説明

不飽和アルデヒド又はカルボン酸を製造するための酸化反応器における発泡体の使用

【課題】従来の方法と同一のコンプレッサー出力で高いスループットを達成することができる方法を提供すること。
【解決手段】不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、
i)飽和炭化水素を含む気体混合物を用意し、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器内において、前記飽和炭化水素の接触気相脱水素を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る工程と、
ii)酸素と不飽和炭化水素を含む気体混合物を用意する工程と、
iii)第1の酸化触媒材料を備えた第1の酸化反応器内において、前記工程i)で得られた不飽和炭化水素又は前記工程ii)で用意した不飽和炭化水素の接触気相酸化を行って不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る工程と、を含み、前記脱水素反応器又は前記第1の酸化反応器が発泡体を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飽和又は不飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法、不飽和カルボン酸からなるポリマーの製造方法、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸からなるポリマーの製造装置並びに装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンの部分酸化生成物としてのアクリル酸は、例えば、超吸収性ポリマーの製造に使用されたり、接着剤を製造するためにアルキルエステルとして使用される重要なモノマーである(例えば、国際公開第WO02/055469号及び国際公開第WO03/078378号を参照)。アクロレインは、例えば、グルタルアルデヒド、メチオニン、葉酸及びアクリル酸を製造するための重要な中間体である。
【0003】
同様に、メタクリル酸及びメタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル及びメタクリル酸ブチル等)も様々な用途において使用されている。典型的な最終用途としては、アクリルポリマーウェブ又はフィルム、モールド樹脂、ポリ塩化ビニル変性剤、加工助剤、アクリルコーティング材料、床用組成物、シーリング材、自動車変速機用流体、クランク室油調整剤、自動車用コーティング、イオン交換樹脂、セメント又は接着剤用変性剤、水処理ポリマー、電子用接着剤、金属コーティング及びアクリル繊維が挙げられる。
【0004】
プロピレン又はイソブテンの気相酸化によって(メタ)アクロレイン及び/又は(メタ)アクリル酸を製造する公知の工業規模の方法(例えば、ドイツ特許第19 62 431号を参照)は、通常は、管板間に溶接された多数(場合によっては30,000以上)の反応管を有する管束反応器内において行われる。この場合、200〜450℃の温度で、必要に応じて圧力を上昇させて反応を行うことが好ましい。反応管には、固定床を形成する不均一系酸化触媒が充填されており、反応混合物は固定床内を流れる。固定床は、好ましくは、複合金属酸化物からなり、球、リング又は円筒形状を有する触媒材料又は予め形成した不活性担体を触媒活性物質でコートすることによって得られた被覆触媒を含む。
【0005】
プロピレンからアクリル酸又はイソブテンからメタクリル酸への二段階固定床気相酸化あるいは脱水素及び二段階固定床気相酸化又はプロパン又はイソブタンの直接酸化によるプロパン又はイソブタンからアクリル酸又はメタクリル酸への転化の目的は、アクリル酸又はメタクリル酸(STYAA又はSTYMAA)の最大の空間−時間収率1時間当たり及び連続処理に使用する触媒床の全体積(L)当たりのアクリル酸又はメタクリル酸の総量)を達成することにある。従って、プロピレンからアクリル酸又はイソブテンからメタクリル酸への二段階固定床気相酸化を、固定触媒床に対してプロピレン又はイソブテンの空間速度(出発反応気体混合物の成分として1Lの触媒床内を流れる1時間当たりのプロピレン又はイソブテンの量(標準リットル(=l(STP));25℃及び1バールにおけるプロピレン又はイソブテンの対応する量))が最大となり、出発反応気体混合物が2つの固定触媒床を通過する際に生じるプロピレン又はイソブテン及びアクロレイン又メタクロレインの転化並びに両反応病段階におけるアクリル酸又はメタクリル酸精製(転化されたプロピレン又はイソブテンに基づく)の選択性を損なうことなく、固定触媒床に対してアクロレイン又メタクロレインの空間速度(出発反応気体混合物の成分として1Lの触媒床内を流れる1時間当たりのアクロレイン又メタクロレインの量(標準リットル(=l(STP));25℃及び1バールにおけるアクロレイン又メタクロレインの対応する量))が最大となるように行うことが望まれる。
【0006】
しかし、プロピレン又はイソブテンからアクロレイン又はメタクロレインへの固定床気相酸化及びアクロレイン又はメタクロレインからアクリル酸又はメタクリル酸への固定床気相酸化は、非常に発熱的に進行し、様々な併発及び後発反応を伴うため、上述した事項を達成することは困難である。特定の固定触媒上でのプロピレン又はイソブテンの速度及びアクロレイン又はメタクロレインの速度を増加させると、実質的に均一なプロピレン又はイソブテンの転化及び実質的に均一なアクロレイン又はメタクロレインの転化の所望の境界条件が達成されると、熱発生の増加により、付加価値の高い生成物の選択性が低下する(例えば、欧州特許第450 596号を参照)。
【0007】
従って、付加価値の高い生成物の選択性を向上させるためには、プロピレン又はイソブテンの転化時に放出される反応熱及びアクロレイン又はメタクロレインの転化時に放出される反応熱を除去することが必要である。上述した管束反応器では、少なくとも1種の熱交換媒体(塩溶融物等)を、管束反応器のシェル側において反応管の周囲に流している。
【0008】
しかしながら、上述した従来の管束反応器には多くの欠点がある。
【0009】
まず、熱交換型媒体を使用しているにもかかわらず、固定触媒床においては除去することができる放出反応熱は限られており、固定床の熱除去が不十分となる。固定床の熱除去が不十分であると、管径が約2.5〜3cmに制限され、十分な空間−時間収率を得るために、3万本を超える反応管を使用しなければならない場合がある。この場合、溶接個所の数が多いため、多数の反応管を使用することによって資本コストが増加する。また、同量及び同等の嵩比重の触媒を反応管に導入しなければならないため、触媒充填手順が非常に複雑になる。これは、全ての反応管において圧力低下を同一にするために重要である。反応管における均一な圧力低下は、反応物質の均一な転化と副生成物の生成の最小化のために重要である。
【0010】
また、熱除去媒体を使用しているにもかかわらず、管径が約2.5〜3cmであっても、90℃以上の温度プロファイルが反応器の軸方向において生じる場合がある。その結果、反応管に「ホットスポット」(特に発熱が多い領域)が生じ、これらの領域における触媒の寿命が限定されてしまう。ホットスポットにおける熱交換媒体と触媒の温度差は、スループットの増加に伴って増加する。また、ホットスポット温度の形成により、生成物の転化選択性が低下する。目的生成物を生成する選択性を向上させるために、マルチゾーン管束反応器(例えば、2ゾーン管束反応器)におけるマルチゾーン法(例えば、2ゾーン法)として、アクロレインからアクリル酸又はメタクロレインからメタクリル酸への不均一系接触部分気相酸化、プロパン又はイソブタンのプロピレン又はイソブテンへの脱水素、プロピレン又はイソブテンのアクロレイン又はメタクロレインへの酸化あるいはプロパン又はイソブタンのアクリル酸又はメタクリル酸への直接酸化を行うことが提案されている。この場合、複数(例えば、2)の実質的に空間的に分離された液体熱交換媒体(通常は同じ種類)を、(反応管を囲む空間に挿入され、反応管のためのオリフィスを有する管板によって分離されていてもよい)反応管を囲む空間に流す。
【0011】
従来の管束反応器のさらなる欠点は、熱交換媒体の温度変化が反応管の反応領域における温度に非常に強くて直接的な影響を与え、反応器内において反応の暴走が容易に生じ得る。また、従来の管束反応器には、主反応は上述したホットスポット領域で生じるが、反応器の後部(反応器の全長の約2/3)では反応温度が低過ぎるという欠点がある。従って、十分な転化を達成するために、反応器の後部では大量の触媒材料と長い滞留時間が必要である。
【0012】
最後に、管束反応器に使用される従来の固定触媒床は高い圧力低下を引き起こす場合が多く、コンプレッサー出力を調整することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO02/055469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、飽和炭化水素の直接酸化に関連する従来技術の欠点並びに飽和炭化水素の接触脱水素反応及び後続する接触気相酸化及び不飽和炭化水素又は不飽和アルデヒドの触媒気相酸化による欠点を克服することにある。
【0015】
より詳細には、本発明の目的は、飽和又は不飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、従来の反応管と比較して非常に大きい直径を有する管束反応器を使用することができるが、従来の管束反応器の空間−時間収率に匹敵する(メタ)アクリル酸の空間−時間収率を達成することができる方法を提供することにある。この方法は、従来の方法と比較して非常に信頼良く行えるものでなければならない。より詳細には、ホットスポットの形成又は反応器における反応の暴走が生じる可能性を従来の方法と比較して大きく低下させるものでなければならない。
