説明

中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのシステム、装置、及び方法

中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのシステム、装置、及び方法を提供する。中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのシステム、装置、及び方法を本明細書に説明する。一部の実施形態では、眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボットを含み、遠隔ロボットマスターは、医療専門家によって制御される少なくとも2つのマスタースレーブインタフェースを有し、スレーブ混成ロボットは、患者の頭部に取外し可能に取り付けられるフレームに取り付けられた少なくとも2つのロボットアームを有し、少なくとも2つのロボットアームの各々は、並列ロボット及び直列ロボットを有し、直列ロボットは、カニューレを収容するチューブを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2006年9月19日に出願した米国特許仮出願第60/845、688号及び2007年3月30日に出願した第60/920、848号の恩典を請求するものであり、それによってこれらの特許の内容全体を本明細書に引用により組み込むものとする。
【0002】
中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのシステム、装置、及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
中空の解剖学的に懸吊された器官の最小限侵襲手術(例えば、眼科顕微鏡手術)は、医療専門家に独特な課題を呈している。眼科顕微鏡手術に焦点を絞ると、これらの課題は、眼球が中空で移動可能の器官であり、眼球の中においては極めて精密かつ繊細な外科的作業を行う必要があるという事実から生じている。眼科手術中に、医療専門家は、顕微鏡を使用し、拡張した虹彩を覗くことによって網膜を視覚化する。医療専門家によって現在使用されているツールは、眼球内の機敏性を欠いており、最小限の自由度に制約されている。従って、複雑な眼科手術を実施することは極めて困難である可能性がある。更に、医療専門家はまた、極めて高い精度で複数のツールを操作しながら、眼球の周辺の領域に近づきかつそれらの領域を視覚化することを可能にするために、顕微鏡の下で眼球を回転させる必要にせまられる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/845、688号
【特許文献2】米国特許仮出願第60/920、848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顕微鏡手術の課題は、顕微鏡を使用して視覚化する時のツールの眼球内機敏性の欠如、制限された力のフィードバック、及び奥行き知覚の欠如を含む。眼科顕微鏡手術はまた、他の手術分野においては一般的でない精度及び両手の機敏性のレベルを必要とする(例えば、5〜10ミクロンの位置決め精度を必要とする可能性がある)。これらの困難かつ精密な両手の作業は、ロボット支援の潜在的な恩典及びその必要性を明らかにしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の実施形態では、眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボットを有し、遠隔ロボットマスターは、医療専門家によって制御される少なくとも2つのマスタースレーブインタフェースを有し、スレーブ混成ロボットは、患者の頭部に取外し可能に取付け可能なフレームに取り付けられた少なくとも2つのロボットアームを有し、少なくとも2つのロボットアームの各々は、並列ロボット及び直列ロボットを有する。
【0007】
一部の実施形態では、眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、フレーム、第1のロボットアーム、第2のロボットアーム、及び遠隔ロボットマスターを有し、フレームは、患者の頭部に取外し可能に取り付けられ、第1のロボットアーム及び第2のロボットアームの各々は、並列ロボット及び直列ロボットを有し、遠隔ロボットマスターは、医療専門家によって制御されるマスタースレーブインタフェースを有し、直列ロボットは、チューブ及びカニューレを有する。
【0008】
一部の実施形態では、中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボットを有し、遠隔ロボットマスターは、医療専門家によって制御される少なくとも1つのマスタースレーブインタフェースを有し、スレーブ混成ロボットは、患者に取外し可能に取付け可能なフレームに取り付けられた少なくとも1つのロボットアームを有し、少なくとも1つのロボットアームは、並列ロボット及び直列ロボットを有する。
【0009】
一部の実施形態では、中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのスレーブ混成ロボットは、患者に取外し可能に取付け可能なフレーム及びフレームに取外し可能に取り付けられた少なくとも1つのロボットアームを有し、少なくとも1つのロボットアームは、並列ロボット及び直列ロボットを有し、直列ロボットは、予め曲げられたNiTiカニューレを送出するためのチューブを有し、チューブ及び予め曲げられたNiTiカニューレの少なくとも一方は、その縦軸線の周りに回転することができ、予め曲げられたNiTiカニューレは、チューブから延びる時に曲がることができる。
