説明

不飽和結合含有シリル基保護アミノ酸化合物及びその製造方法

【解決手段】一般式(1)


[R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。]
で示される化合物。
【効果】本発明により提供されるカルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物に不飽和結合を導入した化合物は、高分子やシラン化合物、シロキサン化合物を容易にアミノ酸変性できるため、高分子やシラン化合物、シロキサン化合物をアミノ酸変性できる変性剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物に不飽和結合を導入した化合物に関する。この化合物は高分子化合物やシラン化合物、シロキサン化合物をアミノ酸変性できる変性剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸が有機基で保護されたアミノ酸化合物は、常温液体、もしくは常温固体であっても、融点が有機基で保護されていないアミノ酸化合物と比較して低いため、高融点である保護されていないアミノ酸化合物と比較して扱いやすく、加熱による分解反応も起こりにくいため、有用な化合物である。その中でも、カルボン酸の保護基がシリル基、即ちカルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物は、穏和な条件で脱保護でき、容易にアミノ酸化合物を再生することが可能であるため、より有用な化合物である。
【0003】
上記カルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物としては、例えば特許文献1(特開平8−325276号公報)記載のγ−トリメチルシロキシカルボニルメチルアミノプロピルトリエトキシシランが有用であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−325276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の化合物では、不飽和結合を有する高分子化合物をアミノ酸変性することは困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、各種高分子化合物等をアミノ酸変性できるカルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物に不飽和結合を導入した化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定のカルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物に不飽和結合を導入した化合物が、高分子化合物の二重結合や、シラン化合物、シロキサン化合物のケイ素−水素結合と反応させることにより、高分子化合物やシラン化合物、シロキサン化合物を保護アミノ酸変性でき、その後脱保護を行うと容易にアミノ酸変性高分子化合物、アミノ酸変性シラン化合物、アミノ酸変性シロキサン化合物とすることができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記に示す不飽和結合含有シリル基保護アミノ酸化合物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。]
で示される化合物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化2】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、bは1〜10の整数である。]
で示されるアミン化合物と、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
請求項3:
下記一般式(4)
【化4】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。)
で示される化合物をR1−基(R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)を有するアルキル化剤を用いてアルキル化又はR8910Si−基(R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)を有するシリル化剤を用いてシリル化することを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
請求項4:
下記一般式(5)
【化5】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、X1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
【化6】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、bは1〜10の整数である。]
で示されるアミン化合物を脱ハロゲン化水素反応させることを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により提供されるカルボン酸がシリル基で保護されたアミノ酸化合物に不飽和結合を導入した化合物は、高分子化合物やシラン化合物、シロキサン化合物を容易にアミノ酸変性できるため、高分子化合物やシラン化合物、シロキサン化合物をアミノ酸変性できる変性剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミンのIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンのIRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミンのIRスペクトルである。
【図7】実施例4で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図8】実施例4で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンのIRスペクトルである。
【図9】実施例5で得られたN−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図10】実施例5で得られたN−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンのIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の不飽和結合含有シリル基保護アミノ酸化合物は、下記一般式(1)
【化7】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。]
で示される化合物である。
【0011】
ここで、R1が炭素数1〜20、特に1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基の場合、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、テキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が例示される。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0012】
また、R1が、R8910Si−で示されるトリオルガノシリル基の場合、R8〜R10は炭素数1〜20、特に1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R8〜R10の具体例としては、R1と同様のものを挙げることができる。トリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、ジエチルメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、テキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、オクタデシルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。
2〜R4は、R8〜R10について説明したものと同様であり、トリオルガノシリル基としても同様なものが挙げられる。
【0013】
5、R6及びR7は、水素原子又は炭素数1〜20、特に1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基の場合、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、テキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が例示される。また、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、トリル基等の炭素数6〜18のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、エステル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。また、aは0又は1、bは1〜10、特に1〜5の整数である。
【0014】
上記一般式(1)で示される化合物の具体例としては、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−メチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−エチルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリエチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−トリエチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−t−ブチルジメチルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリイソプロピルシリルアリルアミン等が例示される。
【0015】
また、上記一般式(1)で示される化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(2)
【化8】

