説明

両親媒性重合体およびその形成方法

両親媒性重合体、その合成およびその使用が開示される。重合体は、‐COOH側基を持つ炭化水素骨格を備えている。重合体はさらに、3〜20個の炭素原子および0〜3個のヘテロ原子を有する主鎖を持つ第1の脂肪族部分、ならびに3〜80個の炭素原子および2〜40個のヘテロ原子の主鎖を持つ第2の脂肪族部分を備えている。第2の脂肪族部分は共重合可能な基を備える。合成においては、nが10〜10000の整数で、かつR1がHまたはメチル基である化学式(I)の無水マレイン酸重合体が、3〜20の炭素原子および0〜2のヘテロ原子のアルキル鎖を持つ単官能基化合物、ならびに3〜80の炭素原子および0〜40のヘテロ原子のアルキル鎖を持つ少なくとも2つの官能基を有する化合物との反応が行われる。単官能基化合物の官能基および少なくとも2つの官能基を有する化合物の1つの官能基は、無水物と結合を生じてもよい。少なくとも2つの官能基を有する化合物の、無水マレイン酸重合体との反応が許されない別の官能基は共重合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性重合体およびその形成方法を提供する。また、両親媒性重合体を用いる水溶性ナノ結晶の形成方法およびそれに相当する水溶性ナノ結晶およびその使用方法が提供される。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年9月19日に米国特許商標局に提出し、正式に出願番号第60/973,619号を与えられた「ナノ粒子の被覆、可溶化および官能性付与のための多目的プラットフォーム」に対する出願を参照し、また優先権の利益を主張するものである。2007年9月19日提出の当該の出願の内容は、PTC条約規則4.18に基づいて、本明細書に含まれておらず、またPTC条約規則20.5(a)で言及される明細書、特許請求の範囲または図面のあらゆる要素または部分の組み込みを含むあらゆる目的のため、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
調節可能な狭い発光スペクトルおよび広い吸収スペクトルを持つ独特のサイズ/組成を持ち、通常、量子ドット(QD)と呼ばれる高発光性の半導体ナノ結晶は、光電子工学および生物学における応用が有望であることから、過去10年において大いに注目を集めている。この応用範囲は、太陽電池、発光ダイオード、レーザー技術、および化学センシングから、バイオイメージングにまで及ぶ。
【0003】
高品質量子ドットの作製は、多くの場合、安定化リガンドとしてトリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド(TOPO)の存在下にて高温で行われる。結果として、ナノ粒子は疎水性分子であるTOPOの単層で被覆され、QDは非極性溶媒に可溶で、水溶液中で分散しなくなる。QD表面でのTOPOリガンドの交換は、通常、QDの発光特性に多大な影響を与え、多くの場合、全体的な蛍光量子収率を低下させる。QD表面の官能基の量およびその結果生じる単層被覆の安定性の制御は、限られることがわかっている。多くの場合、QD表面に存在する多官能基を持つQDを得たいと思うであろう。TOPOをいくつかの別のリガンドで交換するのは問題がある。異なるリガンド間の分子間相互作用ではなく主としてQD表面に対するリガンドの親和性の違いは、例えば両性イオン性QDなどを得ることを妨げる。半導体ナノ結晶の表面上の短分子リガンドは、化学的および光化学的分解方法に対する脆弱な障壁でもあり、したがって当該のリガンド‐被覆QDは健康および環境リスクを有する可能性がある。
【0004】
近年、高品質の疎水性QDを合成するための数多くの効果的なアプローチが報告され、その結果として、様々な生物応用のための表面修飾を介した疏水性QDを親水性に転換するためのいくつかの新しい方法が開発された。QDを水溶性にするための、現在、最も一般的な方法は、疎水性の表面被覆リガンド(長いアルキル鎖)の低分子の2官能基有機リガンドとの直接交換を含む。あるいは、疎水性QDは、両親媒性分子を用いることによって、例えば、疎水性のTOPOなど、QD表面上の疎水性リガンドとの疎水性‐疎水性相互作用を通じて水にも可溶化されている。例えば、リン脂質、カリックスアレーン、シクロデキストリン、および複雑な共重合体(特に、ポリアクリル酸誘導体)などの低分子がこの目的に用いられてきた。このアプローチの重要な利点としては、リガンド交換ステップの省略およびQDの光学的特性の低下をもたらす恐れがあるQD表面への影響を及ぼさない、官能性の容易な導入などが挙げられる。
【0005】
QDを被覆する方法としての非共有結合性疎水性相互作用の活用は、記載された問題の一部の解決方法であるが、現在利用可能な技術は、ある特定の被覆で全ての問題を解決す
ることはできない。
【0006】
重合体による疎水性相互作用を用いるQDの修飾に関する最初の報告において、非特許文献1は40%1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホエタノールアミン‐N‐[メトキシ(ポリエチレングリコール)‐2000]および60%1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスホコリンの混合物から成るQDをミセルの疎水性コアの中に封入した。ミセルはナノ粒子に対して疎水性界面を提供し、高いコロイド安定性を維持した。生体高分子を共役するために、アミン基付加されたポリエチレングリコール(PEG)がさらに用いられてもよい。PEG層の存在は、QDを可溶化するための必要条件だった。当該の方法は、PEG被覆を用いずに多用途のQD表面の化学的性質を得るためには適していない。
【0007】
重合体ミセルの形成ではなく、両親媒性重合体によるQDの直接的被覆を利用する別のアプローチがその後開発された。両親媒性のアルキル修飾された(オクチルアミンまたはイソプロピルアミン)低分子量ポリアクリル酸は、TOPOで保護されたナノ結晶を被覆し、QDを水に可溶化することを示すことに成功した(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。最近の研究で、ルカルディーニら(同文献)は被覆されたQDの脂質膜とのpH依存性相互作用について報告した。彼らは、生物学的緩衝液中において、重合体で被覆されたQDと膜の間の相互作用が緩衝液のpHによって制御可能であることを見いだした。ガオら(Gao,et al.)の研究では、ポリブチルアクリレート部分(疎水性)、ポリエチルアクリレート部分(疎水性)、およびポリメタクリル酸部分(親水性)から成る高分子量の両親媒性ABCトリブロック共重合体がQDの直接封入に用いられた(非特許文献5)。
【0008】
疎水性炭化水素側鎖およびアミン末端修飾PEGは、メタクリル酸の誘導体化に用いられた。
上記に記載された方法は両親媒性重合体に基づいてQDを可溶化するが、QDの存在下でカップリング剤を用いてQD表面のさらなる官能性付与また誘導体化を行わなければならない。不必要な追加作業を伴い、また蛍光のクエンチングを引き起こす可能性があることから、これは通常望ましくない。
【0009】
疎水性QDを水に直接移すために用いられる別のクラスの重合体は、ポリ(無水マレイン酸alt‐1‐テトラデセン)である(非特許文献6;非特許文献7)。重合体シェルの安定性は、ビス(6‐アミノヘキシル)アミン架橋剤の添加によって増大した。本アプローチの1つの不利点は、一定の疎水性鎖およびカルボキシル基の数である。例えば、PEG重合体鎖による化学的誘導体化も、カップリング剤を介して行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】デュベルトレットら(Dubertret et al.)、Science(2002年)、第298巻、1759ページ
【非特許文献2】ウー,エックス.ら(Wu,X.,et al.)、Nat.Biotechnol(2003年)、第21巻、41ページ
【非特許文献3】マシューアキス,L.C.ら(Mattheakis,L.C.,et al.)、Anal.Biochem.(2004年)、第327巻、200ページ
【非特許文献4】ルカルディーニ Cら(Luccardini C,et al.)、Langmuir(2006年)、第22巻、2304ページ
【非特許文献5】ガオ エックス.ら(Gao X.,et al.)、Nat.Biotechnol(2004年)、第22巻、969ページ
【非特許文献6】ペレグリーノ,T.ら(Pellegrino,T.,et al.)、Nano Lett.(2004年)、第4巻、703ページ
【非特許文献7】ユー,W.W.ら(Yu,W.W.,et al.)、J.Am.Chem.Soc.(2007年)、第129巻、2871ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、上述の不利点の少なくとも一部を克服する特性を持つ、両親媒性重合体およびその形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によると、本発明は両親媒性重合体の形成方法を提供する。当該の両親媒性重合体は炭化水素骨格を含む。両親媒性重合体の炭化水素骨格は、‐COOH側基を有している。炭化水素骨格は、約3から約20の炭素原子および0から約3のヘテロ原子の主鎖を備える第1の脂肪族部分も有している。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。炭化水素骨格は、共重合可能な基を備える第2の脂肪族部分をさらに有している。第2の脂肪族部分は、約3から約80の炭素原子および約2から約40のヘテロ原子の主鎖を備えている。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。さらに、当該の方法は、化学式(I)の無水マレイン酸重合体を提供するステップを含む。
【0013】
【化1】

【0014】
化学式(I)において、nは約10から約10000の整数である。Rは、Hまたはメチルである。当該の方法は、適切な溶媒中で化学式(I)の無水マレイン酸重合体を、単官能基化合物および少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させるステップも含む。当該の単官能基化合物は、約3から約20の炭素原子および0から約2のヘテロ原子のアルキル鎖を備える。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。単官能基化合物の官能基は、無水物との結合を形成することができる。少なくとも2つの官能基を有する化合物は、約3から約80の炭素原子および0から約40のヘテロ原子のアルキル鎖を備える。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。少なくとも2つの官能基を有する化合物の一方の官能基は、無水物との結合を形成することができる。少なくとも2つの官能基を有する化合物の他方の官能基は、共重合を形成することができる。当該の方法において、無水物との結合を形成することができる少なくとも2つの官能基を有する化合物の官能基のみが化学式(I)の無水マレイン酸重合体と反応することができる。
【0015】
第2の態様によると、本発明は両親媒性重合体の形成方法を提供する。当該の両親媒性重合体は炭化水素骨格を含む。両親媒性重合体の炭化水素骨格は、‐COOH側基を有している。炭化水素骨格は、約3から約20の炭素原子および0から約3のヘテロ原子の主鎖を備える第1の脂肪族部分も有している。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSi
の群から選択される。炭化水素骨格は、共重合可能な基を備える第2の脂肪族部分をさらに有している。第2の脂肪族部分は、鎖を含むポリ(エチレンオキサイド)によって特徴付けられる。さらに、当該の方法は、化学式(I)(上記)の無水マレイン酸重合体を提供するステップを含む。当該の方法は、適切な溶媒中で化学式(I)の無水マレイン酸重合体を単官能基化合物およびポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールと反応させるステップも含む。当該の単官能基化合物は、約3から約20の炭素原子および0から約2のヘテロ原子のアルキル鎖を備える。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。単官能基化合物の官能基は、無水物との結合を形成することができる。少なくとも2つの官能基を有する化合物は、約3から約80の炭素原子および0から約40のヘテロ原子のアルキル鎖を備える。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。当該の方法において、ポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールの一方の末端基のみが化学式(I)の無水マレイン酸重合体と反応することができる。
【0016】
第3の態様によると、本発明は、一般化学式(II)の両親媒性重合体に関する。
【0017】
【化2】

