説明

不均一系ルテニウム触媒および炭素環式芳香族基の水素化法、殊にビスフェノールAおよびFの核水素化ビスグリシジルエーテルの製造法

ルテニウム塩の溶液による担体材料の1回または複数回の浸漬、乾燥および還元によって製造されうる、非晶質二酸化ケイ素を担体材料として含有する不均一系ルテニウム触媒において、使用される二酸化ケイ素の担体材料が250〜400m/gの範囲における(DIN66131に従う)BET表面積、0.7〜1.1ml/gの範囲における(DIN66134に従う)細孔容積および6〜12nmの範囲における(DIN66134に従う)細孔直径を有することを特徴とする不均一系ルテニウム触媒、および炭素環式芳香族基を相応する炭素環式脂肪族基に水素化するための方法、殊に式(I)[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルを、式(II)の相応する芳香族ビスグリシジルエーテルの核水素化によって製造するための方法であって、その際、上記の不均一系ルテニウム触媒が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム塩の溶液による担体材料の1回または複数回の浸漬、乾燥および還元によって製造されうる、非晶質二酸化ケイ素を担体材料として含有する不均一系ルテニウム触媒、および炭素環式芳香族基を、相応する炭素環式脂肪族基に接触水素化するための方法、殊に式I
【化1】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルを、式II
【化2】

の相応する芳香族ビスグリシジルエーテルの接触核水素化によって製造するための方法に関する。
【0002】
R=Hである化合物IIは、ビス[グリシジルオキシフェニル]メタン(分子量:312g/モル)とも呼ばれる。
【0003】
R=CHである化合物IIは、2,2−ビス[p−グリシジルオキシフェニル]プロパン(分子量:340g/モル)とも呼ばれる。
【0004】
芳香族基を有さない環式脂肪族オキシラン化合物Iの製造は、耐光性および耐候性の塗料系のために特に関心が持たれる。原則的に、そのような化合物は相応する芳香族化合物IIの水素化によって製造されうる。それゆえ化合物Iは"ビスフェノールAおよびFの核水素化ビスグリシジルエーテル"とも呼ばれる。
【0005】
化合物IIは、塗料系の構成成分としてずっと以前から公知である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版 CD−ROM版の中のJ.W.Muskopf他"Epoxy Resins"を参照のこと)。
【0006】
しかしながら問題なのは、接触水素化におけるオキシラン基の高い反応性である。芳香族核の水素化のために通常必要とされる反応条件下で、これらの基は頻繁にアルコールに還元される。この理由から、化合物IIの水素化は可能な限り穏やかな条件下で実施されなければならない。しかしながらこれにより、所望される芳香族化合物の水素化の遅延が必然的に生じる。
【0007】
US−A−3,336,241(Shell Oil Comp.)は、エポキシ基を有する環式脂肪族化合物の製造のために、ロジウム触媒およびルテニウム触媒による相応する芳香族エポキシ化合物の水素化を教示する。触媒の活性は、技術的な方法において触媒が各水素化後に交換されなければならないほど水素化後に強く減少する。その上、そこで記載された触媒の選択性は改善を要する。
【0008】
DE−A−3629632およびDE−A−3919228(双方ともBASF AG)は、酸化ルテニウム水和物によるビス[グリシジルオキシフェニル]メタンのもしくは2,2−ビス[p−グリシジルオキシフェニル]プロパンの芳香族分子部の選択的水素化を教示する。これによって、水素化されるべき芳香族基に関する水素化の選択性は改善される。しかしながらこの教示に従っても、触媒を各水素化後に再生することが推奨され、その際、反応混合物からの触媒の分離が問題であることが明らかになる。
【0009】
EP−A−678512(BASF AG)は、反応バッチに対して水0.2〜10質量%の存在における、ルテニウム触媒、有利には酸化ルテニウム水和物によるオキシラン基を有する芳香族化合物の芳香族分子部の選択的水素化を教示する。たしかに水の存在によって反応混合物からの触媒の分離は軽減されるが、しかしながらこれらの触媒のその他の欠点、例えば改善を要する可使時間はこれによって解消されない。
【0010】
EP−A−921141およびEP−A1−1270633(双方とも三菱化学株式会社)は、特定の表面を有するRh触媒および/またはRu触媒の存在におけるもしくは白金族の金属を含有する触媒の存在における特定のエポキシ化合物中の二重結合の選択的水素化に関する。
【0011】
JP−A−2002226380(大日本)は、担持されたRu触媒および溶媒としてのカルボン酸エステルの存在における芳香族エポキシ化合物の核水素化を開示する。
【0012】
JP−A2−2001261666は(丸善石油化学)は、活性炭または酸化アルミニウム上に担持されたRu触媒の存在における芳香族エポキシド化合物の連続的な核水素化法に関する。
【0013】
Chem.Lett.2002、第1116頁以下におけるY.Hara他の記事は、"Rh/グラファイトによるエポキシ基を含有する芳香族化合物の選択的水素化"に関する。
【0014】
Tetrahedron Lett.36、6、第885頁〜第888頁は、コロイド状Ruの使用下における置換された芳香族化合物の立体選択的な核水素化を記載する。
【0015】
JP10−204002(大日本)は、核水素化法における、特殊な、殊にアルカリ金属でドープされたRu触媒の使用に関する。
【0016】
JP−A−2002249488(三菱)は、その塩素含有率が1500ppmを下回る貴金属担持触媒を使用する水素化法を教示する。
【0017】
WO−A1−03/103830およびWO−A1−04/009526(双方ともOxeno)は、芳香族化合物の水素化、殊に脂環式ポリカルボン酸またはそのエステルの、相応する芳香族ポリカルボン酸またはそのエステルの核水素化による製造、ならびにこのために適している触媒に関する。
【0018】
従来技術の方法が有する欠点は、使用される触媒がわずかな可使時間しか有さずかつ一般に各水素化後に費用をかけて再生されなければならないという点である。また触媒の活性も改善される必要があり、そのため選択的水素化のために必要とされる反応条件下では、使用される触媒に対してわずかな空時収率しか得られない。しかしながら、これはルテニウムひいては触媒の高いコストに鑑みて経済的に正しいとは認められない。
【0019】
特にEP−A2−814098(BASF AG)は、担持された特別なRu触媒の存在における有機化合物の核水素化法に関する。
【0020】
WO−A2−02/100538(BASF AG)は、エポキシド基を持つ側鎖を有する特定の脂環式化合物を、ルテニウム触媒による少なくとも1つの炭素環式の芳香族基と少なくとも1つのエポキシド基を持つ少なくとも1つの側鎖とを有する相応する化合物の不均一系接触水素化によって製造するための方法を記載する。
ルテニウム触媒は、
i)低分子量のルテニウム化合物のハロゲン不含水溶液による、非晶質二酸化ケイ素をベースとする担体材料の1回または複数回の処理および処理された担体材料の200℃を下回る温度での引き続く乾燥、
ii)100〜350℃の範囲における温度での、i)の中で得られた固体の水素による還元、
によって得られ、その際、工程i)に続けてすぐに工程ii)が実施される。
WO−A2−02/100538は、使用される化合物が"モノマー化合物のみならずまたオリゴマー化合物またはポリマー化合物"であってもよいことを教示する(第9頁上部)。
【0021】
それぞれ2004年12月18日付けの比較的前の特許出願PCT/EP/04/014454およびPCT/EP/04/014455(双方ともBASF AG)双方は、特殊なRu触媒および水素化法におけるそれらの使用に関する。
【0022】
本発明が基礎とする課題は、使用される触媒に対して高い収率および空時収率、[生成物量/(触媒体積・時間)](kg/(l・h))、[生成物量/(反応器体積・時間)](kg/(l反応器・h))を達成することができ、使用される触媒を後処理することなく何回も水素化のために使用することができ、かつ使用される触媒が安定した連続的な核水素化を可能にする、芳香族基を相応する"核水素化"基に水素化するための改善された選択的方法を供給することにあった。殊に、WO−A2−02/100538の方法と比べてより高い触媒可使時間が達成されるべきである。
【0023】
それに従って、ルテニウム塩の溶液による担体材料の1回または複数回の浸漬、乾燥および還元によって製造されうる、非晶質二酸化ケイ素を担体材料として含有する不均一系ルテニウム触媒において、使用される二酸化ケイ素の担体材料が250〜400m/gの範囲における(DIN66131に従う)BET表面積、0.7〜1.1ml/gの範囲における(DIN66134に従う)細孔容積および6〜12nmの範囲における(DIN66134に従う)細孔直径を有することを特徴とする不均一系ルテニウム触媒、および
炭素環式芳香族基を、相応する炭素環式脂肪族基に水素化するための方法、殊に式I
【化3】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルを、式II
【化4】

