不妊治療のためのへテロ二量体卵胞刺激ホルモン−Fc(FSH−Fc)融合タンパク質
本発明は、直接または間接的に新生児Fc受容体(FcRn)の結合パートナーに連結されたFSHのアルファ・サブユニット(αFSH)を含む第一のポリペプチド、および直接または間接的にFcRn結合パートナーに連結されたFSHのベータ・サブユニット(βFSH)を含む第二のポリペプチドを含む、新規へテロ二量体融合タンパク質を提供する。1つの態様において、FcRn結合パートナーには、免疫グロブリンのFc断片、例えばIgGのFc断片が含まれる。やはり提供されるのは、本発明の融合タンパク質を作製し、そして用いる方法である。本発明は、被験者において受胎能を増加させる方法、およびFSHによる治療に応答性である疾患状態を有する被験者を治療する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、生殖障害療法剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、不妊治療のためのヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン-Fc融合タンパク質に関する。
【0002】
発明の背景
不妊は、カップルの10分の1に影響を及ぼし、その結果、何百万というカップルが妊娠しようと苦闘している。これらのカップルの多くが、不妊治療の潜在的な候補である。尿から抽出されるかまたは組換え的に産生されるかいずれかの、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、受胎能を増加させるために専門家によって用いられる、非経口投与タンパク質製剤であり、そして1960年代からそのように臨床的に用いられてきている。例えば、FSHは、排卵誘発(OI)および過排卵誘起(COH)に用いられている。OIは単一の卵胞の排卵を達成することに向けられる一方、COHは、様々なin vitro補助生殖技術に使用するため(例えばin vitro受精のため)、多数の卵母細胞を採取することに向けられる。FSHはまた、男性のゴナドトロピン補充療法にも用いられる。
【0003】
FSHの使用は、コストが高く、専門医師による長期監視の必要があり、経口投薬または他の非侵襲性投与経路がなく、そして患者が毎日注射を必要とすることによって、制限されている。組換えFSHは、半減期が短く、そしてそれに相応して生体効力が減少する欠点を有し、頻繁に投与する必要があり、そして臨床的有用性が限られている。例えば、組換えヒトFSH(hFSH)を排卵誘発に用いる際、しばしば8〜12日、またはそれより長く、毎日、筋内注射または皮下注射として投与しなければならない。これらの措置は、局所過敏および不快感を含む、多数の副作用と関連付けられ、この結果、コンプライアンスが低下し、そして療法効能が減少する。したがって、伝統的な型のFSH療法に比較して半減期が増加しおよび生物学的利用能が高い型のFSHに対する必要性が存在する。
【0004】
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、天然では、アルファ(α)サブユニットおよびベータ(β)サブユニットからなる非共有的に連結されたヘテロ二量体タンパク質として、見いだされる(Pierce JGおよびParsons TF(1981)Ann Rev Biochem 50: 465-95)。サブユニット組み立ては、FSHの生物活性に必須であり(Jia XCおよびHseuh AJW(1986)Endocrinology 119: 1570-7)、並びにベータ・サブユニットの安定性に必須である(Keeneら(1989)J Biol Chem 264: 4769-75)ことが報告されてきている。
【0005】
FSH療法を改善する1つのアプローチは、タンパク質のグリコシル化を増加させることによるものであった。他のアプローチには、不妊治療用のカルボキシ末端部分(CTP)伸長型のFSH(例えば米国特許第5,338,835号およびU.S.2003/0211580 A1を参照されたい)またはFSH模倣体(mimetics)(例えば米国特許第6,653,338号を参照されたい)が含まれた。しかし、半減期および生物活性を改善しようとする初期の試みは、現存する療法に勝る利点を提供可能な、臨床的に有効な薬剤を生じるには至っていない。
【0006】
FSHのαサブユニットおよびβサブユニットの一本鎖融合体(一本鎖FSH)が完全に活性であることもまた、報告された(Sugaharaら(1996)J Biol Chem 271: 10445-8)。一本鎖FSHは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のカルボキシ末端ペプチドと融合させた際、血清半減期を増加させることが報告されている(Kleinら(2003)Hum Reprod 18: 50-6;Boulouxら(2001)Hum Reprod 16: 1592-7;Duijkersら(2002)Hum Reprod 17: 1987-93を参照されたい)。
【0007】
ヘテロ二量体FSHの使用およびその配合には、一本鎖FSHには存在しない、安定性および精製の問題が山積している。組換えFSHは知られている(例えば米国特許第5,767,251号を参照されたい)が、療法目的に有用な生物学的活性分子を生じる方式でアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが会合するように維持することは、そして特に、長期作用型のヘテロ二量体FSHの場合には、本発明以前には困難なままであった。
【0008】
目的のタンパク質またはその断片に連結された免疫グロブリン定常領域で構成される融合タンパク質の生成が記載された(例えば米国特許第5,155,027号、第5,428,130号、第5,480,981号、および第5,808,029号を参照されたい)。これらの分子は、通常、連結された目的の分子に関連する生物学的活性、並びにエフェクター機能、または免疫グロブリン定常領域に関連する何らかの他の望ましい特性の両方を所持する。免疫グロブリンのFc部分を含む融合タンパク質は、安定性の増加、血清半減期の増加(Caponら(1989)Nature 337: 525を参照されたい)、並びに新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合(米国特許第6,086,875号、第6,030,613号、および第6,485,726号)を含む、いくつかの望ましい特性を融合タンパク質に与えることも可能である。
【0009】
FcRnは、成体上皮組織で活性であり、そして腸、肺気道、鼻腔面、膣表面、結腸および直腸表面の管腔で発現される(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーを含む融合タンパク質(例えばIgG、Fc断片)は、FcRnによって上皮障壁を効率的に往復することも可能であり、したがって、望ましい療法分子を全身投与する、非侵襲性の手段を提供可能である。さらに、FcRn結合パートナーを含む融合タンパク質はエンドサイトーシスを受け、そしてFcRnを発現する細胞によって保護される。これらの融合タンパク質は、分解されるようにマークされる代わりに、再び循環中にリサイクルされ、したがって、これらのタンパク質のin vivo半減期は増加する。
【0010】
FSHは、U.S.2003/0235536 A1に記載されるように、Fcにコンジュゲート化された。しかし、その文献中には、非ヒト霊長類の中央部気道に送達するための一本鎖FSH-Fc融合タンパク質が記載されている。一本鎖FSH-Fc融合体は、一本鎖中でベータ・サブユニットおよびアルファ・サブユニットが末端と末端でコンジュゲート化された、hFSHβα-Fcを含有し、そして融合体の2つのポリペプチド鎖は同一である(図1cを参照されたい)。図1cに示すように、一本鎖FSH-Fc型はホモ二量体である。
【0011】
発明の概要
本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが各々、FcRn結合パートナーに、またはFc断片に、コンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。1つの態様において、本発明は、2つのポリペプチド鎖、すなわち免疫グロブリンのFc断片に、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に連結されたαFSHを少なくとも有する一方の鎖、および免疫グロブリンのFc断片に、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に、やはり連結されたβFSHを有する第二の鎖を有する、融合タンパク質を提供する。これらの融合タンパク質によって、本発明は、FSHの半減期を増加させる方法を提供し、そしてしたがって、投薬頻度を減少させて、被験者の受胎能を増加させるのに効果的なな手段および/またはFSH療法に応答性の疾患状態を治療するのに効果的なな手段をさらに提供する。
【0012】
U.S.2003/0235536 A1に記載される一本鎖FSH-Fc融合タンパク質とは対照的に、本発明のヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質(図1c)は、1つのFc鎖にコンジュゲート化されたFSHのアルファ・サブユニット、および他のFc鎖にコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニットを有し、ここでアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットは、頭部と頭部および尾部と尾部が並列されて、そしてFc断片は、同様に、頭部と頭部および尾部と尾部が並列される。2つの鎖は、例えば内因性FSHに存在するように、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の相互作用によって、互いに会合するようにされている。あるいは、またはそれに加えて、例えばジスルフィド結合(単数または複数)を介するなどの、2つのFc鎖の会合は、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットを互いに近接するようにし、したがって、一本鎖FSH融合タンパク質に比較した際、生物活性が増進するようにする。
【0013】
1つの側面において、本発明は、2つの会合するポリペプチド鎖、すなわち、新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーにコンジュゲート化された卵胞刺激ホルモンのアルファ・サブユニット(αFSH)を含む第一の鎖、およびFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニット(βFSH)を含む第二の鎖を含む、ヘテロ二量体融合タンパク質であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記ヘテロ二量体融合タンパク質である。
【0014】
1つの側面において、本発明は、式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのアミノ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質である。
【0015】
1つの側面において、本発明は、式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質である。
【0016】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、少なくとも1つのタグ部分を含むことも可能である。タグ部分は、例えば、組換え的に産生されるポリペプチドまたはタンパク質の精製または同定を補助するために使用可能である。例えば、1つの態様において、ヘテロ二量体融合タンパク質の1つのポリペプチドは、ヒスチジン・タグをさらに含む。
【0017】
1つの側面において、本発明は、本発明の融合タンパク質、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物である。
【0018】
別の側面において、本発明は、被験者の受胎能を増加させる方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、被験者の受胎能を増進するのに有効な量の本発明の融合タンパク質を、被験者に投与する工程を含む。
【0019】
1つの側面において、本発明は、FSHによる治療に応答性の疾患状態を有する被験者を治療する方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、本発明の融合タンパク質の有効量を、被験者に投与する工程を含む。
【0020】
1つの側面において、本発明は、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、直接、またはリンカーを介して間接的に、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの各々を、FcRn結合パートナーにコンジュゲート化する工程を含み、ここでαFSHの頭部はβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部は並列されている。
【0021】
詳細な説明
定義
アフィニティ・タグは、本明細書において、目的の第二の分子に付着し、前記の目的の第二の分子を単離するかまたは同定する目的のため、特定の結合パートナーと相互作用することが可能な分子を意味する。
【0022】
本発明の融合タンパク質の類似体、あるいは本発明の融合タンパク質に実質的に同一のタンパク質またはペプチドは、本明細書において、タンパク質またはペプチドの相当するアミノ酸配列が、既定の配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であることを意味する。例えば、こうした配列は、様々な種由来の変異体であることも可能であるし、あるいは短縮(truncation)、欠失、アミノ酸置換または付加によって、既定の配列に由来することも可能である。例えば、Altschulら(1990)J. Mol. Biol., 215: 403-410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST);Needlemanら(1970)J. Mol. Biol., 48: 444-453のアルゴリズム;Meyersら(1988)Comput. Appl. Biosci., 4: 11-17のアルゴリズム;またはTatusovaら(1999)FEMS Microbiol. Lett., 174: 247-250などの標準的アラインメント・アルゴリズムによって、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定する。こうしたアルゴリズムは、BLASTN、BLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラムに取り込まれている。こうしたプログラムを利用する際には、デフォルト・パラメーターを用いることも可能である。例えば、ヌクレオチド配列には、「BLAST 2 Sequences」に以下の設定を用いることも可能である:プログラムBLASTN、マッチの報酬2、ミスマッチのペナルティ-2、オープン・ギャップ・ペナルティおよび伸長ギャップ・ペナルティ、それぞれ5および2、ギャップx_ドロップオフ50、期待値10、ワード・サイズ11、フィルターON。アミノ酸配列には、「BLAST 2 Sequences」に以下の設定を用いることも可能である:プログラムBLASTP、マトリックスBLOSUM62、オープン・ギャップ・ペナルティおよび伸長ギャップ・ペナルティ、それぞれ11および1、ギャップx_ドロップオフ50、期待値10、ワード・サイズ3、フィルターON。
【0023】
生物学的利用能は、本明細書において、物質が生物系に吸収されるか、または生理学的活性部位で利用可能になる度合いおよび/または率を意味する。
【0024】
DNA構築物は、本明細書において、ヒトの介入を通じて、そうでなければ天然には全体として存在しないような方式で組み合わされたDNAセグメントを含有するように修飾されている、一本鎖または二本鎖いずれかのDNA分子、またはこうした分子のクローンを意味する。DNA構築物は、目的のポリペプチドの発現を指示するのに必要な情報を含有する。DNA構築物は、プロモーター、エンハンサーおよび転写ターミネーターを含むことも可能である。ポリペプチドの分泌を指示するのに必要な情報を含有するDNA構築物は、典型的にはまた、少なくとも1つの分泌シグナル配列も含有するであろう。
【0025】
断片は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に関して本明細書で用いられる場合、少なくとも2つの連続したアミノ酸残基、少なくとも5つの連続したアミノ酸残基、少なくとも10の連続したアミノ酸残基、少なくとも15の連続したアミノ酸残基、少なくとも20の連続したアミノ酸残基、少なくとも25の連続したアミノ酸残基、少なくとも40の連続したアミノ酸残基、少なくとも50の連続したアミノ酸残基、少なくとも100の連続したアミノ酸残基、または少なくとも200の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチド、あるいはタンパク質の欠失または短縮いずれかを含むペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0026】
FSH、そして別に言及しない限り均等である、ヘテロ二量体FSHは、アルファ・サブユニット(αFSH;FSHアルファ)およびベータ・サブユニット(βFSH;FSHベータ)で構成される、ヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン糖タンパク質を指す。FSHおよびヘテロ二量体FSHは、FSHの天然存在型およびその組換え類似体を指すものとする。ヒトにおいて、アルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットは、別個の染色体上の別個の遺伝子によりコードされる。FSHおよびヘテロ二量体FSHは、一本鎖FSHおよび一本鎖FSH融合タンパク質から、並びに本発明のヘテロ二量体FSH融合タンパク質から区別されるべきものである。
【0027】
融合タンパク質は、本明細書において、第二の供給源由来の第二のアミノ酸配列に、共有的または非共有的に結合した、第一の供給源由来の第一のアミノ酸配列で構成されるタンパク質いずれかを指し、ここで第一の供給源および第二の供給源は同一ではない。同一でない第一の供給源および第二の供給源は、2つの異なる生物学的実体(entities)、または同一の生物学的実体由来の2つの異なるタンパク質、または生物学的実体および非生物学的実体を含むことも可能である。融合タンパク質は、例えば、少なくとも2つの異なる生物学的供給源由来のタンパク質を含むことも可能である。生物学的供給源は、非合成的に産生される核酸またはアミノ酸配列いずれか(例えばゲノムまたはcDNA配列、RNA配列、プラスミドまたはウイルスベクター、天然ビリオン、あるいは本明細書にさらに記載されるような上記いずれかの変異体または類似体)を含むことも可能である。合成供給源は、化学的に産生され、そして生物学的系にはよらない、タンパク質または核酸配列を含むことも可能である(例えばアミノ酸配列の固相合成)。融合タンパク質はまた、少なくとも2つの異なる合成供給源から得られるタンパク質、または少なくとも1つの生物学的供給源および少なくとも1つの合成供給源から得られるタンパク質を含むことも可能である。
【0028】
連結されたは、核酸配列に関して本明細書で用いられる場合、第二の核酸配列に共有的に連結された第一の核酸配列を指す。第一の核酸配列は、第二の核酸配列に直接連結されるか、または並列することも可能であるし、あるいは介入配列またはリンカー部分が、第一の配列を第二の配列に共有的に連結することも可能である。連結された、は、アミノ酸配列に関して本明細書で用いられる場合、第二のアミノ酸配列に共有的に連結された第一のアミノ酸配列を指す。第一のアミノ酸配列は、第二のアミノ酸配列に直接連結されるか、または並列することも可能であるし、あるいは介入配列またはリンカー部分が、第一のアミノ酸配列を第二のアミノ酸配列に共有的に連結することも可能である。連結された、はまた、第二のアミノ酸配列に非共有的に連結された第一のアミノ酸配列も指すことも可能である。
【0029】
中程度のストリンジェンシーは、核酸ハイブリダイゼーションに関して本明細書で用いられる場合、例えばDNAの長さに基づいて、当業者によって容易に決定可能な条件を含む。基本的な条件は、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 Vol.1, pp.1.101-104, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載され、そしてニトロセルロースフィルターについては5×SSC、0.5% SDS、1.0 mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、50%ホルムアミド、6×SSCで42℃でのハイブリダイゼーション条件(または50%ホルムアミド中のStark溶液などの他の類似のハイブリダイゼーション溶液で42℃)、および60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。
【0030】
高ストリンジェンシーは、核酸ハイブリダイゼーションに関して本明細書で用いられる場合、例えばDNAの長さに基づいて、当業者によって容易に決定される条件を含む。一般的に、こうした条件は、上述のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSでの洗浄を伴うものとして定義される。当業者は、プローブの長さなどの要因にしたがって、必要に応じて、温度および洗浄溶液塩濃度を調節可能であることを認識するであろう。
【0031】
ポリペプチドは、本明細書において、アミノ酸のポリマーを指し、そして産物の特定の長さを指すのではなく;したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質が、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、PEG化、脂質部分の付加、あるいは有機分子または無機分子いずれかの付加を排除しない。この定義に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1以上の類似体(例えば非天然アミノ酸を含む)を含有するポリペプチド、および置換連結を含むポリペプチド、並びに天然存在および非天然存在両方の、当該技術分野において知られる他の修飾である。
【0032】
血清(または血漿)半減期は「t1/2」と略され、本明細書において、排出半減期、すなわち剤の血清(または血漿)濃度が半分に落ちるのにかかる時間を意味する。関連用語「血清半減期の増加」は、本明細書において、単独の天然FSH(内因性、組換えまたは合成型のいずれであっても)よりも遅い速度で一掃される、ヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質に関して用いられる。
【0033】
治療する、治療、および治療すること、は、本明細書において、以下のいずれかを意味する:療法による治療に応答性の障害または疾患状態いずれかの重症度の減少;こうした障害または疾患状態と関連する1以上の症状の予防;こうした異常の疾患経過期間の減少;必ずしも異常または障害の治癒を伴わなくてもよい、こうした異常を有する被験者に対する、有益な効果の提供。FSHに関して本明細書で用いられる場合、治療する、治療、および治療すること、は、以下のいずれかを意味する:FSH療法による治療に応答性の生殖障害または疾患状態いずれかの重症度の減少;こうした障害または疾患状態と関連する1以上の症状の予防;FSH異常の疾患経過期間の減少;必ずしもFSH異常または生殖障害の治癒を伴わなくてもよい、こうした異常を有する被験者に対する、有益な効果(例えば受胎能の増加)の提供。
【0034】
A.不妊のための改善療法
本発明は、一般的に、生殖系と関連する生殖障害または疾患状態、および特にFSH異常のための改善療法に関する。したがって、本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット各々が、それぞれ、Fc断片またはFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、生殖療法および/またはFSH療法に用いられる既知の療法剤に比較した際、安定性の増加および半減期の改善を有する。本発明の融合タンパク質は、非経口的にまたは非侵襲性に投与可能である。現在のFSH療法は、一般的に、皮下注射または筋内注射によって投与されるが、本発明の融合タンパク質は、より侵襲性でない手段、例えば経口投与、鼻投与、または肺投与によって、投与可能である。現在の療法は、毎日の注射を必要とするが、本発明は、より頻繁でない、非経口、経口または肺投薬を提供することも可能である。
【0035】
B.融合タンパク質
本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが各々、FcRn結合パートナーまたはFc断片にコンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。より具体的には、本発明は、1つの態様において、2つのポリペプチド鎖、すなわちFcRn結合パートナーに、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に連結されたαFSHを少なくとも有する一方の鎖、およびFcRn結合パートナーに、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に、やはり連結されたβFSHを有する第二の鎖、を有する、融合タンパク質を提供する。本融合体において、αFSHの頭部がベータFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナーの尾部が並列される。本発明の1つの態様において、FSHサブユニットおよびそれぞれのFcRn結合パートナーの間にはリンカーがある。
【0036】
本発明の別の態様において、融合タンパク質は、式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、Fcは免疫グロブリンのFc断片であり、そしてコロン(:)は、融合体の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当する
の2つのポリペプチド鎖を含む。この態様において、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端は、それぞれのFcのアミノ末端に、直接またはLを介して間接的に連結されており、そしてαFSHの頭部はβFSHの頭部と並列され、それぞれのFc断片の各々の尾部は並列されている。
【0037】
別の態様において、融合タンパク質は、式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が、直接またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されていることを除いて、融合体のすべての側面は、上述のとおりである
の2つのポリペプチド鎖を含む。
【0038】
2つのポリペプチド鎖間の会合は、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の会合の結果、および/またはFc断片またはFcRn結合パートナー間の会合の結果であってもよい。例えば、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの会合の場合、相互作用は、非共有相互作用、例えばイオン性相互作用、疎水性または親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、および/または水素結合、例えばロイシンジッパーであることも可能である。非共有会合または相互作用は、限定されるわけではないがアルファヘリックスなどの両親媒性ペプチドの相互嵌合、限定されるわけではないがリジンおよびアスパラギン酸、アルギニンおよびグルタミン酸などの反対の電荷を所持するアミノ酸の電荷-電荷相互作用を伴うことも可能である。1つの態様において、非共有会合または相互作用は、7番目ごとのアミノ酸がロイシン残基である、いくつかの反復アミノ酸を有するペプチドを含むロイシンジッパーを伴う(例えばBrandenら(1991)Introduction To Protein Structure, Garland Publishing, New Yorkを参照されたい)。Fc断片間の相互作用の場合、一般的に、これらは共有結合であろうし、そして一般的に、免疫グロブリンのFc断片の多くで見られるように、1つまたは2つのジスルフィド結合である。したがって、本発明の特定の態様において、本融合体のFc断片間には、少なくとも1つのジスルフィド架橋が存在する。
【0039】
本発明の特定の態様において、本融合体またはその1つのポリペプチド鎖にコンジュゲート化されるのは、第二のリンカー、あるいは融合タンパク質の精製を容易にするのに使用可能なタグ、例えばFLAGタグ、ヒスチジン・タグ(実施例1を参照されたい)、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、または当該技術分野において知られる他のものであることも可能である。
【0040】
1.融合タンパク質変異体
