説明

両面印刷装置

【課題】用紙の両面に印刷可能な両面印刷装置において、印刷面の擦れや裏移りを防止すると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にする。
【解決手段】両面印刷装置1は、用紙の一面に印刷する第1の印刷手段3と、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部4と、用紙の他面に印刷する第2の印刷手段5と、第1の印刷手段3により一面を印刷された用紙を貯留部4に搬送する第1の搬送手段7と、貯留部4に貯留された複数枚の用紙を順次第2の印刷手段5に搬送する第2の搬送手段8とを備える。貯留部4が、一面が印刷された複数枚の用紙を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の表面及び裏面に印刷を行う両面印刷装置に関し、特に表面に印刷したインクの乾燥時間を確保可能な両面印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点等から印刷に使用する用紙の使用量を低減することが望まれており、そのために用紙の表面及び裏面に印刷を行う両面印刷が盛んに行われている。両面印刷を行う両面印刷装置としては、例えば孔版印刷を行う両面孔版印刷装置が提案されており、この装置の一例として、例えば穿孔製版された孔版原紙を外周面に巻装した円筒状の第1ドラムと第2ドラムを隣接して配設し、第1ドラムで用紙の表面に印刷を行い、表面が印刷された用紙を第2ドラムに搬送して該第2ドラムで用紙の裏面に印刷を行う装置がある。
【0003】
上記のような両面印刷装置の場合、表面に印刷が行われた用紙に対してさらに裏面に印刷を行うので、表面に印刷後裏面に印刷を行うための搬送中及び裏面の印刷中に、表面に印刷されたインクが十分に乾いていないことにより用紙が汚れてしまう虞れがあった。
【0004】
そこで、表面印刷が終了した用紙を積載台に一時的に所定時間貯留し、その後貯留した順番に搬送して裏面を印刷することにより、積載台にてインクを乾燥させるようにした両面印刷装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−29375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の両面印刷装置は、表面のインクがまだ乾燥していない用紙を積載台に積み重ねており、印刷面の擦れや裏移り等により用紙が汚れてしまう虞がある。またインクが多く転写された用紙は紙中水分が高くなるため、用紙表面の密着性が高くなり、積み重ねられた用紙を一枚ずつ取り出して搬送するときに多重搬送が起こり易くなったり、吸湿による用紙の波打ちによって空搬送が起こり易くなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、印刷面の擦れや裏移りを防止すると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にした面印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の両面印刷装置は、用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、
該一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、
前記用紙の他面に印刷する第2の印刷手段と、
前記第1の印刷手段により一面が印刷された用紙を順次前記貯留部に搬送する第1の搬送手段と、
前記貯留部に貯留された複数枚の用紙を順次前記第2の印刷手段に搬送する第2の搬送手段とを備え、
前記貯留部が、前記一面が印刷された複数枚の用紙を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の両面印刷装置は、前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記保持機構が、前記搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で前記搬入位置から前記搬出位置に向けて移動させるものであることが好ましい。
【0009】
また本発明の両面印刷装置は、前記保持機構が、前記複数枚の用紙を立たせると共に左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するようにカールさせた状態で、各用紙の下端を互いに所定間隔を空けて重ねて支持するものであることが好ましい。
【0010】
この場合、前記保持機構が、前記複数枚の用紙を立たせた状態で各用紙の下端を互いに所定間隔を空けて支持する下端支持手段と、該下端支持手段により下端が支持された前記用紙に対して左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するカールを付与するカール付与手段とを備えてなることが好ましい。
【0011】
またこの場合、前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記下端支持手段が、前記搬入位置に搬入された前記用紙の下端を支持して該用紙を順次前記搬出位置に向けて移動させるものであることが好ましい。
【0012】
本発明の両面印刷装置においては、前記下端支持手段が、下端を支持した前記用紙を該用紙の前記一面が向く方向に移動させるものであることが好ましい。
【0013】
また本発明の両面印刷装置においては、前記下端支持手段が、所定間隔を空けて前記用紙の移動方向に配列された複数個の凹部を備え、該凹部で前記用紙の下端を支持すると共に、該凹部を前記用紙の移動方向に移動させることで前記用紙を移動させるものであってもよい。
【0014】
また前記下端支持手段が、前記用紙の移動方向に延びるネジ棒であって、該ネジ棒に形成されているネジ溝で前記用紙の下端を支持すると共に、該ネジ棒を回転させることで前記用紙を移動させるものであってもよい。
【0015】
また前記下端支持手段が、所定間隔を空けて前記用紙の移動方向に配列された複数個の前記用紙の下端を把持する開閉可能なクランプ部を備え、該クランプ部で前記用紙の下端を把持すると共に、該クランプ部を前記用紙の移動方向に移動させることで前記用紙を移動させるものであってもよい。
【0016】
また本発明の両面印刷装置は、前記カール付与手段が、前記搬入位置に搬入される用紙をその左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するようにカールさせるべく、搬入される前記用紙の左右側部を中央部よりも前記一面側に向けて押し出すガイド部材であることが好ましい。