の相応する芳香族ビスグリシジルエーテルの核水素化によって製造するための方法において、上記の不均一系ルテニウム触媒を使用することを特徴とする、炭素環式芳香族基を水素化するための方法が見つかった。
【0024】
本発明による触媒の本質的な構成成分は、非晶質二酸化ケイ素をベースとする担体材料である。この文脈中で"非晶質"という概念は、二酸化ケイ素の結晶相の割合が担体材料の10質量%未満となることと理解される。そうはいっても触媒の製造に使用される担体材料は、細孔の規則的な配置によって担体材料中に形成される超構造を有してよい。(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 第6版 CD−ROM版の中のO.W.Floerke、"Silica"を参照のこと)。
【0025】
担体材料として、少なくとも90質量%が二酸化ケイ素からなる非晶質二酸化ケイ素型が考慮に入れられ、その際、担体材料の残りの10質量%、有利には5質量%を上回らない部分は、他の酸化物材料、例えばMgO、CaO、TiO、ZrO、Feおよび/またはアルカリ金属酸化物であってもよい。
【0026】
本発明の有利な一実施態様において、担体材料はハロゲン不含、殊に塩素不含であり、すなわち担体材料中のハロゲンの含有量は500質量ppm未満、例えば0〜400質量ppmの範囲にある。
【0027】
有利なのは、290〜370m/g、とりわけ300〜360m/g、とりわけ310〜355m/gの範囲における比表面積(DIN66131に従うBET表面積)を有する担体材料である。
【0028】
二酸化ケイ素をベースとする適切な非晶質担体材料は商業的に得られる:
とりわけ有利なのは、Engelhard社のSiliperl AF 125(Perlkat 97)である。
【0029】
本発明の形態に応じて担体材料は様々の形状を有してよい。方法が懸濁法として形態を整えられる場合には、通常、本発明による触媒の製造のために担体材料は、微粒状の粉末の形において使用される。有利には、粉末は1〜200μm、殊に1〜100μmの範囲における粒度を有する。通常、触媒固定床において触媒が使用される場合には、例えば押出、圧出またはタブレット化によって得られかつ、例えば球、タブレット、シリンダー、ストランド(Straengen)、リングもしくは中空シリンダー、星形等の形を有してよい担体材料からの成形体が使用される。通常、これらの成形体の寸法は1mm〜25mmの範囲において変動する。頻繁に、1.5〜5mmのストランド直径および2〜25mmのストランド長さを有する触媒ストランドが使用される。
【0030】
とりわけ有利には、触媒製造のために二酸化ケイ素の担体材料は、球状の成形体の形において使用される。
【0031】
球状の成形体は、有利には1〜6mm、とりわけ2〜5.5mm、殊に3〜5mmの範囲における直径を有する。
【0032】
成形体、殊に球状の成形体は、有利には、>60ニュートン(N)、とりわけ>70N、さらにとりわけ>80N、さらにとりわけ100N、例えば90〜150Nの範囲における(側面)圧縮強度を有する。
【0033】
(側面)圧縮強度を測定するために、破裂が生じるまでそのつど力を増大しながら、例えば触媒タブレットを2枚の平行板の間で柱面(Mantelseite)に、または例えば触媒球を2枚の平行板の間で負荷をかけた。破裂に際して記録される力は(側面)圧縮強度である。測定は、固定されているターンテーブルと、固定されているターンテーブルに成形体を押しあてる、自由に移動する垂直の押型(Stempel)とを有するZwick社(Ulm)の試験装置で行った。自由に移動する押型は、力を記録するロードセル(Druckmessdose)と結び付けられていた。装置は、測定値を記録しかつ評価するコンピュータによって制御した。良く混合された触媒試料から25個の欠陥のない(すなわち亀裂がなくまた場合により破損した端部のない)成形体を取り出し、それらの(側面)圧縮強度を算出しかつ引き続き平均値を出した。
【0034】
とりわけ有利には、触媒製造に使用される二酸化ケイ素の担体材料は0.75〜1.0ml/g、とりわけ0.80〜0.96ml/g、例えば0.85〜0.95ml/gの範囲における(DIN66134に従う)細孔容積を有する。
【0035】
さらに、触媒製造に使用される二酸化ケイ素の担体材料は、有利には8〜10nmの範囲における、例えば8.2〜9.8nmの範囲における、殊に8.3〜9.0nmの範囲における(DIN66134に従う)細孔直径を有する。
【0036】
有利には、触媒中のルテニウムの含有率は、そのつど二酸化ケイ素の担体材料の質量に対して0.5〜4質量%の範囲および殊に1〜3質量%の範囲内で、例えば1.5〜2.5質量%であり、かつ元素ルテニウムとして計算される(測定方法に関しては以下を参照のこと)。
【0037】
とりわけ有利には、本発明による触媒はCu、Co、Zn、Rh、Pd、Os、Ir、Hg、Cd、Pb、Biおよび/またはPtを含有する。
【0038】
本発明によるルテニウム触媒の製造は、所望されたルテニウムの量が担体材料に吸収されるように、まず選択された担体材料を、以下で(ルテニウム)前駆体と呼ばれる低分子量のルテニウム化合物の溶液で処理することによって行われる。有利な溶媒は、ここでは氷酢酸、水またはその混合物である。この工程は以下で浸漬とも呼ばれる。引き続き、そのように処理された担体は、有利には定められた温度上限値の維持下で乾燥される。次いで場合により、そのように得られた固体は新たにルテニウム前駆体の水溶液で処理されかつ新たに乾燥される。このプロセスは、担体材料に吸収されるルテニウム化合物の量が、触媒中で所望されるルテニウム含有量に相当するまで何度も繰り返される。
【0039】
担体材料の処理もしくは浸漬は様々の方法で行われ、かつ公知のように担体材料の形状に従う。例えば、担体材料を前駆体溶液で噴霧するかまたは洗浄するかまたは担体材料を前駆体溶液中に懸濁してよい。例えば、担体材料をルテニウム前駆体の水溶液中に懸濁しかつ一定の時間後に上澄み水溶液から濾過分離してよい。次いで、吸収された液体量および溶液のルテニウム濃度によって触媒のルテニウム含有量が容易に制御されうる。例えば担体材料の浸漬はまた、担体材料が吸収しうる最大液体量に相当する定義された量のルテニウム前駆体の溶液で担体を処理することによっても行われうる。例えばこの目的のために、必要とされる液体量で担体材料を噴霧してもよい。これに関する適切な装置は、液体と固体を混合するために通常使用される装置(Vauck/Mueller、Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik、第10版、Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie、1994、第405頁以下参照のこと)、例えばタンブル乾燥機、浸漬ドラム、ドラムミキサー、ブレードミキサー等である。通常、モノリシック担体はルテニウム前駆体の水溶液で洗浄される。
【0040】
浸漬に使用される溶液は、有利にはハロゲンに乏しく、殊に塩素に乏しく、すなわちそれはハロゲンを含有しないか、または溶液の全質量に対して500質量ppm未満、殊に100質量ppm未満、例えば0〜<80質量ppmのハロゲンを有する。それゆえルテニウム前駆体として、RuClの他に、有利には化学的に結合したハロゲンを含有せずかつ溶媒に十分可溶であるルテニウム化合物、殊にルテニウム(III)塩またはルテニウム(IV)塩が使用される。これには例えば、硝酸ニトロシルルテニウム(III)(Ru(NO)(NO)、酢酸ルテニウム(III)ならびにルテニウム酸(IV)アルカリ金属、例えばルテニウム酸(IV)ナトリウムおよびルテニウム酸(IV)カリウムが含まれる。
【0041】
極めて有利なRu前駆体は酢酸Ru(III)である。通常このRu化合物は酢酸または氷酢酸中に溶解するが、それはまた固体としても使用されうる。本発明による触媒は、水を使用せずに製造されうる。
【0042】
