説明

両端フランジ型モータを備える電動シリンダ装置

【課題】中空軸モータ及び減速機を挟み、緩衝装置と2つのネジナットを設置した構造を特徴とするシリンダ装置(特願2010−507153号公報、以下特願という)を、両端に出力軸フランジが存在する中空軸モータ(以下サーボモータという)を擁するシリンダ装置用に構造を簡素化。
【解決手段】本発明は、サーボモータにネジ軸を挿通させ、このサーボモータの一方の出力軸に連結される第1ネジナットを備え、さらにサーボモータを挟んで、他方の出力軸に連結される緩衝装置及び第2ネジナットを備えた構造を特徴とするシリンダ装置であり、前記シリンダ装置(特願)の発明である中空軸モータの回転駆動力を、緩衝装置を介して2つのネジナットへ伝達させる機構を維持しつつ、かつ、減速機等を必要としないサーボモータ用に簡素化された構造となり、搬送のみならず、サーボモータを擁する高圧ポンプの動力源としても使用可能なプランジャシリンダ装置となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空軸モータでナットを回転させてネジ軸を直動させるシリンダ装置、ピストン運動用動力に係り、特に、前記中空軸モータに関して、両端に出力軸フランジを備えたモータを使用し、減速機及びエンコーダ等の設置が不要な電動シリンダ装置、往復運動プランジャシリンダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送機械装置における搬送・位置決めのための動力伝達装置として、空圧式、油圧式、そして電動式のシリンダ装置が使用されている。とりわけ、電動式シリンダ装置は油圧式や空圧式のシリンダ装置に比べ、騒音や油漏れ等の環境汚染や、取扱い易さ等の理由から、各種の産業用機器に最適とされている。その為、従来、電動式のシリンダ装置について盛んに研究や開発がなされており、それに関して既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「シリンダ装置」という名称で、物品の搬送装置等において使用されるシリンダ装置に関する発明が記載されている。特許文献1に記載されたシリンダ装置は、内蔵された中空軸モータ及び減速機により、ネジ軸とネジナットの相対的な回転運動を直線的な運動に変換させ、ネジ軸又はネジナットに接続された機構部等を直線駆動するものである。特筆すべき点は、機体内に従来1箇所しか設置されなかったネジナットを、中空軸モータ及び減速機を挟み2箇所設置させている点である。
【0004】
ネジ軸を保持するネジナットを、所定の距離が隔てられた2箇所に設置する事により安定性が増すことから、ネジ軸のブレを防ぎ、ネジ軸の送り精度を高めるとともに、従来のシリンダ装置の搬送距離を倍以上に伸長することの出来る装置となっている。さらに、機内に緩衝装置を備える事により、組立誤差や機械誤差を吸収する構造になっており、熱変形等に起因して生じるネジ軸の寸法変位等に対応可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2010−507153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の発明のシリンダ装置は、中空軸モータの出力軸が1箇所であり、そこから減速機を介して中空軸モータの動力を、対向配置されているネジナットに各々伝達させているが、中空軸モータが、両端に出力軸フランジを擁するモータ(以下、本明細ではサーボモータという)で、シリンダ装置内に減速機、エンコーダ等を新たに取り付ける必要が無いのであれば、前記特許文献1に設置された減速機、エンコーダ等が不要になり、かつ、1つの出力軸から2つのネジナットに動力伝達をする必要がないことから、特許文献1の構造では機構が複雑化してしまう。
【0007】
本発明は、前記の事情に対処してなされたものであり、サーボモータもしくは同等のモータを擁するシリンダ装置において、特許文献1の構造を簡素化し、かつ同文献の機構を考慮した電動シリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成の為に、請求項に基づき下記0008乃至0010記載の発明を提案する。なお、以下の説明では便宜上、ネジ軸の軸方向(図1中に矢印Xで示す方向)を前後方向と呼ぶこととする。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ネジ軸が挿通された中空軸なるサーボモータに、前後に出力軸を擁すフランジが内蔵され、フランジと継手を各々連結させる。また、サーボモータを挟んで対向配置される第1ネジナット、第2ネジナットが、ネジ軸の両端にそれぞれ螺合している。サーボモータの前後に設置された継手と、第1、第2ネジナットを各々連結させることで、サーボモータの回転駆動力を、第1、第2ネジナットに同等に伝達可能にさせた装置となる。
【0010】
さらに、第1、第2ネジナットのいずれかに、内歯ギア及び内歯ギアと螺合する外歯ギアからなる緩衝装置を設置する。内歯ギアは継手(接続軸)と接続させ、外歯ギアはネジナットと接続させる。この場合、サーボモータからなる回転駆動力は、継手、緩衝装置を介して第1、第2どちらか一方のネジナットへ伝達されることになる。(緩衝装置に関しては、前記特許文献1において請求された発明であり、詳細は前記特許文献1参照)
【0011】
従って、本発明の電動シリンダ装置は、サーボモータの回転に伴い、一方のネジナットには、フランジ・継手・緩衝装置を介して回転駆動力が伝達、他方のネジナットにはフランジ・継手を介して同等の回転駆動力が伝達され、2つのネジナットが同等の回転を成すという作用を有する。このとき、本体を固定させ、ネジ軸の回転を抑制させていれば、ネジ軸が、その図中のネジ軸の軸方向へ前進又は後退する。逆に、ネジ軸を固定・回転抑制させれば、本体が、図中のネジ軸の軸方向へ前進又は後退する。
【0012】
