不織布
【課題】凹凸が形成され、少なくとも目付が調整された不織布及び不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】不織布110は、略シート状に所定の厚さを持って形成され、繊維同士の自由度を有する繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴き当てることにより、噴きあてられた領域に沿って少なくとも目付が調整される。そして、該目付は、主に気体からなる流体が所定の方向に噴きあてられることによって繊維ウェブ100を構成する繊維101が移動することにより調整される。このように目付が調整された不織布110は、複数の低目付部である溝部1と、溝部1に沿って連続的に形成され、複数の溝部1のそれぞれに隣接する複数の高目付部である凸状部2と、を有し、複数の溝部1の目付は、複数の凸状部2の目付より低い。
【解決手段】不織布110は、略シート状に所定の厚さを持って形成され、繊維同士の自由度を有する繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴き当てることにより、噴きあてられた領域に沿って少なくとも目付が調整される。そして、該目付は、主に気体からなる流体が所定の方向に噴きあてられることによって繊維ウェブ100を構成する繊維101が移動することにより調整される。このように目付が調整された不織布110は、複数の低目付部である溝部1と、溝部1に沿って連続的に形成され、複数の溝部1のそれぞれに隣接する複数の高目付部である凸状部2と、を有し、複数の溝部1の目付は、複数の凸状部2の目付より低い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布は、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生用品、ワイパー等の清掃用品、マスク等の医療用品と、幅広い分野に使用されている。このように不織布は、異なる様々な分野で使用されるが、実際に各分野の製品に使用される場合には、それぞれの製品の用途に適した性質や構造となるよう製造されることが必要である。
【0003】
不織布は、例えば、乾式法や湿式法等により繊維層(繊維ウェブ)を形成し、ケミカルボンド法やサーマルボンド法等により繊維層を形成する繊維同士を結合させることで形成される。繊維層を形成する繊維を結合させる工程において、この繊維層に多数のニードルを繰り返し突き刺す方法や、水流を噴射する方法等の繊維層に外部から物理的な力を加えることを含む方法も存在する。
【0004】
しかし、これらの方法は、あくまで繊維同士を交絡させるだけであり、繊維層における繊維の配向や配置、また、繊維層の形状等を調整するものではなかった。つまり、これらの方法で製造されるのは単なるシート状の不織布であった。
【0005】
また、例えば吸収性物品の表面シート等に用いるための不織布においては、排泄物等の所定の液体がもたらされた場合に、肌への感触を維持又はよくするため、凹凸のある不織布等が望ましいといわれている。そして、熱収縮性の異なる繊維からなる複数の繊維層を積層して熱融着等をさせ、所定の層の熱収縮により表面に凹凸を形成した不織布及びその製造方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3587831号公報
【0006】
また、凹凸の形成時において、複数の繊維層を積層し、各繊維層を熱融着により一体化しているため、熱融着された多数の領域は繊維密度が高まり、さらにはフィルム化されている場合には、より一層排泄物等の所定の液体を素早く下方へ透過させにくくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1において開示されている不織布は、熱収縮した熱収縮性繊維を含む第1繊維層の片面又は両面に非熱収縮性繊維からなる第2繊維層が積層され、多数の熱融着部により一体化されており、該熱融着部においては第1繊維層の熱収縮によって第2繊維層が突出して多数の凸部を形成している。
【0008】
つまり、特許文献1における不織布又は不織布製造方法においても、繊維ウェブを凹凸に形成するためには、異なる性状を有する複数の繊維層が必要であるため、製造工程が煩雑である。また、熱収縮時に第1繊維層と第2繊維層とが剥離してしまうと、第2繊維層が凸部を形成できなくなる。このため、第1繊維層と第2繊維層との多数の熱融着部は確実に融着させる必要がある。これによって熱融着部の密度が高くなり、さらにはフィルム化されてしまい、その領域が排泄物等の所定の液体を素早く透過させにくくするという課題がある。そして、これらが本発明の課題といってよい。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、液体を素早く透過させやすく、少なくとも目付が調整された不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、所定の通気性支持部材により下面側から支持される繊維ウェブに、上面側から気体を噴きあてて該繊維ウェブを構成する繊維を移動させることにより、少なくとも目付を調整することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)主に気体からなる流体を繊維集合体に噴きあてることにより形成される、縦方向と横方向とを有する不織布であって、前記縦方向に沿って形成された複数の低目付部と、前記複数の低目付部それぞれに沿って隣接するように形成された複数の高目付部と、を有し、前記複数の低目付部それぞれにおける目付は、前記複数の高目付部それぞれにおける目付より低い、不織布。
【0012】
(2)前記複数の低目付部それぞれにおける繊維密度は、前記複数の高目付部それぞれにおける繊維密度以下である(1)に記載の不織布。
【0013】
(3)前記複数の低目付部は、横配向繊維の含有率が、縦配向繊維の含有率よりも高い(1)又は(2)に記載の不織布。
【0014】
(4)前記複数の低目付部それぞれは、該不織布における一方の面側であって該不織布における厚さ方向に窪む複数の溝部であり、前記複数の高目付部は、前記一方の面側において前記厚さ方向に突出する複数の凸状部である(1)から(3)のいずれかに記載の不織布。
【0015】
(5)前記複数の溝部それぞれにおける目付は、前記複数の凸状部それぞれにおける目付の90%以下である(4)に記載の不織布。
【0016】
(6)前記複数の溝部それぞれにおける目付は3g/m2から200g/m2であり、
前記複数の凸状部それぞれにおける目付は15g/m2から250g/m2である(4)又は(5)に記載の不織布。
【0017】
(7)前記複数の凸状部それぞれにおける繊維密度は、0.20g/cm3以下であり、前記複数の溝部それぞれにおける繊維密度は、0.18g/cm3以下である(4)から(6)のいずれかに記載の不織布。
【0018】
(8)前記複数の溝部それぞれにおける、前記厚さ方向の高さは、前記凸状部の前記高さの90%以下である、(4)から(7)のいずれかに記載の不織布。
【0019】
(9)前記複数の溝部それぞれは、該溝部の底部に形成される該底部の平均目付よりも目付が低い複数の領域を備える(4)から(8)のいずれかに記載の不織布。
【0020】
(10)前記複数の領域のそれぞれは、開口部である(9)に記載の不織布。
【0021】
(11)前記複数の開口部それぞれの周縁における繊維は、前記周縁に沿うように配向する(10)に記載の不織布。
【0022】
(12)前記複数の凸状部における所定の凸状部は、前記複数の溝部における所定の溝部を挟んで隣り合う凸状部と前記厚さ方向の高さが異なる(4)から(11)のいずれかに記載の不織布。
【0023】
(13)前記複数の凸状部それぞれにおける頂部は略扁平状である(4)から(12)のいずれかに記載の不織布。
【0024】
(14)前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側には、前記複数の凸状部それぞれにおける突出方向と反対側に突出する複数の領域が形成される、(4)から(13)のいずれかに記載の不織布。
【0025】
(15)前記縦方向において波状に起伏する(1)から(14)のいずれかに記載の不織布。
【0026】
(16)前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側は、略平坦である(4)から(14)のいずれかに記載の不織布。
【0027】
(17)前記繊維集合体を構成する繊維は撥水性の繊維を含んでいる(1)から(16)のいずれかに記載の不織布。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、液体を透過させやすく、少なくとも目付が調整された不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0030】
図1は、繊維ウェブの斜視図である。図2は、第1実施形態の不織布における平面図及び底面図である。図3は、図2における領域Xの拡大斜視図である。図4は、網状支持部材の平面図及び斜視図である。図5は、図1の繊維ウェブが下面側を図4の網状支持部材に支持された状態で上面側に気体を噴きあてられて図2の第1実施形態の不織布が製造された状態を示す図である。図6は、第1実施形態の不織布製造装置を説明する側面図である。図7は、図6の不織布製造装置を説明する平面図である。図8は、図6における領域Zの拡大斜視図である。図9は、図8における噴き出し部の底面図である。図10は、第2実施形態における不織布の拡大斜視図である。図11は、第3実施形態における不織布の拡大斜視図である。図12は、第3実施形態における網状支持部材の拡大斜視図である。図13は、第4実施形態における不織布の拡大斜視図である。図14は、第5実施形態における不織布の拡大斜視図である。図15は、第6実施形態における不織布の拡大斜視図である。図16は、第6実施形態における支持部材の拡大平面図である。図17は、本発明にかかる不織布を生理用ナプキンの表面シートに使用した場合の斜視断面図である。図18は、本発明にかかる不織布をオムツの表面シートに使用した場合の斜視図である。図19は、本発明にかかる不織布を吸収性物品の中間シートとして使用した場合の斜視断面図である。図20は、本発明にかかる不織布を吸収性物品のアウターバックとして使用した場合の斜視図である。
【0031】
[1]第1実施形態
図1から図5により、本発明の不織布における第1実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態における不織布110は、繊維集合体である繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴きあてることにより形成することができる不織布である。また、縦方向である長手方向に沿って複数の低目付部である溝部1と、該溝部1に沿って形成される複数の高目付部である凸状部2とが形成された不織布である。そして、溝部1の目付は凸状部2の目付よりも低くなるよう調整される。
【0033】
[1.1]形状
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、本実施形態における不織布110は、第1実施形態の通り、該不織布110の一方の面側に複数の溝部1が略等間隔で並列的に形成された不織布である。そして、略等間隔で形成された複数の溝部1それぞれの間に、複数の凸状部2それぞれが形成されている。この凸状部2は、溝部1と同様に略等間隔で並列的に形成されている。
【0034】
また、本実施形態における不織布110の凸状部2の該不織布110の厚さ方向における高さは、0.3から15mm、好ましくは0.5から5mmを例示することができる。また、凸状部2の一つ当たりの幅方向における長さは、0.5から30mm、好ましくは1.0から10mmである。また、溝部1を挟んで隣接する凸状部2の頂点間の距離は、0.5から30mm、好ましくは3から10mmを例示することができる。
【0035】
また、溝部1の不織布110の厚さ方向における高さは、凸状部2の該高さの90%以下、好ましくは1から50%、さらに好ましくは5から20%の高さである。溝部1の幅方向における長さは、0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmを例示することができる。凸状部2を挟んで隣り合う溝部1同士間のピッチは、0.5から20mm、好ましくは3から10mmを例示することができる。
【0036】
このような設計にすることにより、例えば吸収性物品の表面シートとして該不織布110を使用した場合に、多量の所定の液体が排泄された際にも表面に広くにじみにくくさせるのに適した溝部1を形成することができる。また、過剰な外圧がかかった際に凸状部2が潰されたような状態となっても、溝部1による空間を維持しやすくなり、外圧がかかった状態で所定の液体が排泄された場合でも表面に広くにじみにくくすることができる。さらに、一端吸収体等に吸収した所定の液体が外圧下において逆戻りしたような場合でも、該不織布110の表面に凹凸が形成されていることにより、肌への接触面積が少ないため、肌に広く再付着しにくい場合がある。
【0037】
ここで、溝部1又は凸状部2の高さやピッチ、幅の測定方法は以下の通りである。例えば、不織布110をテーブル上に無加圧の状態で載置し、マイクロスコープにて不織布110の断面写真又は断面映像から測定する。尚、サンプルとなる不織布110は、凸状部2及び溝部1を通るように切断する。
【0038】
高さ(厚さ方向における長差)を測定する際は、不織布110の最下位置(つまりテーブル表面)から上方に向かう凸状部2及び溝部1のそれぞれの最高位置を高さとして測定する。
【0039】
また、ピッチを測定する際は、隣接する凸状部2の頂点間の距離を測定し、同様に溝部1を測定する。
【0040】
幅を測定する際は、不織布110の最下位置(つまりテーブル表面)から上方に向かう凸状部2の底面の最大幅を測定し、同様に溝部1底面の最大幅を測定する。
【0041】
ここで、凸状部2の断面形状は、特に限定されない。例えば、ドーム状、台形状、三角状、Ω状、四角状等を例示することができる。肌触りをよくするには、凸状部2の頂面付近及び側面は曲面であることが好ましい。また、外圧で凸状部2が潰されたり、溝部1による空間も維持できるようにするには、凸状部2の底面から頂面にかけて幅が狭くなっていることが好ましい。凸状部2の好ましい形状としては略ドーム状等の曲線(曲面)であることを例示することができる。
【0042】
ここで、本実施形態において、溝部1は略等間隔で並列的に形成されているがこれに限定されず、例えば、異なる間隔ごとに形成されてもよく、溝部1同士の間隔が変化するように形成されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態における不織布110の凸状部2の高さ(厚さ方向)は略均一であるが、例えば、互いに隣接する凸状部2の高さが異なるように形成されていてもよい。主に気体からなる流体が噴き出される噴き出し口913の間隔を調整することで、凸状部2の高さを調整することができる。例えば、噴き出し口913の間隔を狭くすることで凸状部2の高さを低くすることができ、逆に、噴き出し口913の間隔を広くすることで凸状部2の高さを高くすることができる。さらには、噴き出し口913の間隔を狭い間隔と広い間隔とが交互になるよう形成することで、高さの異なる凸状部2が交互に形成されるようにすることもできる。また、このように、凸状部2の高さが部分的に変化していれば、肌との接触面積が下がるために肌への負担を減らすことができるというメリットも生じる。
【0044】
[1.2]繊維配向
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、該不織布110においては、繊維101が縦方向である長手方向に配向する縦配向繊維が含まれる含有率がそれぞれ異なる領域が形成される。それぞれ異なる領域とは、例えば、溝部1、凸状部2を構成する側部8及び中央部9を例示できる。
【0045】
ここで、繊維101が長手方向(縦方向)に配向するとは、繊維101が長手方向(縦方向)に対して、+45度から−45度の範囲内に配向していることをいい、また、長手方向に配向している繊維を縦配向繊維という。そして、繊維101が幅方向(横方向)に配向するとは、繊維101が幅方向に対して+45度から−45度の範囲内に配向していることをいい、また、幅方向に配向している繊維を横配向繊維という。
【0046】
側部8は、凸状部2の両側部にあたる領域であり、該側部8における繊維101は、縦配向繊維の含有率が中央部9(凸状部2において側部8に挟まれた領域)における縦配向繊維の含有率よりも高くなるように形成される。例えば、側部8における縦配向繊維の含有率は、55から100%、さらに好ましくは60から100%を例示できる。側部8における縦配向繊維の含有率が55%より小さい場合には、ラインテンションによって該側部8が引き延ばされてしまう場合がある。さらに側部8が引き延ばされることにより、溝部1や後述する中央部9をもラインテンションにより引き延ばされてしまう場合がある。
【0047】
中央部9は、凸状部2において両側部となる側部8に挟まれた領域であり、縦配向繊維の含有率が側部8よりも低い領域である。該中央部9は、縦配向繊維と横配向繊維とが適度に混合されていることが好ましい。
【0048】
例えば、中央部9における縦配向繊維の含有率は、側部8における縦配向繊維の含有率よりも10%以上低く、後述の溝部1の底部における縦配向繊維の含有率よりも10%以上高くなるよう形成される。具体的には、中央部9における縦配向繊維の含有率は40から80%の範囲であることが好ましい。
【0049】
溝部1は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)が直接噴きあてられる領域であるため、溝部1における縦配向繊維は側部8に噴き寄せられる。そして、溝部1における横配向繊維が溝部1の底部に残されることになる。このため、溝部1の底部における繊維101は、横配向繊維の含有率が縦方向繊維の含有率よりも高くなる。
【0050】
例えば、溝部1における縦配向繊維の含有率は、中央部9における縦配向繊維の含有率よりも10%以上低いことを例示できる。したがって、溝部1の底部においては、該不織布110において縦配向繊維の含有率が最も低く、逆に横配向繊維の含有率が最も高い。具体的には、横配向繊維の含有率が55から100%、好ましくは60から100%である。横配向繊維の含有率が55%より低い場合には、後述のように溝部1の目付が低いために幅方向への不織布の強度を高めることが難しくなる。すると、例えば吸収性物品の表面シートとして該不織布110を使用した場合、該吸収性物品を使用中、身体との摩擦により幅方向にヨレが生じたり、破損したりする危険性が生じる。
【0051】
繊維配向の測定は、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−100を用いて行い、以下の測定方法で行った。(1)サンプルを観察台上に長手方向が縦方向になるようにセットし、(2)イレギュラーに手前に飛び出した繊維を除いてサンプルの最も手前の繊維にレンズのピントを合わせ、(3)撮影深度(奥行き)を設定してサンプルの3D画像をPC画面上に作成する。次に(4)3D画像を2D画像に変換し、(5)測定範囲において長手方向を適時等分する平行線を画面上に複数引く。(6)平行線を引いて細分化した各セルにおいて、繊維配向が長手方向であるか、幅方向であるかを観察し、それぞれの方向に向いている繊維本数を測定する。そして(7)設定範囲内における全繊維本数に対し、長手方向に向かう繊維配向の繊維本数の割合と、幅方向に向かう繊維配向の繊維本数の割合とを計算することにより、測定・算出することができる。
【0052】
[1.3]繊維疎密
図3に示すように、溝部1は、凸状部2に比べて繊維101の繊維密度が低くなるように調整されている。また、溝部1の繊維密度は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)の量やテンション等の諸条件によって任意に調整できる。そして、凸状部2の繊維密度は、溝部の繊維密度よりも高くなるよう形成される。
【0053】
該溝部1の底部の繊維密度は、具体的には、0.002から0.18g/cm3、0.005から0.05g/cm3を例示することができる。溝部1の底部の繊維密度が0.002g/cm3より小さい場合には、例えば該不織布110を吸収性物品等に使用している場合に、該不織布110が容易に破損してしまう場合がある。また、該溝部1の底部の繊維密度が0.18g/cm3より大きい場合には、液体が下方へ移行しにくくなるために該溝部1の底部に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0054】
凸状部2は、繊維密度が溝部1の繊維密度より高くなるように調整されている。具体的には、0.005から0.20g/cm3、好ましくは0.007から0.07g/cm3を例示することができる。該凸状部2の繊維密度が0.005g/cm3より小さい場合には、該凸状部2に含んだ液体の自重や外圧によって凸状部2が潰れやすくなるだけでなく、一度吸収した液体が加圧下において逆戻りしやすくなる場合がある。また、凸状部2の繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、該凸状部2にもたらされた所定の液体を下方へ移行しにくくなり、該凸状部2に液体が滞留して使用者に湿り感を与える場合がある。
【0055】
[1.4]目付
不織布110全体の目付は、具体的には、10から200g/m2、好ましくは20から100g/m2を例示することができる。該不織布110を例えば吸収性物品の表面シートに使用する場合、目付が10g/m2より小さい場合には、使用中に容易に破損する場合がある。また、該不織布110の目付が200g/m2より大きい場合には、もたらされた液体を下方に移行させることが円滑に行われにくくなる場合がある。
【0056】
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、溝部1は、凸状部2に比べて繊維101の目付が少なくなるよう調整されている。また、溝部1の目付は、溝部1と凸状部2とを含む全体における目付の平均に比べて低くなるよう調整される。
【0057】
具体的には、溝部1の底部における目付は3から150g/m2、好ましくは5から80g/m2を例示できる。該溝部1の底部における目付が3g/m2より低い場合には、例えば該不織布が吸収性物品の表面シートに使用された場合に、吸収性物品の使用中に表面シートが容易に破損する場合がある。また、該溝部1の底部における目付が150g/m2より高い場合には、該溝部1にもたらされた液体が下方へ移行されにくくなることで溝部1に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0058】
凸状部2は、溝部1に比べて繊維101の平均目付が高くなるよう調整されている。ここで、凸状部2における中央部9の目付は、例えば15から250g/m2、好ましくは20から120g/m2を例示できる。該中央部9の目付が15g/m2より低い場合には、該中央部9に含まれた液体の自重や外圧によって潰れやすくなるだけでなく、一度吸収した液体が加圧下において逆戻りしやすくなる場合がある。また、中央部9における目付が250g/m2より高くなる場合には、もたらされた液体が下方へ移行されにくくなり、該中央部9に液体が滞留して使用者に湿り感を与える場合がある。
【0059】
さらに、該凸状部2における側部である側部8の目付は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)の量やテンション等の諸条件によって任意に調整できる。具体的には、該側部8における目付は、20から280g/m2、好ましくは25から150g/m2を例示できる。該側部8における目付が20g/m2より低い場合には、ラインテンションによって側部8が引き延ばされてしまう場合がある。また、該側部8における目付が280g/m2より高い場合には、該側部8にもたらされた液体が下方へ移行されにくくなることで側部8に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0060】
[1.5]その他
本実施形態の不織布を、例えば、所定の液体を吸収又は透過させるために使用した場合、溝部1は液体を透過させ、凸状部2はポーラス構造であるので液体を保持しにくい。
【0061】
溝部1は、繊維101の繊維密度が低く、目付が少ないことから、液体を透過させるのに適したものとなっている。さらに、溝部1の底部における繊維101が幅方向に配向していることから、液体が溝部1の長手方向に流れすぎて広く広がってしまうことを防止できる。溝部1は目付が低いにもかかわらず繊維101を該溝部1の幅方向に配向(CD配向)されているので、不織布の幅方向への強度(CD強度)が高まっている。
