説明

不定形化された懸濁粒子の製造方法

【課題】水系媒体中にて油性重合性単量体を造粒後に懸濁重合してなる粒子又は油性重縮合物を油系溶剤に溶解した溶液を水系媒体中に造粒後、溶剤分を除去して得られる粒子の製造法において、得られる粒子を不定形化させることのできる製造方法を提供する。
【解決手段】油溶重合性モノマーを水系媒体中での造粒工程後に加熱する加熱工程又は油溶性ポリマーを溶解した油溶性ポリマー溶解油液を水系媒体中での造粒工程後に減圧する減圧工程を有する懸濁粒子の製造方法において、加熱工程又は減圧工程で、円盤型攪拌翼により500〜1000rpmで懸濁液を攪拌することを特徴とする不定形化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形化された懸濁粒子の製造方法、特に潜像を顕在化する方法に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法は米国特許第2,297,691号明細書等に記載されているように、多数の方法が知られており、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段で感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写部材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、または溶剤蒸気等により定着し複写物を得る。また、トナーを用いて現像する方法、またはトナー画像を定着する方法としては、従来各種の方法が提案され、それぞれの画像形成プロセスに適した方法が採用されている。
【0003】
従来、これらの目的に用いるトナーは一般に熱可塑性樹脂中に染・顔料からなる着色剤を溶融混合し、均一に分散した後、微粉砕装置、分級機により所望の粒径を有するトナーを製造してきた。
【0004】
この製造方法はかなり優れたトナーを製造し得るが、ある種の制限、すなわちトナー用材料の選択範囲に制限がある。例えば樹脂着色剤分散体が充分に脆く、経済的に可能な製造装置で微粉砕し得るものでなくてはならない。ところがこういった要求を満たすために樹脂着色剤分散体を脆くすると、実際に高速で微粉砕した場合に形成された粒子の粒径範囲が広くなり易く、特に比較的大きな割合の微粒子がこれに含まれるという問題が生ずる。さらに、このように脆性の高い材料は、複写機等現像用に使用する際、さらなる微粉砕または粉化を受け易い。また、この方法では、着色剤等の固体微粒子を樹脂中へ完全に均一に分散することは困難であり、その分散の度合によっては、カブリの増大、画像濃度の低下や混色性・透明性の不良の原因となるので、分散に注意を払わなければならない。また、破断面に着色剤が露出することにより、現像特性の変動を引き起こす場合もある。
【0005】
一方、これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案されている。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、その他添加剤を均一に溶解又は分散せしめて単量体組成物とした後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続相、例えば水相中に適当な撹拌機を用いて分散し、同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得る。
【0006】
こうして得られたトナーは水相中で油相を重合するため、実質的に球状トナーとなる。球状トナーは球形が故に、流動性が良く、また現像機への充填量が粉砕法トナーに比較して多く入るといった特徴を有している。だが一方で、クリーニング不良を起こしやすいという問題点を有している。
【0007】
そこで、高速攪拌することにより粒子を不定形化する方法(例えば、特許文献1参照。)、インラインミキサーによる剪断力と圧縮力により粒子を不定形化する方法(例えば、特許文献2参照。)、乾式ボールミルの衝撃力により粒子を不定形化する方法(例えば、特許文献3参照。)等の方法により粒子を不定形化する方法が提案されている。
【特許文献1】特公平7−13762号
【特許文献2】特許第3168368号
【特許文献3】特開平5−241376号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高速攪拌する場合には、泡の巻き込みによる粒子の凝集や凝集粒子の空洞による割れが問題となってしまい、インラインミキサーを用いる場合には、インラインスクリューによる剪断製造工程が煩雑であるし、インラインミキサー内で安定な重合状態が破られる怖れがあり、調整が困難であり、乾式ボールミルの衝撃力を利用する場合には、ボールと粒子のせん断による熱の発生により粒子とボール、粒子と粒子の溶着を起こし歩留まりが低下してしまう等の問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記のような問題点を解決した不定形化懸濁粒子の製造方法を提供するものであり、その造粒時の粒度分布を崩さずに不定形化