本発明の融合タンパク質の誘導体および類似体、本発明の融合タンパク質に対する抗体、および本発明の融合タンパク質の結合パートナーに対する抗体がすべて意図され、そしてこれらは、置換、付加、および/または欠失/短縮によりアミノ酸配列を改変するか、あるいは化学的修飾を導入して、機能的に均等な分子を生じることによって、作製することも可能である。タンパク質活性に不都合に影響を及ぼすことなく、タンパク質いずれかの配列中の特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置換可能であることが、当業者には理解されるであろう。
【0041】
本発明の融合タンパク質のアミノ酸配列または該配列をコードするDNA配列中に、生物学的活性、機能、または有用性の認識可能な損失を伴わずに、様々な変化を作製することも可能である。こうした変化から生じる誘導体、類似体、または変異体、およびこうした誘導体の使用が、本発明の範囲内である。特定の態様において、誘導体は、機能的に活性であり、すなわち本発明の融合タンパク質と関連する1以上の活性、例えば受胎能の増加、卵産生の増加、精子形成の増加を示すことが可能である。
【0042】
配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択可能である(表1を参照されたい)。さらに、様々なアミノ酸が、一般的に、中性アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンと置換される(例えばMacLennanら(1998)Acta Physiol. Scand. Suppl. 643: 55-67;Sasakiら(1998)Adv. Biophys. 35: 1-24を参照されたい)。
【0043】
【表1】
【0044】
2.ヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン
本発明の融合タンパク質には、ヘテロ二量体FSH(あるいは「FSHヘテロ二量体」とも称される)が含まれる。組換えへテロ二量体FSHは、米国特許第5,767,251号に記載される。本発明の態様において、FSHはヒトFSH(hFSH)である。FSHのベータ・サブユニットおよび/またはアルファ・サブユニットを含有する典型的なライブラリーが、以下の実施例に記載され、そしてヒトFSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットのヌクレオチド配列は、それぞれ寄託番号NM_000735およびNM_000510として、GenBankを通じて公的に入手可能である。
【0045】
3.免疫グロブリン
免疫グロブリンは、共有結合する4つのタンパク質鎖、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される。各鎖はさらに、1つの可変領域および1つの定常領域で構成される。免疫グロブリン・アイソタイプ(すなわちIgG、IgM、IgA、IgD、IgE)に応じて、重鎖定常領域は、3または4の定常領域ドメイン(例えばCH1、CH2、CH3、CH4)で構成される。いくつかのアイソタイプはまた、ヒンジ領域も含むことも可能である(例えばIgG)。
【0046】
特定の態様において、本発明の融合タンパク質は、それぞれ新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーにコンジュゲート化された各FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットである。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体に特異的に結合可能であり、その結果、FcRn受容体により、該FcRn結合パートナーが能動輸送される分子いずれかである。FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離された。ヒトFcRn、ラットFcRn、サルFcRn、およびマウスFcRnの配列が知られる(Storyら(1994)J. Exp. Med. 180: 2377)。FcRn受容体は、比較的低いpHでIgGに結合し(しかし、IgA、IgM、IgD、およびIgEなどの他の免疫グロブリンクラスとは結合しない)、管腔中でIgGを経細胞的に漿膜方向に能動輸送し、そして次いで、間質液で見られる比較的高いpHでIgGを放出する。該受容体は、肺および腸の上皮(Israelら(1997)Immunology 92: 69)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら(2002)Am. J. Physiol. Renal Physiol. 282: F358)、並びに鼻上皮、膣表面、および胆道系表面を含む、成体上皮組織で発現される(米国特許第6,030,613号および第6,086,875号)。
【0047】
FcRn結合パートナーは、FcRnに結合するIgGのFcドメインの部分を模倣する、FcRnのリガンド(すなわちFc、Fcドメイン、Fc断片、Fc断片相同体、およびFc模倣体)を含有する。したがって、本発明のFcRn結合パートナーは、FcRn受容体が特異的に結合可能な分子いずれかを含み、全IgG、IgGのFc断片、およびFcRn受容体の完全結合領域を含む他の断片を含む。特定の態様において、FcRn結合パートナーは、非特異的IgG、またはIgGのFcRn結合性断片である。最も典型的には、FcRn結合パートナーは、IgGのFc断片、すなわちFcγに対応する。Fcγは、天然であることも可能であるし、または天然FcγよりもFcRnにより高い親和性を有するように修飾されていることも可能である。こうした修飾には、FcRnとの接触に関与する特定のアミノ酸残基の置換が含まれることも可能である。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域が、X線結晶学に基づいて記載された(Burmeisterら(1994)Nature 372: 379)。FcRnとFcの主な接触領域は、CH2ドメインおよびCH3ドメインの接合部付近である。Fc-FcRn接点は、すべて単一Ig重鎖内である。主な接触部位には、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、308〜311、および314、並びにCH3ドメインのアミノ酸残基385〜387、428、および433〜436が含まれる。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片、あるいは領域のアミノ酸番号付けに対して行う言及は、すべて、Kabatら 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Public Health, Bethesda, MDに基づく。天然Fcγより長い循環半減期を有するように、Fcγを修飾することも可能である。こうした修飾は、FcRn以外のFc受容体との相互作用に関与する特定のアミノ酸残基の置換、グリコシル化に関与する特定のアミノ酸残基の置換などを含むことも可能である。特定の典型的な修飾を以下に記載する。
【0048】
本発明の他の態様において、FcRn結合パートナーは、Fc断片、すなわち免疫グロブリン重鎖定常領域、その一部、またはその変異体である。Fc断片は、免疫グロブリン重鎖定常領域であることも、または該領域に由来することも可能であり、限定されるわけではないが、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域、非ヒト霊長類免疫グロブリン重鎖定常領域、ウシ免疫グロブリン重鎖定常領域、ブタ免疫グロブリン重鎖定常領域、ネズミ免疫グロブリン重鎖定常領域、ヒツジ免疫グロブリン重鎖定常領域、またはラット免疫グロブリン重鎖定常領域が含まれる。
【0049】
本発明のFc断片またはFcRn結合パートナーは、全重鎖定常領域、あるいはその断片または類似体を含むことも可能である。重鎖定常領域は、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、および/またはヒンジ領域を含むことも可能である。1つの態様において、重鎖定常領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むことも可能である。
【0050】
免疫グロブリンは、組換え的または合成的に産生することも可能である。免疫グロブリンをcDNAライブラリーから単離することも可能である。免疫グロブリンをファージライブラリーから単離することも可能である(McCaffertyら(1990)Nature 348: 552を参照されたい)。既知の配列の遺伝子シャフリングによって、免疫グロブリンを得ることも可能である(Markら(1992)Bio/Technol. 10: 779)。in vivo組換えによって免疫グロブリンを単離することも可能である(Waterhouseら(1993)Nucl. Acid Res. 21: 2265)。免疫グロブリンは、ヒト化免疫グロブリンであることも可能である(Jonesら(1986)Nature 332: 323)。
【0051】
Fc断片は、免疫グロブリンのCH2ドメインおよびCH3ドメイン、並びに場合によって免疫グロブリンのヒンジ領域で構成されることも可能である。Fc断片は、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEのものであることも可能である。1つの態様において、免疫グロブリンは、IgG、IgAまたはIgDである。1つの態様において、Fc断片は、IgGのFc断片である。Fc断片は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc断片であることも可能である。1つの態様において、免疫グロブリンは、ヒトIgG1である。さらに別の態様において、免疫グロブリンはIgG2である。別の態様において、Fc断片は、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371のアミノ酸配列、またはその類似体で構成される。1つの態様において、Fc断片は、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド446〜1126を含む核酸配列によりコードされる。
【0052】
FcRn結合パートナーまたはFc断片は、Fc変異体を含むことも可能である。Fc変異体は、天然Fcから修飾されているが、なおサルベージ受容体、FcRnの結合部位を含む、分子または配列を指す(WO 97/34631)。天然、は、人間によって修飾されていないFcを指す。WO 96/32478は、典型的なFc変異体、並びにサルベージ受容体との相互作用を記載する。したがって、用語「Fc変異体」は、1つの態様において、非ヒト天然Fcからヒト化された分子または配列を含む。さらに、天然Fcは、本発明の融合分子に必要でない構造特徴または生物学的活性を提供するため、除去することも可能な部位を含む。したがって、Fc変異体は、(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択した宿主細胞との不適合、(3)選択した宿主細胞中での発現に際するN末端不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、または(7)抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に、影響を及ぼすか、またはこれらに関与する、1以上の天然Fc部位または残基を欠く、分子または配列を含む。
【0053】
部位特異的変異形成などのよく認識される方法にしたがって、IgGのFc領域を修飾して、FcRnが結合するであろう修飾IgGまたはFc断片またはその一部を得ることも可能である。こうした修飾には、FcRn接触部位から遠く離れた修飾、並びにFcRnへの結合を保持するかまたは増進しさえする、接触部位内の修飾が含まれる。例えば、FcRnへのFc結合親和性を有意に損なうことなく、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)中の以下の単一アミノ酸残基を置換することも可能である:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、A330S、P331A、P331S、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447A。ここで、例えばP238Aは位置番号238で野生型プロリンがアラニンで置換されたことを示す。アラニンに加え、他のアミノ酸が、上に明記する位置で野生型アミノ酸を置換することも可能である。Fcに単一変異を導入して、天然Fcと異なる、100を超えるFcRn結合パートナーを生じることも可能である。さらに、これらの個々の変異のうち2、3、またはそれより多くを組み合わせて、さらに何百のFcRn結合パートナーを生じることも可能である。
【0054】
上述の変異のあるものは、FcRn結合パートナーに新たな官能性を与えることも可能である。例えば、1つの態様は、N297Aを取り込み、非常に保存されたN-グリコシル化部位を取り除く。この変異の影響は、免疫エフェクター細胞への結合を減少させ、そして免疫原性を潜在的に減少させて、それによってFcRn結合パートナーの循環半減期を増進させ、そしてFcRnへの親和性を損なうことなく、FcRn結合パートナーが、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合不能であるようにすることである(Routledgeら(1995)Transplantation 60: 847;Friendら(1999)Transplantation 68: 1632;Shieldsら(1995)J. Biol. Chem. 276: 6591)。さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマ受容体が、低部ヒンジ領域内のIgG上の結合部位、一般的にはアミノ酸234〜237を認識するようである。したがって、新規官能性および潜在的に減少した免疫原性の別の例は、この領域の変異から生じることも可能であり、例えばヒトIgG1のアミノ酸233〜236の「ELLG」を、IgG2由来の対応する配列「PVA」で置換することによって生じることも可能である(1アミノ酸欠失を伴う)。様々なエフェクター機能を仲介するFcγRl、FcγRII、およびFcγRIIIは、こうした変異が導入されたならば、IgG1に結合しえないことが示された(WardおよびGhetie(1995)Therapeutic Immunology 2: 77、並びにArmourら(1999)Eur. J. Immunol. 29: 2613)。上述の変異から生じる新たな官能性のさらなる例として、いくつかの場合、FcRnに対する親和性を、野生型のものより増加させることも可能である。この親和性の増加は、「オン」速度の増加、「オフ」速度の減少、または「オン」速度の増加および「オフ」速度の減少の両方を反映することも可能である。FcRnに対する親和性を増加させると考えられる変異には、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが含まれる(Shieldsら(2001)J. Biol. Chem. 276: 6591)。
【0055】
特定の態様において、FcRn結合パートナーまたはFc断片は、配列PKNSSMISNTP(SEQ ID NO: 11)を含み、そして場合によって、HQSLGTQ(SEQ ID NO: 12)、HQNLSDGK(SEQ ID NO: 13)、HQNISDGK(SEQ ID NO: 14)、またはVISSHLGQ(SEQ ID NO: 15;米国特許第5,739,277号)から選択される配列をさらに含むポリペプチドである。
【0056】
2つのFcRn受容体が単一のFc分子に結合可能である。結晶学的データによって、各FcRn分子がFcホモ二量体の単一のポリペプチドに結合することが示唆される。したがって、FcRn結合パートナー、例えばIgGのFc断片を、ヘテロ二量体FSHに連結すると、経口的に、経鼻的に、目の経路を介して、または肺経路を介して、FSHを送達する手段が提供される。経鼻送達するかまたは肺経路を介して送達するため、1つの態様において、融合タンパク質をエアロゾルとして投与する。
【0057】
当業者は、本発明の融合タンパク質に使用する免疫グロブリン定常領域の部分が、その変異体または類似体を含むことも可能であるし、あるいは化学的に修飾された免疫グロブリン定常領域またはその断片(例えばPEG化)を含むことも可能であることを理解するであろう(例えばAslamおよびDent(1998)Bioconjugation: Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, Macmillan Reference, Londonを参照されたい)。1つの例において、FcRnに対するFcRn結合パートナーの結合が増進された変異体を提供することも可能である。同様に、本発明の融合タンパク質の使用に意図されるのは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部のペプチド模倣体、例えばFc断片のペプチド模倣体またはFcRn結合パートナーのペプチド模倣体である。1つの態様において、ファージディスプレーを用いて、ペプチド模倣体が同定される(例えばMcCaffertyら(1990)Nature 348: 552;Kangら(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 4363;EP 0 589 877 B1を参照されたい)。
【0058】
4.場合によるリンカー
本発明の融合タンパク質は、場合によって、少なくとも1つのリンカー分子を含むことも可能である。1つの態様において、リンカーは、ペプチド結合によってともに連結されたアミノ酸で構成され、アミノ酸は、20の天然存在アミノ酸から選択される。様々な態様において、リンカーは、1〜5アミノ酸、1〜10アミノ酸、1〜20アミノ酸、10〜50アミノ酸、50〜100アミノ酸、または100〜200アミノ酸を含むことも可能である。1つの態様において、アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。1つの態様において、リンカーは、グリシンおよびアラニンなどの、立体的に妨害されないアミノ酸で大部分が構成される。
【0059】
1つの態様において、リンカーは、配列Gn(同等に、-(Gly)n-と同様)を含むことも可能である。1つの態様において、リンカーは、配列(GGS)nまたは(GGGGS)nを含むことも可能である。各場合で、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10などの整数であることも可能である。リンカーの例には、限定されるわけではないが、GGG、SGGSGGS(SEQ ID NO: 16)、GGSGGSGGSGGSGGG(SEQ ID NO: 17)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(SEQ ID NO: 18)、およびGGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO: 10;GS15)が含まれる。
【0060】
1つの態様において、リンカーは、8アミノ酸リンカーEFAGAAAV(SEQ ID NO: 9)である。
【0061】
非ペプチドリンカーもまた可能である。例えば、-NH-(CH2)m-C(O)-、式中、m=2〜20である、などのアルキルリンカーを用いることも可能である。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えばC1〜C6)低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH2、フェニルなどの非立体妨害基いずれかによって、さらに置換されることも可能である。典型的な非ペプチドリンカーはPEGリンカーである。本発明にしたがって有用なさらなるリンカーが、米国特許第6,660,843号に記載される。
【0062】
C.核酸構築物
本発明はまた、本発明のヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質をコードする核酸構築物にも関する。各核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第二の核酸配列に機能可能であるように連結された、FSHの1つのサブユニット、例えばFSHのアルファ・サブユニットをコードする第一の核酸配列を含む。1つの態様において、FSHのアルファ・サブユニットをコードする第一の核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第二の核酸配列に機能可能であるように連結され、そしてFSHのベータ・サブユニットをコードする第三の核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第四の核酸配列に機能可能であるように連結されている(第二の核酸配列および第四の核酸配列は、一般的に同一である)。したがって、本発明の核酸は、本融合体のポリペプチド鎖両方をコードする核酸構築物に関する。本発明の核酸は、単一の核酸構築物中、または別個の構築物中に、存在することも可能である。核酸配列はまた、当該技術分野において知られるさらなる配列または要素も含むことも可能である(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA配列、シグナル配列)。核酸配列は、場合によって、FSHのアルファ・サブユニットまたはベータ・サブユニットをコードする核酸配列とFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする核酸配列との間に配置される、リンカーをコードする配列を含むことも可能である。
【0063】
1つの態様において、各核酸構築物は、DNAで構成される。別の態様において、各核酸構築物は、RNAで構築される。核酸構築物は、ベクター、例えばウイルスベクターまたはプラスミドであることも可能である。ウイルスベクターの例には、限定されるわけではないが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、およびネズミ白血病ウイルスベクターが含まれる。プラスミドの例には、限定されるわけではないが、例えばpUC、pGEX、pcDNA3、pcDNA4、pcDNA6、およびpED.dCが含まれる。特定の態様において、プラスミドは発現ベクターである。
【0064】
1つの態様において、核酸構築物は、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3の核酸配列を含む。
【0065】
1より多いコドンが同一のアミノ酸をコード可能である、遺伝暗号の既知の縮重によって、DNA配列は、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3に示すものとは異なり、そしてなおそれぞれSEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることも可能である。こうした変異体DNA配列は、サイレント変異から生じることも可能であり(例えばPCR増幅中に起こる)、または天然配列の意図的な変異形成の産物であることも可能である。したがって、本発明は:(a)SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列を含むDNA;(b)SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4のポリペプチドをコードするDNA;(c)中程度のストリンジェンシーの条件下で、(a)または(b)のDNAにハイブリダイズ可能であり、そして本発明のポリペプチドをコードするDNA;(d)高ストリンジェンシーの条件下で、(a)または(b)のDNAにハイブリダイズ可能であり、そして本発明のポリペプチドをコードするDNA、並びに(e)(a)、(b)、(c)、または(d)に定義するDNAに対して、遺伝暗号の結果、縮重しており、そして本発明のポリペプチドをコードするDNAから選択される、本発明のポリペプチドをコードする単離DNA配列を提供する。もちろん、こうしたDNA配列によりコードされるポリペプチドは、本発明に含まれる。
【0066】
別の態様において、本発明の核酸分子はまた、天然配列に少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列も含む。やはり意図されるのは、核酸分子が、天然配列に少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.9%同一である配列を含む態様である。この背景において、天然配列は、天然に見出されうるような、Fc、αFSH、またはβFSHの配列を指すことも可能である。視覚的検査および数学的計算によって、同一性パーセントを決定することも可能である。あるいは、Devereuxら(1984)Nucl. Acids Res. 12:387に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピュータグループから入手可能である、GAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することによって、2つの核酸配列の同一性パーセントを決定することも可能である。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、並びにSchwartzおよびDayhoff監修, 1979, Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp.353-358に記載されるような、GribskovおよびBurgess(1986)Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;並びに(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。当業者に使用される配列比較の他のプログラムを使用することもまた可能である。
【0067】
D.融合タンパク質の合成
当該技術分野に周知の技術を用いて、本発明の融合タンパク質を合成することも可能である。例えば、本発明の融合タンパク質を、細胞中で組換え的に合成することも可能である(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.、およびAusubelら(1989)Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい)。
【0068】
免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHまたはその断片をコードするDNA配列を、当該技術分野において知られる様々なゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、またはRNAライブラリーからクローニングすることも可能である。プローブに基づく方法を用いて、こうしたDNA配列を単離するための技術は、慣用的な技術であり、そして当業者に周知である。こうしたDNA配列を単離するためのプローブは、公表されたDNA配列に基づくことも可能である(例えばHieterら(1980)Cell 22: 197-207を参照されたい)。Mullisら(米国特許第4,683,195号)およびMullis(米国特許第4,683,202号)に開示されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用することも可能である。こうしたDNA配列を単離するためのライブラリーの選択およびプローブの選択は、当該技術分野の一般的な技術レベル内である。あるいは、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHをコードするDNA配列を、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHを含有する、当該技術分野において知られるベクターから得ることも可能である。
【0069】
組換え体産生のため、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を、適切な発現ビヒクル、すなわち挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入する。融合タンパク質をコードする核酸を、適切な読み枠でベクターに挿入する。
【0070】
次いで、発現ビヒクルを適切な標的細胞にトランスフェクションするかまたは別の方式で導入して、該細胞がタンパク質、例えば融合タンパク質を発現させる。当該技術分野において知られるトランスフェクション技術には、限定されるわけではないが、リポソーム・トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿(Wiglerら(1978)Cell 14: 725)、およびエレクトロポレーション(Neumannら(1982)EMBO J. 1: 841)が含まれる。様々な宿主-発現ベクター系を利用して、真核細胞中で、本明細書記載の融合タンパク質を発現することも可能である。1つの態様において、真核細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CHO、BHK、COS、HeLa細胞)を含む、動物細胞である。融合タンパク質を真核細胞中で発現させる場合、融合タンパク質をコードするDNAはまた、融合タンパク質が分泌されるのを可能にするであろうシグナル配列もコードすることも可能である。当業者は、タンパク質が翻訳されると同時に、シグナル配列が細胞によって切断されて、成熟融合タンパク質が形成されることを理解するであろう。様々なシグナル配列、例えばマウスIgκ軽鎖シグナル配列が当該技術分野において知られる。あるいは、シグナル配列が含まれない場合は、細胞を溶解することによって、融合タンパク質を回収することも可能である。
