説明

中枢神経系活性を有する光学活性3−[(フェニルピペラジン−1ーイル)アルキル]−3ーアルキルーオキシインドール誘導体

【課題】副作用がない中枢神経系障害の予防又は治療薬の提供。
【解決手段】式(II)の5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンの鏡像異性体、その薬理上許容される塩、それらの製造方法、前記鏡像異性体を含む医薬、及びその用法、並びに中枢神経系の障害を治療するその薬理上許容される塩。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(II)の5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンの鏡像異性体、それらの薬理上許容される塩、それらの製造方法、前記鏡像異性体を含む医薬、及びその用法、並びに中枢神経系の障害を治療するそれらの薬理上許容される塩に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
20世紀後半に入り、技術及び社会の急速な発展に伴って、大量の情報にさらされている。その結果、絶えず変化する環境に順応することが益々困難になってきており、適応障害を引き起こすことがある。このような適応障害としては、不安、ストレス、抑鬱症、分裂病、胃潰瘍、緊張昂進等の精神または心身症となってあらわれる。
【0003】
上述した障害を治療する方法としては、患者への薬物投与が確立されている。このような薬物に使用されている活性成分の効果として、ベンゾジアゼピン系(例えば、ジアゼパン)による効果がある。さらに、精神又は心身症の治療又は予防に使用されている活性成分の効果として、中枢セロトニン5−HT1Aレセプタ(例えば、ブスピロン)に作用する効果がある。抗不安薬による心身症の治療は、血圧降下剤(α1又はα2により作用する医薬)又は抗潰瘍薬(例えば、H2レセプタ拮抗剤)で補強されることがある。
【0004】
然しながら、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、鎮静、集中力減退、筋力減退をはじめとする幾つかの好ましくない副作用がある。このような好ましくない副作用があると、前記医薬類が適用される部位が限定され、その結果、患者の生活の質に重大な悪影響を与える。
【0005】
セロトニン系による抗不安薬(即ち、ブスピロン、SSRIs)による抗不安治療のさらなる欠点は、10〜14日間投与しなければ医療効果があらわれないことである。さらに、セロトニン系による抗不安薬は、投与後ごく初期に不安惹起作用(即ち、不安誘発作用)を起こすことである。セロトニン系による抗不安薬を投与すると、投与初期に、患者は、自身の状態が悪くなっていることを認識するので、これらの副作用のために、患者と内科医の協調関係が難しくなる。
【0006】
現代社会が引き起こす他の問題は急速な高齢化である。現代医療技術の発展により、平均余命は伸び、老齢者に特有の罹病率、特に、精神能力に影響を及ぼす疾病が急激に増加して来ている。従って、アルツハイマー疾患、脳血管型痴呆症、及び老人性痴呆症の治療法及び医薬品に対する社会的要請がある。
【0007】
さらに、現在、使用されている医薬品よりも治療効果が優れている新規で、効果的な医薬に対する要望が増えてきている。本発明は、かかる新規な薬理活性化合物の発見に基づく。
【0008】
式(II)の5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンのラセミ化合物は、最初、国際特許出願公開WO2005/109987号に開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/109987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
国際特許出願公開WO2005/109987号に開示されている3,3−ジアルキル−置換インドール−2−オン誘導体は、顕著な抗不安活性を有している。当該化合物は、5−HT2cレセプタとα1−レセプタに結合し、ドーパミン放出作用を示す。同時に、当該化合物は、5−HT1Aレセプタとは結合しない。この活性特徴は、上述した化合物が、5−HT1Aレセプタと結合する化合物に対して望ましくない副作用特性が無いという利点を有している。
【0011】
本発明は、式(I)の鏡像異性体が互いに著しく異なっており、かつ、薬理効果及びレセプタ−結合特性に関して式(II)のラセミ化合物とも著しく異なっているという発見に基づき完成された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の目的は、式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン及び薬理上許容されるその塩を提供することである。
【化2】

【0013】
本発明の第2の目的は、式(I)の(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン及び薬理上許容されるその塩を提供することである。
【化3】