された粒子を簡便な工程で製造しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、懸濁粒子を製造する過程で粒子を攪拌により懸濁させる際の懸濁液を攪拌する条件、例えば、攪拌翼の形状、攪拌回転数、懸濁液の深さ/攪拌翼厚み比及び攪拌翼径/槽径比に着目して鋭意、検討を重ねた結果、所定の条件において粒子を製造したときに、造粒時の粒度分布を崩すことなく不定形化された粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の不定形化された懸濁粒子の製造方法は、油溶重合性モノマーを水系媒体中での造粒工程後に加熱する加熱工程又は油溶性ポリマーを溶解した油溶性ポリマー溶解油液を水系媒体中での造粒工程後に減圧する減圧工程を有する懸濁粒子の製造方法において、加熱工程又は減圧工程で、円盤型攪拌翼により500〜1000rpmで懸濁液を攪拌することを特徴とするものである。
【0012】
また、円盤型攪拌翼の直径(r1)と懸濁液を収容する槽の内径(r2)の比(r1/r2)が0.5〜0.9であり、かつ、1段又は複数段の円盤型攪拌翼の合計厚み(t)と懸濁液の探さ(d)の比(t/d)が0.2以下である場合、さらに、円盤型攪拌翼の表面に、段差による格子状又はハニカム状の模様を有することにより、さらに好ましいものであることを見出したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不定形化懸濁粒子の製造方法によれば、造粒時の粒度分布を崩すことなく不定形化された懸濁粒子を製造することができる。このため、電子写真、静電記録又は静電印刷等の画像形成手段による複写機、プリンター等の画像形成装置の設計及び作製分野において、本発明の方法により製造されたトナー粒子等を用いることで、特に感光ロール等に残存するトナー粒子の除去が容易となり、ヨゴレのない鮮明な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における不定形化された懸濁粒子の製造方法は、例えば、油溶重合性モノマーを水系媒体中での造粒工程と、その後に加熱しながら重合を行う加熱工程から重合粒子を製造する場合に、その加熱工程中に円盤型攪拌翼を使用し500〜1000rpmの攪拌を行うことを特徴とするものである。
【0015】
以下、本発明の不定形化された懸濁粒子の製造方法について、以下詳細に説明する。
【0016】
本発明における不定形化された懸濁粒子の製造方法の基本的な操作は、従来公知の懸濁粒子の製造方法により行うことができる。そして、重合時のモノマー系と水の量比は、モノマー系100質量部に対して、水300〜3000質量部とするのが好ましい。
【0017】
反応終了後、生成したトナー粒子を洗浄、ろ過、デカンテーション、遠心分離等の適当な方法により回収し、乾燥する。
【0018】
本発明に用いる懸濁重合性モノマーとしては、懸濁重合することによってポリマーを得ることができるモノマーである限り、特に制限はないが、ビニル系モノマーであることが好ましい。このビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル酸又はメタクル酸誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、メチルイソプロピルビニルケトン等のビニルケトン等を挙げることができる。これらビニル系モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、スチレン系モノマーとアクリル酸又はメタクリル酸誘導体とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0019】
また、重合に際しては架橋剤を存在させて重合し、架橋重合体としてもよい。このとき用いることができる架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等の二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物等を挙げることができる。これら架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上組合せて用いてもよい。
【0020】
この架橋剤は、上記懸濁重合性モノマー100質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0021】