【0071】
げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシなどのトランスジェニック動物において、本発明の融合タンパク質を合成することも可能である。用語「トランスジェニック動物」は、ゲノムに外来(foreign)遺伝子を取り込んだ非ヒト動物を指す。この遺伝子は生殖系列組織に存在するため、親から子孫に受け渡される。外因性遺伝子は単細胞胚に導入される(Brinsterら(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438)。免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニックを含めて、トランスジェニック動物を産生する方法が、当該技術分野において知られる(Wagnerら(1981)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6376;McKnightら(1983)Cell 34: 335;Brinsterら(1983)Nature 306: 332;Ritchieら(1984)Nature 312: 517;Baldassarreら(2003)Theriogenology 59: 831;Roblら(2003)Theriogenology 59: 107;Malassagneら(2003)Xenotransplantation 10(3): 267)。
【0072】
発現ベクターは、組換え的に産生されたタンパク質の容易な精製または同定を可能にするタグをコードすることも可能である。例には、限定されるわけではないが、ハイブリッド・タンパク質が産生されるように、本明細書記載の融合タンパク質をコードする配列を、lac zコード領域とインフレームでベクターに連結することも可能である、ベクターpUR278(Rutherら(1983)EMBO J. 2: 1791)が含まれ;pGEXベクターを用いて、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを持つタンパク質を発現させることも可能である。これらのタンパク質は、通常、可溶性であり、そしてグルタチオン-アガロースビーズに吸着させ、その後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、細胞から容易に精製可能である。精製後、タグを容易に除去するため、ベクターには、切断部位が含まれる(例えば、PreCissionプロテアーゼTM(Pharmacia、ニュージャージー州ピーパック)。さらなるタグには、FLAG、ヒスチジン・タグ(以下の実施例1を参照されたい)、マルトース結合タンパク質タグ、および当業者に知られる他のものが含まれる。
【0073】
産生効率を増加させるため、酵素切断部位により分離された、本発明の融合タンパク質の多数のユニットをコードするように、ポリヌクレオチドを設計することも可能である。ポリペプチド・ユニットを回収するため、生じたポリペプチドを切断する(例えば適切な酵素で処理することによる)ことも可能である。これは、単一プロモーターに駆動される、ポリペプチド収量を増加させうる。適切なウイルス発現系で用いた場合、mRNAによりコードされる各ポリペプチドの翻訳は、例えば内部リボソーム進入部位(IRES)によって、転写物内部で指示される。したがって、ポリシストロン性構築物は、単一の巨大ポリシストロン性mRNAの転写を指示し、これが次に、多数の個々のポリペプチドの翻訳を指示する。このアプローチは、ポリプロテインの産生および酵素プロセシングを排除し、そして単一プロモーターに駆動されるポリペプチドの収量を有意に増加させることも可能である。
【0074】
形質転換およびトランスフェクションに用いられるベクターは、通常、形質転換体およびトランスフェクタントを同定するのに用いられる選択可能マーカーを含有するであろう。細菌系において、これは、アンピシリン、ブラストサイジンまたはカナマイシンなどの抗生物質耐性遺伝子を含むことも可能である。培養哺乳動物細胞で使用するための選択可能マーカーには、薬剤、例えばネオマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ジェネテシン、ゼオシン、およびメトトレキセートに対する抵抗性を与える遺伝子が含まれる。選択可能マーカーは、増幅可能選択可能マーカーであることも可能である。1つの増幅可能選択可能マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR遺伝子)またはそのcDNAである(SimonsenおよびLevinson(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2495)。選択可能マーカーは、Thilly(1986)Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, Mass.に概説されており、そして選択可能マーカーの選択は、十分に当該技術分野の一般的な技術レベル内である。
【0075】
目的の遺伝子と同じ時点で、別個のプラスミド上の選択可能マーカーを細胞に導入することも可能であるし、または同一プラスミド上で導入することも可能である。同一プラスミド上の場合は、選択可能マーカーおよび目的の遺伝子は、異なるプロモーターまたは同一プロモーターの調節下にあることも可能であり、後者の配置では、二シストロン性メッセージが産生される。この種の構築物が当該技術分野において知られる(例えば、米国特許第4,713,339号)。
【0076】
発現系の発現要素は、強度および特異性が様々である。利用する宿主/ベクター系に応じて、恒常性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、いくつかの適切な転写要素および翻訳要素のいずれかを発現ベクターにおいて用いることも可能である。例えば、細菌系におけるクローニングの場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッド・プロモーター)などの誘導性プロモーター等を用いることも可能であり;昆虫細胞系におけるクローニングの場合、バキュロウイルス多角体プロモーターなどのプロモーターを用いることも可能であり;植物細胞系におけるクローニングの場合、植物細胞ゲノム由来のプロモーター(例えば熱ショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えばCaMVの35S RNAプロモーター;TMVのコートタンパク質プロモーター)を用いることも可能であり;哺乳動物細胞系におけるクローニングの場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、CMVプロモーター)を用いることも可能であり;多コピーの発現産物を含有する細胞株を生成する場合、適切な選択可能マーカーとともにSV40、BPV、およびEBVに基づくベクターを用いることも可能である。
【0077】
植物発現ベクターを用いる場合、本発明の融合タンパク質の直鎖型または非環状型をコードする配列の発現を、いくつかのプロモーターのいずれかによって駆動することも可能である。例えば、CaMVの35S RNAプロモーターおよび19S RNAプロモーター(Brissonら(1984)Nature 310: 511-514)、またはTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら(1987)EMBO J. 6: 307-311)などのウイルスプロモーターを用いることも可能であり;あるいは、RUBISCOの小サブユニット(Coruzziら(1984)EMBO J. 3: 1671-1680;Broglieら(1984)Science 224: 838-843)、あるいは熱ショックプロモーター、例えばダイズ(soybean)hsp17.5-Eまたはhsp17.3-B(Gurleyら(1986)Mol. Cell. Biol. 6: 559-565)などの植物プロモーターを用いることも可能である。Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを用いて、これらの構築物を植物細胞に導入することも可能である。こうした技術の概説には、例えば、Weissbach & Weissbach(1988)Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, N.Y., セクションVIII, pp.421-463;およびGrierson & Corey(1988)Plant Molecular Biology, 第2版, Blackie, London, 第7-9章を参照されたい。
【0078】
本発明の融合タンパク質を産生するのに使用可能な1つの昆虫発現系において、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を用いる。該ウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。コード配列を、該ウイルスの非必須領域(例えば多角体遺伝子)にクローニングし、そしてAcNPVプロモーター(例えば多角体プロモーター)の調節下に置くことも可能である。コード配列の挿入が成功すると、多角体遺伝子が不活性化され、そして非閉鎖型組換えウイルス(すなわち多角体遺伝子によりコードされるタンパク質性コートを欠くウイルス)が産生されるであろう。次いで、これらの組換えウイルスを用いて、Spodoptera frugiperda細胞を感染させ、該細胞中で、挿入された遺伝子が発現される(例えば、Smithら(1983)J. Virol. 46: 584;米国特許第4,215,051号を参照されたい)。この発現系のさらなる例を、Ausubelら監修(1989)Current Protocols in Molecular Biology, Vol.2, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscienceに見出すことも可能である。
【0079】
本発明の融合タンパク質を発現するのに使用可能な別の系は、グルタチオン・シンテターゼ遺伝子発現系であり、「GS発現系」とも称される(Lonza Biologics PLC, Berkshire, UK)。この発現系は、米国特許第5,981,216号に詳細に記載される。
【0080】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用することも可能である。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、コード配列をアデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば後期プロモーターおよび三分割(tripartite)リーダー配列に連結することも可能である。次いで、この融合遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えによって、アデノウイルス・ゲノムに挿入することも可能である。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば領域E1またはE3)に挿入すると、感染宿主において、生存可能であり、そしてポリペプチド・ペプチドを発現可能な組換えウイルスが生じるであろう(例えば、Logan & Shenk(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659を参照されたい)。あるいは、ワクシニア7.5Kプロモーターを使用することも可能である(例えばMackettら(1982)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 7415;Mackettら(1984)J. Virol. 49: 857;Panicaliら(1982)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 4927を参照されたい)。
【0081】
融合タンパク質のDNA構築物を含有する宿主細胞を、適切な増殖培地中で増殖させる。本明細書において、用語「適切な増殖培地」は、細胞の増殖に必要な栄養素を含有する培地を意味する。細胞増殖に必要な栄養素は、炭素供給源、窒素供給源、必須アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類および増殖因子を含むことも可能である。例えば、培地は、ウシ血清またはウシ胎児血清を含有することも可能である。増殖培地は、例えば、DNA構築物上の選択可能マーカー、またはDNA構築物と同時トランスフェクションされる選択可能マーカーによって補足される、薬剤選択または必須栄養素の欠損によって、DNA構築物を含有する細胞に関して、選択するであろう。培養哺乳動物細胞は、一般的に、商業的に入手可能な血清含有培地または血清不含培地(例えばMEM、DMEM)中で増殖される。用いる特定の細胞株に適した培地の選択は、当該技術分野の一般的な技術レベル内である。
【0082】
当該技術分野でよく確立された方法(例えばアフィニティー・クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)を用いて、本発明の組換え的に産生される融合タンパク質を培地から単離することも可能である。カラム・クロマトグラフィー、例えばプロテインAカラムによって、またはイオン交換クロマトグラフィーによって、本発明の融合タンパク質を培地から単離することも可能である。適切に増殖させた形質転換宿主細胞またはトランスフェクション宿主細胞由来の培地を、細胞成分から分離し、そして融合タンパク質の存在を立証する。融合タンパク質を検出する1つの方法は、例えば、本発明の融合タンパク質を認識する特異的抗体(例えば抗Fc抗体)への融合タンパク質または融合タンパク質の部分の結合による。抗融合タンパク質抗体は、問題の融合タンパク質に対して作成されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることも可能である。例えば、融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域の部分を含有することも可能である。多くの免疫グロブリンの定常領域を認識する抗体が、当該技術分野において知られ、そして商業的に入手可能である。抗体を用いてELISAまたはウェスタンブロットを行って、本発明の融合タンパク質の存在を検出することも可能である。
【0083】
E.融合タンパク質を用いる方法
本発明の融合タンパク質は、当業者に認識されるように、多くの用途を有し、これには、限定されるわけではないが、生殖障害を有する被験者を治療する方法、および受胎能を増加させる必要がある被験者を治療する方法、および/またはFSH異常治療のためのFSH療法が含まれる。
【0084】
1.生殖障害を有する被験者を治療する方法
本発明は、生殖障害またはFSH異常を有する被験者を治療する方法に関する。こうした異常は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 第15版, E. Braunwaldら監修, McGraw-Hill, New York, 2001に記載される。したがって、本発明は、本明細書に提供する融合タンパク質を投与することによって、FSH療法に応答性の疾患状態を治療する方法を提供する。こうした療法は、一般的に、不妊または生殖障害に関する。したがって、本発明は、被験者の受胎能を増進するのに十分な量の本融合タンパク質を投与することによって、被験者の受胎能を増加させる方法を提供する。1つの態様において、この方法を用いて、in vitro受精プロトコルの有効性を増進する。例えば、本発明の本融合タンパク質は、患者において、卵胞成熟および卵産生を刺激することによって、in vitro受精の成功を増進することも可能である。本発明はまた、望ましい卵産生または精子形成の増加を得るのに有効な量の本融合タンパク質を、被験者に投与することによって、被験者の卵産生を増加させる方法または精子形成を増加させる方法も提供する。
【0085】
本明細書において、被験者は、哺乳動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類であることも可能である。1つの態様において、被験者はヒトである。
【0086】
本発明の1つの態様において、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法を提供する。この態様によって、現在の方法が可能にするよりも少ない頻度で、被験者にFSHを投与することも可能である。例えば、本発明のFSH融合体を、8〜12日の周期に渡って、わずか1回、2回、または3回投与することも可能である。
【0087】
本発明の既定のヘテロ二量体FSH-Fc構築物の活性、および上述の治療法におけるその有用性を決定するために利用可能な数多くのアッセイがある。標準的アッセイを以下に列挙し、そしていくつかを、特定のプロトコルに加えた修飾と共に、続く実施例に、詳細に記載する。
【0088】
標準的in vitroアッセイには:エストロゲン産生を測定するラット・セルトリ細胞バイオアッセイ(Dorrington, JHおよびArmstrong, DT(1975)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 2677);アロマターゼ活性を測定するラット・セルトリ細胞バイオアッセイ(Padmanabhan V, Chappel SC, Beitins, IZ(1987)Endocrinology 121: 1089-1098);アロマターゼ活性を測定するラット顆粒膜細胞バイオアッセイ(Jia XCおよびHsueh AJW(1986)Endocrinology 119: 1570-1577;Dahl KDら(1987)J Clin Endocrinol Metab 64: 486-493);およびFSH受容体結合/cAMP産生アッセイ(Tano M, Minegishi T, Nakamura K, Karino S, Ibuki Y(1995)Fertil Steril 64: 1120-1124)が含まれる。
【0089】
標準的in vivoアッセイには:げっ歯類における、Steelman Pohleyアッセイとして知られる、卵巣重量増加(Steelman SLおよびPohley FM(1953)Endocrinology 53: 604-616)および精巣重量増加(Meachem SJ, McLachlan RI, deKretser DM, Robertson DM, Wreford NG(1996)Biol Reprod 54: 36-44);非ヒト霊長類における、エストロゲン産生(Klein Jら(2002)Fertil Steril 77: 1248-1255)およびインヒビン・レベル(Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 113-121);並びにヒトにおける、血清エストロゲン、血清インヒビンおよび卵胞サイズ/数(Porchet HCら(1994)Fertil Steril 61: 687-695)が含まれる。
【0090】
本発明の融合タンパク質を、静脈内投与、皮下投与、筋内投与することも可能であるし、または粘膜表面いずれかを介して、例えば経口投与、舌下投与、頬側投与、経鼻投与、直腸投与、膣投与するか、あるいは肺経路を介して投与することも可能である。融合タンパク質を、バイオポリマー固体支持体内に移植するか、または該支持体に連結して、融合タンパク質の徐放を可能にすることも可能である。1つの態様において、融合タンパク質は非経口的に投与される。1つの態様において、融合タンパク質は経口投与される。1つの態様において、融合タンパク質は、肺経路を介して投与される。
【0091】
本発明の融合タンパク質の用量は、被験者に応じて、そして用いる特定の投与経路に応じて、変化しうる。投薬量は、0.1〜100,000μg/kg体重の範囲であることも可能である。1つの態様において、投薬範囲は、0.1〜1,000μg/kgである。タンパク質を連続投与するか、または特定の時間間隔で投与することも可能である。in vitroアッセイを使用して、最適用量範囲および/または投与スケジュールを決定することも可能である。FSH活性を測定するin vitroアッセイが、上に詳述するように、当該技術分野において知られる。さらに、動物モデル、例えば非ヒト霊長類から得た、用量-反応曲線から、有効用量を外挿する(extrapolate)ことも可能である。
【0092】
本発明はまた、本融合タンパク質および薬学的に許容しうるキャリアーまたは賦形剤を含む薬剤組成物にも関する。適切な薬剤キャリアーの例は、E.W. Martinによる、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。賦形剤の例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、ヒト血清アルブミン、界面活性剤(例えばTween-20)、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水、エタノール等が含まれることも可能である。組成物はまた、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤も含有することも可能である。
【0093】
経口投与のため、薬剤組成物は、慣用的手段によって調製される錠剤またはカプセルの形を取ることも可能である。組成物はまた、液体、例えばシロップまたは懸濁物として、調製されることも可能である。液体には、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えばメチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)が含まれることも可能である。調製物はまた、香味料、着色料および甘味料も含むことも可能である。あるいは、水または別の適切なビヒクルとの構成のため、組成物は、乾燥産物として提示されることも可能である。
【0094】
頬側投与のため、組成物は、慣用的プロトコルにしたがって、錠剤またはロゼンジの形を取ることも可能である。
【0095】
吸入による投与のため、本発明にしたがって使用するための化合物を、賦形剤を含むかまたは含まない噴霧化エアロゾルの形で、あるいは場合によって噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切なガスを用いた、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル・スプレーの形で、好適に送達する。加圧エアロゾルの場合、計測した量を送達するためのバルブを提供することによって、投薬単位を決定することも可能である。吸入器(inhalerまたはinsufflator)中で使用するための、化合物および適切な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含有する、例えばゼラチンの、カプセルおよびカートリッジを配合することも可能である。本明細書に援用されるU.S.2003/023553 A1に記載されるように、本発明の融合タンパク質を含有するエアロゾルを調製することも可能である。
【0096】
注射または注入による非経口(例えば静脈内または筋内)投与のため、薬剤組成物を配合することも可能である。注射または注入のための配合物は、単位投薬剤型、例えば保存剤が添加されたアンプルまたは多用量容器中で提示されることも可能である。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液、またはエマルジョンなどの形を取ることも可能であり、そして懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合用の剤を含有することも可能である。あるいは、適切なビヒクル、例えば発熱物質不含水との構成のため、活性成分は粉末型であることも可能である。
【0097】
座薬または停留浣腸剤として直腸投与するため、薬剤組成物を配合することもまた可能であり、こうした剤は、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの慣用的な座薬基剤を含有する。
【0098】
実施例
実施例1 一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合分子の構築
一本鎖FSH-Fc構築物のため、標準的逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)技術を用いて、ヒト下垂体mRNAライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)から、天然シグナル配列とともにFSHベータを単離した。同じヒト下垂体mRNAライブラリーからFSHアルファを単離したが、シグナル配列は含まなかった。2つのFSHサブユニットを連結して、3’終止コドンを伴わない、連続FSHベータ-FSHアルファ融合体を形成した。標準的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、先に記載されるように(U.S.2003/0235536 A1)、ヒトIgG1のFc断片(ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン;アミノ酸221〜447、EU番号付け)を調製した。Fc断片の5’端に8アミノ酸リンカー配列(EFAGAAAV;SEQ ID NO: 9)を生成するように、プライマーを設計した。アデノウイルス主要後期プロモーターおよび選択可能マーカーとしてのマウス・ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子を含有する哺乳動物発現ベクター、pED.dC(Genetics Institute, Cambridge, MA)に、ヒトFc PCR断片をクローニングした。次いで、ヒトFc配列を含有するpED.dCに、一本鎖FSH分子をクローニングし、こうしてFSHサブユニットをFcに連結する8アミノ酸リンカーを持つ、FSHベータ-FSHアルファ-Fcの融合分子を生成した(図1a)。
【0099】
ヘテロ二量体FSH-Fc構築物のため、同じヒト甲状腺mRNAライブラリーから、各々その天然シグナル配列を含むFSHアルファ・サブユニットおよびFSHベータ・サブユニットの両方を単離した。pED.dC中のFc由来の8アミノ酸リンカー配列を、15アミノ酸リンカー配列、GS15((GGGGS)3;SEQ ID NO: 10)で置き換えた。標準的PCR技術を用いてpED.dC中のアデノウイルス主要後期プロモーターをCMVプロモーターで置き換え、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの5’端および3’端上に制限部位を生成し、これによって、アデノウイルス主要後期プロモーターを切除し、そしてCMVプロモーターで置き換えるのを可能にした。PCR反応のテンプレートは、CMVプロモーターおよび選択目的のブラストサイジン遺伝子を含有する哺乳動物発現ベクターである、pcDNA6/V5-His(Invitrogen, Carlsbad, CA)であった。pED.dC由来のGS15リンカー/Fc断片を、pcDNA/V5-Hisにもまた連結して、ユニークな選択マーカーを持つ第二のベクターを生成した。次いで、FSHアルファをGS15-Fc-pED.dCベクターにクローニングし、一方、FSHベータをGS15-Fc-pcDNA6/V5-Hisにクローニングした。精製目的のため、6Hisタグ配列を、pcDNA6/V5-His中のFSHベータ-Fc中のFcの3’端に融合させた(図1b)。
【0100】
生じたFSH-アルファ-Fcの全長ヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2として提供する。
【0101】
【化1】
【0102】
上に示すSEQ ID NO: 1において、シグナル配列を下線で示し、そしてGS15リンカー配列のコード配列を太字で示す。FSHアルファの5’プライマー配列は:ggctagcctgcaggccaccatggattactacagaaaatatgc(SEQ ID NO: 5)であった。FSHアルファの3’プライマー配列は:tccaccggatccgcctccaccagatttgtgataataacaagtact(SEQ ID NO: 6)であった。
【0103】
【化2】
【0104】
上に示すSEQ ID NO: 2において、シグナル配列を下線で示し、そしてリンカー配列を太字で示す。Fc断片はアミノ酸番号132〜358である。
【0105】
生じた、6Hisタグを含むFSHベータ-Fcの全長ヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、SEQ ID NO: 3およびSEQ ID NO: 4として提供する。
【0106】
【化3】
【0107】
上に示すSEQ ID NO: 3において、シグナル配列を下線で示し、6Hisタグを斜字で示し、そしてGS15リンカー配列を太字で示す。FSHベータの5’プライマー配列は:ggctagcctgcaggccaccatgaagacactccagtttttct(SEQ ID NO: 7)であった。FSHベータの3’プライマー配列は:tccaccggatccgcctccaccttctttcatttcaccaaagga(SEQ ID NO: 8)であった。
【0108】
【化4】
【0109】