【0018】
化学式(II)において、m,o,pのそれぞれは、独立して選択される約3から約400までの整数である。m+o+pの合計は、約10から約10000までの範囲で選択される。Rは、約3から約20の炭素原子および0から約3のヘテロ原子の主鎖を持つ第1の脂肪族部分である。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。Rは、約3から約80の炭素原子および0から約40のヘテロ原子の主鎖を持つ第2の脂肪族部分である。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。Rは共重合可能な基を備えている。
【0019】
第4の態様によると、本発明は水溶性ナノ結晶の形成方法を提供する。当該の方法は、適切な溶媒中にナノ結晶を提供するステップを含む。当該の方法は、ナノ結晶を第3の態様による両親媒性重合体と接触させるステップも含む。当該の方法は、両親媒性重合体とナノ結晶との間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が生じることを可能にするステップも含む。その結果として、水溶性ナノ結晶が形成される。
【0020】
第5の態様によると、本発明はさらに、水溶性ナノ結晶の形成方法を提供する。当該の方法は、適切な溶媒中にナノ結晶を提供するステップを含む。当該の方法は、ナノ結晶を両親媒性重合体と接触させるステップも含む。当該の両親媒性重合体は炭化水素骨格を含む。炭化水素骨格は極性側基を有する。当該の炭化水素骨格は、第1の脂肪族部分も備える。第1の脂肪族部分は、約3から約20の炭素原子および0から約3のヘテロ原子の主鎖を備える。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。炭化水素骨格は、第2の脂肪族部分も有している。第2の脂肪族部分は、約3から約80の炭素原子および0から約40のヘテロ原子の主鎖を備えている。ヘテロ原子は、NおよびOから
選択される。さらに、第2の脂肪族部分は、共重合可能な基を備えている。当該の方法は、両親媒性重合体とナノ結晶との間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が生じることを可能にするステップも含む。その結果として、水溶性ナノ結晶が形成される。
【0021】
第6の態様によると、本発明は水溶性ナノ結晶を提供する。当該の水溶性ナノ結晶は、その表面上で第3の態様による両親媒性重合体との間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用を含む。
【0022】
第7の態様によると、本発明は水溶性ナノ結晶を提供する。当該の水溶性ナノ結晶は、第4および第5、もしくはそのいずれかの態様による方法によって得ることができる。
第8の態様によると、本発明は重合体網目構造の形成のための両親媒性重合体を提供する。当該の両親媒性重合体は炭化水素骨格を含む。炭化水素骨格は極性側基を有する。当該の炭化水素骨格は、約3から約80の炭素原子および0から約40のヘテロ原子のアルキル鎖を備える側鎖も有する。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。炭化水素骨格の側鎖は共重合可能な基を備えている。
【0023】
第9の態様によると、本発明は重合体網目構造の形成における両親媒性重合体の使用に関する。当該の両親媒性重合体は、第3の態様による両親媒性重合体である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による水溶性量子ドットをQDの懸濁液からQD/PNIPAM球体に形成する方法を示すブロック図(A:TOP末端修飾された量子ドットの合成、B:両親媒性官能基重合体を持つ水中の量子ドット、C:モノマー(例えば、NIPAM)との共重合、D:追加のモノマーを含まない、架橋重合された量子ドット)。
【図2A】本発明による重合体の合成を示す化学式。
【図2B】図2Aの化学式を用いて得られ得る、別の重合体を示す化学式。
【図2C】図2Aの化学式を用いて得られ得る、別の重合体を示す化学式。
【図2D】図2Aの化学式を用いて得られ得る、別の重合体を示す化学式。
【図2E】本発明による重合体を形成するための反応物の別の例を示す化学式(トリクロロ[3‐(2‐プロペニルオキシ)プロピル]‐シラン(化学情報検索サービス機関(CAS)番号79745‐60‐1))。
【図2F】本発明による重合体を形成するための反応物の別の例を示す化学式(1‐ニトロ‐2‐(2‐プロペニルオキシ)‐ブタン(CAS番号132439‐78‐2))。
【図2G】本発明による重合体を形成するための反応物の別の例を示す化学式(7‐ヨード‐1‐ヘプテン(CAS番号107175‐49‐5))。
【図2H】本発明による重合体を形成するための反応物の別の例を示す化学式(N‐(6‐ブロモヘキシル)アクリルアミド(CAS番号869563‐87‐1))。
【図3A】クロロホルム中のTOPO被覆されたCdSe/ZnS量子ドット(左)ならびに重合体8および6で被覆された量子ドットの水溶液(図2Aを参照)を示す写真。
【図3B−C】クロロホルム中のTOPO被覆されたCdSe/ZnSQD、ならびに重合体8および6で被覆されたQDの水溶液の吸収スペクトル(図3B)、および、クロロホルム中のTOPO被覆されたCdSe/ZnSQD、ならびに重合体8および6で被覆されたQDの水溶液の発光スペクトル(λex=500nm)(図3C)。図3Bの吸収スペクトルはわずかな変化を示しているものの、発光スペクトルは依然として影響を受けていない。
【図4A】重合体で被覆された量子ドットの透過型電子顕微鏡(TEM)顕微鏡写真(高分解能の画像は、単独量子ドットのサイズおよび高結晶度を明らかにしている(挿入図))。
【図4B】水溶液からシリコン表面上に沈殿した、重合体で被覆されたQDの500nm×500nmの原子間力顕微鏡(AFM)凹凸像(zスケール=10nm)(重合体/QD集合体は球状に形成されており、重合体は量子ドットを均一に被覆している)。
【図5A】図2B‐(NHCHCH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲルのTEM像。
【図5B】図2B‐(NHCHCH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲルの走査型電子顕微鏡(SEM)像。
【図6A】図2D‐(OCHCHOC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲル粒子のTEM像。
【図6B】図2D‐(OCHCHOC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲル粒子のTEM像。
【図7A】図2C‐(NHCHCHNHC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲルのSEM像。
【図7B】図2C‐(NHCHCHNHC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆されたCdSe/ZnS QDが包含されている、PNIPAMミクロゲルのSEM像。
【図8A】図2D‐(OCHCHOC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆された、自己重合したCdSe/ZnS QDのTEM像。
【図8B】図2D‐(OCHCHOC(O)CH=CH)で図示された重合体で被覆された、自己重合したCdSe/ZnS QDのSEM像。
【図9A】重合体2で被覆された赤色量子ドットにより撮像し、DAPIで核を染色した哺乳類癌細胞C‐6の固定細胞(細胞は、QDと共に1時間インキュベートされ、過剰な遊離ナノ結晶を除去するために洗浄された)。
【図9B】重合体2で被覆された赤色量子ドットにより撮像し、DAPIで核を染色した哺乳類癌細胞C‐6の生細胞(細胞は、QDと共に1時間インキュベートされ、過剰な遊離ナノ結晶を除去するために洗浄された)。
【図10】ポリ(N‐イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)を含む、刺激応答性QDミクロゲルの挙動を示す概念図。
【図11】ビニル基付加された重合体によるQDの被覆を概略的に示す概念図。
【図12】ポリ(N‐イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)の下限臨界溶解温度(LCST)より低温のPNIPAMを含む刺激応答性QDミクロゲルのSEM像(スケールバー=2μm)。
【図13】PNIPAMの下限臨界溶解温度(LCST)より高温のPNIPAMを含む刺激応答性QDミクロゲルのSEM像(スケールバー=2μm)。
【図14】PNIPAMを含む刺激応答性QDミクロゲルの狭いサイズ分布を示すグラフ。
【図15】PNIPAMを含む刺激応答性QDミクロゲルの体積相転移の可逆性を吸光度に関して示すグラフ(20℃と60℃間の10サイクルの前(1、4)および後(2、3)のミクロゲルの吸収曲線は区別ができない)。
【図16】逆相エマルジョン重合によって合成されたPNIPAM/QDのミクロスフェアのSEM像。
【図17】重合体マトリクス中に包埋されたQDを含む大型のPNIPAMスフェア(写真右の暗い部分)の端を図示するTEM像。
【図18】重合体フィルムが蛍光特性を維持していることを示す蛍光顕微鏡法像。
【図19】QDの被覆に用いられる重合体の形成および一般的な構造を概略的に列挙する化学式(A)、および、側鎖Rの対応する重合体の典型的な作用および適用性を示す表(B,C)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、非限定的実施例および添付の図面とあわせて考慮された場合に、詳細な説明の参照によって一層理解されるであろう。
本発明は、とりわけ両親媒性重合体、および当該の重合体の形成方法に関する。また両親媒性粒子の被覆にも関する。両親媒性という用語は、極性流体および非極性流体の両方に可溶である重合体を表す。また、両親媒性という用語は、本発明による重合体は一般的に1つの相のみで使用されるにもかかわらず多相重合体も含み、例えば、相界面を可溶化するため、および相間移動の目的でなど、物質を所望の相に可溶化するために利用することもできる。重合体の両親媒性特性は、同一重合体内に極性部分および非極性部分の両方が存在することに起因する。この点に関して、重合体は界面活性剤の性質であってもよい。したがって、本発明による重合体の極性特性は、極性部分に基づいている。当該の部分は、重合体の炭化水素骨格が有する‐COOH側基、特に荷電した形のCOO基である。一般に、界面活性剤分子は、典型的には炭化水素である非極性部分に結合した、一般的に親水性である極性頭部基を含む。重合体の非極性部分は、炭化水素骨格および炭化水素骨格を有する脂肪族部分を含む。
【0026】
特に明記しない限り、「脂肪族」という用語は、飽和またはモノ不飽和もしくはポリ不飽和である可能性があり、またヘテロ原子を含む可能性もある、直鎖または分岐した炭水化物鎖を意味する(下記参照)。不飽和脂肪族基は、1つ以上の二重結合および三重結合、もしくはそのいずれか(アルケニルまたはアルキニル部分)を含む。炭化水素鎖の分岐は、直鎖および非芳香環要素を含む場合もある。炭化水素鎖は、特に明記しない限り、任意の長さであってもよく、また任意の数の分岐を含んでもよい。典型的には、炭化水素(主)鎖は、1から5まで、10まで、15まで、または20までの炭素原子を含む。アルケニル基の例としては、1つ以上の二重結合を含む直鎖または分岐炭化水素基が挙げられる。アルケニル基は、例えば、約2つから約10の炭素原子および1つの二重結合など、一般に約2つから約20の炭素原子および1つ以上、例えば2つの二重結合を含む。アルキニル基は、通常約2から約20の炭素原子および1つ以上、例えば2つの三重結合、好ましくは2から10の炭素原子および1つの三重結合を含む。アルキニル基の例としては、1つ以上の三重結合を含む直鎖または分岐した炭化水素基が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、これらの基のn異性体、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ネオペンチル基、3,3ジメチルブチル基などが挙げられる。主鎖および分岐鎖の両方が、さらに例えばN、O、S、SeもしくはSiのようなヘテロ原子を含んでもよく、または炭素原子がこれらのヘテロ原子によって置き換えられてもよい。
【0027】
特に明記しない限り、「脂環式」という用語は、飽和された、またはモノ不飽和もしくはポリ不飽和されている場合がある非芳香環部分(例えば、炭化水素部分)を意味する。環状炭化水素部分は、例えばデカリンなどの縮合環系も含んでもよく、非芳香環および鎖要素で置換されてもよい。環状炭化水素部分の主鎖は、特に明記しない限り、任意の長さであってもよく、また任意の数の非芳香環および鎖要素を含んでもよい。典型的には、炭化水素(主)鎖は、3、4、5、6、7、または8の主鎖原子を1つの環に含む。当該の部分の例としては、それに限られないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、またはシクロオクチルなどが挙げられる。環状炭化水素部分および、もし存在する場合には、任意の環状および鎖状の置換基が、さらに例えばN、O、S、SeもしくはSiのようなヘテロ原子を含んでもよく、または炭素原子がこれらのヘテロ原子によって置き換えられてもよい。「脂環式」という用語は、例えば5または6環炭素原子など、一般
に約3から約8までの環炭素原子を含む不飽和環状炭化水素であるシクロアルケニル部分も含む。シクロアルケニル基は、典型的には、それぞれの環系に二重結合を備えている。シクロアルケニル基は、同様に置換されてもよい。当該の部分の例としては、それに限られないが、シクロヘキセニル、シクロオクテニルまたはシクロデセニルなどが挙げられる。
【0028】
特に明記しない限り、「芳香族」という用語は、単環であってもよく、または複数の縮合環もしくは共有的に結合した環を含む場合もある、例えば2、3、または4縮合環などの共役二重結合の平面環状炭化水素部分を意味する。芳香族という用語はアルキルアリールも含む。典型的には、炭化水素(主)鎖は、5、6、7または8の主鎖原子を1つの環に含む。当該の部分の例としては、それだけに限られないが、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフタレニル‐、アントラセニル‐、[10]アンヌレニル‐(1,3,5,7,9‐シクロデカペンタエニル‐)、[12]アンヌレニル‐、[8]アンヌレニル‐、フェナレン(peri‐ナフテン)、1,9‐ジヒドロピレン、クリセン(1,2‐ベンゾフェナントレン)などが挙げられる。アルキルアリール部分の例は、ベンジルである。環状炭化水素部分の主鎖は、特に明記しない限り、任意の長さであってもよく、また例えば、N、OおよびSのような、任意の数のヘテロ原子を含んでもよい。当該のヘテロ芳香族部分の(当業者に周知の)例としては、それだけに限られないが、フラニル部分、チオフェニル部分、ナフチル部分、ナフトフラニル部分、アントラチオフェニル部分、ピリジニル部分、ピロリル部分、キノリニル部分、ナフタキノリニル部分、キノキサリニル部分、インドリル部分、ベンズインドリル(benzindolyl)部分、イミダゾリル部分、オキサゾリル部分、オキソニニル(oxoninyl)部分、オキセピニル(oxepinyl)部分、ベンズオキセピニル(benzoxepinyl)部分、アゼピニル部分、チエピニル(thiepinyl)部分、セレネピニル(selenepinyl)部分、チオニニル(thioninyl)部分、アゼシニル‐(アザシクロデカペンタエニル)(azecinyl‐(azacyclodecapentaenyl))部分、ジアゼシニル(diazecinyl)部分、アザシクロドデカ‐1,3,5,7,9,11‐ヘキサエン‐5,9‐ジイル部分、アゾジニル(azozinyl)部分、ジアゾシニル部分、ベンズアゾシニル(benzazocinyl)部分、アゼシニル(azecinyl)部分、アザウンデシニル(azaundecinyl)部分、チア[11]アンヌレニル部分、オキサシクロトリデカ‐2,4,6,8,10,12‐ヘキサエニル部分またはトリアザアントラセニル(triazaanthracenyl)部分などが挙げられる。
【0029】
「アリール脂肪族」という用語は、1つ以上の芳香族部分が1つ以上の脂肪族基で置換されている炭化水素部分を意味する。したがって、「アリール脂肪族」という用語は、例えばメチレン基など、2つ以上のアリール基が1つ以上の脂肪族鎖または任意の長さの鎖を介して結びついている炭化水素部分も含む。典型的には、炭化水素(主)鎖は、5、6、7または8の主鎖原子を芳香族部分のそれぞれの環に含む。例えばアルキルアリール部分などのアリール脂肪族部分の例としては、それだけに限られないが、1‐エチル‐ナフタレン、1,1’‐メチレンビス‐ベンゼン、9‐イソプロピルアントラセン、1,2,3‐トリ‐メチル‐ベンゼン、4‐フェニル‐2‐ブテン‐1‐オル、7‐クロロ‐3‐(1‐メチルエチル)‐キノリン、3‐ヘプチル‐フラン、6‐[2‐(2,5‐ジエチルフェニル)エチル]‐4‐エチル‐キナゾリン、または7,8‐ジブチル‐5,6‐ジエチル‐イソキノリンなどが挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「脂肪族」「脂環式」「芳香族」および「アリール脂肪族」の各用語は、それぞれの部分の置換形および非置換形の両方を含むことを意図する。置換基は任意の官能基とすることができるが、例としては、それだけに限られないが、アミノ基、アミド基、アジド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、イソシアノ基、
ジチアン基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、ニトロ基、有機金属、有機ホウ素、セレノ基、シリル基、シラノ基、スルホニル基、チオ基、チオシアノ基、トリフルオロメチルスルホニル基、p‐トルエンスルホニル基、ブロモベンゼンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基、およびメタン‐スルホニル基などがある。
【0031】
炭化水素骨格が有する脂肪族部分は、例えば側鎖などの部分をさらに有してもよい。当該のさらなる部分は、典型的には主鎖の炭素原子の長さが1から約10まで、約15まで、または約20までである、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、アリール脂肪族基またはアリール脂環式基とすることもできる。これらのさらなる部分は、官能基も有してもよい(上記)。
【0032】
炭化水素骨格は、第1および第2の脂肪族部分を有する。第1の脂肪族部分は、例えば約5から約20の炭素原子、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の炭素原子などの約7から約20の炭素原子、または約5から約15の炭素原子を含む、約3から約20の炭素原子の主鎖を備えている。さらに、第1の脂肪族部分は、例えばN、O、S、SeまたはSiなどの、例えば1つ、2つまたは3つのヘテロ原子を含む、0から約3つのヘテロ原子を有する。適切な第1の脂肪族部分の例示的な実施例は、重合体の脂肪族骨格が有するカルボニル基に結合されたヘテロ原子を持つ、アルキル部分である。遊離型のカルボキシル基の代わりに、骨格は、したがって、エステル、チオエステル、セレノエステル、またはアミド基を有する。一実施形態において、第1の脂肪族部分は、それぞれのアミンが無水マレイン酸重合体と反応することによって形成されるアミド結合を介して骨格に結合されており、例えばn‐オクチル部分などの、非分岐鎖アルキル部分が特徴である。
【0033】
第2の脂肪族部分は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43または44の炭素原子などの、例えば約3から約60の炭素原子、約3から約40の炭素原子、約10から約80の炭素原子、約10から約60の炭素原子、約25から約60の炭素原子、約10から約40の炭素原子、約3から約20の炭素原子、または約3から約10の炭素原子を含む、約3から約80の炭素原子の主鎖を備えている。さらに、第2の脂肪族部分は、例えばNまたはOなどの、例えば1,2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43または44のヘテロ原子などの、例えば0から約40のヘテロ原子、1から約40のヘテロ原子、約2から約40のヘテロ原子、約2から約30のヘテロ原子または約0から約3のヘテロ原子を含む、0から約44のヘテロ原子を備える。第2の脂肪族部分は、さらに共重合可能な基を備える。共重合可能な基は、分子内共重合および分子間共重合の両方を生じさせることができる点を強調するために、架橋重合可能と呼ばれてもよい。この共重合可能な基は、典型的には架橋可能であってもよい。共重合可能な基は、単量体の機能性を担う任意の基、すなわち重合することができる任意の当該の所望の基とすることができる。それぞれの基の有用性は、例えば、それぞれの適用、反応条件、結果として生じる重合体の望まれる水溶性の程度など、いくつかの条件に左右されてもよく、また必要であれば、実験に基づいて決定されてもよい。適切な共重合可能な基の例としては、それだけに限られないが、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシド基、オキセタン基、アリル基およびアリルグリシジルエーテル基などのC=C基(内部C=C基および/または末端C=C基のいずれか)、C≡C基(内部C≡C基および/または末端C≡C基のいずれか)、共役‐C=C‐C=C‐基(内部‐C=C‐C=C‐基および/または末端‐C=C‐C=C‐基のいずれか)またはそれらの置換誘導体などが挙げられる。共重合可能な基は、したがって、第2の脂肪族部分の任意の位置に結合されて
もよく、また内部基および末端基、もしくはそのいずれかであってもよい。いくつかの実施形態において、共重合可能な基は、例えば末端C=C基である。例示的な実施例として、末端C=C基は、例えば、‐CH=CHなどのビニル基とすることもできる。内部C=C基のさらなる実施例としては、それだけに限られないが、例えば‐CH=CH‐CHなどのアリル基、または例えば‐CH=CH‐C(O)などのアクリル基などが挙げられる。したがって、「内部」の用語は、末端主鎖原子が共重合可能な反応中心の一部ではない共重合可能な基を表す。内部および末端両方の、適切なC=C基の非限定的な実施例は、アクリル酸アミド及びメタクリル酸アミド、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、ビニルもしくはアセチレン部分またはブタジエン部分である。
【0034】
本発明の一実施形態において、第二の脂肪族部分は、鎖を含むポリ(エチレンオキシド)を特徴とすることもできる。鎖を含むポリ(エチレンオキシド)は、例えば、ポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールの1つの末端基のみが化学式(I)の無水マレイン酸重合体と反応することができる、ポリエチレングリコール(PEG)またはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分を含むこともできる。PEGは、幅広い範囲の分子量が市販されている。重合体の分子量の下限は、各反復単位に存在する基のサイズと数によって、100よりも大きくてもよい。重合体が、例えばポリオールまたはポリアミンなどの低分子量の反復単位(例えば、小さい側鎖を備える反復単位)に由来する場合は、重合体の分子量の下限は小さくてもよい。反復単位が(例えば、嵩高な側鎖を担う)高分子量である重合体の場合、下限は100よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、重合体の分子量の下限は、約400、約500、約600、約1000、約1200、約1500であってもよく、または約2000より大きくてもよい。例えば、PEGは、約500を超える、約1000を超える、約5000を超える、約10000を超える、またはさらに約25000ダルトンを超える分子量を備えてもよい。分子量は、例えば、下記により詳細に説明されるように、ナノ結晶周囲の両親媒性重合体の効果的な包み込みが確保される、または確保することができるといった方法で選択することもできる。PEGはナノ粒子のコロイド安定性を高めることが知られている。さらに、PEG化された表面は、生体分子および細胞との非特異的相互作用の低減を提供する。重合体シェルに付着しているPEGが多ければ、結果として、より大きなサイズの粒子が得られる。適切なポリエチレングリコール部分の例示的な実施例は、mPEGと略される(メトキシポリ(エチレングリコール))部分、またはPEG 600部分である。様々な形状を備える数多くのPEGが入手可能である。適切なジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分の例示的な実施例は、ジアミノプロピルPEG部分である。ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分は、例えば、PEG(NH 1500または約5000から6000までの分子量を備える(1つまたは2つのアミノ基を備える)PEGであってもよい。今のところ、第1の脂肪族部分がドデシルアミノ部分である重合体の合成による、当該の重合体形成の容易さが確認されている。
【0035】
本発明のさらなる実施形態において、第2の脂肪族部分は水溶性である場合もある、さらなる重合体から選択されてもよい。例えば、末端求核性官能基を備える重合体が用いられてもよい。当該の重合体の例としては、それだけに限られないが、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ乳酸またはポリビニルアルコールなどが挙げられる。同等の特性を備える、当業者に周知のさらなる重合体が本発明に用いられてもよい。
【0036】
両親媒性重合体は、いくつかの実施形態において、一般化学式(II)の両親媒性重合体であってもよい。
【0037】
【化3】