【0017】
また本発明の両面印刷装置は、前記用紙の前記一面の印刷率に基づいて、前記用紙の前記貯留部への搬入時から前記貯留部からの搬出時までの貯留時間を制御する制御手段を備えていることが好ましい。
【0018】
なお本発明において「印刷率」は、用紙の一面の全面積に対する実印刷面積の割合を意味するものであり、例えば孔版印刷の場合、第1の印刷手段により印刷する画像を表わす白黒の二値画像データ(黒画像データは孔版原紙に穿孔を行う画像データ、白画像データは孔版原紙に穿孔を行わないデータ)の全画像データ数に対する黒画像データ数の割合で示すことができる。
【0019】
またこの場合、前記制御手段が、前記用紙の前記搬入位置から前記搬出位置への移動速度を制御するものであることが好ましい。
【0020】
また本発明の両面印刷装置は、前記第1の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内に搬入する吸引部を備え、及び/又は、前記第2の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内から搬出する吸引部を備えると共に、
前記第1の搬送手段及び/又は第2の搬送手段の吸引部に吸引された用紙を該吸引部から剥離する剥離手段を備えていることが好ましい。
【0021】
この場合、前記下端支持手段が、間欠的に前記用紙を移動させるものであり、
前記下端支持手段による前記用紙の間欠送りに同期して前記剥離手段を剥離動作させる剥離動作制御手段を備えていることが好ましい。
【0022】
また本発明の両面印刷装置においては、前記ガイド部材が、該ガイド部材の位置を前記用紙の移動方向に調整可能に構成されていることが好ましい。
【0023】
なお、本発明における「第1の印刷手段」は、用紙にインクを与えて印刷を行なうものであればどのような印刷方式の印刷手段でも良く、例えば孔版印刷手段やインクジェット印刷手段等を採用し得る。また、本発明における「第2の印刷手段」もその印刷方式は何ら限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の保持機構における「用紙を立たせる」とは、用紙を重力方向に立たせることを意味し、必ずしも重力方向にまっすぐ立たせる必要はなく、重力方向に対して斜めに立たせるものも含む意味である。斜めに立たせる場合には、重力方向に対して5゜〜45゜の範囲で立たせるのが良く、10゜〜30゜の範囲で立たせるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の両面印刷装置によれば、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部が、一面が印刷された複数枚の用紙を互いに所定間隔空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えているので、印刷された面つまりインクが転写された面を他の用紙に接触させることなく複数枚の用紙を保持し、かつ貯留することによりインクを乾燥させることができるので、印刷面の擦れや裏移りを防止できると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態の両面孔版印刷装置1の概略構成図、図2は図1の両面孔版印刷装置1の要部詳細拡大図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2の矢印B方向から見た図である。
【0027】
本実施形態の両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、装置ハウジング10と、装置ハウジング10の一側面(図1中、左側面)に設けられ、印刷媒体である複数枚の用紙P1が積載された給紙台2と、給紙台2から給紙される用紙P1の一面Aに印刷する第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)3と、一面Aが印刷された用紙P2を複数枚貯留する貯留部4と、貯留部4に貯留されていた用紙P2の他面Bに印刷する第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)5と、装置ハウジング10の他側面(図1中、右側面)に設けられ、両面すなわち一面A及び他面Bが印刷された用紙P3を積載する排紙台6とを備えている。
【0028】
また両面孔版印刷装置1は、給紙台2から第1の孔版印刷部3及び第1の孔版印刷部3から貯留部4内部へ用紙P1、P2を搬送する第1の搬送部(第1の搬送手段)7と、貯留部4内部から第2の孔版印刷部5及び第2の孔版印刷部5から排紙台6まで用紙P2、P3を搬送する第2の搬送部(第2の搬送手段)8とを備えている。
【0029】
第1の搬送部7は装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1の装置ハウジング10側の上方に設けられた第1ピックアップローラ71と、第1ピックアップローラ71によってピックアップされた用紙P1を所定のタイミングにて第1の孔版印刷部3に搬送する第1タイミングローラ72と、第1の孔版印刷部3により上側に位置する一面Aが印刷された用紙P2を円弧状の軌跡に沿って反転させて一面Aを下側に位置させる反転装置73と、反転装置73にて反転された用紙P2を貯留部4内部に搬入して後述する下端支持部41に支持させる搬入装置74とで概略構成されている。
【0030】
第2の搬送部8は同じく装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、貯留部4内部の後述する下端支持部41から用紙P2を搬出する搬出装置81と、搬出装置81により搬出される用紙P2をピックアップする第2ピックアップローラ82と、第2ピックアップローラ82によってピックアップされた用紙P2を順次所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に搬送する第2タイミングローラ83と、第2の孔版印刷部5により他面Bが印刷された、すなわち両面が印刷された用紙P3を排紙台6に向けて搬出する排出装置84とで概略構成されている。
【0031】
