説明

不正プロセス検出装置

【課題】不正プロセスを容易に特定することのできる不正プロセス検出装置を提供する。
【解決手段】不正プロセス検出装置では、メモリ20からCPU10に送信されるレジスタ情報を記憶デバイス31に一時的に記憶する(ステップS2)。この信号の情報をステップS3,4,5によって判定する。これにより、不正プロセスを特定すると共に、その不正情報も不正プロセス情報領域に書き込まれる(ステップS8)。不正プロセスを特定するだけでなく、不正情報も分かるため、システムデバック処理に大いに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の割込処理が実行されるリアルタイムOSにおける不正プロセスを検出する不正プロセス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のプロセス(タスク)をリアルタイムに実行できるリアルタイムOSは、制御系システム、コンピュータ等のワンチップマイコンに多く使用されており、近年、これに対する要求も高まる傾向にある。さらに、このリアルタイムOSは、種々様々なデータ等を扱うマルチメディアシステムに対応することも要求されている。
【0003】
リアルタイムOSの具体的な動作は、CPUがプログラムの実行中に新しいプログラムが割込処理が入ると、実行途中のプログラムのアドレスと処理結果等の値をメモリの退避領域(レジスタ)に退避させる。このレジスタには、計算用等に使える汎用レジスタと使用目的が決まっている専用レジスタ、プログラムカウンタ、フラグレジスタ、スタックポインタ等がある。例えば、プログラムカウンタには、次にどのアドレス(旧プログラムの実行途中のアドレスの次のアドレス)の命令を読み込むかが記憶され、汎用レジスタには、旧プログラムの実行途中の処理結果が記憶される。新プログラムが実行された後、退避領域に書き込まれたメモリ番地と処理結果を読み出し、この番地と処理結果から旧プログラムの処理を実行する。
【0004】
一方、システムの開発にあっては、CPUにICE(In Circuit Emulator)を接続することにより外部バスを監視し、不正アクセス等のバグを検出するデバッグ処理を行っていた。しかし、昨今の組み込みシステムに使用されるCPUは、高速動作と周辺デバイスを同一パッケージに取り込む関係からICEが接続できなくなってきている。また、その代用として、デバック処理を行う方法としてJTAGシステム(CPUに内蔵されたデバッグ機能を利用したエミュレータ)がある。しかし、このJTAGシステムでは、CPU自体がハングした場合にはCPUの内部情報を読み出すことができない。
このように、リアルタイムOSのシステムでは、バグの検出、つまり不正プロセス(タスク)を特定するのが困難であった。
【0005】
そこで、特許文献1,2に記載されるようなバグ検出装置がある。
文献1には、バス監視装置にアドレス範囲を設定し、このアドレスにアクセスされることを不正として診断する故障診断装置が開示されており、文献2には、スタック領域アドレスの上限と下限を設定し、退避される情報が前記アドレスを超えた際に、スタックオーバーフローとして検出するスタックオーバーフロー検出回路が開示されている。
【特許文献1】特開平8−16426号公報
【特許文献2】特開平9−198258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記各文献に記載の装置では、バスの挙動をハード的に監視することは可能であるが、その原因がソフトウェアにある場合、不正アクセスしたプロセスまたは、スタックオーバーフローをしたプロセスを特定することは困難であった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑なみてなされたもので、不正プロセスを容易に特定することのできる不正プロセス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、プロセスの情報を切り替えるタスクスイッチと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲を設定する退避領域範囲設定手段と、前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、前記情報が前記タスクスイッチによって情報が切り替られていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えたことを特徴とする不正プロセス検出装置を提供することにある。
【0009】
請求項1に記載の不正プロセス検出装置は、判定手段により、プロセスによる情報がタスクスイッチによって情報が切り替られていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。これにより、不正プロセスを容易に特定することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲を設定する退避領域範囲設定手段と、前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、
前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスに対応した次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えたことを特徴とする不正プロセス検出装置を提供することにある。
【0011】
請求項2に記載の不正プロセス検出装置は、判定手段により、プログラムカウンタに記憶されたアドレスに対応した次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。これにより、不正プロセスを容易に特定することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの不正アクセスの範囲を設定する不正アクセス範囲設定手段と、前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えたことを特徴とする不正プロセス検出装置を提供することにある。