【0038】
化学式(II)において、m,o,pのそれぞれは、例えば約0〜約400、約0〜約350、約0〜約300、約3〜約300、約0〜約250、約0〜約200、約2〜約200、約0〜約150、約2〜約150、約0〜約200、約1〜約200、約3〜約100、約2〜約100、約0〜約100、約3〜約50、約2〜約50、約1〜約50、または約0〜約50など、例えば1〜約400または約2〜約400を含む、独立して選択される0〜約400の整数である。さらなる説明として、いくつかの実施形態において、mは例えば約10〜約43を含む、例えば約10〜約45などの約5〜約50の範囲で選択されてもよく、一方pは、例えば約3〜約35、または約4〜約30など、約3〜約40までの範囲で選択されてもよく、かつpは、例えば約0〜約25まで、または約0〜約20までなど、約0〜約30までの範囲で選択されてもよい。m+o+pの合計は、例えば、約10〜約8000まで、約10〜約6000、約10〜約5000、約10〜約4000、約10〜約2000、約10〜約1000、約10〜約750、約10〜約600、約10〜約400、約10〜約250、約10〜約150、約10〜約100、約15〜約150、約20〜約150、約15〜約100、または約20〜約100、を含む、約10〜約10000の範囲で選択される。いくつかの実施形態において、m,o,pのそれぞれは、独立して選択される、例えば、約3〜約300、約3〜約250、約3〜約200、約3〜約150、約2〜約200、約3〜約100、約2〜約100、約3〜約80、約2〜約80、約3〜約40、または約2〜約40を含む、約2〜約300の整数であり、また(m+o+p)の合計は、例えば、約10〜約400、約10〜約350、約10〜約300、約10〜約250、約10〜約200、約6〜約200、約10〜約150、約6〜約150、約10〜約100、約6〜約100、約10〜約50、または約6〜約50を含む、約6〜約400の範囲で選択される。一実施形態において、(m+o+p)の合計は32である。別の実施形態において、(m+o+p)の合計は48である。p/(m+o)の比は、例えば、0〜約20、0〜約15、0〜約12、0〜約10、0〜約8、0〜約6、0〜約4、0〜約3、または0〜約2など、0〜約25の範囲で選択されてもよい。一実施形態において、p/(m+o)の比は約1である。
【0039】
は、約3〜約20の炭素原子および0〜約3までのヘテロ原子の主鎖を持つ、上述の第1の脂肪族部分である。ヘテロ原子は、N、O、S、SeおよびSiの群から選択される。Rは、約3から約80までの炭素原子および0から約40のヘテロ原子の主鎖を持つ、上述の第2の脂肪族部分である。ヘテロ原子は、NおよびOから選択される。第2の脂肪族部分Rは、共重合可能な基を備えている。化学式(II)に示される個別の単位は、ブロックの形ではなく、ランダムも含めた任意の順に配列することができることが理解されよう。したがって、一般化学式(II)は単に、
【0040】
【化4】

【0041】
のm単位、
【0042】
【化5】

【0043】
のo単位、および
【0044】
【化6】

【0045】
のp単位が重合体中に存在していることを定義している。本発明による重合体は、したがって、これらの単位の任意の配列を含むこともできる。例示的な実施例として、それぞれの配列は、単位の以下の配置を含むこともできる。
【0046】
【化7】

