説明

不織布の製造方法

【課題】 繊維径や樹脂組成などの異なる2種類以上の繊維径の小さい繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を、小エネルギーで、生産性良く製造することのできる方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の不織布の製造方法は、紡糸液を吐出できる紡糸ノズル2本以上と、前記いずれのノズルよりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガスノズル1本とを有し、各紡糸ノズルの中心軸とガスノズルの中心軸とが平行であるように、当接した紡糸装置を用い、前記紡糸ノズルから2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化し、捕集体上に集積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布を構成する繊維の繊維径が小さいと、分離性能、液体保持性能、払拭性能、隠蔽性能、絶縁性能、或いは柔軟性など、様々な性能に優れているため、不織布を構成する繊維の繊維径は小さいのが好ましい。このような繊維径の小さい繊維からなる不織布の製造方法として、紡糸液をノズルから吐出するとともに、吐出した紡糸液に電界を作用させて紡糸液を延伸し、細径化した後に捕集体上に直接捕集して不織布とする、いわゆる静電紡糸法が知られている。この静電紡糸法によれば、平均繊維径1μm以下の繊維からなる不織布を製造することができる。この静電紡糸法は紡糸液に電界を作用させるために、ノズル又は捕集体に高電圧を印加する必要があるため、装置が複雑になるばかりでなく、エネルギー的に無駄であった。
【0003】
このような点を改良できる紡糸装置として、図2に示すような「圧縮ガス流を用いることによってナノファイバの不織マットを形成する装置は、平行な間隔を設けた第1(12)、第2(22)及び第3(32)部材を含み、各々は、供給端部(14,24,34)及び対向出口端部(16,26,36)を有する。第2部材(22)は第1部材(12)に隣接する。第2部材(22)の出口端部(26)は、第1部材(12)の出口端部(16)を越えて延びる。第1(12)及び第2(22)部材は、第1供給スリット(18)を画成する。第3部材(32)は、第1部材(12)の第2部材(22)から反対側で第1部材(12)に隣接して位置する。第1(12)及び第3(32)部材は第1ガススリット(38)を画成し、第1(12)、第2(22)及び第3(32)部材の出口端部(16,26,36)はガスジェット空間(20)を画成する。圧縮ガス流を用いることによってナノファイバの不織マットを形成する方法も含まれる。」ことが提案されている(特許文献1)。この装置は高電圧を印加する必要がないため、前述の問題点を解決できるものである。しかしながら、この装置においては平板状の第1、第2及び第3部材を平行に設けていることから、シート状の紡糸液に対して圧縮ガスを作用させることになり、繊維形状になりにくく、液滴を多く含むものとなり、繊維形状にできたとしても太い繊維しか形成できないものであると考えられた。
【0004】
同様の紡糸装置として、「センターチューブ、センターチューブに同心状かつ離間して位置する第1供給チューブ、第1供給チューブに同心状かつ離間して位置する中間ガスチューブ、中間ガスチューブに同心状かつ離間して位置する第2供給チューブを備え、センターチューブと第1供給チューブは第1環状コラムを形成し、中間ガスチューブと第1供給チューブは第2環状コラムを形成し、中間ガスチューブと第2供給チューブは第3環状コラムを形成し、第1ガスジェット空間がセンターチューブと第1供給チューブの下流側端部に形成され、第2ガスジェット空間が中間ガスチューブと第2供給チューブの下流側端部に形成されるように位置している、圧縮ガスを用いるナノファイバー製造装置。」が提案されている(特許文献2)。この製造装置も高電圧を印加する必要がないため、前述の問題点を解決できるものである。しかしながら、この装置においても、環状に吐出された紡糸液に対してガスジェットを作用させるため、紡糸が不安定で繊維形状になりにくく、液滴を多く含むものであった。
【0005】
【特許文献1】特表2005−515316号公報(要約、表1など)
【特許文献2】米国特許第6520425号公報(要約、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願出願人は、「紡糸液を吐出できる液吐出部と、前記液吐出部よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出部とを有する、次の条件を満足する紡糸装置。(1)液吐出部を端部とする液用柱状中空部(Hl)を有する(2)ガス吐出部を端部とするガス用柱状中空部(Hg)を有する(3)液用柱状中空部(Hl)を延長した液仮想柱状部(Hvl)とガス用柱状中空部(Hg)を延長したガス仮想柱状部(Hvg)とは近接している(4)液用柱状中空部(Hl)の吐出方向中心軸とガス用柱状中空部(Hg)の吐出方向中心軸とが平行である(5)ガス用柱状中空部(Hg)の中心軸に対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部(Hg)の切断面の外周と液用柱状中空部(Hl)の切断面の外周との距離が最も短い直線を、1本だけ引くことができる」を考えた。この紡糸装置によると、液吐出部から吐出された紡糸液とガス吐出部から吐出されたガスとは近接しており、平行であり、しかも紡糸液にはガスおよび随伴気流による剪断力が1本の直線状に作用するため、細径化した繊維を安定して紡糸できる。また、紡糸液に高電圧を印加する必要がないため、簡素かつエネルギー的に有利な装置である。この紡糸装置を用いて紡糸した繊維を捕集体上に集積させ、不織布を製造する場合、高速で、ある程度の量のガスを作用させないと繊維化しにくいため、高速で、ある程度の量のガスを作用させる必要があるが、このようなガスを作用させると、捕集体上に集積した繊維が飛散しやすくなるという傾向があった。
【0007】
そのため、繊維径の異なる繊維が混在する不織布を製造するために、或いは樹脂組成の異なる繊維が混在する不織布を製造するために、前記紡糸装置を増やすと、それに伴ってガス吐出量が増えるため、繊維の飛散量が増加し、種類の異なる繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造するのが困難であった。また、繊維の飛散量が増加すると、飛散した繊維が紡糸装置の液吐出部に付着して繊維化を妨げ、生産性が悪くなるという現象も生じた。なお、繊維の飛散量を抑制するためには繊維を吸引する吸引装置を大型化すれば良いが、エネルギー的に不利であり、また、吸引力が強いと厚さの薄い不織布しか製造できないという問題が生じた。
