説明

不分離・流動化コンクリートの製造方法

【課題】フレッシュコンクリート1の打ち込みから硬化の過程で生じる材料分離及びブリーディング水の発生を大幅に低減すると共に、コンクリート1の流動性を向上させる。
【解決手段】水11、セメント12及び骨材13,14を含むコンクリート材料の練り混ぜ後に、ブリーディング水に相当する量の水11aを拘束する増粘剤15と適量の流動化剤16を添加する。このため、フレッシュコンクリート1がまだ軟らかいうちは、増粘剤15で拘束すべき水11aに相当する分を流動化剤16により分散させ、増粘剤15の増粘効果によって骨材13,14の材料分離抵抗性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,土木や建築工事におけるコンクリートの打設において、材料分離及びブリーディング水の発生を可及的に抑制すると共に流動性を保持又は向上させた不分離・流動化コンクリートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリート工事において、打ち込んだフレッシュコンクリート(まだ固まっていないコンクリート)に、硬化の過程で材料分離を生じると共にブリーディング水を生じる問題が指摘されている。具体的には、コンクリートに埋設された部材(例えば鉄筋や配管など)の周辺にブリーディング水による空洞が生じたり、コンクリート柱などのように高低差が大きな箇所では上部と下部で材料の比重差によってコンクリートの均一性が損なわれ、骨材分布や力学特性の相違を生じたりするおそれがある。また、トンネルの覆工コンクリートでは、コンクリートの打ち込み後にブリーディング水の逸散によって背面空洞が生じるといった不具合が発生することがある。
【0003】
しかも、コンクリート製造工場で提供されるJIS認定のコンクリートであっても、ブリーディングに対する規格は定まっておらず、材料分離やブリーディングを生じることが避けられないのが現状である。
【0004】
図6は、練り混ぜた未硬化のコンクリート(以下、フレッシュコンクリートという)100に、経時的にブリーディング水が生じることを概念的に示す図である。すなわち基本的な配合(プレーン配合)のコンクリート100は、水101と、セメント102、細骨材103及び粗骨材104を練り混ぜたものであり、練り混ぜ直後の状態では、図6(A)に示されるように、要求される流動性(スランプ・フロー)を確保するために、フレッシュコンクリート100中に含まれる水101は不可欠であり、無駄な部分はまったくない。
【0005】
しかしながら、水101によるセメント102の水和反応(凝結)の進行及び硬化の進行に伴って、図6(B)に示されるように、経時的に余剰水101aが生じる。これがブリーディング水と呼ばれ、コンクリート中に空洞を生じる原因となるものである。また、流動性の高いフレッシュコンクリート100では、比重の大きな粗骨材104や細骨材103が沈降することによって、材料分離を生じることもある。
【0006】
このようなブリーディング水の発生や材料分離を防止するための分離抵抗性を向上させるための技術は、従来、フレッシュコンクリート中の単位水量をできる限り小さくすることが配合設計の基本となっている。またこのため、フレッシュコンクリート中のセメントや、添加されるその他の粉体(石灰石微粉末,フライアッシュ,高炉スラグ微粉末,シリカフュームなど)の単位粉体量を確保することが、土木学会などの基準として明確な値が推奨されている。しかし、単位水量の低減は、当然ながら事前の配合設計段階で実施されている事項であるが、単位粉体量、とくにセメント量を増加させることは、設計基準強度を上回る強度の配合を選定することになってしまう場合があり、その他の粉体を用いる場合ではコンクリート工場のサイロ施設の制限により対策が行えないことがあるといった問題があった。
【0007】
また、例えば高流動コンクリート(自己充填コンクリート)や水中不分離性コンクリート、高強度コンクリートなどは、流動性と分離抵抗性の双方を確保した(向上させた)コンクリートであり、したがってブリーディング水の発生や材料分離を抑制することはできるが、これらのコンクリートは用途が特殊であり、コストが著しく高くなる(普通のコンクリートのほぼ倍の価格)といった問題があった。
【0008】
また、フレッシュコンクリートの材料分離を防止するには増粘剤を添加することによってコンクリートの粘性を増加させ分離抵抗性を向上させることが有効であり、そのような技術が、例えば下記の特許文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−95552号公報