搬入装置74、搬出装置81及び排出装置84は、それぞれ所定間隔を空けて配置された一対のプーリー74a、81a、84aと、一対のプーリー74a、81a、84aの外周に掛け渡されそれぞれプーリー74a、81a、84aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト74b、81b、84bと、吸引用のファン74c、81c、84cとを備えている。
【0032】
搬送ベルト74b、81b、84bは、例えば図4に示す搬送ベルト74bのように表面に複数の孔74b’81b’、84b’(81b’、84b’は図示せず)が設けられており、搬送ベルト74b、81b、84bとプーリー74a、81a、84aとは、用紙P側に位置する搬送ベルト74b、81b、84bの少なくとも上記孔74b’、81b’、84b’を含む一部のみを外部に露出させて、例えば図3に示すような略密閉されたケース74d、81d、84d(84dは図示せず)の中に配設されている。
【0033】
ファン74c、81c、84cは、各々のケース74d、81d、84dに取り付けられ、ケース74d、81d、84d内部の空気を外部に排出することにより、搬送ベルト74b、81b、84bの孔74b’、81b’、84b’に吸引力を発生させる。
【0034】
このように構成された各装置74、81、84は、図示しないモータによってプーリー74a、81a、84aを回転させて搬送ベルト74b、81b、84bを移動させると共にファン74c、81c、84cを回転させて孔74b’ 、81b’、84b’に吸引力を発生させることにより、用紙Pを吸引しながら搬送する。
【0035】
また反転装置73は、図2に示す如く、円弧状の軌跡に沿って配設された4つのプーリー73aと、この4つのプーリー73aの外周に掛け渡されプーリー73aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト73bと、吸引用のファン73cとを備えており、上記搬送装置74、81、84と略同様に構成されている。
【0036】
なお本実施形態の搬入装置74、搬出装置81、排出装置84及び反転装置73は、上記の構成としたが、例えば搬送ベルト73b、74b、81b、84bの内側面にファン73c、74c、81c、84cを取り付けて吸引するようにしてもよいし、用紙Pを搬送可能であればどのような構造であってもよい。
【0037】
また搬入装置74は、一対のプーリー74aの外周に掛け渡された搬送ベルト74b及びファン74cを並列に複数備えて、これらで一枚の用紙を吸引して搬送するようにしてもよい。搬出装置81及び/又は排出装置84も同様にすることができる。
【0038】
第1の孔版印刷部3は、図1に示す如く、第1ドラム31と第1プレスローラ32とからなり、第1ドラム31の下流側には図2に示す如く、用紙P2を剥ぎ取る剥取爪33が設けられている。第1ドラム31は内部に図示しない第1インクカートリッジを有し、第1ドラム31の外周面には入力された画像データに基づいて図示しない製版部により感熱穿孔済の、つまり製版された孔版原紙M1が巻装されている。そして第1タイミングローラ72により第1ドラム31の回転に同期して第1ドラム31と第1プレスローラ32との間に送り込まれた用紙P1の一面Aすなわち上側に位置する上面Aが第1プレスローラ32によって孔版原紙M1に押し付けられることにより用紙P1の一面Aに対して孔版印刷が行われる。
【0039】
第2の孔版印刷部5は、上記第1の孔版印刷部3と同様に、第2ドラム51と第2プレスローラ52とからなり、第2ドラム51の下流側には用紙P3を剥ぎ取る剥取爪53が設けられている。第2ドラム51は内部に図示しない第2インクカートリッジを有し、第2ドラム51の外周面には製版された孔版原紙M2が巻装されている。そして一面Aが印刷され、さらに反転装置73によって反転された後、貯留部4を経て、第2タイミングローラ83により第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に送り込まれた用紙P2の他面Bすなわち上側に位置する上面Bが第2プレスローラ52によって孔版原紙M2に押し付けられることにより用紙P2の他面Bに対して孔版印刷が行われる。
【0040】
貯留部4は、第1の孔版印刷部3により一面Aが印刷された用紙P2を、第2の孔版印刷部5で用紙P2の他面Bに印刷を行なう前に複数枚一時的に貯留するものであり、本発明において特徴的なのは、この貯留部4が、この複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることである。
【0041】
この保持機構は、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するものであればどのような構成のものでも良く、その具体的構成としては、用紙P2を立たせてその下端をそれぞれ支持する構成、用紙P2を1枚1枚それぞれ把持する構成、あるいは、用紙P2を1枚1枚それぞれ吸着保持する構成等、種々の構成を採用することができる。
【0042】
貯留部4は、第1の搬送部7により搬送されてきた用紙P2が搬入される搬入位置と、貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、保持機構が、搬入位置に1枚ずつ搬入された各用紙P2を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させ、搬出位置から1枚ずつ搬出して他面Bの印刷に供することができるものであることが好ましい。
【0043】
本実施形態における貯留部4は、図1に示す如く、第1の搬送部7から送られてきた用紙P2の搬入口および第2の搬送部8に用紙P2を受け渡す用紙P2の搬出口を上方にして斜めに配設されており、搬入された一面Aが印刷済みの用紙P2を複数枚互いに所定間隔を空けて重ねた状態で斜めに立たせて、かつ左右方向(斜めに立った状態の用紙P2の上下方向に直角な方向)の断面が一面Aを内側にして湾曲するようにカールさせた状態で保持する保持機構を備えている。
【0044】
本実施形態の保持機構は、図2に示す如く、用紙P2の印刷された一面Aを斜め下方から支える支持体である支持板40aと、支持板40aの両側面(図2中、手前側と奥側)にそれぞれ支持板40aと略直角に設けられて支持板40aに用紙P2を導く側面ガイド体である側面ガイド板40bと、用紙P2の未印刷の他面Bを斜め上から覆う覆板40cと、複数枚の用紙P2をそれらの下端を互いに所定間隔を空けて搬入順に順次支持する下端支持部(下端支持手段)41と、下端支持部41により下端が支持された用紙P2に対してその左右方向の断面が、図3及び図7に示す如く、印刷が施された一面Aを内側にして湾曲するカールを付与するカール付与部(カール付与手段)42とを備えている。
