説明

不整地走行車両

【課題】 電動パワーステアリング装置に設けたパワーアシスト用電動モータの負荷を低減する。
【解決手段】 インプットシャフト24に固定された側方突出部116a,116bと、これらの側方突出部116a,116bの揺動範囲を規制するために、車体の側方突出部116a,116bに対応する位置に固定された第1ストッパとしての上方突出片115と、アウトプットシャフト81に固定された側方突出部82b,82cと、これらの側方突出部82b,82cの揺動範囲を規制するために、車体の側方突出部82b,82cに対応する位置に固定された第2ストッパとしての下方突出部132aと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不整地走行車両の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の不整地走行車両として、操作ハンドルに連結するインプットシャフトと車輪側に連結するアウトプットシャフトとの間に電動パワーステアリング装置を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平3−1877号公報
【0003】
特許文献1の第1図及び第6図には、操作ハンドル3の下部にインプットシャフト5を取付け、このインプットシャフト5に電動パワーステアリング装置を介してアウトプットシャフト11を連結し、また、インプットシャフト5とアウトプットシャフト11との間に電動パワーステアリング装置を構成するトーションバー19を設け、操作ハンドル3の最大切れ角を規制するために、インプットシャフト5から突出させた係止部材103と、シャーシ37から突出させた一対のストッパ部材105とから構成されたインプットシャフト5側のストッパ機構101を設けたことが記載されている。
電動パワーステアリング装置は、トーションバー19を含む操舵トルクセンサ7、減速機9、駆動モータ17、第3図に示されたコントロールユニット15等からなる。
【0004】
操作ハンドル3と共にインプットシャフト5が回転してトーションバー19が捩られ、インプットシャフト5とアウトプットシャフト11とに相対回転角が生じると、この相対回転角はポテンショメータで検出され、その信号は、コントロールユニットに出力される。コントロールユニット15は、上記の信号に基づいて、駆動モータ17を制御して、操舵トルクセンサ7で検出した操舵トルクにみあった駆動力をアウトプットシャフト11側に付与する。
【0005】
また、特許文献1の第5図及び第8図には、アウトプットシャフト11の回転角度範囲を規制するために、アウトプットシャフト11から突出させた係止部材35と、シャーシ37に取付けた一対のストッパ部材39からなるアウトプットシャフト11側のストッパ機構33が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1図に示されるように、インプットシャフト5側のストッパ機構101のみを備える場合、例えば、インプットシャフト5の係止部材103を、シャーシ37のストッパ部材105に当たるまで操作ハンドル3を切った状態であっても、車両の操舵輪が路面の凹凸によって強制的に左右に操舵され、操舵輪の左右動に伴ってアウトプットシャフト11がインプットシャフト5の回転角度よりも大きく回転することがあり、インプットシャフト5とアウトプットシャフト11との相対回転角が生じて駆動モータ17が作動し、駆動モータ17の消費電力が増える。
【0007】
また、第5図及び図8に示されるように、アウトプットシャフト11側のストッパ機構33のみを備える場合、車両の操舵輪が路面の凹凸によって強制的に左右に操舵されてストッパ機構33のストッパ部材39が係止部材35に当たった状態であっても、例えば、操作ハンドル3の操作に伴ってインプットシャフト5がアウトプットシャフト11の回転角度よりも大きく回転することがあり、インプットシャフト5とアウトプットシャフト11との相対回転角が生じて駆動モータ17が作動し、この場合も駆動モータ17の消費電力が増える。
【0008】
本発明の目的は、不整地走行車両を改良することで、電動パワーステアリング装置に設けたパワーアシストモータの負荷を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ハンドル側に設けたインプットシャフトと、左右の車輪側に設けたアウトプットシャフトとが電動パワーステアリング装置を介して連結し、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの相対回転角度に応じて電動パワーステアリング装置に備えるパワーアシストモータを駆動する不整地走行車両において、インプットシャフトに固定された第1係止部材と、この第1係止部材の揺動範囲を規制するために、車体の第1係止部材に対応する位置に固定された第1ストッパと、アウトプットシャフトに固定された第2係止部材と、この第2係止部材の揺動範囲を規制するために、車体の第2係止部材に対応する位置に固定された第2ストッパと、を備えることを特徴とする。