【0047】
本発明による両親媒性重合体は、本明細書に記載の方法によって作製することもできる。両親媒性重合体は、典型的には、少なくとも原則的に架橋を含まない。したがって、両親
媒性重合体において、第2の脂肪族部分Rの共重合可能な基(上記参照)は、任意の架橋反応または共重合反応に利用可能である。
【0048】
本発明による両親媒性重合体の形成方法において、両親媒性重合体上に親水性骨格を形成する反応物として化学式(I)(上記参照)の無水マレイン酸重合体が用いられる。無水マレイン酸重合体は、化学情報検索サービス機関番号26426‐80‐2のポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)として、またイソブチレン‐無水マレイン酸共重合体の名称で市販されている可能性がある。とりわけ、BM30AE20、Fibersorb(登録商標)SA 7200H、IB 6、KI GelおよびIsobam(商標)の名称でも入手可能である。また、例えば、Sigma Aldrich社(米国、ミズーリ州、セントルイス)、またはSinoChemexper Company社(中華人民共和国、上海)からも入手可能である。無水マレイン酸重合体は、化学情報検索サービス機関番号106973‐21‐1のポリ(エチレン‐alt‐無水マレイン酸)、またエチレン‐無水マレイン酸交互共重合体の名称である可能性がある。例えば、製品コード27109Pで、およびZeMac(商標)E400またはZeMac(商標)E60の名称で、Rutherford Chemicals社(ニュージャージー州、ベーヨン)から入手可能である。上述の化学式(I)において、nは例えば、約10から約5000まで、約10から約2000まで、約10から約1000まで、約20から約1000まで、約10から約800まで、約20から約800まで、約10から約400までなどの、約10から約10000までの任意の整数とすることができる。一実施形態において、nは32である。無水マレイン酸重合体の上述の例は、限定されているものと考えられるべきものではなく、入手可能な(およびまだ合成されていない)あらゆる無水マレイン酸重合体、特に、記載されるような標準的な方法に従って調製することもできる、無水マレイン酸重合体が、本発明における利用に適している。それぞれの無水マレイン酸重合体は、例えば、米国特許第3846383号および第6316554号に記載の方法に従って形成することもできる。当技術分野で用いられる一般的な標準的な方法は、フランク,H.P.(Frank,H.P.)、Makromolekulare Chemie(1968年)第114巻、113ページ〜121ページの要旨にも要約されており、例えば過酸化物などの存在下での無水マレイン酸のオレフィンとのフリーラジカル共重合を伴う。
【0049】
さらなる反応物として、単官能基化合物および少なくとも2つの官能基を有する化合物が用いられる。方法の間に、単官能基化合物は上述の第1の脂肪族部分Rに転換される。単官能基化合物の官能基は、無水物との結合を形成することができる。少なくとも2つの官能基を有する化合物は、第2の脂肪族部分R(上記参照)に転換される。少なくとも2つの官能基を有する化合物は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の官能基を備えていてもよい。官能基の1つは、無水物との結合を形成することができる。少なくとも2つの官能基を有する化合物の別の官能基は、共重合可能である。無水物環の一部分の単官能基化合物との反応は、本明細書に記述されるようなナノ粒子の疎水性表面と相互作用することができる疎水性側鎖の形成をもたらす。無水物環の別の一部分は、少なくとも2つの官能基を有する化合物の骨格への結合に用いられる。重合体の骨格におけるカルボキシル基の数に対する疎水性単位の数の制御は、ポリ酸無水物鎖との反応に用いられる求核反応物の量を変化させることによって達成される。したがって、本発明の単官能基化合物は、利用可能な無水物環の、例えば少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、または少なくとも約75%など、少なくとも約25%と反応することができる。本発明の当該の少なくとも2つの官能基を有する化合物は、利用可能な無水物環の、例えば少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、または少なくとも約25%など、少なくとも約5%と反応することもできる。
【0050】
単官能基化合物の官能基は、それだけに限られないが、アミノ基、ヒドロキシル基、チ
オール基、セレノール基、ハロゲン基、エーテル基、チオエーテル基またはその他の基などから選択することもできる。単官能基化合物は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の炭素原子など、例えば約5から約20までの炭素原子、約5から約15までの炭素原子、約7から約20までの炭素原子を含む、例えば約3から約20までの炭素原子などの、約2から約20までの炭素原子のアルキル鎖を備えている。さらに、単官能基化合物は、例えば1つのヘテロ原子など、0から約2までのヘテロ原子を備えている。ヘテロ原子は、例えば、N、O、S、SeおよびSiとすることができる。単官能基化合物の例としては、それだけに限らないが、アルキル基が上述のように定義されているアルキルアミンとすることもできる。一実施形態おいて、アルキルアミンは、n‐プロピルアミン、n‐ブチル‐アミン、n‐ペンチルアミン、n‐ヘキシルアミン、n‐オクチルアミンまたはn‐ドデシルアミンとすることもできる。
【0051】
一般に、少なくとも2つの官能基を有する基は、2つ以上の異なる官能基を備えている。官能基の1つが、典型的には官能基の1つだけが無水物との結合を形成できる限りは、少なくとも2つの官能基のそれぞれに対して任意の官能基を選択することもできる。無水マレイン酸部分と反応する1つの基は、それだけに限らないが、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン基、エーテル基、チオエーテル基またはその他の基から選択することができる。無水マレイン酸部分と反応しない第2の官能基は、共重合可能な基であってもよい。共重合可能とは、この基が別の官能基と重合できることを意味する。適切な共重合可能な基の例としては、それだけに限らないが、アミノ基、ヒドロキシル基、アリルグリシジルエーテル基、エポキシド基、オキセタン基、および例えばアリール基などのC=C結合などが挙げられる。
【0052】
少なくとも2つの官能基を有する化合物は、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43または44など、例えば約3から約70までの炭素原子、約3から約60までの炭素原子、約3から約40までの炭素原子、約10から約80までの炭素原子、約10から約60までの炭素原子、約25から約60までの炭素原子、約10から約40までの炭素原子、約3から約20までの炭素原子、または約3から約10までの炭素原子を含む、約3から約80までの炭素原子のアルキル鎖を備えている。さらに、少なくとも2つの官能基を有する化合物は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42または43の例えばNまたはOなどのヘテロ原子など、例えば、0から約40までのヘテロ原子、1から約40までのヘテロ原子、約2から約40までのヘテロ原子、約2から約30までのヘテロ原子、または約0から約3までのヘテロ原子を含む、0から約45までのヘテロ原子を備えている。
【0053】
CH=CH末端基を持つ適切な2官能基化合物の例としては、それだけに限らないが、1‐アミノ‐4‐ペンテン(化学情報検索サービス機関番号22537‐07‐1)、8‐ノネン‐1‐アミン(CAS番号151626‐27‐6)、9‐デセン‐1‐アミン(CAS番号51382‐01‐5)、1‐ノネン‐4‐アミン(CAS番号66838‐76‐4)、10‐ウンデセン‐1‐アミン(塩酸塩のCAS番号682814‐20‐6)、(R)‐1‐デセン‐5‐アミン(CAS番号117960‐06‐2)、1‐オクテン‐3‐アミン(CAS番号119703‐87‐6)、1‐デセン‐4‐アミン(CAS番号742081‐49‐8)、1‐ウンデセン‐4‐アミン(CAS番号83948‐41‐8)、(4R)‐1‐ウンデセン‐4‐アミン(CAS番号910545‐68‐5)、(4R)‐4‐エチル‐5‐ヘキセン‐1‐アミン(CAS番号100
5414‐64‐1)、2‐メチル‐1‐ノネン‐4‐アミン(CAS番号66838‐77‐5)、1,7‐オクタジエン‐3‐アミン(CAS番号71663‐71‐3)、1,7‐オクタジエン‐4‐アミン(CAS番号245450‐11‐7)、(E)‐7‐ノネン‐4‐アミン(CAS番号55713‐48‐9)、2‐エテニル‐1,6‐ヘキサンジアミン(CAS番号184955‐93‐9)、6‐ヘプテン‐1‐チオール(CAS番号173777‐16‐7)、8‐ノネン‐1‐チオール(CAS番号304435‐87‐8)、7‐オクテン‐1‐チオール(ナトリウム塩のCAS番号100845‐39‐4)、10‐ウンデセン‐1‐チオール(CAS番号178561‐30‐3)、1‐ノネン‐4‐チオール(CAS番号1006684‐28‐1)、5‐ヘキセン‐1‐チオール(CAS番号17651‐39‐7)、1,8‐ノナジエン‐5‐チオール(CAS番号245450‐18‐4)、1,7‐オクタジエン‐4‐チオール(CAS番号245450‐17‐3)、13‐テトラデセン‐1‐チオール(CAS番号1005387‐18‐7)、トリクロロ[3‐(2‐プロペニルオキシ)プロピル]‐シラン(CAS番号79745‐60‐1)、2‐メチル‐2‐プロペン酸5‐(トリクロロシリル)ペンチルエステル(CAS番号374534‐78‐8)、7‐ブロモ‐1‐ヘプテン(CAS番号4117‐09‐3)、6‐ブロモ‐1‐ヘキセン(CAS番号2695‐47‐8)、8‐ブロモ‐1‐オクテン(CAS番号2695‐48‐9)、9‐ブロモ‐1‐ノネン(CAS番号89359‐54‐6)、7‐ヨード‐1‐ヘプテン(CAS番号107175‐49‐5)、6‐ヨード‐1‐ヘキセン(CAS番号18922‐04‐8)、8‐ヨード‐1‐オクテン(CAS番号38380‐55‐1)、9‐ヨード‐1‐ノネン(CAS番号213207‐73‐9)、6‐ヨード‐3‐メチル‐1‐ヘキセン(CAS番号106815‐04‐7)、N‐(6‐アミノヘキシル)アクリルアミド(CAS番号7530‐30‐5)、N‐(7‐アミノヘプチル)‐2‐プロペンアミド(塩酸塩のCAS番号219613‐81‐7)、N‐(6‐ブロモヘキシル)アクリルアミド(CAS番号869563‐87‐1)、N‐(6‐ブロモヘキシル)‐2‐メチル‐2‐プロペンアミド(CAS番号102303‐85‐5)および1‐ニトロ‐2‐(2‐プロペニロキシ)‐ブタン(CAS番号132439‐78‐2)などが挙げられる。2官能基化合物のさらなる例は、それだけに限らないが、ビニルアミン、ヒドロキシルアルキルアクリル酸エステル、またはアミノアルキルアクリル酸アミドであってもよい。ビニルアミンの適切な例は、それだけに限らないが、2‐プロペン‐1‐アミンまたはアミノプロピルビニルエーテルであってもよい。
【0054】
C≡CH末端基を持つ適切な2官能基化合物の例としては、それだけに限らないが、7‐オクチニルアミン(CAS番号14502‐43‐3)、1‐ヘプチン‐4‐アミン(CAS番号138851‐79‐3)、10‐ウンデシン‐1‐アミン(CAS番号188584‐11‐4)、1‐ノニン‐5‐アミン(CAS番号188585‐70‐8)、8‐ノニン‐2‐アミン((2R)異性体のCAS番号481075‐18‐7)、8‐ブロモ‐1‐オクチン(CAS番号81216‐13‐9)、6‐ブロモ‐3‐メチル‐1‐ヘキシン(CAS番号255824‐64‐7)、7‐クロロ‐1‐ヘプチン(CAS番号18804‐36‐9)、7‐ヨード‐1‐ヘプチン(CAS番号87462‐66‐6)、7‐オクチン‐1‐チオール(CAS番号77213‐91‐3)、(CAS番号70110‐19‐9)などが挙げられる。‐C≡CH末端基を持つ3官能基化合物の3つの例示的な実施例は、6‐ヘプチン‐1,5‐ジアミン(CAS番号70110‐19‐9)、1,7‐オクタジイン‐4‐チオール(CAS番号864226‐49‐3)および1,7‐オクタジイン‐4‐チオール(CAS番号864226‐49‐3)である。
【0055】
C≡C‐内部基を持つ適切な2官能基化合物の例としては、それだけに限らないが、5‐ヘプチン‐1‐アミン(CAS番号255381‐72‐7)、4‐ヘプチン‐1‐アミン(CAS番号184153‐57‐9)、1‐アミノ‐3‐ヘキシン(CAS番号5
82307‐90‐2)、1‐メチル‐2‐ヘキシン‐イルアミン(CAS番号98435‐28‐0)、2‐ヘプチン‐1‐アミン(CAS番号98435‐26‐8)、5‐オクチン‐1‐アミン(CAS番号135469‐74‐8)、3‐ノニン‐1‐アミン(CAS番号86001‐04‐9)、3‐エチル‐4‐ヘプチン‐3‐アミン(CAS番号61822‐34‐2)、2‐ウンデシン‐1‐チオール(CAS番号865306‐46‐3)、6‐オクチン‐1‐チオール(CAS番号77213‐95‐7)、1‐ヘキシン‐1‐チオール(CAS番号770676‐32‐9)および1‐(メチルチオ)‐2‐ノニン(CAS番号113794‐33‐5)などが挙げられる。‐C≡C‐内部基を持つ3官能基化合物の2つの例示的な実施例は、4‐オクチン‐1,7‐ジアミン(CAS番号207980‐95‐8)および4‐ノニン‐1,7‐ジアミン(CAS番号207980‐97‐0)である。
【0056】
本発明による両親媒性重合体の形成方法において、化学式(I)(上記参照)の無水マレイン酸重合体、単官能基化合物および少なくとも2つの官能基を有する化合物の間の反応は、塩基の存在下で行うことができる。一般に、意図された目的に適した任意の塩基が用いられる。一実施形態において、塩基は求核塩基である。求核塩基は、塩基特性および求核特性を持つ塩基である。例示的な実施例としては、それだけに限られないが、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]‐ノン‐5‐エン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ‐7‐エン、ビス(トリメチルシリル)アミド、ヘキサメチルジシラザンまたはビスメシチルマグネシウムなどが挙げられる。
【0057】
両親媒性重合体の形成方法の間、典型的には、無水マレイン酸重合体の無水物基の反応は、非極性側鎖を提供するアミドまたはエステル基の形成をもたらす。この側鎖は、例えば、アルキル鎖などの単官能基化合物から形成される部分、および当該の単官能基化合物から形成される部分に結合されているエステルまたはアミド基の各原子である、少なくとも1つのヘテロ原子を含む、少なくとも1つのヘテロ原子が挙げられる。第1の脂肪族部分は、従って、単官能基化合物から形成される部分、およびCOO‐基、CO‐NH‐基またはCO‐N‐基を含む。官能基がCO‐N‐基である実施形態では、二級アミドが形成され、その結果、第1の脂肪族部分は単官能基化合物から形成された2つの部分を含む。
【0058】
この点に関して、二級アミドが形成される実施形態では、第1の脂肪族部分は単官能基化合物から形成される1つの部分および少なくとも2つの官能基を有する化合物から形成される1つの部分も含む可能性があることに留意されたい。明確にするために、少なくとも2つの官能基を有する化合物から形成される部分を含む任意の脂肪族部分は、第2の脂肪族部分と見なされるものとする。したがって、単官能基化合物から形成される部分および少なくとも2つの官能基を有する化合物から形成される部分の両方を含む脂肪族部分は、分岐した第2の脂肪族部分と見なされるものとする。
【0059】
さらに、無水マレイン酸重合体の各無水物基は、1つもしくは2つの単官能基化合物、または1つもしくは2つの少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応することもできる(下記も参照)。典型的には、無水物基は、単官能基化合物または少なくとも2つの官能基を有する化合物のいずれかに関わらず、最大1つの反応物と反応する。結果として、典型的には溶液に負の電荷をもたらすカルボン酸基が形成される。また、数多くの無水物基は反応を受けない。これらの無水物基は、一般に、本発明の方法の間に加水分解され、さらなるカルボン酸基をもたらす。当業者は、両親媒性重合体を形成する本発明の方法が架橋剤などのあらゆるカップリング剤の使用を必要としないことを理解するであろう。
【0060】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)は脂肪族アミンと反応できることが以
前示されているが(特開昭第57‐016004号要約;フェルナンデス‐アルゲレス,M.T.ら、Nano Letters(2008年)7、9、2613ページ〜2617ページ)、本発明者は、さらに、ワンポット合成において、2官能基化合物、3官能基化合物、および多官能基化合物をさらなる反応物として使用することができるという驚くべき発見をした。一般に、2官能基化合物および多官能基化合物に1種類の反応のみを受けさせ、それによって重合体の炭化水素骨格への1種類の結合のみが形成される、このような方法においては、反応条件を制御することが可能である。2官能基化合物および多官能基化合物の残りの官能基は、その後の共役反応および架橋反応に利用可能である。この点に関して、両親媒性重合体の炭化水素骨格は、極性側基および約3から約80までの炭素原子ならびにNおよびOから選択される0から約40までのヘテロ原子のアルキル鎖および共重合可能な基を備える側鎖を有する可能性があることに留意されなければならない。上述のように、共重合可能な基は、アミノ基、ヒドロキシル基、または例えば、末端‐CH=CH基、末端‐C≡CH基、内部‐CH=CH‐基または内部‐C≡C‐基などの、末端もしくは内部C=CもしくはC≡C結合を含む基とすることもできる。上述のように、共重合可能な基は、例えば、GがN、O、または例えば‐CH=CH‐基もしくは‐C≡C‐基である、‐G‐CH=CH‐またはG‐C≡C‐の一般構造の、C=CまたはC≡C結合の他にさらなる官能基または、近隣もしくはジェミナルなヘテロ原子も含むことができる。
【0061】
共重合可能な基は、少なくとも2つの官能基を有する化合物の残りの基と同一でも、異なっていてもよい。官能基が同じである実施形態において、無水マレイン酸重合体と反応することができない官能基は、重合方法に加わることから保護されてもよい。当業者に周知の多数の保護基が種々の官能基に対して利用可能である。例示的な実施例としては、ヒドロキシル基はイソプロピリデン基で保護することができる。このような保護基は、重合後に除去されてもよく、したがって、もはや保護されていない(単数または複数の)官能基は、共役反応、架橋反応、共重合反応に利用可能である。例えば、ヒドロキシル基を保護するイソプロピリジン保護基は、酸処理によって除去することができる。当業者はさらに、当該の保護基は、少なくとも2つの官能基を有する化合物それぞれの合成の間に十分前もって導入されなければならない可能性があることに気づくであろう。
【0062】
一実施形態において、共重合可能な基は側鎖の頭部基であり、その後の共重合または架橋反応が可能である限りは、側鎖の他の任意の位置も可能である。下記にさらに詳細に説明されるように、この架橋反応によって網目構造を形成することも可能である。
【0063】
別の実施形態において、本発明は水溶性ナノ結晶を形成する方法を提供する。したがって、上述のような1つ以上のナノ結晶および1つ以上の重合体を含む水溶性光ルミネセンス複合材料は、本明細書で提供される方法を用いて形成することもできる。この複合材料は、1つまたは2つまたはそれ以上の異なるナノ結晶および重合体、もしくはそのいずれかのみを含む場合もある。本発明の方法により、ナノ結晶の疎水性特性を親水性特性に転換することもできる。さらに、その結果、非極性で、典型的には疎水性である(例えば、アルキル鎖)末端修飾されたナノ粒子の可溶化および多官能性付与のための多目的プラットフォームが、表面特性を変化させることによって、また官能基を導入することによってもたらされる。したがって、ナノ結晶上の被覆は、同時に溶解性、多官能性付与、構造安定性、および化学的多用途性に関連する問題の同時解決をもたらす。
【0064】
本発明において用いられるように、ナノ結晶という用語は、少なくとも1つの寸法が例えば≦約100nmであり、単結晶である、任意のナノ材料として見なすことができる。これらの材料は、電気的および熱力学的特性の多くが強力なサイズ依存性を示し、したがって、注意深い製造方法を通じて制御できることから、技術上、非常に興味深い。10nm未満の範囲の半導体ナノ結晶は、しばしば量子ドットと呼ばれる。
【0065】
本発明によると、例えば、疎水性相互作用またはファンデルワールス相互作用を介してナノ結晶の表面が両親媒性重合体と相互作用できる限りは、本明細書で記載されるように、任意の適切な種類のナノ結晶(例えば、量子ドット)は水溶性にすることもできる。この背景において、「ナノ結晶」および「量子ドット」という用語は、区別なく使用することができる。
【0066】
一実施形態において、適切なナノ結晶は、金属(M1)のみを含むナノ結晶コアを備えている。この目的のために、M1は、元素周期表(PSE)のII主族、VILA亜族、VIIIA亜族、IB亜族、IIB亜族、III主族またはIV主族の元素から成る群から選択することができる。したがって、ナノ結晶コアは、以下に定義されるような非金属元素AまたはBが無く、金属元素M1のみで構成することもできる。この実施形態において、ナノ結晶は、PSEの上記の任意の族の純粋な金属、例えば、金、銀、銅(Ib亜族)、チタン(IVb亜族)、テルビウム(IIIb亜族)、コバルト、プラチナ、ロジウム、ルテニウム(VIIIb亜族)、鉛(IV主族)またはこれらの合金のみで構成される。
【0067】
別の実施形態において、本発明で用いられるナノ結晶コアは、2種類の元素を含んでもよい。したがって、ナノ結晶コアは、例えば、Zn、Cd、Hg、Mg、Mn、Ga、In、Al、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、AuおよびAuなどの金属から形成される任意の周知のコアシェルナノ結晶など、M1およびM2の2種類の元素を含む二元ナノ結晶合金とすることもできる。
【0068】
本発明に適した別の種類の二元ナノ結晶は、1つの金属元素M1およびPSEのV主族またはVI主族から選択される少なくとも1つの元素Aを含むことができる。したがって、使用に適したナノ結晶のある種類は、目下、MIAの式である。当該のナノ結晶の実施例は、コアおよびシェル、もしくはそのいずれかがCdS、CdSe、CdTe、MgTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、またはHgTeを含む、第II〜IV族の半導体ナノ結晶(すなわち、II主族またはIIB亜族の金属、およびVI主族の元素を含むナノ結晶)とすることもできる。ナノ結晶コアは、任意の第III〜V族の半導体ナノ結晶(すなわち、III主族およびV主族の元素を含むナノ結晶)とすることもできる。コアおよびシェル、もしくはそのいずれかは、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、AlN、AlP、AlAs、AlSbを含む。本発明に使用することができるコアシェルナノ結晶の具体例としては、それだけに限られないが、ZnSシェルを持つ(CdSe)ナノ結晶、およびZnSシェルを持つ(CdS)ナノ結晶などが挙げられる。
【0069】
本発明は、上述のコアシェルナノ結晶の使用に限定されない。別の実施形態において、本発明のナノ結晶は、式中、
a)AがPSEのVI主族の元素を表す場合に、M1およびM2が、元素周期表(PSE)のIIb亜族、VIIa亜族、VIIIa亜族、Ib亜族、もしくはII主族から独立して選択され、または
b)AがPSEの(V)主族の元素を表す場合に、M1およびM2が両方共、PSEの(III)主族の元素から選択される、
M11‐xM2Aの組成をもつ均質な三元合金から成るコアを持つこともできる。
【0070】
別の実施形態において、均質な四元合金から成るナノ結晶が用いられる。この種類の四元合金は、式中、
a)AおよびBの両方がPSEのVI主族の元素を表す場合に、M1およびM2が、元素周期表(PSE)のIIb亜族、VIIa亜族、VIIIa亜族、Ib亜族、もしくは
II主族から独立して選択され、または
b)AおよびBの両方がPSEの(V)主族の元素を表す場合に、M1およびM2がPSEの(III)主族の元素から独立して選択される、
M11‐xM2i‐yの組成を持つ。
【0071】
この種の均質な三元または四元ナノ結晶の例は、例えばゾングら(Zhong et al)、J.Am.Chem.Soc(2003年)第125巻、8598ページ〜8594ページ、ゾングら(Zhong et,al)、J.Am.Chem.Soc(2003年)第125巻、13559ページ〜13553ページに、または国際特許出願第2004/054923号に記載されている。
【0072】
当該の四元ナノ結晶は、二元ナノ結晶M1Aを形成するステップを含む方法によって、
i)ナノ結晶の生成に適した形の元素M1を含む反応混合物を適切な温度T1まで加熱するステップ、この温度でナノ結晶の生成に適した形の元素Aを加えるステップ、反応混合物を上述の二元ナノ結晶M1Aの形成に適した温度で十分な時間加熱するステップ、その後、反応混合物を冷却させるステップによって、ならびに
ii)形成された二元ナノ結晶M1Aを沈殿または単離せずに反応混合物を適切な温度T2まで再加熱するステップ、この温度でナノ結晶の生成に適した形の十分量の元素M2を加えるステップ、次いで、反応混合物を上述の三元ナノ結晶M11‐xM2Aの形成に適した温度で十分な時間加熱するステップ、その後、反応混合物を室温まで冷却させるステップ、三元ナノ結晶M11‐xM2Aを単離するステップによって、
得ることができる。
【0073】
この三元ナノ結晶において、指数xは、例えば、0.01<x<0.99、0.1<0.9または0.5<x<0.95である、0.001<x<0.999の値とすることができる。他の実施形態において、xは約0.2または約0.3から約0.8または約0.9までの間の値とすることができる。四元ナノ結晶において、yの値は例えば、0.01<y<0.99もしくは0.1<x<0.95である、0.001<y<0.999の値、または約0.2から約0.8の間の値とすることができる。
【0074】
当該のII〜IV三元ナノ結晶において、結晶に含まれる元素M1およびM2は、Zn、CdおよびHgから成る群から独立して選択することもできる。これらの三元合金におけるPSEのVI族の元素Aは、S、SeおよびTeから成る群から選択されることが好ましい。したがって、これらの元素M1、M2およびAの全ての組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。例示的な実施形態において、本発明で用いられるナノ結晶は、ZnCd1‐xSe、ZnCd1‐xS、ZnCd1‐xTe、HgCd1‐xSe、HgCd1‐xTe、HgCd1‐xS、ZnHg1‐xSe、ZnHg1‐xTe、およびZnHg1‐xSの組成を持つ。
【0075】
一部の例示的な実施形態において、上記の化学式に用いられるxは0.10<x<0.90または0.15<x<0.85の値を、より好ましくは0.2<x<0.8の値を持つ。特に好ましい実施形態において、ナノ結晶はZnCd1‐xSおよびZnCd1‐xSeの組成を持つ。当該のナノ結晶は、xは0.10<x<0.95の値を、より好ましくは0.2<x<0.8の値を持つ。