【0010】
開示する内容の上記及び他の目的、並びに利点は、全体を通して同じ参照文字が同じ部分を指す添付の図面と併せて以下の詳細説明を考慮することにより明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】開示する内容の一部の実施形態により遠隔ロボット顕微鏡手術システムを使用する方法を図式的に示す図である。
【図1B】開示する内容の一部の実施形態により眼球の遠隔ロボット顕微鏡手術のための全体的な手術構成を図式的に示す図である。
【図2】開示する内容の一部の実施形態により患者の頭部上に位置決めされたスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図3】開示する内容の一部の実施形態により遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボットを含む眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムを図式的に示す図である。
【図4A】開示する内容の一部の実施形態により直列ロボット及び並列ロボットを含むスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図4B】開示する内容の一部の実施形態により直列ロボットに含まれるシリアルコネクタを図式的に示す図である。
【図4C】開示する内容の一部の実施形態により直列ロボットに含まれるシリアルコネクタを図式的に示す図である。
【図5】開示する内容の一部の実施形態により直列ロボットに含まれる直列連接器を図式的に示す図である。
【図6A】開示する内容の一部の実施形態によりカニューレを送出するためのチューブを図式的に示す図である。
【図6B】開示する内容の一部の実施形態によりカニューレを送出するためのチューブを図式的に示す図である。
【図7】開示する内容の一部の実施形態により並列ロボットの脚部を示すスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図8】開示する内容の一部の実施形態により眼球及びi番目のスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図9】開示する内容の一部の実施形態により眼球及びi番目のスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図10A】開示する内容の一部の実施形態により器官及びi番目のスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【図10B】開示する内容の一部の実施形態により器官及びi番目のスレーブ混成ロボットを図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示する内容に従って、中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのシステム、装置、及び方法を開示する。
【0013】
一部の実施形態では、遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、少なくとも2つのロボットアーム(各ロボットアームは、並列ロボットに取り付けられた直列ロボットを有する)を有するスレーブ混成ロボットと、少なくとも2つのユーザ制御式マスタースレーブインタフェース(例えば、ジョイスティック)を有する遠隔ロボットマスターとを含むことができる。更に、各ロボットアームにおける直列ロボットは、内部にある時は実質的に直線状になっている予め曲げられたNiTiカニューレを収容するチューブを有することができる。ユーザ制御式マスタースレーブインタフェースの各々を使用して、ユーザは、各ロボットアームにおける並列ロボット及び直列ロボットを制御することにより、少なくとも2つのロボットアームの移動を制御することができる。すなわち、ユーザは、マスタースレーブインタフェースによって各アームにおける直列ロボット及び並列ロボットの組み合わせた移動を制御することができる。
【0014】
図1Bを参照すると、眼球の遠隔ロボット顕微鏡手術における全体的な手術構成を示している。一部の実施形態では、眼科手術に関する一般的な手術構成100は、手術台110、手術のための顕微鏡120、スレーブ混成ロボット125、及び遠隔ロボットマスター(図示せず)を含む。患者は、頭部115を図示のような位置にして手術台110上に横たわる。眼科手術中に、手術台110上に位置決めされた患者は、その頭部にフレーム130が取外し可能に取り付けられ、スレーブ混成ロボットがフレーム130に取外し可能に取り付けられる。更に、医療専門家は、手術のための顕微鏡120を通して患者の眼球を覗くことができ、スレーブ混成ロボット125と通信している遠隔ロボットマスターにより、薬剤供給、吸引、及び光供給、並びにマイクログリッパ、ピック、及びマイクロナイフの少なくとも1つの供給を制御することができる。
【0015】
図1Aを参照すると、遠隔ロボット顕微鏡手術システムを使用する方法を図式的に示している。初期設定(図1Aの101)において、スレーブ混成ロボットは、器官上に位置決めすることができる(例えば、患者の頭部に連結されたフレームに取り付けて)。例えば、第1のロボットアーム(第1の並列ロボット及び第1の直列ロボットを有する)及び第2のロボットアーム(第2の並列ロボット及び第2の直列ロボットを有する)を有するスレーブ混成ロボットは、器官に進入するのに必要な移動量を最小限にする位置に両アームを置くことができる。器官進入(図1Aの102)において、第1のロボットアームを制御するために第1のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して、ユーザは、第1の並列ロボットを移動させることにより、第1の予め曲げられたNiTiカニューレを収容する第1のチューブを患者の器官内に挿入することができる。同様に、第2のロボットアームを制御するために第2のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して、ユーザは、第2の並列ロボットを移動させることにより、第2のチューブを患者の器官内に挿入することができる。