【0010】
インプットシャフトに固定された第1係止部材と、車体の第1係止部材に対応する位置に固定された第1ストッパとがインプットシャフトの回転角度範囲を規制するとともに、アウトプットシャフトに固定された第2係止部材と、車体の第2係止部材に対応する位置に固定された第2ストッパとがアウトプットシャフトの回転角度範囲を規制する。
【0011】
インプットシャフトの回転角度範囲を規制すれば、ハンドル操作によってインプットシャフトが一定の回転角度範囲を超えて回転せず、また、アウトプットシャフトの回転角度範囲を規制すれば、凹凸のある路面によって車輪を介してアウトプットシャフトが所定の回転角度範囲を超えて回転しないから、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの相対回転角度を所定の角度以下に保つので、インプットシャフト又はアウトプットシャフトのいずれか一方の回転が規制されている場合でも、例えば、トルクセンサ部に過大なトルクが掛かるのを防止し、パワーアシストモータに掛かる負荷を低減する。
【0012】
請求項2に係る発明は、第1ストッパと第2ストッパとにより、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの回動範囲を同一とすることを特徴とする。
インプットシャフトとアウトプットシャフトとの回動範囲を第1ストッパと第2ストッパとで同一としたことで、インプットシャフトが第1ストッパで回動範囲を規制されたときに、アウトプットシャフトも第2ストッパで、インプットシャフトと同一の回動範囲で規制され、インプットシャフトとアウトプットシャフトとがそれぞれ最大回転角度のときに、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの相対回転角度がゼロになり、パワーアシストモータは停止する。
【0013】
請求項3に係る発明は、インプットシャフトとアウトプットシャフトとは、トーションバーを介して連結されることを特徴とする。
インプットシャフトの回転は、トーションバーを介してアウトプットシャフトに伝わる。インプットシャフトの回動範囲が第1ストッパで規制され、アウトプットシャフトの回動範囲が第1ストッパで規制されれば、トーションバーが過度に捩られる心配はない。
【0014】
請求項4に係る発明は、第2係止部材を、アウトプットシャフトに取付けられるとともに左右の車輪を操舵するための左右のタイロッドに連結するセンターアームに設けたことを特徴とする。
第2係止部材をセンターアームに設けたことで、センターアームが第2係止部材の支持部を兼用する。
【0015】
請求項5に係る発明は、インプットシャフトの軸受け部の上方に第1係止部材を配置し、アウトプットシャフトの軸受け部の下方に第2係止部材を配置することを特徴とする。
第1係止部材を、インプットシャフトの軸受け部の上方に配置してトーションバーから離し、第2係止部材を、アウトプットシャフトの軸受け部の下方に配置してトーションバーから離すことで、例えば、第1ストッパによる第1係止部材の係止位置、あるいは、第2ストッパによる第2係止部材の係止位置に製造上のずれが生じてインプットシャフト又はアウトプットシャフトが所定の回動範囲より大きく回動しても、インプットシャフト側又はアウトプットシャフト側からトーションバーに伝わるトルクが、途中のトルク伝達経路の捩れにより小さくなる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、インプットシャフト側の第1係止部材と、車体側の第1ストッパと、アウトプットシャフト側の第2係止部材と、車体側の第2ストッパと、を備えるので、電動パワーステアリング装置の操舵力伝達の上流側及び下流側に第1ストッパ及び第2ストッパが備えられることになり、ハンドル操作によるインプットシャフトの回動範囲を規制することができ、凹凸のある路面を走行する場合でも、路面によって強制的に左右に切られる操舵輪によるアウトプットシャフトの回動範囲を規制することができ、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの相対回転角度を所定の角度以下に確実に保つことができ、例えば、トルクセンサ部に過大なトルクが掛かることを防止し、パワーアシストモータの負荷を低減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、第1ストッパ及び第2ストッパにより、インプットシャフトとアウトプットシャフトとの回動範囲を同一とするので、インプットシャフトが第1ストッパに係止されているときは、必ずアウトプットシャフトも第2ストッパに係止されるため、パワーアシストモータは起動しない。