【0062】
凸状部2の目付が高くなるよう調整されるが、これにより繊維本数が増大するため融着点数が増え、ポーラス構造が維持される。
【0063】
また、溝部1は、単位面積当たりの横配向繊維の含有率が中央部9よりも高く、側部8は、単位面積当たりにおける縦配向繊維の含有率が中央部9よりも高い。そして、中央部9には、厚さ方向に配向する繊維101が溝部1や側部8よりも多く含まれる。これにより、中央部9に、例えば厚さ方向の荷重がかかることにより凸状部2の厚みが減少したとしても、荷重が開放された場合には、その厚さ方向に配向する繊維101の剛性により元の高さに戻りやすい。すなわち、圧縮回復性の高い不織布であるといえる。
【0064】
[1.6]製造方法
図4から図9より、以下に、本実施形態における不織布110を製造する方法について説明する。まず、繊維ウェブ100を図4(A)及び図4(B)に示す通気性支持部材である網状支持部材210の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を網状支持部材210により下側から支持する。
【0065】
そして、図5に示すように、この繊維ウェブ100を支持した状態における網状支持部材210を所定方向に移動させ、該移動されている繊維ウェブ100の上面側から連続的に気体を噴きあてることで、本実施形態における不織布110を製造することができる。
【0066】
ここで、網状支持部材210は、不通気部である所定太さの複数のワイヤ211が、織り込まれるようにして形成される。複数のワイヤ211が所定間隔を空けて織り込まれることで、通気部である孔部213が複数形成された網状支持部材210が得られる。
【0067】
図4(A)及び(B)に示すように、網状支持部材210は、孔径が小さな孔部213が複数形成されているものであり、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた気体は、該網状支持部材210に妨げられることなく下方に通気する。この網状支持部材210は、噴きあてられる気体の流れを大きく変えることがなく、また、繊維101を該網状支持部材210の下方向に移動させない。
【0068】
このため、繊維ウェブ100における繊維101は、主に上面側から噴きあてられた気体により所定方向に移動される。具体的には、網状支持部材210の下方側への移動が規制されているため、繊維101は、該網状支持部材210の表面に沿うような方向に移動される。
【0069】
例えば、気体が噴きあてられた領域における繊維101は、該領域に隣接する領域に移動される。そして、気体が噴きあてられる領域が所定方向に移動するため、結果として、気体が噴きあてられた所定方向に連続する領域における側方の領域に移動される。
【0070】
これにより、溝部1が形成されると共に、溝部1における底部の繊維101は幅方向に配向した繊維が残される。また、溝部1と溝部1との間に凸状部2が形成され、該凸状部2における側方部の繊維密度が高くなり、繊維101が長手方向に配向等される。
【0071】
ここで、本実施形態の不織布110を製造する不織布製造装置90は、図6、図7に示すように、繊維集合体である繊維ウェブ100を一方の面側から支持する通気性支持部材200と、通気性支持部材200により前記一方の面側から支持される繊維集合体である繊維ウェブ100に、該繊維集合体である繊維ウェブ100における他方の面側から主に気体からなる流体を噴きあてる噴きあて手段である噴き出し部910及び不図示の送気部とを備える。
【0072】
不織布110は、不織布製造装置90において、繊維ウェブ100を移動手段により順次移動されながら形成される。該移動手段は、上述した通気性支持部材200により一方の面側から支持された状態における繊維集合体である繊維ウェブ100を所定方向に移動させる。具体的には、主に気体からなる流体が噴きあてられた状態における繊維ウェブ100を所定方向Fに移動させる。移動手段として、例えば、図6に示されるコンベア930を例示できる。コンベア930は、通気性支持部材200を載置する横長のリング状に形成される通気性の通気性ベルト部939と、横長のリング状に形成された通気性ベルト部939の内側であって長手方向の両端に配置され、該リング状の通気性ベルト部939を所定方向に回転させる回転部931、933と、を備える。
【0073】
通気性支持部材200は、製造する不織布によって、適宜交換可能である。例えば本実施形態における不織布110を製造する場合には、通気性支持部材200として上述の網状支持部材210を使用することができる。
【0074】
コンベア930は、上述の通り、繊維ウェブ100を下面側から支持した状態の通気性支持部材200(網状支持部材210)を所定方向Fに移動させる。具体的には、図6に示すように、繊維ウェブ100が、噴き出し部910の下側を通過するように移動させる。さらには、繊維ウェブ100が、加熱手段である両側面が開口したヒータ部950の内部を通過するように移動させる。
【0075】
噴きあて手段は、不図示の送気部及び、噴き出し部910を備える。不図示の送気部は、送気管920を介して噴き出し部910に連結される。送気管920は、噴き出し部910の上側に通気可能に接続される。図9に示すように、噴き出し部910には、噴き出し口913が所定間隔で複数形成されている。
【0076】
図8に示すように、不図示の送気部から送気管920を介して噴き出し部910に送気された気体は、噴き出し部910に形成された複数の噴き出し口913から噴出される。複数の噴き出し口913から噴出された気体は、通気性支持部材200(網状支持部材210)に下面側から支持された繊維ウェブ100の上面側に連続的に噴きあてられる。具体的には、複数の噴き出し口913から噴出された気体は、コンベア930により所定方向Fに移動された状態における繊維ウェブ100の上面側に連続的に噴きあてられる。
【0077】
噴き出し部910下方であって通気性支持部材200(網状支持部材210)の下側に配置される吸気部915は、噴き出し部910から噴出され通気性支持部材200(網状支持部材210)を通気した気体等を吸気する。ここで、この吸気部915による吸気により、繊維ウェブ100を通気性支持部材200(網状支持部材210)に張り付かせるよう位置決めさせることも可能である。
【0078】
吸気部915による吸引は、主に気体からなる流体が噴きあてられる領域の繊維101が通気性支持部材200(網状支持部材210)に押しつけられる程度の強さであればよい。この吸気部915が噴きあてられた主に気体からなる流体を吸引(吸気)することで、通気性支持部材200の不通気部(例えば網状支持部材210のワイヤ211)に当たった主に気体からなる流体が跳ね返されて繊維ウェブ100の形状が乱れてしまうのを防止することができる。また空気流により成形した溝部(凹凸)等の形状をより保った状態でヒータ部950内に搬送することができる。この場合、空気流による成形と同時にヒータ部950まで、吸気しながら搬送することが好ましい。
【0079】
さらに、通気性支持部材200(網状支持部材210)の下側から主に気体からなる流体を引き込むことで、主に気体からなる流体を噴きあてられる領域の繊維は、該通気性支持部材200(網状支持部材210)側に押しつけられながら移動させられるので、通気性支持部材200(網状支持部材210)側に繊維が集まるようになる。また、凸状部2では、噴きあてられた主に気体からなる流体が通気性支持部材200の不通気部(例えば網状支持部材210のワイヤ211)に衝突して跳ね返されることで、部分的に繊維101が厚さ方向に向いた状態となる。
【0080】
噴き出し口913それぞれから噴き出される主に気体からなる流体の温度は、上述の通り常温であってもよいが、例えば、溝部(凹凸)等の成形性を良好にするには、繊維集合体を構成する少なくとも熱可塑性繊維の軟化点以上、好ましくは軟化点以上であり融点の+50℃から−50℃の温度に調整することができる。繊維が軟化すると繊維自体の反発力が低下するため、空気流等で繊維が再配列された形状を保ちやすく、温度をさらに高めると繊維同士の熱融着が開始されるためより一層、溝部(凹凸)等の形状を保ちやすくなる。これにより、溝部(凹凸)等の形状を保った状態でヒータ部950内に搬送しやすくなる。
【0081】
尚、噴きあてる主に気体からなる流体の風量や温度、引き込み量、通気性支持部材200の通気性、繊維ウェブ100の目付等の調整により、凸状部2の形状を変化させることができる。例えば、噴きあてられる主に気体からなる流体の量と吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量とがほぼ均等、もしくは吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量の方が多い場合には、不織布115(不織布110)における凸状部2の裏面側は、通気性支持部材200(網状支持部材210)の形状に沿うように形成される。したがって、通気性支持部材200(網状支持部材210)が平坦である場合には、該不織布115(不織布110)における裏面側は略平坦となる。
【0082】
また、空気流等により成形した溝部(凹凸)等の形状をより保った状態でヒータ部950に搬送するには、空気流等による溝部(凹凸)等の成形直後もしくは同時にヒータ部950内に搬送するか、熱風(所定温度の空気流)による溝部(凹凸)等の成形直後に冷風等により冷却させ、その後、ヒータ部950に搬送することができる。
【0083】
加熱手段であるヒータ部950は、所定方向Fにおける両端が開口されている。これにより、コンベア930により移動される通気性支持部材200(網状支持部材210)に載置された繊維ウェブ100(不織布110)が、ヒータ部950の内部に形成される加熱空間を所定時間の滞留をもって連続的に移動される。例えば、繊維ウェブ100(不織布110)を構成する繊維101に熱可塑性繊維を含ませた場合には、このヒータ部950における加熱により繊維101同士が結合された不織布115(不織布110)を得ることができる。
【0084】
[2]他の実施形態
以下に、本発明の不織布における他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、特に説明しない部分は、不織布の第1実施形態と同様であり、図面に付した番号も第1実施形態と同様である場合は、同じ番号を付している。
【0085】
図10から図16を用いて、本発明の不織布における第2実施形態から第6実施形態について説明する。第2実施形態は、不織布の形状が異なる実施形態である。第3実施形態は、不織布全体の形状が異なる実施形態である。第4実施形態は、不織布における溝部及び凸状部が形成される面とは反対側の面が異なる態様である実施形態である。第5実施形態は、不織布の凸状部が異なる実施形態である。第6実施形態は、不織布の開口に関する他の実施形態である。
【0086】
[2.1]第2実施形態
図10により、本発明の不織布における第2実施形態について説明する。
【0087】
[2.1.1]概要
図10に示すように、本実施形態における不織布114は、両面が略平坦な不織布である。そして、所定領域における繊維配向等が異なる領域が形成された不織布である。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
[2.1.2]繊維配向
図10に示すように、不織布114は、縦配向繊維の含有率が異なる複数の領域が形成される。縦配向繊維の含有率が異なる複数の領域とは、該不織布114において縦配向繊維の含有率が最も高い第2領域である縦配向部13と、縦配向部13より縦配向繊維の含有率が低い第3領域である中央部12と、縦配向繊維の含有率が最も低く、かつ横配向繊維の含有率が最も高い第1領域である横配向部11と、を例示することができる。そして、該不織布114は、複数の横配向部11それぞれの両側に沿って複数の縦配向部13がそれぞれ形成される。この複数の縦配向部13それぞれにおける横配向部11側とは反対側であって、隣り合う縦配向部13に挟まれた複数の中央部12が複数形成された不織布である。
【0089】
横配向部11は、繊維ウェブ100において縦方向である長手方向に配向していた繊維101が縦配向部13側に噴き寄せられた後、残った繊維101で形成される領域である。長手方向に向いていた繊維101が縦配向部13側に移動されるので、横配向部11には、主として横方向である幅方向に配向していた横配向繊維が残されることになる。したがって、横配向部11における繊維101の多くが長手方向に対して交差する方向に配向する。横配向部11は、後述のように目付が低くなるように調整されるが、該横配向部11における繊維101の大部分が幅方向に配向しているため、幅方向における引っ張り強度が高くなる。そして、例えば該不織布114を吸収性物品の表面シートに用いた場合に着用中に幅方向への摩擦等の力が加わったとしても破損してしまうことを防止することができる。
【0090】
また、縦配向部13は、繊維ウェブ100において長手方向に向いていた繊維101が主に気体からなる流体を噴きあてられることにより縦配向部13側に噴き寄せられて形成される。そして、該縦配向部13における繊維101の多くが長手方向に配向しているので、各繊維101の繊維間距離が狭まり、繊維密度が高く形成される。このため、剛性も高まる。
【0091】
[2.1.3]繊維疎密
図10に示すように、主に気体からなる流体が噴きあてられて横配向部11の繊維101が移動するので、噴きあてられた圧力により、繊維101も不織布114の厚さ方向における下側の方に集まるように移動する。したがって、不織布114の厚さ方向における上側は空間面積率が大きく、下側は空間面積率が小さくなっている。言い換えると、不織布114の厚さ方向における上側は繊維密度が小さくなり、下側は繊維密度が高い。
【0092】
また、横配向部11は、主に気体からなる流体を噴きあてられて繊維101が移動することにより、繊維密度が低くなるよう形成される。縦配向部13は、横配向部11から移動された繊維101が集まる領域となるので、横配向部11よりも繊維密度が高くなるように形成される。中央部12における繊維密度は、横配向部11における繊維密度と、縦配向部13における繊維密度との中間になるように形成される。
【0093】
[2.1.4]目付
図10に示すように、横配向部11に噴きあてられた主に気体からなる流体により、繊維101が他の領域に移動するため、横配向部11における目付が最も低くなる。また、横配向部11から移動した繊維101が噴き寄せられるため、縦配向部13が最も目付が高くなる。そして、この縦配向部13に両側を挟まれるようにして中央部12が形成される。すなわち目付の少ない領域となる中央部12や横配向部11は、目付の高い縦配向部13が両側に支えられるように形成されるので、目付が低くても例えばラインテンション等により引き延ばされるようなことを抑制することができる。
【0094】
[2.1.5]その他
該不織布114を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合、目付が低い状態の横配向部11や中央部12を維持したまま、すなわち製品製造中のラインテンション等により引き延ばされない状態で用いることができる。そして、横配向部11や中央部12のそれぞれの間に目付の高い縦配向部13が形成されるので、液体等を含んだ際に、液体の重みや自重により該不織布114が潰れるようなことが発生しにくくなる。したがって、繰り返し液体が排泄されても、液体を表面に広げることなく該不織布114の下方へ移行させることができる。
【0095】
[2.1.6]製造方法
以下に、本実施形態における不織布114を製造する方法について説明する。まず、繊維ウェブ100を通気性支持部材200である網状支持部材210の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を網状支持部材210により下側から支持する。この網状支持部材210は、第1実施形態における網状支持部材210と同様のものを用いることができる。
【0096】
そして、この繊維ウェブ100を支持した状態における網状支持部材210を所定方向に移動させ、該移動されている繊維ウェブ100の上面側から連続的に気体を噴きあてることで、本実施形態における不織布114を製造することができる。
【0097】
該不織布114に噴きあてられる主に気体からなる流体の量は、主に気体からなる流体を噴きあてる領域における繊維ウェブ100の繊維101が幅方向に移動できる程度であればよい。この場合、噴きあてられる主に気体からなる流体を網状支持部材210の下側に引き込む吸気部915により吸気しない方が好ましいが、横配向部11が網状支持部材210に押さえつけられない程度に吸気してもよい。
【0098】
また、主に気体からなる流体を噴きあてて凹凸、例えば溝部や凸状部2等のある不織布を形成した後にロール等に巻き付けることで形成した凹凸を押しつぶすようにしてもよい。
【0099】
このように、繊維101を下側に押さえつける力も少なく、凹凸を形成せずに、厚みが略一定の不織布114を形成することができる。
【0100】
本実施形態における不織布114は不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布114の製造方法等は、第1実地形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0101】
[2.2]第3実施形態
図11、図12により、本発明の不織布における第3実施形態について説明する。
【0102】
[2.2.1]不織布
図11及び図12に示すように、本実施形態における不織布116は、該不織布116の全体が長手方向に交差するように交互に起伏する点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0103】
本実施形態における不織布116は、該不織布116全体が縦方向である長手方向に波状の起伏を有するように形成されている。
【0104】
[2.2.2]製造方法
本実施形態における不織布116を製造する方法については第1実施形態と同様であるが、通気性支持部材200である網状支持部材260の形態が異なる。本実施形態における網状支持部材260は、不通気部である所定太さの複数のワイヤ261が、織り込まれるようにして形成される。複数のワイヤ261が所定間隔を空けて織り込まれることで、通気部である孔部263が複数形成された網状支持部材260が得られる。
【0105】
さらに、該網状支持部材260は、本実施形態においては、例えば、図12に示すように軸Yに平行な方向に交互に波状の起伏を有するように形成される。該網状支持部材260における長手方向又は短手方向のいずれか一方に平行な方向に波状の起伏を有する支持部材である。
【0106】
図12における網状支持部材260は、孔径が小さな孔部263が複数形成されているものであり、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた気体は、該網状支持部材260に妨げられることなく下方に通気する。この網状支持部材260は、噴きあてられる主に気体からなる流体の流れを大きく変えることがなく、また、繊維101を該網状支持部材260の下方向に移動させない。
【0107】
さらに、同様に、該網状支持部材260自体が波状の起伏を有しているので、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた主に気体からなる流体により、繊維ウェブ100は、該網状支持部材260の形状に沿うような起伏を有する形状に成形される。
【0108】
網状支持部材260の上面に載置された繊維ウェブ100に、主に気体からなる流体を噴きあてながら、該繊維ウェブ100を軸X方向に沿って移動させることにより該不織布116を形成することができる。
【0109】
網状支持部材260における、起伏の態様は任意に設定することができる。例えば、図12に示す軸X方向への起伏の頂部間のピッチは、1から30mm、好ましくは3から10mmを例示できる。また、該網状支持部材260における起伏の頂部と底部との高低差は、例えば、0.5から20mm、好ましくは3から10mmを例示できる。さらに、該網状支持部材260における軸X方向の断面形状は、図12に示すように、波状に限らず、起伏の頂部と底部それぞれの頂点が鋭角をなすように略三角形が連なった形状や、起伏の頂部と底部それぞれの頂点が略平坦となるように略四角形の凹凸が連なった形状等を例示できる。
【0110】
本実施形態における不織布116は上述した不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布116の製造方法等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0111】
[2.3]第4実施形態
図13により、本発明の不織布における第4実施形態について説明する。
【0112】
図13に示すように、本実施形態における不織布140は、他方の面側である該不織布140における溝部1及び凸状部2が形成された面とは反対側の面における態様が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0113】
[2.3.1]不織布
本実施形態における不織布140は、その一方の面側に、溝部1及び凸状部2が交互に並列的に形成されている。そして、不織布140の他方の面側においては、凸状部2の底面にあたる領域が、該凸状部2が突出する側に突出するように形成されている。言い換えると、不織布140は、該不織布140の他方の面側において、一方の面側における凸状部2の底面にあたる領域が窪んで凹部を形成している。そして、一方の面側の溝部1における底面にあたる他方の面側の領域が、一方の面側の凸状部と反対方向に突出し、凸状部を形成している。
【0114】
[2.3.2]製造方法
本実施形態においては、網状支持部材210に繊維ウェブ100を載置し主に気体からなる流体を噴きあてながら、所定の方向に沿って該繊維ウェブ100を移動させると共に、網状支持部材210の下方から、噴きあてられる主に気体からなる流体を吸引(吸気)する。そして、吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量を、噴きあてられる主に気体からなる流体の量よりも少なくすることで、噴きあてられる主に気体からなる流体が、吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量よりも多い場合には、噴きあてられた主に気体からなる流体を若干跳ね返らせることで、凸状部2の下面側(底面側)を凸状部2の上面側における凸状部2と同じ方向に突出するように形成することができる。これにより、溝部1における底面にあたる他の面側の領域は相対的に突出して下面側から突出する凸状部が形成される。
【0115】
本実施形態における不織布140の製造方法は上述の第1実施形態の記載と同様である。また、該不織布140を製造するにあたり使用される支持部材は、第1実施形態における網状支持部材210と同様のものを用いることができる。
【0116】
[2.4]第5実施形態
図14により、本発明の不織布における第5実施形態について説明する。
【0117】
図14に示すように、本実施形態における不織布150は、該不織布150の一方の面側に形成される凸状部2の高さが異なる第2凸状部22が形成される点において、第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0118】
[2.4.1]不織布
該不織布150の一方の面側に複数の溝部1が並列的に形成された不織布である。そして、形成された複数の溝部1それぞれの間に複数の凸状部2及び複数の第2凸状部22が交互にそれぞれ形成されている。この凸状部2及び第2凸状部22は、溝部1と同様に並列的に形成されている。
【0119】
凸状部2及び第2凸状部22は、繊維ウェブ100における主に気体からなる流体が噴きあてられていない領域であり、溝部1が形成されることにより、相対的に突出する領域となったものである。該第2凸状部22は、例えば、凸状部2よりも該不織布150における厚さ方向の高さが低く、幅方向における長さも小さく形成されているが、該第2凸状部22における繊維疎密、繊維配向及び目付等については、凸状部2と同様に形成されている。
【0120】
不織布150における凸状部2及び第2凸状部22は、並列的に形成された複数の溝部1それぞれの間に、凸状部2又は第2凸状部22が形成される。そして、凸状部2は、溝部1を挟んで第2凸状部22と隣り合うように形成される。また、第2凸状部22は、溝部1を挟んで凸状部2と隣り合うように形成される。つまり、凸状部2と第2凸状部22は、溝部を挟んで交互に形成される。具体的には、凸状部2、溝部1、第2凸状部22、溝部1、凸状部2という順にこの配置パターンを繰り返して形成される。なお、凸状部2及び第2凸状部22の位置関係はこれに限らず、少なくとも不織布150の一部が溝部1を挟んで複数の凸状部2がそれぞれに隣り合うように形成することができる。また複数の第2凸状部22が溝部1を挟んでそれぞれに隣り合うように形成することもできる。
