説明

両吸込型遠心流体機械

【課題】水圧脈動を低減することができる両吸込型遠心流体機械を提供する。
【解決手段】流体を吸入する第1の吸入口I1と、前記第1の吸入口I1と同軸上に位置し前記第1の吸入口I1と反対方向を向く流体を吸入する第2の吸入口I2と、前記第1の吸入口I1に流体を導入する複数の第1の羽根1と、前記第2の吸入口I2に流体を導入する前記第1の羽根1と同数の第2の羽根2と、前記第1の吸入口I1及び前記第2の吸入口I2から吸入した流体を径方向に吐出する吐出口Oとを備える両吸込型遠心流体機械において、前記第1の羽根1と前記第2の羽根2は周方向において交互に配置されて前記第1の羽根1と前記第2の羽根2とにより流体の流路をそれぞれ形成し、前記第1の羽根1により導かれた流体と、前記第2の羽根2により導かれた流体は、前記流路において合流して前記吐出口Oより吐出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両吸込型遠心流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両吸込型遠心流体機械が知られている(下記特許文献1〜3参照)。
例えば、従来の両吸込型遠心流体機械においては、下記特許文献1に記載されているように、吐出口における流体の出口速度は下記特許文献1の第2図に示されるように変動しているため、これが舌端(下記特許文献1の第3図(A)におけるTp参照)と干渉することにより水圧脈動を生じることとなる。
これに対し、下記特許文献1の第5図に示されるように羽根枚数を増やすことにより、下記特許文献1の第6図に示されるように出口速度の変動が小さくなり、水圧脈動も小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−135397号公報
【特許文献2】特開2008−008154号公報
【特許文献3】実開平6−087694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の両吸込型遠心流体機械においては、上記特許文献1の第5図に示されるように羽根枚数を増やした場合、構造が複雑となるため、製作コストが大幅に増加してしまうという問題がある。
【0005】
なお、上記特許文献1の第5図においては、径方向の外側に位置する羽根の枚数を途中から増加させているが、流体の吸入口の部分から羽根の枚数を増加させた場合、流体の吸入口における流路面積が減少して流速が増加することにより、静圧が低下して流体が気化する現象であるキャビテーションが発生しやすくなる。そして、キャビテーションが発生した場合、両吸込型遠心流体機械の性能低下や損傷を引き起こす虞があるという問題がある。
【0006】
以上のことから、本発明は、水圧脈動を低減することができる両吸込型遠心流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る両吸込型遠心流体機械は、
流体を吸入する第1の吸入口と、
前記第1の吸入口と同軸上に位置し前記第1の吸入口と反対方向を向く流体を吸入する第2の吸入口と、
前記第1の吸入口に流体を導入する複数の第1の羽根と、
前記第2の吸入口に流体を導入する前記第1の羽根と同数の第2の羽根と、
前記第1の吸入口及び前記第2の吸入口から吸入した流体を径方向に吐出する吐出口と
を備える両吸込型遠心流体機械において、
前記第1の羽根と前記第2の羽根は周方向において交互に配置されて前記第1の羽根と前記第2の羽根とにより流体の流路をそれぞれ形成し、前記第1の羽根により導かれた流体と、前記第2の羽根により導かれた流体は、前記流路において合流して前記吐出口より吐出する
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る両吸込型遠心流体機械は、第1の発明に係る両吸込型遠心流体機械において、
前記第1の羽根により導入された流体は、途中で前記第2の羽根に遭遇して分岐され、分岐された流体は前記第1の羽根と前記第2の羽根に導かれて前記吐出口より吐出され、
前記第2の羽根により導入された流体は、途中で前記第1の羽根に遭遇して分岐され、分岐された流体は前記第1の羽根と前記第2の羽根に導かれて前記吐出口より吐出される
ことを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る両吸込型遠心流体機械は、第1の発明に係る両吸込型遠心流体機械において、
前記吐出口における前記第1の羽根及び前記第2の羽根の端部の形状を軸方向と平行の形状以外の形状とする
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水圧脈動を低減することができる両吸込型遠心流体機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図及び透視平面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図及び展開図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る両吸込型遠心流体機械における流体の吐出口の形状を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る両吸込型遠心流体機械を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
上述したように、両吸込型遠心流体機械において水圧脈動を減らすには、羽根の枚数を増やすことが有効である。しかし、単純に羽根の枚数を増やした場合、羽根の厚さの分、吸入口の流路面積が減少し、吸入口の部分の羽根においてキャビテーションが発生しやすくなるという問題がある。
【0013】
このため、それぞれの羽根の間に、径方向の外側近傍にのみ存在する短い羽根(以下、スプリッターという)を追加することにより、吐出口における羽根の枚数を増やす構成が従来から知られているが、構造が複雑となるため、製作コストが大幅に増加してしまうという問題がある。
【0014】
