説明

不織布、不織布の製造方法及び吸収性物品

【課題】本発明は、繊維の高密度領域と低密度領域が平面方向に分散するように形成され表面シートから吸収体への液体の移行を妨げられず、液体が透過する際の拡散性が低い不織布、該不織布の製造方法及び該不織布を用いた吸収性物品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の不織布5は、主に熱収縮した熱収縮性繊維からなる高密度領域11と、主に互いに融着した熱融着性繊維からなる低密度領域12と、をそれぞれ複数有する。そして、複数の高密度領域11及び複数の低密度領域12それぞれは、不織布5における平面方向に分散するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、不織布の製造方法及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、吸収性物品に用いられる不織布における液引き込み性や液移行性(スポット性)の向上を目的として、不織布に配合する繊維の種類や、不織布の構造について様々な工夫がなされている。ここで、液引き込み性が良いとは、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないことをいい、液体スポット性が高いとは、液体が透過する際の拡散性が低いことをいう。
【0003】
例えば、液透過性の表面シートと液保持性の吸収体との間に、繊維材料からなる液透過性のシートが配された吸収性物品において、この液透過性のシートが、吸収体に最も近い側に位置する第1の層と、表面シートに最も近い側に位置する第2の層とを有する多層構造からなり、第2の層よりも第1の層の方が、繊維密度が高くなるようにし、第2の層から第1の層に向かって毛管力が高まっている吸収性物品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−33236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の液透過性シートにおいても、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないようになってきているものの、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないことと、液体が透過する際の拡散性が低いこととが両立しているとは言いがたい。また、吸収体に最も近い側に位置する第1の層においては、全面的に繊維密度が高くなっており、多量の液体が表面シートに排出されたときには、液体を吸収体に好適に移行させることが困難である場合がある。
【0005】
上記に鑑み、本発明は、繊維の高密度領域と低密度領域が平面方向に分散するように形成され表面シートから吸収体への液体の移行を妨げられず、液体が透過する際の拡散性が低い不織布、該不織布の製造方法及び該不織布を用いた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、熱融着性繊維と熱収縮性繊維とを配合した繊維ウェブを、所定条件で加熱することで、繊維の高密度領域と低密度領域とが平面方向に分散するように形成され、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない不織布を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
(1) 熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維と、を含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域と、をそれぞれ複数有し、前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成され、前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される不織布。
【0008】
(2) 前記熱収縮性繊維は、前記熱融着性繊維が溶融可能となる温度よりも高い温度で熱収縮性が発現される(1)記載の不織布。
【0009】
(3) 前記高密度領域における前記熱収縮性繊維は、螺合状に捲縮すると共に前記熱融着性繊維を巻き込むように熱収縮してなる(1)又は(2)に記載の不織布。
【0010】
(4) 前記複数の低密度領域それぞれは、前記複合の高密度領域それぞれの周囲に形成される(1)から(3)のいずれかに記載の不織布。
【0011】
(5) 前記熱融着性繊維が該熱融着性繊維と接触する繊維に融着してネットワーク構造を形成することで該不織布の収縮が抑制された状態において、前記熱収縮性繊維が熱収縮することで前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域が形成される(1)から(4)のいずれかに記載の不織布。
【0012】
(6) 前記複数の高密度領域と前記複数の低密度領域とにおける分散度合いを示す分散指数は250から790である(1)から(5)のいずれかに記載の不織布。
【0013】
(7) 熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維とを含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とをそれぞれ複数有し、前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成され、前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される不織布の製造方法であって、熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維とを含む繊維ウェブを、所定の加熱装置に搬送する搬送工程と、前記繊維ウェブを所定方向に搬送しながら前記加熱装置により前記熱収縮性繊維の熱収性が発現可能な温度で加熱処理する収縮加熱工程と、を含み、前記搬送工程における前記繊維ウェブの搬送速度及び/又は前記収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度を調整することで、前記高密度領域及び前記低密度領域の態様を調整する不織布製造方法。
【0014】
(8) 前記収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度は、前記搬送工程における前記繊維ウェブの搬送速度に対する該収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度の比が、前記収縮加熱工程における加熱温度での前記繊維ウェブの熱収縮比よりも大きくなるよう調整される(7)に記載の不織布製造方法。
【0015】
(9) 前記収縮加熱工程より前の工程であり、前記繊維ウェブの厚さを薄くすることで前記熱収縮性繊維の自由度を規制するためであって、前記熱融着性繊維が実質的に溶融せず、かつ、熱収縮性繊維が実質的に熱収縮しない温度で加熱処理する予備加熱工程と、を含む(7)又は(8)に記載の不織布製造方法。
【0016】
(10) 前記収縮加熱工程より前の工程であり、前記熱融着性繊維が溶融可能であり、かつ、前記熱収縮性繊維が実質的に熱収縮しない温度で加熱する融着加熱工程と、を含む(7)から(9)のいずれかに記載の不織布製造方法。
【0017】
(11) 前記融着加熱工程により、前記熱融着性繊維を溶融させて該融着性繊維と接触する繊維に融着させてネットワーク構造を形成し、前記収縮加熱工程により、前記ネットワーク構造が形成され前記繊維ウェブの収縮が抑制された状態において前記熱収縮性繊維を熱収縮させて、前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域を形成する(10)に記載の不織布製造方法。
【0018】
(12) 前記収縮加熱工程において、前記繊維ウェブに加えられる摩擦を少なくすることで、前記繊維ウェブに含まれる前記熱収縮性繊維における収縮の阻害を抑制する(7)から(11)のいずれかに記載の不織布製造方法。
【0019】
(13) 前記収縮加熱工程において、前記繊維ウェブは、通気性の第1支持部材と、前記第1支持部材から所定距離を空けて垂直方向上側に略平行に配置される通気性の第2支持部材との間に配置された状態で搬送され、前記第1支持部材の垂直方向下側から所定温度の熱風を噴きあてると共に、前記第2支持部材の垂直方向上側から所定温度の熱風を噴きあてることで、前記繊維ウェブにおける全部又は一部を前記第1支持部材及び/又は前記第2支持部材から離間させた状態で該繊維ウェブを加熱処理する(12)に記載の不織布製造方法。
【0020】
(14) 前記繊維ウェブを弛ませた状態で加熱処理する(13)に記載の不織布製造方法。
【0021】
