説明

中種用油脂組成物

【課題】 フライ中の破裂現象が防止され、サクサクした食感で且つその食感が長時間保たれるフライ食品を得ることができる中種用油脂組成物、及び該中種用油脂組成物を含有してなる中種組成物、該中種組成物を使用したフライ食品を提供すること。
【解決手段】 要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有することを特徴とする中種用油脂組成物、及び該中種用油脂組成物を含有してなる中種組成物、さらに、該中種組成物を使用したフライ食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクサクした食感で且つその食感が長時間保たれるフライ食品を得ることができる中種用油脂組成物、及び該中種用油脂組成物を含有してなる中種組成物、該中種組成物を使用したフライ食品、フライ食品の水分移行防止方法、さらにはフライ中の破裂防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロッケ、メンチかつなどのフライ食品は、中種(食品素材)を、澱粉類と水を主体とし、その他必要に応じ卵液や調味料などを添加したバッター液に浸漬後、パン粉を付着させ、フライ油でフライして得られるものであり、バッター液に含まれる澱粉や蛋白質、あるいは付着させたパン粉が高温のフライ用油脂でフライされることによりサクサクした食感が得られ、これが特徴となっている。
【0003】
また、ドーナツ、フライドパイ、カレーパンなどのフライ食品は、中種(食品素材)を、澱粉類と水を主体とし、その他必要に応じ卵や砂糖等を添加し混合したベーカリー生地で包餡後、フライ油でフライして得られるものであり、ベーカリー生地に含まれる澱粉や蛋白質が高温のフライ用油脂でフライされることによりサクサクした食感が得られ、これが特徴となっている。
【0004】
しかし、これらのフライ食品のサクサク感は、フライ後、時間が経過するにつれ、中種(食品素材)に含まれる水分の移行により徐々に失われ、べたついた食感になってしまう。
【0005】
また、フライ食品を冷凍保管あるいは冷蔵保管した際の再加熱時に、電子レンジを使用するとさらにべとつきの激しい食感になってしまい、当初のサクサク感は微塵もみられなくなってしまう。
【0006】
また、フライ食品を製造する際には高温のフライ油で急激にフライ種が加熱されるため、中種に含まれる水分が急激に蒸発し、バッター液で形成された外皮部分を破って中種がフライ油中に流失してしまう破裂現象がしばしば見られる。
【0007】
そこで、これらの場合においても良好なサクサクした食感を保持するフライ食品とするため、あるいは、フライ中の破裂現象を防止するため、従来より、フライ用油脂の改良や、パン粉の改良、中種の改良、バッター液の改良など、様々な改良がなされてきた。
【0008】
このうち、中種組成物の改良に関するものとしては、例えば、蛋白質2〜30重量%、澱粉5〜40重量%、乳化剤0.2〜10重量%が油脂中に分散してなることを特徴とするコロッケ類、フライパイ類のパンク防止用油脂組成物(例えば特許文献1参照)、アルギン酸ナトリウム、塩類及び増粘多糖類を含有する中種組成物。(例えば特許文献2参照)等が知られている。
【0009】
しかし、これらの方法は、蛋白質、澱粉、アルギン酸、増粘多糖類等の増粘安定剤を使用するため、得られるフライ食品の中種部分の食感が粘り強いものとなり、また硬い食感になってしまうという問題があった。
【0010】
そこで、この問題を解決するため、配合油脂の10℃におけるSFC(固体脂含量)が30以下であることを特徴とするコロッケ練り込み用油脂組成物(例えば特許文献1参照)が提案されており、特に結合脂肪酸が主に飽和脂肪酸及び/又はトランス型の不飽和脂肪酸であるモノグリセリドを使用することが好ましいことが記載されている。
【0011】
しかし、特許文献3の方法は、融点の低い油脂を使用するためにフライ食品の中種部分の食感がべちゃつきやすいという問題があり、この点については、上記特定の乳化剤を併用することで改善されるものの、水分含量の多い中種などでは十分な効果は見られなかった。
【0012】
【特許文献1】特開2001−245589号公報
【特許文献2】特開2003−245059号公報
【特許文献3】特開2003−47404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、フライ中の破裂現象が防止され、サクサクした食感で且つその食感が長時間保たれるフライ食品を得ることができる中種用油脂組成物、及び該中種用油脂組成物を含有してなる中種組成物、該中種組成物を使用したフライ食品、フライ食品の水分移行防止方法、さらにはフライ中の破裂防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定の乳化剤を含有する油脂組成物により、上記目的を達成可能なことを知見した。
【0015】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有することを特徴とする中種用油脂組成物、該中種用油脂組成物を3〜30質量%含有してなる中種組成物、該中種組成物を使用したフライ食品を提供するものである。また、本発明は、油相中に、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有する中種用油脂組成物を使用することを特徴とするフライ食品の水分移行防止方法、及び、フライ中の破裂防止方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の中種用油脂組成物を使用することにより、フライ中の破裂現象が防止され、また、サクサクした食感で、その食感が長時間保たれる、コロッケ、メンチかつなどのフライ食品を得ることができる。さらに、該フライ食品は長期冷凍保管品の解凍時に電子レンジを使用したり、電子レンジ調理後冷蔵保管しても良好なサクサク感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明の中種用油脂組成物について詳述する。