【0008】
本発明は上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、繊維径や樹脂組成などの異なる2種類以上の繊維径の小さい繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を、小エネルギーで、生産性良く製造することのできる方法を提供することを目的とする。また、厚さの薄い不織布から厚さの厚い不織布まで製造できる方法にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1にかかる発明は、「紡糸液を吐出できる液吐出部を2箇所以上と、前記いずれの液吐出部よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出部1箇所とを有する、次の条件を満足する紡糸装置を用い、前記液吐出部から2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化し、捕集体が上に集積することを特徴とする、不織布の製造方法。(1)各液吐出部を端部とする液用柱状中空部をそれぞれ有する(2)ガス吐出部を端部とするガス用柱状中空部を有する(3)液用柱状中空部を延長した各液仮想柱状部とガス用柱状中空部を延長したガス仮想柱状部とはそれぞれ近接している(4)液用柱状中空部の各吐出方向中心軸とガス用柱状中空部の吐出方向中心軸とはそれぞれ平行である(5)ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部の切断面の外周と液用柱状中空部の切断面の外周との距離が最も短い直線を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができる」である。
【0010】
本発明の請求項2にかかる発明は、「濃度の異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。」である。
【0011】
本発明の請求項3にかかる発明は、「ポリマーの異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。」である。
【0012】
本発明の請求項4にかかる発明は、「溶媒の異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1にかかる発明は、各液吐出部から吐出された紡糸液とガス吐出部から吐出されたガスとはそれぞれ近接しており、それぞれ平行であり、しかも各紡糸液にはガスおよび随伴気流による剪断力がそれぞれ1本の直線状に作用するため、細径化した繊維を紡糸できるものである。また、2箇所以上の液吐出部から吐出された紡糸液を、1箇所のガス吐出部が吐出されたガスで繊維化させることができ、ガス量を減らすことができるため、繊維の飛散を抑制して地合いの優れる不織布を生産性良く製造できる。なお、ガス量を減らすことができ、吸引装置を大型化する必要がなく、しかも各紡糸液に高電圧を印加する必要がないため、エネルギー的に有利である。また、ガス量を減らすことができ、吸引力を強くする必要がないため、厚さの薄い不織布から厚い不織布まで製造することができる。更には、液吐出部から2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化しているため、繊維径、樹脂組成等の異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【0014】
本発明の請求項2にかかる発明は、濃度の異なる紡糸液を吐出することによって、繊維径の異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【0015】
本発明の請求項3にかかる発明は、ポリマーの異なる紡糸液を吐出することによって、樹脂組成の異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【0016】
本発明の請求項4にかかる発明は、溶媒の異なる紡糸液を吐出することによって、繊維径の異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の不織布の製造方法において使用する紡糸装置について、液吐出部2箇所とガス吐出部1箇所とを有する紡糸装置の先端部を拡大した斜視図である図1及び図1におけるC平面切断図である図3(a)をもとに説明する。
【0018】
本発明で使用する紡糸装置は、紡糸液を吐出できる第1液吐出部Elを一方の端部に有する第1液吐出ノズルNlと、紡糸液を吐出できる第2液吐出部Elを一方の端部に有する第2液吐出ノズルNlとが、ガスを吐出できるガス吐出部Egを一方の端部に有するガス吐出ノズルNgを挟むように外壁面が当接し、ガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egが第1液吐出部El、第2液吐出部Elのいずれよりも上流側となる位置にある。なお、第1液吐出ノズルNlは第1液吐出部Elを端部とする第1液用柱状中空部Hlを有し、第2液吐出ノズルNlは第2液吐出部Elを端部とする第2液用柱状中空部Hlを有し、ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egを端部とするガス用柱状中空部Hgを有している。また、前記第1液用柱状中空部Hlを延長した第1液仮想柱状部Hvlと前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、第1液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にあり、前記第2液用柱状中空部Hlを延長した第2液仮想柱状部Hvlと前記ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgとは、第2液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当する距離だけ離れて近接した状態にある。しかも前記第1液用柱状中空部Hlの第1吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgの吐出方向中心軸Agとが平行である関係にあり、前記第2液用柱状中空部Hlの第2吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgの吐出方向中心軸Agとが平行である関係にある。更には、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外形が円形であり、第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hlの切断面の外形がいずれも円形であり、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1と、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第2液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L2とを、1本だけ引くことができる状態にある(図3(a)参照)。
