)。表3に示すように、パネルに関して破損に至る実際の測定時間が、方程式1から計算した破損に至る測定時間に非常によく一致していることが判明した。
【表3】

【0020】
本発明によれば、「脆化」又は耐衝撃性における破損に達する前において、バリヤー層30は、プラスチックパネルが受けることができるUV放射線の量を約42%増加させる。UVA分子を含む添加剤層(A2A7)だけで保護されているプラスチックパネル(R2)は、10.3MJの紫外線曝露において耐衝撃性に関する破損発生点に達することが判明した。比較として、同じプラスチックパネル(R2+A2A7)が、バリヤー層30が保護添加剤層を包んでいる場合、約14.6MJの紫外線曝露において、耐衝撃性に関する破損発生点に達することが判明した。
【0021】
さらに、本発明によれば、バリヤー層30は、保護積層システムにおける添加剤に関する減衰率を約20%超低減する。例えば、添加剤層中に存在するUVA分子によって示されるUV吸収剤に関連する減衰率は、本明細書で定義するバリヤー層の使用において劇的に減少する。この場合、減衰率(D)は、パネル又はウィンドー組立品が曝露するUV放射(波長=340nm)のメガジュール(MJ)当たりの添加剤層におけるUVA分子に関して測定した吸収剤(ABS)ユニットの数の減少として定義される。UVA分子を含む添加剤層(A2A7)によって保護されるプラスチックパネル(R1)は、UV放射線の曝露において、図2(試験#03参照)に示すように、UVA分子に関して−0.20ABS/MJ曝露に相当する減衰率を示すことが判明した。比較として、同じプラスチックパネル(R1+A2A7)は、バリヤー層30が保護UVA分子を含む添加剤層を包んでいる場合、約−0.11ABS/MJに相当する減衰率を示すことが判明した(試験#04を参照のこと)。従って、バリヤー層30を、UVA分子を含む添加剤層に適用することによって、この特定の事例では、減衰率が約41%まで減少される。
【0022】
本発明によれば、バリヤー層30により、不透明なプラスチックパネル及び透明なプラスチックウィンドーが、それぞれに異なる着色及び帯色を含む場合であっても、同様に機能することを意外にも見出した。言い換えれば、バリヤー層を使用した場合には、帯色した又は着色したプラスチックパネルと添加剤層の組合せの性能が標準化される。透明(透明度>90%)、ソーラーグレー及びプライバシーブラックとそれぞれ特徴づけられるプラスチックパネル(R2、R4、R6)上の保護添加剤層(A2A7又はA1A6)中のUVA分子の減衰率を、バリヤー層30を有する場合と無しの場合の両方について測定した。保護添加剤層中のUVA分子に関する減衰率(D)は、バリヤー層無しの場合、DCLEAR>DSOLAR>DPRIVACYの傾向に従うことが判明した。例えば、プラスチックパネルを、保護添加剤層(A1A6)だけで被覆した場合、減衰率は、透明パネルからプライバシー着色パネルまでに関して、それぞれ0.03から0.05ABS/MJまで変動することが測定された。保護積層システムの着色及び帯色に対するUV吸光度減衰率の依存関係は、プラスチックパネルが経験した表面温度の違いに関係することもある。例えば、ASTM G155、サイクル1(GMOD)の加速風化試験を受けている透明パネルとプライバシー着色パネルの間には、20℃の温度差が存在する。この特定の試験において、透明及びプライバシーパネルの温度は、それぞれ70℃及び90℃であることが判明した。本発明の様々な実施に従って、プラスチックパネルの表面温度が、約20℃と約120℃の間の場合、バリヤー層によってプラスチックパネルの耐用年数を実質的に同じとすることが可能になる。
【0023】
バリヤー層30が、保護添加剤層上に適用される場合、減衰率(D)は、DCLEAR〜DSOLAR〜DPRIVACYの傾向に従うことが判明した。例えば、プラスチックパネルを、保護添加剤層(A1A6)及びバリヤー層B1で被覆した場合、減衰率は全ての(透明からプライバシーまでの)着色パネルに関して、約0.02ABS/MJであることが測定された。全ての場合において、バリヤー層30を使用することで、減衰率は表4に示すように約20%超まで減少した。バリヤー層30は、プラスチックパネルの表面温度が、保護積層システムによるUV吸光度減衰率について有している影響を効果的に低減する。
【表4】

【0024】
さらに本発明によれば、バリヤー層30によって示されるバリヤー特性は、高温における曝露時間に関する添加剤の相対的消失を測定することによって決定することができる。バリヤー層は、70℃で100時間曝露した後、添加剤の損失を約0.15%未満に、好ましくは300時間後約0.50%に、またより好ましくは500時間後約0.80%に防止する。添加剤の相対的損失を決定するために、添加剤の特定の性質を時間の関数として監視することもできる。例えば、添加剤がUVA分子の場合、UVAに関する吸収ユニットの損失を70℃の温度に曝露された時間(時間)の関数として測定し、相対的損失を決定することができる。バリヤー層30は、この特定の事例において、下位添加剤層(A2A7)及びプラスチックパネル(R2)からのUVA分子の損失を、約70℃における100、300及び500時間の曝露後、それぞれ0.157%、0.470%及び0.780%未満に防止することが判明した(表5の試験#16を参照されたい)。全体的に、バリヤー層30は、添加剤を含む下位層及びプラスチックパネル中の添加剤の損失率を300%超まで低減する。
【0025】