上に示すSEQ ID NO: 4において、シグナル配列を下線で示し、Hisタグを斜字で示し、そしてGS15リンカー配列を太字で示す。Fc断片はアミノ酸番号145〜371である。
【0110】
実施例2 一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの発現および精製
標準的Superfectトランスフェクション・プロトコル(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を欠くCHO DG44細胞に、一本鎖FSH-Fcをトランスフェクションした。48時間後、5%透析FBSを含有し、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないMEMα中で、トランスフェクション細胞を選択した。より高いタンパク質発現レベルを得るため、200 nMまでのレベルのメトトレキセートで細胞を処理した。発現研究のため、DMEM:F12+10%FBS中、ローラーボトルに細胞を植え付け、そして3日間インキュベーションした後、培地をDMEM:F12+5μg/mlヒト・インスリンに交換した。10日間、毎日、調整培地(conditioned medium)を収集し、そして次いで、0.2μmフィルターを通じてろ過し、そして精製するまで4℃で保存した。標準的プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィーを用いて、細胞上清から一本鎖FSH-Fcを精製した。一本鎖FSH-Fcを含有する培地をひとたび装填したら、5〜10カラム体積のPBS(10 mMホスフェートpH7.4、2.7 mM KClおよび137 mM NaCl)でプロテインAカラムを洗浄し、そして結合したタンパク質を0.1 MグリシンpH3.0で溶出した。次いで、溶出した一本鎖FSH-FcをPBS中にて透析し、そして10%グリセロールを含有するアリコット中、-80℃で保存した。一本鎖FSH-Fcは、単回プロテインAクロマトグラフィー工程後、およそ90%純粋である(図2)。
【0111】
標準的Superfectトランスフェクション法を用いて、FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fc-6His発現ベクターを、CHO DG44細胞に同時トランスフェクションすることによって、ヘテロ二量体FSH-Fcを発現させた。トランスフェクション48時間後、5%透析FBSおよび10μg/mlブラストサイジンを含有し、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないMEMα中で、細胞を選択して、FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fc発現ベクターの両方を含有する細胞のみを選択した。より高い発現レベルを得るため、50 nMまでのメトトレキセートで細胞を処理した。発現研究のため、細胞をローラーボトルに植え付け、そして一本鎖FSH-Fcと同じ方式で、分泌タンパク質を含有する細胞上清を収集した。FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fcを同時トランスフェクションしたため、細胞上清は、FSHアルファ-Fcホモ二量体、FSHベータ-Fcホモ二量体、およびヘテロ二量体FSH-Fcの混合物を含有し、分離する必要があった。プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィーを用いた最初の精製を、一本鎖FSH-Fcに関して上述したのと同じ方式で行った。プロテインA溶出後、ニッケル・アフィニティー・クロマトグラフィーによって、タンパク質をさらに精製した。FSHベータ-Fcホモ二量体およびヘテロ二量体FSH-Fcは、6Hisタグが存在するため、ニッケル・アフィニティー・カラムに結合する。イミダゾール勾配(0〜500 mM)での溶出によって、ヘテロ二量体FSH-FcをFSHベータ-Fcホモ二量体から分離して、ヘテロ二量体FSH-Fcはおよそ30〜90 mMイミダゾールで溶出した。ヘテロ二量体FSH-Fcは、プロテインAおよびニッケル・アフィニティー・クロマトグラフィー工程後、およそ90%純粋であった(図2)。
【0112】
図1cは、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質の模式図を示す。この例では、一本鎖FSH-Fcは、FSHアルファ、FSHベータ、並びにヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むヒトIgG1分子のFc部分の融合分子である。したがって、一本鎖FSH-FcのFc二量体は、2つのFSHアルファ・サブユニットおよび2つのFSHベータ・サブユニットを含有した。対照的に、この例では、Fc二量体が、一方のFc鎖上に単一のFSHアルファ・サブユニットを、そしてもう一方のFc鎖上に単一のFSHベータ・サブユニットを含有する方式で、ヘテロ二量体FSH-Fcを作製した。一本鎖FSH-Fc分子には過剰なFSHサブユニットがあるため、SDS-PAGEゲル上、還元条件(それぞれ、50 kDaと比較して、およそ75 kDa)または非還元条件(それぞれ、100 kDaに比較して、およそ150 kDa)下のいずれかで泳動した場合でも、ヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質よりも、一本鎖FSH-Fcタンパク質のほうが大きい(図2)。非還元条件下では、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcはどちらも、主に、Fc二量体を形成する(図1cおよび図2)。
【0113】
実施例3 げっ歯類薬力学研究:皮下投薬
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質がヒト組換えFSHと類似の生物活性を有するかどうかを決定するため、21日齢の雌ラット(群あたり10匹のラット)に、単回用量のPBS中の組換えFSH(Follistim、Organon, West Orange, NJ)、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fc 1 nmol/kgを皮下投薬した。投薬72時間後、各ラットで卵巣重量を測定した。Steelman SLおよびPohley FM(1953)Endocrinol 53: 604-16。SigmaStat、バージョン2.0(RockWare, Inc., Golden, CO)を用いて、統計分析した。結果を図3に示す。
【0114】
図3に示すように、ビヒクルに比較して、組換えFSHの単回用量で処置した雌ラットで、卵巣重量が有意に増加した(それぞれ、12.1±1.0 mgに比較して、14.3±1.7 mg、p=0.003)。しかし、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcは、ビヒクル処置群およびFSH処置群に比較して、卵巣重量のさらに大きい増加を生じた(それぞれ、20.8±3.9 mgおよび26.9±6.1 mg;p<0.001)。この実験では、ヘテロ二量体FSH-Fcは、一本鎖FSH-Fcよりも有意により活性であった(p=0.016)。
【0115】
実施例4 げっ歯類薬物動態研究
新生仔ラットは、生まれて最初の3週間、小腸において、高レベルのFcRnを発現する。したがって、この系を用いて、Fc融合タンパク質などのFcRn結合分子の経口送達を測定することも可能である。10日齢の新生仔ラット(群あたり4匹のラット)に、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含有する正常生理食塩水中、0.3 mg/kgの一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcを経口投薬した。投薬後、様々な時点で、心臓穿刺によって血液を収集し、そして血清を調製した。ELISAで分析するまで、血清を-20℃で保存した。抗FSHコーティング抗体(Fitzgerald Industries, Concord, MA)および西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ・コンジュゲート化・抗Fc検出抗体(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)を用いて、サンドイッチELISAを発色させた。ラットに投薬するのに用いたものと同一ロットのタンパク質を用いて、ELISAについての標準曲線を生成した。試料を3つ組で分析した。WinNonlinバージョン4.1(Pharsight, Mountain View, CA)を用いて、薬物動態パラメーターを概算した。結果を図4に示す。
【0116】
図4に示すように、高レベルの一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcを、経口投薬(それぞれ、平均最大血清濃度である、2.4μg/mlおよび3.8μg/ml)後、新生仔ラット血清中で測定し、そして両方のタンパク質は、それぞれ、60時間および69時間の長い最終半減期を有した。図3の生物活性結果と組み合わせると、これらのデータは、組換えFSHに比較して、一本鎖およびヘテロ二量体FSH-Fcのin vivo活性がより高いのは、融合タンパク質の半減期が長いためである可能性があることを示唆する。
【0117】
実施例5 新生仔ラットにおける一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口送達におけるFcRnの役割
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口送達が、FcRn結合およびトランスサイトーシスのためであることを示すため、10日齢の新生仔ラットに、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含む正常生理食塩水中、125I標識一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcおよび300倍過剰の非標識ヒトIgG1(ICN, Irvine, CA)の混合物を経口投薬した。製造者のプロトコルにしたがって、ヨードビーズ(Pierce)を用い、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcを、125Iヨウ化ナトリウム(Perkin Elmer, Boston, MA)でヨウ素化した。PD-10脱塩カラム上で、ヨウ素化タンパク質から遊離ヨウ素を分離した。投薬2時間後、心臓穿刺によって血液を収集し、そして血清を調製した。血清100μlアリコットを、プロテインA Trisアクリルアミド・ビーズ(Pierce)と、4℃で1時間インキュベーションした。次いで、プロテインAビーズをPBSで2回洗浄し、そして10% β-メルカプトエタノールを含有するSDS試料緩衝液で溶出した。試料を煮沸し、そして4〜20% SDS-PAGEゲル上で分析し、乾燥させ、そしてStorm Phosphorimager(Molecular Dynamics, Piscataway, NJ)上で定量化を行った。結果を図5に示す。
【0118】
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc両方の経口送達は、過剰なIgG1の存在下で非常に減少した(ホスホイメージ分析によって決定した際、それぞれ、83%および53%の輸送減少)。IgG1はFcRnの天然リガンドであるため、これによって、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-FcがFcRnに特異的に結合し、そしてFcRnによって輸送され、そしてこのプロセスが、過剰なIgG1の存在によって乱されうることが示唆される。
【0119】
実施例6 げっ歯類薬力学研究:経口投薬
2日齢雄ラット(群あたり10匹のラット)に、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含むPBS中、1 nmol/kgの組換えヒトFSH(Follistim、Organon)、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fcを経口投薬した。ラットに毎日、14日間投薬した後、各動物の右の精巣を取り除き、そして重量測定した。Meachem SJら(1996)Biol Reprod 54: 36-44。SigmaStatバージョン2.0(RockWare, Inc.)を用いて統計分析した。結果を図6に示す。
【0120】
図6に示すように、このアッセイにおいて、組換えFSHは、ビヒクル処置群に比較して、精巣重量の増加を生じず(それぞれ、55.4±8.1 mgに比較して、49.1±8.1 mg)、このモデルにおいて、組換えFSHは経口で活性ではないことが示唆された(図6a)。対照的に、一本鎖FSH-Fc(図6aおよび図6b)およびヘテロ二量体FSH-Fc(図6b)処置は、ビヒクル処置動物に比較して、精巣重量の有意な増加を生じた(58.6±10.4 mgに比較して、それぞれ、113.0±19.8 mgおよび139.6±11.9 mg;p<0.001)。皮下投薬実験と同様、ヘテロ二量体FSH-Fcは、この実験において、一本鎖FSH-Fcより有意により活性であった(p=0.003)。
【0121】
実施例7 カニクイザル(cynomolgus monkey)における薬物動態研究
我々は以前、カニクイザルおよびヒトの肺におけるFcRnの発現を示し、そしてエリスロポエチン-Fc融合タンパク質が、肺投与後に吸収され、そして活性を保持することを示した(Spiekermann GMら(2002)J Exp Med 196: 300-310;Bitonti AJら(2004)Proc Natl Acad Sci USA 101: 9763-9768)。したがって、我々は次に、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcが、非ヒト霊長類の肺を通じて投薬可能であり、そして生物学的活性を保持可能であるかどうかを決定することを求めた。
【0122】
カニクイザルを用いたすべての研究は、認可されたプロトコルを用い、研究動物の飼育および使用に関するNIHガイドラインにしたがって、行った。肺投与前、ケタミンおよびバリウムを組み合わせて動物を麻酔し、そして気管内チューブを挿管した。Aeroneb ProTMネブライザー(Aerogen, Mountain View, CA)を用いて、一本鎖FSH-Fc(PBS pH7.4中)およびヘテロ二量体FSH-Fc(0.1%ヒト血清アルブミンを含むPBS pH7.4中)のエアロゾルを生成し、そして気管内チューブを通じて、カニクイザルに投与した(沈着用量およそ45μg/kg)。一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの送達が中央部気道を標的とするように、各サルの呼吸の深さ(肺活量20〜40%)および速度(1分あたり28〜30の呼吸)を、Bird Mark 7A呼吸器によって制御した。エアロゾル粒子サイズは、およそ4〜5μmであった。肺投薬後、様々な時点で血液試料を収集し、そして血清を調製した。製造者の指示にしたがって、商業的に入手可能なFSH ELISAキット(DRG International, Mountainside, NJ)を用いて、血清一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcレベルを定量化した。サルに投薬するために使用したものと同一ロットの一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcを用いて、各アッセイの標準曲線を生成した。WinNonlinバージョン4.1(Pharsight)を用いて、薬物動態パラメーターを概算した。結果を表2および図7に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
各タンパク質およそ45μg/kgの沈着用量によって、91 ng/mlおよび94 ng/mlの一本鎖FSH-Fc、並びに69 ng/mlおよび131 ng/mlのヘテロ二量体FSH-Fcの最大血清濃度が生じた(表2)。両タンパク質の最終半減期は、一本鎖FSH-Fcに関しては55時間および210時間、そしてヘテロ二量体FSH-Fcに関しては182時間および219時間と測定された(表2)。これらの半減期は、ヒト(le Cotonnec J-Yら(1994)Fertil Steril 61: 679-686)および非ヒト霊長類(Porchet HCら(1993)Drug Metab Dispos 21: 144-150;Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 112-121)でおよそ24時間である、組換えFSHのものより有意に長い。したがって、不妊治療にFSH-Fc融合タンパク質を用いる利点は、投薬頻度が非常に減少する可能性があることであろう。
【0125】
実施例8 カニクイザルにおける薬力学測定
インヒビンは、FSH活性の薬力学マーカーである。したがって、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの肺投薬後に得た血清試料を用いて、製造者の指示にしたがって、商業的に入手可能なELISAキット(Diagnostic Systems Laboratories, Webster, TX)を用い、インヒビン・レベルもまた測定した。Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 113-121。結果を図8に示す。およそ45μg/kgの一本鎖FSH-Fcの沈着肺用量は、1 ng/mlおよび1.6 ng/mlの最大インヒビンB濃度を生じ、これはベースラインレベルを超える1.2倍および1.4倍の刺激と同等であった。ヘテロ二量体FSH-Fcの同一沈着肺用量は、2.7 ng/mlおよび7.4 ng/mlの最大インヒビンB濃度を生じ、これはベースラインを超える7.1倍および5.9倍の刺激と同等であった。肺へテロ二量体FSH-Fcで処置した14日後、インヒビンBレベルはベースラインに戻らなかった。
【0126】
本明細書に引用するすべての参考文献は、個々の刊行物または特許または特許出願が、具体的に、そして個々に、すべての目的のため、完全に援用されると示されるのと同じ度合いで、完全に、そしてすべての目的のため、本明細書に援用される。援用される刊行物および特許または特許出願が本明細書に含有される開示と矛盾する範囲では、本明細書がこうした矛盾材料のいずれよりも優先され、そして/または勝ると意図される。
【0127】
本明細書および請求項に用いられる成分、反応条件などの量を表す数字はすべて、すべての場合で用語「約」によって、修飾されると理解するものとする。したがって、反対に示されない限り、本明細書および付随する請求項に示される数字パラメーターは、およそのものであり、本発明によって得ようと求める望ましい特性に応じて様々であることも可能である。最低限でも、そして請求項の範囲に同等な理論の適用を限定することを試みることなく、各数字パラメーターは、有意な数字および一般的な丸めアプローチの見地で解釈すべきである。
【0128】
本発明の多くの修飾および変動は、当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、行うことも可能である。本明細書記載の特定の態様は、例のみとして提供され、そしていかなる点でも、限定することを意図しない。本明細書および実施例は、例示のみとみなされ、本発明の真の範囲および精神は、請求項によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1a】図1aは、一本鎖FSH-Fcタンパク質を生成するために作製されたDNA構築物を示す模式図である。
【図1b】図1bは、ヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質を生成するために作製されたDNA構築物を示す模式図である。
【図1c】図1cは、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質を示す模式図である。
【図2】図2は、還元条件下および非還元条件下で泳動した、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-FcのSDS-PAGEゲルの画像である。レーン1、還元一本鎖FSH-Fc;レーン2、還元ヘテロ二量体FSH-Fc;レーン3、非還元一本鎖FSH-Fc;およびレーン4、非還元へテロ二量体FSH-Fc。
【図3】図3は、1 nmol/kgの組換えFSH、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fcの単回皮下用量で処置した、21日齢の雌ラットの卵巣重量を示す棒グラフである。投薬72時間後に卵巣重量を測定した。データを平均卵巣重量±標準偏差(SD)として示す。n=10/群。
【図4】図4は、0.3 mg/kgの単回経口投与後、新生仔ラット血清中の一本鎖FSH-Fc(円)およびヘテロ二量体FSH-Fc(三角形)のレベルを示すグラフである。n=4/時点。
【図5】図5は、新生仔ラットにおける一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口取り込みに対する過剰なIgGの影響を示す、SDS-PAGEゲルの画像である。レーン1、50,000 cpm投入一本鎖FSH-Fc;レーン2、125I-一本鎖FSH-Fc;レーン3、過剰なIgGの存在下での125I-一本鎖FSH-Fc;レーン4、50,000 cpm投入へテロ二量体FSH-Fc;レーン5、125I-へテロ二量体FSH-Fc;レーン6、過剰なIgGの存在下での125I-へテロ二量体FSH-Fc。
【図6a】図6aは、組換えFSHまたは一本鎖FSH-Fcの単回経口投与(1 nmol/kg)で14日間、毎日処置した、2日齢の雄ラットの精巣重量を示す棒グラフである。データを、平均精巣重量±SDとして示す。n=6〜10/群。
【図6b】図6bは、一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcの単回経口投与(1 nmol/kg)で14日間、毎日処置した、2日齢の雄ラットの精巣重量を示す棒グラフである。データを、平均精巣重量±SDとして示す。n=6〜10/群。
【図7a】図7aは、一本鎖FSH-Fc 45μg/kgの単回沈着肺投与後の、カニクイザル血清中の濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図7b】図7bは、ヘテロ二量体FSH-Fc 45μg/kgの単回沈着肺投与後の、カニクイザル血清中の濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図8a】図8aは、45μg/kgの一本鎖FSH-Fcを単回沈着肺用量後の、カニクイザル血清中のインヒビンB濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図8b】図8bは、45μg/kgのヘテロ二量体FSH-Fcを単回沈着肺用量後の、カニクイザル血清中のインヒビンB濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、生殖障害療法剤の分野に関する。より具体的には、本発明は、不妊治療のためのヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン-Fc融合タンパク質に関する。
【0002】
発明の背景
不妊は、カップルの10分の1に影響を及ぼし、その結果、何百万というカップルが妊娠しようと苦闘している。これらのカップルの多くが、不妊治療の潜在的な候補である。尿から抽出されるかまたは組換え的に産生されるかいずれかの、卵胞刺激ホルモン(FSH)は、受胎能を増加させるために専門家によって用いられる、非経口投与タンパク質製剤であり、そして1960年代からそのように臨床的に用いられてきている。例えば、FSHは、排卵誘発(OI)および過排卵誘起(COH)に用いられている。OIは単一の卵胞の排卵を達成することに向けられる一方、COHは、様々なin vitro補助生殖技術に使用するため(例えばin vitro受精のため)、多数の卵母細胞を採取することに向けられる。FSHはまた、男性のゴナドトロピン補充療法にも用いられる。
【0003】
FSHの使用は、コストが高く、専門医師による長期監視の必要があり、経口投薬または他の非侵襲性投与経路がなく、そして患者が毎日注射を必要とすることによって、制限されている。組換えFSHは、半減期が短く、そしてそれに相応して生体効力が減少する欠点を有し、頻繁に投与する必要があり、そして臨床的有用性が限られている。例えば、組換えヒトFSH(hFSH)を排卵誘発に用いる際、しばしば8〜12日、またはそれより長く、毎日、筋内注射または皮下注射として投与しなければならない。これらの措置は、局所過敏および不快感を含む、多数の副作用と関連付けられ、この結果、コンプライアンスが低下し、そして療法効能が減少する。したがって、伝統的な型のFSH療法に比較して半減期が増加しおよび生物学的利用能が高い型のFSHに対する必要性が存在する。
【0004】
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、天然では、アルファ(α)サブユニットおよびベータ(β)サブユニットからなる非共有的に連結されたヘテロ二量体タンパク質として、見いだされる(Pierce JGおよびParsons TF(1981)Ann Rev Biochem 50: 465-95)。サブユニット組み立ては、FSHの生物活性に必須であり(Jia XCおよびHseuh AJW(1986)Endocrinology 119: 1570-7)、並びにベータ・サブユニットの安定性に必須である(Keeneら(1989)J Biol Chem 264: 4769-75)ことが報告されてきている。
【0005】
FSH療法を改善する1つのアプローチは、タンパク質のグリコシル化を増加させることによるものであった。他のアプローチには、不妊治療用のカルボキシ末端部分(CTP)伸長型のFSH(例えば米国特許第5,338,835号およびU.S.2003/0211580 A1を参照されたい)またはFSH模倣体(mimetics)(例えば米国特許第6,653,338号を参照されたい)が含まれた。しかし、半減期および生物活性を改善しようとする初期の試みは、現存する療法に勝る利点を提供可能な、臨床的に有効な薬剤を生じるには至っていない。
【0006】
FSHのαサブユニットおよびβサブユニットの一本鎖融合体(一本鎖FSH)が完全に活性であることもまた、報告された(Sugaharaら(1996)J Biol Chem 271: 10445-8)。一本鎖FSHは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)のカルボキシ末端ペプチドと融合させた際、血清半減期を増加させることが報告されている(Kleinら(2003)Hum Reprod 18: 50-6;Boulouxら(2001)Hum Reprod 16: 1592-7;Duijkersら(2002)Hum Reprod 17: 1987-93を参照されたい)。
【0007】
ヘテロ二量体FSHの使用およびその配合には、一本鎖FSHには存在しない、安定性および精製の問題が山積している。組換えFSHは知られている(例えば米国特許第5,767,251号を参照されたい)が、療法目的に有用な生物学的活性分子を生じる方式でアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが会合するように維持することは、そして特に、長期作用型のヘテロ二量体FSHの場合には、本発明以前には困難なままであった。
【0008】
目的のタンパク質またはその断片に連結された免疫グロブリン定常領域で構成される融合タンパク質の生成が記載された(例えば米国特許第5,155,027号、第5,428,130号、第5,480,981号、および第5,808,029号を参照されたい)。これらの分子は、通常、連結された目的の分子に関連する生物学的活性、並びにエフェクター機能、または免疫グロブリン定常領域に関連する何らかの他の望ましい特性の両方を所持する。免疫グロブリンのFc部分を含む融合タンパク質は、安定性の増加、血清半減期の増加(Caponら(1989)Nature 337: 525を参照されたい)、並びに新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合(米国特許第6,086,875号、第6,030,613号、および第6,485,726号)を含む、いくつかの望ましい特性を融合タンパク質に与えることも可能である。
【0009】
FcRnは、成体上皮組織で活性であり、そして腸、肺気道、鼻腔面、膣表面、結腸および直腸表面の管腔で発現される(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーを含む融合タンパク質(例えばIgG、Fc断片)は、FcRnによって上皮障壁を効率的に往復することも可能であり、したがって、望ましい療法分子を全身投与する、非侵襲性の手段を提供可能である。さらに、FcRn結合パートナーを含む融合タンパク質はエンドサイトーシスを受け、そしてFcRnを発現する細胞によって保護される。これらの融合タンパク質は、分解されるようにマークされる代わりに、再び循環中にリサイクルされ、したがって、これらのタンパク質のin vivo半減期は増加する。
【0010】