【0019】
そのため、図1のような紡糸装置の第1液吐出ノズルNl、第2液吐出ノズルNlにそれぞれ紡糸液を供給し、ガス吐出ノズルNgにガスを供給すると、紡糸液は第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hlをそれぞれ通り、第1液吐出部El、第2液吐出部Elから第1液用柱状中空部Hlの第1軸方向、第2液用柱状中空部Hlの第2軸方向にそれぞれ吐出されると同時に、ガスはガス用柱状中空部Hgを通りガス吐出部Egからガス用柱状中空部Hgの軸方向に吐出される。この吐出されたガスと吐出された各紡糸液とはいずれも近接した状態にあり、各液吐出部の直近においては、吐出ガスの中心軸Agと各吐出紡糸液の中心軸Al、Alとがいずれも平行関係にあり、しかもC平面上、吐出されたガスと吐出された各紡糸液とは、いずれの組み合わせにおいても最も近い点が1箇所であることから、つまり、いずれの紡糸液も1本の直線状にガスおよび随伴気流による剪断作用を受け、細径化しながら第1液用柱状中空部Hlの第1軸方向、第2液用柱状中空部Hlの第2軸方向にそれぞれ飛翔し、同時に紡糸液の溶媒が揮発して繊維化する。本発明においては、第1液吐出ノズルNlと第2液吐出ノズルNlからの吐出条件が異なる。このように、図1の紡糸装置を用いて不織布を製造する場合、1つのガス流によって、2つの紡糸液を紡糸して繊維化することができ、ガス量を減らすことができるため、繊維の飛散を抑制して地合いの優れる不織布を生産性良く製造できる。ガス量を減らすことができ、吸引装置を大型化する必要がなく、しかも各紡糸液に高電圧を印加する必要がないため、エネルギー的に有利である。また、吸引力を強くする必要がないため、厚さの薄い不織布から厚い不織布まで製造することができる。更には、第1液吐出ノズルNlと第2液吐出ノズルNlからの吐出条件が異なり、しかもこれら吐出された紡糸液に作用するガスは同じであるため、異なった種類の繊維を紡糸することができ、結果として異なった種類の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【0020】
第1液吐出ノズルNl、第2液吐出ノズルNlは紡糸液を吐出できるものであれば良く、第1液吐出部El、第2液吐出部Elの外形は特に限定するものではなく、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に作用を受け、液滴を生じにくいように、円形であるのが好ましい。つまり、第1液吐出部El、第2液吐出部Elの外形が円形であると、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と液用柱状中空部Hl、Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1、L2を、いずれの組み合わせにおいても1本だけ引くことができる状態となりやすいため、吐出された紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。なお、第1液吐出部Elと第2液吐出部Elの外形は同じ外形であっても良いし、異なる外形であっても良いが、いずれも円形であるのが好ましい。なお、第1液吐出部Elと第2液吐出部Elの外形が異なると、ガス及び随伴気流の剪断作用が第1液吐出部Elから吐出された紡糸液と第2液吐出部Elから吐出された紡糸液とでは異なるため、異なる種類の繊維を紡糸することができる。
【0021】
第1液吐出部El、第2液吐出部Elの形状が多角形である場合には、多角形の1つの角をガス吐出ノズルNg側となるように配置することにより、ガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくするのが好ましい。つまり、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線(図3(a)〜(e)におけるL1、L2)を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができるように第1液吐出ノズルNl、第2液吐出ノズルNlを配置すると、紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、安定して紡糸でき、液滴を生じにくくなる。したがって、ガス吐出部Egの形状が円形であれば、多角形状の第1液吐出部El、第2液吐出部Elの辺をガス吐出ノズルNg側となるように配置することも可能である(図3(e)参照)。
【0022】
また、第1液吐出部El及び第2液吐出部Elの大きさも特に限定するものではないが、いずれも0.01〜20mmであるのが好ましく、0.01〜2mmであるのがより好ましい。0.01mmよりも小さいと、粘度の高い紡糸液を吐出するのが困難になる傾向があり、20mmを超えると、ガス及び随伴気流の作用を1本の直線状にするのが難しくなり、安定して紡糸できなくなる傾向があるためである。なお、第1液吐出部Elと第2液吐出部Elの大きさが異なる場合も、ガス及び随伴気流の剪断作用が第1液吐出部Elから吐出された紡糸液と第2液吐出部Elから吐出された紡糸液とでは異なるため、異なる種類の繊維を紡糸することができる。
【0023】
なお、第1液吐出ノズルNl及び第2液吐出ノズルNlは金属製であっても樹脂製であってもよく、その素材は特に限定するものではない。また、金属製又は樹脂製のチューブを用いることもできる。更に、図1においては、円柱状の第1液吐出ノズルNl及び第2液吐出ノズルNlを図示しているが、先端が傾斜を持って切断された鋭角ノズルを使用することもできる。この鋭角ノズルの場合、紡糸液の粘度が高い場合に有効である。このような鋭角ノズルを使用する場合、尖った側をガス吐出ノズル側とすると、ガス及び随伴気流の剪断作用を受けやすく、安定して繊維化できる。
【0024】
なお、図1においては、第1液吐出ノズルNlと第2液吐出ノズルNlの2本について図示しているが、液吐出ノズルは2本である必要はなく、3本以上であっても良い(図4参照)。この液吐出ノズルの本数が多ければ多いほど、ガスを効率的に使用し、生産性良く不織布を製造することができる。
【0025】