【0045】
なお、図3に示す如く、覆板40cには上述した搬入装置74のケース74d、支持板40aには上述した搬出装置81のケース81dがそれぞれ取り付けられて、覆板40c及び支持板40aにそれぞれ設けられた図示しない開口から搬送ベルト74b及び搬送ベルト81bがそれぞれ露出するように構成されている。図5に図2の下端支持部41の拡大詳細図、図6に図2の要部拡大詳細斜視図、図7に貯留部4内での用紙P2の状態を示す図をそれぞれ示す。なお図5では便宜上、搬送ベルト41bの片側の外周面の詳細を省略している。
【0046】
下端支持部41は、図2、図5に示す如く、間隔を空けて配置された一対のプーリー41aと、この一対のプーリー41aの外周に掛け渡されて、図示しないモータによるプーリー41aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト41bとを備え、搬送ベルト41bには、搬送ベルト41bの外周面に立設し、搬送ベルト41bの全周に亘って所定間隔空けて配列された複数のプレート41cが設けられている。このように構成された下端支持部41は、一対のプーリー41aを結ぶ方向つまり搬送ベルト41の搬送移動方向(図5中の矢印F方向、つまり用紙P2を支持して搬送する役割を担うプーリー41aの上側を移動する搬送ベルト部分の移動方向)が、用紙P2の搬入方向(矢印D方向)及び搬出方向(矢印E方向)と略直交するように配設されている。
【0047】
また複数のプレート41cは、図5に示す如く、それぞれ搬送ベルト41bの搬送移動方向上流側に隣接するプレート41cに向けて延びる金属片等からなる弾性変形可能な爪片41eを備えている。隣り合う一対のプレート41c、41cで構成されるそれぞれの凹部41dに、用紙P2が印刷された一面Aを斜め下側(図2及び図5中、右側)にした状態で一枚ずつ挿入されたときに、凹部41dに挿入された用紙P2の下端中央を上流側のプレート41cと下流側のプレート41cの爪片41eとで把持することにより複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するように構成されている。このとき下流側のプレート41cの爪片41eと上流側のプレート41cとが1枚の用紙P2を把持するクランプ部41fとなる。
【0048】
クランプ部41fは、直線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接するプレート41c、41cが略平行となり、下流側のプレート41cの爪片41eの先端(下端)と上流側のプレート41cとの間隔が用紙P2の厚さより小さくなることから、凹部41dに用紙P2が挿入された場合、爪片41eは用紙P2によって該爪片41eが設けられているプレート41c側に弾性変形せしめられ、その結果爪片41eは用紙P2を上流側のプレート41cに弾性的に押し付けて用紙P2を把持することができ、プーリー41a上に位置して曲線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接するプレート41c、41cが平行ではなくなり、先端(上端)側がより離れた状態となって、爪片41eの先端(下端)と上流側のプレート41cとの間隔が用紙P2の厚さより大きくなり用紙P2を解放することができる。
【0049】
本貯留部4においては、第1の搬送部7によって搬送されて貯留部4に用紙が搬入される搬入位置C1(図2では矢印D位置)と貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡して該第2の搬送部8によって搬出される搬出位置C2(図2では矢印E位置)とが搬送ベルト41bの搬送移動方向に所定間隔を空けて設定されており、下端支持部41は一対のプーリー41aがそれぞれ搬入位置C1及び搬出位置C2に対応させて配設されている。より詳しくは、搬入位置C1が、搬送ベルト41bの搬送移動方向上流側に位置する上流側プーリー(図中左側のプーリー)41aの中心よりも僅かに外側(図中左側)に位置するように、また、搬出位置C2が、搬送ベルト41bの搬送移動方向下流側に位置する下流側プーリー(図中右側のプーリー)41aの中心よりも僅かに外側(図中左側)に位置するように設定されている。
【0050】
これにより、図5に示す如く、搬入位置C1に位置するクランプ部41fにおいては、該クランプ部41fを構成する一対のプレート41cのうち少なくとも上流側のプレート41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対のプレート41c間は上端が開いてクランプ部41fが開状態となり、搬入された用紙P2の下端をこのクランプ部41fの凹部41dに受け入れることが可能である。同様に、搬出位置C2に位置するクランプ部41fにおいては、該クランプ部41fを構成する一対のプレート41cのうち少なくとも下流側のプレート41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対のプレート41c間は上端が開いてクランプ部41fが開状態となっており、クランプ部41fの凹部41dに位置している用紙P2の下端の把持が開放されて該用紙P2をクランプ部41fから引き出すことが可能とである。
【0051】
そして、図示しないモータによってプーリー41aを時計回りに回転させることで搬送ベルト41bを時計回りに移動させたときに、搬入装置74は搬入位置C1に位置して開状態となったクランプ部41fの凹部41dに用紙P2を搬入し、用紙P2の下端をプレート41cと爪片41eとの間に位置させる。そして搬入装置74は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに用紙P2を順次搬入する。
【0052】
搬入位置C1においてクランプ部41fに用紙P2が搬入された後、搬送ベルト41bが移動してそのクランプ部41fが直線状態となった搬送ベルト41b上に位置すると、該クランプ部41fが閉状態となるので爪片41eとプレート41cとで用紙P2の下端が確実に把持される。
【0053】
そしてさらなる搬送ベルト41bの移動によってクランプ部41fが搬出位置C2に位置すると、該クランプ部41fが開状態となり、搬出装置81が爪片41eとプレート41cとの間から用紙P2を搬出する。そして搬出装置81は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に、同様にして搬出位置C2に到来したクランプ部41fから用紙P2を順次搬出する。
【0054】