【特許文献2】特開2006−176397号公報
【0010】
しかしながら特許文献1にも記載のように、増粘剤は粉末のままでフレッシュコンクリートに添加してもうまく分散することができず、そもそも水を吸収して増粘効果を発揮する性質上、そのまま添加するとスランプの大幅な低下につながり、施工不能なコンクリートとなってしまうおそれがある。しかも、増粘剤は水を吸収して直ちにゲル化するため、フレッシュコンクリートの流動性を長時間にわたり維持することができない。このため、フレッシュコンクリート中へ増粘剤を良好に拡散させるためには、大量の水が必要とされる。したがって、フレッシュコンクリートに増粘剤を添加する場合は、水を加えていないコンクリートを用意し、大量の水で増粘剤を溶かしてこれを添加する方法や、もともと単位水量の大きなフレッシュコンクリートに添加する方法が採用されている。
【0011】
ところが、これらの方法では、単位水量の大きなコンクリートとなってしまうため、気中に曝されるコンクリート構造物では乾燥収縮が大きくなり、ひび割れを生じやすくなる問題がある。しかも、このように単位水量の大きなコンクリートでは一般のコンクリートの単位水量の上限値を大きく逸脱するため、設計上、普通コンクリートとしての扱いができなくなる場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、コンクリートの打ち込みから硬化の過程で生じる材料分離及びブリーディング水の発生を大幅に低減すると共に、コンクリートの流動性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法は、高流動コンクリートや水中不分離性コンクリートの分離抵抗性の制御に使用される増粘剤の経済的で合理的な使用方法を提供するものであって、練り混ぜ後のフレッシュコンクリートに、ブリーディング水に相当する量の水を拘束する増粘剤と適量の流動化剤を添加することを特徴とする。
【0014】
すなわち本発明は、フレッシュコンクリートに含まれる水のうちブリーディング水に相当する量の水を増粘剤で拘束し、コンクリートが未硬化のうちは、増粘剤で拘束すべき水に相当する分を流動化剤により分散させ、増粘剤の増粘効果によって骨材の材料分離抵抗性を向上させるものであるため、コンクリートの本来の配合条件を満たしつつ流動性を確保し、硬化過程でのブリーディング水の発生を大幅に低減すると共にコンクリート中の骨材の分離を有効に防止することができる。
【0015】
また、少量の液状の流動化剤を併用するだけで、増粘剤のダマ(塊)ができにくくなり、しかも水を使用せずに流動化剤によってフレッシュコンクリートに増粘剤を添加・混合するため、増粘剤が水を吸収して急激に固化(ゲル化)することによる増粘作用の発現が抑制されて増粘剤の分散を効率よく行うことができるばかりでなく、単位水量の増大による打設後の乾燥収縮やひび割れを抑制することができる。そして使用する増粘剤や流動化剤は、これらを使用しない場合に発生するブリーディング水と比較して著しく少量であるため、凝結特性や力学特性に及ぼす悪影響もほとんどない。
【0016】
請求項2の発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法は、請求項1に記載の方法において、添加する増粘剤を液状の流動化剤に予め混合することによって、増粘剤の粒子の表面に流動化剤を層状に吸着させておくものである。
【0017】
このようにすれば、増粘剤によって水を拘束する増粘作用が発揮されるタイミングを遅延させ、フレッシュコンクリート中への増粘剤の分散を一層効率よく行うことができる。しかもフレッシュコンクリートの十分な流動性が必要とされるコンクリート打ち込み時には、増粘剤による水の拘束作用が現れないようにすることができるので、流動化剤の使用量を削減することが可能であり、より経済的な添加法が実現される。
【0018】
請求項3の発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法は、請求項1に記載の方法において、流動化剤の添加量を、増粘剤をフレッシュコンクリート中に分散させるのに必要な量よりも多くするものである。
【0019】