【0121】
第2凸状部22における繊維配向及び繊維密度については、該不織布150における凸状部2と同様に、溝部1における縦配向繊維が第2凸状部22の側部88に噴き寄せられることにより、第2凸状部22における側部88の目付が高く形成される。さらに該側部88は、縦方向である長手方向に配向する縦配向繊維の含有率は横方向である幅方向に配向する横配向繊維の含有率よりも高くなる。また、第2凸状部22において側部88に挟まれた中央部99は、該側部88よりも目付は低く形成されるが、溝部1の目付よりも高くなるよう形成される。
【0122】
[2.4.2]製造方法
本実施形態における不織布150の製造方法は、不織布150の製造に用いられる不織布製造装置90の噴き出し口913の態様が異なる。
【0123】
網状支持部材210の上面に載置された繊維ウェブ100に、主に気体からなる流体を噴きあてながら所定方向に移動させることにより、不織布150が形成される。主に気体からなる流体が噴きあてられる際に溝部1、凸状部2及び第2凸状部22が形成されるが、これらの形成は、不織布製造装置90における主に気体からなる流体の噴き出し口913の態様により任意に変更することができる。
【0124】
例えば、不織布150を形成するには、主に気体からなる流体が噴き出される噴き出し口913の間隔を調整した不織布製造装置90により製造することができる。例えば、噴き出し口913の間隔を第1実施形態における噴き出し口913の間隔よりも狭くすることで、凸状部2よりも厚さ方向の高さが低い第2凸状部22を形成することができる。また、噴き出し口913の間隔を第1実施形態における噴き出し口913の間隔よりも広くすることで凸状部2よりも厚さ方向の高さが高い凸状部を形成することも可能である。そして、噴き出し口913が形成される間隔において、狭い間隔と広い間隔とが交互になるように配置することにより、凸状部2と第2凸状部22とが溝部1を挟んで交互に並列的配置された該不織布150が形成される。この噴き出し口913の間隔はこれに限らず、形成したい不織布の凸状部での高さ及び第2凸状部22との配列により任意に形成することが可能である。
【0125】
本実施形態における不織布150は上述した通り、不織布製造装置90により製造することができるが、この不織布製造装置90における不織布150の製造方法における他の構成等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0126】
[2.5]第6実施形態
図15及び図16により、本発明の不織布における第6実施形態について説明する。
【0127】
図15及び図16に示すように、第6実施形態は、該不織布170の一方の面側に形成される溝部1において、窪み部3A及び突出部4Aが形成される点において第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0128】
[2.5.1]不織布
図15に示すように、本実施形態における不織布170は、該不織布170の一方の面側に複数の溝部1が並列的に略等間隔で形成された不織布である。そして、複数の溝部1それぞれの間に複数の凸状部2がそれぞれ形成されている。さらに、溝部1においては、溝部1よりも繊維密度が低い疎領域である複数の窪み部3Aが略等間隔で形成されており、該複数の窪み部3Aそれぞれの間に、疎領域以外の領域である複数の突出部4Aがそれぞれ形成されている。
【0129】
本実施形態においては、窪み部3Aは略等間隔で形成されているが、これに限らず異なる間隔で形成されてもよい。図15において該窪み部3Aは開口を示しているが、噴きあてる主に気体からなる流体の量や強さ、及び引き込み量等の諸条件により異なる。
【0130】
窪み部3Aにおける該不織布170の厚さ方向の高さは、突出部4Aにおける該不織布の厚さ方向の高さの90%以下、好ましくは0から50%、さらに好ましくは0から20%であることを例示できる。ここで、高さが0%とは窪み部3Aが開口であることを示す。
【0131】
また、窪み部3Aの一つ当たりの長手方向の長さ及び幅方向の長さは、いずれも0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmを例示することができる。そして、突出部4Aを挟んで互いに隣り合う窪み部3Aのピッチは、0.5から30mm、好ましくは1から10mmを例示することができる。
【0132】
突出部4Aにおける不織布170の厚さ方向の高さは、凸状部2の不織布170の厚さ方向の高さと同等以下、好ましくは20から100%、さらに好ましくは40から70%であることを例示できる。
【0133】
また、該突出部4Aの一つ当たりの該不織布170の長手方向における長さ及び幅方向における長さは、0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmであることを例示できる。そして、窪み部3Aを挟んで互いに隣り合う突出部4Aの頂点間のピッチは0.5から30mm、好ましくは1から10mmを例示できる。
【0134】
そして、突出部4Aの該不織布の長手方向における断面形状は、略四角状となる。尚、突出部4Aの長手方向における断面形状は、略四角状に限らず、ドーム状、台形状、三角状、Ω状等、特に限定されない。溝部1における所定の液体の広がりを抑制するため、略四角状であることが好ましい。また、過剰な外圧下で突出部4Aが肌等と接触して異物感を与えないようにするため、該突出部4Aの頂面は平面又は曲面であることが好ましい。
【0135】
また、窪み部3Aの該不織布の長手方向における断面形状は、ドーム状、台形状、Ω状、四角状、又これらの形状の上下が反転した形状等、特に限定されない。また、窪み部3
が開口である場合には、過剰な外圧がかけられた場合や高粘度の所定の液体等がもたらされた場合であっても、溝部1における所定の液体の広がりを抑制することができるので好ましい。
【0136】
溝部1における窪み部3Aを挟んで隣り合う突出部4Aにおける繊維配向は、全体として溝部1の幅方向に沿って配向している。
【0137】
該窪み部3Aが開口部である開口の場合、該開口となる領域においては、噴きあてられた主に気体からなる流体により、縦配向繊維が凸状部2側に噴き寄せられ、また、横配向繊維が突出部4A側に噴き寄せられる。したがって、開口の周囲における繊維101は、該開口の周囲を囲むように配向するようになる。このため、外圧等がかけられた場合でも開口が潰れて塞がりにくくなる。
【0138】
溝部1における突出部4Aは、該溝部1における窪み部3Aよりも繊維密度が高くなるように形成される。
【0139】
窪み部3A及び突出部4Aにおける繊維密度は、第1実施形態の凸状部2及び溝部1と同様に主に気体からなる流体の量やテンション等の諸条件により任意に調整することができる。尚、窪み部3Aは開口でなくともよい。
【0140】
窪み部3Aの繊維密度は、好ましくは0.0から0.10g/cm3を例示できる。ここで、繊維密度が0.0g/cm3であるとは、窪み部3Aが開口であることを示す。繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が窪み部3Aに一旦溜まってしまうことになる。
【0141】
該不織布170を例えば吸収性物品等の表面シートとして用いた場合、所定の液体が窪み部3Aに溜まっている際に行動変化等がなされると、所定の液体が容易に窪み部3Aから溢れ出して溝部1に広がり、さらには該不織布170の表面に広がって肌を汚してしまう場合がある。
【0142】
また、突出部4Aの繊維密度は、0.005から0.20g/cm3、好ましくは0.007から0.10g/cm3を例示できる。突出部4Aの繊維密度が0.005g/cm3より小さい場合には、過剰な外圧がかけられて凸状部2が潰されたような場合に、該突出部4Aも同様に潰されてしまい、溝部1において窪み部3Aにより形成されている空間を保持できなくなる場合がある。
【0143】
一方で、突出部4Aの繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が突出部4Aに溜まってしまい、過剰な外圧が該不織布170にかけられて肌と直接接触した場合に、湿り感を与えてしまう場合がある。
【0144】
溝部1における窪み部3Aは、凸状部2及び突出部4Aに比べて繊維101の目付が低くなるように形成される。すなわち、該不織布170において、窪み部3Aは最も目付が低くなるように形成される。
【0145】
窪み部3Aの目付は、例えば、0から100g/m2、好ましくは0から50g/m2を例示することができる。ここで、該窪み部3Aの目付が0g/m2とは、該窪み部3Aは開口であることを示す。窪み部3Aの目付が100g/m2より大きいと、溝部1に落とし込んだ所定の液体が窪み部3Aに一旦溜まってしまうことになる。これにより、例えば該不織布170を例えば吸収性物品等の表面シートとして用いた場合、所定の液体が窪み部3Aに溜まっている状態で行動変化等がなされると、所定の液体が容易に窪み部3Aから溢れ出して溝部1に広がり、さらには該不織布170の表面に広がって肌を汚してしまう場合がある。
【0146】
溝部1における突出部4Aは、窪み部3Aに比べて繊維101の目付が高くなるように形成されている。例えば、突出部4Aの目付は、5から200g/m2、好ましくは10から100g/m2を例示できる。該突出部4Aの目付が5g/m2より小さい場合には、過剰な外圧がかけられて凸状部2が潰されたような場合に、該突出部4Aも同様に潰されてしまい、溝部1において窪み部3Aにより形成されている空間を保持できなくなる場合がある。また、突出部4Aの目付が200g/m2より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が突出部4Aに溜まってしまい、過剰な外圧が該不織布170にかけられて肌と直接接触した場合に、湿り感を与えてしまう場合がある。
【0147】
[2.5.2]製造方法
以下に該不織布170を製造する方法について説明する。まず、第1実施形態と同様に繊維ウェブ100を通気性支持部材である図16に示す支持部材270の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を支持部材270により下側から支持する。
【0148】
そして、繊維ウェブ100を支持部材270により支持したまま所定方向に移動させる。さらに移動されている繊維ウェブ100の上面側から主に気体からなる流体を噴きあてることにより、該不織布170を製造することができる。
【0149】
ここで、支持部材270は、例えば、略平行に並べられた所定の太さのワイヤ271に対し、他の所定の太さのワイヤ272を複数のワイヤ271同士を橋渡しするようにスパイラル状に交互に巻き付けるように形成したスパイラル織の通気性ネットである。
【0150】
該支持部材270におけるワイヤ271及びワイヤ272が不通気部となる。また、該支持部材270におけるワイヤ271及びワイヤ272で囲まれた部分が、孔部273となる。
【0151】
このような支持部材の場合、織り込み方や糸の太さ、糸形状を部分的に変化させることで、部分的に通気度を変化させることができる。例えば、ワイヤ271をステンレスの円形糸とし、ワイヤ272をステンレスの平形糸としてスパイラル織をした支持部材270を用いることができる。
【0152】
尚、不通気部であるワイヤ271及びワイヤ272は、例えば、複数のワイヤ(例えば2本)をよりあわせてワイヤ271又はワイヤ272として、よりあわせたワイヤ間に隙間が生じることにより、一部の主に気体からなる流体が通気するようにしてもよい。
【0153】
但し、このような場合の不通気部となるワイヤ271及びワイヤ272(特にワイヤの交点部分)の通気度は、通気部である孔部273における通気度に対して90%以下、好ましくは0から50%、さらに好ましくは0から20%を例示できる。ここで0%とは、実質的に主に気体からなる流体が通気できないことを示す。
【0154】
また、通気部となる孔部273等の領域における通気度は、例えば10000から60000cc/cm2・min、好ましくは20000から50000cc/cm2・minを例示することができる。但し、他の通気性支持部材として例えば金属のプレート等をくりぬいて通気部を形成したような場合は、主に気体からなる流体の該プレート部分への抵抗が無くなるため、上述した数値以上の通気度となる場合がある。
【0155】
支持部材において、不通気部となる領域が通気部を形成する領域よりも表面のすべり性が高い方が好ましい。すべり性が高いことにより、主に気体からなる流体が噴きあてられる領域と不通気部とが交差する領域において繊維101が移動しやすくなるため、窪み部3A及び突出部4Aの成形性を高めることができる。
【0156】
支持部材270に支持された繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴きあてると、該主に気体からなる流体が噴きあてられた領域が溝部1となり、該溝部1が形成されることにより、相対的に突出する部分が凸状部2となる。溝部1及び凸状部2の形成については、第1実施形態に述べた通りである。
【0157】
また、溝部1において、支持部材270におけるワイヤ271とワイヤ272との交点部分に主に気体からなる流体が噴きあてられると、該主に気体からなる流体が該交点部分に跳ね返される。このため、該交点部分に支持されていた繊維101が前後左右に噴き寄せられて窪み部3Aが形成される。
【0158】
溝部1における支持部材270の孔部273の上面にあった領域は、主に気体からなる流体が噴きあてられることによって溝部1が形成され、溝部1において窪み部3Aが形成されることにより相対的に突出する突出部4Aが形成される。
【0159】
窪み部3Aでは、主に気体からなる流体が噴きあてられることにより、溝部1に略平行するように配向していた繊維101が凸状部2側に噴き寄せられ、また、溝部1に沿う方向に交差する方向に配向していた繊維101が突出部4A側に噴き寄せられる。このため、窪み部3Aでは目付が低く形成される。
【0160】
一方、突出部4Aにおいては、窪み部3Aから繊維101が噴き寄せられることにより、窪み部3Aよりも目付が高く形成される。
【0161】
また、該不織布170を製造する他の方法として、まず第1実施形態のように溝部1及び凸状部2が形成された不織布を製造し、その後、溝部1に対してエンボス加工を行うことにより、窪み部3A及び突出部4Aを形成して該不織布170を製造してもよい。この場合の窪み部3Aと突出部4Aにおける繊維密度や目付等の関係は本実施形態で述べた関係と逆となる場合がある。すなわち、突出部4Aにおける繊維密度や目付は、窪み部3Aにおける繊維密度や目付よりも低くなる場合がある。
【0162】
さらに該不織布170を製造する他の方法として、予め繊維ウェブ100に凸状部2や溝部1のような凹凸を形成しておき、その繊維ウェブ100にさらに繊維同士が自由度を有する他の繊維ウェブを重ね合わせた上に主に気体からなる流体を噴きあてるようにしてもよい。すると、噴きあてられた主に気体からなる流体により、上層の繊維ウェブにおいては凸状部と溝部とが形成されるが、溝部においては目付が低いことにより下層の繊維ウェブに形成されていた凹凸が露出して、本実施形態における突出部及び窪み部が形成される。その後、熱処理を行うことにより上層の繊維ウェブと下層の繊維ウェブとを一体化させる。
【0163】
本実施形態における不織布170は上述した不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布170の製造方法等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0164】
[3]実施例
[3.1]第1実施例
<繊維構成>
低密度ポリエチレン(融点110℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Aと、高密度ポリエチレン(融点135℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、繊維Aとの違いが撥水油剤のコーティングがされた繊維Bとの混綿を使用する。繊維Aと繊維Bとの混合比は、70:30であり、目付は40g/m2に調整された繊維集合体を使用した。
【0165】
繊維Aと繊維Bとの鞘成分には融点差があることで、繊維同士の交点強度に差ができるため、不織布の柔軟性が高まる。具体的には、オーブン温度を例えば120℃で設定すると繊維A同士の交点及び繊維Aと繊維Bとの交点では低密度ポリエチレンが溶融するため繊維同士は熱融着し、さらに、繊維A同士の交点強度の方が溶融する低密度ポリエチレンの量が多いため高くなる。また、繊維B同士は高密度ポリエチレンが溶融しないため熱融着しない。つまり、この時の交点強度の関係は、繊維A同士の交点強度が繊維Aと繊維Bとの交点強度よりも大きく、また、繊維Aと繊維Bとの交点強度が繊維B同士の交点強度よりも大きくなる。
【0166】
<製造条件>
図9における噴き出し口913は、直径が1.0mm、ピッチが6.0mmで複数形成される。また、噴き出し口913の形状は真円で噴き出し口913の断面形状は円筒型である。噴き出し部910の幅は500mmである。温度が105℃、風量が1200l/分の条件で熱風を噴きあてた。
【0167】
先に示した繊維構成で速度20m/分のカード機によって開繊して繊維ウェブを作成し、幅が450mmとなるように繊維ウェブをカットする。そして、速度3m/分で20メッシュの通気性ネット上に繊維ウェブを搬送する。また、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913による製造条件で熱風を繊維ウェブに噴きあてる一方で、通気性ネットの下方から噴きあてる熱風量より少ない吸収量で吸引(吸気)する。その後、通気性ネットで搬送した状態で温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内を約30秒で搬送させる。
【0168】
<結果>
・凸状部:目付は51g/m2、厚みが3.4mm(頂部の厚みが2.3mm)、繊維密度が0.03g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.6mm、ピッチが5.9mmであった。
・溝部:目付は24g/m2、厚みが1.7mm、繊維密度が0.01g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.2mm、ピッチが5.8mmであった。
・形状:溝部の裏面が該不織布の最裏面となり、凸状部の裏面形状は該凸状部と同様の方向に盛り上がり、該不織布の最裏面を形成しないように形成された。また、凸状部の断面形状は略ドーム状に形成され、凸状部と溝部は長手方向に沿って延びるように連続的に形成された。また、凸状部と溝部は、幅方向に互いに繰り返すように形成された。さらに凸状部の最表面では、繊維同士の交点強度が部分的に異なるように形成され、繊維密度が後に説明する他の実施例において形成された不織布の繊維密度に比べて最も低くなるように形成された。
【0169】
[3.2]第2実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0170】
<製造条件>
先に示した繊維構成の繊維ウェブを通気性ネットに載置し、温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内に約30秒間搬送する。オーブン内から搬出した直後(約2秒後)に、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913の設計で温度120℃、風量2200l/分の条件で熱風を噴きあてる。
【0171】
<結果>
・凸状部:目付は34g/m2、厚みが2.8mm、繊維密度が0.04g/cm3(頂部の厚みが2.3mm)であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.0mm、ピッチが6.1mmであった。
・溝部:目付は21g/m2、厚みが1.1mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は2.1mm、ピッチが6.1mmであった。
・形状:凸状部及び溝部が形成された。
【0172】
[3.3]第3実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0173】
<製造条件>
先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913を用いて温度が105℃、風量1000l/分の条件で熱風を噴きあてる一方で、通気性ネットの下方から、噴きあてられる熱風量とほぼ同等又は若干多く吸引(吸気)する。
【0174】
<結果>
・凸状部:目付は49g/m2、厚みが3.5mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.7mm、ピッチが6.1mmであった。
・溝部:目付は21g/m2、厚みが1.8mm、繊維密度が0.01g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.4mm、ピッチが6.1mmであった。
・形状:凸状部及び溝部が形成され、凸状部の裏面形状は下方と接触するように略平坦となった。
【0175】
[3.4]第4実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0176】
<製造条件>
先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913を用いて温度が80℃、風量が1800l/分の条件で空気流を噴きあてる。そして、先に示した繊維構成の繊維ウェブを長手方向に5mmのピッチ、及び幅方向に5mmのピッチで千鳥状に配置されたニードルにより、200回/分、長手方向に沿って向かう方向に速度3m/分でニードルパンチを施して繊維同士を半交絡させる。その後、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913による製造条件で空気流を噴きあてる。また同時に通気性ネットの下方から熱風量とほぼ同等もしくは若干多い吸収量で吸引(吸気)する。
【0177】
<結果>
・凸状部:目付は45g/m2、厚みが2.3mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.3mm、ピッチが5.8mmであった。
・溝部:目付は17g/m2、厚みが0.8mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.0mm、ピッチが5.9mmであった。
・形状:凸状部と溝部が長手方向に沿って延びるように連続的に形成された。また、該凸状部と溝部とは部分的に下方へ向く交絡点を有し、幅方向において互いに繰り返すように形成された。
【0178】
[4]用途例
本発明における不織布の用途として、例えば、生理用ナプキン、ライナー、おむつ等の吸収性物品における表面シート等を例示できる。この場合、凸状部は肌面側、裏面側のどちらであってもよいが、肌面側にすることによって、肌との接触面積が低下するため体液による湿り感を与えにくい場合がある。また、吸収性物品の表面シートと吸収体との間の中間シートとしても使用できる。表面シートもしくは吸収体との接触面積が低下するため、吸収体からの逆戻りがしにくい場合がある。また、吸収性物品のサイドシートや、おむつ等の外面(アウターバック)、面ファスナー雌材等でも、肌との接触面積の低下やクッション感があることから用いることができる。また、床や身体に付着したゴミや垢等を除去するためのワイパー、マスク、母乳パッド等多方面に使用することができる。
【0179】
[4.1]吸収性物品の表面シート
本発明における不織布の用途として、図17、図18に示すように、例えば、凸状部と溝部とを有し、溝部の目付が凸状部よりも低い不織布を吸収性物品の表面シート301、302として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が肌側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0180】
該不織布を吸収性物品の表面シート301、302として使用した場合、所定の液体が排泄されると、該液体は主として溝部に落とし込まれる。本発明における不織布は、溝部における目付が低い。すなわち、単位面積当たりの繊維本数が少ないことで液体透過の阻害要素が少ないため、液体を速やかに下方へ移行させることができる。
【0181】
さらに、溝部における目付が低いとしても、溝部における繊維の大部分が幅方向に配向しているので、幅方向への引張強度が高く、吸収性物品の着用中に幅方向への摩擦等の力が加わって該表面シート301、302が破損することを防止することができる。
【0182】