【0018】
まず、本発明で使用される主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルについて説明する。
【0019】
上記のポリグリセリン脂肪酸エステルの主要構成脂肪酸はベヘン酸であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中のベヘン酸の含有量が好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80〜100質量%のものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの主要構成脂肪酸がベヘン酸でないと、本発明の効果が得られない。
【0020】
また、上記のポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するベヘン酸以外の脂肪酸としては、特に限定されず、例えばラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0021】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは好ましくは8以下であり、より好ましくは5以下、さらに好ましくは1〜4である。HLBが8を超えるポリグリセリン脂肪酸エステルは、油脂への溶解性が悪くなるので好ましくない。
【0022】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、そのエステル化率が好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。
【0023】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリン残基としては、特に限定されるものではないが、グリセリン重合度が2〜10であることが好ましく、より好ましくは4〜10、さらに好ましくは6〜10である。
【0024】
本発明の中種用油脂組成物は、上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%、好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは4〜25質量%(油相基準)含有する。
【0025】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が0.5質量%未満であると、得られるフライ食品にサクサクした食感が得られず、さらには、フライ中の水分移行抑制効果が得られないため、経日的な食感の変化を防止することができない。また、該ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が35質量%を超えると、得られるフライ食品の食感がワキシーなものとなることに加え乳化剤臭が生じやすい。
【0026】
ここで、なぜ、上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを上記範囲で使用した場合に極めて高い上記効果を呈するのかは明らかではないが、おそらく、乳化剤としての上記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、中種中の水分や澱粉類と強く結合し、複合体を形成することによるものと推察される。
【0027】
本発明の中種用油脂組成物は、油相のSFCが10〜40℃の全ての温度において2〜25%、好ましくは6〜25%となるものであると、中種組成物への混合性が良好な点で好ましい。ここで、油相のSFCが10〜40℃いずれかの温度において2%未満であると、流動性が高すぎて、中種への分散性が悪化し、均一な中種組成物が得られない上に、得られるフライ食品がサクサク感に乏しいものとなってしまうおそれもある。また、油相のSFCが10〜40℃のいずれかの温度において25%を超えると、保存中、あるいは温度変動等によって固化してしまい、その場合、中種への分散性が悪化し、均一な中種組成物が得られない上に、得られるフライ食品の食感が硬すぎ、口溶けの悪いものになってしまうおそれもある。
【0028】
尚、上記SFCは、次のようにして測定する。即ち、先ず、油相を60℃に30分間保持して完全に融解した後、0℃に30分間保持して固化させる。次いで、25℃に30分間保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分間保持する。これを各測定温度に順次30分間保持後、SFCを測定する。
【0029】
上記SFC範囲とするためには、上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルに、食用油脂を、油相のSFCが10〜40℃の全ての温度において2〜25%、好ましくは6〜25%となるように、油脂のヨウ素価、平均脂肪酸鎖長を勘案し、油相に配合することによって得ることができる。
【0030】