多数のルテニウム前駆体は商業的に溶液として提供されるが、対応する固体もまた使用されうる。これらの前駆体は、提供される溶媒として、例えば硝酸、酢酸、塩酸と同じ成分で、または有利には水で溶解または希釈されうる。水もしくは溶媒と、50体積%までの水もしくは溶媒と混合可能な1つ以上の有機溶媒との混合物、例えばC〜C−アルカノール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノールとの混合物も使用されうる。全ての混合物は、溶液または相が存在するように選択されるべきである。当然のことながら、溶液中のルテニウム前駆体の濃度は施与されるべきルテニウム前駆体の量および溶液に関する担体材料の吸収容量に従いかつ、有利には0.1〜20質量%の範囲にある。
【0043】
乾燥は固体乾燥の通常の方法に従って、下で挙げられた温度上限値の維持下で行われる。乾燥温度の上限値の維持は、品質のために、すなわち触媒の活性のために重要である。下で定められた乾燥温度を超過すると活性は明らかに失われる。従来技術の中で提案される、比較的高い温度での、例えば300℃またはそれどころか400℃を上回っての担体のか焼は余計であるばかりでなくまた触媒の活性にマイナスに作用する。十分な乾燥速度を達成するために、有利には高められた温度にて、有利には≦180℃にて、とりわけ≦160℃にて、および少なくとも40℃にて、殊に少なくとも70℃にて、特に少なくとも100℃にて、極めて有利には少なくとも140℃にて乾燥が行われる。
【0044】
通常、ルテニウム前駆体で浸漬された固体の乾燥は標準圧力下で行われ、その際、乾燥を促進するために減少された圧力も適用されうる。頻繁に、乾燥を促進するためにガス流、例えば空気または窒素が乾燥されるべき材料上もしくは材料に導通される。
【0045】
当然のことながら、乾燥時間は所望された乾燥の度合いおよび乾燥温度に依存しかつ、有利には1h〜30hの範囲に、有利には2〜10hの範囲にある。
【0046】
有利には、処理された担体材料の乾燥は、水もしくは揮発性溶媒物質の含有率が引き続く還元前に固体の全質量に対して5質量%未満、殊に2質量%を上回らない点まで行われる。この際、定められた質量割合は、160℃の温度、1barの圧力および10分の時間にて測定された固体の質量損失に対するものである。このようにして、本発明により使用される触媒の活性はさらに増大しうる。
【0047】
有利には、乾燥は前駆体溶液で処理された固体を動かしながら、例えば回転管炉または回転球式炉(Drehkugelofen)中での固体の乾燥によって行われる。このようにして、本発明による触媒の活性はさらに増大しうる。
【0048】
乾燥後に得られる固体のその触媒活性形への転化は、それ自体公知の方法において、上で定められた温度にて固体を還元することによって行われる。
【0049】
この目的のために、担体材料は上で定められた温度にて水または水素と不活性ガスとからなる混合物と接触させられる。水素絶対圧は還元の結果に関してあまり重要ではなくかつ、例えば0.2bar〜1.5barの範囲において変化する。頻繁に、触媒材料の水素化は水素標準圧力にて水素流中で行われる。有利には、還元は固体を動かしながら、例えば回転管炉または回転球式炉中での固体の還元によって行われる。このようにして、本発明による触媒の活性はさらに増大しうる。
【0050】
還元はまた、有機還元試薬、例えばヒドラジン、ホルムアルデヒド、ホルメートまたはアセテートを用いて行われうる。
【0051】
還元に引き続き、取扱適性を改善するために触媒は、公知の方法において、例えば触媒を短期間で酸素含有ガス、例えば空気により、有利にはしかしながら酸素1〜10体積%を含有する不活性ガス混合物で処理することによって不動態化されうる。COまたはCO/Oの混合物もここで適用されうる。
【0052】
活性触媒は、不活性の有機溶媒、例えばエチレングリコール下でも貯蔵されうる。
【0053】
製造に基づいてルテニウムは本発明による触媒中で金属ルテニウムとして存在する。さらに、電子顕微鏡試験(SEMまたはTEM)によりシェル型触媒が存在することが明らかになった:触媒微粒子(Katalysatorkorns)中のルテニウム濃度は外側から内側に向かって減少し、その際、微粒子表面にはルテニウム層が存在する。有利なケースにおいては、SAD(制限視野回折)およびXRD(X線回折)によって結晶ルテニウムがシェル内で検出されうる。
【0054】
触媒シェル内で、Ruは殊にアグリゲート−アグロメレートを形成して存在する;触媒コア内ではルテニウム濃度は最も低い(コア内ではルテニウム粒子の大きさは、例えば1〜2nmの範囲にある)。
【0055】
とりわけ有利な一変法において、ルテニウムはシェル内およびコア内で高分散して存在する。
【0056】
触媒中のルテニウムの分散度は平均して、有利には30〜60%の範囲に、殊に40〜50%の範囲にある(DIN66136−3に従うCO吸着によりそのつど測定した、以下を参照のこと)。
【0057】
製造に際してハロゲン不含の、殊に塩素不含のルテニウム前駆体および溶媒が使用されることによって、その上、本発明による触媒のハロゲン化物含有率、殊に塩化物含有率は触媒の全質量に対して0.05質量%(0〜<500質量ppm、例えば0〜400質量ppmの範囲にある)を下回る。
塩化物含有率は、例えば下で記載された方法、イオンクロマトグラフィーによって測定される。
【0058】
この文献中において全てのppm記載は、他に記載がない限り質量割合として理解されるべきである(質量ppm)。
【0059】
有利には、担体材料は、Alとして計算された1質量%を上回らないおよび殊に0.5質量%上回らないおよび殊に<500質量ppmの酸化アルミニウムを含有する。
【0060】
シリカの縮合はアルミニウムおよび鉄によっても影響を受けるので、Al(III)およびFe(IIおよび/またはIII)の濃度は合計で、有利には300ppmより小さく、とりわけ有利には200ppmより小さくおよび、例えば0〜180ppmの範囲にある。
【0061】
アルカリ金属酸化物の割合は、有利には担体材料の製造から結果として生じかつ2質量%まででありうる。頻繁にそれは1質量%未満である。アルカリ金属酸化物不含の担体も適している(0〜<0.1質量%)。MgO、CaO、TiOもしくはZrOの割合は担体材料の10質量%までを構成してよくかつ、有利には5質量%を上回らない。しかしまた、検出可能なこれらの金属酸化物の量を含有しない(0〜<0.1質量%)担体材料も適している。
【0062】
Al(III)およびFe(IIおよび/またはIII)はシリカに組み入れられて酸性中心を生み出しうるので、有利にはアルカリ土類金属カチオン(M2+、M=Be、Mg、Ca、Sr、Ba)による電荷補償が担体中に存在することが有利である。これは、M(II)対(Al(III)+Fe(IIおよび/またはIII))の質量比が0.5より、有利には>1、とりわけ有利には3より大きいことを意味する。
【0063】
元素記号の後ろの括弧内のローマ数字は元素の酸化状態を意味する。
【0064】
本発明によるRu触媒は、還元後にとりわけ有利には以下の特徴によっても特徴付けられる:
吸着:
BET(DIN66131):250〜400m/g、とりわけ290〜380m/g、極めて有利には310〜375m/g、さらにとりわけ320〜370m/g、殊に340〜360m/g、例えば344〜357m/gの範囲内、
細孔容積(DIN66134):0.75〜0.90ml/g、殊に0.80〜0.89ml/g、例えば0.81〜0.88ml/gまたは0.85〜0.87ml/gの範囲内、
細孔直径(4V/A)(DIN66134):7.5〜10nm、殊に7.8〜9.5nm、例えば8.0〜9.0nm、8.1〜8.7nmまたは8.2〜8.5nm。
【0065】
Hg細孔分布測定(DIN66133):
細孔容積:0.70〜0.91ml/g、殊に0.75〜0.90ml/g、例えば0.76〜0.89ml/g、0.80〜0.88ml/gまたは0.82〜0.87ml/gの範囲内。
細孔直径(4V/A):8〜11nm、殊に9〜10.5nm、例えば9.3〜10.0nm。
【0066】
水素化されるべき有機化合物中の炭素環式芳香族基は、殊に置換基を有しうるベンゼン環である。
【0067】
本発明による方法により飽和炭素環式6員環を有する相応する化合物に水素化されうる、ベンゼン環を有する化合物のための例は以下の表の中でリストアップされている。
【0068】
【表1】