一方で、凸状部は相対的に目付が高い。これは、溝部を形成する際に主に気体からなる流体により繊維が移動し、その移動した繊維によって凸状部の側部が形成されているためである。凸状部における側部は、繊維同士が密集しているため剛性が高い。さらに凸状部において側部に挟まれた中央部には、厚さ方向に配向する繊維が多く含まれているため、荷重が凸状部に加わっても容易に潰されることを防止し、たとえ凸状部が荷重により潰されたとしても圧縮回復性が高い。
【0183】
これにより、体勢が変化することにより表面シート301、302にかかる荷重が変化しても、肌との接触面積を低く保つことができるため、触感性を維持することができ、さらには、一旦吸収体で吸収した液体が逆戻りしたとしても肌に広く再付着しにくくなる。
【0184】
[4.2]吸収性物品の中間シート
本発明における不織布の用途として、図19に示すように、例えば、溝部と凸状部とを有し、溝部の目付が相対的に低い不織布を吸収性物品の中間シート311として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が表面シート310側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0185】
凸状部が形成された面が表面シート310側になるように該不織布を中間シート311として配置することにより、表面シート310と中間シート311との間に複数の空間を設けることができる。このため、多量の液体が短時間で排泄された場合でも液体透過の阻害要素が少ないため、該液体が表面シート310で広く広がってしまうことを防止できる。
【0186】
さらには、一旦中間シー311を透過して吸収体で吸収した液体が逆戻りしたとしても、中間シート311と表面シート310との接触率が低いため、該液体が表面シート310に戻って肌に広く再付着しにくくなる。
【0187】
また、該中間シート311における凸状部の中央部は側部や溝部に比べて厚さ方向に配向する繊維が多く含まれ、凸状部の頂点と表面シート310とが接触しているため、表面シート310に残留した液体を厚さ方向へ引き込みやすくなる。これにより、表面シート310に液体が残留しにくくなる。
【0188】
このように、表面シート310でのスポット性と液体の低残留性を得ることができ、肌に液体を広く長時間付着させることを防止することができる。さらには、凸状部の側部は、移動された繊維によって主に形成されているため、長手方向に配向する縦配向繊維の含有率が高い。これにより、表面シート310から中間シート311の側部に移行した例えば経血等の液体を長手方向へと誘導することができる。したがって、幅方向へ液体が拡散しても吸収性物品からの漏れを誘発することを防止し、吸収体の吸収効率を高めることができる。
【0189】
[4.3]吸収性物品のアウターバック
本発明における不織布の用途として、図20に示すように、例えば、溝部及び凸状部を有し、溝部における繊維密度が相対的に低い不織布を、例えばオムツ等の吸収性物品の外面(アウターバック321)として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が該吸収性物品の外側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0190】
該アウターバック321における凸状部が形成された面が吸収性物品の外側となるように配置されるため、該吸収性物品を使用する際に主として手に触れた場合に触感が良くなる。また、溝部における繊維密度が低いため、通気性に優れる。
【0191】
[5]各構成物
以下に、各構成物について詳述する。
【0192】
[5.1]不織布関連
[5.1.1]繊維集合体
繊維集合体は、略シート状に形成された繊維集合体であって該繊維集合体を構成する繊維が自由度を有する状態であるものである。言い換えると、繊維同士の自由度を有する繊維集合体である。ここで、繊維同士の自由度とは、繊維集合体である繊維ウェブが主に気体からなる流体によって繊維が自由に移動することが可能な程度のことをいう。この繊維集合体は、例えば、複数の繊維を混合した混合繊維を所定厚さの繊維層を形成するように噴き出すことで形成することができる。また、例えば、複数の異なる繊維それぞれを、複数回に分けて積層させて繊維層を形成するように噴出することで形成することができる。
【0193】
本発明における繊維集合体として、例えば、カード法により形成される繊維ウェブ、もしくは熱融着されて繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、エアレイド法により形成されたウェブ、もしくは熱融着されて繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、ポイントボンド法でエンボスされた熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、スパンボンド法により紡糸されエンボスされる以前の繊維集合体、もしくはエンボスされた熱融着が固化する以前の繊維集合体を例示できる。また、ニードルパンチ法により形成され半交絡された繊維ウェブを例示できる。また、スパンレース法により形成され半交絡された繊維ウェブを例示できる。また、メルトブローン法により紡糸され繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維集合体を例示できる。また、溶剤接着法によって形成された溶剤により繊維同士が固化する以前の繊維集合体を例示できる。
【0194】
また、好ましくは、空気(気体)流によって繊維を再配列しやすいのは、比較的長繊維を使用するカード法で形成した繊維ウェブであり、さらには繊維同士の自由度が高く交絡のみで形成される熱融着以前のウェブを例示できる。また、複数の空気(気体)流により溝部(凹凸)等を形成した後に、その形状を保持したまま不織布化させるには、所定の加熱装置等によりオーブン処理(加熱処理)することで繊維集合体に含まれる熱可塑性繊維を熱融着させるスルーエアー法が好ましい。
【0195】
[5.1.2]繊維
繊維集合体を構成する繊維(例えば、図1に示す繊維ウェブ100を構成する繊維101)として、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂で構成し、各樹脂を単独、もしくは複合した繊維が挙げられる。
【0196】
複合形状は、例えば、芯成分の融点が鞘成分より高い芯鞘タイプ、芯鞘の偏芯タイプ、左右成分の融点が異なるサイドバイサイドタイプが挙げられる。また、中空タイプや、扁平やY型やC型等の異型や、潜在捲縮や顕在捲縮の立体捲縮繊維、水流や熱やエンボス等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
【0197】
また、3次捲縮形状を形成するために、所定の顕在捲縮繊維や潜在捲縮繊維を配合することができる。ここで、3次元捲縮形状とはスパイラル状・ジグザグ状・Ω状等であり、繊維配向は主体的に平面方向へ向いていても部分的には繊維配向が厚み方向へ向くことになる。これにより、繊維自体の挫屈強度が厚み方向へ働くため、外圧が加わっても嵩が潰れにくくなる。さらには、これらの中でも、スパイラル状の形状であれば、外圧が解放されたときに形状が元に戻ろうとするため、過剰な外圧で嵩が若干潰れても外圧解放後には元の厚みに戻りやすくなる。
【0198】
顕在捲縮繊維は、機械捲縮による形状付与や、芯鞘構造が偏芯タイプ、サイドバイサイド等で予め捲縮されている繊維の総称である。潜在捲縮繊維は、熱を加えることで捲縮が発現するものである。
【0199】
機械捲縮とは、紡糸後の連続で直線状の繊維に対し、ライン速度の周速差・熱・加圧によって制御でき、単位長さ当たりの捲縮個数が多いほど、外圧下に対する挫屈強度を高めることができる。例えば、捲縮個数は10から35個/inch、さらには15から30個/inchの範囲であることが好ましい。
【0200】
熱収縮による形状付与とは、融点の異なる2つ以上の樹脂からなり、熱を加えると融点差により熱収縮率が変化しているため、3次元捲縮する繊維のことである。繊維断面の樹脂構成は、芯鞘構造の偏芯タイプ、左右成分の融点が異なるサイドバイサイドタイプが挙げられる。このような繊維の熱収縮率は、例えば、5から90%、さらには10から80%の範囲を好ましい値として例示できる。
【0201】
熱収縮率の測定方法は、(1)測定する繊維100%で200g/m2のウェブを作成し、(2)250×250mmの大きさにカットしたサンプルをつくり、(3)このサンプルを145℃(418.15K)のオーブン内に5分間放置し、(4)収縮後の長さ寸法を測定し、(5)熱収縮前後の長さ寸法差から算出することができる。
【0202】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、繊度は、例えば、液体の入り込みや肌触りを考慮すると、1.1から8.8dtexの範囲であることが好ましい。
【0203】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、繊維集合体を構成する繊維として、例えば、肌に残るような少量な経血や汗等をも吸収するために、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン等のセルロース系の液親水性繊維が含まれていてもよい。ただし、セルロース系繊維は一度吸収した液体を排出しにくいため、例えば、全体に対し0.1から5質量%の範囲で混入する場合を好ましい態様として例示できる。
【0204】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、例えば、液体の入り込み性やリウェットバックを考慮して、前記に挙げた疎水性合成繊維に、親水剤や撥水剤等を練り込んだり、コーティング等されていてもよい。また、コロナ処理やプラズマ処理によって親水性を付与してもよい。また、撥水性繊維を含んでもよい。ここで、撥水性繊維とは、既知の撥水処理を行った繊維のことをいう。
【0205】
また、白化性を高めるために、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーが含有されていてもよい。芯鞘タイプの複合繊維である場合は、芯にのみ含有していてもよいし、鞘にも含有してあってもよい。
【0206】
また、先に示した通り、空気流によって繊維を再配列しやすいのは比較的長繊維を使用するカード法で形成した繊維ウェブであり、複数の空気流により溝部(凹凸化)等を形成した後にその形状を保持したまま不織布化させるには、オーブン処理(加熱処理)で熱可塑性繊維を熱融着させるスルーエアー法が好ましい。この製法に適した繊維としては、繊維同士の交点が熱融着するために芯鞘構造、サイドバイサイド構造の繊維を使用することが好ましく、さらには鞘同士が確実に熱融着しやすい芯鞘構造の繊維で構成されていることが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとからなる芯鞘複合繊維や、ポリプロピレンとポリエチレンとからなる芯鞘複合繊維を用いることが好ましい。これらの繊維は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維長は20から100mm、特には35から65mmが好ましい。
【0207】
[5.2]不織布製造装置関連
[5.2.1]主に気体からなる流体
本発明にける主に気体からなる流体は、例えば、常温もしくは所定温度に調整された気体、又は、該気体に固体もしくは液体の微粒子が含まれるエーロゾルを例示できる。
【0208】
気体として、例えば、空気、窒素等を例示できる。また、気体は、水蒸気等の液体の蒸気を含むものである。
【0209】
エーロゾルとは、気体中に液体又は固体が分散したものであり、以下にその例を挙げる。例えば、着色のためのインクや、柔軟性を高めるためのシリコン等の柔軟剤や、帯電防止及びヌレ性を制御するための親水性もしくは撥水性の活性剤や、流体のエネルギーを高めるための酸化チタン、硫酸バリウム等の無機フィラーや、流体のエネルギーを高めると共に加熱処理において凹凸成形維持性を高めるためのポリエチレン等のパウダーボンドや、かゆみ防止のための塩酸ジフェンヒドラミン、イソプロピルメチルフェノール等の抗ヒスタミン剤や、保湿剤や、殺菌剤等を分散させたものを例示できる。ここで、固体は、ゲル状のものを含む。
【0210】
主に気体からなる流体の温度は適宜調整することができる。繊維集合体を構成する繊維の性質や、製造すべき不織布の形状に応じて適宜調整することができる。
【0211】
ここで、例えば、繊維集合体を構成する繊維を好適に移動させるには、主に気体からなる流体の温度は、ある程度高い温度である方が繊維集合体を構成する繊維の自由度が増すため好ましい。また、繊維集合体に熱可塑性繊維が含まれる場合には、主に気体からなる流体の温度を該熱可塑性繊維が軟化可能な温度にすることで、主に気体からなる流体が噴きあてられた領域等に配置される熱可塑性繊維を軟化もしくは溶融させると共に、再度硬化させるよう構成することができる。
【0212】
これにより、例えば、主に気体からなる流体が噴きあてられることで不織布の形状が維持される。また、例えば、繊維集合体が所定の移動手段により移動される際に該繊維集合体(不織布)が散けない程度の強度が与される。
【0213】
主に気体からなる流体の流量は、適宜調整することができる。繊維同士が自由度を有する繊維集合体の具体例として、例えば、鞘に高密度ポリエチレン、芯にポリエチレンテレフタレートからなり、繊維長が20から100mm、好ましくは35から65mm、繊度が1.1から8.8dtex、好ましくは2.2から5.6dtexの芯鞘繊維を主体とし、カード法による開繊であれば繊維長が20から100mm、好ましくは35から65mm、エアレイド法による開繊であれば繊維長が1から50mm、好ましくは3から20mmの繊維を用い、10から1000g/m2、好ましくは15から100g/m2で調整した繊維ウェブ100を例示できる。主に気体からなる流体の条件として、例えば、図8又は図9に示す複数の噴き出し口913が形成された噴き出し部910(噴き出し口913:直径が0.1から30mm、好ましくは0.3から10mm:ピッチが0.5から20mm、好ましくは3から10mm:形状が真円、楕円や長方形)において、温度が15から300℃(288.15Kから573.15K)、好ましくは100から200℃(373.15Kから473.15K)の熱風を、風量3から50[L/(分・孔)]、好ましくは5から20[L/(分・孔)]の条件で繊維ウェブ100噴きあてる場合を例示できる。例えば、主に気体からなる流体が上記条件で噴きあてられた場合に、構成する繊維がその位置や向きを変更可能である繊維集合体が、本発明における繊維集合体における好適なものの一つである。このような繊維、製造条件で作成することにより、例えば図2、3で示される不織布を成形できる。溝部1や凸状部2の寸法や目付は以下の範囲で得ることができる。溝部1では、厚み0.05から10mm、好ましくは0.1から5mmの範囲、幅は0.1から30mm、好ましくは0.5から5mmの範囲、目付は2から900g/m2、好ましくは10から90g/m2の範囲である。凸状部2では、厚み0.1から15mm、好ましくは0.5から10mmの範囲、幅は0.5から30mm、好ましくは1.0から10mmの範囲、目付は5から1000g/m2、好ましくは10から100g/m2の範囲であるまた、おおよそ上記数値範囲で不織布を作成できるが、この範囲に限定されるものではない。
【0214】
[5.2.2]通気性支持部材
通気性支持部材200として、繊維ウェブ100を支持する側が略平面状又は略曲面状であると共に、略平面状又は略曲面状における表面は略平坦である支持部材を例示できる。略平面状又は略曲面状として、例えば、板状や円筒状を例示できる。また、略平坦状とは、例えば、支持部材における繊維ウェブ100を載置する面自体が凹凸状等に形成されていないことをいう。具体的には、網状支持部材210における網が凹凸状等に形成されていない支持部材を例示することができる。
【0215】
この通気性支持部材として、例えば、板状の支持部材や円筒状の支持部材を例示することができる。具体的には、上述した網状支持部材210、支持部材270を例示することができる。
【0216】
ここで、通気性支持部材200は、不織布製造装置90に着脱可能に配置することがきる。これにより、所望の不織布に応じた通気性支持部材200を適宜配置することができる。言い換えると、不織布製造装置90において、通気性支持部材200は、異なる複数の通気性支持部材から選択される他の通気性支持部材と交換可能である。
【0217】
図4に示す網状支持部材210、図16における支持部材270について以下に説明する。この通気性の網状部分として、例えば、ポリエステル・ポリフェニレンサルファイド・ナイロン・導電性モノフィラメント等の樹脂による糸、もしくはステンレス・銅・アルミ等の金属による糸等で、平織・綾織・朱子織・二重織・スパイラル織等で織り込まれた通気性ネットを例示できる。
【0218】
ここで、この通気性ネットにおける通気度は、例えば、織り込み方や糸の太さ、糸形状を部分的に変化させることで、部分的に通気度を変化させることができる。具体的には、ポリエステルによるスパイラル織の通気性メッシュ、ステンレスによる平形糸と円形糸によるスパイラル織の通気性メッシュを例示できる。
【0219】
板状支持部材として、例えば、ステンレス・銅・アルミ等の金属で作成されたスリーブを例示できる。スリーブは、上記金属の板を所定パターンで部分的に抜いたものを例示できる。この金属がくり抜かれた箇所は通気部となり、金属がくり抜かれていない箇所は不通気部となる。また、上記と同様に不通気部においては、表面のすべり性を高めるためにその表面は平滑であることが好ましい。
【0220】
スリーブとして、例えば、長さが3mmで幅40mmの各角を丸くした横長方形で金属がくり抜かれた孔部が、ライン流れ方向(移動方向)においては2mmの間隔を空け、幅方向では3mmの間隔を空けて格子状に配置される、厚みが0.3mmのステンレス製のスリーブを例示することができる。
【0221】
また、孔部が千鳥状に配置されたスリーブを例示できる。例えば、直径4mmの円形で金属がくり抜かれた孔部が、ライン流れ方向(移動方向)においてピッチ12mm、幅方向ではピッチ6mmの千鳥状に配置される、厚みが0.3mmのステンレス製のスリーブを例示できる。このように、くり抜かれるパターン(形成される孔部)や配置は適時設定できる。
【0222】
さらに、所定の起伏が設けられた図12に示す網状支持部材260を例示できる。例えば、主に気体からなる流体が直接噴きあてられない箇所がライン流れ方向(移動方向)へ交互に起伏(例えば、波状)を有する通気性支持部材を例示できる。このような形状の網状支持部材260を用いることで、例えば、所定の開口部が形成されると共に、全体的に網状支持部材260における交互に起伏(例えば、波状)した形状に形成された不織布を得ることができる。
【0223】
[5.2.3]噴きあて手段
噴き出し部910を、主に気体からなる流体の向きを変更可能にすることで、例えば、形成される凹凸における凹部(溝部)の間隔や、凸状部の高さ等を適宜調整することができる。また、例えば、上記流体の向きを自動的に変更可能に構成することで、例えば、溝部等を蛇行状(波状、ジグザグ状)や他の形状となるよう適宜調整することができる。また、主に気体からなる流体の噴き出し量や噴き出し時間を調整することで、溝部や開口部の形状や形成パターンを適宜調整することができる。主に気体からなる流体の繊維ウェブ100に対する噴きあて角度は、垂直であってもよく、また、繊維ウェブ100の移動方向Fにおいて、該移動方向Fであるライン流れ方向へ所定角度だけ向いていても、ライン流れ方向とは逆へ所定角度だけ向いていてもよい。
【0224】
[5.2.4]加熱手段
所定の開口部が形成された不織布170における繊維101を接着させる方法として、例えば、ニードルパンチ法、スパンレース法、溶剤接着法による接着や、ポイントボンド法やエアースルー法による熱接着が例示できるが、形成された所定の開口部の形状を維持するためは、エアースルー法が好ましい。そして、例えば、ヒータ部950によるエアースルー法における熱処理が好ましい。
【0225】
[5.2.5]その他
ヒータ部950により加熱されて製造された不織布は、コンベア930と所定方向Fにおいて連続するコンベア940により、例えば、不織布を所定形状に切断する工程や巻き取る工程に移動される。コンベア940は、コンベア930と同様に、ベルト部949と、回転部941等を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】繊維ウェブの斜視図である。
【図2】第1実施形態の不織布における平面図及び底面図である。
【図3】図2における領域Xの拡大斜視図である。
【図4】網状支持部材の平面図及び斜視図である。
【図5】図1の繊維ウェブが下面側を図4の網状支持部材に支持された状態で上面側に気体を噴きあてられて図2の第1実施形態の不織布が製造された状態を示す図である。
【図6】第1実施形態の不織布製造装置を説明する側面図である。
【図7】図6の不織布製造装置を説明する平面図である。
【図8】図6における領域Zの拡大斜視図である。
【図9】図8における噴き出し部の底面図である。
【図10】第2実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図11】第3実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図12】第3実施形態における網状支持部材の拡大斜視図である。
【図13】第4実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図14】第5実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図15】第6実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図16】第6実施形態における支持部材の拡大平面図である。
【図17】本発明にかかる不織布を生理用ナプキンの表面シートに使用した場合の斜視断面図である。
【図18】本発明にかかる不織布をオムツの表面シートに使用した場合の斜視図である。
【図19】本発明にかかる不織布を吸収性物品の中間シートとして使用した場合の斜視断面図である。
【図20】本発明にかかる不織布を吸収性物品のアウターバックとして使用した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0227】
1 溝部
2 凸状部
100 繊維ウェブ
110 不織布
210 網状支持部材
910 噴き出し部
920 送気管
915 吸引部
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不織布は、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生用品、ワイパー等の清掃用品、マスク等の医療用品と、幅広い分野に使用されている。このように不織布は、異なる様々な分野で使用されるが、実際に各分野の製品に使用される場合には、それぞれの製品の用途に適した性質や構造となるよう製造されることが必要である。
【0003】
不織布は、例えば、乾式法や湿式法等により繊維層(繊維ウェブ)を形成し、ケミカルボンド法やサーマルボンド法等により繊維層を形成する繊維同士を結合させることで形成される。繊維層を形成する繊維を結合させる工程において、この繊維層に多数のニードルを繰り返し突き刺す方法や、水流を噴射する方法等の繊維層に外部から物理的な力を加えることを含む方法も存在する。
【0004】
しかし、これらの方法は、あくまで繊維同士を交絡させるだけであり、繊維層における繊維の配向や配置、また、繊維層の形状等を調整するものではなかった。つまり、これらの方法で製造されるのは単なるシート状の不織布であった。
【0005】
また、例えば吸収性物品の表面シート等に用いるための不織布においては、排泄物等の所定の液体がもたらされた場合に、肌への感触を維持又はよくするため、凹凸のある不織布等が望ましいといわれている。そして、熱収縮性の異なる繊維からなる複数の繊維層を積層して熱融着等をさせ、所定の層の熱収縮により表面に凹凸を形成した不織布及びその製造方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3587831号公報
【0006】
また、凹凸の形成時において、複数の繊維層を積層し、各繊維層を熱融着により一体化しているため、熱融着された多数の領域は繊維密度が高まり、さらにはフィルム化されている場合には、より一層排泄物等の所定の液体を素早く下方へ透過させにくくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1において開示されている不織布は、熱収縮した熱収縮性繊維を含む第1繊維層の片面又は両面に非熱収縮性繊維からなる第2繊維層が積層され、多数の熱融着部により一体化されており、該熱融着部においては第1繊維層の熱収縮によって第2繊維層が突出して多数の凸部を形成している。
