説明

両面テープ用原紙及び両面テープ

【課題】家電の部品固定用の両面テープにおいて、リサイクルのための解体時において、破れることなく、また糊残りすることなく剥がせる両面テープ用原紙を開発する。
【解決手段】両面テープ用原紙の原料を木材パルプ100%とし当該パルプをNBKPとLBKPを100:0〜80:20までの比率で混合して、ろ水度を600〜650mlCSFに叩解することで、吸水度90mm/10分以上で、縦の引っ張り強さが1.5kN/m以上、横の引っ張り強さが0.5kN/m以上に調整されたことを特徴とする両面テープ用原紙を基材として、水系の粘着剤を両面に塗工し、厚み調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面テープ用原紙及び両面テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年環境問題から、家電リサイクル法に代表されるように家電製品のリサイクルが重要視
されている。
【0003】
一方では家電リサイクル工場では各社が製造した様々なモデルの家電製品を人海戦術で解
体作業しており、解体時間の短縮が収益性の鍵となっている。
【0004】
またテレビや携帯電話やパソコンのようにさらなる薄型化に各家電メーカーが開発にしの
ぎを削っており、家電製品の組み立て固定用に使われるネジは薄型化とリサイクルし易く
するため、両面テープに置き換わってきており、色々な両面テープが提案されている。
【0005】
また、VOC問題から溶剤系の粘着剤から水系のエマルジョン系の粘着剤が開発され、置
き換えが検討されている。そのため、基材についても、溶剤系の粘着剤と相性の良かった
疎水性のPET不織布等では基材として吸水度と引っ張り強さを満たせず、剥がすときに
糊残りなく基材破れもない両面テープとしては不十分だった。水系の粘着剤と相性の良い
親水性の基材の開発が待ち望まれている。理由は粘着剤と基材の結合力を強くしないと剥
がしたときに糊のこりする可能性があるからである。
【0006】
粘着剤に水溶性のものを用い、リサイクル時に水に濡らし、はがし易くするという両面テ
ープが提案されている。(特許文献1)
【0007】
また、紫外線に強い粘着剤を作製し、経時で基材への粘着力が上がり過ぎないように工夫
した両面テープが提案されている。(特許文献2)
【0008】
また、基材に用いる不織布の層間破壊強度を調整し、特定の粘弾性をもつ粘着剤を組み合
わせた両面テープが提案されている。(特許文献3)
【0009】
また、特定の物性値を有するマニラ麻パルプのみからなる不織布と特定の糊残りしにくい
アクリル系粘着剤を組み合わせた両面テープが提案されている。(特許文献4)
【0010】
麻パルプを原材料に使用すると水への分散性が悪く、離解するのに時間がかかり生産性を
損ねる場合があり、またコスト高になる場合がある。またできた両面テープ用基材として
吸水度を十分高くできない可能性がある。
【0011】
また、基材にバインダーを含まない不織布を用い、粘着剤を含浸させて作製した両面テー
プが提案されている。(特許文献5)
【0012】
また、粘着剤層にあらかじめ加熱発泡型剤を添加しておき、リサイクル時に加熱すること
により、発泡させはがし易くする両面テープが提案されている。(特許文献6)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開H07−70527号公報
【特許文献2】特許4048776号
【特許文献3】特開2003−253228号公報、
【特許文献4】特許3647546号
【特許文献5】特開2006−143856号公報
【特許文献6】特開2008―120903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、水系の粘着剤に合った両面テープ用原紙を開発することにより、家電のリサイ
クル時にテープが破れることなく、糊残りすることなく、剥がせることにより、解体作業
がスムーズにできる部品固定用両面テープの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、両面テープ用原紙の原料を木材パルプ100
%とし当該パルプをNBKPとLBKPを100:0〜80:20までの比率で混合して
、ろ水度を600〜650mlCSFに叩解することで、吸水度を90mm/10分以上
として、縦の引っ張り強度を1.5kN/m以上、横の引っ張り強度を0.5kN/m以
上とした両面テープ原紙に水系の粘着剤を両面塗工した後に厚み調整して作製することに
より、リサイクル時に破れることなく、糊残りすることなく剥がせる両面テープを作製で
きることを見い出し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、 (1)木材パルプ
100%で構成された両面テープ用原紙において、吸水度90mm/10分以上で、縦の
引っ張り強さが1.5kN/m以上、横の引っ張り強さが0.5kN/m以上に調整され
たことを特徴とする両面テープ用原紙、 (2)(1)の両面テープ用原紙を用い水系粘
着剤を両面に塗工して作製された両面テープ、を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、両面テープ用原紙の材料に木材パルプを用い、当該パルプをNBKPと
LBKPを100:0〜80:20までの比率で混合して、ろ水度を600〜650ml
CSFに叩解することで、吸水度を90mm/10分以上として、縦の引っ張り強度を1
.5kN/m以上、横の引っ張り強度を0.5kN/m以上とした両面テープ用原紙を基
材として、水系の粘着剤を両面に塗工し、厚み調整して得られる両面テープはリサイクル
時に破れることなく、糊残りすることなく剥がせる両面テープを作製することができる。