【0069】
本発明による水素化法のための出発化合物として、例えば以下の物質クラスおよび原料も挙げることができる:
−ビスフェノールAもしくはビスフェノールFまたは比較可能なアルキレン−またはシクロアルキレン架橋ビスフェノール化合物とエピクロロヒドリンとからなる反応生成物。ビスフェノールAもしくはビスフェノールFまたは比較可能な化合物は、エピクロロヒドリンおよび塩基と公知の方法において(例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、VCH(1987)、第A9巻、第547頁)一般式IIa
【化5】

[式中、Rは水素またはC〜C−アルキル基、例えばメチルであり、または炭素原子に結合した2つの基RはC〜C−アルキレン基を形成しかつmは0〜40である]のグリシジルエーテルに反応させることができる。
【0070】
−フェノール−およびクレゾールエポキシノボラックIIb
一般式IIbのノボラックは、フェノールもしくはクレゾールの酸触媒反応および相応するグリシジルエーテルへの反応生成物の反応によって得られる(例えばビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]メタンを参照のこと):
【化6】

[式中、Rは水素またはメチル基でありかつnは0〜40である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、CD−ROM版の中のJ.W.Muskopf他"Epoxy Resins2.2.2"を参照のこと)]。
【0071】
−フェノールとアルデヒドとからの反応生成物のグリシジルエーテル:
フェノールおよびアルデヒドの酸触媒反応およびエピクロロヒドリンとの引き続く反応によってグリシジルエーテルが得られ、例えばフェノールとグリオキサールとからの1,1,2,2−テトラキス−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]エタンが得られる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、CD−ROM版の中のJ.W.Muskopf他"Epoxy Resins2.2.3"を参照のこと)。
【0072】
−フェノール−炭化水素ノボラック、例えば2,5−ビス[(グリシジルオキシ)フェニル]オクタヒドロ−4,7−メタノ−5H−インデンのグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー。
【0073】
−芳香族グリシジルアミン:
例えば、p−アミノフェノール、1−(グリシジルオキシ)−4−[N,N−ビス(グリシジル)アミノ]ベンゼンのトリグリシジル化合物、およびメチレンジアミンのテトラグリシジル化合物、ビス{4−[N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アミノ]フェニル}メタンを挙げることができる。
【0074】
さらに個別的に以下のものを挙げることができる:トリス[4−(グリシジルオキシ)フェニル]メタン異性体および芳香モノ−、ジ−およびトリカルボン酸のグリシジルエステル、例えばフタル酸−およびイソフタル酸ジグリシジルエステル。
【0075】
本発明による方法のとりわけ有利な一形態において、一般式II
【化7】

[式中、RはCHまたはHである]の芳香族ビスグリシジルエーテルが核水素化される。
【0076】
一般式IIの有利に使用される芳香族ビスグリシジルエーテルは、≦1000質量ppm、とりわけ0〜<1000ppm、例えば100〜<950質量ppmの範囲における含有量の塩化物および/または有機的に結合された塩素を有する。
塩化物および/または有機的に結合された塩素の含有量は、例えば下で記載された方法、イオンクロマトグラフィーもしくはクーロメトリーによって測定される。
【0077】
この本発明による変法の特別な一実施態様に従って、意想外にも、使用される式IIの芳香族ビスグリシジルエーテルが10質量%未満の、殊に5質量%未満の、とりわけ1.5質量%未満の、極めて有利には0.5質量%未満の、例えば0〜<0.4質量%の範囲における相応するオリゴマービスグリシジルエーテルの含有率を有する場合に、さらに有利であることが明らかになることが認められた。
【0078】
この本発明による変法のこの特別な実施態様に従って、供給物中のオリゴマー含有率が触媒の可使時間に決定的な影響を持つこと、すなわち変換が比較的長く高い水準であり続けることがわかった。例えば蒸留されたひいてはオリゴマーに乏しいビスグリシジルエーテルが使用される場合、相応する市販の標準品(例えば:Vantico社のARALDIT GY 240BD)と比べて延びた触媒失活が観察される。
【0079】
使用される式IIの芳香族ビスグリシジルエーテルのオリゴマー含有率は、有利にはGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフィー)によってかまたは蒸発残留物の測定によって確かめられる。
蒸発残留物は、そのつど3mbarにて芳香族ビスグリシジルエーテルを2時間のあいだ200度にかつさらに2時間のあいだ300度に加熱することによって測定される。
【0080】
オリゴマー含有率を確かめるためのさらに他のそのつどの条件については以下を参照のこと。
【0081】
相応するオリゴマービスグリシジルエーテルは、一般的にGPC測定によって決定された380〜1500g/モルの範囲における分子量を有しかつ以下の構造(例えばJournal of Chromatography 238(1982)、第385頁〜第398頁、第387頁を参照のこと):
【化8】