FSHは、U.S.2003/0235536 A1に記載されるように、Fcにコンジュゲート化された。しかし、その文献中には、非ヒト霊長類の中央部気道に送達するための一本鎖FSH-Fc融合タンパク質が記載されている。一本鎖FSH-Fc融合体は、一本鎖中でベータ・サブユニットおよびアルファ・サブユニットが末端と末端でコンジュゲート化された、hFSHβα-Fcを含有し、そして融合体の2つのポリペプチド鎖は同一である(図1cを参照されたい)。図1cに示すように、一本鎖FSH-Fc型はホモ二量体である。
【0011】
発明の概要
本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが各々、FcRn結合パートナーに、またはFc断片に、コンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。1つの態様において、本発明は、2つのポリペプチド鎖、すなわち免疫グロブリンのFc断片に、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に連結されたαFSHを少なくとも有する一方の鎖、および免疫グロブリンのFc断片に、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に、やはり連結されたβFSHを有する第二の鎖を有する、融合タンパク質を提供する。これらの融合タンパク質によって、本発明は、FSHの半減期を増加させる方法を提供し、そしてしたがって、投薬頻度を減少させて、被験者の受胎能を増加させるのに効果的なな手段および/またはFSH療法に応答性の疾患状態を治療するのに効果的なな手段をさらに提供する。
【0012】
U.S.2003/0235536 A1に記載される一本鎖FSH-Fc融合タンパク質とは対照的に、本発明のヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質(図1c)は、1つのFc鎖にコンジュゲート化されたFSHのアルファ・サブユニット、および他のFc鎖にコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニットを有し、ここでアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットは、頭部と頭部および尾部と尾部が並列されて、そしてFc断片は、同様に、頭部と頭部および尾部と尾部が並列される。2つの鎖は、例えば内因性FSHに存在するように、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の相互作用によって、互いに会合するようにされている。あるいは、またはそれに加えて、例えばジスルフィド結合(単数または複数)を介するなどの、2つのFc鎖の会合は、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットを互いに近接するようにし、したがって、一本鎖FSH融合タンパク質に比較した際、生物活性が増進するようにする。
【0013】
1つの側面において、本発明は、2つの会合するポリペプチド鎖、すなわち、新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーにコンジュゲート化された卵胞刺激ホルモンのアルファ・サブユニット(αFSH)を含む第一の鎖、およびFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニット(βFSH)を含む第二の鎖を含む、ヘテロ二量体融合タンパク質であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記ヘテロ二量体融合タンパク質である。
【0014】
1つの側面において、本発明は、式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのアミノ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質である。
【0015】
1つの側面において、本発明は、式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質である。
【0016】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、少なくとも1つのタグ部分を含むことも可能である。タグ部分は、例えば、組換え的に産生されるポリペプチドまたはタンパク質の精製または同定を補助するために使用可能である。例えば、1つの態様において、ヘテロ二量体融合タンパク質の1つのポリペプチドは、ヒスチジン・タグをさらに含む。
【0017】
1つの側面において、本発明は、本発明の融合タンパク質、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物である。
【0018】
別の側面において、本発明は、被験者の受胎能を増加させる方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、被験者の受胎能を増進するのに有効な量の本発明の融合タンパク質を、被験者に投与する工程を含む。
【0019】
1つの側面において、本発明は、FSHによる治療に応答性の疾患状態を有する被験者を治療する方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、本発明の融合タンパク質の有効量を、被験者に投与する工程を含む。
【0020】
1つの側面において、本発明は、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法である。本発明のこの側面にしたがった方法は、直接、またはリンカーを介して間接的に、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの各々を、FcRn結合パートナーにコンジュゲート化する工程を含み、ここでαFSHの頭部はβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部は並列されている。
【0021】
詳細な説明
定義
アフィニティ・タグは、本明細書において、目的の第二の分子に付着し、前記の目的の第二の分子を単離するかまたは同定する目的のため、特定の結合パートナーと相互作用することが可能な分子を意味する。
【0022】
本発明の融合タンパク質の類似体、あるいは本発明の融合タンパク質に実質的に同一のタンパク質またはペプチドは、本明細書において、タンパク質またはペプチドの相当するアミノ酸配列が、既定の配列に、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であることを意味する。例えば、こうした配列は、様々な種由来の変異体であることも可能であるし、あるいは短縮(truncation)、欠失、アミノ酸置換または付加によって、既定の配列に由来することも可能である。例えば、Altschulら(1990)J. Mol. Biol., 215: 403-410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST);Needlemanら(1970)J. Mol. Biol., 48: 444-453のアルゴリズム;Meyersら(1988)Comput. Appl. Biosci., 4: 11-17のアルゴリズム;またはTatusovaら(1999)FEMS Microbiol. Lett., 174: 247-250などの標準的アラインメント・アルゴリズムによって、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを決定する。こうしたアルゴリズムは、BLASTN、BLASTPおよび「BLAST 2 Sequences」プログラムに取り込まれている。こうしたプログラムを利用する際には、デフォルト・パラメーターを用いることも可能である。例えば、ヌクレオチド配列には、「BLAST 2 Sequences」に以下の設定を用いることも可能である:プログラムBLASTN、マッチの報酬2、ミスマッチのペナルティ-2、オープン・ギャップ・ペナルティおよび伸長ギャップ・ペナルティ、それぞれ5および2、ギャップx_ドロップオフ50、期待値10、ワード・サイズ11、フィルターON。アミノ酸配列には、「BLAST 2 Sequences」に以下の設定を用いることも可能である:プログラムBLASTP、マトリックスBLOSUM62、オープン・ギャップ・ペナルティおよび伸長ギャップ・ペナルティ、それぞれ11および1、ギャップx_ドロップオフ50、期待値10、ワード・サイズ3、フィルターON。
【0023】
生物学的利用能は、本明細書において、物質が生物系に吸収されるか、または生理学的活性部位で利用可能になる度合いおよび/または率を意味する。
【0024】
DNA構築物は、本明細書において、ヒトの介入を通じて、そうでなければ天然には全体として存在しないような方式で組み合わされたDNAセグメントを含有するように修飾されている、一本鎖または二本鎖いずれかのDNA分子、またはこうした分子のクローンを意味する。DNA構築物は、目的のポリペプチドの発現を指示するのに必要な情報を含有する。DNA構築物は、プロモーター、エンハンサーおよび転写ターミネーターを含むことも可能である。ポリペプチドの分泌を指示するのに必要な情報を含有するDNA構築物は、典型的にはまた、少なくとも1つの分泌シグナル配列も含有するであろう。
【0025】
断片は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に関して本明細書で用いられる場合、少なくとも2つの連続したアミノ酸残基、少なくとも5つの連続したアミノ酸残基、少なくとも10の連続したアミノ酸残基、少なくとも15の連続したアミノ酸残基、少なくとも20の連続したアミノ酸残基、少なくとも25の連続したアミノ酸残基、少なくとも40の連続したアミノ酸残基、少なくとも50の連続したアミノ酸残基、少なくとも100の連続したアミノ酸残基、または少なくとも200の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチド、あるいはタンパク質の欠失または短縮いずれかを含むペプチドまたはポリペプチドを指す。
【0026】
FSH、そして別に言及しない限り均等である、ヘテロ二量体FSHは、アルファ・サブユニット(αFSH;FSHアルファ)およびベータ・サブユニット(βFSH;FSHベータ)で構成される、ヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン糖タンパク質を指す。FSHおよびヘテロ二量体FSHは、FSHの天然存在型およびその組換え類似体を指すものとする。ヒトにおいて、アルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットは、別個の染色体上の別個の遺伝子によりコードされる。FSHおよびヘテロ二量体FSHは、一本鎖FSHおよび一本鎖FSH融合タンパク質から、並びに本発明のヘテロ二量体FSH融合タンパク質から区別されるべきものである。
【0027】
融合タンパク質は、本明細書において、第二の供給源由来の第二のアミノ酸配列に、共有的または非共有的に結合した、第一の供給源由来の第一のアミノ酸配列で構成されるタンパク質いずれかを指し、ここで第一の供給源および第二の供給源は同一ではない。同一でない第一の供給源および第二の供給源は、2つの異なる生物学的実体(entities)、または同一の生物学的実体由来の2つの異なるタンパク質、または生物学的実体および非生物学的実体を含むことも可能である。融合タンパク質は、例えば、少なくとも2つの異なる生物学的供給源由来のタンパク質を含むことも可能である。生物学的供給源は、非合成的に産生される核酸またはアミノ酸配列いずれか(例えばゲノムまたはcDNA配列、RNA配列、プラスミドまたはウイルスベクター、天然ビリオン、あるいは本明細書にさらに記載されるような上記いずれかの変異体または類似体)を含むことも可能である。合成供給源は、化学的に産生され、そして生物学的系にはよらない、タンパク質または核酸配列を含むことも可能である(例えばアミノ酸配列の固相合成)。融合タンパク質はまた、少なくとも2つの異なる合成供給源から得られるタンパク質、または少なくとも1つの生物学的供給源および少なくとも1つの合成供給源から得られるタンパク質を含むことも可能である。
【0028】
連結されたは、核酸配列に関して本明細書で用いられる場合、第二の核酸配列に共有的に連結された第一の核酸配列を指す。第一の核酸配列は、第二の核酸配列に直接連結されるか、または並列することも可能であるし、あるいは介入配列またはリンカー部分が、第一の配列を第二の配列に共有的に連結することも可能である。連結された、は、アミノ酸配列に関して本明細書で用いられる場合、第二のアミノ酸配列に共有的に連結された第一のアミノ酸配列を指す。第一のアミノ酸配列は、第二のアミノ酸配列に直接連結されるか、または並列することも可能であるし、あるいは介入配列またはリンカー部分が、第一のアミノ酸配列を第二のアミノ酸配列に共有的に連結することも可能である。連結された、はまた、第二のアミノ酸配列に非共有的に連結された第一のアミノ酸配列も指すことも可能である。
【0029】
中程度のストリンジェンシーは、核酸ハイブリダイゼーションに関して本明細書で用いられる場合、例えばDNAの長さに基づいて、当業者によって容易に決定可能な条件を含む。基本的な条件は、Sambrookら Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版 Vol.1, pp.1.101-104, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載され、そしてニトロセルロースフィルターについては5×SSC、0.5% SDS、1.0 mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、50%ホルムアミド、6×SSCで42℃でのハイブリダイゼーション条件(または50%ホルムアミド中のStark溶液などの他の類似のハイブリダイゼーション溶液で42℃)、および60℃、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。
【0030】
高ストリンジェンシーは、核酸ハイブリダイゼーションに関して本明細書で用いられる場合、例えばDNAの長さに基づいて、当業者によって容易に決定される条件を含む。一般的に、こうした条件は、上述のようなハイブリダイゼーション条件、およびおよそ68℃、0.2×SSC、0.1% SDSでの洗浄を伴うものとして定義される。当業者は、プローブの長さなどの要因にしたがって、必要に応じて、温度および洗浄溶液塩濃度を調節可能であることを認識するであろう。
【0031】
ポリペプチドは、本明細書において、アミノ酸のポリマーを指し、そして産物の特定の長さを指すのではなく;したがって、ペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質が、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、PEG化、脂質部分の付加、あるいは有機分子または無機分子いずれかの付加を排除しない。この定義に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1以上の類似体(例えば非天然アミノ酸を含む)を含有するポリペプチド、および置換連結を含むポリペプチド、並びに天然存在および非天然存在両方の、当該技術分野において知られる他の修飾である。
【0032】
血清(または血漿)半減期は「t1/2」と略され、本明細書において、排出半減期、すなわち剤の血清(または血漿)濃度が半分に落ちるのにかかる時間を意味する。関連用語「血清半減期の増加」は、本明細書において、単独の天然FSH(内因性、組換えまたは合成型のいずれであっても)よりも遅い速度で一掃される、ヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質に関して用いられる。
【0033】
治療する、治療、および治療すること、は、本明細書において、以下のいずれかを意味する:療法による治療に応答性の障害または疾患状態いずれかの重症度の減少;こうした障害または疾患状態と関連する1以上の症状の予防;こうした異常の疾患経過期間の減少;必ずしも異常または障害の治癒を伴わなくてもよい、こうした異常を有する被験者に対する、有益な効果の提供。FSHに関して本明細書で用いられる場合、治療する、治療、および治療すること、は、以下のいずれかを意味する:FSH療法による治療に応答性の生殖障害または疾患状態いずれかの重症度の減少;こうした障害または疾患状態と関連する1以上の症状の予防;FSH異常の疾患経過期間の減少;必ずしもFSH異常または生殖障害の治癒を伴わなくてもよい、こうした異常を有する被験者に対する、有益な効果(例えば受胎能の増加)の提供。
【0034】
A.不妊のための改善療法
本発明は、一般的に、生殖系と関連する生殖障害または疾患状態、および特にFSH異常のための改善療法に関する。したがって、本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット各々が、それぞれ、Fc断片またはFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、生殖療法および/またはFSH療法に用いられる既知の療法剤に比較した際、安定性の増加および半減期の改善を有する。本発明の融合タンパク質は、非経口的にまたは非侵襲性に投与可能である。現在のFSH療法は、一般的に、皮下注射または筋内注射によって投与されるが、本発明の融合タンパク質は、より侵襲性でない手段、例えば経口投与、鼻投与、または肺投与によって、投与可能である。現在の療法は、毎日の注射を必要とするが、本発明は、より頻繁でない、非経口、経口または肺投薬を提供することも可能である。
【0035】
B.融合タンパク質
本発明は、ヘテロ二量体FSHの融合タンパク質であって、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットが各々、FcRn結合パートナーまたはFc断片にコンジュゲート化されている、前記融合タンパク質に関する。より具体的には、本発明は、1つの態様において、2つのポリペプチド鎖、すなわちFcRn結合パートナーに、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に連結されたαFSHを少なくとも有する一方の鎖、およびFcRn結合パートナーに、直接、または場合によるリンカーを介して間接的に、やはり連結されたβFSHを有する第二の鎖、を有する、融合タンパク質を提供する。本融合体において、αFSHの頭部がベータFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナーの尾部が並列される。本発明の1つの態様において、FSHサブユニットおよびそれぞれのFcRn結合パートナーの間にはリンカーがある。
【0036】
本発明の別の態様において、融合タンパク質は、式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、Fcは免疫グロブリンのFc断片であり、そしてコロン(:)は、融合体の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当する
の2つのポリペプチド鎖を含む。この態様において、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端は、それぞれのFcのアミノ末端に、直接またはLを介して間接的に連結されており、そしてαFSHの頭部はβFSHの頭部と並列され、それぞれのFc断片の各々の尾部は並列されている。
【0037】
別の態様において、融合タンパク質は、式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が、直接またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されていることを除いて、融合体のすべての側面は、上述のとおりである
の2つのポリペプチド鎖を含む。
【0038】
2つのポリペプチド鎖間の会合は、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の会合の結果、および/またはFc断片またはFcRn結合パートナー間の会合の結果であってもよい。例えば、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの会合の場合、相互作用は、非共有相互作用、例えばイオン性相互作用、疎水性または親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、および/または水素結合、例えばロイシンジッパーであることも可能である。非共有会合または相互作用は、限定されるわけではないがアルファヘリックスなどの両親媒性ペプチドの相互嵌合、限定されるわけではないがリジンおよびアスパラギン酸、アルギニンおよびグルタミン酸などの反対の電荷を所持するアミノ酸の電荷-電荷相互作用を伴うことも可能である。1つの態様において、非共有会合または相互作用は、7番目ごとのアミノ酸がロイシン残基である、いくつかの反復アミノ酸を有するペプチドを含むロイシンジッパーを伴う(例えばBrandenら(1991)Introduction To Protein Structure, Garland Publishing, New Yorkを参照されたい)。Fc断片間の相互作用の場合、一般的に、これらは共有結合であろうし、そして一般的に、免疫グロブリンのFc断片の多くで見られるように、1つまたは2つのジスルフィド結合である。したがって、本発明の特定の態様において、本融合体のFc断片間には、少なくとも1つのジスルフィド架橋が存在する。
【0039】
本発明の特定の態様において、本融合体またはその1つのポリペプチド鎖にコンジュゲート化されるのは、第二のリンカー、あるいは融合タンパク質の精製を容易にするのに使用可能なタグ、例えばFLAGタグ、ヒスチジン・タグ(実施例1を参照されたい)、GSTタグ、マルトース結合タンパク質タグ、または当該技術分野において知られる他のものであることも可能である。
【0040】
1.融合タンパク質変異体
本発明の融合タンパク質の誘導体および類似体、本発明の融合タンパク質に対する抗体、および本発明の融合タンパク質の結合パートナーに対する抗体がすべて意図され、そしてこれらは、置換、付加、および/または欠失/短縮によりアミノ酸配列を改変するか、あるいは化学的修飾を導入して、機能的に均等な分子を生じることによって、作製することも可能である。タンパク質活性に不都合に影響を及ぼすことなく、タンパク質いずれかの配列中の特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置換可能であることが、当業者には理解されるであろう。
【0041】
本発明の融合タンパク質のアミノ酸配列または該配列をコードするDNA配列中に、生物学的活性、機能、または有用性の認識可能な損失を伴わずに、様々な変化を作製することも可能である。こうした変化から生じる誘導体、類似体、または変異体、およびこうした誘導体の使用が、本発明の範囲内である。特定の態様において、誘導体は、機能的に活性であり、すなわち本発明の融合タンパク質と関連する1以上の活性、例えば受胎能の増加、卵産生の増加、精子形成の増加を示すことが可能である。
【0042】
配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択可能である(表1を参照されたい)。さらに、様々なアミノ酸が、一般的に、中性アミノ酸、例えばアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンと置換される(例えばMacLennanら(1998)Acta Physiol. Scand. Suppl. 643: 55-67;Sasakiら(1998)Adv. Biophys. 35: 1-24を参照されたい)。
【0043】
【表1】
【0044】
2.ヘテロ二量体卵胞刺激ホルモン
本発明の融合タンパク質には、ヘテロ二量体FSH(あるいは「FSHヘテロ二量体」とも称される)が含まれる。組換えへテロ二量体FSHは、米国特許第5,767,251号に記載される。本発明の態様において、FSHはヒトFSH(hFSH)である。FSHのベータ・サブユニットおよび/またはアルファ・サブユニットを含有する典型的なライブラリーが、以下の実施例に記載され、そしてヒトFSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットのヌクレオチド配列は、それぞれ寄託番号NM_000735およびNM_000510として、GenBankを通じて公的に入手可能である。
【0045】
3.免疫グロブリン
免疫グロブリンは、共有結合する4つのタンパク質鎖、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成される。各鎖はさらに、1つの可変領域および1つの定常領域で構成される。免疫グロブリン・アイソタイプ(すなわちIgG、IgM、IgA、IgD、IgE)に応じて、重鎖定常領域は、3または4の定常領域ドメイン(例えばCH1、CH2、CH3、CH4)で構成される。いくつかのアイソタイプはまた、ヒンジ領域も含むことも可能である(例えばIgG)。
【0046】
特定の態様において、本発明の融合タンパク質は、それぞれ新生児Fc受容体(FcRn)結合パートナーにコンジュゲート化された各FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットである。FcRn結合パートナーは、FcRn受容体に特異的に結合可能であり、その結果、FcRn受容体により、該FcRn結合パートナーが能動輸送される分子いずれかである。FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離された。ヒトFcRn、ラットFcRn、サルFcRn、およびマウスFcRnの配列が知られる(Storyら(1994)J. Exp. Med. 180: 2377)。FcRn受容体は、比較的低いpHでIgGに結合し(しかし、IgA、IgM、IgD、およびIgEなどの他の免疫グロブリンクラスとは結合しない)、管腔中でIgGを経細胞的に漿膜方向に能動輸送し、そして次いで、間質液で見られる比較的高いpHでIgGを放出する。該受容体は、肺および腸の上皮(Israelら(1997)Immunology 92: 69)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら(2002)Am. J. Physiol. Renal Physiol. 282: F358)、並びに鼻上皮、膣表面、および胆道系表面を含む、成体上皮組織で発現される(米国特許第6,030,613号および第6,086,875号)。
【0047】
FcRn結合パートナーは、FcRnに結合するIgGのFcドメインの部分を模倣する、FcRnのリガンド(すなわちFc、Fcドメイン、Fc断片、Fc断片相同体、およびFc模倣体)を含有する。したがって、本発明のFcRn結合パートナーは、FcRn受容体が特異的に結合可能な分子いずれかを含み、全IgG、IgGのFc断片、およびFcRn受容体の完全結合領域を含む他の断片を含む。特定の態様において、FcRn結合パートナーは、非特異的IgG、またはIgGのFcRn結合性断片である。最も典型的には、FcRn結合パートナーは、IgGのFc断片、すなわちFcγに対応する。Fcγは、天然であることも可能であるし、または天然FcγよりもFcRnにより高い親和性を有するように修飾されていることも可能である。こうした修飾には、FcRnとの接触に関与する特定のアミノ酸残基の置換が含まれることも可能である。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域が、X線結晶学に基づいて記載された(Burmeisterら(1994)Nature 372: 379)。FcRnとFcの主な接触領域は、CH2ドメインおよびCH3ドメインの接合部付近である。Fc-FcRn接点は、すべて単一Ig重鎖内である。主な接触部位には、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250〜257、272、285、288、290〜291、308〜311、および314、並びにCH3ドメインのアミノ酸残基385〜387、428、および433〜436が含まれる。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片、あるいは領域のアミノ酸番号付けに対して行う言及は、すべて、Kabatら 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Public Health, Bethesda, MDに基づく。天然Fcγより長い循環半減期を有するように、Fcγを修飾することも可能である。こうした修飾は、FcRn以外のFc受容体との相互作用に関与する特定のアミノ酸残基の置換、グリコシル化に関与する特定のアミノ酸残基の置換などを含むことも可能である。特定の典型的な修飾を以下に記載する。
【0048】
本発明の他の態様において、FcRn結合パートナーは、Fc断片、すなわち免疫グロブリン重鎖定常領域、その一部、またはその変異体である。Fc断片は、免疫グロブリン重鎖定常領域であることも、または該領域に由来することも可能であり、限定されるわけではないが、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域、非ヒト霊長類免疫グロブリン重鎖定常領域、ウシ免疫グロブリン重鎖定常領域、ブタ免疫グロブリン重鎖定常領域、ネズミ免疫グロブリン重鎖定常領域、ヒツジ免疫グロブリン重鎖定常領域、またはラット免疫グロブリン重鎖定常領域が含まれる。
【0049】