プラスチックパネル10は、いかなる熱可塑性又は熱硬化性高分子樹脂も含むことができる。プラスチックパネルは、不透明でも、透明でも又はそれらの混合物であってもよい。この高分子樹脂には、以下に限られないが、ポリカーボネート、アクリル系、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、ポリアミド、ポリアルキレン及びアクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、並びに、それらのコポリマー、ブレンド及び混合物を含むこともできる。好ましい透明な熱可塑性樹脂には、以下に限られないが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂及びポリスルホン樹脂、並びにこれらのコポリマー及び混合物が含まれる。プラスチックパネルは、さらに、着色剤、レオロジー制御剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収(UVA)分子、IR吸収又は反射顔料などの様々な添加剤を特に含むこともできる。プラスチックパネルは、押出、射出成形と吹込成形又は圧縮成形を含む成形又は熱成形、真空成形及び常温成形を含む熱成形など、当業者が周知のいずれかの技法を使用して構成要素組立品に形成することもできる。
【0026】
添加剤層20は、以下には限られないが、シリコーン、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、エポキシ及びそれらの混合物若しくはコポリマーを含むこともできる。添加剤層は、押出しされても、又は、薄膜としてキャストされても、又は、別個のコーティングとして適用されてもよい。アクリル性プライマー及びシリコーンハードコート又はポリウレタン中間層のいずれかを含む、添加剤を含有する複数のコーティング層を、プラスチックパネルの保護を向上させるのに使用することもできる。複数の添加剤コーティング層には、アクリル性プライマー(SHP401,GE Silicones,Waterford,NY)及びシリコーンハードコート(AS4000,GE Silicones)が含まれる。添加剤層中の添加剤は、特に、着色剤(色合い付け)、レオロジー制御剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収(UVA)分子、IR吸収又は反射顔料とすることもできる。添加剤コーティング層は、浸漬コーティング、フローコーティング、吹付けコーティング、カーテンコーティング、或いは当業者が周知の他の技能によって適用することもできる。添加剤の薄膜層は、インモール装飾、フィルム挿入成形、キャスティング、或いは当事者が周知の他の技能によって適用することもできる。
【0027】
損失がバリヤー層30の使用によって制御されるのが好ましい添加剤には、特に紫外線吸収(UVA)分子が含まれる。UVA分子には、以下に限られないが、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、ポリベンゾイルレゾルシノール誘導体又はそれらの組合せ、並びに、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレートを含むこともできる。UVA分子をシリル化して、UVA分子をコーティングネットワークへ結合する場合、ネットワークに結合できず、添加剤として存在するUVA分子の割合は、十分な効果を有するためには、おおよそ5%であることが好ましい。
【0028】
バリヤー層30は、無機誘電材料、有機誘電材料又は好ましいそれらの混合物及びブレンドを有する周知の導電性材料又は誘電材料を含むこともできる。無機誘電材料の例には、以下に限られないが、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム又はガラス及びそれらの混合物或いはブレンドが含まれる。有機誘電材料は以下に限られないが、ダイヤモンド様炭素及びウレタン、エポキシ、アクリル酸、シリコーン及びそれらの混合物又はブレンドなどの「密な」ポリマーシステムを含むことができる。ポリマーシステムは、それがバリヤー層30に関して本明細書で規定された性能基準を満たす場合、「密な」ポリマーシステムであると考えられる。
【0029】
バリヤー層30は、当業者が周知の適切ないずれかの技法によって適用することもできる。これらの技法には、真空支援堆積方法に使用される技法などの反応種からの堆積及び基材へのゾルゲルコーティングを被覆するのに使用される技法などの常圧コーティング方法が含まれる。真空支援堆積方法の例には、以下に限られないが、プラズマ強化化学的気相成長、イオン支援プラズマ蒸着、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸発及びイオンビームスパッタリングが含まれる。常圧コーティング方法の例には、以下に限られないが、カーテンコーティング、吹付けコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング及びフローコーティングが含まれる。
【0030】
プラスチックパネル、2つの添加剤コーティング層及びバリヤー層30を有する保護積層システムの例には、ポリカーボネート/アクリル/シリコーン/「ガラス様」システムが含まれる。これらのシステムにおいて、ポリカーボネートは透明なプラスチックパネルを表し、アクリル系及びシリコーン中間層は、2つの添加剤層20を表し、一方、「ガラス様」最外層は、バリヤー層30を表す。
【0031】