【0016】
また、本発明の目的は、不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、従来の方法と比較して高いスループットで実施することができる方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の目的は、不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、選択性及び/又は転化を損なうことなく、必要に応じてマルチゾーン法を使用しないことができる方法を提供することにある。
【0018】
また、本発明の目的は、不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、従来の方法と同一のコンプレッサー出力で高いスループットを達成することができる方法を提供することにある。この方法は、酸化段階において酸素濃縮空気又は純酸素を使用することを可能とするものでなければならない。
【0019】
また、本発明の目的は、不飽和カルボン酸を製造するための装置であって、上述した方法の利点が得られ、従来の装置と比較して低い資本コストで提供することができる装置を提供することにある。この装置は、触媒を非常に容易に充填することができるものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的は、不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、
i)飽和炭化水素を少なくとも含む気体混合物を用意し、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器内において、前記少なくとも1種の飽和炭化水素の接触気相脱水素を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る工程と、
ii)酸素と、少なくとも1種の不飽和炭化水素と、を少なくとも含む気体混合物を用意する工程と、
iii)第1の酸化触媒材料を備えた第1の酸化反応器内において、前記工程i)で得られた不飽和炭化水素又は前記工程ii)で用意した不飽和炭化水素の接触気相酸化を行って不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る工程と、
iv)必要に応じて、第2の酸化触媒材料を備えた第2の酸化反応器内において、前記工程iii)で得られた不飽和アルデヒドの接触気相酸化を行って不飽和カルボン酸を含む気体混合物を得る工程と、を含み、
前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器から選択される少なくとも1つの反応器が、好ましくは連続気泡を有する少なくとも1つの発泡体を含む方法によって達成される。発泡体は、セラミック又は金属材料又はセラミック及び金属材料の混合物から主としてなることができ、セラミック又は金属材料が好ましい。本発明に係る方法においても同様である。
【0021】
連続気泡発泡体の他に、独立気泡発泡体も知られている。連続気泡発泡体の場合には、発泡体の大多数の気泡、通常は80%超又は実質的に全ての気泡の間の壁面が完全に閉じられている。連続気泡発泡体では、発泡体のほとんどの気泡、通常は50%超又は実質的に全ての気泡の壁面が閉じられていない。従って、連続気泡発泡体は、発泡体のほとんどの気泡、通常は50%超又は実質的に全ての気泡がつながっているため、独立気泡発泡体と比較して、より良好に液体又は気体を吸収又は通過させる。
【0022】
全く予期しなかったことだが、有利なことに、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を脱水素反応器及び/又は酸化反応器に使用することにより、反応器の寸法が同一であってもより高いスループットを達成することができ、使用する触媒の寿命を大きく延ばすことができることが判明した。また、脱水素反応器及び/又は酸化反応器内に好ましくは連続気泡を有する発泡体を使用することによって得られる低いホットスポット温度により、管径を大きくすることができ、資本コストを低下させることができる。また、好ましくは連続気泡を有する発泡体を酸化反応器内に使用することにより、省略する反応器における安定運転を可能とするために、軸方向において活性の異なる触媒床を使用したり、異なる冷却回路を使用したり、異なる触媒材料を使用したりすることができる。さらに、脱水素反応器及び/又は酸化反応器内に好ましくは連続気泡を有する発泡体を使用することにより、従来の固定床と比較して圧力低下が減少し、従来の管束反応器と比較して、同一のコンプレッサー出力でより高いスループットを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】反応器内における、本発明に係る、触媒材料でコートされた発泡体からなる分離可能なブロックの配置を示す(ブロック1〜n。ブロック1、2、n−1、nのみを示す。nは500以下とすることができる)。個別の反応管を示しており、例えば、管束反応器の一部であってもよい。図1において、ブロック1〜nは、実質的に同じ反応器の体積当たりの触媒活性を有する。
【図2】反応器内における、本発明に係る、触媒材料でコートされた発泡体からなる分離可能なブロックの配置を示す(ブロック1〜n。ブロック1、2、n−1、nのみを示す。nは500以下とすることができる)。図1とは異なり、反応器の体積当たりの触媒活性は、反応物質入口から生成物出口の方向に上昇している(図2では、ブロック1〜n内のドット密度の増加によって示す)。
【図3】反応器内における、本発明に係る、触媒材料でコートされた球状の発泡体からなるランダム充填床としての触媒材料でコートされた発泡体の配置を示す。各発泡体は、実質的に同じ反応器の体積当たりの触媒活性を有する。
【図4】反応器内における、本発明に係る、触媒材料でコートされた球状の発泡体からなるランダム充填床としての触媒材料でコートされた発泡体の別の配置を示す。発泡体は、異なる反応器の体積当たりの触媒活性を有する(ランダム充填物タイプ1〜n。ランダム充填物タイプ1、2、n−1及びnのみを示す。nは500以下とすることができる)。。本実施形態では、反応器の体積当たりの触媒活性は、反応物質入口から生成物出口の方向に上昇している(図4では、各球状ランダム充填物内のドット密度の増加によって示す)。
【図5】反応器、例えば、管束反応器の反応管内における、触媒材料でコートされた発泡体(ブロック1〜n。ブロック1、2、n−1、nのみを示す。nは500以下とすることができる)及び従来の固定床を使用した本発明に係る方法の特定の実施形態を示す。発泡体は反応管の前方側の2/3の領域に配置され、従来の固定床は後部の1/3の領域に配置されている。本実施形態でも、発泡体が占める領域における反応器の体積当たりの触媒活性は、反応物質入口から生成物出口の方向に上昇している(図示せず)。
【図6】図5に示す運転モードの特定の構成を示し、同一の反応器ではなく、直列に接続された2つの反応器内において、触媒材料でコートされた発泡体(ブロック1〜n。ブロック1、2、n−1、nのみを示す。nは500以下とすることができる)及び従来の固定床を組み合わせている。本実施形態でも、発泡体が占める領域における反応器(反応器1)の体積当たりの触媒活性は、反応物質入口から生成物出口の方向に上昇している(図示せず)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面及び実施例を参照して本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明に係る方法の特定の構成では、工程i)、iii)及びiv)が同一の反応器内で同時に進行するように、飽和炭化水素を直接酸化によって不飽和カルボン酸に転化させることもできる。「直接酸化」とは、飽和炭化水素を含む反応気体混合物が触媒床を通過する際に、不飽和カルボン酸が直接形成されることを意味する。従って、触媒床は、飽和炭化水素を含む反応気体混合物が触媒床を通過する際に、不飽和炭化水素又は不飽和アルデヒド等の分離可能な中間体が流動方向における第1の部分(first longitudinal section)で最初に生成し、流動方向において後続する触媒床の部分において不飽和カルボン酸が生成するようにはなっていない。触媒床に使用される少なくとも各触媒材料は、飽和炭化水素から不飽和カルボン酸に至る反応経路の全ての反応工程に触媒作用を及ぼすことができ、例えば、特定の触媒材料によってプロパンからアクリル酸を直接生成するか、イソブタンからメタクリル酸を直接生成することができる。従って、この場合には単一の酸化反応器のみを使用し、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料及び第2の酸化触媒材料は同じであるか、必要に応じて混合物として単一の反応器内に少なくとも共に存在するか、上記反応工程の全てに触媒作用を及ぼすか、別の反応経路によって出発化合物を目的生成物(不飽和カルボン酸)に転化させることができる触媒材料を使用する。
【0026】