従って、パワーアシストモータの消費電力を低減することができ、バッテリからの放電量を抑えることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、インプットシャフトとアウトプットシャフトとをトーションバーを介して連結したので、第1ストッパと第2ストッパとでインプットシャフト及びアウトプットシャフトのそれぞれ回動範囲を規制することにより、トーションバーの過度の捩れを防止することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、第2係止部材をセンターアームに設けたので、センターアームで第2係止部材の支持部材を兼ねることができ、部品数を削減することができて、コストを削減することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、インプットシャフトの軸受け部の上方に第1係止部材を配置し、アウトプットシャフトの軸受け部の下方に第2係止部材を配置するので、第1係止部材及び第2係止部材がトーションバーから遠くなり、インプットシャフト側又はアウトプットシャフト側からトーションバーに大きなトルクが伝わり難くなり、トーションバーの過度の捩れをより一層防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る不整地走行車両の側面図であり、不整地走行車両10は、車体フレーム11の前部に図示せぬサスペンションアームを介して前輪12,13(手前側の符号12のみ示す。)を取付け、車体フレーム11の後部に図示せぬサスペンションアームを介して後輪14,15(手前側の符号14のみ示す。)を取付け、車体フレーム11の中央部にエンジン17及び変速機18からなるパワーユニット21を取付け、このパワーユニット21で前輪12,13及び後輪14,15をそれぞれ駆動し、前輪12,13の操舵力を軽減するパワーアシスト部(不図示)を含む電動パワーステアリング装置22を備えるとともに、この電動パワーステアリング装置22への電力供給を停止可能な手動スイッチ166を備える四輪駆動車である。
電動パワーステアリング装置22を構成するインプットシャフト24は、このインプットシャフト24の上部に取付けたバーハンドル25の操作により回動する部材である。
【0022】
ここで、26はエンジン17の前部から後方へ延ばした排気管、27は排気管26の後端に接続した消音器、31はエンジン17の後部に吸気管32を介して接続したキャブレタ、33はキャブレタ31にコネクティングチューブ34を介して接続したエアクリーナ、36はフロントキャリア、37はヘッドランプ、38はラジエータ、41はフロントフェンダ、43は燃料タンク、44は簡易な操作、例えば、車体から露出しているレバー(詳細は後述する。)の操作で開閉可能なシート、46はリヤキャリア、47はリヤフェンダ、48はステップフロアである。
電動パワーステアリング装置22は、シート44の後部下方に配置したバッテリ49から電力が供給される。
【0023】
車体フレーム11は、前後に延ばした左右一対のアッパメインフレーム55,56(手前側の符号55のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム55,56の下方に配置するとともにアッパメインフレーム55,56の前端及び後端に連結した左右一対のロアメインフレーム57,58(手前側の符号57のみ示す。)と、インプットシャフト24の中間部を支持するためにアッパメインフレーム55,56の前部に取付けた左右一対のほぼL字状としたL字フレーム62,62(手前側の符号62のみ示す。)及び左右一対の起立フレーム63,63(手前側の符号63のみ示す。)と、フロントキャリア36を支持するための左右一対のフロントフレーム64,64(手前側の符号64のみ示す。)とを備える。
【0024】
また、車体フレーム11は、アッパメインフレーム55,56の前部に設けた前部傾斜部66,66(手前側の符号66のみ示す。)とロアメインフレーム57,58とにそれぞれ渡して取付けた左右一対の傾斜フレーム67,67(手前側の符号67のみ示す。)と、これらの傾斜フレーム67,67及び前部傾斜部66,66とにそれぞれ渡して取付けることで電動パワーステアリング装置22の下部を支持する左右一対のサブ傾斜フレーム68,68(手前側の符号68のみ示す。)と、アッパメインフレーム55,56の後端及びロアメインフレーム57,58の後部のそれぞれに取付けた左右一対の湾曲フレーム71,71(手前側の符号71のみ示す。)と、リヤキャリア46の前部を支持するためにアッパメインフレーム55,56の後端部上部に取付けた左右一対のリヤ第1フレーム72,72(手前側の符号72のみ示す。)と、リヤキャリア46の後部を支持するために湾曲フレーム71,71に取付けた左右一対のリヤ第2フレーム73,73(手前側の符号73のみ示す。)とを備える。
【0025】
図2は本発明に係る不整地走行車両の平面図であり、不整地走行車両10は、前部に、インプットシャフト24の下方に配置したアウトプットシャフト81と、バーハンドル25の回転を前輪12,13の操舵として伝えるために、アウトプットシャフト81(詳細は後述する。)の下端に取付けたセンターアーム82と、このセンターアーム82にそれぞれボールジョイント83,83を介して一端を連結するとともに他端を前輪12,13側のナックル85,86にボールジョント87,87を介して連結した伸縮可能なタイロッド88,89とを備え、これらのアウトプットシャフト81、センターアーム82、ボールジョイント83,83、タイロッド88,89、ボールジョイント87,87は、電動パワーステアリング装置22に含まれるものである。