本発明で使用する食用油脂としては、食用に適する油脂であればよく、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も挙げられ、更に、これらの食用油脂の水素添加油脂、分別油、エステル交換油等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明の中種用油脂組成物では、上記その他の油脂の中でも、10℃において液状である油脂を使用することが、中種組成物への分散性が良好な油脂組成物が得られる点で好ましく、具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム分別軟部油、パーム分別軟部油のエステル交換油の分別軟部油の中から選択される1種又は2種以上の混合油脂が好ましく使用される。
【0032】
本発明の中種用油脂組成物における上記食用油脂の配合量は、油相中に、好ましくは60〜96質量%、さらに好ましくは70〜96質量%(油相基準)である。
【0033】
また、本発明の中種用油脂組成物は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、上記極度硬化油脂(完全水素添加油脂)を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。
【0034】
一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
【0035】
ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、油脂の全構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0036】
本発明においては、上記食用油脂として、天然油脂、ならびに天然油脂に分別、完全水素添加、及び/又は、エステル交換処理を施した加工油脂から選択される1種又は2種以上を組合せて用いることにより、実質的にトランス酸を含まない中種用油脂組成物を簡単に得ることができる。
【0037】
本発明の中種用油脂組成物の油相含量は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、さらに好ましくは99〜100質量%である。
【0038】
すなわち本発明の中種用油脂組成物における水相含量は、好ましくは20質量%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは1%未満である。
【0039】
油相含量が80質量%未満、すなわち水相成分が20質量%を超えると、サクサクした食感のフライ食品が得られないおそれがある。
なお、本発明においては、上記油相含量は、上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルや食用油脂以外に、下に述べるその他の成分に含まれる油脂分、油溶性成分を含めたものとする。
【0040】
本発明の中種用油脂組成物は、上記以外のその他の成分を含有することができる。該その他の成分としては、例えば、レシチン、グリセリンモノ脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、主要構成脂肪酸がベヘン酸以外の脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、ベータカロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0041】
本発明の中種用油脂組成物における上記その他の成分の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
次に本発明の中種用油脂組成物の製造方法を説明する。
【0042】
先ず、上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜35質量%(油相基準)含有する油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。そして、次いで殺菌処理を行ってもよい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式等の何れの方法を用いてもよい。
【0043】
次に、溶解した油相(又は油相と水相との混合乳化物)を冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、さらに好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0044】
また、本発明の中種用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0045】
また、本発明の中種用油脂組成物は粉体との混合性を良好にするために、噴霧冷却乾燥機等を用いて、ビーズ状、粉末状にしてもよい。
【0046】
次に本発明の中種組成物について述べる。
【0047】
本発明の中種組成物は、上記の本発明の中種用油脂組成物を好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%含有してなるものであり、フライ中の破裂現象が防止され、該中種組成物を使用して得られたフライ食品はサクサクした食感であって、この食感が長時間保たれ、さらにフライ食品を冷凍保管あるいは冷蔵保管した際の再加熱時に電子レンジを使用しても良好なサクサク感が得られるという特徴を有する。
【0048】
本発明の中種組成物は、従来の中種を製造する際に本発明の中種用油脂組成物を上記の含有量となるように添加して製造すればよい。
【0049】
本発明において、中種とは、パン生地、パイ生地、菓子生地、バッター液等で被覆し、フライするフライ食品の、内容物である食品素材を指す。