また、従来の両吸込型遠心流体機械として、上記特許文献2の図6,7に示される構成が知られている。上記特許文献2の図7においては、水圧脈動を減らすために羽根を互い違いにしているが、中央主板(例えば、上記特許文献2の図6,7中における中央主板200参照)が存在しているため、性能向上の効果が乏しいという問題がある。また、上記特許文献2の図6においては、性能向上のため中間の壁をなくして摩擦損失を低減しているが、水圧脈動の低減効果が劣るという問題がある。
【0015】
このため、本発明に係る両吸込型遠心流体機械は、2個の通常の片吸込型遠心流体機械を貼り合わせたような構成とした。これにより、流量がほぼ倍になり、さらに、軸方向に発生する推力をキャンセルすることができる。
なお、本発明に係る両吸込型遠心流体機械においては、2個の通常の片吸込型遠心流体機械をただ貼り合わせるのではなく、中央主板を取り除いて流れを合流させ、互いの羽根を交互に配置することにより共用する工夫を行う。
これにより、本発明に係る両吸込型遠心流体機械によれば、スプリッターを備えることにより水圧脈動を低減しつつも製作コストの低減を図り、さらに、中央主板をなくして性能の向上も図ることができる。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械について説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図及び透視平面図である。なお、図1(a)は本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図、図1(b)は本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の透視平面図である。また、図1(a)及び図1(b)中において、矢印Rは回転方向を示している。また、図1(b)中に示す矢印I,II,IIIは流体の流れの例を示している。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械は、流体の吸入口として矢印I1で示す第1の吸入口I1と、矢印I2で示す第2の吸入口I2を備えており、流体の吐出口として矢印Oで示す吐出口Oを備えている。そして、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械においては、第1の吸入口I1及び第2の吸入口I2へ軸方向から流体を吸い込むと、第1の吸入口I1及び第2の吸入口I2から吸い込んだ流体が合流し、合流した流体が複数の吐出口Oから径方向に吐き出されている構成となっている。
【0018】
本実施例に係る両吸込型遠心流体機械は、第1の羽根車4と第2の羽根車3により外殻をなしている。第1の羽根車4と第2の羽根車3との間には、第1の吸入口I1側から流体を吸い込むための第1の羽根1と、第2の吸入口I2側から流体を吸い込むための第2の羽根2が設置されている。第1の羽根1と第2の羽根2は、軸部5に設置された羽根支持部6を介して支持されている。
【0019】
図1(b)に示すように、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械は、3枚の第1の羽根1と、3枚の第2の羽根2を備えている。第1の羽根1及び第2の羽根2は回転方向前方から後方に延在し、かつ回転方向に膨らむように湾曲した形状となっている。なお、本実施例においては、3枚の第1の羽根1と、3枚の第2の羽根2を備える場合を例として説明するが、3枚以外の複数枚であっても第1の羽根1と第2の羽根2の枚数を同数設置しさえすれば同様に実現することが可能である。
【0020】
第1の吸入口I1では、第1の羽根1が3枚存在し、第2の吸入口I2も同様に第2の羽根2が3枚存在し、第1の羽根1と第2の羽根2を交互に配置されるように組み合わせることにより、吐出口Oにおいては第1の羽根1及び第2の羽根2合わせて6枚存在することとなる。このため、吐出口Oにおいては従来の両吸込型遠心流体機械において片側6枚の羽根を設置した場合と同等の状況となる。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図及び展開図である。なお、図2(a)は本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の軸方向における断面図、図2(b)は本発明の第1の実施例に係る両吸込型遠心流体機械の展開図である。また、図1(a)中において、矢印Rは回転方向を示している。また、図2における流体の流れの例を示した矢印I,II,IIIは、図1中に示す矢印I,II,IIIと同じ流れを示している。また、図2におけるA,A´,B,B´,C,C´,D,D´は図1中に示すA,A´,B,B´,C,C´,D,D´と同じ位置を示している。
【0022】
図2(b)に示すように、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械においては、第1の吸入口I1から矢印I,II,IIIで示すように、第1の羽根1に導かれて流体が流入する。そして、矢印IIで示した流体の流れは、途中で第2の羽根2に遭遇する。これにより、第2の羽根2が従来の両吸込型遠心流体機械におけるスプリッターと同じ効果を奏することとなる。
【0023】
また、図2(b)に示すように、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械においては、第2の吸入口I2から矢印I´,II´,III´で示すように、第2の羽根2に導かれて流体が流入する。そして、矢印II´で示した流体の流れは、途中で第1の羽根1に遭遇する。すなわち、第1の羽根1により導入された流体は、途中で第2の羽根2に遭遇して分岐され、分岐された流体は第1の羽根1と第2の羽根2に導かれて吐出口Oより吐出され、また、第2の羽根2により導入された流体は、途中で第1の羽根1に遭遇して分岐され、分岐された流体は第1の羽根1と第2の羽根2に導かれて吐出口Oより吐出される。これにより、第1の羽根1が従来の両吸込型遠心流体機械におけるスプリッターと同じ効果を奏することとなる。