このようにすれば、硬化過程でのブリーディング水の発生を大幅に低減すると共にフレッシュコンクリート中の骨材の分離を有効に防止した、流動性の高いコンクリートを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法によれば、コンクリートの打設によってコンクリート構造物を施工する際のコンクリートの材料分離や、ブリーディングに起因する不具合を大幅に低減して、耐久性の高いコンクリート構造物を構築することの可能なコンクリートを提供することができる。また、普通コンクリートの配合条件の範囲を逸脱せずに材料分離抵抗性を向上させ、ブリーディングを低減したコンクリートを低コストで提供することができる。
【0021】
しかも水を使用せずに流動化剤によって増粘剤の分散を行うものであるため、増粘剤が水を吸収して急激に固化(ゲル化)することによる増粘作用の発現が抑制され、フレッシュコンクリート中への増粘剤の分散を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法を示す概念図である。
【図2】本発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法において、流動性を高める場合を示す概念図である。
【図3】増粘剤の粒子がコンクリート中の水と接触することによってゲル化する様子を説明するための概念図である。
【図4】増粘剤の粒子に流動化剤を吸着させておくことによってコンクリート中の水によるゲル化を遅延させる様子を説明するための概念図である。
【図5】増粘剤と流動化剤を予め攪拌・混合した場合としない場合のブリーディング試験結果を比較して示す線図である。
【図6】ブリーディング水が発生する様子を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法を実施するための形態について説明する。
【0024】
まず図1において、(A)は練り混ぜ直後のフレッシュコンクリート1の成分を示すもので、すなわちこのフレッシュコンクリート1は、水11と、セメント12、細骨材13及び粗骨材14を練り混ぜたものであり、十分な流動性を有する。そしてこのフレッシュコンクリート1をそのまま硬化させた場合は、先に説明したように、水11によるセメント12の水和反応(凝結)の進行に伴って、経時的に余剰水(ブリーディング水)を発生することになる。
【0025】
これに対して本発明では、水11と、セメント12、細骨材13及び粗骨材14を練り混ぜてフレッシュコンクリート1とした後で、図1(B)に示されるように、このフレッシュコンクリート1に、ブリーディング水の発生量に相当する量の水11aを拘束するために必要な量の増粘剤15と、この増粘剤15をコンクリート1中に分散させるのに必要な量の流動化剤16を添加・混合する。
【0026】
増粘剤15は、フレッシュコンクリート1の粘性を高めることによって細骨材13及び粗骨材14の材料分離抵抗性を向上させる作用を有するものであって、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、ポリアクリルアミド類、ポリビニルアルコール、多糖類、β-1,3-グルカンのうちいずれかを主成分とするものを好適に採用することができる。
【0027】
また、増粘剤15の添加量は微量で良く、具体的には、0.50 kg/m3未満で十分である。
【0028】
流動化剤16は、フレッシュコンクリート1の流動性を高める作用を有するものであって、高性能AE減水剤など、減水効果を有する混和剤や、リグニンスルホン酸類、メラニンスルホン酸類、ポリカルボン酸類、芳香族スルホン酸類のうちいずれかを主成分とする液状のものを好適に採用することができる。
【0029】
すなわち、増粘剤15は水11を吸収することによってフレッシュコンクリート1の粘性を増加させて材料分離抵抗性を向上させるといった性質上、フレッシュコンクリート1にそのまま添加してもうまく分散せずにダマ(塊)になってしまいやすく、しかもフレッシュコンクリート1のスランプ値を大幅に低下させて施工性を悪化させてしまうが、本発明では流動化剤16を併用して添加することによって、水11による増粘剤15の急激なゲル化を抑制しつつフレッシュコンクリート1中に良好に分散させることができる。
【0030】
このため、セメント12の水和反応により生じるブリーディング水の発生量に相当する量の水11aを増粘剤15で拘束することによって、ブリーディング水の発生を抑制すると共に、細骨材13及び粗骨材14の沈降(材料分離)を抑制することができ、しかも増粘剤15で拘束される水11aに相当する分の流動化剤16によってフレッシュコンクリート1の流動性を確保し、スランプ値の低下を防止してコンクリート打設などの施工性を向上することができる。
【0031】