【0014】
本発明の別の目的は、個々の鏡像異性体を任意の比率で含む式(I)の鏡像異性体の混合物及び式(I)の鏡像異性体の薬理上許容されるその塩の混合物を提供することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、式(I)の鏡像異性体及び薬理上許容されるその塩を製造する方法を提供することである。当該方法の出発化合物として、式(II)の5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンを使用する。当該化合物は、国際特許出願公開WO2005/109987に記載されている方法により製造することできる。
【0016】
式(I)の鏡像異性体は、式(II)のラセミ体を光学活性酸で分解することにより製造することができる。我々は、オキシインドール基から塩基性窒素原子を4個の炭素原子で分割するオキシインドール誘導体を製造する方法に従えば、従来技術による分割法の場合よりも、キラル中央と塩基性窒素原子の間の距離が長いにも係わらず、式(II)を出発化合物とする鏡像異性体を高収率で分割することができることを発見した。
【0017】
分割は、光学活性酸の存在下に双極性非プロトン性又はプロトン性溶媒中で実施される。溶媒としては、炭素原子が1〜4個のアルカノール、水、又は水と炭素原子が1〜4個のアルカノールとの混合物、好ましくはエタノールと水との混合物が使用される。分割用酸としては、光学活性の酒石酸誘導体、好ましくは光学活性のジベンゾイル−酒石酸又は光学活性のジトルイル−酒石酸を使用することができる。
【0018】
次いで、このようにして製造された式(I)の化合物は、薬理上許容される酸付加塩に変換されるか、或いは酸付加塩から塩が遊離される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の式(I)の化合物の薬理活性テストにおいて、レセプタ−結合測定は、ラットにおけるボーゲル(Vogel)の摂水葛藤テスト(Vogel's drinking conflict test)モデル、マウスにおけるポーソルト(Porslt)テスト、及びマウスにおける永久局所脳虚血モデルで行った。
【0020】
レセプタ−結合測定は、体重120〜200gの雄ウィスターラットの脳組織、又はクローン・ヒト5−HT6或いはD4レセプタを使用した。膜画分のタンパク含量は、[ローリ−・オー・エイチ、ローゼンブロー・エヌ・ジェー、ファー・エイ・エル、ランドール・アール・ジェー、ホリン−フェノール試薬によるタンパク測定,ジャーナル・バイオロジカル・ケミストリー、193](Lowry O. H., Rosenbrough N. J., Farr A. L., Randall R. J., Protein measurement with the Folin-Phenol reagents. J Biol Chem, 193:265-275(1951))に従って行った。
【0021】
レセプタ−結合測定に関する基本的な情報を表1に記載する。結合測定は、[レイセンジェー・イー、ニエメギヤー シー・ジェー・イー、バン ノイテン・ジェー・エム、ランヂュロン ピー・エム:[3H]ケタンセリン(R41468)、セロトニン2レセプタ結合の選択的[3H]リガンド、モレキュラー ファーマコロジー,21:301−314(1981)」(Leysen J. E, Niemegeers C. J. E, Van Nueten J. M., Landuron P. M. : [3H]Ketanserin (R41468), a selective [3H]ligand for Serotonine 2 receptor binding. Mol Pharmacol, 21:301-314 (1981))に従って行った。試験した化合物は、Ki値が100nm以下の場合に効果があると推断した。
【0022】
【表1】

*:アメリカボストン、レセプタ・バイオロジー・インコーポレテッド(Receptor Biology Inc., )
**:カナダ モントリオール バイオシグナル・パッカード・インコーポレテッド(BioSignal Packard Inc., )
【0023】
【表2】

【0024】
ボーゲル(Vogel)の摂水葛藤テスト(Vogel's drinking conflict test)モデルを使用して抗不安効果を評価した[ボーゲル等、サイコファーマコロジア、21,1,1971(Vogel et. al., Psychopharmacologia, 21, 1, 1971)]。体重200〜220グラムの雄のウイスターラット(以下「ラット」という)に対して、テストの48時間水を与えず、且つ24時間餌を与えなかった。テストの30分前、テスト化合物又は賦形剤を5.0-20.0mg/kgでラットに腹腔内注射した。テスト用ケージには、給水チューブを取り付けてラットに水を飲ませるようにした。ラットが水を20回舐める毎に、ラットに0.7mAの電気ショックを与えた。5分間の測定の間、ラットが渇きに耐えた電気ショックの数を記録した。テスト化合物の効果を、ラットが渇きに耐えた電気ショックの数におけるパーセント増加率で表した。各化合物毎に、最小有効投与量(MED)を評価した。結果を表3に示す。
【0025】
【表3】