(15) 少なくとも一部が液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される液保持性の吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される1又は複数のセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、前記1又は複数のセカンドシートそれぞれは、熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維と、を含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊k維密度である低密度領域と、をそれぞれ複数有する不織布であり、前記不織布における前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における前記厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成されると共に、前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される吸収性物品。
【0022】
(16) 前記セカンドシートは、該セカンドシートにおける平均繊維密度が前記表面シートにおける平均繊維密度よりも高く、かつ、前記高密度領域における繊維密度が前記吸収体における平均繊維密度よりも低い(15)に記載の吸収性物品。
【0023】
(17) 2つのセカンドシートを備え、該2つのセカンドシートは、前記高密度領域及び前記低密度領域それぞれの含有率が異なる(15)又は(16)に記載の吸収性物品。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、繊維の高密度領域と低密度領域が平面方向に分散するように形成され表面シートから吸収体への液体の移行を妨げず、液体が透過する際の拡散性が低い不織布、該不織布の製造方法及び該不織布を用いた吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明における吸収性物品の斜視図である。図2は、図1の吸収性物品におけるX―X断面図である。図3は、図2の断面図における不織布を示す図である。図4は、本発明における不織布の断面図である。図5は、本発明における不織布の拡大断面図である。図6は、本発明における不織布の平面図及び斜視図である。図7は、本発明における不織布の疎密構造を説明する図である。図8は、本発明における不織布を吸収性物品のセカンドシートとして用いた場合における液体の吸収挙動を説明する図である。図9は、第1製造方法を説明する図である。図10は、第2製造方法を説明する図である。図11は、実施例における不織布の製造条件及び平均吸光度の測定結果を説明する表1である。図12は、実施例における不織布の吸収性の評価結果を説明する表2である。
【0027】
[1]不織布
図3から図7により、本発明の不織布における実施形態について説明する。
【0028】
[1.1]全体構成
図3から図7に示すように、不織布5は、熱融着性繊維120と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維110と、を含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した熱収縮性繊維110からなり該不織布5における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維120からなり平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12と、をそれぞれ複数有する。
【0029】
図5に示すように、複数の高密度領域11及び複数の低密度領域12それぞれは、不織布5における平面方向に分散するように形成される。そして、図3又は図4に示すように、複数の低密度領域12における全部又は一部は、不織布5の厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される。
【0030】
本実施形態における不織布5は、例えば、熱融着性繊維120が該熱融着性繊維120に接触する繊維を融着してネットワーク構造を形成することで該不織布5の収縮を抑制した状態において、熱収縮性繊維110が熱収縮することで高密度領域11及び低密度領域12が形成された不織布である。
【0031】
[1.2]熱融着性繊維及び熱収縮性繊維
不織布5は、熱融着性繊維120と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維110と、を含む厚さが略均一な不織布である。具体的には、熱融着性繊維120と、熱収縮性繊維110とが混合された繊維ウェブを所定条件で加熱処理することで得られる不織布である。
【0032】
熱収縮性繊維110は、例えば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏芯芯鞘型複合繊維、又はサイド・バイ・サイド型複合繊維を例示できる。収縮率の異なる熱可塑性ポリマー材料の例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体とポリプロピレンの組合せ、ポリエチレンとエチレン−プロピレンランダム共重合体の組合せ、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートとの組合せ等が挙げられる。具体的な例としては、チッソ社製の商品名EP、東洋紡社製のMSW、ダイワボウ社製のCPPなどが上げられる。例えば、潜在捲縮性を有する熱収縮性繊維が好ましい。
【0033】
また、熱収縮性繊維110は、例えば、短繊維のステープルファイバーで、その長さは5から90mm、その太さは1から11Dtex程度が望ましい。
【0034】
熱融着性繊維120として、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)からなる繊維が挙げられる。また、エチレン−ポリプロピレン共重合体やポリエステル、ポリアミドなどから構成される繊維を用いることもできる。これらの熱可塑性ポリマー材料の組合せからなる芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド複合繊維も用いることができる。
【0035】
熱融着性繊維120は、例えば、短繊維のステープルファイバーで、その長さは5から90mm、その太さは1から11Dtex程度が望ましい。
【0036】
熱収縮性繊維110と熱融着性繊維120との混合比率は、全繊維量に対して熱融着性繊維120の割合が10質量%から90質量%が好ましく、更には30質量%から70質量%がより好ましい。熱収縮性繊維110の含有率が上記範囲である場合、熱収縮性繊維110の収縮作用に乗じて熱収縮性繊維110と絡合もしくは周辺に配置されている熱融着性繊維120を繊維ウェブ内で移動させることができ、高密度領域11及び低密度領域12を好適に形成することができる。
【0037】
熱融着性繊維120は、不織布5における全繊維量に対して90%質量以下、望ましくは70質量%以下である場合が好ましい。熱融着性繊維120の含有率が上記範囲である場合、熱融着性繊維120同士の接合点を十分に持てるため、ネットワーク構造を好適に形成することができる。また、熱融着性繊維120同士の接合点を十分に持てるため、不織布5の製造工程及び吸収性物品等を製造するために追加される工程において十分な引っ張り強度を維持できる。
【0038】
熱収縮性繊維110の熱収縮率は、所定温度(例えば、145℃(418.15K))において10%以上、好ましくは20から80%である。この熱収縮率の測定方法として、例えば、(1)測定する繊維(100%)で200g/mのウェブを作成、(2)250×250mmの大きさにカット、(3)所定温度に調整されたオーブン内に5分放置、(4)収縮後の長さ寸法を測定、(5)熱収縮前後の長さ寸法差から算出することで、熱収縮率を算出することができる。
【0039】
熱融着性繊維120は、例えば、熱収縮性を示さないか、又は熱収縮性は示すが上記所定の温度(例えば、145℃(418.15K))における熱収縮率が10%以下、好ましくは7%以下の繊維である。熱収縮性繊維110と熱融着性繊維120とにおける熱収縮率が上述である場合、高密度領域11及び低密度領域12を好適に形成することができる。つまり、熱収縮率が異なる繊維を混合した繊維ウェブを所定温度で加熱することで、熱収縮率の差により高密度領域11及び低密度領域12が平面方向に分散するように形成された不織布を得ることができる。
【0040】
また、熱収縮性繊維110は、熱融着性繊維120が溶融可能となる温度よりも高い温度で熱収縮性が発現される。熱収縮性繊維110は、熱融着性繊維120が溶融する温度よりも5℃以上高い温度、好ましくは10℃以上高い温度で熱収縮性が発現される場合が好ましい。この場合、例えば、熱融着性繊維120が溶融し、かつ、熱収縮性繊維110の熱収縮性が発現しない温度で加熱処理することで、ネットワーク構造を形成することができる。