【0008】
つまり、特許文献1における不織布又は不織布製造方法においても、繊維ウェブを凹凸に形成するためには、異なる性状を有する複数の繊維層が必要であるため、製造工程が煩雑である。また、熱収縮時に第1繊維層と第2繊維層とが剥離してしまうと、第2繊維層が凸部を形成できなくなる。このため、第1繊維層と第2繊維層との多数の熱融着部は確実に融着させる必要がある。これによって熱融着部の密度が高くなり、さらにはフィルム化されてしまい、その領域が排泄物等の所定の液体を素早く透過させにくくするという課題がある。そして、これらが本発明の課題といってよい。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、液体を素早く透過させやすく、少なくとも目付が調整された不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、所定の通気性支持部材により下面側から支持される繊維ウェブに、上面側から気体を噴きあてて該繊維ウェブを構成する繊維を移動させることにより、少なくとも目付を調整することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)主に気体からなる流体を繊維集合体に噴きあてることにより形成される、縦方向と横方向とを有する不織布であって、前記縦方向に沿って形成された複数の低目付部と、前記複数の低目付部それぞれに沿って隣接するように形成された複数の高目付部と、を有し、前記複数の低目付部それぞれにおける目付は、前記複数の高目付部それぞれにおける目付より低い、不織布。
【0012】
(2)前記複数の低目付部それぞれにおける繊維密度は、前記複数の高目付部それぞれにおける繊維密度以下である(1)に記載の不織布。
【0013】
(3)前記複数の低目付部は、横配向繊維の含有率が、縦配向繊維の含有率よりも高い(1)又は(2)に記載の不織布。
【0014】
(4)前記複数の低目付部それぞれは、該不織布における一方の面側であって該不織布における厚さ方向に窪む複数の溝部であり、前記複数の高目付部は、前記一方の面側において前記厚さ方向に突出する複数の凸状部である(1)から(3)のいずれかに記載の不織布。
【0015】
(5)前記複数の溝部それぞれにおける目付は、前記複数の凸状部それぞれにおける目付の90%以下である(4)に記載の不織布。
【0016】
(6)前記複数の溝部それぞれにおける目付は3g/m2から200g/m2であり、
前記複数の凸状部それぞれにおける目付は15g/m2から250g/m2である(4)又は(5)に記載の不織布。
【0017】
(7)前記複数の凸状部それぞれにおける繊維密度は、0.20g/cm3以下であり、前記複数の溝部それぞれにおける繊維密度は、0.18g/cm3以下である(4)から(6)のいずれかに記載の不織布。
【0018】
(8)前記複数の溝部それぞれにおける、前記厚さ方向の高さは、前記凸状部の前記高さの90%以下である、(4)から(7)のいずれかに記載の不織布。
【0019】
(9)前記複数の溝部それぞれは、該溝部の底部に形成される該底部の平均目付よりも目付が低い複数の領域を備える(4)から(8)のいずれかに記載の不織布。
【0020】
(10)前記複数の領域のそれぞれは、開口部である(9)に記載の不織布。
【0021】
(11)前記複数の開口部それぞれの周縁における繊維は、前記周縁に沿うように配向する(10)に記載の不織布。
【0022】
(12)前記複数の凸状部における所定の凸状部は、前記複数の溝部における所定の溝部を挟んで隣り合う凸状部と前記厚さ方向の高さが異なる(4)から(11)のいずれかに記載の不織布。
【0023】
(13)前記複数の凸状部それぞれにおける頂部は略扁平状である(4)から(12)のいずれかに記載の不織布。
【0024】
(14)前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側には、前記複数の凸状部それぞれにおける突出方向と反対側に突出する複数の領域が形成される、(4)から(13)のいずれかに記載の不織布。
【0025】
(15)前記縦方向において波状に起伏する(1)から(14)のいずれかに記載の不織布。
【0026】
(16)前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側は、略平坦である(4)から(14)のいずれかに記載の不織布。
【0027】
(17)前記繊維集合体を構成する繊維は撥水性の繊維を含んでいる(1)から(16)のいずれかに記載の不織布。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、液体を透過させやすく、少なくとも目付が調整された不織布を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0030】
図1は、繊維ウェブの斜視図である。図2は、第1実施形態の不織布における平面図及び底面図である。図3は、図2における領域Xの拡大斜視図である。図4は、網状支持部材の平面図及び斜視図である。図5は、図1の繊維ウェブが下面側を図4の網状支持部材に支持された状態で上面側に気体を噴きあてられて図2の第1実施形態の不織布が製造された状態を示す図である。図6は、第1実施形態の不織布製造装置を説明する側面図である。図7は、図6の不織布製造装置を説明する平面図である。図8は、図6における領域Zの拡大斜視図である。図9は、図8における噴き出し部の底面図である。図10は、第2実施形態における不織布の拡大斜視図である。図11は、第3実施形態における不織布の拡大斜視図である。図12は、第3実施形態における網状支持部材の拡大斜視図である。図13は、第4実施形態における不織布の拡大斜視図である。図14は、第5実施形態における不織布の拡大斜視図である。図15は、第6実施形態における不織布の拡大斜視図である。図16は、第6実施形態における支持部材の拡大平面図である。図17は、本発明にかかる不織布を生理用ナプキンの表面シートに使用した場合の斜視断面図である。図18は、本発明にかかる不織布をオムツの表面シートに使用した場合の斜視図である。図19は、本発明にかかる不織布を吸収性物品の中間シートとして使用した場合の斜視断面図である。図20は、本発明にかかる不織布を吸収性物品のアウターバックとして使用した場合の斜視図である。
【0031】
[1]第1実施形態
図1から図5により、本発明の不織布における第1実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態における不織布110は、繊維集合体である繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴きあてることにより形成することができる不織布である。また、縦方向である長手方向に沿って複数の低目付部である溝部1と、該溝部1に沿って形成される複数の高目付部である凸状部2とが形成された不織布である。そして、溝部1の目付は凸状部2の目付よりも低くなるよう調整される。
【0033】
[1.1]形状
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、本実施形態における不織布110は、第1実施形態の通り、該不織布110の一方の面側に複数の溝部1が略等間隔で並列的に形成された不織布である。そして、略等間隔で形成された複数の溝部1それぞれの間に、複数の凸状部2それぞれが形成されている。この凸状部2は、溝部1と同様に略等間隔で並列的に形成されている。
【0034】
また、本実施形態における不織布110の凸状部2の該不織布110の厚さ方向における高さは、0.3から15mm、好ましくは0.5から5mmを例示することができる。また、凸状部2の一つ当たりの幅方向における長さは、0.5から30mm、好ましくは1.0から10mmである。また、溝部1を挟んで隣接する凸状部2の頂点間の距離は、0.5から30mm、好ましくは3から10mmを例示することができる。
【0035】
また、溝部1の不織布110の厚さ方向における高さは、凸状部2の該高さの90%以下、好ましくは1から50%、さらに好ましくは5から20%の高さである。溝部1の幅方向における長さは、0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmを例示することができる。凸状部2を挟んで隣り合う溝部1同士間のピッチは、0.5から20mm、好ましくは3から10mmを例示することができる。
【0036】
このような設計にすることにより、例えば吸収性物品の表面シートとして該不織布110を使用した場合に、多量の所定の液体が排泄された際にも表面に広くにじみにくくさせるのに適した溝部1を形成することができる。また、過剰な外圧がかかった際に凸状部2が潰されたような状態となっても、溝部1による空間を維持しやすくなり、外圧がかかった状態で所定の液体が排泄された場合でも表面に広くにじみにくくすることができる。さらに、一端吸収体等に吸収した所定の液体が外圧下において逆戻りしたような場合でも、該不織布110の表面に凹凸が形成されていることにより、肌への接触面積が少ないため、肌に広く再付着しにくい場合がある。
【0037】
ここで、溝部1又は凸状部2の高さやピッチ、幅の測定方法は以下の通りである。例えば、不織布110をテーブル上に無加圧の状態で載置し、マイクロスコープにて不織布110の断面写真又は断面映像から測定する。尚、サンプルとなる不織布110は、凸状部2及び溝部1を通るように切断する。
【0038】
高さ(厚さ方向における長差)を測定する際は、不織布110の最下位置(つまりテーブル表面)から上方に向かう凸状部2及び溝部1のそれぞれの最高位置を高さとして測定する。
【0039】
また、ピッチを測定する際は、隣接する凸状部2の頂点間の距離を測定し、同様に溝部1を測定する。
【0040】
幅を測定する際は、不織布110の最下位置(つまりテーブル表面)から上方に向かう凸状部2の底面の最大幅を測定し、同様に溝部1底面の最大幅を測定する。
【0041】
ここで、凸状部2の断面形状は、特に限定されない。例えば、ドーム状、台形状、三角状、Ω状、四角状等を例示することができる。肌触りをよくするには、凸状部2の頂面付近及び側面は曲面であることが好ましい。また、外圧で凸状部2が潰されたり、溝部1による空間も維持できるようにするには、凸状部2の底面から頂面にかけて幅が狭くなっていることが好ましい。凸状部2の好ましい形状としては略ドーム状等の曲線(曲面)であることを例示することができる。
【0042】
ここで、本実施形態において、溝部1は略等間隔で並列的に形成されているがこれに限定されず、例えば、異なる間隔ごとに形成されてもよく、溝部1同士の間隔が変化するように形成されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態における不織布110の凸状部2の高さ(厚さ方向)は略均一であるが、例えば、互いに隣接する凸状部2の高さが異なるように形成されていてもよい。主に気体からなる流体が噴き出される噴き出し口913の間隔を調整することで、凸状部2の高さを調整することができる。例えば、噴き出し口913の間隔を狭くすることで凸状部2の高さを低くすることができ、逆に、噴き出し口913の間隔を広くすることで凸状部2の高さを高くすることができる。さらには、噴き出し口913の間隔を狭い間隔と広い間隔とが交互になるよう形成することで、高さの異なる凸状部2が交互に形成されるようにすることもできる。また、このように、凸状部2の高さが部分的に変化していれば、肌との接触面積が下がるために肌への負担を減らすことができるというメリットも生じる。
【0044】
[1.2]繊維配向
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、該不織布110においては、繊維101が縦方向である長手方向に配向する縦配向繊維が含まれる含有率がそれぞれ異なる領域が形成される。それぞれ異なる領域とは、例えば、溝部1、凸状部2を構成する側部8及び中央部9を例示できる。
【0045】
ここで、繊維101が長手方向(縦方向)に配向するとは、繊維101が長手方向(縦方向)に対して、+45度から−45度の範囲内に配向していることをいい、また、長手方向に配向している繊維を縦配向繊維という。そして、繊維101が幅方向(横方向)に配向するとは、繊維101が幅方向に対して+45度から−45度の範囲内に配向していることをいい、また、幅方向に配向している繊維を横配向繊維という。
【0046】
側部8は、凸状部2の両側部にあたる領域であり、該側部8における繊維101は、縦配向繊維の含有率が中央部9(凸状部2において側部8に挟まれた領域)における縦配向繊維の含有率よりも高くなるように形成される。例えば、側部8における縦配向繊維の含有率は、55から100%、さらに好ましくは60から100%を例示できる。側部8における縦配向繊維の含有率が55%より小さい場合には、ラインテンションによって該側部8が引き延ばされてしまう場合がある。さらに側部8が引き延ばされることにより、溝部1や後述する中央部9をもラインテンションにより引き延ばされてしまう場合がある。
【0047】
中央部9は、凸状部2において両側部となる側部8に挟まれた領域であり、縦配向繊維の含有率が側部8よりも低い領域である。該中央部9は、縦配向繊維と横配向繊維とが適度に混合されていることが好ましい。
【0048】
例えば、中央部9における縦配向繊維の含有率は、側部8における縦配向繊維の含有率よりも10%以上低く、後述の溝部1の底部における縦配向繊維の含有率よりも10%以上高くなるよう形成される。具体的には、中央部9における縦配向繊維の含有率は40から80%の範囲であることが好ましい。
【0049】
溝部1は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)が直接噴きあてられる領域であるため、溝部1における縦配向繊維は側部8に噴き寄せられる。そして、溝部1における横配向繊維が溝部1の底部に残されることになる。このため、溝部1の底部における繊維101は、横配向繊維の含有率が縦方向繊維の含有率よりも高くなる。
【0050】
例えば、溝部1における縦配向繊維の含有率は、中央部9における縦配向繊維の含有率よりも10%以上低いことを例示できる。したがって、溝部1の底部においては、該不織布110において縦配向繊維の含有率が最も低く、逆に横配向繊維の含有率が最も高い。具体的には、横配向繊維の含有率が55から100%、好ましくは60から100%である。横配向繊維の含有率が55%より低い場合には、後述のように溝部1の目付が低いために幅方向への不織布の強度を高めることが難しくなる。すると、例えば吸収性物品の表面シートとして該不織布110を使用した場合、該吸収性物品を使用中、身体との摩擦により幅方向にヨレが生じたり、破損したりする危険性が生じる。
【0051】
繊維配向の測定は、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX−100を用いて行い、以下の測定方法で行った。(1)サンプルを観察台上に長手方向が縦方向になるようにセットし、(2)イレギュラーに手前に飛び出した繊維を除いてサンプルの最も手前の繊維にレンズのピントを合わせ、(3)撮影深度(奥行き)を設定してサンプルの3D画像をPC画面上に作成する。次に(4)3D画像を2D画像に変換し、(5)測定範囲において長手方向を適時等分する平行線を画面上に複数引く。(6)平行線を引いて細分化した各セルにおいて、繊維配向が長手方向であるか、幅方向であるかを観察し、それぞれの方向に向いている繊維本数を測定する。そして(7)設定範囲内における全繊維本数に対し、長手方向に向かう繊維配向の繊維本数の割合と、幅方向に向かう繊維配向の繊維本数の割合とを計算することにより、測定・算出することができる。
【0052】
[1.3]繊維疎密
図3に示すように、溝部1は、凸状部2に比べて繊維101の繊維密度が低くなるように調整されている。また、溝部1の繊維密度は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)の量やテンション等の諸条件によって任意に調整できる。そして、凸状部2の繊維密度は、溝部の繊維密度よりも高くなるよう形成される。
【0053】
該溝部1の底部の繊維密度は、具体的には、0.002から0.18g/cm3、0.005から0.05g/cm3を例示することができる。溝部1の底部の繊維密度が0.002g/cm3より小さい場合には、例えば該不織布110を吸収性物品等に使用している場合に、該不織布110が容易に破損してしまう場合がある。また、該溝部1の底部の繊維密度が0.18g/cm3より大きい場合には、液体が下方へ移行しにくくなるために該溝部1の底部に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0054】
凸状部2は、繊維密度が溝部1の繊維密度より高くなるように調整されている。具体的には、0.005から0.20g/cm3、好ましくは0.007から0.07g/cm3を例示することができる。該凸状部2の繊維密度が0.005g/cm3より小さい場合には、該凸状部2に含んだ液体の自重や外圧によって凸状部2が潰れやすくなるだけでなく、一度吸収した液体が加圧下において逆戻りしやすくなる場合がある。また、凸状部2の繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、該凸状部2にもたらされた所定の液体を下方へ移行しにくくなり、該凸状部2に液体が滞留して使用者に湿り感を与える場合がある。
【0055】
[1.4]目付
不織布110全体の目付は、具体的には、10から200g/m2、好ましくは20から100g/m2を例示することができる。該不織布110を例えば吸収性物品の表面シートに使用する場合、目付が10g/m2より小さい場合には、使用中に容易に破損する場合がある。また、該不織布110の目付が200g/m2より大きい場合には、もたらされた液体を下方に移行させることが円滑に行われにくくなる場合がある。
【0056】
図2(A)、図2(B)及び図3に示すように、溝部1は、凸状部2に比べて繊維101の目付が少なくなるよう調整されている。また、溝部1の目付は、溝部1と凸状部2とを含む全体における目付の平均に比べて低くなるよう調整される。
【0057】
具体的には、溝部1の底部における目付は3から150g/m2、好ましくは5から80g/m2を例示できる。該溝部1の底部における目付が3g/m2より低い場合には、例えば該不織布が吸収性物品の表面シートに使用された場合に、吸収性物品の使用中に表面シートが容易に破損する場合がある。また、該溝部1の底部における目付が150g/m2より高い場合には、該溝部1にもたらされた液体が下方へ移行されにくくなることで溝部1に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0058】
凸状部2は、溝部1に比べて繊維101の平均目付が高くなるよう調整されている。ここで、凸状部2における中央部9の目付は、例えば15から250g/m2、好ましくは20から120g/m2を例示できる。該中央部9の目付が15g/m2より低い場合には、該中央部9に含まれた液体の自重や外圧によって潰れやすくなるだけでなく、一度吸収した液体が加圧下において逆戻りしやすくなる場合がある。また、中央部9における目付が250g/m2より高くなる場合には、もたらされた液体が下方へ移行されにくくなり、該中央部9に液体が滞留して使用者に湿り感を与える場合がある。
【0059】
さらに、該凸状部2における側部である側部8の目付は、主に気体からなる流体(例えば、熱風)の量やテンション等の諸条件によって任意に調整できる。具体的には、該側部8における目付は、20から280g/m2、好ましくは25から150g/m2を例示できる。該側部8における目付が20g/m2より低い場合には、ラインテンションによって側部8が引き延ばされてしまう場合がある。また、該側部8における目付が280g/m2より高い場合には、該側部8にもたらされた液体が下方へ移行されにくくなることで側部8に滞留し、使用者に湿り感を与える可能性がある。
【0060】
[1.5]その他
本実施形態の不織布を、例えば、所定の液体を吸収又は透過させるために使用した場合、溝部1は液体を透過させ、凸状部2はポーラス構造であるので液体を保持しにくい。
【0061】
溝部1は、繊維101の繊維密度が低く、目付が少ないことから、液体を透過させるのに適したものとなっている。さらに、溝部1の底部における繊維101が幅方向に配向していることから、液体が溝部1の長手方向に流れすぎて広く広がってしまうことを防止できる。溝部1は目付が低いにもかかわらず繊維101を該溝部1の幅方向に配向(CD配向)されているので、不織布の幅方向への強度(CD強度)が高まっている。
【0062】
凸状部2の目付が高くなるよう調整されるが、これにより繊維本数が増大するため融着点数が増え、ポーラス構造が維持される。
【0063】
また、溝部1は、単位面積当たりの横配向繊維の含有率が中央部9よりも高く、側部8は、単位面積当たりにおける縦配向繊維の含有率が中央部9よりも高い。そして、中央部9には、厚さ方向に配向する繊維101が溝部1や側部8よりも多く含まれる。これにより、中央部9に、例えば厚さ方向の荷重がかかることにより凸状部2の厚みが減少したとしても、荷重が開放された場合には、その厚さ方向に配向する繊維101の剛性により元の高さに戻りやすい。すなわち、圧縮回復性の高い不織布であるといえる。
【0064】
[1.6]製造方法
図4から図9より、以下に、本実施形態における不織布110を製造する方法について説明する。まず、繊維ウェブ100を図4(A)及び図4(B)に示す通気性支持部材である網状支持部材210の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を網状支持部材210により下側から支持する。
【0065】
そして、図5に示すように、この繊維ウェブ100を支持した状態における網状支持部材210を所定方向に移動させ、該移動されている繊維ウェブ100の上面側から連続的に気体を噴きあてることで、本実施形態における不織布110を製造することができる。
【0066】
ここで、網状支持部材210は、不通気部である所定太さの複数のワイヤ211が、織り込まれるようにして形成される。複数のワイヤ211が所定間隔を空けて織り込まれることで、通気部である孔部213が複数形成された網状支持部材210が得られる。
【0067】
図4(A)及び(B)に示すように、網状支持部材210は、孔径が小さな孔部213が複数形成されているものであり、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた気体は、該網状支持部材210に妨げられることなく下方に通気する。この網状支持部材210は、噴きあてられる気体の流れを大きく変えることがなく、また、繊維101を該網状支持部材210の下方向に移動させない。
【0068】
このため、繊維ウェブ100における繊維101は、主に上面側から噴きあてられた気体により所定方向に移動される。具体的には、網状支持部材210の下方側への移動が規制されているため、繊維101は、該網状支持部材210の表面に沿うような方向に移動される。
【0069】
例えば、気体が噴きあてられた領域における繊維101は、該領域に隣接する領域に移動される。そして、気体が噴きあてられる領域が所定方向に移動するため、結果として、気体が噴きあてられた所定方向に連続する領域における側方の領域に移動される。
【0070】
これにより、溝部1が形成されると共に、溝部1における底部の繊維101は幅方向に配向した繊維が残される。また、溝部1と溝部1との間に凸状部2が形成され、該凸状部2における側方部の繊維密度が高くなり、繊維101が長手方向に配向等される。
【0071】
ここで、本実施形態の不織布110を製造する不織布製造装置90は、図6、図7に示すように、繊維集合体である繊維ウェブ100を一方の面側から支持する通気性支持部材200と、通気性支持部材200により前記一方の面側から支持される繊維集合体である繊維ウェブ100に、該繊維集合体である繊維ウェブ100における他方の面側から主に気体からなる流体を噴きあてる噴きあて手段である噴き出し部910及び不図示の送気部とを備える。
【0072】
不織布110は、不織布製造装置90において、繊維ウェブ100を移動手段により順次移動されながら形成される。該移動手段は、上述した通気性支持部材200により一方の面側から支持された状態における繊維集合体である繊維ウェブ100を所定方向に移動させる。具体的には、主に気体からなる流体が噴きあてられた状態における繊維ウェブ100を所定方向Fに移動させる。移動手段として、例えば、図6に示されるコンベア930を例示できる。コンベア930は、通気性支持部材200を載置する横長のリング状に形成される通気性の通気性ベルト部939と、横長のリング状に形成された通気性ベルト部939の内側であって長手方向の両端に配置され、該リング状の通気性ベルト部939を所定方向に回転させる回転部931、933と、を備える。