【0026】
ここで、93はインプットシャフト24を回転自在に支持するためにL字フレーム62,62間に渡したステアリングホルダ基部、94はクラッチレバー、95は前輪用ブレーキレバー、96,96はフットレスト、97はギヤチェンジペダル、98は後輪用ブレーキペダルである。
【0027】
図3は本発明に係る不整地走行車両の前部を示す要部側面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、電動パワーステアリング装置22は、前輪を操舵するためのステアリング装置105と、操舵トルクを検出するトルクセンサ部106と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部107と、トルクセンサ部106によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部107を制御する制御部110とからなる。
【0028】
ステアリング装置105は、バーハンドル25(図1参照)と、インプットシャフト24と、このインプットシャフト24にトルクセンサ部106を介して連結したアウトプットシャフト81と、このアウトプットシャフト81の下端部に取付けたセンターアーム82と、ボールジョイント83,83(手前側の符号83のみ示す。)と、タイロッド88,89(図2参照)と、ボールジョント87,87(図2参照)とからなる。
【0029】
バーハンドル25の下方のインプットシャフト24は、インプットシャフト軸受け部91に回転自在に支持されている。
インプットシャフト軸受け部91は、左右のL字フレーム62,62(手前側の符号62のみ示す。)に渡したステアリングホルダ基部93と、このステアリングホルダ基部93に取付けたホルダ片108とがブッシュ(不図示)を介して締結されて構成された部分である。なお、111,112はステアリングホルダ基部93にホルダ片108を取付けるためのボルト及びナットであり、それぞれ左右一対設けたものである。
【0030】
L字フレーム62,62は、クロスパイプ114で連結した部材であり、クロスパイプ114は、インプットシャフト24とほぼ平行に上方突出片115を設けた係止部材である。
上方突出片115は、インプットシャフト24に取付けたアーム片116の揺動範囲を規制するストッパの役目をする部材、即ち、インプットシャフト24の回転角度範囲を規制するストッパである。
【0031】
上記のインプットシャフト24及びアウトプットシャフト81は、ステアリングシャフト118を構成する部材である。
アウトプットシャフト81は、トルクセンサ部106に備えるセンサハウジング119の下方に設けたアウトプットシャフト軸受け部120に回転自在に支持されている。
アウトプットシャフト軸受け部120は、左右のサブ傾斜フレーム68,68(手前側の符号68のみ示す。)に取付けたボトムプレート121に支持されるとともに、パワーアシスト部107に備える減速機126もボトムプレート121に支持される。なお、127はボトムプレート121に減速機126を取付けるボルト(複数設けたうちの一個を示す。)である。
【0032】
トルクセンサ部106は、インプットシャフト24側とアウトプットシャフト81側との間にトーションバー123を設けたものである。バーハンドル25(図2参照)の操作によりインプットシャフト24を回転させると、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との間に相対回転角が生じ、トーションバー123が捩られる。この捩れ量をトルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0033】
パワーアシスト部107は、電動モータ125と、この電動モータ125の出力軸及びアウトプットシャフト81の中間部のそれぞれの間に介在させたクラッチ(不図示)及び減速機126とからなり、減速機126は、ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。
【0034】
制御部110は、トルクセンサ部106により検出された操舵トルク、バーハンドル25(図1参照)の操舵角及び不整地走行車両10(図1参照)の車速等を車両走行中のプロセスデータに基づいてパワーアシスト部107を制御する。なお、128は制御部110を支持するためにL字フレーム62に取付けたブラケットである。
【0035】
図4は本発明に係るアウトプットシャフト下端支持部の断面図であり、アウトプットシャフト軸受け部120は、ボトムプレート121の中央部に取付けた軸支持部材132と、アウトプットシャフト81を回転自在に支持するために軸支持部材132に取付けたベアリング133と、このベアリング133をダスト等から保護するためのシール部材134,135とからなる。なお、137は軸支持部材132からのベアリング133の抜け止めを行う止め輪、138はカラーである。