MED:実質的に顕著な効果を奏功する最小投与量
【0026】
式(I)の化合物の抗うつ効果は、体重20〜25グラムの雄DBAマウスでポーソルト(Porslt)テストで行った。即ち、高さ17.7cm及び直径12cmの円筒形水槽内での水泳実験を実施した[ポーソルト、アール・ディー:行動うつ。エナ、エス・ジェー、マ−リック、ジェー・ビー、及びリケルソン、イ−,”抗うつ:神経化学、行動、及び臨床展望”ニュー・ヨーク:レ−バンプレス、1981.pp.121〜139] (Porsolt, R.D.:Behavioral despair. In: Enna, S.J., Malock, J.B., and Richelson, E. (eds.).: "Antidepressants: Neurochemical, Behavioral, and Clinical Pespectives." New York: Raven Press, 1981.pp. 121-139)。各実験において、同時に4個の水槽を使用した。テストの30分前にマウスに、テスト化合物及又は賦形剤を1-3-10mg/kgで腹腔内注射した。マウスを水槽内で6分間放置した。最初の2分間は適応準備時間と考えられるので、測定しなかった。続く4分間(実験開始後3〜6分)で、マウスが動かなくなった時間を測定した。各マウスが動かなくなった時間を、正確に1秒単位で記録した。各グループ毎に平均を計算し、対照グループを参考として各処理グループ毎にパーセンテージ効果を算出した。グループ間の統計的有意差をダンカン(Duncan)テストで分析し、次いで一元配置分散分析法により統計的処理を行った。
【0027】
各投与量と対照との間の相違により評定される統計上の有意差に基づいて、MED(最小有効投与量)を算出した。これは、有意効果(P<0.05)を示した最も少ない投与量である。マウスが動かなくなるまでに要する時間が短くなれば、抗うつ効果があると判断した。結果を表3に示す。
【0028】
式(I)の化合物の神経保護作用を、カルコートリー(Karkoutly)と彼の同僚が確立した方法の変形方法による永久局所脳虚血モデルで行った[カルコートリー、シー、バックハウス、シー、ヌーリッシュ、ジェー、クリーグルシュタイン・ジェー:クリーグルシュタイン・ジェー及びオバーピフラー、エイチ共著、1990年、シュツットガルトのビーセンシャフトッリヒェ フェルクスゲゼルシャフト エム・ベー・ハーから発行された「脳虚血症薬理学」第63〜69頁に記載されている「マウスの中枢脳動脈閉塞後の梗塞部位の測定:スクリーニングモデル」(Karkoutly, C.,Backhauses, C., Nuglisch. J.,Krieglstien. J.:The measurement of the infarcted area after middle cerebral artery occlusion in the mouse: a screaning model. In Krieglstein, J., Oberpichler, H. ed. Pharmacology of Cerebral Ischemia 1990. Wisseneschaftliche Verlagsgesellschaft mbH Stuttgart. 63-69(1990))。
【0029】
体重30〜35グラムの雄NMRIマウスに、2,2,2−トリブロモエタノールを500mg/Kg(20mL/kg)の投与量で腹腔内注射して麻酔した。麻酔をする間、ウェルシュ及び彼の同僚が開発した外科方法に従って外科手術を施した。[ウェルシュ、エフ・エー・、サカモト、ティー、マッキー、エー・、シムス、アール・イー共著:「乳酸アシドーシスが、マウスの虚血中におけるピリジンンヌクレオチオドの安定性に及ぼす影響」、「神経化学雑誌」49:846−851(1987)] (Welsh, F. A., Sakamoto, T., Mckee, A., Sims, R. E., Effect of lacacidosis on pyridine nucleotide stability during ischemia in mouse, J. Neurochem. 49-851(1987))。中央頸動脈(MCA)の末端部位を電気焼灼器で咬合閉塞した。この外科処置の30分後、テスト化合物を0.1-0.3-1.0-3.0-10.0mg/kgの投与量で腹腔内注射した。48時間後、マウスにナトリウムペンタバルビタール120mg/kgを腹腔内注射して麻酔した。脳に、2mLの4%2,3,5-トリフェニル−テトラゾリウム−クロライド(TTC)を左脳室から灌流した。1時間後、脳を取り出して氷冷生理食塩水に1〜2分間浸漬した。次いで、この脳をホルムアルデヒドの8%水溶液に浸漬した。24時間後、コンピュータ造影分析ソフトで白色病変部位を解析した。分散分析法で統計学的評価を行った後、ダンカンテスト(Duncan-test)を行った。得た結果を表3に示す。
【0030】
上述したテストに基づいて、我々は、式(I)のラセミ化合物が、式(I)の(+)鏡像異性体と同じように、中枢5−HT6レセプタに対して顕著な親和性を示すことを発見した。さらに、我々は、式(I)の(+)鏡像異性体が、5−HT6レセプタと結合しないことも発見した。さらに、予期に反して、我々は、式(I)の(+)鏡像異性体が中枢5−HT2Aレセプタに対して顕著な親和性を示さないこと、同時に、式(II)のラセミ化合物及び(+)鏡像異性体が、数倍の強さの親和性をもって5−HT2Aレセプタに対して結合することも発見した。更に、我々は、3つの化合物が、中枢D4レセプタに対して顕著に異なる親和性を示すことを確認した。さらに、我々は、式(II)のラセミ化合物が顕著な結合を示さないことを発見した。更に、我々は、式(I)の2つの鏡像異性体、特に(−)鏡像異性体が、低濃度範囲でも顕著な親和性を示すことを発見した(表2)。
【0031】
レセプター結合の相違以外に、これら3個の物質の予防治療による適用部位における顕著な相違も確認した。
【0032】
抗不安作用を予防診断するのに適した顕著な効果は、式(I)の5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンを5mg/kgの投与量で投与した後、ボーゲル(Vogel)の摂水葛藤テスト(Vogel's drinking conflict test)により確認した。式(I)の(+)鏡像異性体は、10mg/kgの投与量で顕著な抗不安効果を示した。上述した化合物で得た結果に反して、式(I)の(−)5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンは顕著な抗不安効果を示さなかった(表3)。
【0033】
マウスを使用したポーソルト(Porsolt)テストにおいて、3つの化合物の間で、有意差及び予期に反した効果の差が観察された。当該方法は、抗うつ作用の予防診断に使用することができる。式(II)のラセミ化合物は、顕著な投与依存性抗うつ効果を示したが、個々の鏡像異性体の抗うつ効果は観察されなかった(表3)。
【0034】