[式中、R=CHまたはH、n=1,2,3または4]を有する。
【0082】
相応するオリゴマービスグリシジルエーテルは、R=Hの場合、568〜1338g/モル、殊に568〜812g/モルの範囲における分子量を、R=CHの場合、624〜1478g/モル、殊に624〜908g/モルの範囲における分子量を有する。
【0083】
オリゴマーの分離は、例えばクロマトグラフィーによってかもしくは比較的大規模に有利には蒸留により、例えば実験室規模でバッチ蒸留においてまたは工業規模で薄膜蒸発器において、有利には短行程蒸留において、そのつど真空下で成功する。
オリゴマー分離のためにバッチ蒸留が行われる場合、例えば2mbarの圧力の場合、浴温度は約260℃でありかつ塔頂部での移行時の温度(Uebergangstemperatur)は約229℃である。
オリゴマー分離は同様に穏やかな条件下でも実施されえ、例えば1〜10−3mbarの範囲における減少された圧力下で実施される。0.1mbarの作業圧力の場合、その際、オリゴマーを含有する出発原料(Einsatzstoff)の沸騰温度は、出発原料ひいてはまた熱的な生成物負荷に応じて20〜30℃低くなる。熱的な負荷を最小化するために蒸留は、有利には連続的な運転方式で薄膜蒸発においてまたはとりわけ有利には短行程蒸発において実施される。
【0084】
本発明による方法において、出発物質(Edukt)、例えば、化合物IIの水素化は、有利には液相において行われる。水素化は溶媒不含でまたは有機溶媒中で行ってよい。化合物IIの部分的に高い粘度に基づき、これは有利には溶液もしくは混合物として有機溶媒中で使用される。
【0085】
有機溶媒として原則的に、出発物質、例えば化合物IIを可能な限り完全に溶解することができまたはこれと完全に混ざりかつ水素化条件下で不活性であるもの、すなわち水素化されないものが考慮に入れられる。
【0086】
適切な溶媒のための例は、環式および非環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジメチルジエチレングリコール、脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−またはイソプロパノール、n−、2−、イソ−またはtert−ブタノール、カルボン酸エステル、例えば酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸プロピルエステルまたは酢酸ブチルエステル、ならびに脂肪族エーテルアルコール、例えばメトキシプロパノールである。
【0087】
水素化されるべき液相中における出発物質の、例えば化合物IIの濃度は、原則的に自由に選択されかつ溶液/混合物の全質量に対して頻繁に20〜95質量%の範囲にある。反応条件下で十分に流動性のある出発物質の場合、水素化は溶媒の非存在下でも実施されうる。
【0088】
水不含の条件下で反応(水素化)を実施する他に、反応(水素化)を水の存在下で実施することが多くのケースにおいて有利であることがわかった。水の割合は、水素化されるべき混合物に対して10質量%まで、例えば0.1〜10質量%、有利には0.2〜7質量%および殊に0.5〜5質量%であってよい。
【0089】
通常、本来の水素化は、冒頭で挙げられた従来技術に記載される公知の水素化法と類似した形で行われる。このために出発物質、例えば化合物IIは、有利には液相として水素の存在下において触媒と接触させられる。その際、触媒はまた液相中に懸濁されえ(懸濁運転方式)、または液相は触媒流動床に導通される(流動床運転方式)かまたは触媒固定床に導通される(固定床運転方式)。水素化は連続的にも非連続的にも形態を整えられうる。有利には、本発明による方法はトリクルベッド反応器中で固定床運転方式に従って実施される。その際、水素は、水素化されるべき出発物質の溶液と直流の形で導通されうるのと同様また対流の形で触媒上に導通されうる。
【0090】
懸濁運転方式に従って水素化を実施するための適切な装置と同様また触媒流動床および触媒固定床にて水素化するための適切な装置も従来技術から、例えばUllmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie、第4版、第13巻、第135頁以下から、ならびにUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、CD−ROM版の中のP.N,Rylander、"Hydrogenation and Dehydrogenation"から公知である。
【0091】
本発明による水素化は、水素標準圧力と同様また高められた水素圧でも、例えば少なくとも1.1bar、有利には少なくとも10barの水素絶対圧でも実施されうる。一般的に、水素絶対圧は325barおよび、有利には300barの値を超過しない。とりわけ有利には、水素絶対圧は20〜300barの範囲に、例えば50〜280barの範囲にある。
【0092】
反応温度は、本発明による方法において、一般的に少なくとも30℃でありかつ頻繁に200℃の値を超過しない。殊に、水素化法は40〜150℃の範囲における、およびとりわけ有利には45〜80℃の範囲における温度にて実施される。
【0093】
反応ガスとして、水素の他にまた、一酸化炭素または硫黄含有ガスのような触媒毒を含有しない水素含有ガス、例えば水素と不活性ガス、例えば窒素または、通常さらに揮発性炭化水素を含有する改質器の排ガスとの混合物も考慮に入れられる。有利には、純粋な水素(純度≧99.9体積%、とりわけ≧99.95体積%、殊に≧99.99体積%)が使用される。
【0094】
高い触媒活性に基づき、使用される出発物質に対して比較的少ない量の触媒が必要とされる。そうして非連続的な懸濁運転方式の場合、有利には出発物質1モルに対して5モル%未満、例えば0.2モル%〜2モル%のルテニウムが使用される。水素化法の連続的な形態が整えられる場合、通常、水素化されるべき出発物質は0.05〜3kg/(l(触媒)・h)、殊に0.15〜2kg/(l(触媒)・h)の量において触媒上に導通される。
【0095】
当然のことながらこの方法において使用される触媒は、活性が弱まって行く場合、ルテニウム触媒のような貴金属触媒のために通例の、当業者に公知の方法に従って再生されうる。ここで、例えばBE882279の中で記載される酸素による触媒の処理、US−A−4,072,628の中で記載される希釈されたハロゲン不含の鉱酸による処理、または、例えば0.1〜35質量%の含有率を有する水溶液の形における過酸化水素による処理、または、有利にはハロゲン不含の溶液の形における他の酸化物質による処理を挙げることができる。通常、触媒は再活性化後および新たな使用前に溶媒、例えば水で洗浄される。
【0096】
本発明による水素化法は、有利には使用される式II
【化9】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルの芳香族核の完全な水素化によって特徴付けられ、その際、水素化度は>98%、極めて有利には98.5%、例えば99.0%、殊に>99.5%であり、例えば>99.8〜100%の範囲にある。
【0097】
水素化度(Q)は、
Q(%)=([生成物中における脂環式C6員環の数]/[出発物質中における芳香族C6員環の数])・100
に従って定義される。
【0098】
脂環式および芳香族C6員環の比、例えばモル比は、有利にはH−NMR分光法によって算出されうる(芳香族および相応して脂環式Hシグナルの積分)。
【0099】
式I
【化10】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルは、有利には本発明による水素化法によって製造されうる。
【0100】
有利には、式Iのビスグリシジルエーテルは、10質量%未満、とりわけ5質量%未満、殊に1.5質量%未満、極めて有利には0.5質量%未満、例えば0〜<0.4質量%の含有率の、式
【化11】

[式中、RはCHまたはHである](n=1,2,3または4)の相応する核水素化オリゴマービスグリシジルエーテルを有する。
【0101】
有利には、核水素化オリゴマービスグリシジルエーテルの含有率は、そのつど3mbarにて芳香族ビスグリシジルエーテルを2時間のあいだ200℃にかつさらに2時間のあいだ300度に加熱することによってかまたはGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって決定される。
【0102】
オリゴマー含有率を確かめるためのさらに他のそのつどの条件については以下を参照のこと。
【0103】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利にはDIN51408−2に従って測定された、≦1000質量ppm、殊に0〜<1000質量ppmの範囲における、例えば100〜<950質量ppmの範囲における全塩素含有量を有する。
【0104】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利には誘導結合プラズマ(ICP−MS)を用いた質量分析により測定された、0.3質量ppmより小さい、殊に0.2質量ppmより小さい、極めて有利には0.15質量ppmより小さい、例えば0〜0.1質量ppmの範囲におけるルテニウム含有量を有する。
【0105】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利にはDIN EN ISO6271−2に従って測定された、30より小さい、とりわけ25より小さい、例えば1〜24の範囲における白金−コバルト−色数(APHA−色数)を有する。
【0106】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利には規格ASTM−D−1652−88に従って測定された、170〜240g/当量の範囲における、とりわけ175〜230g/当量の範囲における、極めて有利には180〜225g/当量の範囲におけるエポキシ当量を有する。
【0107】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利にはDIN53188に従って測定された、500質量ppmより小さい、とりわけ400質量ppmより小さい、極めて有利には350質量ppmより小さい、例えば0〜300質量ppmの範囲における加水分解可能な塩素の割合を有する。
【0108】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利にはDIN51562 第1部に従って測定された、そのつど25℃にて900mm/sより小さい、とりわけ850mm/sより小さい、例えば400〜800mm/sの範囲における動粘度を有する。
【0109】
式Iのビスグリシジルエーテルは、有利には44〜63%:34〜53%:3〜22%の範囲におけるcis/cis:cis/trans:trans/trans異性体比を有する。
とりわけ有利には、cis/cis:cis/trans:trans/trans異性体比は46〜60%:35〜50%:4〜18%の範囲にある。
極めて有利には、cis/cis:cis/trans:trans/trans異性体比は48〜57%:38〜47%:5〜14%の範囲にある。
殊に、cis/cis:cis/trans:trans/trans異性体比は51〜56%:39〜44%:5〜10%の範囲にある。
【0110】
式Iのビスグリシジルエーテルは、とりわけ有利には使用される式II
【化12】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルの芳香族核の完全な水素化によって特徴付けられ、その際、水素化度は>98%、極めて有利には98.5%、例えば99.0%、殊に>99.5%であり、例えば>99.8〜100%の範囲にある。
【0111】