【0041】
更に、熱収縮性繊維110の溶融する温度は、該熱収縮性繊維110における熱収縮可能な温度よりも高いので、高密度領域11を構成する熱収縮性が発現された熱収縮性繊維110は、熱融着性繊維120との交点において該熱融着性繊維120と融着しているが、熱収縮性繊維110同士では実質的に融着していない状態で含まれている。つまり、ネットワーク構造が形成された繊維ウェブを、該熱収縮性繊維110の熱収縮性が発現し、かつ、溶融しない温度で加熱処理することで、熱収縮性繊維110が他の繊維を巻き込むように捲縮するようにして、高密度領域11及び低密度領域12を形成することができる。
【0042】
[1.3]高密度領域及び低密度領域
高密度領域11は、主に熱収縮した熱収縮性繊維110からなり不織布5における平均繊維密度よりも高い繊維密度の領域である。例えば、図5に示すように、高密度領域11は、熱収縮性繊維110が螺合状に捲縮すると共に熱融着性繊維120等の繊維を巻き込むように熱収縮(捲縮)した領域である。
【0043】
高密度領域11は、例えば、熱収縮性繊維110の熱収縮に乗じて熱収縮性繊維110と絡合もしくは周辺に配置されている熱融着性繊維120等の繊維を、該熱収縮性繊維110の収縮方向に移動させる(例えば、捕集するように)ことで形成される。これにより、熱収縮性繊維110が熱収縮した領域又は熱収縮すると共に熱融着性繊維120を移動させた高密度領域11と、熱融着性繊維120同士の接合で形成されたネットワーク構造により熱収縮性繊維110の収縮によっても移動されきれなかった領域である低密度領域12と、が平面方向に分散するように形成される。
【0044】
低密度領域12は、図4に示すように、主に互いに融着した熱融着性繊維120からなり不織布5における平均繊維密度よりも低い繊維密度の領域である。図3又は図4に示すように、例えば、低密度領域12は、不織布5の厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される。低密度領域12が不織布5の厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成されることで、不織布5の一方側に存在する液体を、他方側に好適に移行させることが可能である。
【0045】
また、図4又は図6に示すように、低密度領域12は、不織布5における平面方向に分散して形成されると共に、高密度領域11の周囲に形成される。低密度領域12が高密度領域11の周囲に形成されることで、高密度領域11により引き込んだ液体を低密度領域12に移行させると共に、低密度領域12により不織布5の厚さ方向における所定方向に好適に移行させることができる。例えば、不織布5をセカンドシートとして用いた場合、不織布5における表面シート側に存在する液体を吸収体側に移行させる際に、低密度領域12の内部に取り残された液体を高密度領域11に移行させることができる。
【0046】
ここで、高密度領域11における繊維間距離は、例えば、10から30μmである。また、低密度領域12における繊維間距離は、例えば、100から300μmである。
【0047】
この高密度領域11及び低密度領域12は、例えば、熱融着性繊維120が該熱融着性繊維120と接触する繊維に融着してネットワーク構造を形成して繊維ウェブ(不織布5)の収縮を抑制した状態において熱収縮性繊維110を熱収縮させることで、高密度領域11及び低密度領域12を形成することできる。他の形成方法は、後述する不織布製造方法に記載の通りである。
【0048】
[1.4]分散指数(平均吸光度の標準偏差)
高密度領域11及び低密度領域12は、不織布5における平面方向に分散して形成される。この平面方向への分散度合いは、例えば、分散指数(平均吸光度の標準偏差)で示すことができる。本実施形態の不織布5における分散指数は、例えば、250から790、好ましくは310から705である。
【0049】
分散指数が250より小さい場合には、高密度領域11と低密度領域12とが均一状態に近づきすぎるため、低密度領域12での液体が透過する際の拡散性が低いことと、高密度領域11での表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない等の吸液性とを両立することができない場合がある。また、分散指数が790より大きい場合には、高密度領域11と低密度領域12とが偏在化しすぎるために、低密度領域12で一時捕獲した液を高密度領域11へ移行させることができず、低密度領域12での液体が透過する際の拡散性の低さと高密度領域11での表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない等の吸液性とを両立することができない場合がある。このため、本実施形態の不織布5における分散指数は、例えば、250から790、好ましくは310から705である。
【0050】
分散指数である平均吸光度の標準偏差は、所定の測定器(例えば、フォーメーションテスター(品番:FMT−MIII、野村商事株式会社製))を用いることで測定及び算出することができる。測定条件は、例えば、カメラ補正感度が100%、2値化閾値±%:0.0、移動画素が1、有効サイズが25×18cmで、製造工程において支持部材により支持された面を表側にして測定することができる。また、その他の公知の測定方法でも分散指数を測定することができる。
【0051】
ここで、分散指数が高いほど地合ムラが大きい。つまり、高密度領域11と低密度領域12とが平面方向に分散しているといえる。また、高密度領域11と低密度領域12とにおける吸光度の差が大きいといえる。つまり、高密度領域11と低密度領域12との繊維密度の差が大きいといえる。
【0052】
[1.5]その他
本実施形態における不織布5は、高密領域11と低密度領域12が平面方向に分散し、かつ高密度領域11と低密度領域12が厚み方向に連通している例である。この不織布5を吸収性物品のセカンドシートとして用いた場合の作用効果は下記である。なお、図7は、下記説明の理解に役立てることができる。
(1)低密度領域12が連通していることにより、表面シートに多量に排泄された液体を表面シート内で拡散させることなくセカンドシートに素早く取り込ませることができる(スポット性)。
(2)高密度領域11が連通し、その密度は表面シートよりも高いことにより、表面シートに排泄された液体を、不織布5における他方側に配置される吸収体に好適に移行させることができ、表面シートにおける表面側や内部における液体の残留をより一層抑制できる(液引き込み性)。
(3)低密度領域12の繊維は、その隣り合う高密度領域11の繊維と連結しているために、低密度領域内や、低密度領域の上面に位置する表面シート内に滞留して取り残された液体も高密度領域に移行させることができる。
【0053】
例えば、図8(A)から図8(D)により、液体900の吸収挙動について説明する。図9(A)に示すように、吸収性物品1Aにおける表面シート20に排泄された経血等の液体900は、表面シート20における凹部(溝部)に溜まることで表面方向への拡散が抑制されながら、セカンドシート50を介して吸収体40に移行される。吸収性物品1Aにおけるセカンドシート50は、本実施形態における不織布5が用いられる。
【0054】
図8(B)に示すように、セカンドシート50である不織布5は、液体が透過する際の拡散性が低いため、例えば、凹部(溝部)に溜まった液体900を吸収体40側に好適に移行させる。
【0055】
そして、図8(C)に示すように、セカンドシートである不織布5は、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないため、例えば、表面シート20における凸部(山部)に含まれる液体を引き込み、吸収体40に移行させることができる。
【0056】
また、図8(D)に示すように、液体900が吸収体40に好適に移行することにより、表面シート20及びセカンドシート50は、所定の状態まで乾燥可能であるため、表面シート20に経血等の液体900が繰り返し排泄されても、上記液移行や液引き込みを繰り返すことが可能である。結果として、表面シートにおける表層の乾燥性に優れる場合がある。
【0057】
つまり、図8(A)から(D)における吸収性物品1Aは、表面が凹凸状(山溝状)の表面シート20を用いているが、これにより、凹部(溝部)に液体900を溜めることができるため、表面側における液体900の拡散を抑制することができる。そして、凹部(溝部)に溜められた液体900は、セカンドシート50である不織布5により、好適に吸収体40に移行される。この点からも表面シート20における液拡散性を抑制することができる。更に、セカンドシート50である不織布5は液体が透過する際の拡散性が低いため、表面シート内部の液体900がセカンドシート50に引き込まれ、吸収体40に移行される。これにより、表面シート20における速乾性が向上される。更には、液体900が吸収体40に好適に移行することにより、表面シート20及びセカンドシート50は、所定の状態まで乾燥可能であるため、表面シート20に経血等の液体900が繰り返し排泄されても、上記液移行や液引き込みを繰り返すことが可能である。また、吸収性物品1Aとしての吸収性を維持することが可能である。図8(A)から図8(D)に示される吸収性物品1Aは、本実施形態における不織布5を用いた吸収性物品における好適な実施態様の1つである。