バリヤー層30の厚さは、約1ミクロンから約100ミクロンまで変動することもできる。バリヤー層30の最適の厚さは、下位層からの添加剤損失防止に関するこの層の有効性及びこの層によって示される光学的性質に依存する。透明なプラスチックパネル、任意の添加剤層及びバリヤー層30を有する全体的ウィンドー組立品は、表1に規定するヘーズ及び光透過率に関する光学的要件を満たすことが好ましい。同様に、添加剤層の厚さは、その光学的性質及び全体的ウィンドー組立品の性能への効果に基づき、約1ミクロンから約100ミクロンまで変動することもできる。
【0032】
以下の特定の実施例は、本発明を説明するために提供されるものであって、発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0033】
(実施例1−サンプルの調製)
平らなパネルを、市販のポリカーボネート樹脂(LS2,GE Plastics,Mount Vernon,米国Indiana州又はAL2647,Bayer AG,ドイツ)、或いは315〜360ナノメートルの波長の範囲において約1吸収単位(ABS)未満のUV吸収スペクトルを示すように配合されたこの樹脂の特殊版(M2808,Bayer AGドイツ又は101−111N,GE Plastics,Mount Vernon,米国Indiana州)を使用して成形した。プラスチックパネルを成形するのに使用したそれぞれの樹脂の種類は、表2にR1からR6までとしてさらに特定されている。
【0034】
各パネルを成形するのに使用したポリカーボネート樹脂は、透明な樹脂(R1及びR2)、帯色した樹脂(R3及びR5)、着色した樹脂(R4及びR6)のいずれかである。帯色したパネル中の樹脂は、着色添加剤又は着色剤を含んでおり、それによってその色の色合い付けしたパネルを生成している。着色パネルは、カラーインクを印刷するか又はカラーフィルム(例えば、プラーク)を、透明なパネル(R1及びR2)の裏面に密着させることで調製された。
【0035】
調製したパネルは、次いで表2にA1からA9として記載されている、1つ又は複数の添加コーティング層で被覆した。各添加コーティング層を適用した後、コーティングは、約110〜130℃で約30〜60分間硬化させる前に「フラッシュ」即ち20〜30分間風乾させた。市販のコーティングを適用し、製造者の推奨する条件に従って硬化させた。
【0036】
各添加剤層又は添加剤層の組合せで被覆したパネルの半分に、次いでその性質を表2に記載してあるバリヤー層30を適用した。バリヤー層30を、Journal Vacuum Science and Technology A,21(4),2003年,1266〜1271頁にM.Schaepkens,S.Selenzneva,P.Moeleker及びC.D.Lacovangeloによって発表された論文に記載されている条件及びパラメーターに従って、最も外側の添加剤層の表面に貼付けるか又は堆積させた。この論文の全内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0037】
様々な樹脂(R1〜R6)から成形され、様々な添加剤層(A1〜A9)で被覆された、バリヤー層30を適用した、又は、適用していない両方のパネル全てを、次いでバリヤー効果を評価するために、以後の実施例で使用した。本実施例で調製した全ての透明パネルは本質的に延性であり、表1に定義する光学的透過率(%)及び初期ヘーズ(%)のいずれの要件も満たしていた。
【0038】
(実施例2−バリヤー効果:熱的損失)
実施例1で調製したパネルの一部を、対流式オーブン中70℃で熱に曝露した。各パネルは、高温に0、24、72、144、312、648、1008、1368及び1728時間曝露した後、スペクトロメーターを用いて検査した。分光器による試験は、Cary 500スキャンUV−Vis−NIRスペクトロメーター(Varian,Palo Alto,米国カリフォルニア州)を使用して、波長範囲215〜500ナノメートル、走査速度300ナノメートル/分で行った。
【0039】
UV吸光度の10の累乗の対数マイナス1(Log[10ABS−1])対70℃に曝露した時間の長さのプロットを、評価した各パネルについて取得した。R2+A2A7(試験#13)及びR2+A2A7+B1(試験#16)として特定される2つのパネルに関するかかるプロットの例を、図3に示す。評価した各パネルの傾斜及びy接点を得るのに、直線回帰曲線適合解析を使用した。直線の傾斜は、時間当たりのABSユニットにおける添加剤(UVA分子)損失率を表す。次いで、ある特定の時間間隔において添加剤損失の百分率を計算し、同一の樹脂及び添加剤層システムについて、バリヤー層30がある場合と無い場合とを比較した。
【0040】
表5に示すように、時間の関数としての添加剤損失の率と添加剤損失の百分率とを、多数の添加剤層システムに関し、バリヤー層30の貼付けがある場合と無い場合について決定した。バリヤー層30の貼付けが無い様々な添加剤層の組合せ(試験#11〜13)は、UV放射線を吸収する能力が、70℃で100時間曝露した後に約0.3〜0.6%、300時間曝露した後に約0.9〜1.8%及び約500時間曝露した後に約1.4〜3.0%減少することが確認された。これら様々な添加剤層の組合せ(試験#11〜13)における添加剤の吸収損失率は、1.0×10−4〜8.9×10−5ABS/時間まで変動した。
【0041】