ガス吐出ノズルNgはガスを吐出できるものであれば良く、ガス吐出部Egの形状は特に限定するものではなく、例えば、円形、長円形、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、六角形)であることができるが、ガス吐出部に対して各液吐出部をどのように配置しても、各液吐出部から吐出された各紡糸液に、ガス吐出部から吐出されたガスおよび随伴気流による剪断力をそれぞれ1本の直線状に作用させ、細径化した繊維を紡糸しやすいように、円形であるのが好ましい。なお、ガス吐出部Egの形状が多角形である場合には、多角形の1つの角を第1液吐出ノズルNl側となり、他の角が第2液吐出ノズルNl側となるように配置することにより、ガス及び随伴気流の剪断作用が働きやすくなる。つまり、前述の通り、ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1、L2を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができる状態となるように第1液吐出ノズルNl、第2液吐出ノズルNlを配置する(図3(c)〜(d)参照)と、紡糸液はガス及び随伴気流の剪断作用を1本の直線状に受け、液滴を生じにくくなる。
【0026】
また、ガス吐出部Egの大きさも特に限定するものではないが、0.01〜79mmであるのが好ましく、0.015〜20mmであるのがより好ましい。0.01mmよりも小さいと、吐出された各紡糸液全体に剪断作用を働かせることが困難になり、安定して繊維化することが困難になる傾向があるためで、79mmを超えると剪断作用を働かせるために十分な風速が必要で、多量のガスが必要となって不経済であるためである。
【0027】
なお、ガス吐出ノズルNgは金属製であっても樹脂製であっても良く、その素材は特に限定しない。また、ガス吐出ノズルに替えて金属製や樹脂製のチューブを用いることもできる。
【0028】
ガス吐出ノズルNgはガス吐出部Egが第1液吐出部El及び第2液吐出部Elよりも上流側(紡糸液の供給側)となる位置に配置されているため、第1液吐出部El及び第2液吐出部Elの周辺へ紡糸液が巻き上がるのを防止できる。そのため、液吐出部を汚すことなく、長時間の安定した紡糸が可能である。なお、ガス吐出部Egと第1液吐出部El又は第2液吐出部Elとの距離は特に限定するものではないが、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。10mmを超えると第1液吐出部El又は第2液吐出部Elにおけるガス及び随伴気流の剪断力が不十分となり、繊維化しにくくなる傾向があるためである。ガス吐出部Egと第1液吐出部El及び第2液吐出部Elとの距離の下限は特に限定するものではなく、ガス吐出部Egと第1液吐出部El及び第2液吐出部Elとが一致していなければ良い。
【0029】
なお、ガス吐出部Egと第1液吐出部El又は第2液吐出部Elとの距離は同じであっても異なっていても良いが、同じであると、各紡糸液に対して同程度の剪断力を作用させることができ、安定して紡糸できるため好適である。なお、ガス吐出部Egと第1液吐出部Elとの距離とガス吐出部Egと第2液吐出部Elとの距離が異なると、ガス及び随伴気流の剪断作用が第1液吐出部Elから吐出された紡糸液と第2液吐出部Elから吐出された紡糸液とでは異なるため、異なる種類の繊維を紡糸することができる。
【0030】
第1液用柱状中空部Hl及び第2液用柱状中空部Hlは紡糸液の通過経路であり、紡糸液の吐出時における形状を形作り、ガス用柱状中空部Hgはガスの通過経路であり、ガスの吐出時における形状を形作る。本発明においては、第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hl、ガス用柱状中空部Hgのいずれも柱状の紡糸液又はガスを形成できるため、ガス及び随伴気流の剪断作用を各紡糸液に十分に作用させることができ、安定して繊維化することができる。
【0031】
なお、第1液用柱状中空部Hlを延長した第1液仮想柱状部Hvlは第1液吐出部Elから吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、第2液用柱状中空部Hlを延長した第2液仮想柱状部Hvlは第2液吐出部Elから吐出された紡糸液の吐出直後の飛翔経路であり、ガス用柱状中空部Hgを延長したガス仮想柱状部Hvgはガス吐出部Egから吐出されたガスの吐出直後の噴出経路である。この第1液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgとの距離は第1液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当し、第2液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgとの距離は第2液吐出ノズルNlの壁厚とガス吐出ノズルNgの壁厚の和に相当しているが、これら距離は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。2mmを超えるとガス及び随伴気流の剪断力が作用しにくく、繊維化しにくくなる傾向があるためである。
【0032】
この第1液仮想柱状部Hvl、第2液仮想柱状部Hvl、ガス仮想柱状部Hvgのいずれも内部充実した柱状である。例えば、円柱状の第1又は第2液仮想部を中空円柱状のガス仮想部で覆った状態、又は円柱状のガス仮想部を中空円柱状の第1又は第2液仮想部で覆った状態であると、ガス仮想柱状部Hvgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、第1又は第2液仮想部の切断面の外周とガス仮想部の切断面の内周、又はガス仮想部の切断面の外周と第1又は第2液仮想部の切断面の内周との距離が最も短い直線を無数に引くことができる結果、紡糸液の様々な点でガス及び随伴気流の剪断力が作用し、繊維化が不十分となり、液滴が多くなるためである。この「仮想柱状部」はノズルの内壁面を延長して形成される部分である。
【0033】
第1液用柱状中空部Hlの第1吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgの吐出方向中心軸Agとが平行であり、また、第2液用柱状中空部Hlの第2吐出方向中心軸Alとガス用柱状中空部Hgの吐出方向中心軸Agとが平行であるため、吐出された紡糸液に対してガス及び随伴気流が1本の直線状に作用し、安定して繊維を形成することができる。例えば、円柱状の第1又は第2液用中空部を中空円柱状のガス中空部で覆った状態、又は円柱状のガス中空部を中空円柱状の第1又は第2液用中空部で覆った状態であるように、これら中心軸が一致すると、ガス及び随伴気流の剪断力を紡糸液に対して1本の直線状に作用させることができず、繊維化が不安定となり、液滴が多くなる。また、これら中心軸が交差又はねじれの位置にあると、ガス及び随伴気流による剪断力が作用しないか、作用したとしても不均一であることから、安定して繊維を形成することができない。この「平行」であるとは、第1又は第2液用柱状中空部の吐出方向中心軸とガス用柱状中空部の吐出方向中心軸とが同一平面上に位置することができ、しかも平行であることを意味する。また、「吐出方向中心軸」とは吐出部の中心と仮想柱状部の横断面における中心とを結んでできる直線である。