【0016】
器官内で、ユーザは、器官操作(図1Aの105)及び器官内手術(図1Aの104)のような外科的作業(図1Aの103)を実施することができる。器官操作(図1Aの105)及び器官内手術(図1Aの104)は、連続して(例えば、器官内手術の次に器官操作、器官操作の次に器官内手術など)又は並行して(例えば、器官内手術及び器官操作を実質的に同時に)行うことができる。
【0017】
例えば、器官内手術(図1Aの104)及び器官操作(図1Aの105)を連続して実施することを以下に示す。器官内手術(図1Aの104)を実施する時、第1のロボットアームを制御するために第1のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して、ユーザは、第1の直列ロボットを制御し、第1のチューブから第1の予め曲げられたNiTiカニューレを延ばすことができ、カニューレは、第1のチューブを出る時に曲がる。この曲げは、以下に示すように直列ロボットに関して1つの自由度を表している。更に、第1のロボットアームを制御するために第1のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して、ユーザは、第1の予め曲げられたNiTiカニューレ及び第1のチューブの少なくとも一方をそれらの縦軸線の周りに回転させる(従って、NiTiカニューレを器官内に位置決めする)ために第1の直列ロボットを使用することができる。縦軸線の周りのこの回転は、直列ロボットに関して第2の自由度を表している。同様に、第2のロボットアームを制御するために第2のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して、ユーザは、第2の直列ロボットを使用し、第2の予め曲げられたNiTiカニューレを第2のチューブから外に移動させることができる。第2の予め曲げられたNiTiカニューレは、第2のチューブを出る時に曲がる。また同様に、ユーザは、第2の予め曲げられたNiTiカニューレ及び第2のチューブの少なくとも一方をそれらの縦軸線の周りに回転させることができる。一部の事例では、第2の予め曲げられたNiTiカニューレをチューブから送出することは必要ではない。例えば、第2のチューブは、光を器官内に送出するのに使用することができる。更に、例えば、予め曲げられたNiTiカニューレをチューブの外側に送出し、内蔵された光ファイバを通して光の供給量を制御することができる。更に、例えば、予め曲げられたNiTiカニューレをチューブの外側に送出し、執刀医に側面視野をもたらすことによってツールと網膜の間の距離を視覚化するような用途に対する制御可能な眼球内視覚化のための光ファイバ束の制御された送出を提供することができる。
【0018】
更に、器官内手術(図1Aの104)を実施する時、ユーザは、薬剤送達、吸引、及び光供給、並びにマイクログリッパ、ピック、及びマイクロナイフの少なくとも1つの器官内への送出のために、第1及び第2のNiTiカニューレ及び第1及び第2のチューブの少なくとも1つを利用することができる。ユーザは、患者の器官内で両チューブにより、器官を操作して器官を位置決めする(図1Aの105)ことができる。例えば、第1及び第2のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースの両方を使用して、ユーザは、両並列ロボットを共に移動し(従って、器官内でチューブを移動させる)、器官を操作することができる。更に、器官を操作した後、ユーザは、器官内で付加的な手術を実施することができる(図1Aの104)。
【0019】
器官を出る時に(図1Aの106)、すなわち、器官から手術器具を取り除くために、ユーザは、第1のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを使用して第1のロボットアームを制御する。ユーザは、第1の直列ロボットを使用して第1の予め曲げられたNiTiカニューレを第1のチューブ内に引っ込める。例えば、第2の予め曲げられたNiTiカニューレを送出した位置で、ユーザは、同様に直列ロボットを使用して第2の予め曲げられたNiTiカニューレを第2のチューブ内に引っ込めることができる。第1及び第2のロボットアームをそれぞれ制御するために、第1及び第2のユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを両方使用して、ユーザは、第1及び第2の並列ロボットの両方を移動し、第1及び第2のチューブの両方を器官から引っ込めることができる。緊急の場合には、直列ロボットは、直列ロボットを並列ロボットに連結している高速クランプ機構を解除し、次に2つの並列ロボットを有するフレームを除去することにより、眼球から除去することができる。
【0020】
開示する内容は、体内のあらゆる中空の解剖学的に懸吊された器官の手術に使用することができることは明らかであろう。例えば、開示する内容は、眼球、心臓、肝臓、腎臓、膀胱、又は適切と思われる他のあらゆる実質的に中空の解剖学的に懸吊された器官に使用することができる。本明細書に示す内容を理解するのを容易にするために、以下の説明は、眼球の遠隔ロボット顕微鏡手術に焦点を絞っている。