脳細胞壊死の治療に使用する化合物としての的確性を示す神経保護作用に関して、式(II)のラセミ5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン及び2個の光学活性異性体の間で顕著な相違が観察された。中枢脳動脈の閉塞に起因する細胞の壊死は、式(II)のラセミ化合物の極く低投与量(0.1 mg/kg)を腹腔内注射することで予防できた。式(I)の(+)鏡像異性体は、このテストでは効果が無いことが分かった。式(I)の(ー)鏡像異性体は、ラセミ体よりかなりの高投与量(3mg/kg:腹腔内注射)で投与した場合にだけ、効果があることが分かった(表3)。
【0035】
以上を要約すると、3つの化合物が、驚くほど異なる薬理効果、従って、異なる治療効果を示すことが発見された。式(II)のラセミ5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンは、抗不安、抗うつ及び神経保護効果がある。これらの発見に反して、式(I)の(+)鏡像異性体は、抗うつの予防診断及び神経保護効果に適した動物モデルの場合は効果が無いが、抗不安作用のみを示した。式(I)の(−)鏡像異性体は、神経保護効果だけを示した。
【0036】
本発明の他の目的により、式(I)の鏡像異性体、又はその混合物、或いはその薬理的に許容される塩のみ、または1種以上の賦形剤或いは公知の助剤との混合物を含む医薬が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による医薬は、活性成分を、通常0.1〜95質量%、好ましくは1〜50質量%、最も好ましくは5〜30質量%含んでいる。
【0038】
本発明による医薬は、経口投与剤(例えば、粉末、錠剤、コーチング錠剤、カプセル、マイクロカプセル、糖衣錠、溶液、懸濁液又は乳濁液),注射剤(例えば、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、又は腹腔内注射、或いは浸剤)、レクタル剤(例えば、座剤)、経皮吸収剤(例えば、埋め込み錠、又は局所用(例えば、クリーム、軟膏、又はパッチ)の剤形で投与することができる。本発明による固体、半固体、及び液体剤は、当業界に周知の方法で製造される。
【0039】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む経口投与に適した固体医薬は、賦形剤、充填剤(例えば、ラクト−ス、グルコース、澱粉、カルシウム、リン酸塩、微結晶セルロース)、結合剤(例えば、ゼラチン、ソルビトール、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、クロスポビドン)、製錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、ケイ酸、2酸化ケイ素)又は界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を含むことができる。
【0040】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む経口投与に適した液体医薬は、例えば、溶液、懸濁液又は乳濁液の剤形で製造され、且つ懸濁剤(例えば、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース)、乳化剤(例えば、ソルビタンモノオレエート)、溶媒(例えば、水、油、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール)、pH調整剤(例えば、メチル−4−ヒドロキシーベンゾエート)を含むことができる。
【0041】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む非経口投与に適した液体医薬は、pH調整剤、安定剤、及び溶媒を含む滅菌等張液である。
【0042】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む半固体医薬、例えば、坐薬は、坐薬の基剤(例えば、ポリエチレングリコール又はココアバター)に均一に分散された式(I)の活性成分を含んでいる。
【0043】
本発明のさらに他の目的により、式(I)の化合物又は薬理上許容されるその酸付加塩を使用して、心身症、不安症、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、社交恐怖症、広場恐怖症、特殊状況恐怖障害、心的外傷後ストレス障害、記憶障害後トラウマ、認知障害、中枢神経系起源性的障害、抑鬱症、精神分裂病、腎不全、難聴、耳鳴り、胃腸障害、及び心臓血管障害等中枢神経系疾患の治療又は予防に適した医薬を製造する方法が提供される。
【0044】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む医薬は、当業界に周知の方法で製造することができる。活性成分を、固体又は液体賦形剤或いは助剤と混合して所定の剤形に変換される。この医薬を製造するのに適した賦形剤及び助剤並び方法は、当業界に周知である[1999年アメリカ合衆イーストンのマック・パブリッシングコーポレーションより刊行「レミントンの薬科学」第18版(Remington's Pharmaceutical Sceience, Edition 18, Mack Publishing Co., Easton, USA, 1990)]。
【0045】
本発明の式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩を活性成分として含む医薬は、投与単位で活性成分を含む。
【0046】
式(I)の化合物又は薬理上許容されるその塩の一日投与量は、「0.1-1000mg/kg−成人体重」である。一日投与量は、1回又は2回以上に分けて投与してもよい。実効投与量は、幾つかの要素により決定されるが、投与量の処方は、医師の責任においてなされるべきである。
【0047】
本発明のさらに他の目的により、式(I)の化合物又は薬理上許容されるその酸付加塩を使用して、心身症、不安症、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、社交恐怖症、広場恐怖症、特殊状況恐怖障害、ストレス障害、心的外傷後ストレス障害、心的外傷認知障害、認知障害、中枢神経系起因性的障害、腎不全、難聴、抑鬱症、精神分裂病、中枢細胞壊死起因精神減退、アルツハイマー症、発作、痴呆症、高血圧を含む胃腸障害又は心臓血管障害、薬物療法に起因する聴覚組織障害等中枢神経系疾患の治療又は予防に適した医薬を製造する方法が提供される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を参照して本発明をさらに具体的に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
3-(4-クロロブチル)-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン

n-ブチル−リチウムの2.5モル溶液(200mL;0.50mol)を秤量して、予めアルゴンで洗浄した円底フラスコに注入した。200mLのテトラヒドロフランを添加し、生成された溶液をアセトン−ドライアイス浴で−78℃にまで冷却した。この温度で、溶液を攪拌しながら、テトラヒドロフラン250mL中の3-エチル−オキシインドール(32.2h;0.20モル)溶液を滴下した。10分後、1−ブロモブタン(57.6 mL; 0.50mol)を滴下し、溶液を放置して室温まで暖めた。得た反応混合物を室温で3時間攪拌し、エタノール20mLを滴下した。溶媒を蒸発させ、水と酢酸エチルで残留物を抽出し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、得たオイルをヘキサン中で粉末にして晶出させた。オフホワイトの結晶をヘキサン200mL中で攪拌した。懸濁液を濾過し、ヘキサンで洗浄し、赤外ランプの下で乾燥させた。得た生成物は、再結晶せずに、後続の反応で使用することができる。ヘキサン−酢酸エチルから再結晶して分析用サンプルを得た。
収率:45.8g(91%)、白色粉末
融点:104−105℃(ヘキサン−酢酸エチル)

IR(KBr):3181,2941,1700,1306,755cm-1

1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz): 8.57(brs, 1H, NH), 7.21(dt, 1H, J=7.6, 1. 5 Hz, H-6), 7.12 (d, 1H, J=7.4Hz, H-4), 7.06(dt, 1H, J=7.5, 1.0 Hz, H-5), 6.92(d, 1H, J=7.7 Hz, H-7), 3.39(t, 2H, J=6.7Hz, CH2Cl), 1.96-1.84(m, 2H, CH2), 1.83-1.74(m, 2H, CH2), 1.74-1.60(m, 2H, CH2), 1.24-1.18(m, 1H), 1.08-1.03(m, 1H), 0.64(t, 3H, J=7.4Hz, CH3) ppm.

13C-NMR(CDCl3, TMS, 101 MHz): 182.4, 141.2, 132.3, 127.7, 123.0, 122.5,109.6, 54.1, 44.4, 36.8, 32.7, 31.0, 21.8, 8.5ppm.