【0034】
本発明で使用する紡糸装置はガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1を1本だけ引くことができ、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第2液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L2を1本だけ引くことができる。このようなガス用柱状中空部Hgから吐出されたガス及び随伴気流は、第1液用柱状中空部Hlから吐出された紡糸液と、第2液用柱状中空部Hlから吐出された紡糸液のいずれに対しても1本の直線状に作用し、剪断作用を発揮することができるため、液滴を生じることなく、安定して紡糸することができる。例えば、前記直線を2本引くことができる場合には、一方の点で作用する場合と他方の点で作用する場合とが交互になるなど、安定して剪断作用を発揮することができない結果、液滴を発生し、安定して紡糸することができない。
【0035】
なお、図1には図示していないが、第1液吐出ノズルNl及び第2液吐出ノズルNlは紡糸液貯蔵装置(例えば、シリンジ、ステンレスタンク、プラスチックタンク、或は塩化ビニル樹脂製、ポリエチレン樹脂製などの樹脂製バッグなど)に接続されており、ガス吐出ノズルNgはガス供給装置(例えば、圧縮機、ガスボンベ、ブロアなど)に接続されている。
【0036】
図1においては、1組の紡糸装置しか描いていないが、2組以上の紡糸装置を配置すれば、生産性良く、不織布を製造することができる。
【0037】
また、図1においては、第1液吐出ノズルNl、第2液吐出ノズルNl、及びガス吐出ノズルNgとを固定した状態にあるが、前述のような関係を満たす限り、図1の態様に限定されない。例えば、段差を有する基材に対して第1液用柱状中空部Hl、第2液用柱状中空部Hl、ガス用柱状中空部Hgを穿孔したものであっても良い。また、第1液吐出ノズルNlの第1液吐出部El、第2液吐出ノズルNlの第2液吐出部El、及び/又はガス吐出ノズルNgのガス吐出部Egの位置を自由に調整できる機構を備えていることもできる。
【0038】
本発明においては、このような紡糸装置を用い、液吐出部から2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化し、捕集体上に集積して不織布を製造する。この「2種以上の吐出条件」とは全く同一ではないことを意味し、例えば、液吐出部の外形が異なる、液吐出部の大きさが異なる、液吐出部のガス吐出部からの距離が異なる、紡糸液の吐出量が異なる、紡糸液の濃度が異なる、紡糸液構成ポリマーが異なる、紡糸液の粘度が異なる、紡糸液の溶媒が異なる、紡糸液構成ポリマーが2種類以上である場合にはその配合比率が異なる、紡糸液構成溶媒が2種類以上である場合にはその配合比率が異なる、紡糸液の温度が異なる、紡糸液に添加されている添加剤の種類及び/又は量が異なる、などのこれら1つ、又は2つ以上が異なる。これらの中でも紡糸液を構成するポリマーが同じであっても濃度が異なる、又は紡糸液を構成するポリマーが同じであっても溶媒が異なると、繊維径の異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができ、紡糸液を構成するポリマーが異なると、繊維構成ポリマーの異なる2種類以上の繊維が均一に混在した地合いの優れる不織布を製造することができる。
【0039】
なお、捕集体は繊維を直接集積できるものであれば何でも良く、例えば、不織布、織物、編物、ネット、ドラム、ベルト或いは平板を捕集体として使用できる。なお、本発明においてはガスを吐出しているため、ガスを吸引して捕集体上に繊維を集積しやすく、また集積した繊維が乱れないように、通気性の捕集体を使用し、捕集体の紡糸装置側とは反対面側に吸引装置を設置するのが好ましい。
【0040】
このような捕集体は紡糸装置のガス吐出部Egと対向して位置していると、確実に繊維を捕集し、不織布を製造することができるため好適である。特には、ガスの吐出方向中心軸Agと直角であるように捕集体の捕集面が位置するように捕集体を配置するのが好ましい。なお、ガスの吐出方向中心軸Agと平行であるように捕集体の捕集面が位置するように捕集体を配置したとしても、繊維の飛翔力が消失する重力方向下方、又は飛翔方向を変更させるガス流を作用させる場合には、捕集体に繊維を集積することができる。したがって、紡糸装置のガスの吐出方向中心軸Agは重力と交差する方向に向けることもできる。
【0041】
なお、捕集体を紡糸装置のガス吐出部Egと対向して配置する場合、捕集体と紡糸装置の第1液吐出部El及び第2液吐出部Elとの距離は、紡糸液の吐出量やガス流速によって変化するため特に限定するものではないが、30〜1000mmであるのが好ましい。30mm未満であると、紡糸液の溶媒が十分に蒸発しない状態で集積され、集積された後に繊維形状を保つことができず、不織布が得られない場合があるためである。また、1000mmを超えると、ガスの流れが乱れ、繊維が切れて飛散しやすくなる傾向があるためである。
【0042】
本発明の方法により不織布を製造する場合、紡糸装置と捕集体を収納できる紡糸容器内で実施するのが好ましい。このような紡糸容器内で実施することによって、紡糸液から揮発した溶媒の飛散を防ぎ、場合によっては溶媒を回収して再利用することができる。また、紡糸容器内で不織布を製造する場合には、紡糸容器内のガスを排出しながら製造するのが好ましい。紡糸を行っていると、紡糸容器内における溶媒蒸気濃度が次第に高くなり、溶媒の蒸発が抑制されるため、繊維径のバラツキが発生しやすく、また繊維化されにくくなる傾向があるが、紡糸容器内のガスを排出し、紡糸容器内の溶媒濃度を一定に保つことによって、平均繊維径の変動を小さくできるためである。また、温湿度を調整したガスを紡糸容器に供給しながら製造すると、溶媒蒸気濃度を安定させ、繊維径のバラツキを小さくすることができる。
【0043】