なお、本体の固定、並びにネジ軸の回転の抑制方法に関しては、本件では本装置に廻り止めガイド(図中の二点鎖線にて記載、特願2011−30426、名称:電動シリンダ装置のガイド支持機構にて請求された発明)を設置することにより、ネジ軸の回転を抑制させることを提案する。本提案以外にも、搬送側にてネジ軸を回転抑制する装置の製作も可能である。また、ネジ軸にボールネジ溝と、ボールスプライン溝をクロスして設け、軸方向に設けられたボールスプライン溝に鋼球を組み込み、スプライン用ナットを軸方向の一定位置に回転も移動もしないように固定し廻り止め機構とすることで、ネジ軸を直動させることも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のシリンダ装置は、特許文献1の発明の中空軸モータの回転駆動力を、緩衝装置を介して2つのネジナットへ伝達させるという機構を維持しつつ、かつ、減速機等を必要としないサーボモータもしくはサーボモータと同等のモータ用にシンプル化された構造となっている。
【0014】
サーボモータ対応可能な装置であることから、機械装置における搬送・位置決めのみならず、サーボモータを擁する高圧ポンプ用の動力装置としても使用可能なプランジャシリンダ装置となった。具体例をあげれば、ネジ軸の両先端部にプランジャを取り付け、往復運動をさせることでシリンダ内の液体を圧送させる装置等に用いることが可能となる。
【0015】
従来の高圧ポンプ用の往復運動する動力装置としては、モータにてクランクを回し、クランクの回転運動を往復運動に変換させるクランク式プランジャポンプ、又は、ベルトの正・逆転駆動により往復運動するベルト式プランジャポンプが主流である。だが、欠点として、クランク方式は長いストロークが取れない為、小容量のシリンダを複数用いた装置となる。また、ベルト駆動方式はベルトの寿命、構造上の変作動等の問題点があった。
【0016】
しかしながら本発明であれば、上記装置におけるいずれの課題も解決可能となる。本発明は、モータの正・逆転による往復運動をプランジャに直結させて高圧の動力を得るものであり、構造上シリンダの容量も大きく、長いストロークも可能であり複数のシリンダを用いる必要性が無い。又、ベルト等の消耗品も無い為、部品交換等の必要性も無い。従って、高圧ポンプ用の動力装置としても、従来装置の問題点を解決したプランジャ式往復運動ポンプとして使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本考案の形態を図1に基づき、説明する。
【0018】
図1は本発明の形態に係る電動シリンダ装置の断面図である。中空軸モータ1にネジ軸3を挿通させ、中空軸モータ1に内蔵された出力軸であるモータ軸フランジ2の前後に、継手4a・bを各々連結させる。モータ軸フランジ2に連結された継手4aは、接続軸5aを介して、主なる第1ネジナット6に連結させることにより、中空軸モータ1の回転駆動力を第1ネジナット6に伝達させている。さらに、モータ軸フランジ2に連結された継手4bは、接続軸5bを介して内歯ギア7に連結、さらに内歯ギア7と外歯ギア8を螺合させ、外歯ギア8を第2ネジナット9に連結させることにより、中空軸モータ1の回転駆動力を、従なる第2ネジナット9に伝達させる。第1ネジナット6と第2ネジナット9はネジ軸3に螺合し、中空軸モータ1を挟んで対向配置させる。このとき、第1ネジナット6と第2ネジナット9は、ハウジング10により回転自在に支持され、本体は固定、ネジ軸3は回転を抑制されている。
【0019】
ここで、本発明ではネジ軸3の回転抑制法として、本体に装備されたスライド移動装置である廻り止めガイド13を提案する。この廻り止めガイド13は、特願2011−30426(名称:電動シリンダ装置のガイド支持機構)にて請求された発明であり、詳細は前記特願を参照とする。
【0020】
以上により、ハウジング10より固定された中空軸モータ1の回転駆動により、中空軸モータ1を挟み対向配置された第1ネジナット6及び第2ネジナット9が同等の回転を成し、螺合されているネジ軸3が矢印Xで示すように移動する。この時、高圧ポンプの動力装置として使用する場合、ネジ軸3の両先端部にプランジャ11を装着させ、シリンダ12内を往復運動させることで、シリンダ12内の液体を圧送させる。
【0021】
なお、図中の継手4a・bに関しては、内歯・外歯ギアを螺合させて各々成り立っている。これは、装置の組立の際に閉塞感を防ぎ、組み立て易く配慮したものである。だが、動力を伝達する課程で内歯ギア7・外歯ギア8が存在する第2ネジナット9側に設置された継手4bに関しては、内歯ギア7・外歯ギア8が同等の役割を果たす為、排除しても構わない。また、中空軸モータ1に備えるモータ軸フランジ2の両端、及び、接続軸5a・bの中空軸モータ1側の端部を凹凸とし、モータ軸フランジ2と接続軸5a・bを各々螺合させる構造にすれば、継手4a・b共に排除することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るシリンダ装置の断面図
【符号の説明】
【0023】
1.中空軸モータ
2.モータ軸フランジ
3.ネジ軸
4a.継手
4b.継手
5a.接続軸
5b.接続軸
6.第1ネジナット(主)
7.内歯ギア
8.外歯ギア
9.第2ネジナット(従)
10.ハウジング
11.プランジャ
12.シリンダ
13.廻り止めガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に出力軸フランジを擁す中空軸モータに、廻り止めされるネジ軸を挿通させ、前記中空軸モータの一方の出力軸に連結される第1ネジナット、さらに前記中空軸モータを挟んで、他方の出力軸に連結される緩衝部及び第2ネジナットを備え、前記中空軸モータの回転駆動力を、前記ネジ軸に螺合された前記第1、第2ネジナットに連動して前記ネジ軸へ伝達可能にさせたことを特徴とするシリンダ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−209991(P2012−209991A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71401(P2011−71401)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(710014591)
【Fターム(参考)】