【0058】
[2]不織布の製造方法
主に図9又は図10より、不織布5における製造方法について説明する。図9に示すように、不織布の製造方法は、
【0059】
熱融着性繊維120と、熱収縮性繊維110であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維110とを含む繊維ウェブ500を、第2加熱装置520に搬送する搬送工程と、繊維ウェブ500を所定方向に搬送しながら第2加熱装置520により前記熱収縮性繊維の熱収性が発現可能な温度で加熱処理する収縮加熱工程と、を含む。そして、搬送工程における繊維ウェブ500の搬送速度及び/又は収縮加熱工程における繊維ウェブ500の搬送速度を調整することで、高密度領域11及び低密度領域12の態様を調整することができる。
【0060】
ここで、不織布5の製造方法における、疎密(高密度領域及び低密度領域)を形成するための加熱工程が収縮加熱工程を含む複数の加熱工程からなる第1製造方法と、疎密(高密度領域及び低密度領域)を形成するための加熱工程が収縮加熱工程だけである第2製造方法と、について以下に説明する。
【0061】
[2.1]第1製造方法
図9及び図10により、不織布5における第1製造方法について説明をする。第1製造方法は、疎密(高密度領域及び低密度領域)を形成するための加熱工程として収縮加熱工程を含む複数の加熱工程からなる製造方法である。具体的には、繊維ウェブ500に含まれる熱融着性繊維120同士を融着させてネットワーク構造を形成する融着加熱工程と、ネットワーク構造が形成され全体の収縮が抑制された状態において熱収縮性繊維110における熱収縮を発現させる収縮加熱工程と、を含むことを特徴とする不織布の製造方法である。第1製造方法として、例えば、不織布5における疎密(高密度領域及び低密度領域)を形成するための加熱として、融着加熱工程と、収縮加熱工程との2段階での加熱工程を含む製造方法を例示できる。以下に、第1製造方法の具体的な内容を説明する。
【0062】
[2.1.1]開繊工程及び第1搬送工程
図9に示すように、不織布製造装置590は、開繊工程において、カード装置501により、熱収縮性繊維110と熱融着性繊維120とを混綿した原料を開繊することで所定厚さの繊維ウェブ500を連続的に成形する。熱収縮性繊維110と熱融着性繊維120とを混綿する工程では、繊維同士の自由度を有する集合体である繊維ウェブ500を形成する。
【0063】
繊維ウェブ500として、例えば、カード法により形成された繊維ウェブ、エアレイド法により形成された繊維ウェブを含む。そして、得られる不織布に高密度領域と低密度領域とが好適に分散するように形成するためには、例えば、比較的長繊維を使用するカード法で形成したウェブが好ましい。
【0064】
この繊維ウェブ500は、第1搬送工程においてコンベア503、505により第1加熱装置510の入り口に速度S1で搬送される。この第1搬送工程では、繊維ウェブ500は、繊維ウェブの繊維同士の自由度を維持した状態で搬送される。
【0065】
[2.1.2]融着加熱工程
融着加熱工程において、繊維ウェブ500は、第1加熱装置510の内部でコンベア515により搬送速度S2で搬送されながら融着加熱処理される。具体的には、コンベア515により搬送された状態の繊維ウェブ500における上面側から所定温度の熱風を噴きあてることで加熱処理する。この第1加熱装置510における加熱温度は、熱融着性繊維120が溶融する温度であると共に、熱収縮性繊維110が実質的に収縮しない温度である。繊維ウェブ500に含まれる熱融着性繊維120同士を融着させてネットワーク構造を形成する。つまり、融着加熱工程においては、主に繊維ウェブ内の熱融着性繊維120同士を仮接着するように融着させる。
【0066】
図9に示すように、第1加熱装置510において、繊維ウェブ500を熱融着性繊維120が溶融可能、かつ、熱収縮性繊維110が実質的に熱収縮しない温度に加熱する熱風を繊維ウェブ500の上方側から下方側に向けて噴きあてる。上方側から噴きあてられる熱風により、繊維ウェブ500は支持部材511に押さえつけられた状態で加熱されるので、繊維ウェブ500と支持部材511との摩擦が高い状態で融着加熱される。繊維ウェブ500の収縮が阻害された状態で熱融着性繊維120同士が融着され、ネットワーク構造が形成される。
【0067】
[2.1.3]第2搬送工程及び収縮加熱工程
図9に示すように、第2搬送工程において、コンベア525は、第1加熱装置510に連続して配置される第2加熱装置520により、融着加熱工程で融着加熱処理された繊維ウェブ500を搬送速度S3で搬送する。
【0068】
収縮加熱工程において、第2加熱装置520は、コンベア515により搬送される繊維ウェブ500を、コンベア525により所定方向に搬送しながら該繊維ウェブ500に含まれる熱収縮性繊維110の熱収縮性が発現可能な温度で収縮加熱処理する。つまり、ネットワーク構造が形成され繊維ウェブ500自体の収縮が抑制された状態において、熱収縮性繊維110における熱収縮が発現されるよう加熱処理される。
【0069】
このように、ネットワーク構造が形成され繊維ウェブ500の収縮が抑制された状態で熱収縮性繊維110を熱収縮させることで、高密度領域及び低密度領域を形成することができる。例えば、熱収縮性繊維110の収縮により、熱収縮性繊維110と絡合もしくは周辺に配置されている熱融着性繊維120等を繊維ウェブ500内で収縮方向に移動させることで、高密度領域及び低密度領域を形成することができる。言い換えると、熱収縮性繊維110の収縮によって集積された高密度領域と、熱融着性繊維同士の接合で形成されたネットワーク構造であるため熱収縮性繊維110の収縮によって繊維が移動されきれなかった領域である低密度領域とを混在させることができる。
【0070】
収縮加熱工程における加熱処理は、融着加熱工程における加熱処理温度よりも高い温度で加熱処理される。これは、融着加熱工程において融着される熱融着性繊維120の溶融温度よりも、熱収縮性繊維110における熱収縮性が発現する熱収縮温度が高いためである。例えば、収縮加熱工程における収縮加熱温度は、融着加熱工程における融着加熱温度よりも、5℃以上、好ましくは10℃以上高い温度で加熱処理される。
【0071】
更には、収縮加熱工程における第2加熱装置520での加熱処理は、繊維ウェブ500自体の収縮阻害を抑制するために、繊維ウェブ500と下方側支持部材525等との摩擦が少ない状態で行うことが好ましい。
【0072】
例えば、図9に示すように、第2加熱装置520における繊維ウェブ500は、通気性の第1支持部材である下方側支持部材521と、下方側支持部材521から所定距離を空けて垂直方向上側に略平行に配置される通気性の第2支持部材である上方側支持部材523との間に配置された状態で搬送される。そして、下方側支持部材521の垂直方向下側から所定温度の熱風を噴きあてると共に、上方側支持部材523の垂直方向上側から所定温度の熱風を噴きあてることで、繊維ウェブ500における全部又は一部を下方側支持部材521及び/又は上方側支持部材523から離間させた状態で加熱処理することができる。
【0073】
この場合における熱風は、繊維ウェブ500における上下両側から該繊維ウェブ500に噴きあてられるが、繊維ウェブ500の搬送方向において上下交互に熱風を噴きあてることで、繊維ウェブ500を全体的に下方側支持部材521と上方側支持部材523とから離間した状態で加熱処理することができる。これにより、繊維ウェブ500と下方側支持部材521及び上方側支持部材523との摩擦が低減されることで、繊維ウェブ500の収縮阻害が抑制された状態で加熱処理することができる。
【0074】
この場合にける熱風の温度は、例えば、100から160℃(373.15から433.15K)、好ましくは120から140℃(393.15から413.15K)である。また、上側方向からの熱風は、例えば4から13m/s、好ましくは7から10m/sであり、下側方向からの熱風は、例えば、4から13m/s、好ましくは7から10m/sである。
【0075】
また、収縮加熱工程における第2加熱装置520での加熱処理は、繊維ウェブ500自体の収縮阻害を抑制するために、繊維ウェブ500を弛ませた状態で加熱処理することが好ましい。
【0076】
例えば、図10に示すように、第2加熱装置520の内部において前側コンベア525aと、後側コンベア525bとを所定距離だけ離間させて搬送方向に連続して配置する。この前側コンベア525aと後側コンベア525bとの間には支持部材等を配置しないようにすると共に、繊維ウェブ500における下側から熱風を噴きあてることで、繊維ウェブ500に加えられる摩擦が実質的にない領域を形成することができる。更に、この領域に配置される繊維ウェブ500を弛ませた状態で加熱処理することで、繊維ウェブ500自体の収縮阻害(特に、搬送方向への収縮阻害)をより抑制することができる。この弛みを形成するために、例えば、前側コンベア525aの搬送速度S4よりも、後側コンベア525bの搬送速度S5を遅くすることで、弛みを形成することができる。