【0021】
図2を参照すると、患者の頭部上に位置決めされたスレーブ混成ロボット125を示している。一部の実施形態では、スレーブ混成ロボット125は、フレーム210に取り付けることができ、フレームは、次に、患者の頭部215に取り付けられる。更に、スレーブ混成ロボット125は、フレーム210に取り付けることができる第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225を含み、更に、顕微鏡/視野円錐230を含むことができる。更に、一部の実施形態では、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、並列ロボット235(例えば、Stewartプラットホーム、Stewart/Goughプラットホーム、デルタロボットなど)及び直列ロボット240(例えば、継手に連結しているいくつかの剛性リンクから成るロボット)を含むことができる。第1及び第2のロボットアームの一部の部品は、フレームに恒久的に取り付けることができるが、他の部品は、フレームに取外し可能に取り付けることができる。更に、直列ロボットは、並列ロボットに取外し可能に取り付けることができる。例えば、並列ロボット及び直列ロボットを含むロボットアームにおいて、並列ロボットは、フレームに恒久的に取り付けることができ、直列ロボットは、並列ロボットに取外し可能に取り付けることができる。一部の実施形態では、直列ロボットは、例えば、ロック可能調節可能チャックにより、並列ロボットに取外し可能に取り付けることができる。
【0022】
一部の実施形態では、スレーブ混成ロボットは、フレームに取外し可能に取り付けられた少なくとも2つのロボットアームを含む。例えば、ロボットアームは、調節可能ロック可能リンク、摩擦嵌め、クランプ嵌合、螺合、又は適切と思われる他のあらゆる機械的方法及び器具によってフレームに取り付けることができる。更に、ロボットアームは、フレームに恒久的に取り付けることができる。例えば、ロボットアームは、溶接、接着剤、又は適切と思われる他のあらゆる機構によって取り付けることができる。
【0023】
一部の実施形態では、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、システムの初期設定において(例えば、手術の開始において)所定の位置に調節することができる。これは、例えば、ロボットアームを眼球と合わせるために実施することができる。更に、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、直列ロボット及び並列ロボットを有することができ、直列ロボット又は並列ロボットの一方だけをシステムの初期設定において所定の位置に調節することができる。
【0024】
一部の実施形態では、フレーム210は、バイトプレート245(例えば、患者が噛みしめる患者の口に置かれる品目)及び手術用ストラップ250により、患者の頭部に取り付けることができる。フレーム210は、取り付けられる時、患者に外傷が最小限の量になるように設計することができる。例えば、フレーム210は、冠状ストラップ(例えば、患者の頭部の周りに置かれるストラップ)及び係止バイトプレート(例えば、患者の口の上に固定することができ、上歯上で係止バイトプレートされるバイトプレート)によって患者の頭部に取り付けることができる。フレームを患者の頭部に取り付けるあらゆる機構を使用することができる。例えば、フレームは、バイトプレート、手術用ストラップ、又は締結ネジにより、患者の頭部に取り付けることができる。更に、フレーム210は、患者の頭蓋骨に直接螺合することができる。
【0025】
更に、バイトプレート245は、空気及び吸引入口(図示せず)を含むことができる。例えば、緊急の時に、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、フレームから解除することができ、患者は、バイトプレート入口内のチューブ(図示せず)を通して空気及び吸引を受けることができる。
【0026】
フレーム210は、中空の中心を有する実質的に円形に作られた実質的に単体の材料を使用して作ることができる。更に、フレーム210の形状は、患者の顔の曲線に合うように設計することができる。例えば、フレーム210は、実質的に円形、楕円形、又は適切と思われる他のあらゆる形状とすることができる。フレーム材料は、完全にオートクレーブ処理されるように選択することができる。例えば、フレーム材料は、金属、プラスチック、混合材料、又はオートクレーブに適切と思われる他のあらゆる材料を含むことができる。更に、フレーム210は、完全にオートクレーブ処理されないように選択される材料を含むことができる。すなわち、フレームは、1回使用型とすることができる。
【0027】
一部の実施形態では、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、混成ロボットを含むことができる。混成ロボットとは、ロボットアームの各々上で使用するために組み合わされた1つより多いロボットのあらゆる組合せを指すことを理解すべきである。例えば、一部の実施形態では、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、2自由度直列ロボット(例えば、眼球内機動ロボット)に取り付けられた6自由度並列ロボット(例えば、Stewartプラットホーム、Stewart/Goughプラットホーム、デルタロボットなど)を含み、これらのロボットは、組み合わされると、システム内に16自由度を発生させる。混成ロボットは、あらゆる数の自由度を有する並列ロボットを含むことができる。更に、2自由度直列ロボット(例えば、眼球内機動ロボット)は、眼球内機敏性をもたらすことができるが、並列ロボットは、眼内で眼球及びあらゆる手術ツールの広域にわたる高精度位置決めをもたらすことができる。更に、混成ロボットは、直列ロボット、並列ロボット、スネークロボット、電子機械ロボット、又は適切と思われる他のあらゆるロボットを含むロボットのあらゆる組合せを含むことができる。