なお、不織布を製造する場合、紡糸装置のガス吐出部Egから流速100m/sec.以上のガスを吐出するのが好ましい。ガス吐出部Egから流速100m/sec.以上のガスを吐出することによって、液滴の発生を抑え、細径化した繊維を含む不織布を効率的に製造できるためである。好ましくは流速150m/sec.以上のガスを吐出し、より好ましくは流速200m/sec.以上のガスを吐出する。なお、ガス流速の上限は捕集体上に集積した繊維を乱すことのない流速であれば良く、特に限定するものではない。このような流速のガスを吐出するには、例えば、圧縮機からガス用柱状中空部Hgにガスを供給すれば良い。なお、ガスの種類は特に限定するものではないが、空気、窒素ガス、アルゴンガスなどを使用することができ、これらの中でも空気であると経済的である。また、これらのガスに、紡糸液に対して親和性のある溶媒の蒸気や親和性のない溶媒の蒸気を含ませることもできる。このような溶媒の蒸気量を調整することによって、各紡糸液からの溶媒蒸発速度や各紡糸液の固化速度を制御でき、紡糸の安定性を高めたり、繊維径を調整することができる。
【0044】
本発明の製造方法に使用できる各紡糸液は所望ポリマーを溶媒に溶解させたものであれば良く、特に限定するものではない。例えば、ポリエチレングリコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリアクリロニトリル、共重合ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、或いはポリプロピレンなど1種又は2種類以上のポリマーを、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどの1種又は2種以上からなる溶媒に溶解させたものを使用することができる。
【0045】
なお、紡糸時の各紡糸液の粘度は10〜10000mPa・sの範囲であるのが好ましく、20〜8000mPa・sの範囲であるのがより好ましい。粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低すぎて曳糸性が悪く繊維になりにくい傾向があり、粘度が10000mPa・sを超えると、紡糸液が延伸されにくく、繊維となりにくい傾向がある。したがって、常温で粘度が10000mPa・sを超える場合であっても、紡糸液自体、第1液用柱状中空部Hl、及び/又は第2液用柱状中空部Hlを加熱することにより前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。逆に、常温で粘度が10mPa・s未満であっても、紡糸液自体、第1液用柱状中空部Hl、及び/又は第2液用柱状中空部Hlを冷却することにより前記粘度範囲内に収まるのであれば、使用することができる。本発明における「粘度」は、粘度測定装置を用い、紡糸時と同じ温度で測定した、シェアレート100s−1の時の値をいう。
【0046】
なお、第1液吐出部El及び第2液吐出部Elからの各紡糸液の吐出量は各紡糸液の粘度やガス流速によって変化するため特に限定するものではないが、0.1〜100cm/時間であるのが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
(紡糸液の調製)
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)を、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度8mass%となるように溶解させた紡糸液A(粘度(温度:23℃):500mPa・s)を用意した。
【0049】
また、ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)を、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度11mass%となるように溶解させた紡糸液B(粘度(温度:23℃):1600mPa・s)を用意した。
【0050】
(不織布製造装置の準備)
図1のような次の構成からなる製造装置を用意した。
(1) 紡糸液貯蔵部:シリンジ
(2) 空気供給装置:圧縮機
(3) 第1液吐出ノズルNl:金属製
(3)−1 第1液吐出部El
0.33mm径(断面積:0.086mm)の円形
(3)−2 第1液用柱状中空部Hl:0.33mm径の円柱状
(3)−3 ノズル外径:0.64mm
(4) 第2液吐出ノズルNl:金属製
(4)−1 第2液吐出部El
0.33mm径(断面積:0.086mm)の円形
(4)−2 第2液用柱状中空部Hl:0.33mm径の円柱状
(4)−3 ノズル外径:0.64mm
(5) ガス吐出ノズルNg:金属製
(5)−1 ガス吐出部Eg:
0.33mm径(断面積:0.086mm)の円形
(5)−2 ガス用柱状中空部Hg:0.33mm径の円柱状
(5)−3 ノズル外径:0.64mm
(5)−4 位置:
ガス吐出部Egが第1液吐出部Elと第2液吐出部Elのいずれよりも2mm上流側に、ノズルの外壁面が当接するように配置
(6)−1 第1液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgの距離:
0.31mm
(6)−2 第1液吐出方向中心軸Alとガス吐出方向中心軸Ag:平行
(6)−3 ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第1液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L1の本数:1本
(7)−1 第2液仮想柱状部Hvlとガス仮想柱状部Hvgの距離:
0.31mm
(7)−2 第2液吐出方向中心軸Alとガス吐出方向中心軸Ag:平行
(7)−3 ガス用柱状中空部Hgの中心軸Agに対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部Hgの切断面の外周と第2液用柱状中空部Hlの切断面の外周との距離が最も短い直線L2の本数:1本
(8)−1 捕集体:
ネット(表面をフッ素樹脂でコーティングしたメッシュタイプのコンベアネット)の捕集面を各紡糸液の吐出方向中心軸に対して直角に配置
(8)−2 捕集体の第1液吐出部El及び第2液吐出部Elとの距離:
150mm
(9) 吸引装置:
サクションボックス(サクション口径:50mm×230mm)
(10) 紡糸容器:
容積1mのアクリル容器
(10)−1 気体供給装置:精密空気発生装置((株)アピステ製、1400−HDR)
(10)−2 排気装置:サクションボックス(吸引装置)に繋がったファン
【0051】
(不織布の製造)
次の条件で繊維を捕集体(ネット)上に集積させ、不織布を製造したところ、繊維を飛散させることなく、地合いの優れる不織布を生産性良く製造することができた。なお、不織布は平均繊維径0.2μmの繊維と、平均繊維径0.4μmの繊維とが均一に混在した状態にあった。
(イ) 第1液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Aを3g/時間で吐出
(ロ) 第2液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Bを3g/時間で吐出
(ハ) 空気吐出流速:250m/sec.