【0013】
請求項3に記載の不正プロセス検出装置は、判定手段により、プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。これにより、不正プロセスを容易に特定することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の不正プロセス検出装置は、上記記載の不正プロセス検出装置において、前記判定手段によって不正プロセスと判定した場合には、前記記憶手段に記憶されたプロセスの情報を前記メモリに書き込む書込手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、プロセスの情報を切り替えるタスクスイッチと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲と不正アクセスの範囲をそれぞれ設定する退避領域範囲設定手段と、前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、前記情報が前記タスクスイッチによって情報が切り替られていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第1の判定手段と、前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスに対応した次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第2の判定手段と、前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第3の判定手段と、前記各判定手段のいずれかによって不正プロセスと判定した場合には、前記記憶手段に記憶されたプロセスの情報を前記メモリに書き込む書込手段と、を備えたことを特徴とする不正プロセス検出装置を提供することにある。
【0016】
請求項5に記載の不正プロセス検出装置は、第1の判定手段により、プロセスによる情報がタスクスイッチによって情報が切り替られていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。第2の判定手段により、プログラムカウンタに記憶された次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。第3の判定手段により、プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、記憶手段に一時的に記憶されたプロセスを不正プロセスとする。これにより、不正プロセスおよびその理由を容易に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
(1) 全体構成
図1は、本発明の実施形態の不正プロセス検出装置を含むシステムの全体構成を示す図である。
システム1は、CPU10と、このCPU10とバス15を介して接続されるメモリ20とから構成されている。このシステム1はワンチップマイコンによって構成されるため、メモリ20は、不揮発性メモリのROMと揮発性メモリのRAM(いずれも図示せず)とからなる。そして、このシステム1はリアルタイムOSを実行するプログラムがメモリ20のプログラム領域に格納されており、外部からの割込処理および定期的な割込処理をリアルタイムに実行する。
メモリ20は、図2に示すメモリマップのように、プログラム領域とプロセススタック領域等の領域に分けられ、プログラム領域には、複数のプログラムが領域毎に格納されており、割込処理を実行する場合には、プログラム退避領域に書き込まれたレジスタから情報を受け、この情報中の要求により対応するプログラムが処理されるようになっている。また、メモリ20には、図示しない不正プロセス情報領域も確保されている。
なお、本実施形態の場合、例えば、プログラム領域のアドレスがaaaa〜nnnn、プロセス退避領域のアドレスがyyyy〜zzzzというように設定される。
【0019】
リアルタイムOSの動作を、図2〜4を参照しつつ説明する。
まず、CPU10は、図2中の左側に示すプログラムシーケンスに沿って、上側のアドレスから順に下側に向けて実行する。
その途中で、矢印aのように割込み(他のプログラムの実行要求)が発生すると、実行されていたプログラムのうち、このアドレスaaaaまでをプロセス0,アドレスaaaa+1移行をプロセス1として区切る。そして、矢印bのように実行中のデータ、戻りアドレス等をプロセス退避領域に書き込む。例えば、図3に示すように、2つのレジスタエリアがメインメモリに設定されている場合には、プロセス0に対してレジスタA,Bが書き込まれる。なお、割込みの信号には、次にCPU10に要求するプログラムのアドレス、各種条件等の情報が含まれている。
【0020】
さらに、具体的には、プロセス領域に書き込まれた情報(レジスタ)は、図4に示すような構造で書き込まれる。つまり、レジスタは、戻りアドレス(アドレスaaaa+1)を示すプログラムカウンタ、CPU10の演算状態を示すフラグレジスタ(ステータスレジスタ)、割込処理の回数「1」を示すスタックレジスタ、その他の情報(例えば、プロセスをコード化したデータ)を示す汎用レジスタ、以上4個のレジスタからなる。
そして、CPU10が他のプログラムの処理を終了すると、矢印cのように、レジスタのプログラムカウンタの戻りアドレスを参照して、アドレスaaaa+1に戻り、このアドレス移行の処理を実行する。この際、レジスタに書き込まれた各情報に基づき、先のプロセス0の処理を受けた処理が再度実行される。
【0021】
順次、割込みが発生する度に、この処理が繰り返される。また、他のプログラムを実行中にさらに別のプログラムの割込みが発生した場合には、プロセス退避領域には2つ目のレジスタが書き込まれる。この際、レジスタ中のプログラムカウンタには他のプログラムに対応した戻りアドレスが、スタックレジスタには割込処理の回数「2」が書き込まれる。