本発明に係る方法の第1の実施形態では、方法は工程ii)、iii)及びiv)を含む。第1の実施形態では、不飽和炭化水素はプロピレンであり、不飽和アルデヒドはアクロレインであり、不飽和カルボン酸はアクリル酸である。第1の実施形態では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器、脱水素反応器及び第1の酸化反応器、脱水素反応器及び第2の酸化反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器又は脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、少なくとも1種の、好ましくは連続気泡を有する、好ましくはセラミック又は金属製の発泡体を含むことが特に好ましい。
【0027】
本発明に係る方法の第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、方法は工程ii)、iii)及びiv)を含む。第2の実施形態では、不飽和炭化水素はイソブテンであり、不飽和アルデヒドはメタクロレインであり、不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。第2の実施形態では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器、脱水素反応器及び第1の酸化反応器、脱水素反応器及び第2の酸化反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器又は脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、少なくとも1種の、好ましくは連続気泡を有する、好ましくはセラミック又は金属製の発泡体を含むことが特に好ましい。
【0028】
本発明に係る方法の第3の実施形態では、方法は工程i)、ii)、iii)及びiv)を含む。第3の実施形態では、飽和炭化水素はプロパンであり、不飽和炭化水素はプロピレンであり、不飽和アルデヒドはアクロレインであり、不飽和カルボン酸はアクリル酸である。第3の実施形態では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器、脱水素反応器及び第1の酸化反応器、脱水素反応器及び第2の酸化反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器又は脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、少なくとも1種の、好ましくは連続気泡を有する、好ましくはセラミック又は金属製の発泡体を含むことが特に好ましい。特に、本発明に係る方法の第3の実施形態では、プロパン又はイソブタンを直接酸化によってアクリル酸又はメタクリル酸に転化させることができる。
【0029】
本発明に係る方法の第4の実施形態では、方法は工程i)、ii)、iii)及びiv)を含む。第4の実施形態では、飽和炭化水素はイソブタンであり、不飽和炭化水素はイソブテンであり、不飽和アルデヒドはメタクロレインであり、不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。第4の実施形態では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器、脱水素反応器及び第1の酸化反応器、脱水素反応器及び第2の酸化反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器又は脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、少なくとも1種の、好ましくは連続気泡を有する、好ましくはセラミック又は金属製の発泡体を含むことが特に好ましい。特に、本発明に係る方法の第4の実施形態では、イソブテンを直接酸化によってメタクリル酸に転化させることができる。
【0030】
本発明に係る方法の工程i)では、飽和炭化水素を少なくとも含む気体混合物を必要に応じて最初に用意し、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器内において、気体混合物内に存在する炭化水素の脱水素及び接触気相酸化を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る。飽和炭化水素は、好ましくはプロパン又はイソブタンである(上述した本発明に係る方法の第3及び第4の実施形態を参照)。
【0031】
第1の反応領域において不均一触媒下での部分的脱水素によってプロパンをプロピレンに転化させ、得られたプロピレンをアクロレイン又はアクリル酸又はそれらの混合物に酸化する、プロパンからアクロレイン又はアクリル酸を製造する方法は、ドイツ特許第33 13 573号、欧州特許第0 117 146号、米国特許第3,161,670号、ドイツ特許出願公開第10 2004 032 129号、欧州特許第0 731 077号、ドイツ特許出願公開第10 2005 049 699号、ドイツ特許出願公開第10 2005 052 923号、国際公開第WO01/96271号、国際公開第WO03/011804号、国際公開第WO03/076370号、国際公開第WO01/96270号、ドイツ特許出願公開第10 2005 009 891号、ドイツ特許出願公開第10 2005 013 039号、ドイツ特許出願公開第10 2005 022 798号、ドイツ特許出願公開第10 2005 009 885号、ドイツ特許出願公開第10 2005 010 111、ドイツ特許出願公開第102 455 85号等の特許文献から公知である。同様に、第1の反応領域において不均一触媒下での部分的脱水素によってイソブタンをイソブテンに転化させ、イソブテンをメタクロレイン又はメタクリル酸又はそれらの混合物に酸化する方法も公知である(例えば、ドイツ特許第33 13 573号を参照)。
【0032】
原則として、飽和炭化水素の脱水素は、発熱酸化脱水素(exothermic oxydehydrogenation)として酸素の存在下で行う(脱水素による水素が酸素と直接反応して水を生成する)か、吸熱脱水素(endothermic dehydrogenation)として酸素の非存在下で行う(脱水素によって分子状水素を生成する)ことができる。
【0033】
有用な脱水素触媒材料としては、原則として、公知の全ての脱水素触媒材料が挙げられる。それらは、酸化材料(例えば、クロム酸化物及び/又は酸化アルミニウム)と、酸化担体に担持された少なくとも1種の貴金属(例えば、白金)からなる材料に大別される。特に、国際公開第WO01/96270号、欧州特許第0 731 077号、ドイツ特許出願公開第102 11 275号、ドイツ特許出願公開第101 31 297号、国際公開第WO99/46039号、米国特許第4,788,371号、欧州特許第0 705 136号、国際公開第WO99/29420号、米国特許第4,220,091号、米国特許第5,430,220号、米国特許第5,877,369号、欧州特許第0 117 146号、ドイツ特許出願公開第199 37 196号、ドイツ特許出願公開第199 37 105号、米国特許第3,670,044号、米国特許第6,566,573号、米国特許第4,788,371号、国際公開第WO94/29021号又はドイツ特許出願公開第199 37 107号に開示された脱水素触媒材料を使用することができる。本発明においては、白金又は白金−スズからなり、適当な担持材料、例えば、好ましくは連続気泡の発泡体であって、好ましくはセラミック又は金属からなる発泡体に担持させることができる脱水素触媒材料が特に好ましい。
【0034】
工程i)におけるプロパン又はイソブテンの不均一系触媒脱水素を行う場合には、公知の様々な反応器及び方法を使用することができる。Catalytica Studies Division,Oxidative Dehydrogenation and Alternative Dehydrogenation Processes,Study Number 4192 OD,1993,430 Ferguson Drive,Mountain View,California,94043−5272 U.S.A.に好適な脱水素法の比較的詳細な説明が記載されている。
【0035】
本発明に係る方法の工程ii)では、酸素と、少なくとも1種の不飽和炭化水素と、を少なくとも含む気体混合物を用意する。不飽和炭化水素は、好ましくはプロピレン又はイソブテンである。気体混合物は、不飽和炭化水素と酸素に加えて、窒素等の不活性ガス及びスチーム(蒸気)をさらに含むことができる。プロピレン又はイソブテンの接触気相酸化に使用されるそのような出発気体混合物の正確な組成は周知である。不飽和出発材料としてプロピレンを使用する場合、例えば、二段階酸化反応で供給することができる、プロピレンを含む気体混合物の正確な組成が国際公開第WO03/051809号に記載されている。
【0036】
本発明に係る方法の工程iii)では、第1の酸化触媒材料を備えた第1の酸化反応器内において、工程i)で得られた不飽和炭化水素又は工程ii)で用意した不飽和炭化水素を気相中で酸化させて不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る。一方、必要に応じて行われる本発明に係る方法の工程iv)では、第2の酸化触媒材料を備えた第2の酸化反応器内において、工程iii)で得られた不飽和アルデヒドを気相中で酸化させて不飽和カルボン酸を含む気体混合物を得る。各反応段階に有利に使用される触媒材料並びに有利な圧力及び温度条件は、国際公開第WO03/051809号(プロピレンのアクリル酸への2段階転化)に記載されている。プロピレンのアクロレインへの転化及びアクロレインのアクリル酸への転化並びにこれらの反応に好適な圧力及び温度条件は、国際公開第WO2006/002708にも記載されている。
【0037】