本発明のFc断片またはFcRn結合パートナーは、全重鎖定常領域、あるいはその断片または類似体を含むことも可能である。重鎖定常領域は、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、および/またはヒンジ領域を含むことも可能である。1つの態様において、重鎖定常領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むことも可能である。
【0050】
免疫グロブリンは、組換え的または合成的に産生することも可能である。免疫グロブリンをcDNAライブラリーから単離することも可能である。免疫グロブリンをファージライブラリーから単離することも可能である(McCaffertyら(1990)Nature 348: 552を参照されたい)。既知の配列の遺伝子シャフリングによって、免疫グロブリンを得ることも可能である(Markら(1992)Bio/Technol. 10: 779)。in vivo組換えによって免疫グロブリンを単離することも可能である(Waterhouseら(1993)Nucl. Acid Res. 21: 2265)。免疫グロブリンは、ヒト化免疫グロブリンであることも可能である(Jonesら(1986)Nature 332: 323)。
【0051】
Fc断片は、免疫グロブリンのCH2ドメインおよびCH3ドメイン、並びに場合によって免疫グロブリンのヒンジ領域で構成されることも可能である。Fc断片は、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEのものであることも可能である。1つの態様において、免疫グロブリンは、IgG、IgAまたはIgDである。1つの態様において、Fc断片は、IgGのFc断片である。Fc断片は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc断片であることも可能である。1つの態様において、免疫グロブリンは、ヒトIgG1である。さらに別の態様において、免疫グロブリンはIgG2である。別の態様において、Fc断片は、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371のアミノ酸配列、またはその類似体で構成される。1つの態様において、Fc断片は、SEQ ID NO: 3のヌクレオチド446〜1126を含む核酸配列によりコードされる。
【0052】
FcRn結合パートナーまたはFc断片は、Fc変異体を含むことも可能である。Fc変異体は、天然Fcから修飾されているが、なおサルベージ受容体、FcRnの結合部位を含む、分子または配列を指す(WO 97/34631)。天然、は、人間によって修飾されていないFcを指す。WO 96/32478は、典型的なFc変異体、並びにサルベージ受容体との相互作用を記載する。したがって、用語「Fc変異体」は、1つの態様において、非ヒト天然Fcからヒト化された分子または配列を含む。さらに、天然Fcは、本発明の融合分子に必要でない構造特徴または生物学的活性を提供するため、除去することも可能な部位を含む。したがって、Fc変異体は、(1)ジスルフィド結合形成、(2)選択した宿主細胞との不適合、(3)選択した宿主細胞中での発現に際するN末端不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルベージ受容体以外のFc受容体への結合、または(7)抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に、影響を及ぼすか、またはこれらに関与する、1以上の天然Fc部位または残基を欠く、分子または配列を含む。
【0053】
部位特異的変異形成などのよく認識される方法にしたがって、IgGのFc領域を修飾して、FcRnが結合するであろう修飾IgGまたはFc断片またはその一部を得ることも可能である。こうした修飾には、FcRn接触部位から遠く離れた修飾、並びにFcRnへの結合を保持するかまたは増進しさえする、接触部位内の修飾が含まれる。例えば、FcRnへのFc結合親和性を有意に損なうことなく、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)中の以下の単一アミノ酸残基を置換することも可能である:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、A330S、P331A、P331S、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447A。ここで、例えばP238Aは位置番号238で野生型プロリンがアラニンで置換されたことを示す。アラニンに加え、他のアミノ酸が、上に明記する位置で野生型アミノ酸を置換することも可能である。Fcに単一変異を導入して、天然Fcと異なる、100を超えるFcRn結合パートナーを生じることも可能である。さらに、これらの個々の変異のうち2、3、またはそれより多くを組み合わせて、さらに何百のFcRn結合パートナーを生じることも可能である。
【0054】
上述の変異のあるものは、FcRn結合パートナーに新たな官能性を与えることも可能である。例えば、1つの態様は、N297Aを取り込み、非常に保存されたN-グリコシル化部位を取り除く。この変異の影響は、免疫エフェクター細胞への結合を減少させ、そして免疫原性を潜在的に減少させて、それによってFcRn結合パートナーの循環半減期を増進させ、そしてFcRnへの親和性を損なうことなく、FcRn結合パートナーが、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合不能であるようにすることである(Routledgeら(1995)Transplantation 60: 847;Friendら(1999)Transplantation 68: 1632;Shieldsら(1995)J. Biol. Chem. 276: 6591)。さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマ受容体が、低部ヒンジ領域内のIgG上の結合部位、一般的にはアミノ酸234〜237を認識するようである。したがって、新規官能性および潜在的に減少した免疫原性の別の例は、この領域の変異から生じることも可能であり、例えばヒトIgG1のアミノ酸233〜236の「ELLG」を、IgG2由来の対応する配列「PVA」で置換することによって生じることも可能である(1アミノ酸欠失を伴う)。様々なエフェクター機能を仲介するFcγRl、FcγRII、およびFcγRIIIは、こうした変異が導入されたならば、IgG1に結合しえないことが示された(WardおよびGhetie(1995)Therapeutic Immunology 2: 77、並びにArmourら(1999)Eur. J. Immunol. 29: 2613)。上述の変異から生じる新たな官能性のさらなる例として、いくつかの場合、FcRnに対する親和性を、野生型のものより増加させることも可能である。この親和性の増加は、「オン」速度の増加、「オフ」速度の減少、または「オン」速度の増加および「オフ」速度の減少の両方を反映することも可能である。FcRnに対する親和性を増加させると考えられる変異には、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが含まれる(Shieldsら(2001)J. Biol. Chem. 276: 6591)。
【0055】
特定の態様において、FcRn結合パートナーまたはFc断片は、配列PKNSSMISNTP(SEQ ID NO: 11)を含み、そして場合によって、HQSLGTQ(SEQ ID NO: 12)、HQNLSDGK(SEQ ID NO: 13)、HQNISDGK(SEQ ID NO: 14)、またはVISSHLGQ(SEQ ID NO: 15;米国特許第5,739,277号)から選択される配列をさらに含むポリペプチドである。
【0056】
2つのFcRn受容体が単一のFc分子に結合可能である。結晶学的データによって、各FcRn分子がFcホモ二量体の単一のポリペプチドに結合することが示唆される。したがって、FcRn結合パートナー、例えばIgGのFc断片を、ヘテロ二量体FSHに連結すると、経口的に、経鼻的に、目の経路を介して、または肺経路を介して、FSHを送達する手段が提供される。経鼻送達するかまたは肺経路を介して送達するため、1つの態様において、融合タンパク質をエアロゾルとして投与する。
【0057】
当業者は、本発明の融合タンパク質に使用する免疫グロブリン定常領域の部分が、その変異体または類似体を含むことも可能であるし、あるいは化学的に修飾された免疫グロブリン定常領域またはその断片(例えばPEG化)を含むことも可能であることを理解するであろう(例えばAslamおよびDent(1998)Bioconjugation: Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, Macmillan Reference, Londonを参照されたい)。1つの例において、FcRnに対するFcRn結合パートナーの結合が増進された変異体を提供することも可能である。同様に、本発明の融合タンパク質の使用に意図されるのは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部のペプチド模倣体、例えばFc断片のペプチド模倣体またはFcRn結合パートナーのペプチド模倣体である。1つの態様において、ファージディスプレーを用いて、ペプチド模倣体が同定される(例えばMcCaffertyら(1990)Nature 348: 552;Kangら(1991)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 4363;EP 0 589 877 B1を参照されたい)。
【0058】
4.場合によるリンカー
本発明の融合タンパク質は、場合によって、少なくとも1つのリンカー分子を含むことも可能である。1つの態様において、リンカーは、ペプチド結合によってともに連結されたアミノ酸で構成され、アミノ酸は、20の天然存在アミノ酸から選択される。様々な態様において、リンカーは、1〜5アミノ酸、1〜10アミノ酸、1〜20アミノ酸、10〜50アミノ酸、50〜100アミノ酸、または100〜200アミノ酸を含むことも可能である。1つの態様において、アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。1つの態様において、リンカーは、グリシンおよびアラニンなどの、立体的に妨害されないアミノ酸で大部分が構成される。
【0059】
1つの態様において、リンカーは、配列Gn(同等に、-(Gly)n-と同様)を含むことも可能である。1つの態様において、リンカーは、配列(GGS)nまたは(GGGGS)nを含むことも可能である。各場合で、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10などの整数であることも可能である。リンカーの例には、限定されるわけではないが、GGG、SGGSGGS(SEQ ID NO: 16)、GGSGGSGGSGGSGGG(SEQ ID NO: 17)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(SEQ ID NO: 18)、およびGGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO: 10;GS15)が含まれる。
【0060】
1つの態様において、リンカーは、8アミノ酸リンカーEFAGAAAV(SEQ ID NO: 9)である。
【0061】
非ペプチドリンカーもまた可能である。例えば、-NH-(CH2)m-C(O)-、式中、m=2〜20である、などのアルキルリンカーを用いることも可能である。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えばC1〜C6)低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH2、フェニルなどの非立体妨害基いずれかによって、さらに置換されることも可能である。典型的な非ペプチドリンカーはPEGリンカーである。本発明にしたがって有用なさらなるリンカーが、米国特許第6,660,843号に記載される。
【0062】
C.核酸構築物
本発明はまた、本発明のヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質をコードする核酸構築物にも関する。各核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第二の核酸配列に機能可能であるように連結された、FSHの1つのサブユニット、例えばFSHのアルファ・サブユニットをコードする第一の核酸配列を含む。1つの態様において、FSHのアルファ・サブユニットをコードする第一の核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第二の核酸配列に機能可能であるように連結され、そしてFSHのベータ・サブユニットをコードする第三の核酸配列は、少なくともFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする第四の核酸配列に機能可能であるように連結されている(第二の核酸配列および第四の核酸配列は、一般的に同一である)。したがって、本発明の核酸は、本融合体のポリペプチド鎖両方をコードする核酸構築物に関する。本発明の核酸は、単一の核酸構築物中、または別個の構築物中に、存在することも可能である。核酸配列はまた、当該技術分野において知られるさらなる配列または要素も含むことも可能である(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリA配列、シグナル配列)。核酸配列は、場合によって、FSHのアルファ・サブユニットまたはベータ・サブユニットをコードする核酸配列とFc断片またはFcRn結合パートナーをコードする核酸配列との間に配置される、リンカーをコードする配列を含むことも可能である。
【0063】
1つの態様において、各核酸構築物は、DNAで構成される。別の態様において、各核酸構築物は、RNAで構築される。核酸構築物は、ベクター、例えばウイルスベクターまたはプラスミドであることも可能である。ウイルスベクターの例には、限定されるわけではないが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、およびネズミ白血病ウイルスベクターが含まれる。プラスミドの例には、限定されるわけではないが、例えばpUC、pGEX、pcDNA3、pcDNA4、pcDNA6、およびpED.dCが含まれる。特定の態様において、プラスミドは発現ベクターである。
【0064】
1つの態様において、核酸構築物は、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3の核酸配列を含む。
【0065】
1より多いコドンが同一のアミノ酸をコード可能である、遺伝暗号の既知の縮重によって、DNA配列は、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3に示すものとは異なり、そしてなおそれぞれSEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることも可能である。こうした変異体DNA配列は、サイレント変異から生じることも可能であり(例えばPCR増幅中に起こる)、または天然配列の意図的な変異形成の産物であることも可能である。したがって、本発明は:(a)SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3のヌクレオチド配列を含むDNA;(b)SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4のポリペプチドをコードするDNA;(c)中程度のストリンジェンシーの条件下で、(a)または(b)のDNAにハイブリダイズ可能であり、そして本発明のポリペプチドをコードするDNA;(d)高ストリンジェンシーの条件下で、(a)または(b)のDNAにハイブリダイズ可能であり、そして本発明のポリペプチドをコードするDNA、並びに(e)(a)、(b)、(c)、または(d)に定義するDNAに対して、遺伝暗号の結果、縮重しており、そして本発明のポリペプチドをコードするDNAから選択される、本発明のポリペプチドをコードする単離DNA配列を提供する。もちろん、こうしたDNA配列によりコードされるポリペプチドは、本発明に含まれる。
【0066】
別の態様において、本発明の核酸分子はまた、天然配列に少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列も含む。やはり意図されるのは、核酸分子が、天然配列に少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、または少なくとも99.9%同一である配列を含む態様である。この背景において、天然配列は、天然に見出されうるような、Fc、αFSH、またはβFSHの配列を指すことも可能である。視覚的検査および数学的計算によって、同一性パーセントを決定することも可能である。あるいは、Devereuxら(1984)Nucl. Acids Res. 12:387に記載され、そしてウィスコンシン大学遺伝学コンピュータグループから入手可能である、GAPコンピュータプログラム、バージョン6.0を用いて配列情報を比較することによって、2つの核酸配列の同一性パーセントを決定することも可能である。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)ヌクレオチドに関する単一(unary)比較マトリックス(同一に対し1および非同一に対し0の値を含む)、並びにSchwartzおよびDayhoff監修, 1979, Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp.353-358に記載されるような、GribskovおよびBurgess(1986)Nucl. Acids Res. 14: 6745の加重比較マトリックス;(2)各ギャップに対する3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対しさらに0.10のペナルティ;並びに(3)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。当業者に使用される配列比較の他のプログラムを使用することもまた可能である。
【0067】
D.融合タンパク質の合成
当該技術分野に周知の技術を用いて、本発明の融合タンパク質を合成することも可能である。例えば、本発明の融合タンパク質を、細胞中で組換え的に合成することも可能である(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y.、およびAusubelら(1989)Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y.を参照されたい)。
【0068】
免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHまたはその断片をコードするDNA配列を、当該技術分野において知られる様々なゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、またはRNAライブラリーからクローニングすることも可能である。プローブに基づく方法を用いて、こうしたDNA配列を単離するための技術は、慣用的な技術であり、そして当業者に周知である。こうしたDNA配列を単離するためのプローブは、公表されたDNA配列に基づくことも可能である(例えばHieterら(1980)Cell 22: 197-207を参照されたい)。Mullisら(米国特許第4,683,195号)およびMullis(米国特許第4,683,202号)に開示されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使用することも可能である。こうしたDNA配列を単離するためのライブラリーの選択およびプローブの選択は、当該技術分野の一般的な技術レベル内である。あるいは、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHをコードするDNA配列を、免疫グロブリンまたはその断片、あるいはFSHを含有する、当該技術分野において知られるベクターから得ることも可能である。
【0069】
組換え体産生のため、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を、適切な発現ビヒクル、すなわち挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入する。融合タンパク質をコードする核酸を、適切な読み枠でベクターに挿入する。
【0070】
次いで、発現ビヒクルを適切な標的細胞にトランスフェクションするかまたは別の方式で導入して、該細胞がタンパク質、例えば融合タンパク質を発現させる。当該技術分野において知られるトランスフェクション技術には、限定されるわけではないが、リポソーム・トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿(Wiglerら(1978)Cell 14: 725)、およびエレクトロポレーション(Neumannら(1982)EMBO J. 1: 841)が含まれる。様々な宿主-発現ベクター系を利用して、真核細胞中で、本明細書記載の融合タンパク質を発現することも可能である。1つの態様において、真核細胞は、哺乳動物細胞(例えば、CHO、BHK、COS、HeLa細胞)を含む、動物細胞である。融合タンパク質を真核細胞中で発現させる場合、融合タンパク質をコードするDNAはまた、融合タンパク質が分泌されるのを可能にするであろうシグナル配列もコードすることも可能である。当業者は、タンパク質が翻訳されると同時に、シグナル配列が細胞によって切断されて、成熟融合タンパク質が形成されることを理解するであろう。様々なシグナル配列、例えばマウスIgκ軽鎖シグナル配列が当該技術分野において知られる。あるいは、シグナル配列が含まれない場合は、細胞を溶解することによって、融合タンパク質を回収することも可能である。
【0071】
げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシなどのトランスジェニック動物において、本発明の融合タンパク質を合成することも可能である。用語「トランスジェニック動物」は、ゲノムに外来(foreign)遺伝子を取り込んだ非ヒト動物を指す。この遺伝子は生殖系列組織に存在するため、親から子孫に受け渡される。外因性遺伝子は単細胞胚に導入される(Brinsterら(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438)。免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニックを含めて、トランスジェニック動物を産生する方法が、当該技術分野において知られる(Wagnerら(1981)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 6376;McKnightら(1983)Cell 34: 335;Brinsterら(1983)Nature 306: 332;Ritchieら(1984)Nature 312: 517;Baldassarreら(2003)Theriogenology 59: 831;Roblら(2003)Theriogenology 59: 107;Malassagneら(2003)Xenotransplantation 10(3): 267)。
【0072】
発現ベクターは、組換え的に産生されたタンパク質の容易な精製または同定を可能にするタグをコードすることも可能である。例には、限定されるわけではないが、ハイブリッド・タンパク質が産生されるように、本明細書記載の融合タンパク質をコードする配列を、lac zコード領域とインフレームでベクターに連結することも可能である、ベクターpUR278(Rutherら(1983)EMBO J. 2: 1791)が含まれ;pGEXベクターを用いて、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを持つタンパク質を発現させることも可能である。これらのタンパク質は、通常、可溶性であり、そしてグルタチオン-アガロースビーズに吸着させ、その後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、細胞から容易に精製可能である。精製後、タグを容易に除去するため、ベクターには、切断部位が含まれる(例えば、PreCissionプロテアーゼTM(Pharmacia、ニュージャージー州ピーパック)。さらなるタグには、FLAG、ヒスチジン・タグ(以下の実施例1を参照されたい)、マルトース結合タンパク質タグ、および当業者に知られる他のものが含まれる。
【0073】
産生効率を増加させるため、酵素切断部位により分離された、本発明の融合タンパク質の多数のユニットをコードするように、ポリヌクレオチドを設計することも可能である。ポリペプチド・ユニットを回収するため、生じたポリペプチドを切断する(例えば適切な酵素で処理することによる)ことも可能である。これは、単一プロモーターに駆動される、ポリペプチド収量を増加させうる。適切なウイルス発現系で用いた場合、mRNAによりコードされる各ポリペプチドの翻訳は、例えば内部リボソーム進入部位(IRES)によって、転写物内部で指示される。したがって、ポリシストロン性構築物は、単一の巨大ポリシストロン性mRNAの転写を指示し、これが次に、多数の個々のポリペプチドの翻訳を指示する。このアプローチは、ポリプロテインの産生および酵素プロセシングを排除し、そして単一プロモーターに駆動されるポリペプチドの収量を有意に増加させることも可能である。
【0074】
形質転換およびトランスフェクションに用いられるベクターは、通常、形質転換体およびトランスフェクタントを同定するのに用いられる選択可能マーカーを含有するであろう。細菌系において、これは、アンピシリン、ブラストサイジンまたはカナマイシンなどの抗生物質耐性遺伝子を含むことも可能である。培養哺乳動物細胞で使用するための選択可能マーカーには、薬剤、例えばネオマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ジェネテシン、ゼオシン、およびメトトレキセートに対する抵抗性を与える遺伝子が含まれる。選択可能マーカーは、増幅可能選択可能マーカーであることも可能である。1つの増幅可能選択可能マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR遺伝子)またはそのcDNAである(SimonsenおよびLevinson(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 2495)。選択可能マーカーは、Thilly(1986)Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, Mass.に概説されており、そして選択可能マーカーの選択は、十分に当該技術分野の一般的な技術レベル内である。
【0075】
目的の遺伝子と同じ時点で、別個のプラスミド上の選択可能マーカーを細胞に導入することも可能であるし、または同一プラスミド上で導入することも可能である。同一プラスミド上の場合は、選択可能マーカーおよび目的の遺伝子は、異なるプロモーターまたは同一プロモーターの調節下にあることも可能であり、後者の配置では、二シストロン性メッセージが産生される。この種の構築物が当該技術分野において知られる(例えば、米国特許第4,713,339号)。
【0076】
発現系の発現要素は、強度および特異性が様々である。利用する宿主/ベクター系に応じて、恒常性プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、いくつかの適切な転写要素および翻訳要素のいずれかを発現ベクターにおいて用いることも可能である。例えば、細菌系におけるクローニングの場合、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッド・プロモーター)などの誘導性プロモーター等を用いることも可能であり;昆虫細胞系におけるクローニングの場合、バキュロウイルス多角体プロモーターなどのプロモーターを用いることも可能であり;植物細胞系におけるクローニングの場合、植物細胞ゲノム由来のプロモーター(例えば熱ショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルa/b結合タンパク質のプロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えばCaMVの35S RNAプロモーター;TMVのコートタンパク質プロモーター)を用いることも可能であり;哺乳動物細胞系におけるクローニングの場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネイン・プロモーター)または哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、CMVプロモーター)を用いることも可能であり;多コピーの発現産物を含有する細胞株を生成する場合、適切な選択可能マーカーとともにSV40、BPV、およびEBVに基づくベクターを用いることも可能である。
【0077】