(式中、R1、bは上記と同様である。)
で示されるアミン化合物と、下記一般式(3)
【化9】

(式中、R2、R3、R4、R5及びR7は上記と同様である。)
で示される化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0016】
上記一般式(2)におけるR1、bは上述したものが例示でき、上記一般式(2)で示される化合物の具体例としては、アリルアミン、N−メチルアリルアミン、N−エチルアリルアミン、N−トリメチルシリルアリルアミン、N−トリエチルシリルアリルアミン、N−t−ブチルジメチルシリルアリルアミン、N−トリイソプロピルシリルアリルアミン等が例示される。
【0017】
また、上記一般式(3)におけるR2、R3、R4、R5及びR7は上述したものが例示でき、上記一般式(3)で示される化合物の具体例としては、トリメチルシリルアクリレート、トリエチルシリルアクリレート、t−ブチルジメチルシリルアクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、トリエチルシリルメタクリレート、t−ブチルジメチルシリルメタクリレート、トリイソプロピルシリルメタクリレート等が例示される。
【0018】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物と、上記一般式(3)で示される化合物との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(2)で示されるアミン化合物1モルに対し、一般式(3)で示される化合物を、0.2〜5モル、特に0.5〜2モルの範囲が好ましい。
【0019】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜200℃、特に20〜150℃が好ましく、反応時間も特に限定されないが、1〜40時間、特に1〜20時間が好ましい。
【0020】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
以上のようにして得られた反応液からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【0022】
また、上記一般式(1)で示される化合物のR1が炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基の場合、下記一般式(4)
【化10】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、a、bは上記と同様である。)
で示される化合物をR1−基を有するアルキル化剤を用いてアルキル化又はR8910Si−基を有するシリル化剤を用いてシリル化する方法が挙げられる。
【0023】
上記アルキル化反応で用いられるR1−基を有するアルキル化剤としては、クロロメタン、クロロエタン、ブロモメタン、ブロモエタン、ヨードメタン、ヨードエタン等のR1X(R1は上記の通りであり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。)で表されるハロゲン化炭化水素化合物;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等の(R1O)2C=O(R1は上記の通りである。)で表される炭酸エステル化合物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の(R1O)2SO2(R1は上記の通りである。)で表される硫酸エステル化合物が例示される。
【0024】
上記シリル化反応で用いられるR8910Si−基を有するシリル化剤としては、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリメチルヨードシラン、トリエチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン等のR8910SiX(R8、R9及びR10は上記の通りであり、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。)で表されるトリオルガノハロシラン化合物;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン等の(R8910Si)2NH(R8、R9及びR10は上記の通りである。)で表されるシラザン化合物;ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリエチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド等のCR3C(−OSiR8910)=NSiR8910(Rは水素原子又はフッ素原子であり、R8、R9及びR10は上記の通りである。)で表されるシリルアミド化合物;メタンスルホン酸トリメチルシリル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のCR3SO3SiR8910(Rは水素原子又はフッ素原子であり、R8、R9及びR10は上記の通りである。)で表されるスルホン酸シリルエステル化合物が例示される。
【0025】
上記一般式(4)で示される化合物と、アルキル化剤又はシリル化剤との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(4)で示される化合物1モルに対し、アルキル化剤又はシリル化剤を、アルキル基又はシリル基のモル数で1〜4モル、特に1〜2モルの範囲が好ましい。
【0026】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜200℃、特に20〜150℃が好ましく、反応時間も特に限定されないが、1〜40時間、特に1〜20時間が好ましい。
【0027】
上記反応は、無触媒でも進行するが、触媒を用いることもできる。用いられる触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩や、硫酸、スルホン酸といった酸とその誘導体やその無機塩等の塩基性又は酸性化合物が例示される。
【0028】
なお、上記反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
以上のようにして得られた反応液からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【0030】
また、上記一般式(1)で示される化合物は、下記一般式(5)
【化11】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6及びR7、aは上記と同様であり、X1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
【化12】