【0077】
具体的には、図10に示すように、繊維ウェブ500は、前側コンベア525aに配置される前下方側支持部材521aに支持され搬送されながら上側から熱風が噴きあてられ、次いで、離間した領域では下方から熱風を噴きあてられ上方側支持部材523に支持され又は離間した状態で後側コンベア525b側に搬送され、更に、上側から熱風を噴きあてられ後下方側支持部材521bに支持されるようにして搬送される。このようにすることで、繊維ウェブ500における収縮阻害を好適に抑制することができ、不織布5における高密度領域及び低密度領域を好適に形成することができる。
【0078】
搬送工程における繊維ウェブ500の搬送速度S2に対する収縮加熱工程における繊維ウェブ500の搬送速度S3の比は、搬送工程により搬送される繊維ウェブ500に対する収縮加熱工程での加熱処理温度における繊維ウェブ500の熱収縮比よりも大きくなるよう調整することができる。つまり、融着加熱工程において加熱処理されネットワーク構造が形成された繊維ウェブ500の収縮加熱工程における熱収縮は規制された状態でなされる。ここで、搬送速度S2及びS3は、例えば、熱収縮性繊維110の収縮加熱工程における加熱温度での熱収縮比を参考にして設定することができる。ここで、熱収縮比は、自由状態における、熱収縮する長さに対する熱収縮後の長さをいう。
【0079】
[2.2]第2製造方法
第2製造方法は、不織布5における高密度領域及び低密度領域を形成するための加熱工程が収縮加熱工程のみの製造方法である。例えば、図9の不織布製造装置590において、第1加熱装置510による加熱処理を経ずに第2加熱装置520により熱収縮性繊維110における熱収縮性が発現される温度で加熱処理する製造方法を例示できる。
【0080】
そして、該製造方法において、収縮加熱工程における繊維ウェブ500の搬送速度S3は、搬送工程における繊維ウェブ500の搬送速度S2に対する該搬送速度S3の比が、収縮加熱工程における加熱温度での繊維ウェブ500の熱収縮比よりも大きくなるように調整される。つまり、熱収縮性繊維110と熱融着性繊維120とが混合されてなる繊維ウェブ500における収縮加熱工程での熱収縮は規制された状態でなされる。ここで、搬送速度S2及びS3は、例えば、熱収縮性繊維110及び熱融着性繊維120の収縮加熱工程における加熱温度での熱収縮比を参考にして設定することができる。
【0081】
[2.3]その他
不織布5の製造方法として、例えば、収縮加熱工程より前の工程であり、繊維ウェブ500の厚さを薄くすることで熱収縮性繊維110の自由度を規制するための加熱工程を含むことができる。具体的には、熱融着性繊維120が実質的に溶融せず、かつ、熱収縮性繊維110が実質的に熱収縮しない温度で加熱処理する予備加熱工程と、を含むことができる。第1製造方法においては、融着加熱工程よりも前の工程として含まれる。
【0082】
[3]吸収性物品
本実施形態における吸収性物品1は、上述の不織布を構成物とする吸収性物品である。例えば、図1又は図2に示すように、不織布5をセカンドシートとして備える吸収性物品1である。
【0083】
本実施形態における吸収性物品1は、少なくとも一部が液透過性の表面シート2と、液不透過性の裏面シート3と、表面シート2と裏面シート3との間に配置される液保持性の吸収体4と、表面シート2と吸収体4との間に配置される1又は複数のセカンドシートである不織布5とを備える。
【0084】
1又は複数のセカンドシートである不織布5それぞれは、図4又は図5に示すように、熱融着性繊維120と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維110と、を含む厚さが略均一な不織布である。そして、不織布5それぞれは、主に熱収縮した熱収縮性繊維110からなり該不織布5における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域11と、主に互いに融着した熱融着性繊維120からなり平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域12とをそれぞれ複数有する。複数の高密度領域11及び複数の低密度領域12それぞれは、不織布5における平面方向に分散するように形成される。更に、複数の低密度領域12における全部又は一部は、不織布5の厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される。ここで、不織布5の構造や製造方法等については、上述の通りである。
【0085】
本実施形態における吸収性物品1は、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げない不織布5をセカンドシートとして用いているので、表面シート2における吸収体への液体の移行を妨げない吸収性物品である。ここで、図8(A)から(D)に示す液体900の吸収挙動については、上述の通りである。
【0086】
吸収性物品1にセカンドシートとして用いられる不織布5は、不織布5における平均繊維密度が表面シートの平均繊維密度よりも高く、高密度領域11における繊維密度が吸収体4における平均繊維密度よりも低いことが好ましい。
【0087】
また、セカンドシートとして、2枚の不織布5を積層したものを用いることができる。例えば、低密度領域12及び高密度領域11それぞれの含有率が異なる2つの不織布5を積層したものをセカンドシートとして用いることができる。この場合において、例えば、低密度領域12のムラ(繊維密度)勾配を有するセカンドシートを得ることができる。
【0088】
このセカンドシートにおける低密度領域12の含有率が高い面を表面シート側に配置した場合、表面シート2における液体を吸収体4側に速やかに移行させることが可能である。
【0089】
また、低密度領域12の含有率が高い面を吸収体4側に配置した場合、表面シート2に含まれる液体を好適に引き込んで吸収体4側に移行させることができる。また、図5に示す螺合状に捲縮した熱収縮性繊維110が表面シート2に接する面に多く形成されるため、表面シート2とセカンドシートとの摩擦が高くなり、接合のための接着剤の使用量を低減できる。また、螺合状に捲縮した熱収縮性繊維110が表面シート2の繊維と絡み合うことで、吸収性物品1においてヨレが生じる場合でも、表面シート2とセカンドシートとがずれにくい。
【0090】
つまり、図8(A)から(D)における吸収性物品1Aは、表面が凹凸状(山溝状)の表面シート20を用いているが、これにより、凹部(溝部)に液体900を溜めることができるため、表面側における液体900の拡散を抑制することができる。そして、凹部(溝部)に溜められた液体900は、セカンドシート50である不織布5により、好適に吸収体40に移行される。この点からも表面シート20における液拡散性を抑制することができる。更に、セカンドシート50である不織布5は液体が透過する際の拡散性が低いため、表面シート内部の液体900がセカンドシート50に引き込まれ、吸収体40に移行される。これにより、表面シート20における速乾性が向上される。更には、液体900が吸収体40に好適に移行することにより、表面シート20及びセカンドシート50は、所定の状態まで乾燥可能であるため、表面シート20に経血等の液体900が繰り返し排泄されても、上記液移行や液引き込みを繰り返すことが可能である。また、吸収性物品1Aとしての吸収性を維持することが可能である。図8(A)から図8(D)に示される吸収性物品1Aは、本実施形態における不織布5を用いた吸収性物品における好適な実施態様の1つである。更に、凹部(溝部)に所定間隔で開孔部が形成されている場合には、表面シート2に排泄される液体900は、より好適にセカンドシート及び吸収体4に移行することが可能であるため好適な態様の1つである。
【0091】
吸収性物品として、例えば、生理用ナプキン、オムツ、パンティーライナー、失禁パッド、陰唇間パッド、母乳パッド等を例示することができる。
【0092】
なお、本実施形態において、不織布5をセカンドシートして用いているが、これに限定されず、例えば、不織布5を表面シートとして用いてもよい。
【0093】
[4]その他
[4.1]各構成物
以下に、他の各構成物について詳述する。表面シート2の全部又は一部を構成する液透過性域は、多数の液透過孔が形成された樹脂フィルム、多数の網目を有するネット状シート、液透過性の不織布、又は織布などで形成される。前記樹脂フィルムやネット状シートは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などで形成されたものを使用できる。また不織布としては、レーヨンなどのセルロース繊維、合成樹脂繊維などから形成されたスパンレース不織布、前記合成樹脂繊維で形成されたエアースルー不織布などを用いることができる。また、素材として、ポリ乳酸、キトサン、ポリアルギン酸などの生分解性が可能な天然物を用いることもできる。また、多数の液透過孔を形成すると共に、シリコーン系やフッ素系の撥水性油剤を塗布して、その外面に体液が付着しにくいものとしてもよい。