また、この重合モノマーを用いて重合工程を行うために用いる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2´−アゾビス−2−メチル−N−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチルプロピオアミド、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、1,1´−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;イソブチリルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5´−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジn−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1´,3,3´−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルパーオキシド、ジt−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等を挙げることができる。
【0022】
また、分散安定剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物等を挙げることができる。これらの難水溶性金属化合物は、その種類によって、塩酸や硫酸等の酸によって水系分散媒体のpHを酸性に調整すると可溶化するものと、水酸化ナトリウム等のアルカリによって水系分散媒体のpHをアルカリ性に調整すると可溶化するものとに大別される。
【0023】
さらに、上記懸濁液における配合にトナー用ワックス成分、顔料成分、帯電制御剤等を添加してもよい。
【0024】
造粒工程における懸濁液中の懸濁物の造粒は、例えば、エムテクニック社製の攪拌機(商品名:クレアミックス)を用い、回転数6000〜18000rpmにより攪拌することによって行うことができる。
【0025】
続いて、上記懸濁液について、加熱条件で重合を行いながら粒子を製造する。この重合する工程において、加熱する場合には、例えば、50〜100℃の範囲に加熱しながら重合反応を進行させるようにすればよく、より好ましくは、50〜80℃で3〜8時間、さらに、70〜100℃で1〜5時間、重合反応を行うことによって重合反応を完結させる。
【0026】
また、本発明における不定形化された懸濁粒子のもう一つの製造方法は、例えば、油溶性ポリマーを溶解した油溶性ポリマー溶解油液を水系媒体中での造粒工程と、その後に減圧する減圧工程により懸濁粒子を製造する場合に、減圧工程中に円盤型攪拌翼を使用し500〜1000rpmの攪拌を行うことを特徴とするものである。
【0027】
油溶性ポリマーとしては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。そして、この油溶性ポリマーは、酢酸エチル、トルエン、キシレン等の有機溶媒に溶解して油溶性ポリマー溶解油液として、次の造粒操作に用いる。
【0028】
これを水系媒体中で造粒させる操作は、上記した重合による懸濁粒子の製造と同様に油溶性ポリマー溶解油液を水系媒体中に分散させ、攪拌することにより行うことができる。そして、造粒した後は、減圧により油溶性ポリマーを溶解していた有機溶媒を水系媒体中から除去しながら懸濁粒子を製造するものである。
【0029】
このように、減圧する場合には、懸濁液が沸騰しない減圧度であれば特に限定されずに行うことができ、例えば、20℃で酢酸エチルを用いている場合110〜150hPa、20℃でトルエンを用いている場合30〜70hPa、40℃でトルエンを用いている場合70〜120hPa、のように温度条件、用いている溶媒の種類により、圧力を調整して行うことが好ましい。沸騰状態で攪拌を行うこととすると泡の巻き込みにより粒子が肥大化してしまう。
【0030】
そして、このように造粒工程後に行う、加熱工程又は減圧工程の最中に、本発明においては、円盤型攪拌翼を使用して500〜1000rpmの回転数で懸濁液を攪拌しながら、不定形化された懸濁粒子を製造する。
【0031】
ここで、円盤型攪拌翼は、平板な円盤形状からなるものであって、鋸歯状等のブレードが無ければいずれの形状も使用することができる。その大きさや厚さは懸濁液を十分に攪拌しながら重合工程を行うことができるものであれば特に限定されるものでない。
【0032】
なお、円盤型攪拌翼の大きさは、懸濁液を収容している懸濁液槽の大きさに応じて好ましい態様が定まり、例えば、円盤型攪拌翼の直径(r1)と懸濁液槽の槽直径(r2)の比(r1/r2)が0.5〜0.9であることが好ましい。
【0033】
また、この円盤型攪拌翼は1段で構成しても、2段以上の複数段で構成してもよく、その際に円盤型攪拌翼の合計厚み(t)と懸濁液の深さ(d)との比(t/d)が0.2以下であることが好ましい。
【0034】
従来用いられているパドル型及びアンカー型攪拌翼で高速回転を行う場合、懸濁液の深さを深く取ると翼特有の吐出力により槽から懸濁液があふれる。そのため仕込み量を減らさざるを得ない。また、円盤型のタービン翼ではせん断力が強く高速攪拌下では造粒粒子径を壊してしまう。さらに上記パドル型、アンカー型、タービン型攪拌翼で高速攪拌を行うと泡の巻き込みが激しく粒子の肥大化を起こしてしまう。よって上記に掲げた攪拌翼では実質高速攪拌による異形化は効率的に行うことは不可能である。
【0035】
この円盤型攪拌翼の回転数は500〜1000rpmで行うものであるが、これ以下の回転数では不定形化が十分に行われないため実質球形の粒子しか得ることができず、これ以上の回転数では粒子同士が凝集を起こしてしまい歩留まりが低下してしまい好ましくない。また、円盤型攪拌翼を用いた攪拌において、その周速が2〜10m/sであることが特に好ましいものである。