プロピレンの接触酸化反応によってアクロレインを得るために使用される触媒材料は、Mo系触媒材料、より好ましくはMo−Bi系触媒材料、最も好ましくはMo−Fe−Bi系触媒材料であることが好ましい。そのような触媒系の有用な副次的成分としては、Co/Ni、Sb、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zn、Sn、As、Pb、Pd及びその他の金属(通常は遷移金属)が挙げられる。これらの触媒材料は、例えば、触媒活性を調節するために不活性添加剤によってドーピングすることができる。この場合、例えば、Al、SiO、ZrO、TiO又はそれらの混合物又は化合物を使用することができる。イソブタンのメタクロレインへの接触酸化の場合にも、上述した触媒材料を使用することが好ましい。
【0038】
アクロレインの接触酸化反応によってアクリル酸を得る段階では、Mo系触媒材料、より好ましくはMo−V系触媒材料、最も好ましくはMo−Cu−V又はMo−W−V系触媒材料を使用することが好ましい。また、触媒材料は混合酸化物であることが好ましい。これらの触媒系の有用な副次的成分としては、特に遷移金属が挙げられる。また、これらの触媒材料は、例えば、触媒活性を調節するために不活性添加剤によってドーピングすることができる。この場合、例えば、Al、SiO、ZrO、TiO又はそれらの混合物又は化合物を使用することができる。メタクロレインのメタクリル酸への接触酸化の場合には、上述した触媒材料や、Mo−V−P系触媒材料を使用することが好ましい。
【0039】
直接酸化によってプロパン又はイソブタンをアクリル酸又はメタクリル酸に転化させる場合には、Mo−V−Te−(副次的成分)−O系触媒材料を使用することができ、副次的成分はNbであってもよい。これらの触媒材料も、例えば、触媒活性を調節するために不活性添加剤によってドーピングすることができる。この場合、例えば、Al、SiO、ZrO、TiO又はそれらの混合物又は化合物を使用することができる。
【0040】
本発明に係る方法では、不飽和炭化水素(好ましくはプロピレン又はイソブテン)の空間速度(第1の酸化反応器に導入される、反応器の体積1L及び1時間当たりの不飽和炭化水素、好ましくはプロピレン又はイソブテンの量(L))は、好ましくは少なくとも150/時、より好ましくは少なくとも200/時、さらに好ましくは少なくとも250/時、最も好ましくは少なくとも300/時である。
【0041】
本発明に係る方法では、脱水素反応器(飽和炭化水素、好ましくはプロパン又はイソブタンを、不飽和炭化水素、好ましくはプロピレン又はイソブテンに転化させる)、第1の酸化反応器(不飽和炭化水素、好ましくはプロピレン又はイソブテンを、不飽和アルデヒド、好ましくはアクロレイン又はメタクロレインに転化させる)、第2の酸化反応器(不飽和アルデヒド、好ましくはアクロレイン又はメタクロレインを、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸に転化させる)、直接酸化用反応器(飽和炭化水素、好ましくはプロパン又はイソブタンを、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸に転化させる)の少なくとも1つは、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の少なくとも1種の発泡体を含む。
【0042】
本発明に係る方法では、以下の変形が考えられる。
・脱水素反応器のみが、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・第1の酸化反応器のみが、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・第2の酸化反応器のみが、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・脱水素反応器及び第1の酸化反応器が、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・脱水素反応器及び第2の酸化反応器が、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器が、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
・直接酸化用反応器が、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む。
【0043】
好ましくは連続気泡を有する金属又はセラミック製の有用な発泡体としては、好ましくは連続気泡を有する金属又はセラミック製の公知の発泡体が挙げられ、脱水素反応器及び/又は第1の酸化反応器及び/又は第2の酸化反応器における圧力及び温度条件において使用することができる。
【0044】
好ましくは連続気泡を有する有用な金属製発泡体としては、アルミニウム発泡体や、鋼鉄、ステンレス鋼又は銅からなる発泡体が挙げられる。金属を使用したそのような発泡体(スポンジ)の製造は、例えば、米国特許第3,087,807号及びドイツ特許第40 18 360号に記載されている。好ましくは連続気泡を有するセラミック製発泡体は、互いに接続された多数のセラミック気泡壁及び気泡壁間の連続気泡の三次元ネットワークを形成するセラミック構造からなることが好ましい。気泡壁を形成するセラミックとしては様々なセラミックを使用することができ、使用するセラミックによって発泡体の本質的な特性が決まる。好適な連続気泡を有するセラミック製発泡体は、通常は、例えば、ポリマー発泡体又は炭素発泡体からなる、好ましくは連続気泡を有する骨格構造をセラミックでコートし、セラミック形成時又はセラミック形成後に基材を除去する成形法によって製造される。そのような方法は、例えば、米国特許第3,090,094号に記載されている。セラミック発泡体は、混合酸化物又は炭化物からなることが好ましい。本発明において使用できるセラミック発泡体に使用される材料としては、例えば、コージエライト、ステアタイト、Duranit(登録商標)、酸化物結合炭化ケイ素用の炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩又はアルミン酸塩からなる発泡体が挙げられる。好ましくは連続気泡を有する、炭化ケイ素系セラミック発泡体の製造方法は、国際公開第WO02/020426号に記載されている。本発明では、セラミック又は金属製の発泡体は、1〜90ppi(pores per inch)、より好ましくは5〜80ppi、最も好ましくは10〜40ppiの気泡幅を有することが好ましい。
【0045】
本発明に係る方法の一実施形態では、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体は、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料又は第2の酸化触媒材料でコートされておらず、対応する固定床と共に特定の反応器内に存在する。
【0046】
ただし、本発明に係る方法の好適な実施形態では、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体の表面の少なくとも一部は、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料(発泡体が脱水素反応器、第1の酸化反応器又は第2の酸化反応器内に存在)又は直接酸化に適した触媒材料で被覆されている。この場合、好ましくは連続気泡を有するセラミック又は金属製の発泡体は、特定の反応器(脱水素反応器、第1の酸化反応器又は第2の酸化反応器)に使用される触媒材料の担持材として機能する。別の実施形態では、好ましくは連続気泡を有する発泡体は、対応する触媒活性を有する材料からなる。
【0047】
好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を、脱水素触媒、第1の酸化触媒又は第2の酸化触媒(例えば、第1の酸化段階のMo系触媒材料、より好ましくはMo−Bi系触媒材料、最も好ましくはMo−Fe−Bi系触媒材料又は第2の酸化段階のMo系触媒材料、より好ましくはMo−V系触媒材料、最も好ましくはMo−Cu−V系又はMo−W−V系又はMo−V−P系触媒材料)でコートする場合には、触媒材料の溶液又は懸濁液を内部空洞の表面に塗布した後、乾燥し、より高温において焼成して触媒材料を固化及び最終的な表面形状とすることが好ましい。
【0048】
本発明に係る不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法の好適な実施形態では、少なくとも部分的に触媒で被覆された、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体は、以下の工程を含む方法によって得ることができる。
A1)好ましくは粉末状の触媒材料と、溶媒又は溶媒混合物と、必要に応じて添加剤とを含む溶液又は懸濁液を調製する。
A2)好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体の表面の少なくとも一部を前記溶液又は懸濁液と接触させる。
A3)必要に応じて、余分な溶液又は懸濁液を排出する。
A4)必要に応じて、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を乾燥する。
A5)触媒材料を焼成する。
【0049】