カール付与部42は、図6に示す如く、用紙P2の左右方向の略中央部を吸引搬送するように覆板40cに設置された搬入装置74の左右方向の両側に設置されており、図3、図6に示す如く、覆板40cに立設された取付板に両端を固定された支点軸42aと、該支点軸42aを中心にして図3の矢印M方向に回転可能に設けられた支持板42b’と、該支持板42b’と一体的に回転し、斜め下方に羽根状に延びるガイド部材42bとを備えている。
【0055】
用紙P2は搬入装置74によって一面Aを斜め下側にして図5の搬入位置C1に吸引搬送されるときに、ガイド部材42bの斜め下側の下面に沿って搬入されるので、ガイド部材42の下面によって用紙P2の左右側部を中央部よりも下側つまり一面A側に向けて押し出されつつ下端が下端支持部41のクランプ部41fに挿入される。これにより図7に示す如く、用紙P2は左右方向の断面が一面Aを内側にして湾曲するようにカールさせた状態で下端支持部41に下端が支持される。
【0056】
下端支持部41の搬送ベルト41bが移動すると用紙P2は、上記のようにカールが付与された状態で、ガイド部材42bの下面から離れた後、次の用紙P2が同様にしてガイド部材42bの下面に沿って搬入される。そしてガイド部材42bの下面から離れた用紙P2は、搬出位置C2に向けて送られ、搬出位置C2にて搬出装置81によって一面Aが吸引されて、第2ピックアップローラ82に向けて搬送される。
【0057】
なおガイド部材42bは図3に示すように支点軸42aを中心として矢印M方向に回転可能にされているので、用紙Pが厚いときや硬いときには、ガイド部材42bを支点軸42aを中心として矢印M方向の時計回りに回転させ覆板40cとガイド部材42bとがなす角度θを小さくすることにより、ガイド部材42bの下面を図3の下方つまり用紙P2の移動方向(矢印F方向)に移動することができ、用紙Pが薄いときや軟らかいときには、同様にしてガイド部材42bを支点軸42aを中心として反時計回りに回転させ角度θを大きくすることにより、ガイド部材42bの下面を図3の上方つまり用紙P2の移動方向(矢印F方向)と逆の方向に移動することができるので、用紙Pの紙質に対応して上記カールさせるときの押し出し量を調整することができる。
【0058】
このように貯留部4において、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2が互いに所定間隔をあけて重ねた状態で保持されることにより、印刷された面の擦れや裏移りによる用紙P2の汚れを防止することができる。なお本実施形態では複数枚の用紙P2の下端中央のみを保持するので、用紙P2の上端及び/又は左右端は重ねられた別の用紙P2と接触してしまう場合があるが、この接触は、図2に示すように、用紙P2の自重によるものであり、用紙P2の一面Aが他の用紙P2と擦れて接触するものではないので、用紙P2が汚れる可能性は低い。また、上端及び左右端の接触部分には印刷が行われないことが多く、その意味からも用紙P2が汚れる可能性は低い。
【0059】
また搬送ベルト41bが搬入位置C1から搬出位置C2に移動する間、印刷された面すなわち一面Aが他の用紙P2と接触しないことにより、インクを効率よく乾燥させることができる。
【0060】
また搬出位置C2にて用紙P2を凹部41dから搬出するときに、複数枚の用紙P2は一枚ずつ隙間をあけて貯留されているので、用紙P2の多重搬送を防止するために用紙P2表面の密着を剥がす捌き機構を設ける必要がない。これにより捌き機構により用紙P2を捌くときに印刷面が擦れることにより生じる用紙P2の汚れの発生を防ぐことができる。
【0061】
また貯留部4内部の用紙P2は、クランプ部41fによって下端中央を把持された状態で搬入位置C1から搬出位置C2まで搬送されるので、用紙P2を単に該用紙P2の自重で落下させて積載させた場合と比して、搬出位置C2における用紙P2の位置精度を確保することができる。
【0062】
また本実施形態の貯留部4の保持機構は、用紙P2の下端のみを支持する簡単な構造であるため、貯留部4が占める空間を比較的小さくすることができる。
【0063】
また用紙P2はガイド部材42によって左右方向の断面が湾曲するようにカールさせた状態に保持されるので、例えば一面Aに転写されたインクの量が比較的多くて用紙P2の紙中水分が高い場合であっても、用紙P2の吸湿によって生じる上下方向に断面が湾曲するカールつまり用紙P2の搬送方向に沿ったカールが生じ難くなる。従って用紙P2の搬送方向に沿ったカールに起因して生じる搬送経路での用紙P2の紙詰まりの発生を防止することができて、片面が印刷された用紙であっても安定して搬送することができるので、両面孔版印刷装置1は高速給紙での印刷に対応することができる。
【0064】
さらに、用紙P2は上述のように左右方向の断面が湾曲するようにカールされているので、下端を支持して立たせた状態にしても上下方向の断面が湾曲する腰折れが生じ難く、下端を支持するだけで立った状態を維持することができる。
【0065】
なお本実施形態では下端支持部41を上記のような構成としたが、下端支持部41はこれに限られるものではなく、別の構成であってもよい。ここで図8に第2の実施形態の下端支持部141の側面図、図9に第3の実施形態の下端支持部241の側面図を示す。
【0066】
第2の実施形態の下端支持部141は、図5の下端支持部41とはクランプ部41fを備えていない点が異なっており、図8に示す如く、搬送ベルト141bの外周面に全周に亘って複数個立設された突起141cを備え、隣り合う突起141cにより構成される凹部141dの底面に用紙P2の中央下端が当接し、この凹部141dにより用紙P2の下端を支持するように構成されている。
【0067】
本実施形態の下端支持部141も、図5の下端支持部41と同様に、図示しないモータによってプーリー141aを回転することにより搬送ベルト141bを時計回りに移動させる。これにより凹部141dつまり用紙P2を一枚ずつ搬送位置C1から搬出位置C2まで矢印F方向に搬送移動させることができる。
【0068】
また第3の実施形態の下端支持部241は、図9に示す如く、用紙P2の搬入/搬出方向(矢印D,E方向)と略直交する方向に延びるネジ棒241aで構成されており、ネジ棒241aはその外周面にネジ溝241dが形成されている。図示しないモータによってネジ棒241aを搬入位置C1側の端部からみて時計回りに回転させることにより、ネジ溝241dのうちネジ棒241aの上側に位置する部分はそれぞれ搬入位置C1から搬出位置C2に向けて移動する。
【0069】