相対的に、バリヤー層30が存在する同じ添加剤層の組合せ(試験#14〜16)は、添加剤損失率において著しい減少を示すことが判明した。バリヤー層30を適用した様々な添加剤層の組合せ(試験#14〜16)は、UV放射線を吸収する能力が、70℃で100時間曝露した後に約0.05〜0.2%、300時間曝露した後に約0.2〜0.5%及び500時間曝露した後に約0.3〜0.8%減少することが測定された。バリヤー層30を有するこれらの様々な添加剤層の組合せ(試験#14〜16)における添加剤の吸収損失率は、1.0×10−5〜2.0×10−5ABS/時間まで変動した。この特定の実施例におけるバリヤー層30の総体的影響は、バリヤー層の存在の下(試験#14〜16)、バリヤー層の無い同じシステム(試験#11〜13)に比較して、高温において特定の時間曝露した後で、添加剤(UVA分子)がUV放射線を吸収する能力を300%超高めることが確認された(図3参照)。
【表5】

【0042】
この実施例は、バリヤー層30が添加剤の損失を、70℃で100時間曝露した後で約0.15%未満、好ましくは約300時間曝露した後で約0.50%、より好ましくは約500時間曝露した後で約0.80%防止することを実証している。この実施例は、バリヤー層30の種々の下位添加剤層(例えば、A1A6、A2A7及びA5A9)に関して同様に機能する能力をさらに実証している。
【0043】
(実施例3−バリヤー効果:損失率(ABS/MJ))
実施例1で調製したパネルの一部を、幾つかの異なる自然及び加速風化試験において、UV−可視光線に曝露させた。かかる試験の1つにおいて、パネル(試験#17〜24)を、Atlas C5000i風化試験機中で、(1)UV源は、ホウケイ酸塩の内部フィルター及び外部フィルターを有するキセノンアークで、340nmにおいて0.75W/mのスペクトル強度を使用;(2)温度75℃のブラックパネルを使用;(3)相対湿度30%;及び(4)乾球温度55℃の特定条件を使用し、ASTM G155 サイクル1(GMOD)人工風化プロトコールを用いて曝露した。全てのパネルは、UV曝露の各1.2MJ/m後毎に、ASTM D 3359−92aを使用して、微小ひび割れの発生、自然発生の層間剥離、密着不良について試験した。
【0044】
実施例1で調製したパネルの別の部分(試験#25〜28)を、屋外のフロリダ州及びアリゾナ州風化試験に5°の角度で曝露した。各パネルは、ASTM D 3359−92aを使用して6ヶ月毎に微小ひび割れの発生、自然発生の層間剥離、密着不良について試験した。不良となったパネルは、試験から取り除いた。
【0045】
実施例1で調製したパネルの別の部分(試験#25〜28)を、QTRAC施設(Q−PANEL,Cleveland,米国オハイオ州)において、ASTM G90 サイクル3(ASTM D4141)を使用して、アリゾナ州の加速風化試験に曝露した。各パネルは、ASTM D 3359−92aを使用して6ヶ月毎に微小ひび割れの発生、自然発生の層間剥離、密着不良について試験した。不良となったパネルは、試験から取り除いた。
【0046】
最後に、実施例1で調製したパネルの別の部分、並びに被覆していない樹脂(R1〜R6)パネルを、QUVスプレー風化試験機(Q−Panel Lab Products,Cleveland,米国オハイオ州)を使用して、UV−可視光線に曝露させた。この試験には、ある変更を施したASTM G154 サイクル4人工風化プロトコールを使用した。この変更は、蛍光ランプを使用して、パネルを340nm波長の1.35W/mのスペクトル強度に連続的に曝露するよう構成されていた。全てのパネルは、曝露した後0、24、72、144、312、648、720及び1440時間後に、風化損傷(例えば、微小ひび割れ及びコーティングの層間剥離)を、目視及び分光の両方から試験した。
【0047】
パネルの分光試験は、215〜500nmの波長範囲で走査速度300nm/分において、Cary500スキャンUV−可視光線−NIRスペクトロメーター(Varian,Palo Alto,米国カリフォルニア州)を使用して行った。黄色度指数は、ASTM E313−00「機器によって測定された色座標から黄色度指数及び白色度指数を計算する標準的技法(Standard practice for calculating yellowness and whiteness indices from instrumentally measured color coordinates)」を使用して、BYKカラー指針(カラーシステム:CIE Lab;指数:YE313−98、照度/オブザーバー:D65/10°)を使用して決定した。
【0048】
被覆していない(添加剤層の無い)ポリカーボネートパネルの黄色度指数を、UV放射線曝露によって生じた波長340nmにおける吸光度(ABS)の変化に対してプロットした。このプロットに直線回帰曲線適合を適用して、フォトフライス(photo−Fries)補正係数として使用した勾配を得た。この補正係数は、ポリカーボネート樹脂を含むパネル及び様々な添加剤層中のUVA分子の損失に起因する340nmにおける補正済み吸光度を決定するのに使用された。補正済み吸光度値を使用しているUV吸光度の10の累乗の対数マイナス1(即ち、Log[10ABS−1])対UV放射線曝露量(MJ/m)を、評価した各パネルについて作図した。かかるプロットの例を、R1+A2A7(試験#03)として特定されるパネル及びR1+A2A7+B1(試験#04)として特定されるパネルの両方について図2に示す。減衰率、即ち吸収損失率(ABS/MJ)は、この解析から得られた直線の勾配として定義される。
【0049】
最後に、実施例1で調製したパネルの別の部分(試験#17〜24)の耐磨耗性を、ASTM D1044(1000サイクル、CSF10ホイール)に従って試験した。