【0073】
通気性支持部材200は、製造する不織布によって、適宜交換可能である。例えば本実施形態における不織布110を製造する場合には、通気性支持部材200として上述の網状支持部材210を使用することができる。
【0074】
コンベア930は、上述の通り、繊維ウェブ100を下面側から支持した状態の通気性支持部材200(網状支持部材210)を所定方向Fに移動させる。具体的には、図6に示すように、繊維ウェブ100が、噴き出し部910の下側を通過するように移動させる。さらには、繊維ウェブ100が、加熱手段である両側面が開口したヒータ部950の内部を通過するように移動させる。
【0075】
噴きあて手段は、不図示の送気部及び、噴き出し部910を備える。不図示の送気部は、送気管920を介して噴き出し部910に連結される。送気管920は、噴き出し部910の上側に通気可能に接続される。図9に示すように、噴き出し部910には、噴き出し口913が所定間隔で複数形成されている。
【0076】
図8に示すように、不図示の送気部から送気管920を介して噴き出し部910に送気された気体は、噴き出し部910に形成された複数の噴き出し口913から噴出される。複数の噴き出し口913から噴出された気体は、通気性支持部材200(網状支持部材210)に下面側から支持された繊維ウェブ100の上面側に連続的に噴きあてられる。具体的には、複数の噴き出し口913から噴出された気体は、コンベア930により所定方向Fに移動された状態における繊維ウェブ100の上面側に連続的に噴きあてられる。
【0077】
噴き出し部910下方であって通気性支持部材200(網状支持部材210)の下側に配置される吸気部915は、噴き出し部910から噴出され通気性支持部材200(網状支持部材210)を通気した気体等を吸気する。ここで、この吸気部915による吸気により、繊維ウェブ100を通気性支持部材200(網状支持部材210)に張り付かせるよう位置決めさせることも可能である。
【0078】
吸気部915による吸引は、主に気体からなる流体が噴きあてられる領域の繊維101が通気性支持部材200(網状支持部材210)に押しつけられる程度の強さであればよい。この吸気部915が噴きあてられた主に気体からなる流体を吸引(吸気)することで、通気性支持部材200の不通気部(例えば網状支持部材210のワイヤ211)に当たった主に気体からなる流体が跳ね返されて繊維ウェブ100の形状が乱れてしまうのを防止することができる。また空気流により成形した溝部(凹凸)等の形状をより保った状態でヒータ部950内に搬送することができる。この場合、空気流による成形と同時にヒータ部950まで、吸気しながら搬送することが好ましい。
【0079】
さらに、通気性支持部材200(網状支持部材210)の下側から主に気体からなる流体を引き込むことで、主に気体からなる流体を噴きあてられる領域の繊維は、該通気性支持部材200(網状支持部材210)側に押しつけられながら移動させられるので、通気性支持部材200(網状支持部材210)側に繊維が集まるようになる。また、凸状部2では、噴きあてられた主に気体からなる流体が通気性支持部材200の不通気部(例えば網状支持部材210のワイヤ211)に衝突して跳ね返されることで、部分的に繊維101が厚さ方向に向いた状態となる。
【0080】
噴き出し口913それぞれから噴き出される主に気体からなる流体の温度は、上述の通り常温であってもよいが、例えば、溝部(凹凸)等の成形性を良好にするには、繊維集合体を構成する少なくとも熱可塑性繊維の軟化点以上、好ましくは軟化点以上であり融点の+50℃から−50℃の温度に調整することができる。繊維が軟化すると繊維自体の反発力が低下するため、空気流等で繊維が再配列された形状を保ちやすく、温度をさらに高めると繊維同士の熱融着が開始されるためより一層、溝部(凹凸)等の形状を保ちやすくなる。これにより、溝部(凹凸)等の形状を保った状態でヒータ部950内に搬送しやすくなる。
【0081】
尚、噴きあてる主に気体からなる流体の風量や温度、引き込み量、通気性支持部材200の通気性、繊維ウェブ100の目付等の調整により、凸状部2の形状を変化させることができる。例えば、噴きあてられる主に気体からなる流体の量と吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量とがほぼ均等、もしくは吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量の方が多い場合には、不織布115(不織布110)における凸状部2の裏面側は、通気性支持部材200(網状支持部材210)の形状に沿うように形成される。したがって、通気性支持部材200(網状支持部材210)が平坦である場合には、該不織布115(不織布110)における裏面側は略平坦となる。
【0082】
また、空気流等により成形した溝部(凹凸)等の形状をより保った状態でヒータ部950に搬送するには、空気流等による溝部(凹凸)等の成形直後もしくは同時にヒータ部950内に搬送するか、熱風(所定温度の空気流)による溝部(凹凸)等の成形直後に冷風等により冷却させ、その後、ヒータ部950に搬送することができる。
【0083】
加熱手段であるヒータ部950は、所定方向Fにおける両端が開口されている。これにより、コンベア930により移動される通気性支持部材200(網状支持部材210)に載置された繊維ウェブ100(不織布110)が、ヒータ部950の内部に形成される加熱空間を所定時間の滞留をもって連続的に移動される。例えば、繊維ウェブ100(不織布110)を構成する繊維101に熱可塑性繊維を含ませた場合には、このヒータ部950における加熱により繊維101同士が結合された不織布115(不織布110)を得ることができる。
【0084】
[2]他の実施形態
以下に、本発明の不織布における他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、特に説明しない部分は、不織布の第1実施形態と同様であり、図面に付した番号も第1実施形態と同様である場合は、同じ番号を付している。
【0085】
図10から図16を用いて、本発明の不織布における第2実施形態から第6実施形態について説明する。第2実施形態は、不織布の形状が異なる実施形態である。第3実施形態は、不織布全体の形状が異なる実施形態である。第4実施形態は、不織布における溝部及び凸状部が形成される面とは反対側の面が異なる態様である実施形態である。第5実施形態は、不織布の凸状部が異なる実施形態である。第6実施形態は、不織布の開口に関する他の実施形態である。
【0086】
[2.1]第2実施形態
図10により、本発明の不織布における第2実施形態について説明する。
【0087】
[2.1.1]概要
図10に示すように、本実施形態における不織布114は、両面が略平坦な不織布である。そして、所定領域における繊維配向等が異なる領域が形成された不織布である。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0088】
[2.1.2]繊維配向
図10に示すように、不織布114は、縦配向繊維の含有率が異なる複数の領域が形成される。縦配向繊維の含有率が異なる複数の領域とは、該不織布114において縦配向繊維の含有率が最も高い第2領域である縦配向部13と、縦配向部13より縦配向繊維の含有率が低い第3領域である中央部12と、縦配向繊維の含有率が最も低く、かつ横配向繊維の含有率が最も高い第1領域である横配向部11と、を例示することができる。そして、該不織布114は、複数の横配向部11それぞれの両側に沿って複数の縦配向部13がそれぞれ形成される。この複数の縦配向部13それぞれにおける横配向部11側とは反対側であって、隣り合う縦配向部13に挟まれた複数の中央部12が複数形成された不織布である。
【0089】
横配向部11は、繊維ウェブ100において縦方向である長手方向に配向していた繊維101が縦配向部13側に噴き寄せられた後、残った繊維101で形成される領域である。長手方向に向いていた繊維101が縦配向部13側に移動されるので、横配向部11には、主として横方向である幅方向に配向していた横配向繊維が残されることになる。したがって、横配向部11における繊維101の多くが長手方向に対して交差する方向に配向する。横配向部11は、後述のように目付が低くなるように調整されるが、該横配向部11における繊維101の大部分が幅方向に配向しているため、幅方向における引っ張り強度が高くなる。そして、例えば該不織布114を吸収性物品の表面シートに用いた場合に着用中に幅方向への摩擦等の力が加わったとしても破損してしまうことを防止することができる。
【0090】
また、縦配向部13は、繊維ウェブ100において長手方向に向いていた繊維101が主に気体からなる流体を噴きあてられることにより縦配向部13側に噴き寄せられて形成される。そして、該縦配向部13における繊維101の多くが長手方向に配向しているので、各繊維101の繊維間距離が狭まり、繊維密度が高く形成される。このため、剛性も高まる。
【0091】
[2.1.3]繊維疎密
図10に示すように、主に気体からなる流体が噴きあてられて横配向部11の繊維101が移動するので、噴きあてられた圧力により、繊維101も不織布114の厚さ方向における下側の方に集まるように移動する。したがって、不織布114の厚さ方向における上側は空間面積率が大きく、下側は空間面積率が小さくなっている。言い換えると、不織布114の厚さ方向における上側は繊維密度が小さくなり、下側は繊維密度が高い。
【0092】
また、横配向部11は、主に気体からなる流体を噴きあてられて繊維101が移動することにより、繊維密度が低くなるよう形成される。縦配向部13は、横配向部11から移動された繊維101が集まる領域となるので、横配向部11よりも繊維密度が高くなるように形成される。中央部12における繊維密度は、横配向部11における繊維密度と、縦配向部13における繊維密度との中間になるように形成される。
【0093】
[2.1.4]目付
図10に示すように、横配向部11に噴きあてられた主に気体からなる流体により、繊維101が他の領域に移動するため、横配向部11における目付が最も低くなる。また、横配向部11から移動した繊維101が噴き寄せられるため、縦配向部13が最も目付が高くなる。そして、この縦配向部13に両側を挟まれるようにして中央部12が形成される。すなわち目付の少ない領域となる中央部12や横配向部11は、目付の高い縦配向部13が両側に支えられるように形成されるので、目付が低くても例えばラインテンション等により引き延ばされるようなことを抑制することができる。
【0094】
[2.1.5]その他
該不織布114を例えば吸収性物品の表面シートとして用いた場合、目付が低い状態の横配向部11や中央部12を維持したまま、すなわち製品製造中のラインテンション等により引き延ばされない状態で用いることができる。そして、横配向部11や中央部12のそれぞれの間に目付の高い縦配向部13が形成されるので、液体等を含んだ際に、液体の重みや自重により該不織布114が潰れるようなことが発生しにくくなる。したがって、繰り返し液体が排泄されても、液体を表面に広げることなく該不織布114の下方へ移行させることができる。
【0095】
[2.1.6]製造方法
以下に、本実施形態における不織布114を製造する方法について説明する。まず、繊維ウェブ100を通気性支持部材200である網状支持部材210の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を網状支持部材210により下側から支持する。この網状支持部材210は、第1実施形態における網状支持部材210と同様のものを用いることができる。
【0096】
そして、この繊維ウェブ100を支持した状態における網状支持部材210を所定方向に移動させ、該移動されている繊維ウェブ100の上面側から連続的に気体を噴きあてることで、本実施形態における不織布114を製造することができる。
【0097】
該不織布114に噴きあてられる主に気体からなる流体の量は、主に気体からなる流体を噴きあてる領域における繊維ウェブ100の繊維101が幅方向に移動できる程度であればよい。この場合、噴きあてられる主に気体からなる流体を網状支持部材210の下側に引き込む吸気部915により吸気しない方が好ましいが、横配向部11が網状支持部材210に押さえつけられない程度に吸気してもよい。
【0098】
また、主に気体からなる流体を噴きあてて凹凸、例えば溝部や凸状部2等のある不織布を形成した後にロール等に巻き付けることで形成した凹凸を押しつぶすようにしてもよい。
【0099】
このように、繊維101を下側に押さえつける力も少なく、凹凸を形成せずに、厚みが略一定の不織布114を形成することができる。
【0100】
本実施形態における不織布114は不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布114の製造方法等は、第1実地形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0101】
[2.2]第3実施形態
図11、図12により、本発明の不織布における第3実施形態について説明する。
【0102】
[2.2.1]不織布
図11及び図12に示すように、本実施形態における不織布116は、該不織布116の全体が長手方向に交差するように交互に起伏する点で第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0103】
本実施形態における不織布116は、該不織布116全体が縦方向である長手方向に波状の起伏を有するように形成されている。
【0104】
[2.2.2]製造方法
本実施形態における不織布116を製造する方法については第1実施形態と同様であるが、通気性支持部材200である網状支持部材260の形態が異なる。本実施形態における網状支持部材260は、不通気部である所定太さの複数のワイヤ261が、織り込まれるようにして形成される。複数のワイヤ261が所定間隔を空けて織り込まれることで、通気部である孔部263が複数形成された網状支持部材260が得られる。
【0105】
さらに、該網状支持部材260は、本実施形態においては、例えば、図12に示すように軸Yに平行な方向に交互に波状の起伏を有するように形成される。該網状支持部材260における長手方向又は短手方向のいずれか一方に平行な方向に波状の起伏を有する支持部材である。
【0106】
図12における網状支持部材260は、孔径が小さな孔部263が複数形成されているものであり、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた気体は、該網状支持部材260に妨げられることなく下方に通気する。この網状支持部材260は、噴きあてられる主に気体からなる流体の流れを大きく変えることがなく、また、繊維101を該網状支持部材260の下方向に移動させない。
【0107】
さらに、同様に、該網状支持部材260自体が波状の起伏を有しているので、繊維ウェブ100の上面側から噴きあてられた主に気体からなる流体により、繊維ウェブ100は、該網状支持部材260の形状に沿うような起伏を有する形状に成形される。
【0108】
網状支持部材260の上面に載置された繊維ウェブ100に、主に気体からなる流体を噴きあてながら、該繊維ウェブ100を軸X方向に沿って移動させることにより該不織布116を形成することができる。
【0109】
網状支持部材260における、起伏の態様は任意に設定することができる。例えば、図12に示す軸X方向への起伏の頂部間のピッチは、1から30mm、好ましくは3から10mmを例示できる。また、該網状支持部材260における起伏の頂部と底部との高低差は、例えば、0.5から20mm、好ましくは3から10mmを例示できる。さらに、該網状支持部材260における軸X方向の断面形状は、図12に示すように、波状に限らず、起伏の頂部と底部それぞれの頂点が鋭角をなすように略三角形が連なった形状や、起伏の頂部と底部それぞれの頂点が略平坦となるように略四角形の凹凸が連なった形状等を例示できる。
【0110】
本実施形態における不織布116は上述した不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布116の製造方法等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0111】
[2.3]第4実施形態
図13により、本発明の不織布における第4実施形態について説明する。
【0112】
図13に示すように、本実施形態における不織布140は、他方の面側である該不織布140における溝部1及び凸状部2が形成された面とは反対側の面における態様が第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0113】
[2.3.1]不織布
本実施形態における不織布140は、その一方の面側に、溝部1及び凸状部2が交互に並列的に形成されている。そして、不織布140の他方の面側においては、凸状部2の底面にあたる領域が、該凸状部2が突出する側に突出するように形成されている。言い換えると、不織布140は、該不織布140の他方の面側において、一方の面側における凸状部2の底面にあたる領域が窪んで凹部を形成している。そして、一方の面側の溝部1における底面にあたる他方の面側の領域が、一方の面側の凸状部と反対方向に突出し、凸状部を形成している。
【0114】
[2.3.2]製造方法
本実施形態においては、網状支持部材210に繊維ウェブ100を載置し主に気体からなる流体を噴きあてながら、所定の方向に沿って該繊維ウェブ100を移動させると共に、網状支持部材210の下方から、噴きあてられる主に気体からなる流体を吸引(吸気)する。そして、吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量を、噴きあてられる主に気体からなる流体の量よりも少なくすることで、噴きあてられる主に気体からなる流体が、吸引(吸気)する主に気体からなる流体の量よりも多い場合には、噴きあてられた主に気体からなる流体を若干跳ね返らせることで、凸状部2の下面側(底面側)を凸状部2の上面側における凸状部2と同じ方向に突出するように形成することができる。これにより、溝部1における底面にあたる他の面側の領域は相対的に突出して下面側から突出する凸状部が形成される。
【0115】
本実施形態における不織布140の製造方法は上述の第1実施形態の記載と同様である。また、該不織布140を製造するにあたり使用される支持部材は、第1実施形態における網状支持部材210と同様のものを用いることができる。
【0116】
[2.4]第5実施形態
図14により、本発明の不織布における第5実施形態について説明する。
【0117】
図14に示すように、本実施形態における不織布150は、該不織布150の一方の面側に形成される凸状部2の高さが異なる第2凸状部22が形成される点において、第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0118】
[2.4.1]不織布
該不織布150の一方の面側に複数の溝部1が並列的に形成された不織布である。そして、形成された複数の溝部1それぞれの間に複数の凸状部2及び複数の第2凸状部22が交互にそれぞれ形成されている。この凸状部2及び第2凸状部22は、溝部1と同様に並列的に形成されている。
【0119】
凸状部2及び第2凸状部22は、繊維ウェブ100における主に気体からなる流体が噴きあてられていない領域であり、溝部1が形成されることにより、相対的に突出する領域となったものである。該第2凸状部22は、例えば、凸状部2よりも該不織布150における厚さ方向の高さが低く、幅方向における長さも小さく形成されているが、該第2凸状部22における繊維疎密、繊維配向及び目付等については、凸状部2と同様に形成されている。
【0120】
不織布150における凸状部2及び第2凸状部22は、並列的に形成された複数の溝部1それぞれの間に、凸状部2又は第2凸状部22が形成される。そして、凸状部2は、溝部1を挟んで第2凸状部22と隣り合うように形成される。また、第2凸状部22は、溝部1を挟んで凸状部2と隣り合うように形成される。つまり、凸状部2と第2凸状部22は、溝部を挟んで交互に形成される。具体的には、凸状部2、溝部1、第2凸状部22、溝部1、凸状部2という順にこの配置パターンを繰り返して形成される。なお、凸状部2及び第2凸状部22の位置関係はこれに限らず、少なくとも不織布150の一部が溝部1を挟んで複数の凸状部2がそれぞれに隣り合うように形成することができる。また複数の第2凸状部22が溝部1を挟んでそれぞれに隣り合うように形成することもできる。
【0121】
第2凸状部22における繊維配向及び繊維密度については、該不織布150における凸状部2と同様に、溝部1における縦配向繊維が第2凸状部22の側部88に噴き寄せられることにより、第2凸状部22における側部88の目付が高く形成される。さらに該側部88は、縦方向である長手方向に配向する縦配向繊維の含有率は横方向である幅方向に配向する横配向繊維の含有率よりも高くなる。また、第2凸状部22において側部88に挟まれた中央部99は、該側部88よりも目付は低く形成されるが、溝部1の目付よりも高くなるよう形成される。
【0122】
[2.4.2]製造方法
本実施形態における不織布150の製造方法は、不織布150の製造に用いられる不織布製造装置90の噴き出し口913の態様が異なる。
【0123】
網状支持部材210の上面に載置された繊維ウェブ100に、主に気体からなる流体を噴きあてながら所定方向に移動させることにより、不織布150が形成される。主に気体からなる流体が噴きあてられる際に溝部1、凸状部2及び第2凸状部22が形成されるが、これらの形成は、不織布製造装置90における主に気体からなる流体の噴き出し口913の態様により任意に変更することができる。
【0124】
例えば、不織布150を形成するには、主に気体からなる流体が噴き出される噴き出し口913の間隔を調整した不織布製造装置90により製造することができる。例えば、噴き出し口913の間隔を第1実施形態における噴き出し口913の間隔よりも狭くすることで、凸状部2よりも厚さ方向の高さが低い第2凸状部22を形成することができる。また、噴き出し口913の間隔を第1実施形態における噴き出し口913の間隔よりも広くすることで凸状部2よりも厚さ方向の高さが高い凸状部を形成することも可能である。そして、噴き出し口913が形成される間隔において、狭い間隔と広い間隔とが交互になるように配置することにより、凸状部2と第2凸状部22とが溝部1を挟んで交互に並列的配置された該不織布150が形成される。この噴き出し口913の間隔はこれに限らず、形成したい不織布の凸状部での高さ及び第2凸状部22との配列により任意に形成することが可能である。
【0125】
本実施形態における不織布150は上述した通り、不織布製造装置90により製造することができるが、この不織布製造装置90における不織布150の製造方法における他の構成等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0126】
[2.5]第6実施形態
図15及び図16により、本発明の不織布における第6実施形態について説明する。
【0127】
図15及び図16に示すように、第6実施形態は、該不織布170の一方の面側に形成される溝部1において、窪み部3A及び突出部4Aが形成される点において第1実施形態と異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0128】
[2.5.1]不織布
図15に示すように、本実施形態における不織布170は、該不織布170の一方の面側に複数の溝部1が並列的に略等間隔で形成された不織布である。そして、複数の溝部1それぞれの間に複数の凸状部2がそれぞれ形成されている。さらに、溝部1においては、溝部1よりも繊維密度が低い疎領域である複数の窪み部3Aが略等間隔で形成されており、該複数の窪み部3Aそれぞれの間に、疎領域以外の領域である複数の突出部4Aがそれぞれ形成されている。
【0129】
本実施形態においては、窪み部3Aは略等間隔で形成されているが、これに限らず異なる間隔で形成されてもよい。図15において該窪み部3Aは開口を示しているが、噴きあてる主に気体からなる流体の量や強さ、及び引き込み量等の諸条件により異なる。
【0130】
窪み部3Aにおける該不織布170の厚さ方向の高さは、突出部4Aにおける該不織布の厚さ方向の高さの90%以下、好ましくは0から50%、さらに好ましくは0から20%であることを例示できる。ここで、高さが0%とは窪み部3Aが開口であることを示す。
【0131】
また、窪み部3Aの一つ当たりの長手方向の長さ及び幅方向の長さは、いずれも0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmを例示することができる。そして、突出部4Aを挟んで互いに隣り合う窪み部3Aのピッチは、0.5から30mm、好ましくは1から10mmを例示することができる。