【0036】
軸支持部材132は、車両前方側にアウトプットシャフト81にほぼ沿って下側に突出する下方突出部132aを形成したものである。
センターアーム82は、めすスプライン82aを形成した部材であり、このめすスプライン82aをアウトプットシャフト81の下端部に形成したおすスプライン81aとスプライン結合する。
ボールジョイント83は、端部に設けたボルト部83aをセンターアーム82の後部にナット141で取付けた部材である。
【0037】
図5は図4の5−5線断面図であり、センターアーム82は、めすスプライン82aの左方及び右方にそれぞれ設けた側方突出部82b,82cと、タイロッド88,89にそれぞれボールジョイント83,83を介して連結するタイロッド連結部82d,82eとを一体成形した部材である。
【0038】
側方突出部82b,82cは、アウトプットシャフト81の回転に伴ってセンターアーム82が回転したときに、軸支持部材132(図4参照)の下方突出部132aに当たって回動範囲が規制される。図に示したセンターアーム82の位置は、バーハンドル25(図2参照)が車両直進時の位置にあるときのものであり、θ1は、車両直進時からのセンターアーム82の時計回り及び反時計回りの揺動角度範囲であり、アウトプットシャフト81の回転角度範囲でもある。
上記した側方突出部82b,82c及び下方突出部132aは、アウトプットシャフトストッパ機構143を構成する部分である。
【0039】
図6は図3の6−6線断面図であり、アーム片116の側方突出部116a,116bは、インプットシャフト24の回転に伴ってアーム片116が揺動したときに、クロスパイプ114側の上方突出片115に当たって揺動範囲が規制される。図に示したアーム片116の位置は、バーハンドル25(図2参照)が車両直進時の位置にあるときのものであり、θ2は、車両直進時からのアーム片116の時計回り及び反時計回りの揺動角度範囲であり、インプットシャフト24の回転角度範囲でもある。上記した側方突出部116a,116b及び上方突出部115は、インプットシャフトストッパ機構145を構成する部分である。
【0040】
以上の図3、図5及び図6に示したように、本発明は、バーハンドル25(図1参照)側に設けたインプットシャフト24と、左右の車輪としての前輪12,13(図1参照)側に設けたアウトプットシャフト81とが電動パワーステアリング装置22、詳しくは、トルクセンサ部106を介して連結し、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との相対回転角度に応じて電動パワーステアリング装置22に備えるパワーアシストモータとしての電動モータ125を駆動する不整地走行車両10(図1参照)において、インプットシャフト24に固定された第1係止部材としての側方突出部116a,116bと、これらの側方突出部116a,116bの揺動範囲を規制するために、車体の側方突出部116a,116bに対応する位置に固定された第1ストッパとしての上方突出片115と、アウトプットシャフト81に固定された第2係止部材としての側方突出部82b,82cと、これらの側方突出部82b,82cの揺動範囲を規制するために、車体の側方突出部82b,82cに対応する位置に固定された第2ストッパとしての下方突出部132aと、を備えることを特徴とする。
【0041】
インプットシャフト24側の側方突出部116a,116bと、車体側の上方突出片115と、アウトプットシャフト81側の側方突出部82b,82cと、車体側の下方突出部132aと、を備えるので、電動パワーステアリング装置22の操舵力伝達の上流側及び下流側に上方突出片115及び下方突出部132aが備えられることになり、バーハンドル25の操作によるインプットシャフト24の回動範囲を規制することができ、凹凸のある路面を走行する場合でも、路面によって強制的に左右に切られる前輪12,13によるアウトプットシャフト81の回動範囲を規制することができ、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との相対回転角度を所定の角度以下に確実に保つことができ、例えば、トルクセンサ部に過大なトルクが掛かることを防止し、電動モータ125の負荷を低減することができる。
【0042】
また、本発明は、上方突出片115と下方突出部132aとにより、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との回動範囲を同一とする、即ち、θ1=θ2とすることを特徴とする。