また、普通の材料配合により練り混ぜたコンクリートの流動性を向上させて流動化コンクリートとする場合や、夏場の施工などにおけるコンクリート1の急激なスランプロスから流動性を回復させたい場合などは、図2に示されるように、このフレッシュコンクリート1に、ブリーディング水の発生量に相当する量の水11aを拘束するために必要な量の増粘剤15と、この増粘剤15をフレッシュコンクリート1中に分散させるのに必要な量よりも多くの流動化剤16を添加・混合する。
【0032】
すなわちこの場合は、新たに水11bを加えることなくフレッシュコンクリート1の流動性を向上させることができるので、単位水量の増加を来たさない。したがって、フレッシュコンクリート1を打設することにより構築されるコンクリート構造物の乾燥収縮やひび割れの発生を抑制することができる。
【0033】
ここで、水11と、セメント12、細骨材13及び粗骨材14などを練り混ぜてフレッシュコンクリート1とした後で、これに添加する増粘剤15と流動化剤16は、予め念入りに混合(プレミックス)しておくことが好ましい。この場合、増粘剤15と流動化剤16は、15秒〜1分程度撹拌すれば十分である。
【0034】
コンクリート製造工場あるいは工事現場に於いて、増粘剤15と流動化剤16を混合した後で、これらをフレッシュコンクリート1に添加する際には、一般的にアジテータ車(生コン車)が使用される。この場合は、アジテータ車内のコンクリートに、増粘剤15と流動化剤16を混合したものを投入すれば良い。この場合に必要な、アジテータ車による練り混ぜ時間は、アジテータ車の高速攪拌による練り混ぜにおいて1〜5分である。
【0035】
すなわち、増粘剤15と流動化剤16を予め混合せずにフレッシュコンクリート1に添加した場合は、図3(A)に示されるように増粘剤15の粒子がコンクリート中の水11と接触することによって、図3(B)に示されるように直ちに水11を吸収して短時間でゲル化するのに対し、図4(A)に示されるように増粘剤15を予め液状の流動化剤16と混合しておけば、図4(B)に示されるように増粘剤15の粒子の表面に流動化剤16が吸着されることによって、流動化剤16の層16aが形成されるので、フレッシュコンクリート1に添加されても、図4(C)に示されるように、増粘剤15がコンクリート中の水11に直ちに接触してゲル化しないようにすることができる。
【0036】
すなわち、増粘剤15と流動化剤16を予め念入りに混合しておけば、増粘剤15による増粘作用の発揮時期を遅延させることができるので、例えばコンクリート1の打ち込み時には増粘剤15による増粘効果が現れないようにして良好な流動性を維持することによって、ポンプによるコンクリート圧送時に輸送管内での閉塞を防止し、あるいは形状の複雑な型枠や配筋の過密な部分への打設の容易化を図ることができ、またこのため、流動化剤16の使用量を削減することも可能となり、材料コストを低減することができる。なお、発明者の試験によれば、増粘剤15による増粘作用の発揮時期をコンクリート1の打ち込み後の約1時間経過後まで遅延可能であることが確認された。
【実施例】
【0037】
以下、本発明に係る不分離・流動化コンクリートの製造方法による効果を検証するために試験室で実施した試験について説明する。
【0038】
まず下記の表1は、比較例1〜3及び実施例1によるコンクリートの配合を示すものであり、表2は、増粘剤以外の配合材料の密度を示すものであり、表3は、比較例1〜3及び実施例1によるフレッシュコンクリートの物性試験結果を示すものであり、表4は比較例1〜3及び実施例1によるフレッシュコンクリートの力学特性の試験結果を示すものである。なお、表1におけるs/aは、骨材(細骨材及び粗骨材)に対する細骨材の体積比である。
【0039】
ここで、比較例1はスランプ12cmを目標として配合設計したプレーン配合の普通コンクリートであり、比較例2、比較例3及び実施例1は、比較例1の品質改善を目的として混和材料を添加したもので、このうち比較例2は増粘剤をコンクリートの練り混ぜ時に添加したもの、比較例3は増粘剤をコンクリートの練り混ぜ後に添加したもの、実施例1は増粘剤と流動化剤をコンクリートの練り混ぜ後に添加したものである。
【0040】
比較例2によれば、コンクリートの練り混ぜ時に添加した増粘剤による水の拘束作用によってスランプが低下することから、所要のスランプ(12cm)を得るために、表1に示されるように、比較例1のプレーン配合と比較して水を5 kg/m3、混和剤を0.15 kg/m3だけ多く使用したものであるが、0.25 kg/m3の増粘剤の添加によって、表3に示されるようにブリーディング水の発生は0となっていることがわかる。このため、比較例3及び実施例1では増粘剤の後添加量を0.1 kg/m3に減らして検討した。比較例3は比較例1と同じ配合のフレッシュコンクリートの練り混ぜ後、15分経過した時点で増粘剤のみを添加したものであるが、ブリーディング水の発生は0に抑えられているものの、比較例1及び比較例2に比べてスランプが大幅に低下してしまうことがわかる。