本発明による触媒の製造
9.7ml/担体10gの水吸収量を有するSiliperl AF 125(球3〜5mm、Engelhard社、ロット2960211:(側面)圧縮強度:76N(測定方法は上記を参照のこと)、BET:353m/g(DIN66131に従う)、細孔容積:0.95ml/gおよび平均細孔直径:8.6nm(いずれもDIN66134に従う))100gを容器/シャーレに装入した。酢酸ルテニウム溶液(Umicore社、w(Ru)=4.34%、ロット番号0255)51.83gを、95mlまでVE水(完全脱塩水)で満たした。この浸漬溶液を担体上に分散しかつ一晩中120℃にて乾燥した(乾燥キャビネット(Trockenschrank)、空気下)。乾燥した生成物を2時間のあいだ300℃にて水素下で還元した(90分後に25℃〜300℃、N60l/h、次いでH50l/h〜N10l/hにより)。引き続きそれを窒素下で冷却しかつ室温(RT)(T<30℃)にて、希釈した空気で不動態化した(例えば空気3l/h〜N50l/hにより)。完成した触媒はRu2.0質量%を含有していた。
【0112】
担体は公知の方法に従って浸漬してよい;乾燥は動かしても動かさなくても実施することができる:有利には、慎重に動かしながら行うかまたは最初のうちは動かしそして最後には静止させて乾燥するべきであり、その結果、ルテニウム層は剥離しない。還元は動かしてかまたは動かさずに実施してよい。不動態化は当業者に公知の方法に従って実施してよい。
【0113】
ルテニウム含有率:2.0質量%(上の規定に依拠して製造した他の触媒は1.6〜2.5質量%の範囲においてRuを含有していた)。
方法の記載:試料0.03〜0.05gを、アルシントるつぼ(Alsint-Tiegel)中で過酸化ナトリウム5gと混ぜ合わせかつ加熱プレート上でゆっくりと加熱する。引き続き物質/フラックス混合物をまず裸火により溶融し、かつ引き続きブローランプの火炎により赤熱するまで加熱する。透明な溶融物が得られたら即座に溶融を終了する。
冷却した溶融ケーキを水80ml中に溶解し、溶液を沸騰するまで加熱し(Hの破壊)かつ引き続き−冷却後に−塩酸50mlと混合する。その後、水で250mlの体積まで満たした。測定:この試料溶液の測定は同位体Ru99のためのICP−MSによって行う。
【0114】
Ru分散度:45%(CO吸着に従う、想定される化学量論係数:1;試料の作製:200℃にて30分間の水素による試料の還元、および引き続き200℃にてヘリウムで30分間フラッシングした−35℃での化学吸着にて飽和するまで不活性ガス流(CO)中での吸着されるべきガスのパルスを用いた金属表面の測定。COがもはや吸着されなくなるまで飽和に達せられる、すなわち3〜4の連続するピーク(検出器シグナル)の面積は一定でありかつ吸着されなかったパルスのピークと似ている。パルス体積は正確に1%と測定され、ガスの圧力および温度は検査されなければならない)。(方法:DIN66136−3)。
【0115】
水素化例1
反応器として、上記の触媒(31g、Siliperl AF 125 3〜5mmにおいてRu2.0質量%)75mlを充填した加熱可能なステンレス鋼製の二重ジャケット反応管(長さ0.8m;直径12mm)を使用し、該反応器に、出発原料の溶液を計量供給するための供給ポンプ、液面制御装置(Standhaltung)を有する、ガス相および液相を分離するための分離器、排ガス調整(Abgasregelung)および試料採取器(Probennahme)を備え付けた。装置は、液体を循環させずにアップフロー運転方式(すなわち下方から上方への流方向)において運転にかけた。温度は触媒堆積物の始まり(入口)および終わり(出口)にて熱電対によって測定した(以下の表を参照のこと)。
【0116】
水素化において、水4.5質量%を含有する、安定剤不含のTHF中におけるオリゴマーに乏しい蒸留ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル(2,2−ジ−[p−グリシドキシフェニル]−プロパン、Leuna−Harze社のEpilox A 17−01、バッチ(Chargen)16/03および06/04:EEW=172g/当量)の40質量%の溶液を使用した。水素化を、0.15kg出発物質/L触媒・hの触媒負荷、約44〜50℃の温度(以下の表を参照のこと)、250barの水素圧および15Nl/hの水素供給量にて行った(Nl=標準リットル=標準条件で換算された体積)。反応器はアップフローモード運転方式において運転にかけた。
【0117】
(10mbarでの真空中において回転蒸発器で110℃にて溶媒を除去した後の)反応器バッチにおいて獲得される反応率、選択率およびルテニウム濃度は、以下の表から読み取ることができる。供給された供給量についての記載は、オリゴマーに乏しいビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテルの40%の溶液に関するものである。
【0118】
【表2】

【0119】
触媒は、全試験時間を通して一定の活性および選択率を示した。
【0120】
水素化例2
水素化例1の中で記載された試験構成において、水素化例1からの部分的に反応した反応バッチ(反応バッチを部分的に収集した)を、所望された反応度を達成するために同じ触媒で後水素化に供した。使用した部分的に水素化された製品の残留芳香族化合物の含有率はH−NMRによれば10.1%であって、これは89.9%の反応率に相当する。エポキシ当量値は195g/当量であった。水素化を、約44〜50℃の温度(以下の表を参照のこと)、250barの水素圧および15Nl/hの水素供給量にて行った(Nl=標準リットル=標準条件で換算された体積)。反応器をアップフローモード運転方式において運転にかけた。
【0121】
(10mbarでの真空中において回転蒸発器で110℃にて溶媒を除去した後の)反応器バッチにおいて獲得される反応率、選択率およびルテニウム濃度は、以下の表から読み取ることができる。
【0122】
反応率は、H−NMR(芳香族プロトンのシグナルの減少対脂肪族プロトンのシグナルの増加)により測定した。例の中で示される反応率は、芳香族基の水素化に関するものである。
【0123】
【表3】