上方突出片115と下方突出部132aとにより、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との回動範囲を同一とするので、インプットシャフト24側が上方突出片115に係止されているときは、必ずアウトプットシャフト81側も下方突出部132aに係止されるため、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81との相対回転角度の差がなくなり、電動モータ125は起動しない。従って、電動モータ125の消費電力を低減することができ、バッテリ49からの放電量を抑えることができる。
【0043】
更に、本発明は、インプットシャフト24とアウトプットシャフト81とは、トーションバー123を介して連結されることを特徴とする。
【0044】
インプットシャフト24とアウトプットシャフト81とをトーションバー123を介して連結したので、上方突出片115と下方突出部132aとでインプットシャフト24及びアウトプットシャフト81のそれぞれ回動範囲を規制することにより、トーションバー123の過度の捩れを防止することができる。
【0045】
また、図2及び図5に示したように、本発明は、側方突出部82b,82cを、アウトプットシャフト81に取付けられるとともに左右の前輪12,13を操舵するための左右のタイロッド88,89に連結するセンターアーム82に設けたことを特徴とする。
【0046】
側方突出部82b,82cをセンターアーム82に設けたので、センターアーム82で側方突出部82b,82cの支持部材を兼ねることができ、部品数を削減することができて、コストを削減することができる。
【0047】
更にまた、図3及び図5に示したように、本発明は、インプットシャフト軸受け部91の上方に側方突出部116a,116bを配置し、アウトプットシャフト軸受け部120の下方に側方突出部82b,82cを配置することを特徴とする。
【0048】
インプットシャフト24側の側方突出部116a,116b及びアウトプットシャフト81側の側方突出部82b,82cがトーションバー123から遠くなり、インプットシャフト24側又はアウトプットシャフト81側からトーションバー123に大きなトルクが伝わり難くなり、トーションバー123の過度の捩れをより一層防止することができる。
【0049】
図7(a),(b)は本発明にインプットシャフトストッパ機構の別実施形態を示す要部側面図であり、以上の図3及び図6に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
(a)は、クロスパイプ114に下方突出片151を設け、インプットシャフト24のホルダ片108よりも下方にアーム片116を取付けることで、下方突出片151によりアーム片116の揺動範囲を規制する構造を示す。
【0050】
上記のアーム片116の側方突出部116a,116b(手前側の符号116aのみ示す。)及び下方突出片151は、インプットシャフトストッパ機構153を構成する部分である。
【0051】
(b)は、ステアリングホルダ基部93の上部に上方突出片155を設け、この上方突出片155によりアーム片116の揺動範囲を規制する構造を示す。
上記のアーム片116の側方突出部116a,116b(手前側の符号116aのみ示す。)及び上方突出片155は、インプットシャフトストッパ機構156を構成する部分である。なお、L字フレーム62のインプットシャフト24よりも前方にブラケット(不図示)を設け、このブラケットに突出片を設けて、この突出片とアーム片116とでインプットシャフトストッパ機構を構成してもよい。
【0052】
なお、以上に示したインプットシャフトストッパ機構145(図6参照),153(図7(a)参照),156(図7(b)参照)及びアウトプットシャフトストッパ機構143(図5参照)の組立性を優先する場合、インプットシャフトストッパ機構145,153,156とアウトプットシャフトストッパ機構143とが同時に機能しないことがある。
【0053】
この場合、インプットシャフトストッパ機構145,153,156をアウトプットシャフトストッパ機構143よりも先に機能させることで、乗員のバーハンドル操作に基づく過大なトルクがトーションバー123(図3参照)に作用するのを防ぐことができる。一方、アウトプットシャフトストッパ機構143をインプットシャフトストッパ機構145,153,156よりも先に機能させることで、路面の凹凸により発生するタイヤの反力に基づく過大なトルクがトーションバー123に作用するのを防ぐことができる。
【0054】
図8は本発明に係る不整地走行車両の右側面を示す斜視図であり、フロントフェンダ41とリヤフェンダ47との間であってシート44の側部下方にメンテナンス用として、開口部161と、この開口部161の後端を形成する着脱可能な車体サイドカバー162とを設けたことを示す。
【0055】
図9は本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置を示す要部斜視図であり、不整地走行車両10のシート44を外した状態を示す。図9では、シート44を装着したときのシート44の下方であって車体フレーム11の左右のアッパメインフレーム55,56に渡して取付けたクロスパイプ165に、電動パワーステアリング装置22(図3参照)の電動モータ125(図3参照)へのバッテリ49(図1参照)からの電力供給を停止可能な手動スイッチ166(ここでは、手動スイッチ166を黒丸で示す。)を設けたことを示す。