植物発現ベクターを用いる場合、本発明の融合タンパク質の直鎖型または非環状型をコードする配列の発現を、いくつかのプロモーターのいずれかによって駆動することも可能である。例えば、CaMVの35S RNAプロモーターおよび19S RNAプロモーター(Brissonら(1984)Nature 310: 511-514)、またはTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら(1987)EMBO J. 6: 307-311)などのウイルスプロモーターを用いることも可能であり;あるいは、RUBISCOの小サブユニット(Coruzziら(1984)EMBO J. 3: 1671-1680;Broglieら(1984)Science 224: 838-843)、あるいは熱ショックプロモーター、例えばダイズ(soybean)hsp17.5-Eまたはhsp17.3-B(Gurleyら(1986)Mol. Cell. Biol. 6: 559-565)などの植物プロモーターを用いることも可能である。Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを用いて、これらの構築物を植物細胞に導入することも可能である。こうした技術の概説には、例えば、Weissbach & Weissbach(1988)Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, N.Y., セクションVIII, pp.421-463;およびGrierson & Corey(1988)Plant Molecular Biology, 第2版, Blackie, London, 第7-9章を参照されたい。
【0078】
本発明の融合タンパク質を産生するのに使用可能な1つの昆虫発現系において、外来遺伝子を発現するためのベクターとして、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)を用いる。該ウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。コード配列を、該ウイルスの非必須領域(例えば多角体遺伝子)にクローニングし、そしてAcNPVプロモーター(例えば多角体プロモーター)の調節下に置くことも可能である。コード配列の挿入が成功すると、多角体遺伝子が不活性化され、そして非閉鎖型組換えウイルス(すなわち多角体遺伝子によりコードされるタンパク質性コートを欠くウイルス)が産生されるであろう。次いで、これらの組換えウイルスを用いて、Spodoptera frugiperda細胞を感染させ、該細胞中で、挿入された遺伝子が発現される(例えば、Smithら(1983)J. Virol. 46: 584;米国特許第4,215,051号を参照されたい)。この発現系のさらなる例を、Ausubelら監修(1989)Current Protocols in Molecular Biology, Vol.2, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscienceに見出すことも可能である。
【0079】
本発明の融合タンパク質を発現するのに使用可能な別の系は、グルタチオン・シンテターゼ遺伝子発現系であり、「GS発現系」とも称される(Lonza Biologics PLC, Berkshire, UK)。この発現系は、米国特許第5,981,216号に詳細に記載される。
【0080】
哺乳動物宿主細胞において、いくつかのウイルスに基づく発現系を利用することも可能である。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、コード配列をアデノウイルス転写/翻訳調節複合体、例えば後期プロモーターおよび三分割(tripartite)リーダー配列に連結することも可能である。次いで、この融合遺伝子を、in vitroまたはin vivo組換えによって、アデノウイルス・ゲノムに挿入することも可能である。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば領域E1またはE3)に挿入すると、感染宿主において、生存可能であり、そしてポリペプチド・ペプチドを発現可能な組換えウイルスが生じるであろう(例えば、Logan & Shenk(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659を参照されたい)。あるいは、ワクシニア7.5Kプロモーターを使用することも可能である(例えばMackettら(1982)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 7415;Mackettら(1984)J. Virol. 49: 857;Panicaliら(1982)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 4927を参照されたい)。
【0081】
融合タンパク質のDNA構築物を含有する宿主細胞を、適切な増殖培地中で増殖させる。本明細書において、用語「適切な増殖培地」は、細胞の増殖に必要な栄養素を含有する培地を意味する。細胞増殖に必要な栄養素は、炭素供給源、窒素供給源、必須アミノ酸、ビタミン類、ミネラル類および増殖因子を含むことも可能である。例えば、培地は、ウシ血清またはウシ胎児血清を含有することも可能である。増殖培地は、例えば、DNA構築物上の選択可能マーカー、またはDNA構築物と同時トランスフェクションされる選択可能マーカーによって補足される、薬剤選択または必須栄養素の欠損によって、DNA構築物を含有する細胞に関して、選択するであろう。培養哺乳動物細胞は、一般的に、商業的に入手可能な血清含有培地または血清不含培地(例えばMEM、DMEM)中で増殖される。用いる特定の細胞株に適した培地の選択は、当該技術分野の一般的な技術レベル内である。
【0082】
当該技術分野でよく確立された方法(例えばアフィニティー・クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー)を用いて、本発明の組換え的に産生される融合タンパク質を培地から単離することも可能である。カラム・クロマトグラフィー、例えばプロテインAカラムによって、またはイオン交換クロマトグラフィーによって、本発明の融合タンパク質を培地から単離することも可能である。適切に増殖させた形質転換宿主細胞またはトランスフェクション宿主細胞由来の培地を、細胞成分から分離し、そして融合タンパク質の存在を立証する。融合タンパク質を検出する1つの方法は、例えば、本発明の融合タンパク質を認識する特異的抗体(例えば抗Fc抗体)への融合タンパク質または融合タンパク質の部分の結合による。抗融合タンパク質抗体は、問題の融合タンパク質に対して作成されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であることも可能である。例えば、融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域の部分を含有することも可能である。多くの免疫グロブリンの定常領域を認識する抗体が、当該技術分野において知られ、そして商業的に入手可能である。抗体を用いてELISAまたはウェスタンブロットを行って、本発明の融合タンパク質の存在を検出することも可能である。
【0083】
E.融合タンパク質を用いる方法
本発明の融合タンパク質は、当業者に認識されるように、多くの用途を有し、これには、限定されるわけではないが、生殖障害を有する被験者を治療する方法、および受胎能を増加させる必要がある被験者を治療する方法、および/またはFSH異常治療のためのFSH療法が含まれる。
【0084】
1.生殖障害を有する被験者を治療する方法
本発明は、生殖障害またはFSH異常を有する被験者を治療する方法に関する。こうした異常は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine, 第15版, E. Braunwaldら監修, McGraw-Hill, New York, 2001に記載される。したがって、本発明は、本明細書に提供する融合タンパク質を投与することによって、FSH療法に応答性の疾患状態を治療する方法を提供する。こうした療法は、一般的に、不妊または生殖障害に関する。したがって、本発明は、被験者の受胎能を増進するのに十分な量の本融合タンパク質を投与することによって、被験者の受胎能を増加させる方法を提供する。1つの態様において、この方法を用いて、in vitro受精プロトコルの有効性を増進する。例えば、本発明の本融合タンパク質は、患者において、卵胞成熟および卵産生を刺激することによって、in vitro受精の成功を増進することも可能である。本発明はまた、望ましい卵産生または精子形成の増加を得るのに有効な量の本融合タンパク質を、被験者に投与することによって、被験者の卵産生を増加させる方法または精子形成を増加させる方法も提供する。
【0085】
本明細書において、被験者は、哺乳動物、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類であることも可能である。1つの態様において、被験者はヒトである。
【0086】
本発明の1つの態様において、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法を提供する。この態様によって、現在の方法が可能にするよりも少ない頻度で、被験者にFSHを投与することも可能である。例えば、本発明のFSH融合体を、8〜12日の周期に渡って、わずか1回、2回、または3回投与することも可能である。
【0087】
本発明の既定のヘテロ二量体FSH-Fc構築物の活性、および上述の治療法におけるその有用性を決定するために利用可能な数多くのアッセイがある。標準的アッセイを以下に列挙し、そしていくつかを、特定のプロトコルに加えた修飾と共に、続く実施例に、詳細に記載する。
【0088】
標準的in vitroアッセイには:エストロゲン産生を測定するラット・セルトリ細胞バイオアッセイ(Dorrington, JHおよびArmstrong, DT(1975)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 72: 2677);アロマターゼ活性を測定するラット・セルトリ細胞バイオアッセイ(Padmanabhan V, Chappel SC, Beitins, IZ(1987)Endocrinology 121: 1089-1098);アロマターゼ活性を測定するラット顆粒膜細胞バイオアッセイ(Jia XCおよびHsueh AJW(1986)Endocrinology 119: 1570-1577;Dahl KDら(1987)J Clin Endocrinol Metab 64: 486-493);およびFSH受容体結合/cAMP産生アッセイ(Tano M, Minegishi T, Nakamura K, Karino S, Ibuki Y(1995)Fertil Steril 64: 1120-1124)が含まれる。
【0089】
標準的in vivoアッセイには:げっ歯類における、Steelman Pohleyアッセイとして知られる、卵巣重量増加(Steelman SLおよびPohley FM(1953)Endocrinology 53: 604-616)および精巣重量増加(Meachem SJ, McLachlan RI, deKretser DM, Robertson DM, Wreford NG(1996)Biol Reprod 54: 36-44);非ヒト霊長類における、エストロゲン産生(Klein Jら(2002)Fertil Steril 77: 1248-1255)およびインヒビン・レベル(Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 113-121);並びにヒトにおける、血清エストロゲン、血清インヒビンおよび卵胞サイズ/数(Porchet HCら(1994)Fertil Steril 61: 687-695)が含まれる。
【0090】
本発明の融合タンパク質を、静脈内投与、皮下投与、筋内投与することも可能であるし、または粘膜表面いずれかを介して、例えば経口投与、舌下投与、頬側投与、経鼻投与、直腸投与、膣投与するか、あるいは肺経路を介して投与することも可能である。融合タンパク質を、バイオポリマー固体支持体内に移植するか、または該支持体に連結して、融合タンパク質の徐放を可能にすることも可能である。1つの態様において、融合タンパク質は非経口的に投与される。1つの態様において、融合タンパク質は経口投与される。1つの態様において、融合タンパク質は、肺経路を介して投与される。
【0091】
本発明の融合タンパク質の用量は、被験者に応じて、そして用いる特定の投与経路に応じて、変化しうる。投薬量は、0.1〜100,000μg/kg体重の範囲であることも可能である。1つの態様において、投薬範囲は、0.1〜1,000μg/kgである。タンパク質を連続投与するか、または特定の時間間隔で投与することも可能である。in vitroアッセイを使用して、最適用量範囲および/または投与スケジュールを決定することも可能である。FSH活性を測定するin vitroアッセイが、上に詳述するように、当該技術分野において知られる。さらに、動物モデル、例えば非ヒト霊長類から得た、用量-反応曲線から、有効用量を外挿する(extrapolate)ことも可能である。
【0092】
本発明はまた、本融合タンパク質および薬学的に許容しうるキャリアーまたは賦形剤を含む薬剤組成物にも関する。適切な薬剤キャリアーの例は、E.W. Martinによる、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。賦形剤の例には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、ヒト血清アルブミン、界面活性剤(例えばTween-20)、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水、エタノール等が含まれることも可能である。組成物はまた、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤も含有することも可能である。
【0093】
経口投与のため、薬剤組成物は、慣用的手段によって調製される錠剤またはカプセルの形を取ることも可能である。組成物はまた、液体、例えばシロップまたは懸濁物として、調製されることも可能である。液体には、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または硬化食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えばメチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)が含まれることも可能である。調製物はまた、香味料、着色料および甘味料も含むことも可能である。あるいは、水または別の適切なビヒクルとの構成のため、組成物は、乾燥産物として提示されることも可能である。
【0094】
頬側投与のため、組成物は、慣用的プロトコルにしたがって、錠剤またはロゼンジの形を取ることも可能である。
【0095】
吸入による投与のため、本発明にしたがって使用するための化合物を、賦形剤を含むかまたは含まない噴霧化エアロゾルの形で、あるいは場合によって噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切なガスを用いた、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾル・スプレーの形で、好適に送達する。加圧エアロゾルの場合、計測した量を送達するためのバルブを提供することによって、投薬単位を決定することも可能である。吸入器(inhalerまたはinsufflator)中で使用するための、化合物および適切な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含有する、例えばゼラチンの、カプセルおよびカートリッジを配合することも可能である。本明細書に援用されるU.S.2003/023553 A1に記載されるように、本発明の融合タンパク質を含有するエアロゾルを調製することも可能である。
【0096】
注射または注入による非経口(例えば静脈内または筋内)投与のため、薬剤組成物を配合することも可能である。注射または注入のための配合物は、単位投薬剤型、例えば保存剤が添加されたアンプルまたは多用量容器中で提示されることも可能である。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁物、溶液、またはエマルジョンなどの形を取ることも可能であり、そして懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの配合用の剤を含有することも可能である。あるいは、適切なビヒクル、例えば発熱物質不含水との構成のため、活性成分は粉末型であることも可能である。
【0097】
座薬または停留浣腸剤として直腸投与するため、薬剤組成物を配合することもまた可能であり、こうした剤は、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの慣用的な座薬基剤を含有する。
【0098】
実施例
実施例1 一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合分子の構築
一本鎖FSH-Fc構築物のため、標準的逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)技術を用いて、ヒト下垂体mRNAライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA)から、天然シグナル配列とともにFSHベータを単離した。同じヒト下垂体mRNAライブラリーからFSHアルファを単離したが、シグナル配列は含まなかった。2つのFSHサブユニットを連結して、3’終止コドンを伴わない、連続FSHベータ-FSHアルファ融合体を形成した。標準的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて、先に記載されるように(U.S.2003/0235536 A1)、ヒトIgG1のFc断片(ヒンジ、CH2およびCH3ドメイン;アミノ酸221〜447、EU番号付け)を調製した。Fc断片の5’端に8アミノ酸リンカー配列(EFAGAAAV;SEQ ID NO: 9)を生成するように、プライマーを設計した。アデノウイルス主要後期プロモーターおよび選択可能マーカーとしてのマウス・ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)遺伝子を含有する哺乳動物発現ベクター、pED.dC(Genetics Institute, Cambridge, MA)に、ヒトFc PCR断片をクローニングした。次いで、ヒトFc配列を含有するpED.dCに、一本鎖FSH分子をクローニングし、こうしてFSHサブユニットをFcに連結する8アミノ酸リンカーを持つ、FSHベータ-FSHアルファ-Fcの融合分子を生成した(図1a)。
【0099】
ヘテロ二量体FSH-Fc構築物のため、同じヒト甲状腺mRNAライブラリーから、各々その天然シグナル配列を含むFSHアルファ・サブユニットおよびFSHベータ・サブユニットの両方を単離した。pED.dC中のFc由来の8アミノ酸リンカー配列を、15アミノ酸リンカー配列、GS15((GGGGS)3;SEQ ID NO: 10)で置き換えた。標準的PCR技術を用いてpED.dC中のアデノウイルス主要後期プロモーターをCMVプロモーターで置き換え、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの5’端および3’端上に制限部位を生成し、これによって、アデノウイルス主要後期プロモーターを切除し、そしてCMVプロモーターで置き換えるのを可能にした。PCR反応のテンプレートは、CMVプロモーターおよび選択目的のブラストサイジン遺伝子を含有する哺乳動物発現ベクターである、pcDNA6/V5-His(Invitrogen, Carlsbad, CA)であった。pED.dC由来のGS15リンカー/Fc断片を、pcDNA/V5-Hisにもまた連結して、ユニークな選択マーカーを持つ第二のベクターを生成した。次いで、FSHアルファをGS15-Fc-pED.dCベクターにクローニングし、一方、FSHベータをGS15-Fc-pcDNA6/V5-Hisにクローニングした。精製目的のため、6Hisタグ配列を、pcDNA6/V5-His中のFSHベータ-Fc中のFcの3’端に融合させた(図1b)。
【0100】
生じたFSH-アルファ-Fcの全長ヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 2として提供する。
【0101】
【化1】
【0102】
上に示すSEQ ID NO: 1において、シグナル配列を下線で示し、そしてGS15リンカー配列のコード配列を太字で示す。FSHアルファの5’プライマー配列は:ggctagcctgcaggccaccatggattactacagaaaatatgc(SEQ ID NO: 5)であった。FSHアルファの3’プライマー配列は:tccaccggatccgcctccaccagatttgtgataataacaagtact(SEQ ID NO: 6)であった。
【0103】
【化2】
【0104】
上に示すSEQ ID NO: 2において、シグナル配列を下線で示し、そしてリンカー配列を太字で示す。Fc断片はアミノ酸番号132〜358である。
【0105】
生じた、6Hisタグを含むFSHベータ-Fcの全長ヌクレオチドコード配列およびアミノ酸配列を、それぞれ、SEQ ID NO: 3およびSEQ ID NO: 4として提供する。
【0106】
【化3】
【0107】
上に示すSEQ ID NO: 3において、シグナル配列を下線で示し、6Hisタグを斜字で示し、そしてGS15リンカー配列を太字で示す。FSHベータの5’プライマー配列は:ggctagcctgcaggccaccatgaagacactccagtttttct(SEQ ID NO: 7)であった。FSHベータの3’プライマー配列は:tccaccggatccgcctccaccttctttcatttcaccaaagga(SEQ ID NO: 8)であった。
【0108】
【化4】
【0109】
上に示すSEQ ID NO: 4において、シグナル配列を下線で示し、Hisタグを斜字で示し、そしてGS15リンカー配列を太字で示す。Fc断片はアミノ酸番号145〜371である。
【0110】
実施例2 一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの発現および精製
標準的Superfectトランスフェクション・プロトコル(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を欠くCHO DG44細胞に、一本鎖FSH-Fcをトランスフェクションした。48時間後、5%透析FBSを含有し、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないMEMα中で、トランスフェクション細胞を選択した。より高いタンパク質発現レベルを得るため、200 nMまでのレベルのメトトレキセートで細胞を処理した。発現研究のため、DMEM:F12+10%FBS中、ローラーボトルに細胞を植え付け、そして3日間インキュベーションした後、培地をDMEM:F12+5μg/mlヒト・インスリンに交換した。10日間、毎日、調整培地(conditioned medium)を収集し、そして次いで、0.2μmフィルターを通じてろ過し、そして精製するまで4℃で保存した。標準的プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィーを用いて、細胞上清から一本鎖FSH-Fcを精製した。一本鎖FSH-Fcを含有する培地をひとたび装填したら、5〜10カラム体積のPBS(10 mMホスフェートpH7.4、2.7 mM KClおよび137 mM NaCl)でプロテインAカラムを洗浄し、そして結合したタンパク質を0.1 MグリシンpH3.0で溶出した。次いで、溶出した一本鎖FSH-FcをPBS中にて透析し、そして10%グリセロールを含有するアリコット中、-80℃で保存した。一本鎖FSH-Fcは、単回プロテインAクロマトグラフィー工程後、およそ90%純粋である(図2)。
【0111】
標準的Superfectトランスフェクション法を用いて、FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fc-6His発現ベクターを、CHO DG44細胞に同時トランスフェクションすることによって、ヘテロ二量体FSH-Fcを発現させた。トランスフェクション48時間後、5%透析FBSおよび10μg/mlブラストサイジンを含有し、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含まないMEMα中で、細胞を選択して、FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fc発現ベクターの両方を含有する細胞のみを選択した。より高い発現レベルを得るため、50 nMまでのメトトレキセートで細胞を処理した。発現研究のため、細胞をローラーボトルに植え付け、そして一本鎖FSH-Fcと同じ方式で、分泌タンパク質を含有する細胞上清を収集した。FSHアルファ-FcおよびFSHベータ-Fcを同時トランスフェクションしたため、細胞上清は、FSHアルファ-Fcホモ二量体、FSHベータ-Fcホモ二量体、およびヘテロ二量体FSH-Fcの混合物を含有し、分離する必要があった。プロテインAアフィニティー・クロマトグラフィーを用いた最初の精製を、一本鎖FSH-Fcに関して上述したのと同じ方式で行った。プロテインA溶出後、ニッケル・アフィニティー・クロマトグラフィーによって、タンパク質をさらに精製した。FSHベータ-Fcホモ二量体およびヘテロ二量体FSH-Fcは、6Hisタグが存在するため、ニッケル・アフィニティー・カラムに結合する。イミダゾール勾配(0〜500 mM)での溶出によって、ヘテロ二量体FSH-FcをFSHベータ-Fcホモ二量体から分離して、ヘテロ二量体FSH-Fcはおよそ30〜90 mMイミダゾールで溶出した。ヘテロ二量体FSH-Fcは、プロテインAおよびニッケル・アフィニティー・クロマトグラフィー工程後、およそ90%純粋であった(図2)。
【0112】
図1cは、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質の模式図を示す。この例では、一本鎖FSH-Fcは、FSHアルファ、FSHベータ、並びにヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むヒトIgG1分子のFc部分の融合分子である。したがって、一本鎖FSH-FcのFc二量体は、2つのFSHアルファ・サブユニットおよび2つのFSHベータ・サブユニットを含有した。対照的に、この例では、Fc二量体が、一方のFc鎖上に単一のFSHアルファ・サブユニットを、そしてもう一方のFc鎖上に単一のFSHベータ・サブユニットを含有する方式で、ヘテロ二量体FSH-Fcを作製した。一本鎖FSH-Fc分子には過剰なFSHサブユニットがあるため、SDS-PAGEゲル上、還元条件(それぞれ、50 kDaと比較して、およそ75 kDa)または非還元条件(それぞれ、100 kDaに比較して、およそ150 kDa)下のいずれかで泳動した場合でも、ヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質よりも、一本鎖FSH-Fcタンパク質のほうが大きい(図2)。非還元条件下では、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcはどちらも、主に、Fc二量体を形成する(図1cおよび図2)。
【0113】
実施例3 げっ歯類薬力学研究:皮下投薬
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc融合タンパク質がヒト組換えFSHと類似の生物活性を有するかどうかを決定するため、21日齢の雌ラット(群あたり10匹のラット)に、単回用量のPBS中の組換えFSH(Follistim、Organon, West Orange, NJ)、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fc 1 nmol/kgを皮下投薬した。投薬72時間後、各ラットで卵巣重量を測定した。Steelman SLおよびPohley FM(1953)Endocrinol 53: 604-16。SigmaStat、バージョン2.0(RockWare, Inc., Golden, CO)を用いて、統計分析した。結果を図3に示す。
【0114】
図3に示すように、ビヒクルに比較して、組換えFSHの単回用量で処置した雌ラットで、卵巣重量が有意に増加した(それぞれ、12.1±1.0 mgに比較して、14.3±1.7 mg、p=0.003)。しかし、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcは、ビヒクル処置群およびFSH処置群に比較して、卵巣重量のさらに大きい増加を生じた(それぞれ、20.8±3.9 mgおよび26.9±6.1 mg;p<0.001)。この実験では、ヘテロ二量体FSH-Fcは、一本鎖FSH-Fcよりも有意により活性であった(p=0.016)。
【0115】
実施例4 げっ歯類薬物動態研究