【0132】
突出部4Aにおける不織布170の厚さ方向の高さは、凸状部2の不織布170の厚さ方向の高さと同等以下、好ましくは20から100%、さらに好ましくは40から70%であることを例示できる。
【0133】
また、該突出部4Aの一つ当たりの該不織布170の長手方向における長さ及び幅方向における長さは、0.1から30mm、好ましくは0.5から10mmであることを例示できる。そして、窪み部3Aを挟んで互いに隣り合う突出部4Aの頂点間のピッチは0.5から30mm、好ましくは1から10mmを例示できる。
【0134】
そして、突出部4Aの該不織布の長手方向における断面形状は、略四角状となる。尚、突出部4Aの長手方向における断面形状は、略四角状に限らず、ドーム状、台形状、三角状、Ω状等、特に限定されない。溝部1における所定の液体の広がりを抑制するため、略四角状であることが好ましい。また、過剰な外圧下で突出部4Aが肌等と接触して異物感を与えないようにするため、該突出部4Aの頂面は平面又は曲面であることが好ましい。
【0135】
また、窪み部3Aの該不織布の長手方向における断面形状は、ドーム状、台形状、Ω状、四角状、又これらの形状の上下が反転した形状等、特に限定されない。また、窪み部3
が開口である場合には、過剰な外圧がかけられた場合や高粘度の所定の液体等がもたらされた場合であっても、溝部1における所定の液体の広がりを抑制することができるので好ましい。
【0136】
溝部1における窪み部3Aを挟んで隣り合う突出部4Aにおける繊維配向は、全体として溝部1の幅方向に沿って配向している。
【0137】
該窪み部3Aが開口部である開口の場合、該開口となる領域においては、噴きあてられた主に気体からなる流体により、縦配向繊維が凸状部2側に噴き寄せられ、また、横配向繊維が突出部4A側に噴き寄せられる。したがって、開口の周囲における繊維101は、該開口の周囲を囲むように配向するようになる。このため、外圧等がかけられた場合でも開口が潰れて塞がりにくくなる。
【0138】
溝部1における突出部4Aは、該溝部1における窪み部3Aよりも繊維密度が高くなるように形成される。
【0139】
窪み部3A及び突出部4Aにおける繊維密度は、第1実施形態の凸状部2及び溝部1と同様に主に気体からなる流体の量やテンション等の諸条件により任意に調整することができる。尚、窪み部3Aは開口でなくともよい。
【0140】
窪み部3Aの繊維密度は、好ましくは0.0から0.10g/cm3を例示できる。ここで、繊維密度が0.0g/cm3であるとは、窪み部3Aが開口であることを示す。繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が窪み部3Aに一旦溜まってしまうことになる。
【0141】
該不織布170を例えば吸収性物品等の表面シートとして用いた場合、所定の液体が窪み部3Aに溜まっている際に行動変化等がなされると、所定の液体が容易に窪み部3Aから溢れ出して溝部1に広がり、さらには該不織布170の表面に広がって肌を汚してしまう場合がある。
【0142】
また、突出部4Aの繊維密度は、0.005から0.20g/cm3、好ましくは0.007から0.10g/cm3を例示できる。突出部4Aの繊維密度が0.005g/cm3より小さい場合には、過剰な外圧がかけられて凸状部2が潰されたような場合に、該突出部4Aも同様に潰されてしまい、溝部1において窪み部3Aにより形成されている空間を保持できなくなる場合がある。
【0143】
一方で、突出部4Aの繊維密度が0.20g/cm3より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が突出部4Aに溜まってしまい、過剰な外圧が該不織布170にかけられて肌と直接接触した場合に、湿り感を与えてしまう場合がある。
【0144】
溝部1における窪み部3Aは、凸状部2及び突出部4Aに比べて繊維101の目付が低くなるように形成される。すなわち、該不織布170において、窪み部3Aは最も目付が低くなるように形成される。
【0145】
窪み部3Aの目付は、例えば、0から100g/m2、好ましくは0から50g/m2を例示することができる。ここで、該窪み部3Aの目付が0g/m2とは、該窪み部3Aは開口であることを示す。窪み部3Aの目付が100g/m2より大きいと、溝部1に落とし込んだ所定の液体が窪み部3Aに一旦溜まってしまうことになる。これにより、例えば該不織布170を例えば吸収性物品等の表面シートとして用いた場合、所定の液体が窪み部3Aに溜まっている状態で行動変化等がなされると、所定の液体が容易に窪み部3Aから溢れ出して溝部1に広がり、さらには該不織布170の表面に広がって肌を汚してしまう場合がある。
【0146】
溝部1における突出部4Aは、窪み部3Aに比べて繊維101の目付が高くなるように形成されている。例えば、突出部4Aの目付は、5から200g/m2、好ましくは10から100g/m2を例示できる。該突出部4Aの目付が5g/m2より小さい場合には、過剰な外圧がかけられて凸状部2が潰されたような場合に、該突出部4Aも同様に潰されてしまい、溝部1において窪み部3Aにより形成されている空間を保持できなくなる場合がある。また、突出部4Aの目付が200g/m2より大きい場合には、溝部1に落とし込んだ所定の液体が突出部4Aに溜まってしまい、過剰な外圧が該不織布170にかけられて肌と直接接触した場合に、湿り感を与えてしまう場合がある。
【0147】
[2.5.2]製造方法
以下に該不織布170を製造する方法について説明する。まず、第1実施形態と同様に繊維ウェブ100を通気性支持部材である図16に示す支持部材270の上面側に載置する。言い換えると、繊維ウェブ100を支持部材270により下側から支持する。
【0148】
そして、繊維ウェブ100を支持部材270により支持したまま所定方向に移動させる。さらに移動されている繊維ウェブ100の上面側から主に気体からなる流体を噴きあてることにより、該不織布170を製造することができる。
【0149】
ここで、支持部材270は、例えば、略平行に並べられた所定の太さのワイヤ271に対し、他の所定の太さのワイヤ272を複数のワイヤ271同士を橋渡しするようにスパイラル状に交互に巻き付けるように形成したスパイラル織の通気性ネットである。
【0150】
該支持部材270におけるワイヤ271及びワイヤ272が不通気部となる。また、該支持部材270におけるワイヤ271及びワイヤ272で囲まれた部分が、孔部273となる。
【0151】
このような支持部材の場合、織り込み方や糸の太さ、糸形状を部分的に変化させることで、部分的に通気度を変化させることができる。例えば、ワイヤ271をステンレスの円形糸とし、ワイヤ272をステンレスの平形糸としてスパイラル織をした支持部材270を用いることができる。
【0152】
尚、不通気部であるワイヤ271及びワイヤ272は、例えば、複数のワイヤ(例えば2本)をよりあわせてワイヤ271又はワイヤ272として、よりあわせたワイヤ間に隙間が生じることにより、一部の主に気体からなる流体が通気するようにしてもよい。
【0153】
但し、このような場合の不通気部となるワイヤ271及びワイヤ272(特にワイヤの交点部分)の通気度は、通気部である孔部273における通気度に対して90%以下、好ましくは0から50%、さらに好ましくは0から20%を例示できる。ここで0%とは、実質的に主に気体からなる流体が通気できないことを示す。
【0154】
また、通気部となる孔部273等の領域における通気度は、例えば10000から60000cc/cm2・min、好ましくは20000から50000cc/cm2・minを例示することができる。但し、他の通気性支持部材として例えば金属のプレート等をくりぬいて通気部を形成したような場合は、主に気体からなる流体の該プレート部分への抵抗が無くなるため、上述した数値以上の通気度となる場合がある。
【0155】
支持部材において、不通気部となる領域が通気部を形成する領域よりも表面のすべり性が高い方が好ましい。すべり性が高いことにより、主に気体からなる流体が噴きあてられる領域と不通気部とが交差する領域において繊維101が移動しやすくなるため、窪み部3A及び突出部4Aの成形性を高めることができる。
【0156】
支持部材270に支持された繊維ウェブ100に主に気体からなる流体を噴きあてると、該主に気体からなる流体が噴きあてられた領域が溝部1となり、該溝部1が形成されることにより、相対的に突出する部分が凸状部2となる。溝部1及び凸状部2の形成については、第1実施形態に述べた通りである。
【0157】
また、溝部1において、支持部材270におけるワイヤ271とワイヤ272との交点部分に主に気体からなる流体が噴きあてられると、該主に気体からなる流体が該交点部分に跳ね返される。このため、該交点部分に支持されていた繊維101が前後左右に噴き寄せられて窪み部3Aが形成される。
【0158】
溝部1における支持部材270の孔部273の上面にあった領域は、主に気体からなる流体が噴きあてられることによって溝部1が形成され、溝部1において窪み部3Aが形成されることにより相対的に突出する突出部4Aが形成される。
【0159】
窪み部3Aでは、主に気体からなる流体が噴きあてられることにより、溝部1に略平行するように配向していた繊維101が凸状部2側に噴き寄せられ、また、溝部1に沿う方向に交差する方向に配向していた繊維101が突出部4A側に噴き寄せられる。このため、窪み部3Aでは目付が低く形成される。
【0160】
一方、突出部4Aにおいては、窪み部3Aから繊維101が噴き寄せられることにより、窪み部3Aよりも目付が高く形成される。
【0161】
また、該不織布170を製造する他の方法として、まず第1実施形態のように溝部1及び凸状部2が形成された不織布を製造し、その後、溝部1に対してエンボス加工を行うことにより、窪み部3A及び突出部4Aを形成して該不織布170を製造してもよい。この場合の窪み部3Aと突出部4Aにおける繊維密度や目付等の関係は本実施形態で述べた関係と逆となる場合がある。すなわち、突出部4Aにおける繊維密度や目付は、窪み部3Aにおける繊維密度や目付よりも低くなる場合がある。
【0162】
さらに該不織布170を製造する他の方法として、予め繊維ウェブ100に凸状部2や溝部1のような凹凸を形成しておき、その繊維ウェブ100にさらに繊維同士が自由度を有する他の繊維ウェブを重ね合わせた上に主に気体からなる流体を噴きあてるようにしてもよい。すると、噴きあてられた主に気体からなる流体により、上層の繊維ウェブにおいては凸状部と溝部とが形成されるが、溝部においては目付が低いことにより下層の繊維ウェブに形成されていた凹凸が露出して、本実施形態における突出部及び窪み部が形成される。その後、熱処理を行うことにより上層の繊維ウェブと下層の繊維ウェブとを一体化させる。
【0163】
本実施形態における不織布170は上述した不織布製造装置90により製造することができる。この不織布製造装置90における不織布170の製造方法等は、第1実施形態の不織布110の製造方法及び不織布製造装置90の説明における記載を参考にすることができる。
【0164】
[3]実施例
[3.1]第1実施例
<繊維構成>
低密度ポリエチレン(融点110℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、平均繊度3.3dtex、平均繊維長51mm、親水油剤がコーティングされた繊維Aと、高密度ポリエチレン(融点135℃)とポリエチレンテレフタレートの芯鞘構造で、繊維Aとの違いが撥水油剤のコーティングがされた繊維Bとの混綿を使用する。繊維Aと繊維Bとの混合比は、70:30であり、目付は40g/m2に調整された繊維集合体を使用した。
【0165】
繊維Aと繊維Bとの鞘成分には融点差があることで、繊維同士の交点強度に差ができるため、不織布の柔軟性が高まる。具体的には、オーブン温度を例えば120℃で設定すると繊維A同士の交点及び繊維Aと繊維Bとの交点では低密度ポリエチレンが溶融するため繊維同士は熱融着し、さらに、繊維A同士の交点強度の方が溶融する低密度ポリエチレンの量が多いため高くなる。また、繊維B同士は高密度ポリエチレンが溶融しないため熱融着しない。つまり、この時の交点強度の関係は、繊維A同士の交点強度が繊維Aと繊維Bとの交点強度よりも大きく、また、繊維Aと繊維Bとの交点強度が繊維B同士の交点強度よりも大きくなる。
【0166】
<製造条件>
図9における噴き出し口913は、直径が1.0mm、ピッチが6.0mmで複数形成される。また、噴き出し口913の形状は真円で噴き出し口913の断面形状は円筒型である。噴き出し部910の幅は500mmである。温度が105℃、風量が1200l/分の条件で熱風を噴きあてた。
【0167】
先に示した繊維構成で速度20m/分のカード機によって開繊して繊維ウェブを作成し、幅が450mmとなるように繊維ウェブをカットする。そして、速度3m/分で20メッシュの通気性ネット上に繊維ウェブを搬送する。また、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913による製造条件で熱風を繊維ウェブに噴きあてる一方で、通気性ネットの下方から噴きあてる熱風量より少ない吸収量で吸引(吸気)する。その後、通気性ネットで搬送した状態で温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内を約30秒で搬送させる。
【0168】
<結果>
・凸状部:目付は51g/m2、厚みが3.4mm(頂部の厚みが2.3mm)、繊維密度が0.03g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.6mm、ピッチが5.9mmであった。
・溝部:目付は24g/m2、厚みが1.7mm、繊維密度が0.01g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.2mm、ピッチが5.8mmであった。
・形状:溝部の裏面が該不織布の最裏面となり、凸状部の裏面形状は該凸状部と同様の方向に盛り上がり、該不織布の最裏面を形成しないように形成された。また、凸状部の断面形状は略ドーム状に形成され、凸状部と溝部は長手方向に沿って延びるように連続的に形成された。また、凸状部と溝部は、幅方向に互いに繰り返すように形成された。さらに凸状部の最表面では、繊維同士の交点強度が部分的に異なるように形成され、繊維密度が後に説明する他の実施例において形成された不織布の繊維密度に比べて最も低くなるように形成された。
【0169】
[3.2]第2実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0170】
<製造条件>
先に示した繊維構成の繊維ウェブを通気性ネットに載置し、温度125℃、熱風風量10Hzで設定したオーブン内に約30秒間搬送する。オーブン内から搬出した直後(約2秒後)に、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913の設計で温度120℃、風量2200l/分の条件で熱風を噴きあてる。
【0171】
<結果>
・凸状部:目付は34g/m2、厚みが2.8mm、繊維密度が0.04g/cm3(頂部の厚みが2.3mm)であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.0mm、ピッチが6.1mmであった。
・溝部:目付は21g/m2、厚みが1.1mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は2.1mm、ピッチが6.1mmであった。
・形状:凸状部及び溝部が形成された。
【0172】
[3.3]第3実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0173】
<製造条件>
先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913を用いて温度が105℃、風量1000l/分の条件で熱風を噴きあてる一方で、通気性ネットの下方から、噴きあてられる熱風量とほぼ同等又は若干多く吸引(吸気)する。
【0174】
<結果>
・凸状部:目付は49g/m2、厚みが3.5mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.7mm、ピッチが6.1mmであった。
・溝部:目付は21g/m2、厚みが1.8mm、繊維密度が0.01g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.4mm、ピッチが6.1mmであった。
・形状:凸状部及び溝部が形成され、凸状部の裏面形状は下方と接触するように略平坦となった。
【0175】
[3.4]第4実施例
<繊維構成>
繊維構成は第1実施例と同様である。
【0176】
<製造条件>
先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913を用いて温度が80℃、風量が1800l/分の条件で空気流を噴きあてる。そして、先に示した繊維構成の繊維ウェブを長手方向に5mmのピッチ、及び幅方向に5mmのピッチで千鳥状に配置されたニードルにより、200回/分、長手方向に沿って向かう方向に速度3m/分でニードルパンチを施して繊維同士を半交絡させる。その後、先に示した噴き出し部910及び噴き出し口913による製造条件で空気流を噴きあてる。また同時に通気性ネットの下方から熱風量とほぼ同等もしくは若干多い吸収量で吸引(吸気)する。
【0177】
<結果>
・凸状部:目付は45g/m2、厚みが2.3mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該凸状部一つ当たりの幅は4.3mm、ピッチが5.8mmであった。
・溝部:目付は17g/m2、厚みが0.8mm、繊維密度が0.02g/cm3であり、該溝部一つ当たりの幅は1.0mm、ピッチが5.9mmであった。
・形状:凸状部と溝部が長手方向に沿って延びるように連続的に形成された。また、該凸状部と溝部とは部分的に下方へ向く交絡点を有し、幅方向において互いに繰り返すように形成された。
【0178】
[4]用途例
本発明における不織布の用途として、例えば、生理用ナプキン、ライナー、おむつ等の吸収性物品における表面シート等を例示できる。この場合、凸状部は肌面側、裏面側のどちらであってもよいが、肌面側にすることによって、肌との接触面積が低下するため体液による湿り感を与えにくい場合がある。また、吸収性物品の表面シートと吸収体との間の中間シートとしても使用できる。表面シートもしくは吸収体との接触面積が低下するため、吸収体からの逆戻りがしにくい場合がある。また、吸収性物品のサイドシートや、おむつ等の外面(アウターバック)、面ファスナー雌材等でも、肌との接触面積の低下やクッション感があることから用いることができる。また、床や身体に付着したゴミや垢等を除去するためのワイパー、マスク、母乳パッド等多方面に使用することができる。
【0179】
[4.1]吸収性物品の表面シート
本発明における不織布の用途として、図17、図18に示すように、例えば、凸状部と溝部とを有し、溝部の目付が凸状部よりも低い不織布を吸収性物品の表面シート301、302として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が肌側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0180】
該不織布を吸収性物品の表面シート301、302として使用した場合、所定の液体が排泄されると、該液体は主として溝部に落とし込まれる。本発明における不織布は、溝部における目付が低い。すなわち、単位面積当たりの繊維本数が少ないことで液体透過の阻害要素が少ないため、液体を速やかに下方へ移行させることができる。
【0181】
さらに、溝部における目付が低いとしても、溝部における繊維の大部分が幅方向に配向しているので、幅方向への引張強度が高く、吸収性物品の着用中に幅方向への摩擦等の力が加わって該表面シート301、302が破損することを防止することができる。
【0182】
一方で、凸状部は相対的に目付が高い。これは、溝部を形成する際に主に気体からなる流体により繊維が移動し、その移動した繊維によって凸状部の側部が形成されているためである。凸状部における側部は、繊維同士が密集しているため剛性が高い。さらに凸状部において側部に挟まれた中央部には、厚さ方向に配向する繊維が多く含まれているため、荷重が凸状部に加わっても容易に潰されることを防止し、たとえ凸状部が荷重により潰されたとしても圧縮回復性が高い。
【0183】
これにより、体勢が変化することにより表面シート301、302にかかる荷重が変化しても、肌との接触面積を低く保つことができるため、触感性を維持することができ、さらには、一旦吸収体で吸収した液体が逆戻りしたとしても肌に広く再付着しにくくなる。
【0184】
[4.2]吸収性物品の中間シート
本発明における不織布の用途として、図19に示すように、例えば、溝部と凸状部とを有し、溝部の目付が相対的に低い不織布を吸収性物品の中間シート311として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が表面シート310側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0185】
凸状部が形成された面が表面シート310側になるように該不織布を中間シート311として配置することにより、表面シート310と中間シート311との間に複数の空間を設けることができる。このため、多量の液体が短時間で排泄された場合でも液体透過の阻害要素が少ないため、該液体が表面シート310で広く広がってしまうことを防止できる。
【0186】
さらには、一旦中間シー311を透過して吸収体で吸収した液体が逆戻りしたとしても、中間シート311と表面シート310との接触率が低いため、該液体が表面シート310に戻って肌に広く再付着しにくくなる。
【0187】
また、該中間シート311における凸状部の中央部は側部や溝部に比べて厚さ方向に配向する繊維が多く含まれ、凸状部の頂点と表面シート310とが接触しているため、表面シート310に残留した液体を厚さ方向へ引き込みやすくなる。これにより、表面シート310に液体が残留しにくくなる。
【0188】
このように、表面シート310でのスポット性と液体の低残留性を得ることができ、肌に液体を広く長時間付着させることを防止することができる。さらには、凸状部の側部は、移動された繊維によって主に形成されているため、長手方向に配向する縦配向繊維の含有率が高い。これにより、表面シート310から中間シート311の側部に移行した例えば経血等の液体を長手方向へと誘導することができる。したがって、幅方向へ液体が拡散しても吸収性物品からの漏れを誘発することを防止し、吸収体の吸収効率を高めることができる。
【0189】
[4.3]吸収性物品のアウターバック
本発明における不織布の用途として、図20に示すように、例えば、溝部及び凸状部を有し、溝部における繊維密度が相対的に低い不織布を、例えばオムツ等の吸収性物品の外面(アウターバック321)として使用した場合を例示できる。この場合、凸状部が形成された面が該吸収性物品の外側になるように該不織布が配置されることが好ましい。
【0190】
該アウターバック321における凸状部が形成された面が吸収性物品の外側となるように配置されるため、該吸収性物品を使用する際に主として手に触れた場合に触感が良くなる。また、溝部における繊維密度が低いため、通気性に優れる。
【0191】
[5]各構成物
以下に、各構成物について詳述する。
【0192】
[5.1]不織布関連
[5.1.1]繊維集合体
繊維集合体は、略シート状に形成された繊維集合体であって該繊維集合体を構成する繊維が自由度を有する状態であるものである。言い換えると、繊維同士の自由度を有する繊維集合体である。ここで、繊維同士の自由度とは、繊維集合体である繊維ウェブが主に気体からなる流体によって繊維が自由に移動することが可能な程度のことをいう。この繊維集合体は、例えば、複数の繊維を混合した混合繊維を所定厚さの繊維層を形成するように噴き出すことで形成することができる。また、例えば、複数の異なる繊維それぞれを、複数回に分けて積層させて繊維層を形成するように噴出することで形成することができる。
【0193】
本発明における繊維集合体として、例えば、カード法により形成される繊維ウェブ、もしくは熱融着されて繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、エアレイド法により形成されたウェブ、もしくは熱融着されて繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、ポイントボンド法でエンボスされた熱融着が固化する以前の繊維ウェブを例示できる。また、スパンボンド法により紡糸されエンボスされる以前の繊維集合体、もしくはエンボスされた熱融着が固化する以前の繊維集合体を例示できる。また、ニードルパンチ法により形成され半交絡された繊維ウェブを例示できる。また、スパンレース法により形成され半交絡された繊維ウェブを例示できる。また、メルトブローン法により紡糸され繊維同士の熱融着が固化する以前の繊維集合体を例示できる。また、溶剤接着法によって形成された溶剤により繊維同士が固化する以前の繊維集合体を例示できる。