(ニ) 空気吐出量:1.3L/min.
(ホ) ネットの移動速度:30cm/min.
(ヘ) サクションボックスの吸引条件:
最大風量18m/min.(0.1kW)
(ト) 気体供給条件:
温度23℃、湿度50%のエアを流量200L/minで供給
(チ) 気体排気条件:201.3L/min.以上
【0052】
(実施例2)
(紡糸液の調製)
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)を、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度8mass%となるように溶解させた紡糸液C(粘度(温度:23℃):500mPa・s)を用意した。
【0053】
また、ポリフッ化ビニリデン系共重合体(アルケマ製)を、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度20mass%となるように溶解させた紡糸液D(粘度(温度:23℃):680mPa・s)を用意した。
【0054】
(不織布製造装置の準備)
実施例1と同じ
【0055】
(不織布の製造)
次の条件で繊維を捕集体(ネット)上に集積させ、不織布を製造したところ、繊維を飛散させることなく、地合いの優れる不織布を生産性良く製造することができた。なお、不織布は平均繊維径0.2μmのアクリル繊維と、平均繊維径0.2μmのポリフッ化ビニリデン系繊維とが均一に混在した状態にあった。
(イ) 第1液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Cを3g/時間で吐出
(ロ) 第2液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Dを3g/時間で吐出
(ハ) 空気吐出流速:250m/sec.
(ニ) 空気吐出量:1.3L/min.
(ホ) ネットの移動速度:30cm/min.
(ヘ) サクションボックスの吸引条件:
最大風量18m/min.(0.1kW)
(ト) 気体供給条件:
温度23℃、湿度50%のエアを流量200L/minで供給
(チ) 気体排気条件:201.3L/min.以上
【0056】
(実施例3)
(紡糸液の調製)
ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)を、N,N−ジメチルホルムアミドに濃度8mass%となるように溶解させた紡糸液E(粘度(温度:23℃):500mPa・sを用意した。
【0057】
また、ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製)を、ジメチルスルホキシドに濃度8mass%となるように溶解させた紡糸液F(粘度(温度:23℃):1800mPa・s)を用意した。
【0058】
(不織布製造装置の準備)
実施例1と同じ
【0059】
(不織布の製造)
次の条件で繊維を捕集体(ネット)上に集積させ、不織布を製造したところ、繊維を飛散させることなく、地合いの優れる不織布を生産性良く製造することができた。なお、不織布は平均繊維径0.2μmのアクリル繊維と、平均繊維径0.4μmのアクリル繊維とが均一に混在した状態にあった。
(イ) 第1液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Eを3g/時間で吐出
(ロ) 第2液吐出ノズルNlからの吐出:紡糸液Fを3g/時間で吐出
(ハ) 空気吐出流速:250m/sec.
(ニ) 空気吐出量:1.3L/min.
(ホ) ネットの移動速度:30cm/min.
(ヘ) サクションボックスの吸引条件:
最大風量18m/min.(0.1kW)
(ト) 気体供給条件:
温度23℃、湿度50%のエアを流量200L/minで供給
(チ) 気体排気条件:201.3L/min.以上
【0060】
(比較例1)
(紡糸液の調製)
実施例1と同じ紡糸液Aを用意した。
【0061】
(不織布製造装置の準備)
次の構成からなる製造装置を用意した。
(1) 紡糸液貯蔵部:ステンレスタンク
(2) 空気供給装置:圧縮機
(3) 液吐出ノズル:金属製
(3)−1 液吐出部:0.7mm径(断面積:0.38mm)の円形
(3)−2 液用柱状中空部:0.7mm径の円柱状
(3)−3 ノズル外径:1.1mm
(3)−4 ノズル本数:1本
(4) ガス吐出ノズル:金属製
(4)−1 ガス吐出部:2.1mm径(断面積:3.46mm)の円形
(4)−2 ガス用柱状中空部:2.1mm径の円柱状
(4)−3 ノズル外径:2.5mm
(4)−4 ノズル本数:1本
(4)−5 位置:
ガス吐出部が液吐出部よりも2mm上流側の位置で、液吐出ノズルと同心円状に配置、結果として、ガス吐出部は内径1.1mm、外径2.1mmの中空円形状となる(図5参照)
(5)−1 液仮想柱状部とガス仮想柱状部の距離:0.2mm
(5)−2 液吐出方向中心軸とガス吐出方向中心軸:一致
(5)―3 ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部の切断面の内周と液用柱状中空部の切断面の外周との距離が最も短い直線の本数:無数
(6)−1 捕集体:
ネット(表面をフッ素樹脂でコーティングしたメッシュタイプのコンベアネット)の捕集面を紡糸液の吐出方向中心軸に対して直角に配置
(6)−2 捕集体の液吐出部との距離:300mm
(7) 吸引装置:
サクションボックス(サクション口径:50mm×230mm)
(8) 紡糸容器:容積1mのアクリル容器
(8)−1 気体供給装置:精密空気発生装置((株)アピステ製、1400−HDR)
(8)−2 排気装置:サクションボックス(吸引装置)に繋がったファン
【0062】
(不織布の製造)
次の条件で紡糸し、不織布を製造しようとしたが、繊維形状、不織布を製造することができなかった。
(イ)液吐出ノズルからの吐出量:3g/時間
(ロ)ガス吐出流速:200m/sec.