【0056】
シート44は、底部前部に設けた突出部(不図示)を車体側に差し込んで係止した後に、底部後部に設けたフック(不図示)を車体側に係止することで車体側に取付けるものである。
【0057】
シート44を開けるときには、車体側に係止した上記のフックをシート44の後部に設けたレバー167の操作により揺動させてフックと車体側との係止を解除してシート44の後部を開け、その状態で車体側に係止した突出部を引き抜いてシート44の前部の係止を解除する。なお、171,172はシート44の後部の底を支持するために、車体フレーム11側に設けたクッションラバーである。
【0058】
このように、シート44の下方に、電動モータ125への電力供給を停止可能な手動スイッチ166を配置することで、乗員(運転者又は同乗者)が任意に手動スイッチ166をオフにして、電動モータ125への電力供給を停止することができる。また、シート44によって手動スイッチ166が保護され、手動スイッチ166が雨水、泥等に晒されず、また、手動スイッチ166の外部からの干渉による誤作動を防止することができる。
【0059】
更に、バッテリ49(図1参照)を、シート44を開けてメンテナンス作業をする位置に配置(図2も参照)することで、例えば、バッテリ49を充電等でメンテナンスするときに一連の動作で手動スイッチ166を操作することが可能になり、乗員による操作性を良好にすることができる。
【0060】
図10は本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置の別実施形態を示す要部斜視図であり、不整地走行車両10の車体サイドカバー162を外した状態を示す。図10では、車体サイドカバー162を装着したときの車体サイドカバー162の内側に、エンジン17を手動で始動させるためにエンジン17の後部に設けたリコイルスタータ175を備え、このリコイルスタータ175に、巻いたロープの先端に取付けたノブ(knob)176を備え、このノブ176の近傍、詳しくは車体フレーム11側に取付けたブラケット177に、電動パワーステアリング装置22(図3参照)の電動モータ125(図3参照)へのバッテリ49(図1参照)からの電力供給を停止可能な手動スイッチ178(ここでは、手動スイッチ178を黒丸で示す。)を設けたことを示す。なお、181〜183は車体サイドカバー162を着脱可能に取付けるために車体フレーム11側に設けたカバー取付部である。
【0061】
セルモータによるエンジン17(図1参照)の始動が困難になって、乗員(運転者又は同乗者)が、バッテリ49(図1参照)の端子電圧が低下したと判断したときに、車体サイドカバー162を取外して、まず、手動スイッチ178をオフにし、次に、ノブ176を握って引張り、リコイルスタータ175を作動させてエンジン17を始動させる。
このように、手動スイッチ178を操作する動作と、ノブ176を操作する動作とは連続的に且つほとんど間隔を空けずに行うことができ、操作性が良く、使い勝手が良い。
【0062】
図11は本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置の更なる別実施形態を示す要部斜視図であり、シート44の下方であって樹脂製のリヤフェンダ47の上部にスイッチ取付部47aを形成し、このスイッチ取付部47aにラバー185を介して、パワーステアリング装置22(図3参照)の電動モータ125(図3参照)への電力供給を停止可能な手動スイッチ186(ここでは、手動スイッチ186を黒丸で示す。)を設けたことを示す。
【0063】
手動スイッチ186は、シート44を開閉するレバー167の近傍に設けてあるため、シート44を開けたときに手動スイッチ186を容易に操作することができ、また、シート44の下方に手動スイッチ186を配置したので、手動スイッチ186をシート44で保護することができる。
また、手動スイッチ186には、ラバー185によって車体の振動が伝わり難くなり、手動スイッチ186の寿命を延ばすことができる。
【0064】
図12(a)〜(c)は本発明に係る手動スイッチの例を示す斜視図である。
(a)の手動スイッチ166(又は手動スイッチ178(図10参照)、手動スイッチ186(図11参照))は、操作部187をシーソー動作させることにより、オン(ON)とオフ(OFF)とを切換可能なシーソースイッチである。
【0065】
(b)の手動スイッチ166(又は手動スイッチ178(図10参照)、手動スイッチ186(図11参照))は、操作部188をスライドさせることにより、オン(ON)とオフ(OFF)とを切換可能なスライドスイッチ、あるいは、操作部188を倒すことにより、オン(ON)とオフ(OFF)とを切換可能なスナップスイッチである。
【0066】
(c)の手動スイッチ166(又は手動スイッチ178(図10参照)、手動スイッチ186(図11参照))は、操作部189を一定の角度で回転させることにより、オン(ON)とオフ(OFF)とを切換可能なロータリスイッチである。