工程A1)では、好ましくは粉末状の触媒材料と、適当な溶媒又は溶媒混合物、例えば、一価又は多価アルコール又はそれらの混合物の溶液又は懸濁液を調製し、必要に応じて、無機又は有機バインダ、界面活性剤、触媒活性成分、孔形成剤、流動性付与剤、触媒活性を調整するための不活性物質、接着促進剤、消泡剤、分散剤等の添加物を添加する。工程A2)では、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体の表面の少なくとも一部を前記溶液又は懸濁液と接触させる。例えば、浸漬、吸引、塗布又はポンプ法によって前記溶液又は懸濁液を発泡体に充填する。発泡体に残るように正確に算出した量の溶液又は懸濁液のみを発泡体に導入し、発泡体の外表面及び内表面に非常に均一に分布させる方法が知られている。別の方法では、過剰量の溶液又は懸濁液を発泡体に導入し(発泡体を溶液又は懸濁液で満たし)、溶液又は懸濁液を発泡体から除去する。余分な溶液又は懸濁液は工程A3)において排出する。通常は気流を吹き付けることによって溶液又は懸濁液を除去するが、発泡体を回転させるか、溶液又は懸濁液を吸引することによって溶液又は懸濁液を除去することもできる。工程A4)では、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を乾燥する。乾燥は、好ましくは50〜200℃、より好ましくは100〜150℃で行う。触媒材料に塗布された層の厚みを変化させるために、工程A1)〜A3)又は工程A1)〜A4)を連続して繰り返すこともできる。
【0050】
工程A5)では、発泡体の表面の触媒材料を焼成する。焼成は、250〜750℃、より好ましくは300〜600℃、最も好ましくは350〜500℃で、触媒材料で被覆された発泡体を加熱することによって行うことが好ましい。焼成は、N及び/又は空気等のガス流を通過することによって行うことが好ましい。
【0051】
本発明に係る方法の別の実施形態では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器及び直接酸化用反応器の少なくとも1つは、少なくとも2つの反応管を含む管束反応器であり、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化に触媒作用を及ぼす材料及び好ましくは連続気泡を有する発泡体又は脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化に触媒作用を及ぼす材料でコートされた好ましくは連続気泡を有する発泡体又は脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化に触媒作用を及ぼす材料で形成された好ましくは連続気泡を有する発泡体を反応管の内部に設ける。管束反応器は、複数の平行な反応管で形成され、反応器のシェルに配置された管束を含む。反応管の開放端部は上下の管板に密閉状態で固定され、上下の反応器フードに開口している。反応物質は反応器フードを介して供給され、反応管から出た生成物混合物を取り出す。本発明に係る方法の一実施形態では、少なくとも2、3、4又は5個以上の管束反応器を並行して運転する。
【0052】
偏向板によって分割することができる上下の管板の間のスペースには、並流、向流又は逆流で熱媒体を循環させる。対応する熱媒体の入口及び出口が反応器のシェルに設けられ、熱媒体をポンプによって入口及び出口を介して循環させる。目標温度は外部熱交換器によって達成する。反応器のシェルは2以上の独立した温度制御領域に分割することができ、各温度制御領域には熱媒体を独立して循環させる。各温度制御領域は、管束反応器内に水平に配列され、反応管を挿入する管板によって分離されている。
【0053】
管束反応器の各管は、3cm、より好ましくは5cm、さらに好ましくは10cmを超える直径を有することが好ましい。
【0054】
上述した本発明に係る方法の特定の実施形態に加えて、壁反応器又はプレート反応器を使用することも考えられる。壁反応器では、反応混合物を、平行に配置された2つの触媒コートされたプレート状壁部材の間を通過させ、触媒材料(脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化に触媒作用を及ぼす材料)及び発泡体、触媒材料でコートされた発泡体又は触媒材料で形成された発泡体が2つのプレート間に設けられている。通常、そのような反応器は一連の壁部材からなる。壁部材の分離が小さいため、高い壁/体積比が達成され、高い熱除去率及び通常の条件では爆発性を示す反応混合物のための運転モードが可能となる。高い熱除去率により、強い発熱反応における「ホットスポット」を回避することができる非常に良好な温度制御を行うことができる。従って、壁反応器はポリトロープモードよりも高い温度で運転することができる。そのため、触媒壁反応器において高い空間−時間収率を達成することができる。また、良好な伝熱性により、従来の反応器では熱の放出を制御することができない特に活性の高い触媒材料を使用することができる。
【0055】
また、特定の反応器に使用する特定の触媒材料(脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化に触媒作用を及ぼす触媒材料)反応器の表面(管束反応器の場合には反応管の内面、壁反応器の場合にはプレート状壁部材)及び好ましくは連続気泡を有するセラミック又は金属製の発泡体の表面に塗布することができる。
【0056】
本発明に係る方法の変形例では、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器及び直接酸化が行われる反応器の少なくとも1つ(好ましくは、第1の酸化反応器又は第2の酸化反応器又は第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器)に、触媒材料でコートされた少なくとも2つの分離可能なセラミック又は金属製の発泡体又は触媒材料で形成された発泡体が設けられていることが好ましい。発泡体は、例えば、サイズ比が好ましくは非常にタイトな充填を達成するように設計された球又はリング形状を有するランダム充填物として設けることができる。そのようなランダム充填物は、反応器の直径(管束反応器の場合には特定の反応管の直径、壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離)の、50%以下、好ましくは40%以下、最も好ましくは30%以下であって、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%の直径を有することが好ましい。また、発泡体は、ランダム充填物形状以外に、ブロック形状、例えば、円筒体(又は中空の円筒体)形状で使用することができる。そのようなブロックは、反応器の直径(管束反応器の場合には特定の反応管の直径、壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の距離)の、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の直径を有することが好ましい。
【0057】
反応器に設けられる分離可能な発泡体の数は、発泡体の形状に応じて異なる。管束反応器の反応器又は反応管に固定床を構成するランダム充填物である発泡体を導入する本発明に係る方法の第1の特定の実施形態では、好ましくは触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された分離可能な発泡体を、反応器当たり、好ましくは500〜20,000個、より好ましくは1000〜15,000個、最も好ましくは2000〜10,000個使用する。固定床ではなく、発泡体ブロックである発泡体を管束反応器の反応器又は反応管に導入する本発明に係る方法の第2の特定の実施形態では、好ましくは触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された分離可能な発泡体ブロックを、反応器当たり、好ましくは1〜500個、より好ましくは2〜100個、最も好ましくは3〜50個使用する。
【0058】
本発明に係る方法の上述した実施形態では、特定の触媒材料でコートされるか、特定の触媒材料で形成された少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックは、触媒の単位体積当たりの活性で表される触媒活性において異なることが有利な場合がある。この場合、脱水素反応器、第1の酸化反応器、第2の酸化反応器、脱水素反応器及び第1の酸化反応器、脱水素反応器及び第2の酸化反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器、脱水素反応器、第1の酸化反応器及び第2の酸化反応器又は直接酸化が行われる反応器において、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックを、反応物質入口(脱水素反応器又は直接酸化用反応器の場合には飽和炭化水素の入口であり、第1の酸化反応器の場合には不飽和炭化水素の入口であり、第2の酸化反応器の場合には不飽和アルデヒドの入口)から、生成物出口(脱水素反応器の場合には不飽和炭化水素の出口であり、直接酸化用反応器の場合には不飽和カルボン酸の出口であり、第1の酸化反応器の場合には不飽和アルデヒドの出口であり、第2の酸化反応器の場合には不飽和カルボン酸の出口)に向かう方向に体積当たりの触媒活性が増加するように反応器内に配置することが有利である。
【0059】
反応器内における特定の発泡体の触媒活性は、例えば、以下の方法によって変化させることができる(これらの方法は任意に組み合わせることができる)。すなわち、各発泡体における触媒の密度及び/又は質量を(例えば、ppiが異なる発泡体を使用して)調節するか、異なる活性を有する触媒材料を洗濯するか、触媒材料を異なる不活性物質でドーピング(又は不活性物質で異なる度合いにドーピング)するか、異なる密度及び/又は質量で触媒材料を塗布するか(工程A1))、触媒材料の濃度が異なる懸濁液を使用するか、例えば、工程A1)〜A3)(特に工程A1)〜A4))を連続的に繰り返すことによって触媒活性を変化させることができる。