貯留部4の搬入位置C1に搬入された用紙P2は、該搬入位置C1に位置しているネジ棒241aの上側のネジ溝241dのうち搬入位置C1に位置しているネジ溝部分で支持され、ネジ棒241aの回転によって順次この搬入位置C1に新しいネジ溝部分が出現して該ネジ溝部分で順次搬入された用紙P2の下端が支持され、各ネジ溝部分で支持された用紙P2はそれぞれネジ溝部分の移動に伴って搬出位置C2に向けて移動する。
【0070】
上記のような第2、第3の実施形態の下端支持部141、241であっても、上述した実施形態の下端支持部41と同様に貯留部4にてカール付与部42との協働の下に複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持することができる。
【0071】
また本実施形態ではカール付与部42を上記のような構成としたが、カール付与部42はこれに限られるものではなく、下端が支持された用紙P2に対して左右方向の断面が一面Aを内側にして湾曲するようにカールさせることができればよく、例えば用紙P2の左右側部を一面A側から吸引する構造のものであってもよい。
【0072】
次に以上のように構成された本実施形態の両面孔版印刷装置1の一連の動作について説明する。なお各動作は、装置ハウジング10に設けられた図示しない制御部からの指示により行われるものとする。
【0073】
両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1をピックアップローラ71が順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P1を第1タイミングローラ72が順次第1の孔版印刷部3に搬送し、第1の孔版印刷部3は、搬送された用紙P1を1枚ずつ、第1プレスローラ32により第1ドラム31に押し付けながら第1ドラム31を1回転させて用紙P1の上側一面Aに、第1ドラム31に巻装された製版済孔版原紙M1の画像を順次印刷する。
【0074】
次に反転装置73が、印刷された一面Aを上面にした用紙P2を、他面Bを吸引しながら円弧状の軌跡に沿って順次搬送することにより、一面Aが下面となるように反転しつつ貯留部4内に向けて搬送する。そして図2に示す如く、反転装置73によって順次搬送された用紙P2を、搬入装置74が上面つまり他面Bの左右方向の中央部を吸引しながら貯留部4内に下方に向けて順次搬入する。このとき搬入装置74によって搬入される用紙P2は、図6に示す如く、他面Bの左右側部が上述したガイド部材42bの下面に当接しながら搬入される。
【0075】
上記のように搬入装置74によって貯留部4内に搬入された用紙P2は、図5に示す如く、搬入位置C1の凹部41dに挿入される。このとき図示しないモータが、搬入装置74による用紙P2の搬入と同期して凹部41dが搬入位置C1に位置するようにプーリー41aを回転させるので、搬入位置C1に搬入された用紙P2は順次搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに挿入され、矢印Fで示す搬送移動方向に移動せしめられる。
【0076】
これにより下端支持部41は、搬入位置C1の凹部41dにおいて搬入された用紙P2の下端を支持し、搬送ベルト41bが矢印Fの搬送移動方向に移動すると共にクランプ部41fが用紙P2bの下端中央を上述したようにして把持するので、搬入位置C1に順次搬入される複数枚の用紙P2を1枚ずつクランプ部41fによって把持できる。
【0077】
搬入位置C1の凹部41dにて支持された用紙P2は、図6に示す如く、ガイド部材42bによって上面つまり他面Bの左右側部が中央部よりも下方向つまり一面A側に押し付けられているので、図7に示すように一面Aを内側にして湾曲したカール状態となり、用紙P2はカール状態を維持したまま搬送ベルト41bの移動に伴ってクランプ部41fに下端中央が把持されつつ搬送ベルト41bと共に移動する。
【0078】
クランプ部41fにより1枚ずつ把持された複数枚の用紙P2は、搬送ベルト41bの移動により搬出位置C2に位置すると、上述したようにしてクランプ部41fから解放される。このとき用紙P2の搬出位置C2への到来と同期して、図2に示す搬出装置81のプーリー81a及びファン81cを図示しないモータにより回転させることにより、搬出装置81で、クランプ部41fから解放された用紙P2の下面つまり一面Aを吸引して該用紙P2を第2の孔版印刷部51に向けて搬出する。
【0079】
このとき用紙P2は、搬入位置C1から搬出位置C2へ移動するために要する時間すなわち貯留部4における貯留時間にて、一面Aに転写されたインクを乾燥させることができるので、搬出装置81によって一面Aを吸引して搬送するときに搬送ベルト81bとの接触によって用紙P2の一面が汚れるのを防ぐことができる。
【0080】
なお用紙P2の一面Aの印刷率に基づいて、つまり一面Aの全面積に対する該一面Aに占める実印刷面積の割合が高い場合には、一面Aへのインクの転写が多いので貯留時間を長くし、実印刷面積の割合が低い場合には、一面Aへのインクの転写が少ないので貯留時間を短くするように貯留時間を制御するようにしてもよい。この印刷率は、用紙P2の一面Aの全面積に対する実印刷面積の割合を意味するものであり、例えば孔版印刷の場合、第1の孔版印刷部3により印刷する画像を表わす白黒の二値画像データ(黒画像データは孔版原紙に穿孔を行う画像データ、白画像データは孔版原紙に穿孔を行わないデータ)の全画像データ数に対する黒画像データ数の割合で示すことができる。
【0081】
図10は図8の下端支持部141の他の動作状態示す側面図、図11は図9の下端支持部241の他の動作状態を示す側面図である。
【0082】
貯留部4が上記第2の実施形態の下端支持部141を備えている場合には、両面印刷を開始する前に上述のようにして第1の孔版印刷部3における印刷率を算出しておき、この印刷率が所定値以下のとき、即ち乾燥時間が比較的少なくてもよいときは、図10に示す如く、搬送ベルト141bの移動速度つまり用紙P2の移動速度を図8に示す場合に比して2倍にすることによって例えば1つおきの凹部141dに用紙P2が保持されるようにする。なお搬送ベルト141bの移動速度は、図示しないモータを制御してプーリー141aの回転速度を変更することにより変更することができる。
【0083】
貯留部4が上記第3の実施形態の下端支持部241を備えている場合には、上記と同様に印刷率が所定値以下のとき、図11に示す如く、ネジ溝241dの送り速度つまり用紙P2の移動速度を図9に示す場合に比して2倍にすることによって例えば1ピッチおきのネジ溝241dに用紙P2が保持されるようにする。なおネジ溝241の送り速度は、図示しないモータを制御してネジ棒241aの回転速度を変更することにより変更することができる。