元素分析[式C14H18ClNO(251.76)に基づく算出]
理論値:C66.79, H7.21, N5.56, Cl14.08%
測定値:C66.89, H7.16, N5.84, Cl14.19%。
【0050】
[実施例2]
5,7-ジクロロ-3-(4-クロロブチル)-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン

3-(4-クロロブチル)-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(10.06g;40mmol)を80mLの氷酢酸に溶解させ、9.6mL(120mmol)の塩化スルフリルを室温下で滴下した。その後、この反応混合物を60℃で3時間維持した。その後、この反応混合物を冷却し、氷の上に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。エーテル層を10%水酸化ナトリウム溶液で2回抽出し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を蒸発させた。このようにして得た薄黄色の生成物をヘキサン中で粉末にし、白色の結晶生成物をヘキサン中で攪拌し、ヘキサンで洗浄し、濾過し、乾燥し、それ以上精製せずに使用した。ヘキサンから再結晶して分析用サンプルを得た。
収率:10.90g(85%)、白色粉末
融点:65−67℃(ヘキサン)

IR(KBr):3165,2964,1713(C=O),1455cm-1

1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz): 8.38(brs, 1H, NH), 7.20(dt, 1H, J=1.9Hz, H-6), 6.97(d,1H, J=1.8Hz, H-4), 3.38(t, 2H, J=6.7 Hz, CH2Cl), 1.95-1.84(m,2H,CH2), 1. 76-1.60(m,4H, 2×CH2),1.19-1.16(m,1H), 1.04-0.96(m,1H), 0.62(t,3H,J=7.4Hz, CH3)ppm.

13C-NMR(CDCl3, TMS, 101 MHz): 180.5, 137.7, 135.1, 128.3, 127.6, 121.9,
115.7, 55.7, 44.3, 36.8, 32.5, 31.0, 21.7, 8.5ppm.

元素分析[式C14H16Cl3NO(320.65)に基づく算出]
理論値:C52.44, H5.03, N4.37, Cl33.17%
測定値:C52.37, H4.97, N4.27, Cl33.18%。
【0051】
[実施例3]
5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン

1-(4-クロロフェニル)-ピペラジン(2.36g; 12mmol)をゆっくりと攪拌しながら180℃にまで加熱した。この温度で、5,7-ジクロロ-3-4(-クロロブチル)-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(3.85g, 12mmol)と炭酸ナトリウム(1.36g, 12mmol)を添加した。1時間後、熔融物を放置して冷却し、酢酸エチルと水を添加し、相分離した。有機相を蒸発させ、得たオイルをキーゼルゲル60(Kieselgel 60)固定相と酢酸エチルを溶離剤として使用してカラムクロマトグラフにより精製した。主フラクションは、油状生成物を含んでいた。これを、ジエチルエーテルで粉末化して晶出し、濾過し、ヘプタン−酢酸エチルの混合物から再結晶した。

収率:3.46g(60%)、白色粉末
融点:152−154℃(ヘプタンー酢酸エチル)

IR(KBr):3137,1719(C=O),826cm-1

1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz): 0.65(3H, t, J=7.4HZ), 0.98-0.86(1H, m), 1.16-1.04(1H,m), 1.50-1.36(2H,m), 1.80-01.70(2H,m), 1.98-1.88(2H, m), 2.27(2H, t, J=7.8Hz), 2.51(4H, t, J=5.0Hz), 3.12(4H, t, J=5.0Hz), 6.81(2H, d, J=9.1Hz), 7.01(1H,d,J=1.8Hz), 7.18(2H, d, J=9.1Hz), 7.23(1H, d, J=1.8Hz), 8.15(1H,s)ppm.

13C-NMR(CDCl3, TMS, 101 MHz): 180.3, 149.9, 137.7, 135.3, 128.9, 128.2, 127.5, 124.4, 122.0, 117.1, 115.7, 57.9, 55.8, 53.0, 49.1, 37.5, 31.1, 26.7, 22.2, 8.5 ppm.

元素分析[式C24H28Cl3N3O(480.87)に基づく算出]
理論値:C59.95, H5.87, Cl 22.12, N8.74%.
測定値:C59.80, H5.86, Cl 21.83, N8.72%.
【0052】
[実施例4]
ラセミ分割による(+)5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンの製造

5.00g(10.40mmol)の5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンを、75mLのエタノールに懸濁させ、4.22g(10.93mmol)の(R,R)ジ-p-トルイル-酒石酸を少しずつ添加したところ、懸濁液は徐々に清浄になった。完全に溶解させた後、水30mLを添加し、得た混合物を2時間攪拌した。攪拌後、沈澱した白色物質を濾別し、溶媒エタノールー水5:2(v/v)10mLで3回洗浄し、乾燥した。

収率:2.60g(57.6%)、白色粉末(ジアステレオマー塩)
融点:140−142℃

[α]365(c=1, MeOH)=+226.1°

1H-NMR(CDCl3, TMS, 500 MHz): 8.35(s, 1H), 7.89(d, 4H, J=8.2HZ),
7.20(d, 1H, J=1.8Hz), 7.12(d, 2H, J=8.7Hz), 7.10(d, 4H, J=8.1Hz),
7.00(d, 1H, J=1.8Hz), 6.64(d, 2H, J=8.9Hz), 5.80(s, 2H), 3.19(m, 4H),
3.04(m, 4H), 2.72(m, 2H), 2.34(s, 6H), 1.87(m, 2H), 1.70(m, 2H), 1.59(m, 2H), 1.01(m, 1H), 0.91(m, 1H), 0.61(t, 3H).