【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。 本発明で用いられる原紙は、木材パルプを原材料とす
るものでのである。 使用できるパルプとしては、NBKP、LBKPが挙げられるが、
特にNBKP単独或いはNBKPとLBKPを混合して使用することが好ましい。比率と
してはNBKP/LBKP=100:0〜80:20が望ましい。これよりもLBKPの
比率を増やすと引っ張り強度が十分得られない場合がある。
【0018】
パルプはろ水度を600〜650mlCSFに叩解する。叩解する方法としては公知のも
のであれば特に限定するものでなく、例としてはビーターやダブルディスクリファナーが
挙げられる。
【0019】
木材パルプのろ水度が600mlCSFより小さいと、吸水度が低くなり、水系の粘着剤
の紙への浸透が悪くなり、650mlCSFより大きいと引っ張り強さが弱くなる可能性
がある。
【0020】
また公知の製紙薬品を内添する。例えば紙力増強剤であるポリアクリルアミドエピクロロ
ヒドリンやCMCやカチオンデンプンがある。
【0021】
上記の方法で作製した紙料を公知の抄造法で紙にする。具体的には長網抄紙機や円網抄紙
機や傾斜短網抄紙機による抄造法がある。
【0022】
吸水度が90mm/10分未満となると、水系粘着剤を塗工したときに、紙への浸透が十
分でなく、紙の表面に粘着層を形成したり、或いは紙と粘着剤の結合力が十分でなく、剥
がすときに基材である紙から粘着剤だけが取り残され糊のこりの原因となる場合がある。

【0023】
引っ張り強度の縦が1.5kN/m未満及び横が0.5kN/m未満の場合は両面テープ
を剥がすときに紙破れする可能性がある。
【0024】
上記の方法で作製した両面テープ原紙に水系エマルジョン粘着剤を両面に塗工する。塗工
する方法としてはエアーナイフやグラビアロールやワイヤーバーが挙げられる。水系エマ
ルジョン粘着剤としてはアクリル系粘着剤が挙げられる。例示としてボンコートW―56
9(DIC製)がある。
【0025】
粘着剤塗工液には硬化剤を粘着剤100重量部に対し、1〜5重量部添加することが好ま
しい。硬化剤としてはイソシアネート系硬化剤が挙げられる。粘着剤塗工量は両面併せて
固形分で40〜100g/mが望ましい。
【0026】
粘着剤を塗工した後の紙厚調整には2本のロールの間を通して調整するキャレンダー方式
が挙げられる。上盤と下盤からなるプレス機で厚み調整してもよい。両面テープ原紙と糊
をより一体化すれば特に規定はないが、厚み調整した両面テープの密度が0.90g/c
以上となるよう厚みを調整することが望ましい。
【実施例】
【0027】
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。 本実施例、比較例における評価は、以下
の方法によった。(1)ろ水度JIS P8121に基づき測定した。(2)米坪JIS
P8124に基づき測定した。(3)厚さ、密度JIS P 8118に基づき測定し
た。
(4)吸水度
JIS P 8141に基づき測定した(10分間)。
(5)引っ張り強度
JIS P8113に基づき測定した。
(6)両面テープの粘着力
市販の発泡PP板(厚さ1mm)と作製した両面テープを貼り合わせ、プレス機で20℃
x3分間x0.1kN/cmの条件でプレスした。このサンプルを巾15mmに裁断し
、テンシロン万能試験機で発泡PP板との粘着力を測定した。
(7)糊のこり、紙破れ作製した両面テープを用いて市販の硝子板(3mm厚)と発泡P
P板(厚み1mm)を貼り合わせた。これをプレス機で20℃x3分間x0.5kN/c
の条件でプレスした。このプレスしたサンプルを恒温恒室器の中に入れ、60℃x7
0%RHの環境下に5日間置いた。恒温恒室器から取り出し、20℃x50%RHの環境
に1日放置した。その後、手で硝子板から両面テープを剥がし、糊のこりと紙破れを目視
評価した。糊のこり、紙破れない場合は○、一部に糊のこり紙破れがあった場合は△、硝
子全面に糊のこりや紙破れがあった場合Xとした。発泡PP板側も同様な方法で評価した