【0084】
そして上記のように1凹部おき、又は1ピッチおきに用紙P2を保持するように下端支持部41を駆動すると、用紙P2の搬送速度が速くなることから、用紙P2が貯留部4に貯留する時間が短くなり、無駄な乾燥時間を省略して用紙P2を搬出位置C2から搬出することができる。
【0085】
また上記のように搬送ベルト141bの移動速度又はネジ溝241bの送り速度はモータを制御するだけで変更することができるので、複雑な制御を要することなく貯留時間すなわち乾燥時間を制御することができる。
【0086】
なお貯留部4が図5に示す下端支持部41を備えている場合にも、上記第2の実施形態の下端支持部141を備えている場合と同様にして、乾燥時間を制御することができる。
【0087】
以上のように貯留部4にて一面Aに転写されたインクが乾燥された用紙P2を搬出装置81が貯留部4から搬出した後、第2ピックアップローラ82が搬出装置81から搬出された用紙P2を順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P2を第2タイミングローラ83が所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に順次搬送する。第2の孔版印刷部5は、搬送された用紙P2の上側の面すなわち他面Bに、第2ドラム51に巻装された製版済孔版原紙M2の画像を順次印刷する。
【0088】
続いて排出装置84が、印刷された他面Bを上面にした用紙P3を、一面Aを吸引しながら順次排紙台6に搬送する。
【0089】
次に他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面孔版印刷装置は、上述した実施形態の両面孔版印刷装置1の搬入装置74に、ファン74cにより搬送ベルト74bに吸引された用紙P2を剥離する剥離部材(剥離手段)75をさらに備えたものである。図12は、本実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部4への用紙P2の搬入から搬出までの工程を説明する図である。なお図12のクランプ部41fは、便宜上図は異なっているが、上記実施形態のクランプ部41fと同様の構造のものである。
【0090】
剥離部材75は、図12に示す如く、用紙P2を吸引搬送する側の搬送ベルト74bの近傍に配置され、図示しないモータにより回転される回転軸75aと、一端部が回転軸75aに接続されて回転軸75aの回転と共に回転する剥離爪75bとから構成されている。この剥離部材75による剥離動作は図示しない剥離制御部(剥離制御手段)によって制御されるものであり、この剥離動作について以下説明する。
【0091】
図12(a)に示す如く、用紙P2が搬入装置74により吸引搬送され該用紙P2の下端中央が凹部41dに挿入されて搬入位置C1に到達すると、図5に示す搬送ベルト41bの移動により凹部41dが搬入位置C1から搬出位置C2に向かって移動を開始し、この移動に連動してクランプ部41fが閉動作を開始する。
【0092】
そして搬送ベルト41bが1ピッチ分移動して図12(b)に示すようにクランプ部41fが閉状態となって用紙P2を把持すると、該把持と略同時に、搬入装置74の搬送ベルト74bを停止させると共に回転軸75aを回転させ、図12(c)に示すように剥離爪75bによって用紙P2を搬送ベルト74bから剥離する。
【0093】
そして用紙P2が搬送ベルト74bから剥離されると直ぐに、図12(d)に示す如く、回転軸75aを逆回転させ剥離爪75bを用紙搬入の妨げにならない位置まで移動させ、搬入装置74は次の用紙P2を搬入して凹部41dに挿入し、図12(a)から図12(d)に示す動作が繰り返される。
【0094】
以上のような剥離動作を行うことにより、搬送ベルト74bから用紙P2を確実に剥離することができるので、搬入装置74により次回搬送すべき用紙P2が搬送されてきたときにこの次回の用紙P2と前回の用紙P2との衝突による跳ね返り等に起因する用紙P2の位置ズレを防止することができる。また次回の用紙P2の一面Aが前回の用紙P2により擦られてしまうのを防止することもできる。これにより搬入装置74による用紙P2の搬送を確実に安定して行うことができる。
【0095】
またクランプ部41fにより用紙P2の下端中央が把持されている状態で、剥離動作を行うので、搬送ベルト74bから用紙P2を勢いよく剥離したとしても用紙P2の位置ズレを抑えることができる。なお図12(b)に示すようにクランプ部41fが1ピッチ分移動して用紙P2の下端中央を把持したとき、搬入装置74のファン74cは回転しており用紙P2は搬送ベルト74bに吸引されているので、用紙P2はクランプ部41fに把持された下端中央が搬送ベルト74bに吸引されている搬送方向の中央部よりも搬送ベルト41bの移動方向下流側に湾曲することになるが、実際にはクランプ部41fのピッチ距離は小さく形成されているので、この湾曲は僅かなものであり、用紙Pの搬送時に問題となる位置ズレを招来する可能性は低い。
【0096】
なお上述した実施形態の両面孔版印刷装置1は上記構成としたが、本発明の両面印刷装置はこれに限られるものではなく、例えば装置ハウジング10の上側に、原稿の画像を読み取るスキャナ部や、スキャナ部で読み取った原稿画像の画像データに基づいて生成された孔版画像データに基づいて孔版原紙を穿孔して製版を行う製版部等を備えていてもよい。
【0097】
本発明の両面印刷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】両面孔版印刷装置の概略構成図
【図2】図1の両面孔版印刷装置の要部詳細拡大図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】図2の矢印B方向から見た上面図
【図5】図2の下端支持部の拡大詳細図
【図6】図2の要部拡大詳細斜視図
【図7】貯留部内での用紙の状態を示す図
【図8】第2の実施形態の下端支持部の側面図
【図9】第3の実施形態の下端支持部の側面図
【図10】図8の下端支持部の他の動作状態を示す側面図
【図11】図9の下端支持部の他の動作状態を示す側面図
【図12】他の実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部への用紙の搬入から搬出までの工程を説明する図
【符号の説明】
【0099】
1 両面孔版印刷装置(両面印刷装)
10 装置ハウジング
2 給紙台
3 第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)