【0076】
ナノ結晶コアが本発明のIII‐Vナノ結晶で作られている特定の実施形態において、元素M1およびM2のそれぞれは、GaおよびInから独立して選択される。元素Aは、P、AsおよびSbから選択されてもよい。これらの元素M1、M2およびAの考えられる全ての組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。一部の例示的な実施形態において、ナノ結晶は、GaIn1‐xP、GaIn1‐xAsおよびGaIn1‐xAsの組
成を持つ。
【0077】
一実施形態において、ナノ結晶は半導体材料を含む。上記で説明されているように、半導体材料は、金属、半金属またはその両方を含むことができる。
本発明の上記の方法において、ナノ結晶は、まず、適切な溶媒または当該の溶媒の混合物中に提供される。この点において、適切な、とはナノ結晶がそれぞれの溶媒に可溶でなければならないことを意味する。当該の溶媒の例は、それだけに限定されないが、例えば非プロトン性非極性溶媒などの非プロトン性溶媒および非極性溶媒、もしくはそのいずれかである。後者は、ミネラルオイル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびテトラヒドロフランから選択されてもよい。
【0078】
適切な非極性溶媒のさらなる例は、非極性イオン液体である。非極性イオン液体の例としては、それだけに限定されないが、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミドビス(トリフリル)アミド、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス‐[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミドトリフルオロ酢酸、1‐ブチル‐3‐メチルイミダゾリウムヘキサフルオロ‐ホスフェート、1‐ヘキシル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1‐ブチル‐3‐メチル‐イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス[オキサラト(2‐)]ホウ酸、1‐ヘキシル‐3‐メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1‐ブチル‐3‐メチル‐イミダゾリウムヘクサフルオロホスフェート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル‐(テトラデシル)ホスホニウム、N”‐エチル‐N,N,N’,N’‐テトラメチルグアニジウム、1‐ブチル‐1‐メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1‐ブチル‐1‐メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1‐ブチル‐3‐メチルイミダゾリウムヘクサフルオロホスフェート、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドおよび1‐n‐ブチル‐3‐メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。極性非プロトン性溶媒の例としては、それだけに限定されないが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、イソ酪酸イソブチル、エチレングリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N,N‐ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、N‐メチルピロリドン、およびジメチルスルホキシドなどが挙げられる。溶媒は、両親媒性重合体およびナノ結晶との間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が生じるようになった後に除去することもできる。
【0079】
本発明の方法において、ナノ結晶は、本発明に従った両親媒性重合体と接触する。その結果として、両親媒性材料は、ナノ結晶の周りを包む。一実施形態において、ナノ結晶は、結晶の表面上の非共有結合性相互作用を介して配位性溶媒を持ち、当該の溶媒は1つ以上の脂肪族側鎖を含むこともできる。この配位性溶媒は、ナノ結晶と両親媒性重合体が接触すると両親媒性重合体と交換される。両親媒性重合体は、非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用を介してナノ結晶に固定される。このような相互作用は、それだけに限られないが、配位結合、カシミール相互作用、疎水性相互作用、水素結合、溶媒和力およびファンデルワールス相互作用である可能性がある。
【0080】
一実施形態において、両親媒性重合体は、適切な溶媒中でナノ結晶に加えられる。適切な溶媒は、例えば極性プロトン性溶媒などの、極性溶媒とすることもできる。プロトン性溶媒は、例えば、ヒドロキシル基中にあるような酸素またはアミノ基中にあるような窒素に対して水素原子結合を有する溶媒である。より一般的には、例えばフッ化水素など、解
離性のHを含む任意の分子溶媒が、プロトン性溶媒と呼ばれる。このような溶媒の分子は、H(プロトン)を提供することができる。極性プロトン性溶媒の例としては、それだけに限定されないが、水、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、tert‐ブチルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、ギ酸、酢酸、ジメチルアルシン酸[(CHAsO(OH)]、アニリン、N,N‐ジメチル‐ホルムアミド、N,N‐ジイソプロピルエチルアミン、またはクロロフェノールなどが挙げられる。本発明の一実施形態では、水が用いられてもよい。
【0081】
上述の方法では、ナノ結晶と共に提供される任意の有機溶媒が、本発明の両親媒性重合体と接触した後に水溶液で置き換えられてもよい。一実施形態において、水溶液の相間移動の際に、残存する無水物環は開環することができ、それによって、(単数または複数の)ナノ結晶の安定分散をもたらす静電反発力を引き起こす、負に荷電しているカルボキシル基を生じる。
【0082】
本発明の一実施形態において、水溶性ナノ結晶を形成する方法は、適切な溶媒にナノ結晶を提供するステップを含む。当該の方法において、ナノ結晶は両親媒性重合体と接触する。両親媒性重合体は、(i)極性側基、(ii)約3から約20の炭素原子ならびにN、O、S、SeおよびSiの群から選択される0から約3までのヘテロ原子の主鎖を備える第1の脂肪族部分、ならびに(iii)共重合可能な基を備え第2の脂肪族部分を有し、約3から約80の炭素原子ならびにNおよびOから選択される0から約40までのヘテロ原子の主鎖を持つ前記第2の脂肪族部分を有する炭化水素骨格を含み;両親媒性重合体およびナノ結晶の間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用を可能にし、それによって定義が上述されている水溶性ナノ結晶を形成する。したがって、上述の本発明の方法によって、ナノ結晶を水へ移動させることが可能である。
【0083】
両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基をさらなる官能基を有する化合物と架橋または反応させて(さらなる)重合体または重合体ネットワークを形成することも可能である。この重合は、様々な方法で達成することができる。例えば、共重合可能な基は、両親媒性重合体を、少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物の2つ以上の官能基が両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基と架橋を形成することができる、少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物と反応させることによって架橋できるようにすることもできる。別の実施形態では、架橋は両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基の少なくとも2つの官能基を有する化合物との共重合が生じることを可能にすることによって達成される。少なくとも2つの官能基を有する化合物の少なくとも1つの官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン、エーテル基、チオエーテル基、エポキシ基、ニトロ基、トリハロシリル基、末端C=C結合、または末端C≡C結合のうちの1つである。少なくとも2つの官能基を有する化合物は、水溶性とすることもできる。
【0084】
いくつかの実施形態において、両親媒性重合体に存在する第2の脂肪族部分の共重合可能な基は、例えば、分子または表面など、任意のさらなる物質と反応することもできる。このような分子または表面は、例えば、両親媒性重合体に含まれる第2の脂肪族部分の共重合可能な基の官能基との反応を受けることができる、1つ以上の官能基を含んでもよい。これに該当する反応は、共有結合または非共有結合の形成をもたらすことができる。それぞれの分子は、例えば、ヌクレオチド、核酸分子、ペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、薬剤、薬剤前駆物質、薬剤候補分子、薬剤代謝物、ビタミン、合成重合体、受容体リガンドまたは代謝物とすることもできる。それぞれの分子は、例えば、選択された目標物質に対して親和性を有する。それぞれのリガンドの例としては、それだけに限定されないが、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片;例えば二重特異性抗体(diabody)、三重特異性抗体(triabody)もしくは十重特異性抗体(decabody)な
どの抗体ドメイン;または例えば、リポカインファミリーのポリペプチドに基づくムテイン、グルボディ(glubody)、アンキリンスカフォールドまたはクリスタリンスカフォールドに基づくタンパク質、アドネクチン(AdNectin)、テトラネクチン(tetranectin)、アビマー(avimer)またはペプトイド(peptoid)などの抗体様機能を持つタンパク質性結合分子などが挙げられる。
【0085】
この共重合に用いることができる適切な単量体化合物の例示的な実施例としては、N‐ビニルピロリドン、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、またはビニルエーテル基に加えてアミノ基またはヒドロキシル基を有するビニルエーテル誘導体などが挙げられる。用いられるアクリル酸は、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸および例えばそれらのエステルなどの誘導体とすることもできる。適切なアクリル酸エステルは、水溶性でなければならない。適切なアクリル酸エステルの例としては、それだけに限定されないが、メチルメタクリレート、5‐ヒドロキシメチル‐2(5H)‐フラノン、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、または3‐ヒドロキシプロピルアクリレートなどが挙げられる。さらなる例は、エチルメタクリレート、n‐プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート、sec‐ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert‐ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n‐プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n‐ブチルアクリレート、sec‐ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert‐ブチルアクリレートとすることもできる。アクリル酸アミドは、例えば、アクリルアミド(IUPAC名:2‐プロペンアミド)、N‐メチルアクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N‐n‐プロピルアクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N‐n‐ブチルアクリルアミド、N‐sec‐ブチルアクリルアミド、N‐イソブチルアクリルアミド、N‐tert‐ブチルアクリルアミド、N,N‐ジメチルメタクリルアミドN‐(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、マレアミック酸またはそれらの任意の誘導体とすることもできる。一実施形態では、アクリル酸アミドは、N‐イソプロピルアクリルアミドである。ビニルエーテル誘導体の例としては、モノエタノールアミンビニルエーテル、モノプロパノールビニルエーテル、1,4‐ブタンジオールビニルエーテル、1,5ペンタンジオールビニルエーテルなどが挙げられる。その他の例は、ビニルアルコールのような水溶性単量体、1,4‐ペンタジエン‐3‐オール、2‐メチル‐2‐プロペン‐1‐オール、アリルアルコール、3‐ブテン‐1,2‐ジオール、2‐メチレン‐1,3‐プロパンジオール、トランス‐2,3‐ジメチルアクリル酸または4‐スチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0086】
上記の重合反応に用いることができるさらなる基は、それだけに限定されないが、アルケン基、アルキン基、アリル基、アリルグリシジルエーテル基、アルキルアルケン基、アルキルアルキン基、ベンゾキサジン基、エポキシド基、およびオキセタン基とすることができる。
【0087】
一実施形態において、共重合可能な基の架橋を可能にするステップは、両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基を互いにクロス重合可能にすることによって達成される。別の実施形態において、共重合可能な基は少なくとも2つの官能基を有する化合物を加えずに、互いにクロス重合することができる。さらなる(クロス)重合の結果として、重合体網目構造を形成することができる可能性がある。この網目構造内に、複数の水溶性ナノ結晶が埋め込まれてもよい。
【0088】
両親媒性重合体の少なくとも2つの官能基を有する化合物との反応は、極性プロトン性溶媒の存在下で行うことができる。極性プロトン性溶媒は、上述のように、例えば水とすることができる。
【0089】
重合反応をさらに支援するために、適切な開始剤が添加されてもよい。開始剤は、重合反応の開始に役立てることができる。当技術分野に周知のいずれの開始剤も、このような目的に用いることができる。重合は、確立された方法論に従って行うこともでき、例えば、適切な単量体および本発明の重合体で被覆されたナノ結晶の直接的な混合(下記の実施例4を参照)またはマイクロエマルジョン重合(実施例5を参照)によって行うこともできる。一般に、重合反応は当技術分野に周知の標準的な手法および方法によって行われる。
【0090】
結果として、本発明は、1つ以上のナノ結晶を含む上述の重合体網目構造などの重合体も提供する。任意のナノ結晶が重合体中に含まれてもよい。複数のナノ結晶が重合体に含まれる場合、これらのナノ結晶は、化学的構造、組成およびサイズ、もしくはそのいずれかが同一、類似、または異なっていてもよい。
【0091】
上記で明らかであるように、重合体網目構造を含む重合体は、例えば、重合体に与えられる環境または溶剤の変化に応じて可逆的に変更可能または調節可能な、極性、パッキング、立体配座、または体積などの固有の特性を持つ可能性がある。このような環境またはそれぞれの溶剤の変化は、例えば、温度、例えばイオンなどの溶剤の成分の溶液濃度の変化、またはpHの変化である可能性がある(図10を参照)。このような重合体の例示的な実施例は、N‐イソプロピルアクリルアミド単位を含む重合体である。したがって、表面にそれぞれ重合体をもつ水溶性ナノ結晶は、例えば、サイズ、分子パッキングまたは分子極性など、水溶性の程度を含む1つ以上の特性の変化を受ける可能性が高いかもしれない。1つ以上のナノ結晶が当該の重合体に光ルミネセンス特性をもたらす一実施形態において、ルミネセンス特性は、重合体の特性変化の影響を受ける可能性もある。したがって重合体は、1つ以上のナノ結晶の調節可能なルミネセンス特性を与える可能性がある。
【0092】
例えば、本明細書に記載されるようなナノ結晶が上述のように埋め込まれる、上述の重合体網目構造は、例えば、安定性、溶解性、重合体の加工可能性の増大、材料の触媒特性の向上など、系にさらなる特性を提供する可能性もある。この点において、網目構造は三次元系とすることもできる。このような網目構造において、両親媒性重合体中のナノ結晶の量は、例えば、約0.05%(v/v)から約40%(v/v)まで、約1%(v/v)から約30%(v/v)まで、約1%(v/v)から約25%(v/v)までなど、例えば、約0.05%(v/v)から約50%(v/v)までを含む、約0.01%(v/v)から約50%(v/v)までの範囲とすることもできる。一実施形態において、この系の両親媒性重合体は表面に側鎖をもち、当該の側鎖は約3から約80までの炭素原子ならびにNおよびOから選択される0から約40までのヘテロ原子のアルキル鎖を備え、また当該の側鎖は共重合可能な基を備え、第2の脂肪族部分の当該の共重合可能な基は架橋を可能にし、それによって上述の重合体網目構造を特徴付ける。例えば、重合体網目構造は、両親媒性重合体を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させることによって得ることができ、少なくとも2つの官能基を有する化合物の2つ以上の官能基は、両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基との結合を形成することができる。一実施形態において、両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基は、互いにクロス重合することができる。
【0093】
共重合可能な基を備える少なくとも2つの官能基を有する部分によってもたらされる2官能性、ひいては重合体網目構造形成の可能性は、本発明のナノ結晶を様々な用途に適用するために用いることができる。
【0094】
その他の可能な適用の中で特に、生体イメージング用途のために、ビニル単量体の共重合または集合体を直接的に用いることによるビニル基付加された集合体の重合体構造への組み込みが含まれる可能性がある。
【0095】
本発明に従った水溶性ナノ結晶は、微生物内、特に細胞内で便利に使用することもできる。両親媒性重合体の存在は、細胞を含むそれぞれの微生物への内部移行を可能にする。両親媒性重合体の第2の脂肪族部分の共重合可能な基に結合することができる任意の部分または分子によって、水溶性ナノ結晶は選択された細胞内の区画、構造、オルガネラ、またはその他の位置に移動させることができる。使用される両親媒性重合体は、それぞれのナノ結晶を選択された細胞内の位置に移動させることができる、基または部分を含むこともできる。例えば、免疫グロブリン、または免疫グロブリン断片、または受容体リガンドなどの位置を目指す機能を持つ当該の任意の分子または部分が存在せず、水溶性ナノ結晶が細胞に入ることができる典型的な実施形態において、ナノ結晶は、少なくとも大部分が細胞質内部に位置する。例えば、重合体が多価アミン基を含む場合、対応する水溶性ナノ結晶は、エンドソームオルガネラに障害を与えることができる(デュアン,H.&ニー,S.(Duan,H.,&Nie,S.)、J.Am.Chem.Soc.(2007年)129、11、3333ページ〜3338ページ)。ナノ結晶により典型的に観察される細胞毒性作用は、水溶性重合体のそれぞれの選択によって回避することができる。これは、細胞毒性がナノ結晶自体ではなく、ナノ結晶の表面に存在する分子に依存するという事実が原因である(ホシノ,A.ら(Hoshino,A.,et al.)、Nano
Letters(2004年)第11巻、2163ページ〜2169ページ)。したがって、例えば量子ドットなどの本発明に従ったナノ結晶は、例えば免疫蛍光イメージングまたは超微細構造イメージングなど、細胞内プローブなどの様々な生物学的および医学的用途に使用することができる(例えば、キング,J.ら(King,J.,et al.)、Microsc.Microanal.(2008年)、第14巻、補足2、702ページ〜703ページを参照)。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、所定の分析物に対する結合親和性をもつ分子と結合される、本明細書に記載されるようなナノ結晶に言及することもできる。このような結合は、本発明の系によって形成される重合体網目構造を介して影響を及ぼす可能性がある。ナノ結晶を所定の分析物に対する結合親和性を持つ分子に結合することによって、マーカー化合物またはプローブが形成される。当該のプローブにおいて、本発明のナノ結晶は、例えば、所定の分析物の検出に用いることができる可視範囲または近赤外範囲の電磁スペクトルの放射を発する、ラベルまたはタグとしての役割を果たす。
【0097】
原理上は、分析物に少なくとも一定程度の特異性で結合可能な、特定の結合相手が存在する任意の分析物を検出することができる。検出物は、例えば、薬剤(例えば、アスピリン(登録商標)またはリバビリン)などの化学化合物、または例えばタンパク質(例えば、トロポニンまたは細胞表面タンパク質に対して特異的な抗体)または核酸分子などの生化学的分子であってもよい。例えば、リバビリンなどの関心がある分析物に対して結合親和性をもつ適切な分子(分析物結合相手とも言われる)に結合される場合、結果として生じるプローブは、例えば、患者の血漿中の薬剤濃度を監視するための蛍光免疫アッセイに用いることができる。別の例は、ナノ結晶のストレプトアビジンとの結合である。
【0098】
分析物は、それだけに限定されないが、例えばウイルス粒子、染色体、または細胞全体など、複雑な生体構造とすることができる。例えば、分析物の結合相手が細胞膜に結合する脂質である場合、例えば当該の脂質に結合した本発明のナノ結晶を含む結合体を細胞全体の検出および視覚化のために用いることができる。細胞染色または細胞イメージングなどの目的のためには、可視光を発するナノ結晶が好ましく用いられる。本開示にしたがって、分析物の結合相手に結合された、本発明のナノ結晶を含むマーカー化合物の使用によって検出される分析物は、好ましくは生体分子である。
【0099】
したがって、さらなる実施形態において、分析物と結合親和性をもつ分子は、タンパク
質、ペプチド、免疫原性ハプテンの特徴をもつ化合物、核酸、炭水化物、または有機分子である。分析物の結合相手として使用されるタンパク質は、例えば、抗体、抗体断片、リガンド、アビジン、ストレプトアビジン、または酵素などとすることができる。有機分子の例は、ビオチン、ジゴキシゲニン、セロトロニン(serotronine)、葉酸誘導体、抗原、ペプチド、タンパク質、核酸および酵素などの化合物である。核酸は、それだけに限定されないが、DNA、RNA、またはPNA分子、10から50bpの低分子オリゴヌクレオチド、および長い核酸などから選択することができる。
【0100】
本発明の別の実施形態において、色素がナノ結晶を水溶性にするために用いられる両親媒性重合体に直接付着されてもよい。様々な種類の色素が、色素‐ナノ粒子系などの特定の使用に応じて付着されてもよい。例えば、このような系を用いて、1つの粒子レベルで細胞トラフィックをモニターすることもできる。
【0101】
さらなる実施形態において、重合可能な官能基で被覆された量子ドットを担う重合体材料が、例えば、シリコン、ガラス、石英などの様々な基材上でのフィルムの形成または固定化のために用いられてもよい。このような固定化またはフィルムコーティングは、このような固定化が必要または適切である、あらゆる技術分野に用いることができる。
【0102】
上記ですでに示されているように、本発明による1つ以上のナノ結晶を含む重合体網目構造を含む水溶性ナノ結晶および重合体は、様々な用途に用いることができる。このような用途の例示的な実施例は、生体標識、生体イメージング、物理的検出、化学的検出、発光装置および太陽電池の形成、増幅自然放出、触媒、高屈折率材料の形成および電極被覆の形成などである。
【0103】
本発明を容易に理解し、また実際的な効果をもたらすことができるように、特定の実施形態を以下の非限定的な実施例で記載する。
(実施例)
実施例1:量子ドットの合成‐一般的方法
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)(分子量=6000、および60000g/mol)を含む、全ての試薬は、Aldrich社またはFluka社から購入した。NMRスペクトルは、Bruker社の400MHz分光器で記録した。UV‐可視光吸収は、島津製作所の分光光度計(UV‐1601)を用いて記録した。島津製作所の蛍光分光光度計(RF‐5301PC)は、QD溶液の発光スペクトルを得るために用いた。
【0104】
酸化カドミウム(0.026g、0.20mmol)およびステアリン酸(0.25g、0.88mmol)を真空乾燥し、その後、N雰囲気中で200℃まで、溶液が透明になるまで加熱した。混合物を室温まで冷却し、その後、TOPO(4.00g、50mmol)、次いでヘキサデシルアミン(2.50g、500mmol)を加えた。混合物を220〜240℃まで温め、TOP(0.2mL、0.2mmol)中にSe溶液を加えた。CdSeコアの周囲のZnSの保護層を成長させるため、TOP(0.2mL、0.2mmol)中に硫黄溶液をEtZnヘキサン溶液/TOP(1mL、0.2mmol)と少量ずつ交互に加えた。ナノ結晶のサイズとサイズ分布は、温度およびSe溶液とSの最初の一部分の添加の間の時間によって制御した。
実施例2:ポリマー1〜8の合成のための一般的方法
1gポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)溶液の300mLの乾燥CHCI溶液に、それぞれのアミン、次いでDIPEA(1mL)を加え、混合物を50℃で16時間撹拌した。重合体6〜8の場合、第2の成分を最初のn‐オクチルアミン添加の2時間後に加え、すなわちワンポット反応とした。CHCIの蒸発後、重合体骨格中のカルボキシル基に対して小過剰量のNaOHを含む水に材料を懸濁した。水およびDIPE
Aの蒸発後に、残物を水に溶解し、水で2,3日透析した。1M NaOHによりpH11まで溶液をアルカリ化し、その後、蒸発させて産物を得た。ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)は、自発的に単官能基化合物と少なくとも2つの官能基を有する化合物(ここでは第2の成分)の両方と高収量で反応する。
【0105】
以下に、関係のある一連の両親媒性重合体1〜5の形成に関する典型的なデータを示す。これらの両親媒性重合体は、前述のプロトコルに従って、ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)に対してn‐オクチルアミンを様々なモル比でグラフトすることによって合成した(表1も参照)。QD/重合体集合体に追加の官能基単位を導入するために、ビニル基を含む重合体6、および別のPEGオリゴマー7〜8も同様に合成した。
重合体1
【0106】
【化8】