【0036】
また、この円盤型攪拌翼は、その表面に段差による格子状又はハニカム状の模様を有するものであることが好ましく、この模様は段差が設けられていれば凸状又は凹状のいずれに形成されていてもよい。そして、この格子状又はハニカム状の模様は、その構成単位である四角形状や六角形状そのものの高さを変えて段差を設けてもよいし、その構成単位の輪郭部分のみ段差を設けるようにしてもよい。
【0037】
この格子状又はハニカム状の模様は、その円盤型攪拌翼の表面からの凹凸の高さ(H)が、円盤型攪拌翼の直径(r1)との関係で、H/r1=0.025〜0.100の範囲となるようにすればよく、また、その1つの格子状又はハニカム状の構成単位の一辺の大きさ(L)が、同様に円盤型攪拌翼の直径(r1)との関係で、L/r1=0.04〜0.35の範囲となるように形成すればよい。この格子状又はハニカム状の凹凸が存在することにより異形化度及び異形化粒子の収率をより向上させることができる。なお、図1に表面に、構成単位の輪郭が凸状に形成されたハニカム状の模様を有する円盤型攪拌翼の一例を模式図で示した。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によりさらに本発明を具体的に説明するが、これら実施例によって、本発明はなんら限定されるものではない。また、部は質量部を意味する。
【0039】
(実施例1)
スチレンモノマー 315.8部にアクリル酸ブチルモノマー 16.5部、アクリル酸2−エチルヘキシルモノマー 67.8部、1,6ヘキサンジオールジアクリレート 1.6部、アゾビスバレロニトリル 8.8部を加えクレアミックスCLM−1.5S(エムテクニック(株)製、商品名)にて6000rpmで5分の攪拌混合処理を施し油性重合性単量体を得た。
【0040】
次に、イオン交換水 1260部に10%第三リン酸カルシウム液(太平化学産業(株)製、商品名:T.C.P−10・U) 336部を加えクレアミックスCLM−1.5S(エムテクニック(株)製)にて攪拌混合し水系分散媒を調製した。
【0041】
上記調合した410.5部の油性重合性単量体を、この水系分散媒に加えクレアミックスCLM−1.5S(エムテクニック(株)製)にて、9000rpmで3分の造粒処理を行った。得られた本懸濁液の粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−920(堀場製作所製)で測定した結果、平均粒径が7.66μm、15μm以上の粗大粒子生成率が体積分布で1.4%の懸濁液を得た。
【0042】
次いで、本懸濁液を直径8cm、1段型円盤型攪拌翼を有する攪拌機(翼厚み 0.5cm、平型形状)付きの内径12cm反応槽(r1/r2は0.67)に移した。懸濁液の深さは15cmであった(t/dは0.033)。本懸濁液を攪拌回転数950rpm(周速3.98m/s)にて、60℃で6時間、80℃で3時間重合反応を実施した。重合反応終了後、系の温度を40℃以下まで冷却し、塩酸をpH1.8以下になるまで添加して第三リン酸カルシウムを溶解した。第三リン酸カルシウム溶解後、ブフナーロートを用いて個液分別し、ろ液のpHが中性になるまでシャワー水洗を実施した。洗浄終了後、40℃の乾燥機にて乾燥させて粉体粒子を得た。
【0043】
粉体粒子の粒子径をレーザー回折/散乱式軽度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)で測定した結果、平均粒径が8.87μm、15μm以上の粗大粒子の生成率が体積分布で1.7%である粉体粒子を得た。電子顕微鏡により粒子形態を観察したところ、所々に凹部を有する球形や、楕円形など個々で異なった形態を有する不定形であった。粗大粒子の粒度分布は初期値が1.4%、不定形後が1.8%であり粒度分布は約88%維持されていた。
【0044】
(実施例2)
トルエン 369部にスチレン系樹脂(藤倉化成(株)製、商品名:FCA−201PS) 220部を徐々に添加しながら溶解し油性成分を得た。
【0045】
次に、イオン交換水530部に10%第三リン酸カルシウム液(太平化学産業(株)製、商品名:T.C.P.−10・U) 168部を加えクレアミックスCLM−1.5S(エムテクニック(株)製)にて攪拌混合し水系分散媒を調製した。
【0046】
上記調合した589部の油性成分を、この水系分散媒に加えクレアミックスCLM−1.5S(エムテクニック(株)製)にて、9000rpmで5分の造粒処理を行った。得られた本懸濁液の粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)で測定した結果、平均粒径が8.55μm、15μm以上の粗大粒子生成率が体積分布で1.5%の懸濁液を得た。
【0047】