(式中、R1、bは上記と同様である。)
で示されるアミン化合物を脱ハロゲン化水素反応させることにより製造することもできる。
【0031】
上記一般式(5)で示される化合物と、上記一般式(2)で示されるアミン化合物との配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、一般式(5)で示される化合物1モルに対し、上記一般式(2)で示されるアミン化合物を、0.5〜4モル、特に1〜2モルの範囲が好ましい。
【0032】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜200℃、特に20〜150℃が好ましく、反応時間も特に限定されないが、1〜40時間、特に1〜20時間が好ましい。
なお、溶媒の使用等については上記と同様である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び応用例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例1]N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、アリルアミン45.7g(0.8モル)を仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、トリイソプロピルシリルアクリレート182.7g(0.8モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で6時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点128−129℃/0.4kPaの留分185.4gを得た。
【0035】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 285,242,173,70,56,41
1H−NMRスペクトル(重ベンゼン溶媒)
図1にチャートで示す。
IRスペクトル
図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミンであることが確認された。
【0036】
[実施例2]N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、実施例1で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチルアリルアミン142.7g(0.5モル)、トリエチルアミン55.7g(0.55モル)、トルエン150mlを仕込み、50℃に加熱した。内温が安定した後、トリメチルクロロシラン57.0g(0.53モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で4時間撹拌した。生成した塩を濾過により除去した後、濾液を蒸留し、沸点135−136℃/0.4kPaの留分140.2gを得た。
【0037】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 357,342,301,142,128,73
1H−NMRスペクトル(重ベンゼン溶媒)
図3にチャートで示す。
IRスペクトル
図4にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンであることが確認された。
【0038】
[実施例3]N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、アリルアミン45.7g(0.8モル)を仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリイソプロピルシリルメタクリレート193.9g(0.8モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で8時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点134℃/0.4kPaの留分154.1gを得た。
【0039】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 299,256,187,157,70,41
1H−NMRスペクトル(重ベンゼン溶媒)
図5にチャートで示す。
IRスペクトル
図6にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミンであることが確認された。
【0040】
[実施例4]N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、実施例3で得られたN−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチルアリルアミン62.7g(0.2モル)、トリエチルアミン22.3g(0.22モル)、トルエン60mlを仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメチルクロロシラン22.8g(0.21モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で8時間撹拌した。生成した塩を濾過により除去した後、濾液を蒸留し、沸点148−149℃/0.4kPaの留分56.1gを得た。
【0041】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 371,303,142,128,115,73
1H−NMRスペクトル(重ベンゼン溶媒)
図7にチャートで示す。
IRスペクトル
図8にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−(2−トリイソプロピルシロキシカルボニル−2−メチル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンであることが確認された。
【0042】
[実施例5]N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N−トリメチルシリルアリルアミン103.4g(0.8モル)を仕込み、90℃に加熱した。内温が安定した後、トリメチルシリルアクリレート115.4g(0.8モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で15時間撹拌した。反応液を蒸留し、沸点82−83℃/0.4kPaの留分42.5gを得た。
【0043】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 273,216,147,142,128,73
1H−NMRスペクトル(重ベンゼン溶媒)
図9にチャートで示す。
IRスペクトル
図10にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミンであることが確認された。
【0044】
[応用例1]N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、実施例5で得られたN−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリルアリルアミン27.4g(0.1モル)、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金含量3質量%)0.13gを仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、トリメトキシシラン12.2g(0.1モル)を1時間かけて滴下し、更にその温度で5時間撹拌した。反応液を蒸留し、N−(2−トリメチルシロキシカルボニル)エチル−N−トリメチルシリル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを沸点139−140℃/0.4kPaの留分として24.9g得た(収率63%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。]
で示される化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、bは1〜10の整数である。]
で示されるアミン化合物と、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)
で示される化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(4)
【化4】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、bは1〜10の整数である。)
で示される化合物をR1−基(R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基である。)を有するアルキル化剤を用いてアルキル化又はR8910Si−基(R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)を有するシリル化剤を用いてシリル化することを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(5)
【化5】

(式中、R2、R3及びR4は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R5、R6及びR7は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基であり、aは0又は1、X1は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。)
で示される化合物と、下記一般式(2)
【化6】

[式中、R1は水素原子又は炭素数1〜20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基又はR8910Si−(式中、R8、R9及びR10は炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示されるトリオルガノシリル基であり、bは1〜10の整数である。]
で示されるアミン化合物を脱ハロゲン化水素反応させることを特徴とする請求項1記載の化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144445(P2012−144445A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1645(P2011−1645)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】