【0067】
尚、本実施形態では、図4及び図5に示したように、センターアーム82に側方突出部82b,82cを設け、軸支持部材132に下方突出部132aを設けたが、これに限らず、図3に示したアウトプットシャフト81側に一対の突出部を設け、これらの一対の突出部の揺動範囲を規制するストッパとなる突出部を減速機126のケースに設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、電動パワーステアリング装置を備える不整地走行車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る不整地走行車両の側面図である。
【図2】本発明に係る不整地走行車両の平面図である。
【図3】本発明に係る不整地走行車両の前部を示す要部側面図である。
【図4】本発明に係るアウトプットシャフト下端支持部の断面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図3の6−6線断面図である。
【図7】本発明にインプットシャフトストッパ機構の別実施形態を示す要部側面図である。
【図8】本発明に係る不整地走行車両の右側面を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置を示す要部斜視図である。
【図10】本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置の別実施形態を示す要部斜視図である。
【図11】本発明に係る電動パワーステアリング装置の電動モータへの電力供給を停止する手動スイッチの配置の更なる別実施形態を示す要部斜視図である。
【図12】本発明に係る手動スイッチの例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10…不整地走行車両、12,13…車輪(前輪)、22…電動パワーステアリング装置、24…インプットシャフト、25…ハンドル(バーハンドル)、81…アウトプットシャフト、82…センターアーム、82b,82c…第2係止部材(側方突出部)、88,89…タイロッド、91…インプットシャフト軸受け部、115,151,155…第1ストッパ、116a,116b…第1係止部材(側方突出部)、120…アウトプットシャフト軸受け部、123…トーションバー、125…パワーアシストモータ(電動モータ)、132a…第2ストッパ(下方突出部)、θ1…アウトプットシャフトの回動範囲、θ2…インプットシャフトの回動範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル側に設けたインプットシャフトと、左右の車輪側に設けたアウトプットシャフトとが電動パワーステアリング装置を介して連結し、前記インプットシャフトと前記アウトプットシャフトとの相対回転角度に応じて前記電動パワーステアリング装置に備えるパワーアシストモータを駆動する不整地走行車両において、
前記インプットシャフトに固定された第1係止部材と、
この第1係止部材の揺動範囲を規制するために、車体の前記第1係止部材に対応する位置に固定された第1ストッパと、
前記アウトプットシャフトに固定された第2係止部材と、
この第2係止部材の揺動範囲を規制するために、前記車体の前記第2係止部材に対応する位置に固定された第2ストッパと、
を備えることを特徴とする不整地走行車両。
【請求項2】
前記第1ストッパと前記第2ストッパとにより、前記インプットシャフトと前記アウトプットシャフトとの回動範囲を同一としたことを特徴とする請求項1記載の不整地走行車両。
【請求項3】
前記インプットシャフトと前記アウトプットシャフトとは、トーションバーを介して連結されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の不整地走行車両。
【請求項4】
前記第2係止部材は、前記アウトプットシャフトに取付けられるとともに、前記左右の車輪を操舵するための左右のタイロッドに連結するセンターアームに設けられたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の不整地走行車両。
【請求項5】
前記インプットシャフトの軸受け部の上方に前記第1係止部材を配置し、
前記アウトプットシャフトの軸受部の下方に前記第2係止部材を配置することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の不整地走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−224713(P2006−224713A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37825(P2005−37825)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】