本懸濁液を直径10cm、3段型円盤型攪拌翼を有する攪拌機(翼厚み合計 1.5cm、表面に凸状で高さ4mm、一辺の長さが6mmのハニカム状模様)付き内径12cmの反応槽(r1/r2は0.83)に移した。懸濁液の深さは15cmであった(t/dは0.10)。この反応槽は減圧槽も兼ねており、攪拌回転数700rpm(周速3.66m/s)、液温30℃、80hPaにてトルエンの蒸留を行った。蒸留終了後、常圧に戻し、塩酸をpH1.8以下になるまで添加して第三リン酸カルシウムを溶解した。第三リン酸カルシウム溶解後、ブフナーロートを用いて個液分別し、ろ液のpHが中性になるまでシャワー水洗を実施した。洗浄終了後、40℃の乾燥機にて乾燥させて粉体粒子を得た。
【0048】
粉体粒子の粒子径をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所製)で測定した結果、平均粒径が9.48μm、15μm以上の粗大粒子の生成率が体積分布で1.6%である粉体粒子を得た。この粉体も不定形であった。粗大粒子の粒度分布は初期値が1.5%、不定形後が1.6%であり粒度分布は約93%維持されていた。
【0049】
(実施例3)
実施例1の組成で、攪拌回転数を500rpm(周速2.09m/s)にした他は、実施例1と同様に操作して粒子を製作した。
【0050】
造粒系は平均粒径が7.45μm、15μm以上の粗大粒子生成率が体積分布で1.5%であり、重合後平均粒子径は8.51μm、15μm以上の粗大粒子の生成率が体積分布で1.8%であった。顕微鏡観察による形状確認を行ったところ、不定形をしていた。粗大粒子の粒度分布は初期値が1.5%、不定形後が1.8%であり粒度分布は約83%維持されていた。
【0051】
(実施例4)
実施例1の組成で直径7cm、1段型円盤型攪拌翼を有する攪拌機(翼厚み 0.8cm、表面に凸状で高さ4mm、一辺の長さが10mmのハニカム状模様)付きの内径12cm反応槽(r1/r2は0.58)に移した他は、実施例1と同様に操作して粒子を製作した(周速3.48m/s)。
【0052】
造粒系は平均粒径が7.54μm、15μm以上の粗大粒子生成率が体積分布で1.2%であり、重合後平均粒子径は8.12μm、15μm以上の粗大粒子の生成率が体積分布で1.3%であった。顕微鏡観察による形状確認を行ったところ、全粒子が不定形をしていた。粗大粒子の粒度分布は初期値が1.2%、不定形後が1.3%であり粒度分布は約92%維持されていた。
【0053】
(比較例1)
実施例1の攪拌回転数を400rpm(周速 1.67m/s)にした他は、実施例1と同様の操作により粒子を製造した。粒度分布に変化は見られないが、粒子形状は不定形が若干見られるが、全体的にはほぼ球形であった。
【0054】
(比較例2)
実施例1で回転数を3000rpm(周速 12.6m/s)にした他は、実施例1と同様の操作により粒子を製造した。このとき平均粒径は9.5μm、15μm以上の粗大粒子の生成率は3.5%であった。
【0055】
(比較例3)
実施例3の組成で、攪拌翼をアンカー型(翼高さ 4cm)に変更し(t/dは0.27)、実施例1と同様に処理を行った。その結果、重合中のエアーの巻き込みが非常に激しく、平均粒子径は13.98μmと肥大化し、粒子径分布に至っては、15μm以上の粗大粒子の生成率は体積分布で16.9%も生成していた(初期値は1.5%であった)。
【0056】
この実施例及び比較例により、懸濁液槽を円盤型攪拌翼で所定の条件で攪拌することにより本発明が粒子の不定形化に優れていることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例2及び4で用いた、表面にハニカム状の模様を有する円盤型攪拌翼の模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1…攪拌翼、2…ハニカム状の凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油溶重合性モノマーを水系媒体中での造粒工程後に加熱する加熱工程又は油溶性ポリマーを溶解した油溶性ポリマー溶解油液を水系媒体中での造粒工程後に減圧する減圧工程を有する懸濁粒子の製造方法において、
前記加熱工程又は減圧工程で、円盤型攪拌翼により500〜1000rpmで懸濁液を攪拌することを特徴とする不定形化された懸濁粒子の製造方法。
【請求項2】
前記円盤型攪拌翼の直径(r1)と前記懸濁液を収容する槽の内径(r2)の比(r1/r2)が0.5〜0.9であり、かつ、1段又は複数段の前記円盤型攪拌翼の合計厚み(t)と前記懸濁液の探さ(d)の比(t/d)が0.2以下であることを特徴とする請求項1記載の不定形化された懸濁粒子の製造方法。
【請求項3】
前記円盤型攪拌翼の表面に、段差による格子状又はハニカム状の模様を有することを特徴とする請求項1又は2記載の不定形化された懸濁粒子の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−215436(P2009−215436A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60848(P2008−60848)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】