【0050】
実施例1で調製したパネルについて、上記の様々な加速及び自然の風化条件に対して曝露した後に得られた試験結果を表6に示す。バリヤー層の付加を有している場合と有していない場合について、ポリカーボネート樹脂(R3)を有するパネルと、A1A6(試験#17)、A2A7(試験#18及び25)、A8(試験#21及び27)、並びにA3(試験#23)などの様々な添加剤層との直接比較を行った(試験#18、20、22、24、26及び28を参照されたい)。この実施例は、バリヤー層30の存在が、風化条件の下、添加剤層及び樹脂パネルの安定性を著しく向上させることを実証している。
【表6】

【0051】
バリヤー層30の存在によって、パネルがASTM G155サイクル1(GMOD)試験の間に曝露され得るUV放射線量(MJ/m)の量が増加した。この増加は、実際の使用における透明なパネル又はウィンドーの耐用年数増加に直接関係する。この増加は、約10%(試験#21を試験#22と、そして#23を#24と比較されたい)から50%超(試験#17を試験#18と、そして#19を#20と比較されたい)まで変動した。同様に、UV曝露の間の各パネルの吸収損失は、バリヤー層30が存在すると減少した。損失率(ABS/MJ)におけるこの低減は、バリヤー層30の存在下で評価した全ての付加システムに関して約30%超であることが判明した(試験#21を#22と、#23を#24と、#17を#18と、そして#19を#20と比較されたい)。この分析において、比較したパネルの添加剤層の厚さはほぼ同程度であるので、観察された性能の違いが、添加剤の量がより多く存在することに起因する可能性を排除している。例えば、試験#17におけるパネルの添加剤層の厚さ(7.3μm)は、試験#18におけるパネルの添加剤層の厚さ(7.2μm)に近似している。
【0052】
バリヤー層30の存在は、パネルがASTM G90、サイクル3(QTRAC)試験、フロリダ州自然風化試験、アリゾナ州自然風化試験及びASTM G154/サイクル4(QUVA)試験の間に曝露することのできるUV放射線の量を増加した。この増加は、実際の使用における透明なパネル又はウィンドーの耐用年数増加に直接関係する。QTRAC試験において、この増加は25%(試験#27を#28と比較されたい)から約100%(試験#25を#26と比較されたい)まで変動した。フロリダ州及びアリゾナ州の自然風化試験において、この増加は、フロリダ州の試験#27及び#28の約25%から、フロリダ州の試験#25及び26と、アリゾナ州(試験#25を#26とそして#27を#28と比較されたい)の両方における50%超まで変動した。
【0053】
QUVA試験において、バリヤー層30が使用された場合、紫外線吸収分子の減衰率に関して観測された減少は、試験#29〜32に示すように約27%超であることが測定された。これらの試験のそれぞれにおいて、減衰率(ABS/MJ)の百分率変化は、同じシステムについてバリヤー層30が存在する場合と存在しない場合とを比較することによって得られた。試験#32において、2つのバリヤー層(B1B2)が存在することによって、紫外線吸収分子の最大の減衰率71%が達成されたことが判明した。全ての場合において、解析において各比較を行った添加剤層の厚さは、同程度であった。
【0054】
バリヤー層(B1)の適用は、添加剤層及びパネルの耐磨耗性を増加させた。表6に示すように、添加剤層の耐磨耗性は、全ての直接比較(試験#17対#18、#19対#20、#21対#22及び#23対#24を参照されたい)において100%超向上した。この実施例は、バリヤー層30が耐磨耗性を向上できることを実証している。
【0055】
(実施例4−バリヤー効果:色変化の否定)
実施例1で調製したパネルの一部を、5°の角度でのフロリダ州における屋外の自然風化及びASTM G155サイクル1(GMOD)試験において曝露した。フロリダ州の風化に曝露した各パネルは、6ヶ月毎に微小ひび割れの発生、自然発生の層間剥離、或いは密着不良について、ASTM D3359−92aを用いて試験した。同様に、GMOD試験を実施した全てのパネルは、1.2MJ/mUV曝露毎後に、上記の破損モードに関して試験した。この実施例において評価した各パネルに関して得られた結果を表7に示す。
【表7】

【0056】
バリヤー層30の存在は、プラスチックパネル及び添加剤層が破損点に至るまでにより大きなUV放射線量を吸収することを可能にする。この向上は、保護積層システム又はプラスチックウィンドーの予想耐用年数の増加に関連する。バリヤー層30を有する帯色したソーラーパネルについて、破損に至るまでの曝露時間が26%増加することが判明した(試験#34を#33と比較されたい)。同様に、バリヤー層30を有する場合、着色したプライバシーパネルについて(#38を#37と比較されたい)及び帯色したプライバシーパネルについて(#36を#35と比較されたい)、曝露時間がそれぞれ116%及び200%増加することが判明した。この実施例は、バリヤー層30の存在によって、パネル又は添加剤層の色が、構成要素組立品の耐用年数に影響を及ぼさないという予期しない効果を実証している。言い換えれば、帯色した又は着色したプラスチックパネルと添加剤層の組合せの性能は、バリヤー層30を使用した場合に正常化される。バリヤー層30が存在する場合の帯色したソーラー保護積層パネル(試験#34)及び帯色したプライバシー保護積層(試験#36)の性能は、ほぼ3年間の耐用年数に正常化されていることが判明した。