【0124】
水素化例2の中で再生された反応バッチを部分的に収集し、合一しかつ分析した:
反応率=98.6%(H−NMR)、エポキシ当量値=204g/当量、選択率=87%。
【0125】
水素化例2からの前もって合一された反応バッチから、ガラス製の二重ジャケット(面積=0.1m、周囲長=0.25m)を有する薄膜蒸発器中において、減少させた圧力(800mbar)、140℃の温度(二重ジャケット中での油温度)下でかつ溶液2500g/hの供給量にて溶媒混合物を除去した。移行時の温度は85℃であった。蒸留物は、15℃にて冷却媒を用いて運転にかけられるガラス冷却器中で凝縮した。計量供給は平衡調整し定量ポンプを用いて行った。水素化例2からの反応バッチ計13.32kgから溶媒を除去した。得られた塔底バッチを、定量ポンプを用いてガラス製の二重ジャケット(面積=0.046m、周囲長=0.11m)を有する第二の薄膜蒸発器を介して、減少させた圧力(5〜10mbar)、140℃の温度(二重ジャケット中での油温度)下で運転にかけ、水素化の溶媒および副生成物、例えばエポキシプロパノール、1,2−および1,3−プロパンジオール、イソプロピルシクロヘキサンの残留量を除去した。
【0126】
以下の特性を有する、水素化ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル5.30kgを得た:
残留芳香族化合物の含有率(H−NMR):98.6%
エポキシ当量値(ASTM D 1652−88に依拠して測定):204g/当量
選択率:87%
白金−コバルト−色数(DIN EN ISO 6271−2に依拠して測定):5
25℃での動粘度(DIN 51562 第1部に従って測定):595mm2^−1
25℃での密度(DIN 53217 第5部に従って測定):1.05g/ml
ルテニウム含有量(ICP−MSに従って測定、下記を参照のこと):0.1ppm(ICP−MS)
揮発性化合物の含有率(DIN 16945 4.8に依拠) <2.5質量%
全塩素含有量(DIN 51408−2に従って測定) <1000mg/kg
【0127】
水素化例3
反応器として、上記の触媒(31g、Siliperl 3〜5mmにおいてRu2.0質量%)90mlを充填した加熱可能なステンレス鋼製の二重ジャケット反応管(長さ1.4m;直径12mm)を使用し、該反応器に、出発原料溶液を計量供給するための供給ポンプ、液面制御装置を有する、ガス相および液相を分離するための分離器、排ガス調整、液体再循環ライン(循環路(Waelzkreis))および試料採取器を備え付けた。装置は、液体を循環させてダウンフロー運転方式(すなわち上方から下方への流方向)において運転にかけた。温度は触媒堆積物の始まり(入口)および終わり(出口)にて熱電対によって測定した(以下の表を参照のこと)。
【0128】
水素化において、水4.5質量%を含有する、安定剤不含のTHF中におけるオリゴマーに乏しい蒸留ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル(2,2−ジ−[p−グリシドキシフェニル]−プロパン、Leuna−Harze社のEpilox A 17−01、一工程量:08/04、EEW=172g/当量)の40質量%の溶液を使用した。水素化を、0.12kg出発物質/L触媒・hの触媒負荷、約43〜45℃の温度、250barの水素圧、25Nl/hの水素供給量および3.1kg/hの循環量にて161hの時間にわたって行った。161時間の運転後の試料から、真空(10mbar)中において回転蒸発器で110℃にて溶媒を除去しかつ分析した。
反応率は90%(H−NMR)、エポキシド当量値は209g/当量であって、これは85%の選択率に相当する。溶媒を除去したバッチ中のルテニウム含有量は0.1ppmであった。
【0129】
揮発性化合物の測定(DIN 16945 4.8から抜粋)
水素化ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル約5g(初期質量(Masse Einwaage):mE)を、平坦な低面(直径75±5mm、約12mmのリム高さ(Randhoehe)を有する)を有する金属薄板カバーに1mgまで量り入れかつ他に規定がない場合、熱キャビネット(Waermeschrank)中で140±2℃にて3時間貯蔵する。室温への冷却後、量り取る(最終質量(Masse Auswaage):mA)。
%記載における質量損失(=揮発性化合物の割合)は以下のように計算される:
【化13】

反応率および水素化度をH−NMRによって測定した:
試料の量:20〜40mg、溶媒:CDCl、参照シグナルとしてTMS(テトラメチルシラン)を用いた700μリットル、試料管:直径5mm、400または500MHz、20℃;芳香族プロトンのシグナルの減少対脂肪族プロトンのシグナルの増加)。
例の中で示される反応率は、芳香族基の水素化に関するものである。
【0130】
エポキシド基の減少の測定を、水素化前および水素化後のエポキシド当量(EEW)の比較によって、そのつど規格ASTM−D−1652−88に従って測定し行った。THFおよび水を除去したバッチ中のルテニウムの測定は、誘導結合プラズマ(ICP−MS、以下を参照のこと)を用いた質量分析により行った。
【0131】
オリゴマー含有量:
本発明に従ってまた、供給物中におけるオリゴマー含有量が触媒の可使時間に影響を持つことが認められた:蒸留供給物("オリゴマーに乏しい"供給物)を使用した場合、市販の標準品("オリゴマーが富化している"供給物)と比べて延びた触媒失活が観察される。オリゴマー含有量は、例えばGPC測定(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって確かめることができる:
【表4】