【0024】
ところで、上記特許文献3に記載されている両吸込型遠心流体機械は、単に2個の片吸込型遠心流体機械を貼り合わせるのではなく、2個の片吸込型遠心流体機械を融合させている(上記特許文献3の図1(b),(c)参照)。
しかしながら、上記特許文献3に記載されている両吸込型遠心流体機械は、上記特許文献3の図1(b),(c)に示される流路1aと流路1bとが3次元的に入り組んでいるだけであり、流路1aと流路1bが合流する構造とはなっていないため、性能向上の効果が乏しい。なお、上記特許文献3の図1(a)は流路1aのみ示したものに相当している。
【0025】
これに対し、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械においては、図2に示すように、本質的に2個の片吸込型遠心流体機械が融合している。すなわち、第1の羽根1と第2の羽根2とにより流体の流路がそれぞれ形成され、この流路において図2中に矢印I,II,IIIで示した第1の吸入口I1から流入した流体の流れと、図2中に矢印I´,II´,III´で示した第2の吸入口I2から流入した流体の流れが合流して吐出口Oから吐き出される構造となっている。これにより、各流路における流体の流量がほぼ倍になり、さらに、軸方向に発生する推力をキャンセルすることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械によれば、スプリッターを設置した場合と同様に、吐出口Oにおける羽根の枚数が多いため、水圧脈動を低減することができる。
また、スプリッターを設置した場合と同様に、第1の吸入口I1及び第2の吸入口I2における羽根の枚数が少ないためキャビテーションの発生を抑制することができる。
また、中央主板をなくしたことにより、摩擦損失を低減し性能を向上させることができる。
また、それぞれの羽根の間に単純にスプリッターを設置した2個の片吸込型遠心流体機械を貼り合わせた場合に比べ、製作コストを半減にすることができる。
【実施例2】
【0027】
以下、本発明の第2の実施例に係る両吸込型遠心流体機械について説明する。
図3は、本発明の第2の実施例に係る両吸込型遠心流体機械における流体の吐出口の形状を示した側面図である。なお、図3においては、吐出口Oにおける流体の出口速度の速度変動の波を模式的に破線により示すこととする。また、図3中において矢印Sは軸方向を示し、矢印Rは回転方向を示している。
【0028】
上述したように、吐出口Oにおける流体の出口速度は、上記特許文献1の第2図に示されるように速度変動が発生しており、これが舌端(上記特許文献1の第3図(A)におけるTp参照)にぶつかって水圧脈動が発生する。
例えば、吐出口Oの形状が上記特許文献1の第3図(B)に示されるような形状の場合、図3(d)中に破線により示すように速度変動の波に軸方向において位相差がないため、速度変動の波が一斉に舌端にぶつかり、大きな水圧脈動が発生する。
【0029】
これに対し、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械における吐出口Oの形状によれば、図3(a)〜(c)中に破線により示すように速度変動の波に軸方向において位相の分布があるため、速度変動の波が舌端にぶつかるタイミングに差が生じるため、水圧脈動を低減することができる。
【0030】
すなわち、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械においては、吐出口Oにおける第1の羽根1及び第2の羽根2の端部の形状を軸方向と平行の形状以外の形状とすることにより、速度変動の波が舌端にぶつかるタイミングに差が生じるため、水圧脈動を低減することができる。
【0031】
したがって、本実施例に係る両吸込型遠心流体機械によれば、第1の発明に係る両吸込型遠心流体機械の奏する効果に加え、周期的な水圧脈動を低減することができるため、騒音や振動を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば、両吸込型遠心流体機械において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 第1の羽根
2 第2の羽根
3 第2の羽根車
4 第1の羽根車
5 軸部
6 羽根支持部
1 第1の吸入口
2 第2の吸入口
O 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入する第1の吸入口と、
前記第1の吸入口と同軸上に位置し前記第1の吸入口と反対方向を向く流体を吸入する第2の吸入口と、
前記第1の吸入口に流体を導入する複数の第1の羽根と、
前記第2の吸入口に流体を導入する前記第1の羽根と同数の第2の羽根と、
前記第1の吸入口及び前記第2の吸入口から吸入した流体を径方向に吐出する吐出口と
を備える両吸込型遠心流体機械において、
前記第1の羽根と前記第2の羽根は周方向において交互に配置されて前記第1の羽根と前記第2の羽根とにより流体の流路をそれぞれ形成し、前記第1の羽根により導かれた流体と、前記第2の羽根により導かれた流体は、前記流路において合流して前記吐出口より吐出する
ことを特徴とする両吸込型遠心流体機械。
【請求項2】
前記第1の羽根により導入された流体は、途中で前記第2の羽根に遭遇して分岐され、分岐された流体は前記第1の羽根と前記第2の羽根に導かれて前記吐出口より吐出され、
前記第2の羽根により導入された流体は、途中で前記第1の羽根に遭遇して分岐され、分岐された流体は前記第1の羽根と前記第2の羽根に導かれて前記吐出口より吐出される
ことを特徴とする請求項1に記載の両吸込型遠心流体機械。
【請求項3】
前記吐出口における前記第1の羽根及び前記第2の羽根の端部の形状を軸方向と平行の形状以外の形状とする
ことを特徴とする請求項1に記載の両吸込型遠心流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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