【0057】
従前の説明から、当業者は本発明の好ましい実施形態に対して、以下の特許請求で定義する本発明の範囲から逸脱することなく、修正及び変更をなすことができることを理解するであろう。当業者は、好ましい実施形態において説明した付加的損失率の測定が、別の様々な試験方法によって得ることのできる標準的な測定値であることをさらに理解するであろう。実施例で説明した試験方法は、必要とされる測定値のそれぞれを得るために使用することのできる1つの方法を表しているだけに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明によるプラスチックパネル、添加剤層及びバリヤー層を有する構成要素組立品の可能性のある幾つかの保護積層構造の幾何形状に関するグラフィック描写図である。
【図2】UV吸収度のグラフィック描写図であり、バリヤー層がある場合とない場合の両方について、プラスチックパネル及び添加剤層システムによって示されるUV放射総量の関数としてプロットされている。
【図3】UV吸収度のグラフィック描写図であり、バリヤー層がある場合とない場合の両方についてプラスチックパネル及び添加剤層システムによって示される、約70℃に曝露した場合の全時間(時間)の関数としてプロットされている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックパネル、及び
前記プラスチックパネルと一体的に形成された少なくとも2つの保護層
を含む構成要素組立品のための保護積層システムであって、
1つの保護層が、任意の下位層又はプラスチックパネルの構造中で、懸濁し、かつ、共有結合していない添加剤の損失を低減するバリヤー層である、
保護積層システム。
【請求項2】
前記バリヤー層によって、前記添加剤が損失する減衰率が、バリヤー層が無い場合における添加剤損失について確立した減衰率の約95%未満に制限される、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項3】
前記バリヤー層によって、前記添加剤が損失する減衰率が、バリヤー層が無い場合における添加剤損失について確立した減衰率の約90%未満に制限される、請求項2に記載の保護積層システム。
【請求項4】
前記バリヤー層によって、前記添加剤が損失する減衰率が、バリヤー層が無い場合における添加剤損失について確立した減衰率の約85%未満に制限される、請求項3に記載の保護積層システム。
【請求項5】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約500時間曝露した場合に、前記添加剤の損失が約0.8体積%未満に制限される、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項6】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約300時間曝露した場合に、前記添加剤の損失が約0.5体積%未満に制限される請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項7】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約100時間曝露した場合に、前記添加剤の損失が約0.15体積%未満に制限される請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項8】
前記バリヤー層が、約150ピコメートル超の分子直径を有する添加剤の損失を低減する、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項9】
前記バリヤー層が、約200ピコメートル超の分子直径を有する添加剤の損失を低減する、請求項8に記載の保護積層システム。
【請求項10】
前記バリヤー層が、約300ピコメートル超の分子直径を有する添加剤の損失を低減する、請求項9に記載の保護積層システム。
【請求項11】
前記バリヤー層の厚さが、約1ミクロンと100ミクロンの間である、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項12】
前記プラスチックパネルが、着色しているか、帯色しているか、それらの混合である、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項13】
前記バリヤー層が、プラスチックパネルの耐用年数を、プラスチックパネルの表面温度約20℃と約120℃の間で実質上、近似することが可能な、請求項12に記載の保護積層システム。
【請求項14】
前記バリヤー層が、いずれの着色した又は帯色したプラスチックパネルの耐用年数に関しても、実質的に近似することを可能にする、請求項12に記載の保護積層システム。
【請求項15】
前記帯色したプラスチックパネルが、約1%未満の初期ヘーズレベル及び約20%超の光透過率を有するウィンドー組立品である、請求項14に記載の保護積層システム。
【請求項16】
前記ヘーズ%の変化が、1000サイクルテーバー試験(CSF10ホイール)に曝露した後、約10%未満である、請求項15に記載のウィンドー組立品。
【請求項17】
前記ヘーズ%の変化が、1000サイクルテーバー試験(CSF10ホイール)に曝露した後、約2%未満である、請求項16に記載のウィンドー組立品。
【請求項18】
前記ウィンドー組立品の光透過率が約70%超である、請求項15に記載のウィンドー組立品。
【請求項19】