【0094】
また、目付は15から100g/mが好ましく、20から50g/mがより好ましく、25から40g/mが特に好ましい。目付が15g/m以下だと表面強度が十分に得られず、使用中に破ける恐れがある。また100g/m以上の場合、過度のごわつきが発現し、使用中に違和感を生じる。更には、長時間使用の場合には、40g/mを超えてしまうと、液体を表面シート2で保持してしまいベタベタした状態で維持され続け、不快に感じるようになってしまう。また、密度は0.12g/cm以下で液透過性であれば特には限定されない。密度がこれ以上の場合、表面シートの繊維間をスムーズに透過することが難しい。経血の場合、尿などにくらべ粘性が高いので密度が低いものが好ましい。
【0095】
また、表面シート2の全部又は一部を構成する液透過性域が、上述した多数の液透過性開孔が形成されたフィルム等である開孔フィルムである場合、開孔径は0.05mmから3mmの範囲内、ピッチは、0.2mmから10mmの範囲内、開孔面積率は、3%から30%の範囲内であることが好ましい。
【0096】
また、表面シート2の全部又は一部を構成する液透過性域において、セカンドシートと一体的に複数の開孔を形成することもできる。開孔の配列は千鳥状、格子状、波状など特に限定されない。また、開孔の形状としては、丸型、楕円型、四角型などが挙げられる。また、開孔の周縁に弁が備えられていても良い。
【0097】
裏面シート3は、吸収体4に吸収された排泄物が外へ漏れ出すのを防止できる材料が使用される。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。このような材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を主体とした液不透過性フィルム、通気性フィルム、スパンボンドなどの不織布の片面に液不透過性フィルムをラミネートした複合シートなどが挙げられる。好ましくは、疎水性の不織布、不透水性のプラスティックフィルム、不織布と不透水性プラスティックフィルムとのラミネートシート等を用いることができる。また、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布でも良い。
【0098】
吸収体4は、例えば、表面シート2側に配置されるクッションと、吸収体材料とで構成される。吸収体材料は、経血等の液体を吸収して保持する機能を有するもので、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。例えば、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収ポリマーとからなる吸収体材料を例示できる。フラッフ状パルプの代わりに、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維を例示できる。パルプは目付500g/m、ポリマーは目付20g/m(ポリマーは全体に分散している)で、パルプとポリマーが全体に均一に分布した混合体を、目付け15g/mのティッシュで包んだものが挙げられる。エアレイド不織布としては、例えば、パルプと合成繊維とを熱融着させ又はバインダーで固着させた不織布を例示できる。高吸収ポリマー(SAP)としては、例えば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーを例示できる。
【0099】
吸収体4の形状及び構造は必要に応じて変えることができるが、吸収体4の全吸収量は、吸収性物品としての設計挿入量及び所望の用途に対応させる必要がある。また、吸収体4のサイズや吸収能力等は用途に対応して変動される。
【0100】
[4.2]吸収性の評価方法
サンプルの吸収性を評価するために、人工経血にて液残存性、拡散性及びリウェット性を評価することができる。ここで、人工経血の組成は以下の通りである。
イオン交換水1リットルに対して以下を配合する。
(1)グリセリン ・・80g
(2)カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC) ・・・8g
(3)塩化ナトリウム(NaCl) ・・10g
(4)炭酸水素ナトリウム(NaHCO3) ・・・4g
(5)色素 赤色 102号 ・・・8g
(6)色素 赤色 2号 ・・・2g
(7)色素 黄色 5号 ・・・2g
【0101】
測定器具として、例えば、1)オートビュレット(メトローム社(株)725型)、2)SKICON、3)色彩計、4)穴あきアクリル板(中央に40mm×10mmの穴、長さ×幅=200mm×100mm、重量130g)、5)はかり、6)定規、7)人工経血、8)ストップウォッチ、9)ろ紙を用いる。
【0102】
評価サンプルは以下のように調製する。表面シートを、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。次いで、測定サンプルである不織布を、長さ×幅=100mm×60mm(任意)にカットし、目付と厚みを測定する。吸収体として、NBパルプ吸収体を15gsmのティッシュで包み、100mm×60mmにカットする。そして、エンボス加工にて表面シート、不織布、吸収体を接合する。
【0103】
評価手順は以下の通りに行う。1)穴の中央がサンプルの中央に合うようにアクリル板を重ねる。2)オートビュレットのノズルをアクリル板から10mm上の位置に合わせる。3)下記条件にて1回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:3ml)。4)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(A)。5)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内の人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(B)。6)アクリル板を外す。7)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(C、D、E)。8)2回目の人工経血を滴下する(速度:95ml/min、滴下量:4ml)。9)滴下開始からストップウォッチをスタートし、表面から人工経血の大半が無くなったら(動きが止まったら)ストップし吸収速度を測定(F)。10)ストップと同時に、別のストップウォッチをスタートし、表面シート内に人工経血がなくなったら(動きが止まったら)ストップし全乾速度を測定(G)。11)アクリル板を外す。12)滴下開始後1分経過して、拡散範囲とSKICON値(表面乾燥性)と色彩計(白度)を測定(H、I、J)。13)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、50g/cmおもりを更に載せ、1.5分放置。14)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、1回目のリウェット率測定(K)。15)ろ紙とアクリル板をサンプルの上に載せ、100g/cmおもりを更に載せ、1.5分放置。16)1.5分後、ろ紙の重量を測定し、2回目のリウェット率測定(L)。
【0104】
上記AからLにおける測定結果から、下記評価結果を得ることができる。
1)1回目(3ml滴下):吸収速度[sec](A)、全乾速度[sec](B)、拡散範囲(MD×CD)[mm](C)、SKICON値[μS](D)、白度(E)[−](E)
2)2回目(4ml滴下(計7ml)):吸収速度[sec](F)、全乾速度[sec](G)、拡散範囲(MD×CD)[mm](H)、SKICON値[μS](I)、白度(E)[−](J)
3)(1)リウェット率1回目(50g/cm下)(K)、(2)リウェット率2回目(100g/cm下)(L)
【実施例】
【0105】
本発明における不織布を製造し、分散指数や吸収性の評価を行った。不織布の製造条件や評価結果等を以下に説明する。
【0106】
本発明における不織布を以下の条件で製造した。
(1)繊維構成
ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体とポリプロピレンのサイド・バイ・サイド構造で、親水油剤がコーティングされた熱収縮性繊維A(融点145℃)と、高密度ポリエチレンとポリプロピレンの同心芯鞘構造で親水油剤がコーティングされた熱融着性繊維B(融点129℃)と、高密度ポリエチレンとポリプロピレンの偏芯芯鞘構造で親水油剤がコーティングされた熱融着性繊維C(融点129℃)と、低密度ポリエチレンとポリプロピレンの同心芯鞘構造で親水油剤がコーティングされた熱融着性繊維D(融点119℃)を、図11の表1に記載した繊維の平均繊度、平均繊維長、繊維の混合比、収縮前の設定目付においてカード処理し、所定の加熱処理を行い本発明における不織布を製造した。