元素分析[式C44H46Cl3N3O(867.23)に基づく算出]
理論値:C60.94, H5.35, Cl 12.26, N4.85%.
測定値:C60.79, H5.45, Cl 12.41, N4.83%.

このようにして製造したジアステレオマー塩を、15mLの蒸溜水中の濃縮アンモニア1.4mL溶液に、攪拌しながら、少しずつ添加した。次いで、白色の乳濁液を2時間攪拌した。混合物を濾別し、3mLの水でそれぞれ3回洗浄し、乾燥した。

収率:1.42g(56.8%)、(+)5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(鏡像異性体 純度>99%).

融点:139−141℃

[α]365(c=1, MeOH)=+8.1°

IR(KBr): 3137, 1719, 826cm-1.

1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz): 0.65(3H, t, J=7.4HZ), 0.98-0.86(1H, m), 1.16-1.04(1H, m), 1.50-1.36(2H, m), 1.80-1.70(2H, m), 1.98-1.88(2H, m), 2.27(2H, t, J=7.8Hz), 2.51(4H, t, J=5.0Hz), 3.12(4H, t, J=5.0Hz), 6.81(2H, d, J=9.1Hz), 7.01(1H, d, J=1.8Hz), 7.18(2H, d, J=9.1Hz), 7.23(1H, d, J=1.8Hz), 8.15(1H, s) ppm.

13C-NMR(CDCl3, TMS, 101 MHz): 180.3, 149.9, 137.7, 135.3, 128.9, 128.2, 127.5, 124.4, 122.0, 117.1, 115.7, 57.9, 55.8, 53.0, 49.1, 37.5, 31.1, 26.7, 22.2, 8.5 ppm.

元素分析[式C24H28Cl3N3O(480.87)に基づく算出]
理論値:C59.95, H5.87, Cl 22.12, N8.74%.
測定値:C59.80, H5.81, Cl 22.03, N8.92%.

【0053】
[実施例5]
ラセミ分割による(−)5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オンの製造

実施例4に記載した方法を実施した。混合物中にエタノールが無くなるまで、第1の濾過の濾液を蒸発させ、続いて濃縮アンモニア溶液3mLを添加した。粉末状の沈殿物が生成されるまで懸濁液を攪拌し、濾過し、それぞれ5mLの蒸溜水で3回洗浄し、乾燥させた。収率:3.55g(7.38mmol)−白色粉末。
このようにして得た塩基を53mLのエタノールに溶解させ、次いで、2.99g(7.75mmol)の(S,S)−ジ−p−トルイル−酒石酸及び21mLの蒸留水を添加した。2時間攪拌後、沈澱した固体を濾過し、7.5mLのエタノール−水;5:2(v/v)溶媒混合物で、各3回洗浄し、乾燥した。

収率:3.36g(74.6%)、白色粉末(ジアステレオマー塩)
融点:140−142℃

[α]365(c=1, MeOH)=-225.6°

1H-NMR(CDCl3, TMS, 500 MHz): 8.35(s, 1H), 7.89(d, 4H, J=8.2HZ),
7.20(d, 1H, J=1.8Hz), 7.12(d, 2H, J=8.7Hz), 7.10(d, 4H, J=8.1Hz),
7.00(d, 1H, J=1.8Hz), 6.64(d, 2H, J=8.9Hz), 5.80(s, 2H), 3.19(m, 4H),
3.04(m, 4H), 2.72(m, 2H), 2.34(s, 6H), 1.87(m, 2H), 1.70(m, 2H), 1.59(m, 2H), 1.01(m, 1H), 0.91(m, 1H), 0.61(t, 3H).

元素分析[式C44H46Cl3N3O(867.23)に基づく算出]
理論値:C60.94, H5.35, Cl 12.26, N4.85%.
測定値:C60.79, H5.45, Cl 12.41, N4.83%.

沈澱したジアステレオマー塩を、15mLの蒸溜水中の濃縮アンモニア1.5mL溶液に、攪拌しながら、少しずつ添加し、2時間攪拌した。次いで、混合物を濾過し、1.5mLの水でそれぞれ3回洗浄し、乾燥した。

収率:1.83g(72.2%)、(−)5,7-ジクロロ-3-{4-[4-(4-クロロフェニル)-ピペラジン-1-イル]ブチル}-3-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(鏡像異性体含量>99%).