【0194】
また、好ましくは、空気(気体)流によって繊維を再配列しやすいのは、比較的長繊維を使用するカード法で形成した繊維ウェブであり、さらには繊維同士の自由度が高く交絡のみで形成される熱融着以前のウェブを例示できる。また、複数の空気(気体)流により溝部(凹凸)等を形成した後に、その形状を保持したまま不織布化させるには、所定の加熱装置等によりオーブン処理(加熱処理)することで繊維集合体に含まれる熱可塑性繊維を熱融着させるスルーエアー法が好ましい。
【0195】
[5.1.2]繊維
繊維集合体を構成する繊維(例えば、図1に示す繊維ウェブ100を構成する繊維101)として、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド等の熱可塑性樹脂で構成し、各樹脂を単独、もしくは複合した繊維が挙げられる。
【0196】
複合形状は、例えば、芯成分の融点が鞘成分より高い芯鞘タイプ、芯鞘の偏芯タイプ、左右成分の融点が異なるサイドバイサイドタイプが挙げられる。また、中空タイプや、扁平やY型やC型等の異型や、潜在捲縮や顕在捲縮の立体捲縮繊維、水流や熱やエンボス等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
【0197】
また、3次捲縮形状を形成するために、所定の顕在捲縮繊維や潜在捲縮繊維を配合することができる。ここで、3次元捲縮形状とはスパイラル状・ジグザグ状・Ω状等であり、繊維配向は主体的に平面方向へ向いていても部分的には繊維配向が厚み方向へ向くことになる。これにより、繊維自体の挫屈強度が厚み方向へ働くため、外圧が加わっても嵩が潰れにくくなる。さらには、これらの中でも、スパイラル状の形状であれば、外圧が解放されたときに形状が元に戻ろうとするため、過剰な外圧で嵩が若干潰れても外圧解放後には元の厚みに戻りやすくなる。
【0198】
顕在捲縮繊維は、機械捲縮による形状付与や、芯鞘構造が偏芯タイプ、サイドバイサイド等で予め捲縮されている繊維の総称である。潜在捲縮繊維は、熱を加えることで捲縮が発現するものである。
【0199】
機械捲縮とは、紡糸後の連続で直線状の繊維に対し、ライン速度の周速差・熱・加圧によって制御でき、単位長さ当たりの捲縮個数が多いほど、外圧下に対する挫屈強度を高めることができる。例えば、捲縮個数は10から35個/inch、さらには15から30個/inchの範囲であることが好ましい。
【0200】
熱収縮による形状付与とは、融点の異なる2つ以上の樹脂からなり、熱を加えると融点差により熱収縮率が変化しているため、3次元捲縮する繊維のことである。繊維断面の樹脂構成は、芯鞘構造の偏芯タイプ、左右成分の融点が異なるサイドバイサイドタイプが挙げられる。このような繊維の熱収縮率は、例えば、5から90%、さらには10から80%の範囲を好ましい値として例示できる。
【0201】
熱収縮率の測定方法は、(1)測定する繊維100%で200g/m2のウェブを作成し、(2)250×250mmの大きさにカットしたサンプルをつくり、(3)このサンプルを145℃(418.15K)のオーブン内に5分間放置し、(4)収縮後の長さ寸法を測定し、(5)熱収縮前後の長さ寸法差から算出することができる。
【0202】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、繊度は、例えば、液体の入り込みや肌触りを考慮すると、1.1から8.8dtexの範囲であることが好ましい。
【0203】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、繊維集合体を構成する繊維として、例えば、肌に残るような少量な経血や汗等をも吸収するために、パルプ、化学パルプ、レーヨン、アセテート、天然コットン等のセルロース系の液親水性繊維が含まれていてもよい。ただし、セルロース系繊維は一度吸収した液体を排出しにくいため、例えば、全体に対し0.1から5質量%の範囲で混入する場合を好ましい態様として例示できる。
【0204】
本不織布を表面シートとして用いる場合は、例えば、液体の入り込み性やリウェットバックを考慮して、前記に挙げた疎水性合成繊維に、親水剤や撥水剤等を練り込んだり、コーティング等されていてもよい。また、コロナ処理やプラズマ処理によって親水性を付与してもよい。また、撥水性繊維を含んでもよい。ここで、撥水性繊維とは、既知の撥水処理を行った繊維のことをいう。
【0205】
また、白化性を高めるために、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーが含有されていてもよい。芯鞘タイプの複合繊維である場合は、芯にのみ含有していてもよいし、鞘にも含有してあってもよい。
【0206】
また、先に示した通り、空気流によって繊維を再配列しやすいのは比較的長繊維を使用するカード法で形成した繊維ウェブであり、複数の空気流により溝部(凹凸化)等を形成した後にその形状を保持したまま不織布化させるには、オーブン処理(加熱処理)で熱可塑性繊維を熱融着させるスルーエアー法が好ましい。この製法に適した繊維としては、繊維同士の交点が熱融着するために芯鞘構造、サイドバイサイド構造の繊維を使用することが好ましく、さらには鞘同士が確実に熱融着しやすい芯鞘構造の繊維で構成されていることが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとからなる芯鞘複合繊維や、ポリプロピレンとポリエチレンとからなる芯鞘複合繊維を用いることが好ましい。これらの繊維は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維長は20から100mm、特には35から65mmが好ましい。
【0207】
[5.2]不織布製造装置関連
[5.2.1]主に気体からなる流体
本発明にける主に気体からなる流体は、例えば、常温もしくは所定温度に調整された気体、又は、該気体に固体もしくは液体の微粒子が含まれるエーロゾルを例示できる。
【0208】
気体として、例えば、空気、窒素等を例示できる。また、気体は、水蒸気等の液体の蒸気を含むものである。
【0209】
エーロゾルとは、気体中に液体又は固体が分散したものであり、以下にその例を挙げる。例えば、着色のためのインクや、柔軟性を高めるためのシリコン等の柔軟剤や、帯電防止及びヌレ性を制御するための親水性もしくは撥水性の活性剤や、流体のエネルギーを高めるための酸化チタン、硫酸バリウム等の無機フィラーや、流体のエネルギーを高めると共に加熱処理において凹凸成形維持性を高めるためのポリエチレン等のパウダーボンドや、かゆみ防止のための塩酸ジフェンヒドラミン、イソプロピルメチルフェノール等の抗ヒスタミン剤や、保湿剤や、殺菌剤等を分散させたものを例示できる。ここで、固体は、ゲル状のものを含む。
【0210】
主に気体からなる流体の温度は適宜調整することができる。繊維集合体を構成する繊維の性質や、製造すべき不織布の形状に応じて適宜調整することができる。
【0211】
ここで、例えば、繊維集合体を構成する繊維を好適に移動させるには、主に気体からなる流体の温度は、ある程度高い温度である方が繊維集合体を構成する繊維の自由度が増すため好ましい。また、繊維集合体に熱可塑性繊維が含まれる場合には、主に気体からなる流体の温度を該熱可塑性繊維が軟化可能な温度にすることで、主に気体からなる流体が噴きあてられた領域等に配置される熱可塑性繊維を軟化もしくは溶融させると共に、再度硬化させるよう構成することができる。
【0212】
これにより、例えば、主に気体からなる流体が噴きあてられることで不織布の形状が維持される。また、例えば、繊維集合体が所定の移動手段により移動される際に該繊維集合体(不織布)が散けない程度の強度が与される。
【0213】
主に気体からなる流体の流量は、適宜調整することができる。繊維同士が自由度を有する繊維集合体の具体例として、例えば、鞘に高密度ポリエチレン、芯にポリエチレンテレフタレートからなり、繊維長が20から100mm、好ましくは35から65mm、繊度が1.1から8.8dtex、好ましくは2.2から5.6dtexの芯鞘繊維を主体とし、カード法による開繊であれば繊維長が20から100mm、好ましくは35から65mm、エアレイド法による開繊であれば繊維長が1から50mm、好ましくは3から20mmの繊維を用い、10から1000g/m2、好ましくは15から100g/m2で調整した繊維ウェブ100を例示できる。主に気体からなる流体の条件として、例えば、図8又は図9に示す複数の噴き出し口913が形成された噴き出し部910(噴き出し口913:直径が0.1から30mm、好ましくは0.3から10mm:ピッチが0.5から20mm、好ましくは3から10mm:形状が真円、楕円や長方形)において、温度が15から300℃(288.15Kから573.15K)、好ましくは100から200℃(373.15Kから473.15K)の熱風を、風量3から50[L/(分・孔)]、好ましくは5から20[L/(分・孔)]の条件で繊維ウェブ100噴きあてる場合を例示できる。例えば、主に気体からなる流体が上記条件で噴きあてられた場合に、構成する繊維がその位置や向きを変更可能である繊維集合体が、本発明における繊維集合体における好適なものの一つである。このような繊維、製造条件で作成することにより、例えば図2、3で示される不織布を成形できる。溝部1や凸状部2の寸法や目付は以下の範囲で得ることができる。溝部1では、厚み0.05から10mm、好ましくは0.1から5mmの範囲、幅は0.1から30mm、好ましくは0.5から5mmの範囲、目付は2から900g/m2、好ましくは10から90g/m2の範囲である。凸状部2では、厚み0.1から15mm、好ましくは0.5から10mmの範囲、幅は0.5から30mm、好ましくは1.0から10mmの範囲、目付は5から1000g/m2、好ましくは10から100g/m2の範囲であるまた、おおよそ上記数値範囲で不織布を作成できるが、この範囲に限定されるものではない。
【0214】
[5.2.2]通気性支持部材
通気性支持部材200として、繊維ウェブ100を支持する側が略平面状又は略曲面状であると共に、略平面状又は略曲面状における表面は略平坦である支持部材を例示できる。略平面状又は略曲面状として、例えば、板状や円筒状を例示できる。また、略平坦状とは、例えば、支持部材における繊維ウェブ100を載置する面自体が凹凸状等に形成されていないことをいう。具体的には、網状支持部材210における網が凹凸状等に形成されていない支持部材を例示することができる。
【0215】
この通気性支持部材として、例えば、板状の支持部材や円筒状の支持部材を例示することができる。具体的には、上述した網状支持部材210、支持部材270を例示することができる。
【0216】
ここで、通気性支持部材200は、不織布製造装置90に着脱可能に配置することがきる。これにより、所望の不織布に応じた通気性支持部材200を適宜配置することができる。言い換えると、不織布製造装置90において、通気性支持部材200は、異なる複数の通気性支持部材から選択される他の通気性支持部材と交換可能である。
【0217】
図4に示す網状支持部材210、図16における支持部材270について以下に説明する。この通気性の網状部分として、例えば、ポリエステル・ポリフェニレンサルファイド・ナイロン・導電性モノフィラメント等の樹脂による糸、もしくはステンレス・銅・アルミ等の金属による糸等で、平織・綾織・朱子織・二重織・スパイラル織等で織り込まれた通気性ネットを例示できる。
【0218】
ここで、この通気性ネットにおける通気度は、例えば、織り込み方や糸の太さ、糸形状を部分的に変化させることで、部分的に通気度を変化させることができる。具体的には、ポリエステルによるスパイラル織の通気性メッシュ、ステンレスによる平形糸と円形糸によるスパイラル織の通気性メッシュを例示できる。
【0219】
板状支持部材として、例えば、ステンレス・銅・アルミ等の金属で作成されたスリーブを例示できる。スリーブは、上記金属の板を所定パターンで部分的に抜いたものを例示できる。この金属がくり抜かれた箇所は通気部となり、金属がくり抜かれていない箇所は不通気部となる。また、上記と同様に不通気部においては、表面のすべり性を高めるためにその表面は平滑であることが好ましい。
【0220】
スリーブとして、例えば、長さが3mmで幅40mmの各角を丸くした横長方形で金属がくり抜かれた孔部が、ライン流れ方向(移動方向)においては2mmの間隔を空け、幅方向では3mmの間隔を空けて格子状に配置される、厚みが0.3mmのステンレス製のスリーブを例示することができる。
【0221】
また、孔部が千鳥状に配置されたスリーブを例示できる。例えば、直径4mmの円形で金属がくり抜かれた孔部が、ライン流れ方向(移動方向)においてピッチ12mm、幅方向ではピッチ6mmの千鳥状に配置される、厚みが0.3mmのステンレス製のスリーブを例示できる。このように、くり抜かれるパターン(形成される孔部)や配置は適時設定できる。
【0222】
さらに、所定の起伏が設けられた図12に示す網状支持部材260を例示できる。例えば、主に気体からなる流体が直接噴きあてられない箇所がライン流れ方向(移動方向)へ交互に起伏(例えば、波状)を有する通気性支持部材を例示できる。このような形状の網状支持部材260を用いることで、例えば、所定の開口部が形成されると共に、全体的に網状支持部材260における交互に起伏(例えば、波状)した形状に形成された不織布を得ることができる。
【0223】
[5.2.3]噴きあて手段
噴き出し部910を、主に気体からなる流体の向きを変更可能にすることで、例えば、形成される凹凸における凹部(溝部)の間隔や、凸状部の高さ等を適宜調整することができる。また、例えば、上記流体の向きを自動的に変更可能に構成することで、例えば、溝部等を蛇行状(波状、ジグザグ状)や他の形状となるよう適宜調整することができる。また、主に気体からなる流体の噴き出し量や噴き出し時間を調整することで、溝部や開口部の形状や形成パターンを適宜調整することができる。主に気体からなる流体の繊維ウェブ100に対する噴きあて角度は、垂直であってもよく、また、繊維ウェブ100の移動方向Fにおいて、該移動方向Fであるライン流れ方向へ所定角度だけ向いていても、ライン流れ方向とは逆へ所定角度だけ向いていてもよい。
【0224】
[5.2.4]加熱手段
所定の開口部が形成された不織布170における繊維101を接着させる方法として、例えば、ニードルパンチ法、スパンレース法、溶剤接着法による接着や、ポイントボンド法やエアースルー法による熱接着が例示できるが、形成された所定の開口部の形状を維持するためは、エアースルー法が好ましい。そして、例えば、ヒータ部950によるエアースルー法における熱処理が好ましい。
【0225】
[5.2.5]その他
ヒータ部950により加熱されて製造された不織布は、コンベア930と所定方向Fにおいて連続するコンベア940により、例えば、不織布を所定形状に切断する工程や巻き取る工程に移動される。コンベア940は、コンベア930と同様に、ベルト部949と、回転部941等を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】繊維ウェブの斜視図である。
【図2】第1実施形態の不織布における平面図及び底面図である。
【図3】図2における領域Xの拡大斜視図である。
【図4】網状支持部材の平面図及び斜視図である。
【図5】図1の繊維ウェブが下面側を図4の網状支持部材に支持された状態で上面側に気体を噴きあてられて図2の第1実施形態の不織布が製造された状態を示す図である。
【図6】第1実施形態の不織布製造装置を説明する側面図である。
【図7】図6の不織布製造装置を説明する平面図である。
【図8】図6における領域Zの拡大斜視図である。
【図9】図8における噴き出し部の底面図である。
【図10】第2実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図11】第3実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図12】第3実施形態における網状支持部材の拡大斜視図である。
【図13】第4実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図14】第5実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図15】第6実施形態における不織布の拡大斜視図である。
【図16】第6実施形態における支持部材の拡大平面図である。
【図17】本発明にかかる不織布を生理用ナプキンの表面シートに使用した場合の斜視断面図である。
【図18】本発明にかかる不織布をオムツの表面シートに使用した場合の斜視図である。
【図19】本発明にかかる不織布を吸収性物品の中間シートとして使用した場合の斜視断面図である。
【図20】本発明にかかる不織布を吸収性物品のアウターバックとして使用した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0227】
1 溝部
2 凸状部
100 繊維ウェブ
110 不織布
210 網状支持部材
910 噴き出し部
920 送気管
915 吸引部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に気体からなる流体を繊維集合体に噴きあてることにより形成される、縦方向と横方向とを有する不織布であって、
前記縦方向に沿って形成された複数の低目付部と、
前記複数の低目付部それぞれに沿って隣接するように形成された複数の高目付部と、を有し、
前記複数の低目付部それぞれにおける目付は、前記複数の高目付部それぞれにおける目付より低い、不織布。
【請求項2】
前記複数の低目付部それぞれにおける繊維密度は、前記複数の高目付部それぞれにおける繊維密度以下である請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記複数の低目付部は、横配向繊維の含有率が、縦配向繊維の含有率よりも高い請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記複数の低目付部それぞれは、該不織布における一方の面側であって該不織布における厚さ方向に窪む複数の溝部であり、
前記複数の高目付部は、前記一方の面側において前記厚さ方向に突出する複数の凸状部である請求項1から3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記複数の溝部それぞれにおける目付は、前記複数の凸状部それぞれにおける目付の90%以下である請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記複数の溝部それぞれにおける目付は3g/m2から200g/m2であり、
前記複数の凸状部それぞれにおける目付は15g/m2から250g/m2である請求項4又は5に記載の不織布。
【請求項7】
前記複数の凸状部それぞれにおける繊維密度は、0.20g/cm3以下であり、
前記複数の溝部それぞれにおける繊維密度は、0.18g/cm3以下である請求項4から6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
前記複数の溝部それぞれにおける、前記厚さ方向の高さは、前記凸状部の前記高さの90%以下である、請求項4から7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
前記複数の溝部それぞれは、該溝部の底部に形成される該底部の平均目付よりも目付が低い複数の領域を備える請求項4から8のいずれかに記載の不織布。
【請求項10】
前記複数の領域のそれぞれは、開口部である請求項9に記載の不織布。
【請求項11】
前記複数の開口部それぞれの周縁における繊維は、前記周縁に沿うように配向する請求項10に記載の不織布。
【請求項12】
前記複数の凸状部における所定の凸状部は、前記複数の溝部における所定の溝部を挟んで隣り合う凸状部と前記厚さ方向の高さが異なる請求項4から11のいずれかに記載の不織布。
【請求項13】
前記複数の凸状部それぞれにおける頂部は略扁平状である請求項4から12のいずれかに記載の不織布。
【請求項14】
前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側には、前記複数の凸状部それぞれにおける突出方向と反対側に突出する複数の領域が形成される、請求項4から13のいずれかに記載の不織布。
【請求項15】
前記縦方向において波状に起伏する請求項1から14のいずれかに記載の不織布。
【請求項16】
前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側は、略平坦である請求項4から14のいずれかに記載の不織布。
【請求項17】
前記繊維集合体を構成する繊維は撥水性の繊維を含んでいる請求項1から16のいずれかに記載の不織布。
【請求項1】
主に気体からなる流体を繊維集合体に噴きあてることにより形成される、縦方向と横方向とを有する不織布であって、
前記縦方向に沿って形成された複数の低目付部と、
前記複数の低目付部それぞれに沿って隣接するように形成された複数の高目付部と、を有し、
前記複数の低目付部それぞれにおける目付は、前記複数の高目付部それぞれにおける目付より低い、不織布。
【請求項2】
前記複数の低目付部それぞれにおける繊維密度は、前記複数の高目付部それぞれにおける繊維密度以下である請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記複数の低目付部は、横配向繊維の含有率が、縦配向繊維の含有率よりも高い請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記複数の低目付部それぞれは、該不織布における一方の面側であって該不織布における厚さ方向に窪む複数の溝部であり、
前記複数の高目付部は、前記一方の面側において前記厚さ方向に突出する複数の凸状部である請求項1から3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記複数の溝部それぞれにおける目付は、前記複数の凸状部それぞれにおける目付の90%以下である請求項4に記載の不織布。
【請求項6】
前記複数の溝部それぞれにおける目付は3g/m2から200g/m2であり、
前記複数の凸状部それぞれにおける目付は15g/m2から250g/m2である請求項4又は5に記載の不織布。
【請求項7】
前記複数の凸状部それぞれにおける繊維密度は、0.20g/cm3以下であり、
前記複数の溝部それぞれにおける繊維密度は、0.18g/cm3以下である請求項4から6のいずれかに記載の不織布。
【請求項8】
前記複数の溝部それぞれにおける、前記厚さ方向の高さは、前記凸状部の前記高さの90%以下である、請求項4から7のいずれかに記載の不織布。
【請求項9】
前記複数の溝部それぞれは、該溝部の底部に形成される該底部の平均目付よりも目付が低い複数の領域を備える請求項4から8のいずれかに記載の不織布。
【請求項10】
前記複数の領域のそれぞれは、開口部である請求項9に記載の不織布。
【請求項11】
前記複数の開口部それぞれの周縁における繊維は、前記周縁に沿うように配向する請求項10に記載の不織布。
【請求項12】
前記複数の凸状部における所定の凸状部は、前記複数の溝部における所定の溝部を挟んで隣り合う凸状部と前記厚さ方向の高さが異なる請求項4から11のいずれかに記載の不織布。
【請求項13】
前記複数の凸状部それぞれにおける頂部は略扁平状である請求項4から12のいずれかに記載の不織布。
【請求項14】
前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側には、前記複数の凸状部それぞれにおける突出方向と反対側に突出する複数の領域が形成される、請求項4から13のいずれかに記載の不織布。
【請求項15】
前記縦方向において波状に起伏する請求項1から14のいずれかに記載の不織布。
【請求項16】
前記一方の面側とは反対側の面である他方の面側は、略平坦である請求項4から14のいずれかに記載の不織布。
【請求項17】
前記繊維集合体を構成する繊維は撥水性の繊維を含んでいる請求項1から16のいずれかに記載の不織布。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−25079(P2008−25079A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270105(P2006−270105)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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