【0041】
これに対し、実施例1によれば、増粘剤と流動化剤を併せて添加したことで、目標値のスランプ(12cm)を保持しながらもブリーディング水の発生が0に抑えられていることがわかる。また、表4に示されるように、増粘剤及び流動化剤の添加による力学的影響は殆どないことが確認された。
【0042】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0043】
次に図5は、増粘剤と流動化剤を予め攪拌・混合してからフレッシュコンクリートの練り混ぜ後に添加した場合と、攪拌・混合せずに添加した場合のブリーディング試験による結果を、経過時間とブリーディング量の関係で示す線図である。
【0044】
ここで、実施例2は、先に説明した表1の比較例1と同一の配合(プレーン配合)のコンクリートをベースとして、増粘剤0.05 kg/m3を、流動化剤と予め攪拌・混合せずにこの流動化剤と同時に添加したものであり、実施例3は、前記プレーン配合コンクリートをベースとして、増粘剤0.05 kg/m3を予め流動化剤と攪拌・混合しておいてから添加したものである。なお、添加はコンクリートの練り上がり後、10分以内に行った。また増粘剤の添加量(0.05 kg/m3)は、ある程度のブリーディング水が発生することを見込んで(ブリーディング量が0にならないように)設定したものである。
【0045】
この試験結果、実施例2及び実施例3は、増粘剤の添加によって、プレーン配合(比較例1)のコンクリートよりもブリーディング量は減少するが、実施例3によれば、添加する増粘剤を予め流動化剤と混合しておくことによって、ブリーディング量が大幅に増大する時間が実施例2よりも遅くなると共に、ブリーディング量も若干減少していることがわかる。
【0046】
また、下記の表5は、上述の試験結果に基づいて、本発明をトンネル覆工コンクリートのブリーディング対策に適用した例として、そのコンクリートの配合を示すものであり、表6は、この例によるフレッシュコンクリートの物性試験結果を示すものである。なお、表5におけるs/aは、骨材(細骨材及び粗骨材)に対する細骨材の体積比である。
【0047】
その結果、基本配合で混練したフレッシュコンクリートに、増粘剤及び流動化剤を後添加するだけで、表6に示されるようにブリーディングを低減でき、しかも基本配合のコンクリートとほぼ同一のスランプを保持できることが確認された。
【0048】
【表5】

【表6】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、土木工事や建築工事におけるコンクリート工事全般に適用可能であるが、コンクリート部材の打ち込み高さの上下差が比較的大きいことによって材料分離の起こりやすい柱部材や、トンネル覆工コンクリート部材などにおいて特に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 フレッシュコンクリート
11 水
12 セメント
13 細骨材(骨材)
14 粗骨材(骨材)
15 増粘剤
16 流動化剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
練り混ぜ後のフレッシュコンクリートに、ブリーディング水に相当する量の水を拘束する増粘剤と適量の流動化剤を添加することを特徴とする不分離・流動化コンクリートの製造方法。
【請求項2】
添加する増粘剤を液状の流動化剤と予め混合することによって、増粘剤の粒子の表面に流動化剤を層状に吸着させておくことを特徴とする請求項1に記載の不分離・流動化コンクリートの製造方法。
【請求項3】
流動化剤の添加量を、増粘剤をフレッシュコンクリート中に分散させるのに必要な量よりも多くすることを特徴とする請求項1に記載の不分離・流動化コンクリートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20322(P2011−20322A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166572(P2009−166572)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】