融点:139−140℃

[α]365(c=1, MeOH)=−7.8°

IR(KBr): 3137, 1719(C=O), 826cm-1.

1H-NMR(CDCl3, TMS, 400 MHz): 0.65(3H, t, J=7.4HZ), 0.98-0.86(1H, m),
1.16-1.04(1H, m), 1.50-1.36(2H, m), 1.80-1.70(2H, m), 1.98-1.88(2H, m),
2.27(2H, t, J=7.8Hz), 2.51(4H, t, J=5.0Hz), 3.12(4H, t, J=5.0Hz),
6.81(2H, d, J=9.1Hz), 7.01(1H, d, J=1.8Hz), 7.18(2H, d, J=9.1Hz),
7.23(1H, d, J=1.8Hz), 8.15(1H, s) ppm.

13C-NMR(CDCl3, TMS, 101 MHz): 180.3, 149.9, 137.7, 135.3, 128.9, 128.2, 127.5, 124.4, 122.0, 117.1, 115.7, 57.9, 55.8, 53.0, 49.1, 37.5, 31.1, 26.7, 22.2, 8.5 ppm.

元素分析[式C24H28Cl3N3O(480.87)に基づく算出]
理論値:C59.95, H5.87, Cl 22.12, N8.74%.
測定値:C59.80, H5.81, Cl 22.03, N8.92%.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)の5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンの鏡像異性体。
【化1】

【請求項2】
式(I)鏡像異性体及びその薬理上許容される塩との混合物。
【請求項3】
式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン及びその薬理上許容される塩。
【化2】

【請求項4】
式(I)の(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン及びその薬理上許容される塩。
【化3】

【請求項5】
式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン又は式(I)の(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、或いは式(I)の鏡像異性体の混合物、又はその薬理上許容される塩を活性成分として含む医薬。
【請求項6】
抑うつ症、不安症、分裂病、気分障害、社交恐怖症、広場恐怖症、特定状況恐怖症、うつ病、精神減退、認知障害、中枢神経系起源性的障害、記憶障害トラウマ、外傷後ストレス障害、脳トラウマ、痴呆症、中枢神経系起源細胞壊死、アルツハイマー症、ストレス障害、胃腸障害、心臓血管障害、腎不全、耳鳴り、難聴等中枢神経系障害を治療又は予防するのに適する請求項3に記載の医薬。
【請求項7】
式(II)の(+)鏡像異性体及び式(I)の(−)鏡像異性体の混合物を、光学活性酸で分割することを含む式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンを製造する方法。
【請求項8】
式(II)のラセミ5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンを出発物質として使用する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
光学活性酸として、光学活性酒石酸誘導体、好ましくは光学活性ジ−p−トルイル−酒石酸を使用する請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
鏡像異性体の分割を、双極性非プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒、好ましくは炭素原子1〜4個の脂肪族アルコール及び水との混合物の中で行う請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
鏡像異性体の分割を、光学活性ジ−p−トルイル−酒石酸を使用して、エタノール−水混合溶媒中で行う請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の(+)又は(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンの医薬としての使用。
【請求項13】
式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、又は式(I)の(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、或いはそれらの混合物、又はそれらの薬理上許容される塩を、薬理上許容される賦形剤、または任意成分として助剤と混合し、得た混合物を製剤投与剤形に変換することを含む、抑うつ症、不安症、分裂病、気分障害、社交恐怖症、広場恐怖症、特定状況恐怖症、うつ病、精神減退、認知障害、中枢神経系起源性的障害、記憶障害トラウマ、外傷後ストレス障害、脳トラウマ、痴呆症、中枢神経系起源細胞壊死、アルツハイマー症、ストレス障害、胃腸障害、心臓血管障害、腎不全、耳鳴り、難聴等中枢神経系障害を治療又は予防するのに適する医薬を製造する方法。
【請求項14】
式(I)の(+)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン、又は式(I)の(−)5,7−ジクロロ−3−{4−[4−(4−クロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]ブチル}−3−エチル−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンを治療上の有効量患者に投与することを含む抑うつ症、不安症、分裂病、気分障害、社交恐怖症、広場恐怖症、特定状況恐怖症、うつ病、精神減退、認知障害、中枢神経系起源性的障害、記憶障害トラウマ、外傷後ストレス障害、脳トラウマ、痴呆症、中枢神経系起源細胞壊死、アルツハイマー症、ストレス障害、胃腸障害、心臓血管障害、腎不全、耳鳴り、難聴等中枢神経系障害を治療又は予防する方法。

【公表番号】特表2012−517413(P2012−517413A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548788(P2011−548788)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/HU2010/000014
【国際公開番号】WO2010/089616
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(591010077)
【Fターム(参考)】