例えば、図4では、8ビットの記憶エリアを設定した場合を記載しているため、十進数では255までの数字が書き込まれることになる。そして、別のプログラムの処理が終了すると、2個目のレジスタの情報に基づき、他のプログラムに戻って、それ以降の処理を実行する。このように、プロセス退避領域に書き込まれるレジスタは、FIFO(First In First Out)の動作を行うことになる。
【0022】
また、プロセスの情報をレジスタとして書き込む場合、プロセスの処理言語に対応したデータを二進数に書き換えるため、プロセスを切り替える、所謂タスクスイッチを行っている。このタスクスイッチを行ってデータを変換したことも、レジスタ中の例えばフラグレジスタに書き込まれる。
【0023】
(2) 不正プロセス検出装置
次に、図1に戻って本実施形態による不正プロセス検出装置について説明する。
不正プロセス検出装置30は記憶デバイス31を備えており、バス15を介してCPU10とメモリ20との間に配置されている。不正プロセス検出装置30はバス15の信号を監視するものであり、便宜上図示しているが、このシステムを構成するROM内に格納されている。
記憶デバイス31は情報を一時的に記憶するものであり、便宜上図示しているが、メモリ20内の別領域に確保される。
【0024】
(3) 処理動作
不正プロセス検出装置30の動作を、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、装置30は、プロセス退避領域のアドレス範囲とプログラム領域の不正アドレスを設定する(ステップS1)。本実施形態の場合、前述した如く、プロセス退避領域のアドレスがyyyy〜zzzzに設定し、不正アドレスは、プログラム領域のアドレスaaaa〜nnnn以外のアドレスに設定する。また、図4に示すように、プロセス退避領域の1つのプロセスに対応したレジスタが4個の場合、そのデータ量は8ビット×4個=32ビットのデータ量となる。
【0025】
次に、不正プロセス検出装置30はメモリ20からCPU10に送信されるレジスタ情報を記憶デバイス31に一時的に記憶する(ステップS2)。
さらに、不正プロセス検出装置30は、この信号の情報を判定する。つまり、信号がプロセス退避領域から送信されるレジスタの場合には、そのデータ量は32ビットとなるため、まず読み出されたレジスタが32ビット以内であるか否かを判定し、かつタスクスイッチによってレジスタの情報を書き替えているか否かを判定する(ステップS3)。
このステップS3における判定処理で「YES」の場合には、ステップS4以降の処理に移り、「NO」の場合にはCPU10に対して割込処理を発生させ(ステップS7)、記憶デバイス31に記憶されたレジスタを読み出し、メモリ20の不正プロセス情報領域に書き込む(ステップS8)。
【0026】
レジスタは、先に説明したように、戻りアドレスを示すプログラムカウンタ、CPU10の演算状態を示すフラグレジスタ(ステータスレジスタ)、割込処理の回数を示すスタックレジスタ、その他の情報(例えば、プロセスをコード化したデータ)を示す汎用レジスタから構成されている。このため、ユーザおよび作業者は、このレジスタ情報を参照することにより、不具合が発生した際のプロセスおよび不正状況を容易に把握することが可能となる。
また、レジスタが不正プロセス情報領域に書き込まれる際には、どのような不正(判定処理)が発生したかが分かるように、その不正をコード化させてレジスタに書き込んでおけば、より正確な不正状況が記憶される。この際、比較的下位ビットしか使用されないスタックレジスタの上位ビットに二値化されたコードを書き込んでもよい。
【0027】
このステップS3における判定処理で否定された場合の不正は、具体的にはプロセス退避領域から読み出されたレジスタがバス15を送信する間に、その信号にノイズ等の不正信号が重畳してビット数が変化したり、バス15を介して送信される別の信号等による不具合である。この判定処理によって、正しいレジスタと間違ってCPU10が認識してしまうのを防止する。
【0028】
一方、不正プロセス検出装置30はレジスタのプログラムカウンタに記憶された戻りアドレスがプログラム領域のアドレスであるか否か、さらにレジスタのデータ量がプロセス退避領域のレジスタのデータ量(例えば、32ビット)を超えているか否かのオーバーフローを判定する(ステップS4)。
【0029】
このステップS4における判定処理で「NO」の場合には、ステップS5以降の処理に移り、「YES」の場合にはCPU10に対して割込処理を発生させ、ステップS7以降の処理を行う。
このステップS4における判定処理で肯定された場合の不正は、レジスタのプログラムカウンタに記憶された戻りアドレスがプログラム領域のアドレス範囲に存在せず、或いはレジスタに何らかのノイズが重畳されてデータ量がオーバーフローしている場合等がある。特に、戻りアドレスがプログラム領域にないアドレスとなっている場合には、CPU10をハングさせる可能性がある。
【0030】
さらに、不正プロセス検出装置30はメモリ20からCPU10に送信されるレジスタ情報を判定する。つまり、信号がCPU10から送信されるレジスタの場合には、そのデータ量は32ビットとなるため、まず読み出されたレジスタが32ビット以内であるか否かを判定し、かつタスクスイッチによってレジスタの情報を書き替えているか否かを判定する(ステップS5)。
このステップS5における判定処理で「YES」の場合には、ステップS6に移行して記憶デバイス31に記憶されたレジスタ情報を削除し、ステップS2以降の処理を繰り返す。一方、「NO」の場合にはCPU10に対して割込処理を発生させ、ステップS7以降の処理を行う。
【0031】
(4) 実施形態の効果
上述した如く、本実施形態による不正プロセス検出装置30では、CPU10とメモリ20との間のレジスタを監視し、各種判定を行うことで不正プロセスを検出する。また、レジスタのデータ量およびタスクスイッチを判定することにより、外部からのノイズ等によって不正なレジスタが生成されているか否かが分かる。レジスタ中のプログラムカウントに記憶された戻りアドレスがプログラム領域範囲内のアドレスを指しているか否かを判定することにより、何らかの理由によりレジストの改竄が行われているか否かが分かる。