ウィンドー組立品の前記光透過率が約90%超である、請求項18に記載のウィンドー組立品。
【請求項20】
前記着色したプラスチックパネルが不透明である、請求項14に記載の保護積層システム。
【請求項21】
GMOD試験において、前記構成要素組立品が破損せずに曝露されるUV放射線量が、バリヤー層無しの構成要素組立品に関して確定したUV放射線曝露限度より約10%超多い、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項22】
QTRAC試験において、前記構成要素組立品が破損せずに曝露されるUV放射線量が、バリヤー層無しの構成要素組立品に関して確定したUV放射線曝露限度より約25%超多い、請求項1に記載のウィンドー組立品。
【請求項23】
QUVA試験において、前記構成要素組立品が破損せずに曝露されることのできるUV放射線量が、バリヤー層無しの構成要素組立品に関して確定したUV放射線曝露限度より約40%超多い、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項24】
自然風化試験において、前記構成要素組立品が破損せずに曝露されることのできるUV放射線量が、バリヤー層無しの構成要素組立品に関して確定したUV放射線曝露限度より約25%超多い、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項25】
前記プラスチックパネルが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、及び、それらの混合物、ブレンド又はコポリマーを含む群から選択されるものである、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項26】
前記保護層が、コーティング、キャストフィルム又は押出しフィルムを含む群から選択されるものである、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項27】
前記保護層が、シリコーンハードコート、ポリウレタンコーティング及びアクリルコーティング又はそれらの組合せの群から選択されるものである、請求項26に記載の保護積層システム。
【請求項28】
前記バリヤー層が、導電性材料、無機誘電材料、有機誘電材料又はそれらの混合物及びブレンドを含む群から選択されるものである、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項29】
前記無機誘電材料が、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、ガラス又はそれらの混合物及びブレンドを含む群から選択されるものである、請求項28に記載の保護積層システム。
【請求項30】
前記有機誘電材料が、ダイヤモンド様炭素又は密なポリマーを含む群から選択されるものである、請求項28に記載の保護積層システム。
【請求項31】
前記密なポリマーが、ウレタン、エポキシド、アクリル酸エステル、シリコーン又はそれらの混合物及びブレンドを含む群から選択されるものである、請求項30に記載の保護積層システム。
【請求項32】
前記添加剤が、分散剤、界面活性剤、可塑剤、流動添加剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収分子、IR吸収顔料又はIR反射顔料を含む群から選択されるものである、請求項1に記載の保護層。
【請求項33】
前記紫外線吸収分子が、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、ポリベンゾイルレゾルシノール誘導体、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレート及びそれらの混合物又はブレンドを含む群から選択されるものである、請求項32に記載の保護層。
【請求項34】
ヒドロキシベンゾフェノン誘導体又はポリベンゾイルレゾルシノール誘導体がシリル化していて、前記添加剤層の構造と共有結合していない、残存UVAが約5%超である、請求項33に記載の保護層。
【請求項35】
前記バリヤー層が、保護積層システムにおいて最外層である、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項36】
前記バリヤー層が、別の保護層とプラスチックパネルの間に位置する、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項37】
前記保護積層システムが2つ以上のバリヤー層を含む、請求項1に記載の保護積層システム。
【請求項38】
構成要素組立品のための保護積層システムであって、
プラスチックパネル、及び
バリヤー層である、少なくとも1つの保護層であって、前記バリヤー層は、前記プラスチックパネルの構造中に、懸濁し、かつ、共有結合していない添加剤の損失を低減するものである、保護層
を含む保護積層システム。
【請求項39】
前記バリヤー層によって、添加剤が損失する減衰率が、バリヤー層が無い場合の添加剤の損失について確立した減衰率の約95%未満に制限される、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項40】