【0050】
上記内容物である食品素材の具体例としては、馬鈴薯、甘薯、玉葱、肉類等の混捏物や、カレー、カスタード、ジャム、餡等のペーストを挙げることができる。
【0051】
本発明の中種用油脂組成物を中種組成物に含有させる方法としては、常法にて中種を作製する際に、その材料と共に本発明の中種用油脂組成物を添加し、混合する方法や、中種に本発明の中種用油脂組成物を添加し、混合する方法を挙げることができる。
【0052】
なお、本発明の中種用油脂組成物は、分散性が極めて良好であるため、上記混合方法は手混ぜであっても簡単に均質な中種組成物とすることが可能であるが、コロイドミル等の乳化機、ホモゲナイザー等の均質化機を使用することにより、より均質で良好な物性の中種組成物を得ることができる。
【0053】
また、本発明の中種用油脂組成物は、常温で使用してもよく、また、加温溶解して使用してもよい。
【0054】
次に、本発明のフライ食品について述べる。
【0055】
本発明のフライ食品は、本発明の中種組成物を使用して得られたフライ食品であり、上記の特徴を有するものである。
【0056】
本発明のフライ食品の製造方法は、従来のフライ食品の製造方法と同様であり、例えば本発明の中種組成物を、パン生地、パイ生地、菓子生地、バッター液等の被覆生地で被覆し、これを直ちに、又は冷蔵や冷凍等の方法にて保管後、フライ油でフライする。
【0057】
ここで、上記被覆の前に必要に応じ中種組成物に小麦粉等の打ち粉をまぶしてもよく、また、被覆後に更にパン粉を付けてもよい。
【0058】
具体的なフライ食品の例としては、コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、ドーナツ、フライドパイ、カレーパン等を挙げることができる。
【0059】
なお、上記被覆生地に対しても、上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させるとさらに本発明の効果を高めることが可能であるため好ましい。
【0060】
被覆生地に対する上記主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルの添加方法は、本発明の中種への添加方法と同様の方法を採ることができる。
【0061】
次に本発明のフライ食品の水分移行抑制方法について述べる。
【0062】
本発明のフライ食品の水分移行抑制方法は、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有する中種用油脂組成物を使用することで、フライ食品の表面部分の、中種に含まれる水分からの移行による吸湿、すなわち水分移行を抑制するものである。
【0063】
詳しくは、油相中に、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜35質量%(油相基準)含有する中種用油脂組成物を、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%含有させた中種組成物を使用してフライ食品を製造することで、上記水分移行を抑制させ、結果としてサクサクした食感で且つその食感が長時間保たれるフライ食品を得ることができるというものである。
【0064】
最後に本発明のフライ中の破裂防止方法について述べる。
【0065】
本発明のフライ中の破裂防止方法は、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有する中種用油脂組成物を使用することで、フライ中の、中種に含まれる水分の急激な蒸発によるフライ食品の破裂を抑制するものである。
【0066】
詳しくは、油相中に、主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを0.5〜35質量%(油相基準)含有する中種用油脂組成物を、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%含有させた中種組成物を使用してフライ食品を製造することで、上記水分の急激な蒸発を抑制させ、結果としてフライ中の破裂を防止することができるというものである。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を比較例と共に挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0068】
〔実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例5〕
<中種用油脂組成物及び中種組成物の製造>
表1に記載の配合からなる油相を80℃に加熱溶解した後、パーフェクターを使用して急冷可塑化し、本発明の中種用油脂組成物、及び、比較例の中種用油脂組成物を得た。なお、冷却速度は−1℃/分であった。
【0069】
なお、表1に記載の乳化剤の、販売元、乳化剤の種類、主要結合脂肪酸の種類、構成する脂肪酸中のベヘン酸の含有量、グリセリン重合度、脂肪酸結合数、エステル化率については、表2にまとめて記載した。
【0070】
次いで、下記の配合・製法でそれぞれ中種組成物を製造した。
【0071】
【表1】

単位:質量部
【0072】
【表2】

【0073】
(中種組成物の製造)
馬鈴薯750gを丸のまま30分茹でて、柔らかくなったら皮をむき裏ごし、熱いうちに塩1.5gを振った。一方、フライパンに合い挽き肉50gを入れ、色が変わるまで炒め、みじん切りにした玉葱120gを加え、5分炒め、塩6g及び砂糖2.5gを添加、混合した後、室温で30℃まで冷却した。ここへ、中種用油脂組成物50gを添加、混合し、中種組成物とした。