新生仔ラットは、生まれて最初の3週間、小腸において、高レベルのFcRnを発現する。したがって、この系を用いて、Fc融合タンパク質などのFcRn結合分子の経口送達を測定することも可能である。10日齢の新生仔ラット(群あたり4匹のラット)に、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含有する正常生理食塩水中、0.3 mg/kgの一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcを経口投薬した。投薬後、様々な時点で、心臓穿刺によって血液を収集し、そして血清を調製した。ELISAで分析するまで、血清を-20℃で保存した。抗FSHコーティング抗体(Fitzgerald Industries, Concord, MA)および西洋ワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ・コンジュゲート化・抗Fc検出抗体(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)を用いて、サンドイッチELISAを発色させた。ラットに投薬するのに用いたものと同一ロットのタンパク質を用いて、ELISAについての標準曲線を生成した。試料を3つ組で分析した。WinNonlinバージョン4.1(Pharsight, Mountain View, CA)を用いて、薬物動態パラメーターを概算した。結果を図4に示す。
【0116】
図4に示すように、高レベルの一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcを、経口投薬(それぞれ、平均最大血清濃度である、2.4μg/mlおよび3.8μg/ml)後、新生仔ラット血清中で測定し、そして両方のタンパク質は、それぞれ、60時間および69時間の長い最終半減期を有した。図3の生物活性結果と組み合わせると、これらのデータは、組換えFSHに比較して、一本鎖およびヘテロ二量体FSH-Fcのin vivo活性がより高いのは、融合タンパク質の半減期が長いためである可能性があることを示唆する。
【0117】
実施例5 新生仔ラットにおける一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口送達におけるFcRnの役割
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口送達が、FcRn結合およびトランスサイトーシスのためであることを示すため、10日齢の新生仔ラットに、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含む正常生理食塩水中、125I標識一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcおよび300倍過剰の非標識ヒトIgG1(ICN, Irvine, CA)の混合物を経口投薬した。製造者のプロトコルにしたがって、ヨードビーズ(Pierce)を用い、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcを、125Iヨウ化ナトリウム(Perkin Elmer, Boston, MA)でヨウ素化した。PD-10脱塩カラム上で、ヨウ素化タンパク質から遊離ヨウ素を分離した。投薬2時間後、心臓穿刺によって血液を収集し、そして血清を調製した。血清100μlアリコットを、プロテインA Trisアクリルアミド・ビーズ(Pierce)と、4℃で1時間インキュベーションした。次いで、プロテインAビーズをPBSで2回洗浄し、そして10% β-メルカプトエタノールを含有するSDS試料緩衝液で溶出した。試料を煮沸し、そして4〜20% SDS-PAGEゲル上で分析し、乾燥させ、そしてStorm Phosphorimager(Molecular Dynamics, Piscataway, NJ)上で定量化を行った。結果を図5に示す。
【0118】
一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fc両方の経口送達は、過剰なIgG1の存在下で非常に減少した(ホスホイメージ分析によって決定した際、それぞれ、83%および53%の輸送減少)。IgG1はFcRnの天然リガンドであるため、これによって、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-FcがFcRnに特異的に結合し、そしてFcRnによって輸送され、そしてこのプロセスが、過剰なIgG1の存在によって乱されうることが示唆される。
【0119】
実施例6 げっ歯類薬力学研究:経口投薬
2日齢雄ラット(群あたり10匹のラット)に、5 mg/mlダイズ・トリプシン阻害剤を含むPBS中、1 nmol/kgの組換えヒトFSH(Follistim、Organon)、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fcを経口投薬した。ラットに毎日、14日間投薬した後、各動物の右の精巣を取り除き、そして重量測定した。Meachem SJら(1996)Biol Reprod 54: 36-44。SigmaStatバージョン2.0(RockWare, Inc.)を用いて統計分析した。結果を図6に示す。
【0120】
図6に示すように、このアッセイにおいて、組換えFSHは、ビヒクル処置群に比較して、精巣重量の増加を生じず(それぞれ、55.4±8.1 mgに比較して、49.1±8.1 mg)、このモデルにおいて、組換えFSHは経口で活性ではないことが示唆された(図6a)。対照的に、一本鎖FSH-Fc(図6aおよび図6b)およびヘテロ二量体FSH-Fc(図6b)処置は、ビヒクル処置動物に比較して、精巣重量の有意な増加を生じた(58.6±10.4 mgに比較して、それぞれ、113.0±19.8 mgおよび139.6±11.9 mg;p<0.001)。皮下投薬実験と同様、ヘテロ二量体FSH-Fcは、この実験において、一本鎖FSH-Fcより有意により活性であった(p=0.003)。
【0121】
実施例7 カニクイザル(cynomolgus monkey)における薬物動態研究
我々は以前、カニクイザルおよびヒトの肺におけるFcRnの発現を示し、そしてエリスロポエチン-Fc融合タンパク質が、肺投与後に吸収され、そして活性を保持することを示した(Spiekermann GMら(2002)J Exp Med 196: 300-310;Bitonti AJら(2004)Proc Natl Acad Sci USA 101: 9763-9768)。したがって、我々は次に、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcが、非ヒト霊長類の肺を通じて投薬可能であり、そして生物学的活性を保持可能であるかどうかを決定することを求めた。
【0122】
カニクイザルを用いたすべての研究は、認可されたプロトコルを用い、研究動物の飼育および使用に関するNIHガイドラインにしたがって、行った。肺投与前、ケタミンおよびバリウムを組み合わせて動物を麻酔し、そして気管内チューブを挿管した。Aeroneb ProTMネブライザー(Aerogen, Mountain View, CA)を用いて、一本鎖FSH-Fc(PBS pH7.4中)およびヘテロ二量体FSH-Fc(0.1%ヒト血清アルブミンを含むPBS pH7.4中)のエアロゾルを生成し、そして気管内チューブを通じて、カニクイザルに投与した(沈着用量およそ45μg/kg)。一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの送達が中央部気道を標的とするように、各サルの呼吸の深さ(肺活量20〜40%)および速度(1分あたり28〜30の呼吸)を、Bird Mark 7A呼吸器によって制御した。エアロゾル粒子サイズは、およそ4〜5μmであった。肺投薬後、様々な時点で血液試料を収集し、そして血清を調製した。製造者の指示にしたがって、商業的に入手可能なFSH ELISAキット(DRG International, Mountainside, NJ)を用いて、血清一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcレベルを定量化した。サルに投薬するために使用したものと同一ロットの一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcを用いて、各アッセイの標準曲線を生成した。WinNonlinバージョン4.1(Pharsight)を用いて、薬物動態パラメーターを概算した。結果を表2および図7に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
各タンパク質およそ45μg/kgの沈着用量によって、91 ng/mlおよび94 ng/mlの一本鎖FSH-Fc、並びに69 ng/mlおよび131 ng/mlのヘテロ二量体FSH-Fcの最大血清濃度が生じた(表2)。両タンパク質の最終半減期は、一本鎖FSH-Fcに関しては55時間および210時間、そしてヘテロ二量体FSH-Fcに関しては182時間および219時間と測定された(表2)。これらの半減期は、ヒト(le Cotonnec J-Yら(1994)Fertil Steril 61: 679-686)および非ヒト霊長類(Porchet HCら(1993)Drug Metab Dispos 21: 144-150;Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 112-121)でおよそ24時間である、組換えFSHのものより有意に長い。したがって、不妊治療にFSH-Fc融合タンパク質を用いる利点は、投薬頻度が非常に減少する可能性があることであろう。
【0125】
実施例8 カニクイザルにおける薬力学測定
インヒビンは、FSH活性の薬力学マーカーである。したがって、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの肺投薬後に得た血清試料を用いて、製造者の指示にしたがって、商業的に入手可能なELISAキット(Diagnostic Systems Laboratories, Webster, TX)を用い、インヒビン・レベルもまた測定した。Weinbauer GFら(1994)J Endocrinol 141: 113-121。結果を図8に示す。およそ45μg/kgの一本鎖FSH-Fcの沈着肺用量は、1 ng/mlおよび1.6 ng/mlの最大インヒビンB濃度を生じ、これはベースラインレベルを超える1.2倍および1.4倍の刺激と同等であった。ヘテロ二量体FSH-Fcの同一沈着肺用量は、2.7 ng/mlおよび7.4 ng/mlの最大インヒビンB濃度を生じ、これはベースラインを超える7.1倍および5.9倍の刺激と同等であった。肺へテロ二量体FSH-Fcで処置した14日後、インヒビンBレベルはベースラインに戻らなかった。
【0126】
本明細書に引用するすべての参考文献は、個々の刊行物または特許または特許出願が、具体的に、そして個々に、すべての目的のため、完全に援用されると示されるのと同じ度合いで、完全に、そしてすべての目的のため、本明細書に援用される。援用される刊行物および特許または特許出願が本明細書に含有される開示と矛盾する範囲では、本明細書がこうした矛盾材料のいずれよりも優先され、そして/または勝ると意図される。
【0127】
本明細書および請求項に用いられる成分、反応条件などの量を表す数字はすべて、すべての場合で用語「約」によって、修飾されると理解するものとする。したがって、反対に示されない限り、本明細書および付随する請求項に示される数字パラメーターは、およそのものであり、本発明によって得ようと求める望ましい特性に応じて様々であることも可能である。最低限でも、そして請求項の範囲に同等な理論の適用を限定することを試みることなく、各数字パラメーターは、有意な数字および一般的な丸めアプローチの見地で解釈すべきである。
【0128】
本発明の多くの修飾および変動は、当業者に明らかであるように、その精神および範囲から逸脱することなく、行うことも可能である。本明細書記載の特定の態様は、例のみとして提供され、そしていかなる点でも、限定することを意図しない。本明細書および実施例は、例示のみとみなされ、本発明の真の範囲および精神は、請求項によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1a】図1aは、一本鎖FSH-Fcタンパク質を生成するために作製されたDNA構築物を示す模式図である。
【図1b】図1bは、ヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質を生成するために作製されたDNA構築物を示す模式図である。
【図1c】図1cは、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcタンパク質を示す模式図である。
【図2】図2は、還元条件下および非還元条件下で泳動した、一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-FcのSDS-PAGEゲルの画像である。レーン1、還元一本鎖FSH-Fc;レーン2、還元ヘテロ二量体FSH-Fc;レーン3、非還元一本鎖FSH-Fc;およびレーン4、非還元へテロ二量体FSH-Fc。
【図3】図3は、1 nmol/kgの組換えFSH、一本鎖FSH-Fc、またはヘテロ二量体FSH-Fcの単回皮下用量で処置した、21日齢の雌ラットの卵巣重量を示す棒グラフである。投薬72時間後に卵巣重量を測定した。データを平均卵巣重量±標準偏差(SD)として示す。n=10/群。
【図4】図4は、0.3 mg/kgの単回経口投与後、新生仔ラット血清中の一本鎖FSH-Fc(円)およびヘテロ二量体FSH-Fc(三角形)のレベルを示すグラフである。n=4/時点。
【図5】図5は、新生仔ラットにおける一本鎖FSH-Fcおよびヘテロ二量体FSH-Fcの経口取り込みに対する過剰なIgGの影響を示す、SDS-PAGEゲルの画像である。レーン1、50,000 cpm投入一本鎖FSH-Fc;レーン2、125I-一本鎖FSH-Fc;レーン3、過剰なIgGの存在下での125I-一本鎖FSH-Fc;レーン4、50,000 cpm投入へテロ二量体FSH-Fc;レーン5、125I-へテロ二量体FSH-Fc;レーン6、過剰なIgGの存在下での125I-へテロ二量体FSH-Fc。
【図6a】図6aは、組換えFSHまたは一本鎖FSH-Fcの単回経口投与(1 nmol/kg)で14日間、毎日処置した、2日齢の雄ラットの精巣重量を示す棒グラフである。データを、平均精巣重量±SDとして示す。n=6〜10/群。
【図6b】図6bは、一本鎖FSH-Fcまたはヘテロ二量体FSH-Fcの単回経口投与(1 nmol/kg)で14日間、毎日処置した、2日齢の雄ラットの精巣重量を示す棒グラフである。データを、平均精巣重量±SDとして示す。n=6〜10/群。
【図7a】図7aは、一本鎖FSH-Fc 45μg/kgの単回沈着肺投与後の、カニクイザル血清中の濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図7b】図7bは、ヘテロ二量体FSH-Fc 45μg/kgの単回沈着肺投与後の、カニクイザル血清中の濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図8a】図8aは、45μg/kgの一本鎖FSH-Fcを単回沈着肺用量後の、カニクイザル血清中のインヒビンB濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【図8b】図8bは、45μg/kgのヘテロ二量体FSH-Fcを単回沈着肺用量後の、カニクイザル血清中のインヒビンB濃度-時間プロフィールを示すグラフである。各曲線は単一のサルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの会合するポリペプチド鎖、すなわち、FcRn結合パートナーにコンジュゲート化された卵胞刺激ホルモンのアルファ・サブユニット(αFSH)を含む第一の鎖、およびFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニット(βFSH)を含む第二の鎖、を含む、ヘテロ二量体融合タンパク質であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記ヘテロ二量体融合タンパク質。
【請求項2】
FSHサブユニットおよびFcRn結合パートナーの間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのアミノ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質。
【請求項4】
式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質。
【請求項5】
FSHがヒトFSHである、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
Fc断片が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371に示される配列と、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Fc断片が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371に示される配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
FcがIgGのFc断片である、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
Lが直接結合である、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記リンカーが約1〜20アミノ酸である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記リンカーが約8〜15アミノ酸である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーがアミノ酸配列EFAGAAAV(SEQ ID NO: 9)を有する、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記リンカーが配列-(Gly)n-、式中、nは約1〜20の整数である、を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記リンカーが、-(GGS)n-または-(GGGGS)n-、式中、nは約1〜7の整数である、から選択される配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
2つのポリペプチド鎖間の会合が、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の会合を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
2つのポリペプチド鎖間の会合が、2つのFc断片間の会合を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
会合が、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項19】
請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質のポリペプチド鎖の一方または両方をコードする核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の単数または複数のベクターを含む細胞。
【請求項22】
被験者の受胎能を増加させる方法であって、被験者の受胎能を増進するのに有効な量の、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質を、被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
被験者が不妊であり、そしてin vitro受精を望んでいる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
被験者がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
融合タンパク質を、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、経口投与、頬側投与、舌下投与、鼻投与、直腸投与、膣投与するか、エアロゾルを介して投与するか、または肺経路を介して投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
FSHによる治療に応答性の疾患状態を有する被験者を治療する方法であって、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質の有効量を、被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
被験者がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
融合タンパク質を、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、経口投与、頬側投与、舌下投与、鼻投与、直腸投与、膣投与するか、エアロゾルを介して投与するか、または肺経路を介して投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
直接、またはリンカーを介して間接的に、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの各々を、少なくともFcRn結合パートナーにコンジュゲート化することによって、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記方法。
【請求項1】
2つの会合するポリペプチド鎖、すなわち、FcRn結合パートナーにコンジュゲート化された卵胞刺激ホルモンのアルファ・サブユニット(αFSH)を含む第一の鎖、およびFcRn結合パートナーにコンジュゲート化されたFSHのベータ・サブユニット(βFSH)を含む第二の鎖、を含む、ヘテロ二量体融合タンパク質であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記ヘテロ二量体融合タンパク質。
【請求項2】
FSHサブユニットおよびFcRn結合パートナーの間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
式
αFSH-L-Fc:βFSH-L-Fc
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのカルボキシ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのアミノ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質。
【請求項4】
式
Fc-L-αFSH:Fc-L-βFSH
式中、αFSHはFSHのアルファ・サブユニットであり、βFSHはFSHのベータ・サブユニットであり、Lはリンカーまたは直接結合であり、そしてFcは免疫グロブリンのFc断片である
の2つのポリペプチド鎖を含む、融合タンパク質であって、αFSHおよびβFSHのアミノ末端が直接、またはLを介して間接的に、それぞれのFcのカルボキシ末端に連結されており、さらにコロン(:)は、融合タンパク質の2つのポリペプチド鎖間の会合に相当し、そしてさらにαFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFc断片の各々の尾部が並列されている、前記融合タンパク質。
【請求項5】
FSHがヒトFSHである、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
Fc断片が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371に示される配列と、少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
Fc断片が、SEQ ID NO: 4のアミノ酸番号145〜アミノ酸番号371に示される配列を有するアミノ酸配列を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
FcがIgGのFc断片である、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
Lが直接結合である、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記リンカーが約1〜20アミノ酸である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記リンカーが約8〜15アミノ酸である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
前記リンカーがアミノ酸配列EFAGAAAV(SEQ ID NO: 9)を有する、請求項11に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
前記リンカーが配列-(Gly)n-、式中、nは約1〜20の整数である、を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
前記リンカーが、-(GGS)n-または-(GGGGS)n-、式中、nは約1〜7の整数である、から選択される配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
2つのポリペプチド鎖間の会合が、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニット間の会合を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
2つのポリペプチド鎖間の会合が、2つのFc断片間の会合を含む、請求項3または4に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
会合が、少なくとも1つのジスルフィド結合を含む、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質、および薬学的に許容しうる賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項19】
請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質のポリペプチド鎖の一方または両方をコードする核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸を含むベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の単数または複数のベクターを含む細胞。
【請求項22】
被験者の受胎能を増加させる方法であって、被験者の受胎能を増進するのに有効な量の、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質を、被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
被験者が不妊であり、そしてin vitro受精を望んでいる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
被験者がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
融合タンパク質を、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、経口投与、頬側投与、舌下投与、鼻投与、直腸投与、膣投与するか、エアロゾルを介して投与するか、または肺経路を介して投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
FSHによる治療に応答性の疾患状態を有する被験者を治療する方法であって、請求項1、3、または4のいずれか1項に記載の融合タンパク質の有効量を、被験者に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
被験者がヒトである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
融合タンパク質を、静脈内投与、筋内投与、皮下投与、経口投与、頬側投与、舌下投与、鼻投与、直腸投与、膣投与するか、エアロゾルを介して投与するか、または肺経路を介して投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
直接、またはリンカーを介して間接的に、FSHのアルファ・サブユニットおよびベータ・サブユニットの各々を、少なくともFcRn結合パートナーにコンジュゲート化することによって、ヘテロ二量体FSHの半減期を増加させる方法であって、αFSHの頭部がβFSHの頭部と並列されて、そしてそれぞれのFcRn結合パートナー各々の尾部が並列されている、前記方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【公表番号】特表2008−504012(P2008−504012A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551550(P2006−551550)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/003034
【国際公開番号】WO2005/073383
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(505007364)シントニックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/003034
【国際公開番号】WO2005/073383
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(505007364)シントニックス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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