(ハ)空気吐出量:1.0L/min.
(ニ) ネットの移動速度:30cm/min.
(ホ) サクションボックスの吸引条件:
最大風量18m/min.(0.1kW)
(ヘ) 気体供給条件:
温度23℃、湿度50%のエアを流量200L/minで供給
(ト) 気体排気条件:201L/min.以上
【0063】
(比較例2)
(紡糸液の調製)
実施例1と同じ紡糸液A及び紡糸液Bを用意した。
【0064】
(紡糸装置の準備)
次の構成からなる紡糸装置を用意した。
(1) 紡糸液貯蔵部:シリンジ
(2) 空気供給装置:圧縮機
(3) 液吐出ノズル:金属製
(3)−1 液吐出部:0.33mm径(断面積:0.085mm)の円形
(3)−2 液用柱状中空部:0.33mm径の円柱状
(3)−3 ノズル外径:0.64mm
(3)−4 ノズル本数:1本
(4) ガス吐出ノズル:金属製
(4)−1 ガス吐出部:0.33mm径(断面積:0.085mm)の円形
(4)−2 ガス用柱状中空部:0.33mm径の円柱状
(4)−3 ノズル外径:0.64mm
(4)−4 ノズル本数:1本
(5)−1 位置:
ガス吐出部が液吐出部よりも2mm上流側に、ノズルの外壁面が当接するように配置
(6) 液仮想柱状部とガス仮想柱状部の距離:0.31mm
(7) 液吐出方向中心軸とガス吐出方向中心軸:平行
(8) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部の切断面の外周と液用柱状中空部の切断面の外周との距離が最も短い直線L1の本数:1本
【0065】
(不織布製造装置の準備)
紡糸装置を2組用意し、次のように配置した。
(i) 捕集体:
ネット(表面をフッ素樹脂でコーティングしたメッシュタイプのコンベアネット)の捕集面を紡糸液の吐出方向中心軸に対して直角に配置
(ii) 捕集体の捕集面と液吐出部との距離:200mm
(iii) 吸引装置:
サクションボックス(サクション口径:50mm×230mm)
(iv) 紡糸容器:
容積1mのアクリル容器
(iv)−1 気体供給装置:
精密空気発生装置((株)アピステ製、1400−HDR)
(iv)−2 排気装置:サクションボックス(吸引装置)に繋がったファン
【0066】
(不織布の製造)
次の条件で繊維を捕集体(ネット)上に集積させ、不織布を製造しようとしたが、実施例1よりも繊維の飛散が多く、安定して不織布を製造することができなかった。
(イ) 各液吐出ノズルからの吐出量:3g/時間
(ロ) ガス吐出流速:200m/sec.
(ハ) 空気吐出量:1.0L/min.
(ニ) ネットの移動速度:30cm/min.
(ホ) サクションボックスの吸引条件:
最大風量18m/min.(0.1kW)
(ヘ) 気体供給条件:
温度23℃、湿度50%のエアを流量200L/minで供給
(ト) 気体排気条件:201L/min.以上
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】紡糸装置の先端部を拡大した斜視図
【図2】従来の紡糸装置の断面図
【図3】(a) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の一例(図1のC平面での切断平面図) (b) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例 (c) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例 (d) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例 (d) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例 (e) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例
【図4】(a) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の一例 (b) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例 (c) ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図の他例
【図5】比較例1におけるガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時の切断平面図
【符号の説明】
【0068】
Nl 第1液吐出ノズル
Nl 第2液吐出ノズル
Nl 液吐出ノズル
Nl 液吐出ノズル
Ng ガス吐出ノズル
El 第1液吐出部
El 第2液吐出部
Eg ガス吐出部
Hl 第1液用柱状中空部
Hl 第2液用柱状中空部
Hg ガス用柱状中空部
Hvl 第1液仮想柱状部
Hvl 第2液仮想柱状部
Hvg ガス仮想柱状部
Al 第1吐出方向中心軸(液)
Al 第2吐出方向中心軸(液)
Ag 吐出方向中心軸(ガス)
C ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面
L1 直線
L2 直線
12 第1部材
22 第2部材
32 第3部材
14、24、34 供給端部
16、26、36 対向出口端部
18 第1供給スリット
38 第1ガススリット
20 ガスジェット空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸液を吐出できる液吐出部を2箇所以上と、前記いずれの液吐出部よりも上流側に位置し、ガスを吐出できるガス吐出部1箇所とを有する、次の条件を満足する紡糸装置を用い、前記液吐出部から2種以上の吐出条件で紡糸液を吐出して繊維化し、捕集体上に集積することを特徴とする、不織布の製造方法。
(1)各液吐出部を端部とする液用柱状中空部をそれぞれ有する
(2)ガス吐出部を端部とするガス用柱状中空部を有する
(3)液用柱状中空部を延長した各液仮想柱状部とガス用柱状中空部を延長したガス仮想柱状部とはそれぞれ近接している
(4)液用柱状中空部の各吐出方向中心軸とガス用柱状中空部の吐出方向中心軸とはそれぞれ平行である
(5)ガス用柱状中空部の中心軸に対して垂直な平面で切断した時に、ガス用柱状中空部の切断面の外周と液用柱状中空部の切断面の外周との距離が最も短い直線を、いずれの組み合わせにおいても、1本だけ引くことができる
【請求項2】
濃度の異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
ポリマーの異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
溶媒の異なる紡糸液を吐出することを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37698(P2010−37698A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204830(P2008−204830)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】