【0074】
<バッター液の製造>
下記の配合・製法でバッター液A及びバッター液Bを調製した。
【0075】
(バッター液Aの調製)
1,000ml容のステンレスビーカーに水600gを入れ、撹拌羽根を使用して泡立たないように400rpmで撹拌しながら、ここへ小麦粉300gを投入してさらに2分混合・分散させ、バッター液Aを調製した。
【0076】
(バッター液Bの調製)
1,000ml容のステンレスビーカーに水600gを入れ、撹拌羽根を使用して泡立たないように400rpmで撹拌しながら、ここへ上記の実施例1で得られた油脂組成物をバッター用油脂組成物として100gを一度に添加し、さらに400rpmで2分混合・分散させた。次いで小麦粉300gを投入してさらに2分混合・分散させ、バッター液Bを調製した。
【0077】
〔実施例6〜実施例12、比較例6〜比較例10〕
<フライ食品の製造>
上記の実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた中種組成物、上記バッター液A又はバッター液Bを用いて、下記の表3記載の配合、下記の製法でフライし、本発明のフライ食品である実施例6〜12及び比較例6〜10のポテトコロッケを製造した。
【0078】
【表3】

【0079】
(製法)
中種組成物を50gずつに分割し、小判型に成形後、バッター液に浸漬し、パン粉適量を表面に付着させた後、ただちに180℃に加熱した菜種油で3分間フライした。
【0080】
<SFC評価>
上記の実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた中種用油脂組成物について下記の方法でSFC評価を行なった。
【0081】
まず、中種用油脂組成物の油相を60℃に30分間保持して完全に融解した後、0℃に30分間保持して固化させる。次いで、25℃に30分間保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分間保持する。これを各測定温度に順次30分間保持後、SFCを測定した。SFCの評価については、下記の評価基準に従い、4段階で評価し、その結果は表4に記載した。
【0082】
(SFCの評価基準)
◎:油相のSFCが10〜40℃の全ての温度において6〜25%である
○:油相のSFCが10〜40℃の全ての温度において2〜25%であるが、6〜25%ではない
△:油相のSFCが10〜40℃のいずれかの温度で2%未満であるか、25%を超えている
×:油相のSFCが10〜40℃の全ての温度において2〜25%の範囲外である
【0083】
<フライ時の破裂評価>
実施例6〜12及び比較例6〜10で得られたフライ食品のフライ中の破裂状況について下記評価基準に従って3段階で評価した。その結果を表4に記載した。
【0084】
(評価基準)
○:破裂しなかった。
△:表面に亀裂が生じたものが多く、破裂したものが数個見られた。
×:破裂したものが30%以上あった。
【0085】
<フライ食品の食感評価>
実施例6〜12及び比較例6〜10で得られたフライ食品のフライ直後及びフライ5時間後の食感(サクサク感、口溶け)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表4に記載した。
【0086】
食感比較試験は20人のパネラーに、フライ食品を試食させ、食感(サクサク感、口溶け)について、下記の3点評価をさせ、その合計点を評価点数とし、下記評価基準に当てはめ評価結果とした。
【0087】
食感(サクサク感)
5点:非常にサクサクしていて、極めて良好な食感である
3点:サクサクした箇所が部分的に残っており、ほぼ良好な食感である
1点:しんなりしていて、食感が不良である
【0088】
食感(口溶け)
5点:極めて良好な口溶けである
3点:ほぼ良好な口溶けである
1点:ワキシーであり、不良である
【0089】
(食感評価基準)
◎ :合計点/人数が4.1点以上5.0点以下
○ :合計点/人数が3.1点以上4.0点以下
△ :合計点/人数が2.1点以上3.0点以下
× :合計点/人数が1.1点以上2.0点以下
××:合計点/人数が1.0点以下
【0090】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有することを特徴とする中種用油脂組成物。
【請求項2】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率が50〜100%であることを特徴とする請求項1記載の中種用油脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の中種用油脂組成物を0.1〜30質量%含有してなる中種組成物。
【請求項4】
請求項3記載の中種組成物を使用したフライ食品。
【請求項5】
主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有する中種用油脂組成物を使用することを特徴とするフライ食品の水分移行抑制方法。
【請求項6】
主要構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを油相中0.5〜35質量%含有する中種用油脂組成物を使用することを特徴とするフライ中の破裂防止方法。

【公開番号】特開2010−81868(P2010−81868A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254209(P2008−254209)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】