2,2−ジ−[p−グリシドキシフェニル]−プロパンのモル質量:340g/モル。
【0132】
GPC測定条件の記載
固定相:PSS GmbH社の5つのスチレンジビニルベンゼンゲルカラム"PSS SDV linear M"(各300×8mm)(温度調節:35℃)。
移動相:THF(フロー:1.2ml/分)。
校正(Eichung):Polymer Laboratories社のPS−校正キットを用いたMG500〜10000000g/モル。オリゴマー領域:エチルベンゼン/1,3−ジフェニルブタン/1,3,5−トリフェニルヘキサン/1,3,5,7−テトラフェニルオクタン/1,3,5,7,9−ペンタフェニルデカン。
評価限界:180g/モル。
検出:RI(屈折率) Waters 410、UV(254nmにて)Spectra Series UV100。
【0133】
示されたモル質量は、溶液中での個々のポリマー型の流体力学的体積が異なるため校正物質としてのポリスチレンに対する相対値を表し、そのため絶対値を表さない。
【0134】
GPC測定により算出された面積%(Fl%)記載におけるオリゴマー含有率は、内部標準または外部標準を用いて質量%記載において換算することができる。
【0135】
本発明による水素化法において使用される式II(R=CH)の芳香族ビスグリシジルエーテルのGPC分析により、例えばモノマーの他に、以下の相応するオリゴマービスグリシジルエーテルの含有量が明らかになった。
180〜<380g/モルの範囲内でのモル質量:>98.5Fl%、
380〜<520g/モルの範囲内:<1.3Fl%、
520〜<860g/モルの範囲内:<0.80Fl%および
860〜1500g/モルの範囲内:<0.15Fl%。
【0136】
蒸発残留物の測定方法の記載
各試料からそのつど約0.5gを秤量びん(Waegeglas)の中に量り入れた。秤量びんを引き続き室温にて、プレートを加熱した真空乾燥キャビネット(Vakuumtrockenschrank)中に据えかつ乾燥キャビネットを真空引きした。3mbarの圧力にて温度を200℃に高めかつ試料を2時間のあいだ乾燥した。さらに2時間のあいだ温度を300℃に高め、引き続きデシケーター内で室温に冷却しかつ量り取った。
【0137】
この方法により測定された、標準品(Vantico社のARALDIT GY 240 BD)中の残留物(オリゴマー含有率)は6.1質量%であった。
【0138】
この方法により測定された、蒸留標準品中の残留物(オリゴマー含有率)は0質量%であった。(蒸留条件:1mbar、浴温度260℃および塔頂での移行時の温度229℃)。
【0139】
cis/cis−cis/trans−trans/trans異性体比’の測定
水素化ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテル(R=CH)の生成物バッチを、ガスクロマトグラフィー(GCおよびGC−MS)によって分析した。その際、3つのシグナルを水素化ビスフェノール−A−ビスグリシジルエーテルと同定した。
ビスグリシジルエーテルのビスフェノール−A−単位の水素化によって多数の異性体が発生しうる。シクロヘキサン環での置換基の配置に応じてcis/cis、trans/transまたはcis/trans異性体が出現しうる。
【0140】
3つの異性体を同定するために、該当するピークの生成物をカラム装置(Saeulenschaltung)で分取して集めた。引き続き、各フラクションをNMR分光法により特徴付けた(H、13C、TOCSY、HSQC)。
【0141】
分取GCのために、カラム装置を用いたGC系を使用した。その際、試料をSil−5−キャピラリ(l=15m、ID=0.53mm、df=3μm)にて前分離した。シグナルを、DEANSスイッチ(DEANS-Schaltung)によって第2のGCカラムにてカットした。このカラムは分取フラクションのグレードを検査するために使用した。引き続き各ピークをフラクションコレクターによって収集した。試料の約10質量%の溶液の28回の注入を調製し、これは各成分の約10μgに相当する。
次いで、単離した成分の特徴付けをNMR分光法により行った。
【0142】
水素化ビスフェノール−F−ビスグリシジルエーテル(R=H)の異性体比の測定のために類似する方法が適用される。
【0143】
式Iの核水素化ビスグリシジルエーテル中のルテニウムの測定
試料を適切な有機溶媒(例えばNMP)により100倍に希釈した。この溶液中のルテニウムの含有量は、誘導結合プラズマ(ICP−MS)を用いた質量分析によって測定した。
【0144】
装置:ICP−MS−分光計、例えばAgilent 7500s
測定条件:
校正:有機マトリックス中での外部校正
噴霧器:Meinhardt
質量数(Masse):Ru102
希釈した測定溶液中で必要なアウトプット値(Abgabewert)を確実に測定することができるように校正線を選択した。
【0145】
塩化物および有機的に結合した塩素の測定
塩化物の測定をイオンクロマトグラフィーによって行った。
試料の準備:
試料約1gをトルエンに溶解しかつ非常に高い純度の水10mlで抽出した。
水相をイオンクロマトグラフィーによって測定した。
測定条件:
イオンクロマトグラフィーシステム:Metrohm
プレカラム:DIONEX AG 12
分離カラム:DIONEX AG 12
溶離剤:(NaCO2.7ミリモル+NaHCO0.28ミリモル)/水1リットル
フロー:1ml/分
検出:化学的抑制後の伝導性
サプッレサー:Metrohm Modul 753
SO50ミリモル;非常に高い純度の水
(フロー 約0.4ml/分)
校正:0.01mg/L〜0.1mg/L
DIN51408、第2部、"塩素含有量の測定(Bestimmung des Chlorgehalts)"に相当する、有機的に結合した塩素(全塩素)の電量測定
試料を、酸素雰囲気中で約1020℃の温度にて燃焼させた。その際、試料の中で結合した塩素は反応して塩化水素となる。燃焼に際して発生する硝気、酸化硫黄および水を除去しかつ、そのように精製した燃焼ガスを電量計セル内に導入する。ここで、形成された塩化物の電量測定はCl+Ag→AgClに従って行う。
初期質量範囲:1〜50mg
定量下限値(Bestimmungsgrenze):約1mg/kg(物質に依存)
装置:Euroglas社(LHG)、"ECS−1200"
文献:F.Ehrenberger、"Quantitative organische Elementaranalyse"、ISBN3−527−28056−1。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウム塩の溶液による担体材料の1回または複数回の浸漬、乾燥および還元によって製造されうる、非晶質二酸化ケイ素を担体材料として含有する不均一系ルテニウム触媒において、使用される二酸化ケイ素の担体材料が250〜400m/gの範囲における(DIN66131に従う)BET表面積、0.7〜1.1ml/gの範囲における(DIN66134に従う)細孔容積および6〜12nmの範囲における(DIN66134に従う)細孔直径を有することを特徴とする不均一系ルテニウム触媒。
【請求項2】
使用される二酸化ケイ素の担体材料が290〜370m/gの範囲におけるBET表面積を有することを特徴とする、請求項1記載のルテニウム触媒。
【請求項3】
使用される二酸化ケイ素の担体材料が0.75〜1.0ml/gの範囲における細孔容積を有することを特徴とする、請求項1または2記載のルテニウム触媒。
【請求項4】
使用される二酸化ケイ素の担体材料が8〜10nmの範囲における細孔直径を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項5】
触媒が二酸化ケイ素の担体材料の質量に対して0.5〜4質量%の範囲におけるルテニウムを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項6】
触媒が二酸化ケイ素の担体材料の質量に対して1〜3質量%の範囲におけるルテニウムを含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項7】
酢酸ルテニウム(III)の水溶液による二酸化ケイ素の担体材料の1回または複数回の浸漬によって製造されうる、請求項1から6までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項8】
触媒製造のために二酸化ケイ素の担体材料が球状の成形体の形において使用されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項9】
球状の成形体が3〜5mmの範囲における直径を有することを特徴とする、請求項8記載のルテニウム触媒。
【請求項10】
成形体が>60Nの(側面)圧縮強度を有することを特徴とする、請求項8または9記載のルテニウム触媒。
【請求項11】
触媒が、触媒の全質量に対して、(イオンクロマトグラフィーによって測定された)0.05質量%未満のハロゲン化物を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項12】
ルテニウムが主にシェルとして触媒表面で濃縮していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項13】
ルテニウムがシェル内で部分的にまたは完全に結晶で存在することを特徴とする、請求項12記載のルテニウム触媒。
【請求項14】
ルテニウムが高分散して存在することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項15】
Ru分散度が(DIN66136−3に従うCO吸着によって測定された)30〜60%の範囲にあることを特徴とする、請求項14記載のルテニウム触媒。
【請求項16】
二酸化ケイ素の担体材料中においてAl(III)およびFe(IIおよび/またはIII)の濃度が合計で300質量ppmより小さいことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のルテニウム触媒。
【請求項17】
炭素環式芳香族基を、相応する炭素環式脂肪族基に水素化するための方法において、請求項1から16までのいずれか1項記載の不均一系ルテニウム触媒を使用することを特徴とする水素化法。
【請求項18】
ベンゼン環を、相応する炭素環式6員環に水素化するための、請求項17記載の方法。
【請求項19】
式I
【化1】

[式中、RはCHまたはHである]のビスグリシジルエーテルを、式II
【化2】

の相応する芳香族ビスグリシジルエーテルの核水素化によって製造するための、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
使用される式IIの芳香族ビスグリシジルエーテルが、10質量%未満の含有率の相応するオリゴマービスグリシジルエーテルを有することを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
使用される式IIの芳香族ビスグリシジルエーテルが、5質量%未満の含有率の相応するオリゴマービスグリシジルエーテルを有することを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項22】
オリゴマービスグリシジルエーテルは、R=Hの場合、568〜1338g/モルの範囲における分子量を有しかつ、R=CHの場合、624〜1478g/モルの範囲における分子量を有することを特徴とする、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
水素化を30〜200℃の範囲における温度にて実施することを特徴とする、請求項17から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
水素化を10〜325barの範囲における水素絶対圧にて実施することを特徴とする、請求項17から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
水素化を触媒固定床で実施することを特徴とする、請求項17から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
水素化を、懸濁液の形における触媒を含有する液相中で実施することを特徴とする、請求項17から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
式IIの芳香族ビスグリシジルエーテルを溶液として水素化に対して不活性の有機溶媒中で使用し、その際、溶液は、溶媒に対して0.1〜10質量%の範囲における水を含有することを特徴とする、請求項19から26までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−543551(P2008−543551A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517492(P2008−517492)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063380
【国際公開番号】WO2006/136569
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】