【0028】
(実施例1) 針葉樹樹晒しクラフトパルプ(NBKP)90重量部と広葉樹晒しクラフ
トパルプ(LBKP)10重量部を混合しダブルディスクリファイナーで叩解し、650
mlCSFとした。これに湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部
、CMC0.5重量部、カチオンデンプン0.5重量部を添加して、原料とした。これを
長網抄紙機で45g/mで抄造して両面テープ用原紙を得た。
【0029】
(実施例2)針葉樹樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100重量部をダブルディスクリ
ファイナーで叩解し、644mlCSFとした。これに湿潤紙力剤:ポリアクリルアミド
エピクロロヒドリン1重量部、CMC0.5重量部を添加して、原料とした。これを長網
抄紙機で53g/mで抄造して両面テープ用原紙を得た。
【0030】
(実施例3)実施例2と同じ方法で米坪を28g/mで抄造して両面テープ用原紙を得
た。
【0031】
(比較例1)針葉樹樹晒し亜硫酸パルプ(NBSP)50重量部と広葉樹晒し亜硫酸パル
プ(LBSP)50重量部を混合しダブルディスクリファイナーで叩解し、656mlC
SFとした。これに湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、CM
C0.5重量部を添加して、原料とした。これを長網抄紙機で42g/mで抄造して原
紙を得た。
【0032】
(比較例2)PET繊維100%で製造された市販の湿式不織布の目付12g/mを比
較例2とした。
【0033】
(比較例3)PET繊維100%で製造された市販の湿式不織布の目付62g/mを比
較例3とした。
【0034】
(比較例4)麻パルプ70重量部と針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)30重量部を
混合しダブルディスクリファイナーで叩解し、607mlCSFとした。これに湿潤紙力
剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン1重量部、CMC0.5重量部を添加して、
原料とした。これを、円網抄紙機で40g/mで抄造して原紙を得た。
【0035】
(実施例4) 離型紙(TPXラミ紙)にアクリル系粘着剤(水系エマルジョン、DIC
製ボンコートW−569)99重量部/イソシアネート系架橋剤(DIC製、CR−60
N)1重量部を混ぜた塗工液をワイヤーバーで塗工し、実施例1で作製した両面テープ用
原紙と貼り合わせた。テープ原紙/粘着剤塗工液/離型紙からなるラミ紙を熱風乾燥機に
入れ、120℃x1分間乾燥した。乾燥後、テープ原紙の粘着剤が塗られていない面に更
に前記の粘着剤塗工液をワイヤーバーで塗工し、120℃x1分乾燥した。乾燥したラミ
紙の上に離型紙を貼り合わせ、テストキャレンダーで圧密処理をして両面テープを得た。

【0036】
(実施例5)実施例2の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0037】
(実施例6)実施例3の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0038】
(比較例5)比較例1の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0039】
(比較例6)比較例2の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0040】
(比較例7)比較例3の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0041】
(比較例8)比較例4の両面テープ用原紙を用いたほかは、実施例4と同じ方法で両面テ
ープを得た。
【0042】
(表1)
両面テープ用原紙の物性表

【0043】
(表2)
両面テープの物性表

【産業上の利用可能性】
【0044】
以上本発明によると、家電の部品固定用に使われる両面テープにおいて、リサイクルする
ための解体時に両面テープが破れることなく、また糊残りすることなく容易に剥がせるこ
とにより、家電の解体作業を効率的に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプ100%で構成された両面テープ用原紙において、吸水度が90mm/10分以上で、縦の引っ張り強度が1.5kN/m以上、横の引っ張り強度が0.5kN/m以上に調整されたことを特徴とする両面テープ用原紙。
【請求項2】
請求項1の両面テープ用原紙を用い水系粘着剤を両面に塗工して作製された両面テープ。


【公開番号】特開2010−216035(P2010−216035A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64039(P2009−64039)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】