【0107】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.05g、0.4mmol)との反応によって、結晶状の産物1(0.86g、59%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.25‐2.90(m,9H),2.59(bs,39H),2.08(bs 39H),1.95‐1.35(m,81H),1.34(bs,62H),1.13‐0.65(m,238H)。目標組成物:カルボキシル基97%、オクチルアミド3%;検出組成物:カルボキシル基96%、オクチルアミド4%。
重合体2
【0108】
【化9】

【0109】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.15g、1.2mmol)との反応によって、結晶状の産物2(0.97g、64%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.30‐2.90(m,23H),2.59(bs,38H),2.42‐1.40(m,152H),1.23(bs,116H),1.15‐0.70(m,238H)。目標組成物:カルボキシル基91%、オク
チルアミド9%;検出組成物:カルボキシル基89%、オクチルアミド11%。
重合体3
【0110】
【化10】

【0111】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.42g、3.2mmol)との反応によって、結晶状の産物3(1.06g、63%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.28‐2.85(m,47H),2.60(bs,37H),2.41‐1.60(m,81H),1.47(bs,68H),1.24(bs,253H),1.12‐0.75(m,286H)。目標組成物:カルボキシル基75%、オクチルアミド25%;検出組成物:カルボキシル基75%、オクチルアミド25%。
重合体4
【0112】
【化11】

【0113】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.84g、6.5mmol)との反応によって、結晶状の産物4(1.63g、88%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.25‐2.85(m,72H),2.60(bs,34H),2.40‐1.65(m,73H),1.48(bs,87H),1.24(bs,379H),1.12‐0.65(m,317H)。目標組成物:カルボキシル基50%、オクチルアミド50%;検出組成物:カルボキシル基61%、オクチルアミド39%。
重合体5
【0114】
【化12】

【0115】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)60000のオクチルアミン(0.21g、1.6mmol)との反応によって、結晶状の産物5(1.49g、95%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.25‐2.85(m,33H),2.62(bs,43H),2.40‐1.65(m,89H),1.49(bs,76H),1.25(bs,159H),1.12‐0.65(m,262H)。目標組成物:カルボキシル基88%、オクチルアミド12%;検出組成物:カルボキシル基85%、オクチルアミド15%。
重合体6
【0116】
【化13】