このように、この不正プロセス検出装置30は、不正プロセスを特定するだけでなく、不正情報も分かるため、システムデバック処理における不正プロセスの特定および不正原因の究明等に大いに役立てることができる。
【0032】
(5) 変形例
なお、前記実施形態では、不正プロセス検出装置30は、CPU10とメモリ20とからなるワンチップマイコン内に組み込まれるようにしたが、バス15の部分に信号を監視するプローブを当てて、このポローブを介して信号を外付けのパソコンで判定処理を実行するようにしてもよい。
【0033】
前記実施形態の処理動作では、ステップS3とS5の判定処理を、レジスタのデータ量が32ビット以内であるか否かの判定と、タスクスイッチによってレジスタの情報を書き替えているか否かを判定することを、アンド条件で判定した場合を例示したが、いずれかの判定が「NO」であった場合でも不正として判定するようにしてもよい。さらに、この判定処理は別々に行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る不正プロセス検出装置を含むシステム構成を示す図である。
【図2】同実施形態におけるプログラムシーケンスおよびメモリマップを示す図である。
【図3】同実施形態におけるメモリマップの構成を示す図である。
【図4】同実施形態におけるレジスタの構成を示す図である。
【図5】同実施形態における不正プロセス検出動作を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0035】
1…システム、10…CPU、15…バス、20…メモリ、30…不正プロセス検出装置、31…記憶デバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、プロセスの情報を切り替えるタスクスイッチと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲を設定する退避領域範囲設定手段と、
前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、
前記情報が前記タスクスイッチによって情報が切り替えられていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えた
ことを特徴とする不正プロセス検出装置。
【請求項2】
複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲を設定する退避領域範囲設定手段と、
前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、
前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスに対応した次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えた
ことを特徴とする不正プロセス検出装置。
【請求項3】
複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの不正アクセスの範囲を設定する不正アクセス範囲設定手段と、
前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、
前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする判定手段と、を備えた
ことを特徴とする不正プロセス検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の不正プロセス検出装置において、
前記判定手段によって不正プロセスと判定した場合には、前記記憶手段に記憶されたプロセスの情報を前記メモリに書き込む書込手段を備えた
ことを特徴とする不正プロセス検出装置。
【請求項5】
複数のプロセスの処理をリアルタイムに割込処理で実行するためのリアルタイムOSが実装されたシステムであって、前記複数のプロセスを順次実行するCPUと、前記プロセスの情報を順次退避させて記憶するメモリと、プロセスの情報を切り替えるタスクスイッチと、前記CPUで次に実行されるプロセスのアドレスを記憶するプログラムカウンタと、を具備したシステムの不正プロセス検出装置において、
前記メモリの退避領域の範囲と不正アクセスの範囲をそれぞれ設定する退避領域範囲設定手段と、
前記退避領域に書き込み・読み出しされる前記プロセスによる情報を一時的に記憶する記憶手段と、
前記情報が前記タスクスイッチによって情報が切り替られていないと判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第1の判定手段と、
前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスに対応した次に実行されるプロセスに一致しない情報が、前記退避領域に対して書き込み・読み出しが行われると判定され、および/または前記プロセスのデータ量が前記退避領域の範囲に対応したデータ量以上であると判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第2の判定手段と、
前記プログラムカウンタに記憶されたアドレスが不正アクセスの範囲と判定された場合、前記記憶手段に記憶されたプロセスを不正プロセスとする第3の判定手段と、
前記各判定手段のいずれかによって不正プロセスと判定した場合には、前記記憶手段に記憶されたプロセスの情報を前記メモリに書き込む書込手段と、を備えた
ことを特徴とする不正プロセス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−209990(P2008−209990A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43608(P2007−43608)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】