前記バリヤー層によって、添加剤が損失する減衰率が、バリヤー層が無い場合の添加剤の損失について確立した減衰率の約90%未満に制限される、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項41】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約500時間曝露した場合、前記添加剤の損失が約0.8体積%未満に制限される、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項42】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約300時間曝露した場合、前記添加剤の損失が約0.5体積%未満に制限される、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項43】
前記バリヤー層によって、温度約70℃に約100時間曝露した場合、前記添加剤の損失が約0.15体積%未満に制限される、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項44】
前記バリヤー層が、約150ピコメートル超の分子直径を有する添加剤の損失を低減する、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項45】
前記バリヤー層の厚さが、約1ミクロンと100ミクロンの間である、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項46】
前記プラスチックパネルが、着色しているか、帯色しているか、それらの混合である請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項47】
前記バリヤー層が、いずれの着色した又は帯色したプラスチックパネルの耐用年数に関しても、実質的に近似することを可能にする、請求項46に記載の保護積層システム。
【請求項48】
前記帯色したプラスチックパネルが、初期ヘーズレベル1%未満と光透過率約20%超とを有するウィンドー組立品である、請求項47に記載の保護積層システム。
【請求項49】
ヘーズ%の変化が、1000サイクルテーバー試験(CSF10ホイール)に曝露した後で、約10%未満である、請求項48に記載の保護積層システム。
【請求項50】
前記ウィンドー組立品の光透過率が約70%超である、請求項48に記載の保護積層システム。
【請求項51】
前記着色したプラスチックパネルが不透明である、請求項47に記載の保護積層システム。
【請求項52】
GMOD試験において、構成要素組立品が破損せずに曝露されるUV放射線量が、バリヤー層が無い場合のウィンドー組立品について確立したUV放射線曝露限度より約10%超多い請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項53】
QTRAC試験において、構成要素組立品が破損せずに曝露されるUV放射線量が、バリヤー層が無い場合の構成要素組立品について確立したUV放射線曝露限度より約25%超多い、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項54】
QUVA試験において、構成要素組立品が破損せずに曝露されることのできるUV放射線量が、バリヤー層が無い場合の構成要素組立品について確立したUV放射線曝露限度より約40%超多い、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項55】
自然風化試験において、構成要素組立品が破損せずに曝露されることのできるUV放射線量が、バリヤー層が無い場合の構成要素組立品について確立したUV放射線曝露限度より約25%超多い、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項56】
前記プラスチックパネルが、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、及び、それらの混合物、ブレンド又はコポリマーを含む群から選択されるものである、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項57】
前記バリヤー層が、導電性材料、無機誘電材料、有機誘電材料及びそれらの混合物及びブレンドを含む群から選択されるものである、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項58】
前記無機誘電材料が、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、ガラス、又は、それらの混合物及びブレンドを含む群から選択されるものである、請求項38に記載の保護積層システム。
【請求項59】
前記添加剤が、分散剤、界面活性剤、可塑剤、流動添加剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収分子、IR吸収顔料又はIR反射顔料を含む群から選択されるものである、請求項38に記載の保護積層システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−528308(P2007−528308A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502792(P2007−502792)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035703
【国際公開番号】WO2005/095500
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】