【0107】
(2)製造方法
上述した第1製造方法により、不織布を製造した。条件は以下の通りである。
(a)先に示した繊維構成を速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成する。そして、繊維ウェブを幅が450mmとなるようにカットする。
(b)繊維ウェブをMD300mm×CD300mmにカットした状態で下方側支持体である20メッシュの下方側通気性ネット上に載せ、速度3m/分で溶融加熱工程における加熱装置に搬送する。
(c)下方側通気性ネットで搬送した状態で図11に示す表1に記載した温度、熱風風量(10Hz=0.5から0.7m/sec(60Hz=3.5から4.0m/secに相当))で設定した長さ1.5mの融着加熱工程における加熱装置内を約30秒で加熱しながら搬送させる。
(d)収縮加熱工程における加熱装置内には、搬送用の下方通気性ネットと、飛散防止用の上方通気性ネットが配置される。融着加熱工程における加熱装置から搬出された繊維ウェブは、図11に示す表1に記載される温度、熱風風量(10Hz=0.5から0.7m/sec(60Hz=3.5から4.0m/secに相当))で設定した長さ1.5mの収縮加熱工程における加熱装置内を加熱処理しながら搬送させる。収縮加熱工程における加熱装置内では、熱風は繊維ウェブにおける上方と下方から交互に吹きつけることで、繊維ウェブが下方側ネットから上方側ネットの間に空中を渡って搬送された。
(e)上記製造方法及び製造条件により、各種不織布を得た。
【0108】
(3)高密度領域と低密度領域の混在比率(分散度)の測定
図11に示す表1に記載の通り、各種不織布における分散指数を測定した。この分散指数の測定結果は、図11の表1に示す通りである。実施例A−1からF−1における分散指数は、310から705の範囲内であった。上述した分散指数における範囲である250から790の範囲内であった。ここで、比較例Aは熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が略均一な超高密度シートである。この比較例Aにおける分散指数は248であった。比較例Bは熱融着性繊維のみで構成され平面方向において粗密が均一な超低密度シートである。この比較例Bにおける分散指数は167であった。比較例Cは、熱収縮性繊維のみで形成される高密度シートである。この比較例Cにおける分散指数は384であった。
【0109】
(4)吸収性の評価
上記製造された実施例D−2、E−1、F−1、比較例A(熱融着性繊維が100%の高密度シート)、比較例B(熱融着性繊維が100%の低密度シート)、比較例C(熱収縮性繊維が100%の高密度シート)を吸収性物品におけるセカンドシートに用いた場合における吸収性の評価を行った。
【0110】
上述の通り、吸収性の評価サンプルを作成し吸収性の評価を行った。吸収評価用サンプルは、以下の同一の表面シートを使用した。
<表面シートの繊維構成>
高密度ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mmの繊維において、親水油剤がコーティングされた繊維Aと、撥水油剤がコーティングされた繊維Bとの混綿である。繊維Aと繊維Bとの混合比は70:30である。繊維目付けは40g/mである。
<表面シートの製造方法>
速度20m/分のカード機によって開繊し繊維ウェブを作成し、幅が450mmとなるように繊維ウェブをカットする。繊維ウェブをスリーブの上に載せ、速度3m/分の20メッシュの通気性ネット上に搬送する。その後、前記通気性ネットで搬送した状態で温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内を約30秒で搬送させる。
<評価用サンプル調製>
吸収評価用サンプルの試作内容は、上記表面シート、実施例D−2、E−1、F−1、比較例A、比較例B、比較例Cそれぞれの不織布を、長さ100mm×幅70mmにカットする。そして、厚みが5mmになるように調整した500g/mのフラッフパルプを16g/mのティッシュで挟んだ吸収コアに重ね、最も幅が狭い部分が38mmになるように設定したヒンジエンボスにて吸収コアと表面シートとセカンドシートである上記各不織布を接合して、評価用サンプルを調製した。
【0111】
<測定方法及び測定結果>
上記調製した各サンプルについて、上述の評価方法の説明に記載の手順に沿って吸収性の評価を行った。測定結果は、図12の表2に記載の通りである。各サンプルごとの評価結果をまとめると以下の通りである。
【0112】
実施例D−2を使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は3.3s、乾燥速度は5sで乾燥し、表面拡散は14/38mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は5.6s、全乾速度は10sで乾燥し、表面拡散は16×43mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は0.2%、106gf/cm加重時のリウェット率は0.4%であった。
【0113】
実施例E−1を使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は3.8s、乾燥速度は9sで乾燥し、表面拡散は12×36mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は6.8s、全乾速度は11sで乾燥し、表面拡散は14×44mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は0.2%、106gf/cm加重時のリウェット率は0.4%であった。
【0114】
実施例F−1を使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は4.7s、乾燥速度は6sで乾燥し、表面拡散は14×41mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は6.2s、全乾速度は14sで乾燥し、表面拡散は16×44mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は0.9%、106gf/cm加重時のリウェット率は1.0%であった。
【0115】
比較例Aを使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は5.1s、乾燥速度は60sでも乾燥せず、表面拡散は14×44mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は7.4s、全乾速度は60sでも乾燥せず、表面拡散は17×47mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は13%、106gf/cm加重時のリウェット率は19%であった。
【0116】
比較例Bを使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は3.8s、乾燥速度は60sでも乾燥せず、表面拡散は14×32mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は5.8s、全乾速度は60sでも乾燥せず、表面拡散は18×42mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は10%、106gf/cm加重時のリウェット率は15%であった。
【0117】
比較例Cを使用したサンプルの、3ml滴下時の浸透速度は4.3s、乾燥速度は17sで乾燥し、表面拡散は11×40mmであった。更に4ml滴下時の浸透速度は7.4s、全乾速度は8sで乾燥し、表面拡散は16×48mmであった。51gf/cm加重時のリウェット率は2.7%、106gf/cm加重時のリウェット率は4.8%であった。
【0118】
図12の表2に示すように、実施例D―2、E―1、F―1における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、B、Cにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、全般的に浸透時間は短く、全乾燥時間は短く、表面拡散面積も少ない。これにより、実施例の不織布をセカンドシートとして用いた吸収性評価用サンプルは、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないといえる。また、表面の乾燥性に優れているといえ、更には繰りかえし乾燥性を有しているといえる。つまり、本発明における不織布は、液体が透過する際の拡散性が低く、表面シートから吸収体への液体の移行を妨げないといえる。
【0119】