4 貯留部
41、141、241 下端支持部(下端支持手段)
41d、141d 凹部
41f クランプ部
42 カール付与部(カール付与手段)
42b ガイド部材(カール付与手段)
41、42 保持機構
241a ネジ棒
241d ネジ溝
5 第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)
6 排紙台
7 第1の搬送部(第1の搬送手段)
8 第2の搬送部(第2の搬送手段)
73c、74c、81c、84c ファン(吸引部)
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、
該一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、
前記用紙の他面に印刷する第2の印刷手段と、
前記第1の印刷手段により一面が印刷された用紙を順次前記貯留部に搬送する第1の搬送手段と、
前記貯留部に貯留された複数枚の用紙を順次前記第2の印刷手段に搬送する第2の搬送手段とを備え、
前記貯留部が、前記一面が印刷された複数枚の用紙を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項2】
前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記保持機構が、前記搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で前記搬入位置から前記搬出位置に向けて移動させるものであることを特徴とする請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記保持機構が、前記複数枚の用紙を立たせると共に左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するようにカールさせた状態で、各用紙の下端を互いに所定間隔を空けて重ねて支持するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の両面印刷装置。
【請求項4】
前記保持機構が、前記複数枚の用紙を立たせた状態で各用紙の下端を互いに所定間隔を空けて支持する下端支持手段と、該下端支持手段により下端が支持された前記用紙に対して左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するカールを付与するカール付与手段とを備えてなることを特徴とする請求項3記載の両面印刷装置。
【請求項5】
前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記下端支持手段が、前記搬入位置に搬入された前記用紙の下端を支持して該用紙を順次前記搬出位置に向けて移動させるものであることを特徴とする請求項4記載の両面印刷装置。
【請求項6】
前記下端支持手段が、下端を支持した前記用紙を該用紙の前記一面が向く方向に移動させるものであることを特徴とする請求項5記載の両面印刷装置。
【請求項7】
前記下端支持手段が、所定間隔を空けて前記用紙の移動方向に配列された複数個の凹部を備え、該凹部で前記用紙の下端を支持すると共に、該凹部を前記用紙の移動方向に移動させることで前記用紙を移動させるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の両面印刷装置。
【請求項8】
前記下端支持手段が、前記用紙の移動方向に延びるネジ棒であって、該ネジ棒に形成されているネジ溝で前記用紙の下端を支持すると共に、該ネジ棒を回転させることで前記用紙を移動させるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の両面印刷装置。
【請求項9】
前記下端支持手段が、所定間隔を空けて前記用紙の移動方向に配列された複数個の前記用紙の下端を把持する開閉可能なクランプ部を備え、該クランプ部で前記用紙の下端を把持すると共に、該クランプ部を前記用紙の移動方向に移動させることで前記用紙を移動させるものであることを特徴とする請求項5又は6記載の両面印刷装置。
【請求項10】
前記カール付与手段が、前記搬入位置に搬入される用紙をその左右方向の断面が前記一面を内側にして湾曲するようにカールさせるべく、搬入される前記用紙の左右側部を中央部よりも前記一面側に向けて押し出すガイド部材であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項記載の両面印刷装置。
【請求項11】
前記用紙の前記一面の印刷率に基づいて、前記用紙の前記貯留部への搬入時から前記貯留部からの搬出時までの貯留時間を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項2〜10のいずれか1項記載の両面印刷装置。
【請求項12】
前記制御手段が、前記用紙の前記搬入位置から前記搬出位置への移動速度を制御するものであることを特徴とする請求項11記載の両面印刷装置。
【請求項13】
前記第1の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内に搬入する吸引部を備え、及び/又は、前記第2の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内から搬出する吸引部を備えると共に、
前記第1の搬送手段及び/又は第2の搬送手段の吸引部に吸引された用紙を該吸引部から剥離する剥離手段を備えていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の両面印刷装置。
【請求項14】
前記下端支持手段が、間欠的に前記用紙を移動させるものであり、
前記下端支持手段による前記用紙の間欠送りに同期して前記剥離手段を剥離動作させる剥離動作制御手段を備えていることを特徴とする請求項13記載の両面印刷装置。
【請求項15】
前記ガイド部材が、該ガイド部材の位置を前記用紙の移動方向に調整可能に構成されていることを特徴とする請求項6〜14のいずれか1項記載の両面印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−297942(P2009−297942A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152691(P2008−152691)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】