【0117】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.21g、1.6mmol)および3‐アミノ‐1‐プロパノールビニルエーテル(0.02g、0.20mmol)との反応によって、結晶状の産物6(0.91g、60%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:6.42(bs,1.5H),4.25(bs,1.5H),4.04(bs,1.5H),3.78(bs,3H),3.25‐2.82(m,30H),2.80‐1.60(m,154H),1.45(bs,45H),1.29(bs,144H),1.14‐0.65(m,258H)。目標組成物:カルボキシル基87%、オクチルアミド12.5%、ビニル1.5%;検出組成物:カルボキシル基85%、オクチルアミド13%、ビニル1.8%。
重合体7
【0118】
【化14】

【0119】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.21g、1.6mmol)およびPEG 600(11.6g、19mmol)との反応によって、ガラス状の産物7(3.20g、86%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:4.20‐3.98(m,13H),3.82‐3.40(m,1191H),3.26‐3.86(m,17H),2.80‐1.60(m,165H),1.47(bs,48H),1.22(bs,189H),1.14‐0.68(m,262H)。目標組成物:カルボキシル基50%、オクチルアミド12%、PEG 48%;検出組成物:カルボキシル基55%、オクチルアミド15%、PEG 30%。
重合体8
【0120】
【化15】

【0121】
ポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.21g、1.6mmol)およびジアミノプロピルPEG 1500(0.50g、0.33mmol)との反応によって、結晶状の産物8(1.58g、78%)を得た。H‐NMR(400MHz,DO)δ:3.78‐3.42(m,270H),3.25‐3.82(m,30H),2.80‐1.60(m,128H),1.48(bs,48H),1.22(bs,151H),1.12‐0.70(m,260H)。目標組成物:カルボキシル基88%、オクチルアミド13%、PEG 1500 5%;検出組成物:
カルボキシル基81%、オクチルアミド14%、PEG 1500 5%。
【0122】
重合体の組成が適切に得られたことを確認するために、NMRスペクトルを、カルボキシル基に対して化学量論的量のNaOHによる処理によって開いたポリ(イソブチレン‐alt‐無水マレイン酸)骨格のNMRを比較した。NMRの積分は、骨格6000g/mol(n=38)に対して正規化した。重量平均分子量は、精製重合体のNMRスペクトルに基づいて計算した。
【0123】
図2Bから図2Dに示されているように、重合体は上述と同様の方法で、適切なアミン(オクチルアミン、およびビニル基またはアクリル基を有するアミン)を無水重合体骨格にグラフトすることによって合成することができる。
【0124】
重合体1〜8の骨格におけるカルボキシル基の数に対する疎水性単位の数の制御は、ポリ酸無水物鎖との反応に用いた求核反応物の量を変化させることによって達成した(ポリマー1〜4参照、図2Aも参照)。
実施例3:QD/重合体集合体の合成
精製した2mgのQDをTHF(2mL)に溶解し、0.5mLの1.4mM重合体溶液を加え、次いで5mLの水を加えた。混合物を、ロータリエバポレータを用いて1mLまで濃縮した。濁水懸濁液を0.8μmフィルターで濾過し、フィルターを5mLの純水で洗浄した。上清を親水性フィルター(0.2μm)で同じ方法に従って再度濾過し、その結果として清澄なQD水溶液を得た。過剰な水を、ロータリエバポレータを用いて所望の濃度に達するまで除去することもできる。
【0125】
上述の重合体1〜8は、ナノ結晶の水への移動に用いられた。QD/重合体集合体の吸収に基づいて、10から80%のドットが懸濁方法を通過していると推定された。しかし、この収量は、用いられた重合体に強く依存し、さらにそれ以上にQDの純度に依存する(過剰な疎水性リガンドは、凝集の形成を引き起こす)。次に重合体1〜5の懸濁効率をテストした。THF中の同一初期量のQDで開始し、水中に同一濃度の重合体1〜5を適用したが、水中に様々な濃度のQD(光吸収から計算)が得られた。水中のQDの最終濃度は、QDを水に懸濁する所定の重合体の能力に依存する。重合体骨格に付いたn‐オクチル基の数が多い重合体(表2)がより好ましく、このことは、アンカーポイント(この場合、疎水性n‐オクチル鎖)が多いほど疎水性、親水性相互作用に基づく集合に対する安定性がより高い、という一般的な観察結果に一致することが見いだされた。重合体5については、重合体1〜4より10倍大きい分子量であり、最終的な水溶液中のQD濃度の低さが凝集形成(数個のドットが同じ重合体鎖に付く)、および濾過のステップに関する問題の原因となる可能性がある。QD溶液中のTOPO、TOPおよびヘキサデシルアミンを除去するための注意深い精製が、安定なQD/重合体集合体の効率的な形成に重要である。おそらく、残留するアルキルリガンドが単分散ミセルの形成を妨げ、また綿状沈殿を促進する。重合体によるQDの被覆および水への移動は、基本的な発光特性に対して目立った影響を示さなかった。吸収スペクトルは僅かな変化を示したが、最大発光波長および発光スペクトル幅は基本的に無変化のままだった(図3)。
QDの被覆
疎水性QD(ID番号200709)(例えば、TOPOで被覆されたCdSe/ZnS量子ドット)の被覆は、QDをTHFに懸濁、次いで重合体水溶液を添加することによって行う。蒸発によるTHFの除去の結果、重合体で被覆された量子ドットの安定なコロイド状溶液が生じる。結果として生じる溶液は、清澄、透明で、長期間光学的かつコロイド安定性を呈する。被覆方法は、その表面に関わらず、一般にあらゆるナノ粒子物質に実施可能であることが留意される。
実施例4:NIPAM量子ドットの共重合
重合は、アクリル単量体、および例えば図2Bから図2Dに示されるような重合体で被
覆されたQDを水中で直接混合することによって、または適切な開始剤の存在下で一方の材料を他方の溶液に混合することによって行われる。使用される重合体(図2Bから図2Dを参照)、および反応条件(例えば、温度、開始剤、材料濃度)によって、埋め込まれた様々な数のQDが重合体鎖に付いた様々なサイズのミクロスフェアが得られる可能性がある。図5は、PNIPAM/QD組成の典型的な様々なミクロスフェア像を示す。
典型的な重合方法:
50mLの三つ口フラスコに、NIPAM(0.0503g)、アクリルエステルアンモニウム塩の重合体で被覆されたQD溶液(8mg)(図1C)、および20mLの水を、15回吸引/アルゴン排気することによって酸素を除いた。温度を70℃に上げ、開始剤K(1mLのHOに0.0319g)を加えた。次に、4mLのHOに架橋剤MBAAM(0.0285g)およびNIPAM(0.2526g)を溶かした溶液を、75分以内に混合した。混合後、混合物をさらに4時間71℃に保ち、室温まで冷却した。精製は、透析(50kD膜)によって行い、大きい粒子を除去するため遠心した。その結果、QDを有するPNIPAMのサブミクロ粒子の水溶液が得られた(図6)。量子ドットの直接クロス重合
重合は、開始剤(例えば、K)を、図2Bから図2Dに示されているような、重合可能な両親媒性重合体で被覆されたドットの水溶液に添加することによって行われる(図1)。粗反応混合物の透析の結果、QD含有量が高い、水処理可能、かつ懸濁可能な固形重合体膜が生じる(図8)。
典型的な重合方法:
50mLのフラスコ内で、アクリルアミドナトリウム塩の重合体で被覆されたQD(8mg)の溶液(図1B)および20mLの水を、15回吸引/アルゴン排気することによって酸素を除いた。温度を70℃に上げ、開始剤K(1mLのHOに0.0319g)を加えた。反応温度を、6時間維持した。精製は、透析(50kD膜)によって行った。精製の結果、QDを高濃度で有する水溶性の重合体ネットワークを得た(図7)。
実施例5:QDのマイクロエマルジョン重合および共重合
重合可能な官能基(例えば、実施例4に記載)をもつ被覆されたQDを有する重合体材料(例えば、実施例1〜3に記載)を、逆相マイクロエマルジョン方法における自己重合および他の水溶性単量体との共重合に用いる。400nmから10μmまでの範囲で制御可能な直径を持つミクロスフェアが得られる。ミクロスフェアは、長期間にわたって発光性である。
典型的なマイクロエマルジョン重合による重合方法:
10mLのパラフィンオイルに溶解したソルビタンモノオレエート(Span 80、0.23g)の溶液にアルゴンを1時間通した。NIPAM(0.15g、1.32mmol)、N,N’メチレンビスアクリルアミド(0.013g、0.06mmol)、8mgのQD、および10mgの重合体(例えば、1.3.2に記載)を含む体積1mLの水溶液を、油層に加え、アルゴン通気をさらに1時間継続した。エマルジョンは、40℃で1時間超音波処理し、次に、実験用ボルテックス振盪機で、室温で1時間振盪した。安定で均質なエマルジョンをペトリ皿に入れ、窒素換気された架橋装置で5から150℃の間の温度で4時間UVランプ照射し、次に照射なしで16時間不活性空気中で放置した。PNIPAMラテックスの精製は、洗浄ステップを数回、およびヘキサンでの遠心、次いで数回の洗浄ステップおよび水での遠心を行うことによって実施した。
実施例6:QDを担う薄膜の形成
重合可能な官能基(例えば、1.2に記載)を備える、被覆されたQD(例えば、1.1に記載)を有する重合体材料が、例えば、シリコン、ガラス、石英など、様々な基材上での薄膜の形成に用いられる。薄膜は、例えば、スピンコーティングまたはドロップキャスティングなどの様々な方法で形成することができ、その後で、例えばUVまたは熱開始重合など、様々な重合手法を用いてクロス重合される。
薄膜重合の典型的な重合方法‐UV重合
NIPAM(0.15g、1.32mmol)、N,N’メチレンビスアクリルアミド(0.013g、0.06mmol)、8mgのQDおよび10mgの重合体(例えば、1.2に記載)を含む、体積1mLの水溶液を、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートで官能性付与したガラス表面上にドロップキャストした。スライドガラスをUVで6時間照射した結果、重合体薄膜は、発光特性を維持していた。
実施例7:AFMおよびTEM実験
AFMイメージング用の試料を、希釈したQD/重合体溶液を1×1cmの清浄なシリコンウエハ片上にドロップキャスティングすることによって調製した。基材を蒸留水で洗浄し、過剰な材料を除去した。試料を風乾し、次に、磁性金属パックに装着した。重合体で被覆されたQDのイメージングは、Nanoscope IVコントローラーを装備したMultimode Atomic Force Microscope(ビーコ‐デジタルインスツルメンツ社、カリフォルニア州サンタバーバラ)で行われた。タッピングモードでのイメージングには、シングルビームSiカンチレバー(Pointprobe‐plus、ナノセンサーズ社、ドイツ)を用いた。
【0126】
透過型電子顕微鏡(TEM)については、溶液をカーボンフィルムで被覆された銅グリッド上にドロップキャストし、風乾した。イメージングは、JEOL 2100 TEMを用いて200kVで行った。
【0127】
TEMは、重合体で被覆された個別の量子ドットを観察するために用いた(図4A)。高解像度像(挿入図)は、高結晶質の水溶性QDの原子干渉縞を分離している。低解像度像(図4A)は、重合体で被覆されたQDが溶液中で大きな凝集構造を形成しなかったことを示している。高度希釈した溶液からシリコン基材上に被着したQD/重合体集合体の原子間力顕微鏡(AFM)の高倍率像(図4B)は、その球状の形状を示している。構造の高さは、重合体シェルで被覆されたQDのサイズにおよそ相当する、4から6nmの範囲だった。重合体で被覆されたQDの側方のサイズは、チップに関連する効果によって、著しく幅広くなる可能性もある。
実施例7a:細胞内部移行‐細胞構造
ヒト乳がん細胞、MCF‐7(ATCC)およびラットグリオーマ細胞C6(ATCC)を加湿した5%COの環境の空気中で、37℃で培養し、10%FBSおよび1%ペニシリン‐ストレプトマイシン溶液を加えたDMEM培地で維持した。培地は一日おきに補充した。細胞による粒子の取り込みを調べるために、Lab‐Tekカバーグラスチェンバー(Nunc)に細胞を2.0×10細胞/cmで播種した。
実施例7b:細胞内部移行‐生細胞におけるQD/重合体集合体の取り込み
図2Cに示された重合体に埋め込まれた、量子ドットの集合体の細胞による取り込みは、培地を、希釈前にpHを9に調節した溶液中の1mg/mlの関係のある粒子を含む培地と交換した時に開始した。細胞の単層をさらに37℃で1時間培養した。培養時間の終了時に、細胞を新しい、あらかじめ温めたPBS緩衝液で3回洗浄して、細胞と関連しなかった過剰な粒子を除去した。細胞を70%エタノールで固定した。粒子が細胞の細胞質に入ったかどうかを評価するために、細胞内の粒子の位置決定を容易にするために、DAPIを用いて核を染色した。同じ試料を、次に蛍光用封入剤(Dako)にマウントした。60×の水浸型対物レンズで支援されたOlympus FV500システムを用いて共焦点蛍光顕微鏡観察を行った。画像は、1024×1024ピクセルの断面で取り込み、FV10‐ASW 1.3 Viewerで画像処理を行った。
【0128】
哺乳動物癌細胞(MCF‐7およびC6)によるテストは、QD/重合体集合体が効率的に内部移行できることを示した(図9)。QDの生細胞の細胞質への蓄積は、QD/重合体集合体が細胞質内に入った時の粗面小胞体付近およびリボソームへの選択的な分布によるものである(図9b)。
【0129】
本明細書に例示的な実施例として記載されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素または複数の要素、限定または複数の限定が欠けている場合にも適切に実践することができる。例えば、「含む(comprising)」「包含する(including)」「含有する(containing)」などの用語は、限定せずに拡張的に読まれるものとする。また、本明細書において使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として用いられ、本明細書に示されまた記載され、または本明細書の一部分である当該の用語および表現の使用において、任意の同等物の特徴を除外する意図はないが、請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明は例となる実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に統合されて記載される本発明の修正および変更は当業者によって実施することもできること、また、当該の修正および変更は本発明の範囲内であると見なされることが理解されなければならない。
【0130】
本発明は、本明細書に広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内に含まれる狭義の種類および下位一般分類のそれぞれも本発明の一部を成す。これは、用いられた構成要素が具体的に本明細書に列挙されているか否かに関わらず、条件付きで、または任意の対象物を種類から除外する消極的な限定付きで、本発明の一般的記載を含む。
【0131】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。また、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループで記載されている場合、当業者は本発明がマーカッシュグループの任意の個別要素または下位群の要素によっても記載されていることが認識されよう。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性重合体を形成するための方法において、前記両親媒性重合体が炭化水素骨格を含み、前記炭化水素骨格が(i)‐COOH側基、(ii)3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する主鎖を備える第1の脂肪族部分、ならびに(iii)共重合可能な基を備える第2の脂肪族部分を有し、前記第2の脂肪族部分が3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される
2〜40個のヘテロ原子を有する主鎖を備え、
前記方法が化学式(I)
【化1】