更に、表2に示すように、実施例D―2、E―1、F―1における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルは、比較例A、B、Cにおける不織布をセカンドシートとして使用した吸収性評価用サンプルに比べて、リウェット率が低い。本発明における不織布をセカンドシートとして使用した吸収性物品は、リウェット率が低い吸収性物品とすることができる。また、表面シートからの液体を好適に吸収体側へ移行させているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明における吸収性物品の斜視図である。
【図2】図1の吸収性物品におけるX―X断面図である。
【図3】図2の断面図における不織布を示す図である。
【図4】本発明における不織布の断面図である。
【図5】本発明における不織布の拡大断面図である。
【図6】本発明における不織布の平面図及び斜視図である。
【図7】本発明における不織布の疎密構造を説明する図である。
【図8】本発明における不織布を吸収性物品のセカンドシートとして用いた場合における液体の吸収挙動を説明する図である。
【図9】第1製造方法を説明する図である。
【図10】第2製造方法を説明する図である。
【図11】実施例における不織布の製造条件及び平均吸光度の測定結果を説明する表1である。
【図12】実施例における不織布の吸収性の評価結果を説明する表2である。
【符号の説明】
【0121】
5 不織布
11 高密度領域
12 低密度領域
110 熱収縮性繊維
120 熱融着性繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維と、を含む厚さが略均一な不織布であって、
主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、
主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域と、をそれぞれ複数有し、
前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成され、
前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される不織布。
【請求項2】
前記熱収縮性繊維は、前記熱融着性繊維が溶融可能となる温度よりも高い温度で熱収縮性が発現される請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記高密度領域における前記熱収縮性繊維は、螺合状に捲縮すると共に前記熱融着性繊維を巻き込むように熱収縮してなる請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記複数の低密度領域それぞれは、前記複合の高密度領域それぞれの周囲に形成される請求項1から3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記熱融着性繊維が該熱融着性繊維と接触する繊維に融着してネットワーク構造を形成することで該不織布の収縮が抑制された状態において、前記熱収縮性繊維が熱収縮することで前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域が形成される請求項1から4のいずれかに記載の不織布。
【請求項6】
前記複数の高密度領域と前記複数の低密度領域とにおける分散度合いを示す分散指数は250から790である請求項1から5のいずれかに記載の不織布。
【請求項7】
熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維とを含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域とをそれぞれ複数有し、前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成され、前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される不織布の製造方法であって、
熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維とを含む繊維ウェブを、所定の加熱装置に搬送する搬送工程と、
前記繊維ウェブを所定方向に搬送しながら前記加熱装置により前記熱収縮性繊維の熱収性が発現可能な温度で加熱処理する収縮加熱工程と、を含み、
前記搬送工程における前記繊維ウェブの搬送速度及び/又は前記収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度を調整することで、前記高密度領域及び前記低密度領域の態様を調整する不織布製造方法。
【請求項8】
前記収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度は、前記搬送工程における前記繊維ウェブの搬送速度に対する該収縮加熱工程における前記繊維ウェブの搬送速度の比が、前記収縮加熱工程における加熱温度での前記繊維ウェブの熱収縮比よりも大きくなるよう調整される請求項7に記載の不織布製造方法。
【請求項9】
前記収縮加熱工程より前の工程であり、前記繊維ウェブの厚さを薄くすることで前記熱収縮性繊維の自由度を規制するためであって、前記熱融着性繊維が実質的に溶融せず、かつ、熱収縮性繊維が実質的に熱収縮しない温度で加熱処理する予備加熱工程と、を含む請求項7又は8に記載の不織布製造方法。
【請求項10】
前記収縮加熱工程より前の工程であり、前記熱融着性繊維が溶融可能であり、かつ、前記熱収縮性繊維が実質的に熱収縮しない温度で加熱する融着加熱工程と、を含む請求項7から9のいずれかに記載の不織布製造方法。
【請求項11】
前記融着加熱工程により、前記熱融着性繊維を溶融させて該融着性繊維と接触する繊維に融着させてネットワーク構造を形成し、
前記収縮加熱工程により、前記ネットワーク構造が形成され前記繊維ウェブの収縮が抑制された状態において前記熱収縮性繊維を熱収縮させて、前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域を形成する請求項10に記載の不織布製造方法。
【請求項12】
前記収縮加熱工程において、前記繊維ウェブに加えられる摩擦を少なくすることで、前記繊維ウェブに含まれる前記熱収縮性繊維における収縮の阻害を抑制する請求項7から11のいずれかに記載の不織布製造方法。
【請求項13】
前記収縮加熱工程において、前記繊維ウェブは、通気性の第1支持部材と、前記第1支持部材から所定距離を空けて垂直方向上側に略平行に配置される通気性の第2支持部材との間に配置された状態で搬送され、
前記第1支持部材の垂直方向下側から所定温度の熱風を噴きあてると共に、前記第2支持部材の垂直方向上側から所定温度の熱風を噴きあてることで、前記繊維ウェブにおける全部又は一部を前記第1支持部材及び/又は前記第2支持部材から離間させた状態で該繊維ウェブを加熱処理する請求項12に記載の不織布製造方法。
【請求項14】
前記繊維ウェブを弛ませた状態で加熱処理する請求項13に記載の不織布製造方法。
【請求項15】
少なくとも一部が液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置される液保持性の吸収体と、前記表面シートと前記吸収体との間に配置される1又は複数のセカンドシートと、を備える吸収性物品であって、
前記1又は複数のセカンドシートそれぞれは、熱融着性繊維と、熱収縮性繊維であって少なくとも熱収縮した状態において捲縮性を有する熱収縮性繊維と、を含む厚さが略均一な不織布であって、主に熱収縮した前記熱収縮性繊維からなり該不織布における平均繊維密度よりも高い繊維密度である高密度領域と、主に互いに融着した前記熱融着性繊維からなり前記平均繊維密度よりも低い繊維密度である低密度領域と、をそれぞれ複数有する不織布であり、
前記不織布における前記複数の高密度領域及び前記複数の低密度領域それぞれは、該不織布における前記厚さ方向に垂直な平面方向に分散するように形成されると共に、前記複数の低密度領域における全部又は一部は、前記厚さ方向における一方側から他方側に連通するように形成される吸収性物品。
【請求項16】
前記セカンドシートは、該セカンドシートにおける平均繊維密度が前記表面シートにおける平均繊維密度よりも高く、かつ、前記高密度領域における繊維密度が前記吸収体における平均繊維密度よりも低い請求項15に記載の吸収性物品。
【請求項17】
2つのセカンドシートを備え、該2つのセカンドシートは、前記高密度領域及び前記低密度領域それぞれの含有率が異なる請求項15又は16に記載の吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−144322(P2008−144322A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335153(P2006−335153)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】