【0060】
また、本発明では、特定の反応器内において、好ましくは連続気泡を有する、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された発泡体又は好ましくは連続気泡を有する、触媒材料で形成された発泡体を、従来の固定床(好ましくは連続気泡を有する発泡体を含まない触媒)と組み合わせることが有利な場合がある。そのような従来の固定床は、例えば、ランダム充填物(球又はリング形状)である触媒材料又は触媒材料でコートされた触媒的に不活発なランダム充填物からなり得る。そのような組み合わせは、管束反応器の1つの反応管内又は壁反応器の1つのプレート隙間又は、例えば、直列に配置された2つの管束反応器又は2つの壁反応器内において採用することができ、例えば、好ましくは連続気泡を有する、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された発泡体を第1の反応器に設け、従来の固定床を第2の反応器に設ける。
【0061】
この場合、反応器が長さLを有し、点Lが反応物質入口であり、点のLmaxが反応器の生成物出口である場合に、
・好ましくは連続気泡を有する、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された発泡体を、L〜0.9×Lmax、好ましくはL〜0.8×Lmax、最も好ましくはL〜0.7×Lmaxの範囲の反応器の領域(管束反応器の場合には各反応管、壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の領域)に導入し、
・従来の固定床を、少なくとも0.5×Lmax〜Lmax、より好ましくは少なくとも0.6×Lmax〜Lmax、最も好ましくは少なくとも0.7×Lmax〜Lmaxの範囲の反応器の領域(管束反応器の場合には各反応管、壁反応器の場合には2つの隣接するプレート間の領域)に導入することが好ましい。
【0062】
従って、発泡体は、より好ましくは反応器の前方側の2/3の領域に導入し、発泡体よりも後部に従来の固定床を導入する。
【0063】
また、上記目的は、精製不飽和カルボン酸の製造方法、好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸の製造方法であって、
(I)上述した本発明に係る不飽和カルボン酸の製造方法によって、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を含む気体混合物を用意する工程と、
(II)前記不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を溶媒に吸収させ、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸であると含む溶液を得る工程と、
(III)蒸留、抽出、結晶化又はこれらの組み合わせにより、前記不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を、前記不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を含む溶媒から除去する工程と、を含む方法によって達成される。
【0064】
工程II)において有用な溶媒としては、水、50〜250℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは105〜150℃の沸点を有する有機化合物又は水と上記有機化合物の混合物が挙げられる。有用な有機化合物としては、芳香族化合物、より好ましくはアルキル化芳香族化合物が挙げられる。通常、冷却剤として機能する溶媒を、適当なカラム内において好ましくは向流でモノマーガスと接触させる。
【0065】
この場合、工程II)で得られる溶液(冷却相)は、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を、冷却相に対して、30〜90重量%、好ましくは35〜85重量%、より好ましくは45〜75重量%の量で含むことが好ましい。冷却相は、不飽和カルボン酸の沸点未満の温度で処理することが好ましい。アクリル酸の場合には、40℃未満の温度を有する冷却剤を使用することが好適である。工程III)において、上記温度の冷却相に対して抽出及び/又は結晶化を行う。アクリル酸の場合には、冷却相の温度は、好ましくは−40〜40℃、より好ましくは−20〜39℃、さらに好ましくは−10〜35℃である。
【0066】
工程III)では、冷却相を処理する。冷却剤が少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の水を含む場合には、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸)を含む冷却剤を、別の工程において、好ましくは低い水溶性を有する分離剤を使用して処理することが好ましい。カルボン酸を多く含む相に対して蒸留及び/又は結晶化を行う(好ましくは最初に結晶化を行う)。結晶化は、層結晶化又は懸濁結晶化として行うことができる。好適な層結晶化装置はSulzer社から市販されている。好適な懸濁結晶化法では、結晶発生器及び洗浄塔を使用する。そのような装置(方法)はNiro Prozesstechnologie社から市販されている。不飽和カルボン酸がアクリル酸である場合、有用な抽出溶媒/分離剤は、芳香族化合物、より好ましくはアルキル化芳香族化合物、さらに好ましくはトルエンである。有機化合物を分離剤として使用する場合には、アクリル酸と接触させた有機化合物に対して蒸留及び/又は結晶化を行う。この場合に好適な結晶化は、欧州特許第1 015 410号に開示されている。
【0067】
また、上記目的は、不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸からなるポリマーの製造方法であって、
(a1)精製不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸を上記方法によって製造する工程と、
(a2)前記不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸をフリーラジカル重合させる工程と、を含む方法によって達成される。
【0068】
工程(a2)におけるフリーラジカル重合は、不飽和カルボン酸を、好ましくは部分的に中和された状態で、架橋剤の存在下においてフリーラジカル重合させてポリマーゲルを得る水溶液重合又は乳化又は懸濁重合として行うことが好ましい。溶液重合によってポリマーゲル得た場合には、得られたポリマーゲルを粉砕し、乾燥する。不飽和カルボン酸としてアクリル酸を使用する場合には、衛生用品(例えば、おむつ)に好適に使用される超吸収剤としての吸水性ポリマー構造体を得ることができる。アクリル酸のフリーラジカル重合によって得られる吸水性ポリマーの詳細は、「Modern Superabsorbent Polymer Technology」、F.L.Buchholz及びA.T.Graham編、Wiley−VCH、ニューヨーク、1998年に記載されている。
【0069】
また、上記目的は、精製不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸の製造装置であって、
(β1)必要に応じて、飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への転化に触媒作用を及ぼす触媒材料を備えた飽和炭化水素の直接酸化用反応器と、
(β2)必要に応じて、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器と、
(β3)必要に応じて、第1の酸化触媒材料を有し、必要に応じて前記脱水素反応器(β2)に流体接続された第1の酸化反応器と、
(β4)必要に応じて、第2の酸化触媒材料を有し、必要に応じて前記第1の酸化反応器(β3)に流体接続された第2の酸化反応器と、
(β5)前記第2の酸化反応器(β1)又は(β3)に流体接続された冷却装置と、
(β6)前記冷却装置(β5)に流体接続された精製装置と、を含み、
前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)、好ましくは、前記第1の酸化反応器(β3)又は前記第2の酸化反応器(β4)又は前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)が、少なくとも1種の、好ましくは連続気泡を有する、好ましくは金属又はセラミック製の発泡体を含む装置によって達成される。
【0070】
有用な脱水素触媒材料及び第1又は第2の酸化触媒材料、有用な直接酸化用触媒材料、有用な脱水素反応器及び第1又は第2の酸化反応器並びに有用な直接酸化用反応器は、本発明に係る不飽和カルボン酸の製造方法に関連して好ましい触媒材料及び反応器として上述した触媒材料及び反応器である。同様に、好ましい連続気泡を有するセラミック又は金属製の発泡体も、本発明に係る不飽和カルボン酸の製造方法に関連して上述した好ましい連続気泡を有する発泡体である。
【0071】
本発明に係る装置において、好ましくは連続気泡を有するセラミック又は金属製の発泡体の表面の少なくとも一部が、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化用触媒材料によってコートされていることが好ましい。触媒材料でコートされた好ましくは連続気泡を有する発泡体は、好ましくは、工程A1)〜A5)を含む上述したコーティング方法によって得ることができる。