(式中、nは10〜10000の整数であり、かつ
はHまたはメチルである)
の無水マレイン酸重合体を、
3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜2個のヘテロ原子を有するアルキル鎖を備える単官能基化合物であって、前記単官能基化合物の前記官能基が無水物との結合を形成することができる単官能基化合物、および
3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される0〜40個のヘテロ原
子を備えるアルキル鎖を備えるとともに、少なくとも2つの官能基を有する化合物であって、前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の1つの官能基が無水物との結合を形成することができ、前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の別の官能基が共重合可能であるような、少なくとも2つの官能基を有する化合物
と、適切な溶媒中で反応させるステップを備え、
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物のうち、無水物との結合を形成可能な唯一の官能基が化学式(I)の無水マレイン酸との反応を可能にする、両親媒性重合体を形成するための方法。
【請求項2】
前記単官能基化合物の官能基がアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン、エーテル基またはチオエーテル基のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単官能基化合物が5〜15個の炭素原子および0〜2個のヘテロ原子を有するアルキル鎖を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単官能基化合物がアルキルアミンである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記単官能基化合物がn‐オクチルアミンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の前記共重合可能な官能基が、アミノ基、ヒドロキシル基、および末端C=C結合、アリル基、アリルグリシジルエーテル基、エポキ
シド基、オキセタン基、内部C=C結合、末端C≡C基、内部C≡C基、末端共役‐C=C‐C=C‐基、またはそれらの置換誘導体を含む基のうちの1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
末端C=C結合を含む前記官能基が、ビニル基およびアクリル基の1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
無水物との結合を形成可能である前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の前記官能基が、その前記共重合可能な官能基と異なる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
nが10〜400の整数である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
nが32である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物がポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリエチレングリコールがPEG600である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールがジアミノプロピルPEGである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールがPEG(NH1500である、請求項11または13に記載の方法。
【請求項15】
前記単官能基化合物がビニルアミン、ヒドロキシルアルキルアクリル酸エステルおよびアミノアルキルアクリル酸アミドのうちの1つである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ビニルアミンが2‐プロペン‐1‐アミンまたはアミノプロピルビニルエーテルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が塩基の存在下で行われる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基が非求核塩基である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記塩基がリチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、1,5‐ジアザビシクロ[4.3.0]‐ノン‐5‐エン、1,8‐ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ‐7‐エン、ビス(トリメチルシリル)アミド、ヘキサメチルジシラザンおよびビスメシチルマグネシウムのうちの1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
両親媒性重合体を形成するための方法であって、前記両親媒性重合体が炭化水素骨格を含み、前記炭化水素骨格が(i)‐COOH側基、(ii)3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する主鎖を備える第1の脂肪族部分、ならびに(iii)共重合可能な基を備える第2の脂肪族部分を有し、前記第2の脂肪族部分はポリ(エチレンオキシド)を含む鎖を有し、
前記方法が化学式(I)
【化2】

(式中、nは10〜10000の整数であり、かつ
はHまたはメチルである)
の無水マレイン酸重合体を、
3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜2個のヘテロ原子を有するアルキル鎖を備える単官能基化合物であって、前記単官能基化合物の前記官能基が無水物との結合を形成することができる単官能基化合物、および
ポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールであって、前記ポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールの一方のみの末端基が化学式(I)の無水マレイン酸重合体と反応することができる、ポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール
と、適切な溶媒中で反応させるステップを備える、両親媒性重合体を形成するための方法。
【請求項21】
前記ポリエチレングリコールがPEG600である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールがジアミノプロピルPEGである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコールがPEG(NH1500である、請求項20または22に記載の方法。
【請求項24】
化学式(II)
【化3】

(式中、m,o,pのそれぞれは独立して選択される3〜400の整数であり、m+o+pの合計は10〜10000の範囲になるように選択され、
は3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する主鎖を持つ第1の脂肪族部分であり、
は3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される0〜40個のヘテ
ロ原子を有する主鎖を持つ第2の脂肪族部分であるとともに、Rが共重合可能な基を備える、化学式(II)の両親媒性重合体。
【請求項25】
前記部分Rの前記共重合可能な基が、アミノ基、ヒドロキシル基、および末端C=C結合を含む基のうちの1つである、請求項24に記載の両親媒性重合体。
【請求項26】
がアルキルアミノ基である、請求項24または25に記載の両親媒性重合体。
【請求項27】
がn‐オクチルアミノ基である、請求項26に記載の両親媒性重合体。
【請求項28】
がポリ(エチレンオキシド)を含む鎖が特徴である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
鎖を含む前記ポリ(エチレンオキシド)がポリエチレングリコールまたはジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分を含む、請求項28に記載の両親媒性重合体。
【請求項30】
前記ポリエチレングリコール部分がPEG600である、請求項29に記載の両親媒性重合体。
【請求項31】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分がジアミノプロピルPEGである、請求項29に記載の両親媒性重合体。
【請求項32】
前記ジアミノアルキル‐ポリエチレングリコール部分がPEG(NH1500である、請求項29に記載の両親媒性重合体。
【請求項33】
前記両親媒性重合体が請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法に従って得られる、請求項24〜32のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項34】
前記両親媒性重合体が少なくとも原則的に架橋を含まない、請求項24〜33のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項35】
m,o,pのそれぞれが独立して選択される3〜300の整数であり、m+o+pの合計が10〜400の範囲となるように選択される、請求項24〜39のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項36】
m,o,pのそれぞれが独立して選択される3〜40の整数であり、m+o+pの合計が10〜50の範囲となるように選択される、請求項24〜35のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項37】
m+o+pの合計が32である、請求項24〜36のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項38】
p/(m+o)の比が0〜20の範囲にある、請求項24〜37のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項39】
前記p/(m+o)の比が約1である、請求項38に記載の両親媒性重合体。
【請求項40】
(i)適切な溶媒にナノ結晶を提供するステップと、
(ii)前記ナノ結晶を請求項24〜39のいずれか1項に従った両親媒性重合体と接
触させるステップと、
(iii)前記両親媒性重合体および前記ナノ結晶の間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が生じるようにさせ、それによって水溶性ナノ結晶を形成するステップと
を備える、水溶性ナノ結晶の製造方法。
【請求項41】
前記提供されたナノ結晶が半導体材料である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記半導体材料が少なくとも1つの金属および半金属を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記提供されたナノ結晶が非極性溶媒に可溶である、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記提供されたナノ結晶がその表面上に非共有結合性相互作用を介して1つ以上の脂肪族側鎖を含む配位性溶媒を含む、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記配位性溶媒の少なくとも一部分が請求項24〜39のいずれか1項に記載の前記両親媒性重合体と交換される、請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記両親媒性重合体および前記ナノ結晶の間の前記非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が配位結合、カシミール相互作用、疎水性相互作用、水素結合、溶媒和力およびファンデルワールス相互作用のうちの少なくとも1つである、請求項40〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ナノ結晶が提供される溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項40〜46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ナノ結晶が提供される前記溶媒が非プロトン性非極性溶媒である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記非プロトン性非極性溶媒がミネラルオイル、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびテトラヒドロフランのうちの1つである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ナノ結晶が提供される前記溶媒が、前記両親媒性重合体および前記ナノ結晶の間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用が生じることを可能にした後に除去される、請求項40〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記両親媒性重合体が適切な溶媒中のナノ結晶に添加される、請求項40〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記両親媒性重合体が極性溶媒中に提供される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記両親媒性重合体が極性プロトン性溶媒中に提供される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記極性プロトン性溶媒が水である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ナノ結晶が量子ドットである、請求項40〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
水溶性ナノ結晶を形成するための方法において、
(i)適切な溶媒にナノ結晶を提供するステップと、
(ii)両親媒性重合体を持つ前記ナノ結晶を接触させるステップであって、前記両親媒性重合体が炭化水素骨格を含み、前記炭化水素骨格が(ア)極性側基、(イ)3〜20個の炭素原子およびN,O,S,Se,Siからなる群から選択される0〜3個のヘテロ原子を有する主鎖を備える第1の脂肪族部分、ならびに(ウ)3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される0〜40個のヘテロ原子を有する主鎖を備える第2の脂肪
族部分を有し、前記第2の脂肪族部分が共重合可能な基を備える、両親媒性重合体を持つ前記ナノ結晶を接触させるステップと、
(iii)前記両親媒性重合体および前記ナノ結晶の間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用によって水溶性ナノ結晶を形成するステップと
を備える方法。
【請求項57】
前記第2の脂肪族部分の前記共重合アリルグリシジルエーテル基、エポキシド基、オキセタン基、内部C=C基、末端C≡C基、内部C≡C基、末端共役‐C=C‐C=C‐基またはこれらの置換誘導体のうちの1つである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の脂肪族部分がアルキルアミド基である、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1の脂肪族部分がn‐オクチルアミド基である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記両親媒性重合体が請求項24〜39のいずれか1項に記載の両親媒性重合体である、請求項56〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップをさらに含む、請求項56〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップが、前記両親媒性重合体が少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物と反応させることによってもたらされ、
前記少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物の2つ以上の官能基が前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基と架橋を形成することができる、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップが、前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基の前記少なくとも2つの官能基を有する化合物との共重合が生じるようにすることによってもたらされる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物の少なくとも1つの官能基が、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン、エーテル基、チオエーテル基、エポキシ基、ニトロ基、トリハロシリル基、末端C=C基、および末端C≡C基のうちの1つである、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物が水溶性である、請求項62〜64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物が、N‐ビニルピロリドン、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アミド、またはビニルエーテル誘導体のうちの1つである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記アクリル酸アミドがN‐イソプロピルアクリルアミドである、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記両親媒性重合体が少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応するステップが極性プロトン性溶媒中で行われる、請求項63〜67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
前記極性プロトン性溶媒が水である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップが、前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が互いに架橋重合できるようにすることによってもたらされる、請求項63に記載の方法。
【請求項71】
前記共重合可能な基が少なくとも2つの官能基を有する(単量体)化合物を加えずに互いに架橋重合できるようにする、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップが、適切な開始剤を加えるステップを含む、請求項61〜71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が架橋されることを可能にするステップが、複数の水溶性ナノ結晶が埋め込まれている重合体網目構造の前記形成を可能にするステップを含む、請求項61〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記両親媒性重合体中の前記ナノ結晶の量が約0.01%(v/v)から約50%(v/v)までの範囲である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ナノ結晶が量子ドットである、請求項56〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
水溶性ナノ結晶であって、前記水溶性ナノ結晶がその表面上に非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用を介して請求項24〜39のいずれか1項に記載の両親媒性重合体を含む水溶性ナノ結晶。
【請求項77】
請求項56〜72のいずれか1項に記載の前記方法によって得られる、請求項66に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項78】
水溶性ナノ結晶であって、前記水溶性ナノ結晶が請求項40〜55のいずれか1項に記載の前記方法によって得られる、水溶性ナノ結晶。
【請求項79】
ナノ結晶が埋め込まれている重合体網目構造の前記形成のための請求項76〜78のいずれか1項に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項80】
前記両親媒性重合体中のナノ結晶の量が約0.01%(v/v)から約50%(v/v)までの範囲である、ナノ結晶が埋め込まれている重合体網目構造の前記形成のための請求項79に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項81】
前記両親媒性重合体がその表面上に側鎖を備え、前記側鎖が3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される0〜40個のヘテロ原子を備えるアルキル鎖を備え、前
記側鎖が共重合可能な基を備え、
前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が架橋され、それによって重合体網目構造を設ける、請求項76〜79のいずれか1項に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項82】
前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が共重合によって少なくとも2つの官能基を有する化合物と架橋され、
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の2つ以上の官能基が前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基との結合を形成することができる、請求項81に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項83】
少なくとも2つの官能基を有する化合物の少なくとも1つの官能基がアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン、エーテル基、チオエーテル基、エポキシ基、ニトロ基、トリハロシリル基、末端C=C基、および末端C≡C基のうちの1つである、請求項82に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項84】
前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基がクロス共重合によって互いに架橋される、請求項83に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項85】
前記水溶性ナノ結晶が請求項56〜70のいずれか1項の前記方法によって得られる、請求項81〜84のいずれか1項に記載の水溶性ナノ結晶。
【請求項86】
炭化水素骨格を含む両親媒性重合体であって、前記炭化水素骨格が(i)極性側基ならびに(ii)3〜80個の炭素原子およびN,Oのいずれかから選択される0〜40個のヘ
テロ原子を有するアルキル鎖を備える側鎖を有し、前記側鎖が、重合体網目構造の形成のための共重合可能な基を備えている、炭化水素骨格を含む両親媒性重合体。
【請求項87】
前記共重合可能な基が重合体網目構造の前記形成のためのアミノ基、ヒドロキシル基、および末端C=C結合を含む基のうちの1つである、請求項86に記載の両親媒性重合体。
【請求項88】
前記共重合可能な基が前記側鎖の頭部基である、請求項86または87に記載の両親媒性重合体。
【請求項89】
前記両親媒性重合体が重合体網目構造の前記形成のための請求項24〜39のいずれか1項に記載の両親媒性重合体である、請求項86〜88のいずれか1項に記載の両親媒性重合体。
【請求項90】
重合体網目構造の前記形成における、請求項24〜39のいずれか1項に記載の両親媒性重合体の使用。
【請求項91】
前記両親媒性重合体が埋め込まれたナノ結晶を含む、請求項90に記載の使用。
【請求項92】
前記両親媒性重合体に埋め込まれたナノ結晶の量が約0.01%(v/v)から約50%(v/v)までの範囲である、請求項91に記載の使用。
【請求項93】
ナノ結晶が、前記両親媒性重合体および前記ナノ結晶の間の非共有結合性相互作用または共有結合性相互作用を介して前記重合体網目構造中に埋め込まれている、請求項91または92に記載の使用。
【請求項94】
前記両親媒性重合体が請求項1〜23のいずれか1項の方法によって得られる、請求項90〜93のいずれか1項に記載の使用。
【請求項95】
前記重合体網目構造が前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が架橋されることを可能にすることによって得られる、請求項90〜94のいずれか1項
に記載の使用。
【請求項96】
前記重合体網目構造が前記両親媒性重合体を少なくとも2つの官能基を有する化合物と反応させることによって得られ、
前記少なくとも2つの官能基を有する化合物の2つ以上の官能基が前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基との結合を形成することができる、請求項95に記載の使用。
【請求項97】
前記共重合可能な基の架橋を可能にするステップが、前記両親媒性重合体の前記第2の脂肪族部分の前記共重合可能な基が互いにクロス重合を可能にすることによってもたらされる、請求項95に記載の使用。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3A】
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【図3B−C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図10】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−539320(P2010−539320A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525783(P2010−525783)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000356
【国際公開番号】WO2009/038544
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】