【0072】
本発明に係る装置の一実施形態では、前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)の少なくとも1つ、好ましくは、前記第1の酸化反応器(β3)又は前記第2の酸化反応器(β4)又は前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)は、少なくとも2つの反応管を含む管束反応器であり、脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化用材料及び好ましくは連続気泡を有する発泡体又は脱水素触媒材料、第1の酸化触媒材料、第2の酸化触媒材料又は直接酸化用材料でコートされた好ましくは連続気泡を有する発泡体は、反応管の内部に設けられている。
【0073】
本発明に係る装置では、前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)の少なくとも1つ、好ましくは、前記第1の酸化反応器(β3)又は前記第2の酸化反応器(β4)又は前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)は、触媒材料でコートされ、好ましくは連続気泡を有する、少なくとも2つの分離可能な発泡体であり、少なくとも2つの分離可能な反応器の発泡体は、本発明に係る不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸の製造方法に関連して上述したように、触媒の単位体積あたりの活性によって表される触媒活性が異なり、分離可能な発泡体の触媒活性の違いは、好ましくは、本発明に係る不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸の製造方法に関連して上述した方法によって得られたものであることが有利である。また、触媒材料でコートされた少なくとも2つの分離可能な発泡体は、反応物質入口(脱水素反応器(β2)又は直接酸化用反応器(β1)の場合には飽和炭化水素の入口であり、第1の酸化反応器(β3)の場合には不飽和炭化水素の入口であり、第2の酸化反応器(β4)の場合には不飽和アルデヒドの入口)から、生成物出口(脱水素反応器(β2)の場合には不飽和炭化水素の出口であり、直接酸化用反応器(β1)の場合には不飽和カルボン酸の出口であり、第1の酸化反応器(β3)の場合には不飽和アルデヒドの出口であり、第2の酸化反応器(β4)の場合には不飽和カルボン酸の出口)に向かう方向に体積当たりの触媒活性が増加するように反応器内に配置されていることが有利である。
【0074】
本発明に係る装置の一実施形態では、装置は、精製装置(β6)と流体接続された重合装置(β7)をさらに含む。
【0075】
また、上記目的は、上記装置の、本発明に係る不飽和カルボン酸の製造方法、特にアクリル酸又はメタクリル酸の製造方法における使用によって達成される。より詳細には、上記目的は、重合装置(β7)をさらに含む上記装置の、本発明に係る不飽和カルボン酸、好ましくはアクリル酸又はメタクリル酸からなるポリマーの製造方法における使用によって達成される。
【実施例】
【0076】
4.81gの触媒粉末(Mo−V−W−Cu)及び1.79gのバインダー(Acti−Gel)を秤量した。54mlの水を混合物に添加した。成分を撹拌して均質な懸濁液を得た。触媒粉末は、Kunert et al.,Appl.Catal.,A 269(2004),53〜61頁に記載された方法で調製した。
【0077】
清浄なステンレス鋼発泡体担体(63.2mm×20.0mm;20ppi;質量:13.41g)を、担体が完全に被覆されるように得られた懸濁液でディップコーティングした。コーティング時間は5分間である。コーティング時には、懸濁液と担体は互いに反対方向に移動させた。
【0078】
コーティング後、熱風送風機によってスポンジから余分な懸濁液を除去し、空気流内において120℃で180分間スポンジを乾燥した。その後、焼成オーブン内において390℃で5時間焼成した。
【0079】
国際公開第WO03/051809号の実施例1に従って、触媒材料でコートされた発泡体を、プロピレンからアクリル酸を製造するための第1及び第2の酸化段階において使用した。
【0080】
従来の固定床と比較して、熱媒体と触媒材料との間の温度差は有意に低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和又は飽和炭化水素の不均一系接触気相酸化によって不飽和アルデヒド又は不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、
i)飽和炭化水素を少なくとも含む気体混合物を用意し、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器内において、前記少なくとも1種の飽和炭化水素の接触気相脱水素を行って不飽和炭化水素を含む気体混合物を得る工程と、
ii)酸素と、少なくとも1種の不飽和炭化水素と、を少なくとも含む気体混合物を用意する工程と、
iii)第1の酸化触媒材料を備えた第1の酸化反応器内において、前記工程i)で得られた不飽和炭化水素又は前記工程ii)で用意した不飽和炭化水素の接触気相酸化を行って不飽和アルデヒドを含む気体混合物を得る工程と、
iv)必要に応じて、第2の酸化触媒材料を備えた第2の酸化反応器内において、前記工程iii)で得られた不飽和アルデヒドの接触気相酸化を行って不飽和カルボン酸を含む気体混合物を得る工程と、を含み、
前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器から選択される少なくとも1つの反応器が、少なくとも1つの発泡体を含む方法。
【請求項2】
前記発泡体が連続気泡を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程ii)、iii)及びiv)を含み、前記不飽和炭化水素がプロピレンであり、前記不飽和アルデヒドがアクロレインであり、前記不飽和カルボン酸がアクリル酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程ii)、iii)及びiv)を含み、前記不飽和炭化水素がイソブテンであり、前記不飽和アルデヒドがメタクロレインであり、前記不飽和カルボン酸がメタクリル酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記工程i)、ii)、iii)及びiv)を含み、前記飽和炭化水素がプロパンであり、前記不飽和炭化水素がプロピレンであり、前記不飽和アルデヒドがアクロレインであり、前記不飽和カルボン酸がアクリル酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記工程i)、ii)、iii)及びiv)を含み、前記飽和炭化水素がイソブタンであり、前記不飽和炭化水素がイソブテンであり、前記不飽和アルデヒドがメタクロレインであり、前記不飽和カルボン酸がメタクリル酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
不飽和炭化水素の空間速度が少なくとも150/時である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水素反応器が前記発泡体を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の酸化反応器が前記発泡体を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の酸化反応器が前記発泡体を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1及び第2の酸化反応器が前記発泡体を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記発泡体の表面の少なくとも一部が、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料、前記第2の酸化触媒材料又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための触媒材料によってコートされている、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒材料でコートされた前記発泡体が、以下の工程を含む方法によって得られる、請求項12に記載の方法。
A1)前記触媒材料と、溶媒又は溶媒混合物と、必要に応じて添加剤とを含む溶液又は懸濁液を調製する。
A2)前記発泡体の表面の少なくとも一部を前記溶液又は懸濁液と接触させる。
A3)必要に応じて、余分な懸濁液を排出する。
A4)必要に応じて、前記発泡体を乾燥する。
A5)前記触媒材料を焼成する。
【請求項14】
前記発泡体が1〜90ppiの気泡幅を有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記発泡体が触媒活性を有する材料で形成されている、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器及び飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器の少なくとも1つが、少なくとも2つの反応管を含む管束反応器であり、前記脱水素触媒、前記第1の酸化触媒、前記第2の酸化触媒又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化に触媒作用を及ぼす触媒材料及び前記発泡体又は前記脱水素触媒、前記第1の酸化触媒、前記第2の酸化触媒又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化に触媒作用を及ぼす触媒材料でコートされた前記発泡体又は前記触媒材料で形成された前記発泡体が前記反応管の内部に設けられている、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2つの管束反応器を並行して運転する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器及び飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化のための反応器の少なくとも1つが壁反応器であり、前記脱水素触媒、前記第1の酸化触媒、前記第2の酸化触媒又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化に触媒作用を及ぼす触媒材料及び前記発泡体又は前記脱水素触媒、前記第1の酸化触媒、前記第2の酸化触媒又は飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への直接酸化に触媒作用を及ぼす触媒材料でコートされた前記発泡体又は前記触媒材料で形成された前記発泡体が2つの隣接するプレート間の反応室に設けられている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックが、前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器及び飽和炭化水素の直接酸化のための反応器に設けられている、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された前記少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックが、固定床におけるランダム充填物又は発泡体ブロックとして設けられている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つの反応器の少なくとも2つの前記分離可能な発泡体の触媒活性が異なる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器又は前記飽和炭化水素の直接酸化のための反応器が、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された前記少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックを含み、前記少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックが、反応物質入口から生成物出口に向かう方向に体積当たりの触媒活性が増加するように、前記脱水素反応器、前記第1の酸化反応器、前記第2の酸化反応器又は前記飽和炭化水素の直接酸化のための反応器に設けられている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
精製不飽和カルボン酸を製造するための方法であって、
(I)請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法によって、不飽和カルボン酸を含む気体混合物を用意する工程と、
(II)前記不飽和カルボン酸を溶媒に吸収させ、不飽和カルボン酸を含む溶液を得る工程と、
(III)蒸留、抽出、結晶化又はこれらの組み合わせにより、前記不飽和カルボン酸を、前記不飽和カルボン酸を含む溶媒から除去する工程と、を含む方法。
【請求項24】
不飽和カルボン酸からなるポリマーを製造するための方法であって、
(a1)精製不飽和カルボン酸を請求項23に記載の方法によって製造する工程と、
(a2)前記不飽和カルボン酸をフリーラジカル重合させる工程と、を含む方法。
【請求項25】
精製不飽和カルボン酸を製造するための装置であって、
(β1)必要に応じて、飽和炭化水素の不飽和カルボン酸への転化に触媒作用を及ぼす触媒材料を備えた飽和炭化水素の直接酸化用反応器と、
(β2)必要に応じて、脱水素触媒材料を備えた脱水素反応器と、
(β3)必要に応じて、第1の酸化触媒材料を有し、必要に応じて前記脱水素反応器(β2)に流体接続された第1の酸化反応器と、
(β4)必要に応じて、第4の酸化触媒材料を有し、必要に応じて前記第1の酸化反応器(β3)に流体接続された第2の酸化反応器と、
(β5)前記第2の酸化反応器(β4)に流体接続された冷却装置と、
(β6)前記冷却装置(β5)に流体接続された精製装置と、を含み、
前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)の少なくとも1つは少なくとも1つの発泡体を含む装置。
【請求項26】
前記発泡体の表面の少なくとも一部が、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料、前記第2の酸化触媒材料又は前記直接酸化のための触媒材料によってコートされている、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記触媒でコートされた前記発泡体が、以下の工程を含む方法によって得られる、請求項26に記載の装置。
A1)前記触媒材料と、溶媒又は溶媒混合物と、必要に応じて添加剤とを含む溶液又は懸濁液を調製する。
A2)前記発泡体の表面の少なくとも一部を前記溶液又は懸濁液と接触させる。
A3)必要に応じて、余分な溶液又は懸濁液を排出する。
A4)必要に応じて、前記発泡体を乾燥する。
A5)前記触媒材料を焼成する。
【請求項28】
前記発泡体が触媒活性を有する材料で形成されている、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)の少なくとも1つが、少なくとも2つの反応管を含む管束反応器であり、前記直接酸化のための触媒材料、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料又は前記第2の酸化触媒材料及び前記発泡体又は前記直接酸化のための触媒材料、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料又は前記第2の酸化触媒材料でコートされた前記発泡体又は当該触媒材料で形成された前記発泡体が、前記反応管の内部に設けられている、請求項25〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)の少なくとも1つが、壁反応器であり、前記直接酸化のための触媒材料、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料又は前記第2の酸化触媒材料及び前記発泡体又は前記直接酸化のための触媒材料、前記脱水素触媒材料、前記第1の酸化触媒材料又は前記第2の酸化触媒材料でコートされた前記発泡体又は当該触媒材料で形成された前記発泡体が、2つの隣接するプレート間の反応室に設けられている、請求項25〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記直接酸化用反応器(β1)、前記脱水素反応器(β2)、前記第1の酸化反応器(β3)及び前記第2の酸化反応器(β4)、好ましくは、前記第1の酸化反応器(β2)又は前記第2の酸化反応器(β3)又は前記第1の酸化反応器(β2)及び前記第2の酸化反応器(β3)が、触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された前記少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックを含み、1つの反応器の少なくとも2つの発泡体が異なる触媒活性を有する、請求項25〜30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
触媒材料でコートされるか、触媒材料で形成された前記少なくとも2つの分離可能な発泡体ブロックが、反応物質入口から生成物出口に向かう方向に体積当たりの触媒活性が増加するように前記反応器内に配置されている、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記精製装置(β6)と流体接続された重合装置(β7)をさらに含む、請求項25〜32のいずれか1項に記載の装置。
【請求項34】
請求項25〜33のいずれか1項に記載の装置の、請求項1〜20のいずれか1項に記載の不飽和カルボン酸を製造するための方法における使用。
【請求項35】
請求項33に記載の装置の、請求項22に記載の不飽和カルボン酸からなるポリマーを製造するための方法における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−500820(P2012−500820A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524287(P2011−524287)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059782
【国際公開番号】WO2010/023053
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(504341139)エボニック ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】