【0028】
第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、実質的に同一とすることができる。例えば、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225の両方が、並列ロボット及び直列ロボットを含むことができる。更に、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、大きく異なることができる。例えば、第1のロボットアーム220は、第2の直列ロボットに取り付けられた第1の並列ロボットを含むことができるが、第2のロボットアーム225は、第2の並列ロボットに取り付けられた第1の並列ロボットを含むことができる。
【0029】
一部の実施形態では、スレーブ混成ロボット125は、2つのロボットアームのみを含む。2つのロボットアームを使用することにより、ユーザの両手の機敏性が増大する。例えば、2つのロボットアームは、2つのユーザ制御式マスタースレーブインタフェース(例えば、各手と接触する1つのコントローラ)を使用して医療専門家によって制御することができる。更に、2つより多いロボットアームをスレーブ混成ロボット125内で使用することができる。例えば、4つのロボットアームをスレーブ混成ロボット125内で使用することができる。あらゆる適切な数のロボットアームをスレーブ混成ロボット125内で使用することができる。
【0030】
ロボットアームは、将来の手術で再使用するように構成することができる。例えば、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、オートクレーブ内に置かれるように設計することができる。更に、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、1回使用のために設計することができる。例えば、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、使い捨て1回使用製品として設計することができる。更に、ロボットアームの部品が1回使用のために設計することができる一方、他の部品は、将来の手術で使用するように設計することができる。例えば、第1のロボットアーム220及び第2のロボットアーム225は、1回使用することができる使い捨てカニューレ及び再使用可能な並列ロボットを含むことができる。
【0031】
一部の実施形態では、スレーブ混成ロボットは、各電気部品に24ボルト及び0.8アンペアより小さいものを使用するように設計することができる。24ボルト及び0.8アンペアより小さいものを使用することにより、患者に対する安全性の懸念を最小限にすることができる。更に、一部の実施形態では、並列ロボット及び直列ロボットの両方は、無菌カーテン及びフレーム支持を可能にし、並列ロボット及び直列ロボットがオートクレーブ処理されるように設計することができる。
【0032】
図3を参照すると、一部の実施形態では、眼科手術300のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムは、遠隔ロボットマスター305及びスレーブ混成ロボット325を含む。一部の実施形態では、遠隔ロボットロボットマスター305は、コントローラ310及びユーザ制御式マスタースレーブインタフェース315(例えば、2つの力フィードバックジョイスティック)を含む。一部の実施形態では、コントローラ310は、機敏性最適化ツール、力フィードバックシステム、及び振動フィルタリングシステムの少なくとも1つを含む。
【0033】
力フィードバックシステムは、ロボットアームによって及ぼされる力(例えば、眼内のカニューレ上の力)の量を医療専門家325に示すディスプレイ320を含むことができる。更に、力フィードバックシステムは、医療専門家がロボットアームに力を加えると、ユーザ制御式マスタースレーブインタフェース315に抵抗をもたらす段階を含むことができる。更に、ロボットアームの少なくとも1つは、手術中にアームにかかる力及びトルクの量を測定するための力センサ及びトルクセンサを含むことができる。例えば、ロボットアームの少なくとも1つは、力フィードバックのための6軸力センサを含むことができる。これらのセンサは、医療専門家に力フィードバックをもたらすために使用することができる。ロボットアームにかかる力は、患者を傷つけるのを防ぐために測定することができる。
【0034】
振動減衰システムをロボットマスター305に含むことができる。例えば、振動減衰は、運動指令を送出する前に遠隔ロボットマスター側の外科医の震えをフィルタリングすることによって達成することができる。例えば、マスタースレーブインタフェース(例えば、ジョイスティック)の移動は、スレーブ混成ロボットのPID(比例、積分、及び微分)コントローラに関する設定値としてコントローラによってフィルタリングし、かつ送出することができる。この例において、マスタージョイスティックの2つの傾斜角は、x方向及びy方向の軸線方向並進運動に関連付けることができる。マスタースレーブインタフェース(例えば、ジョイスティック)の方向は、x−y平面内のスレーブの移動方向に関連付けることができるが、マスタースレーブインタフェース(例えば、ジョイスティック)の傾斜のマグニチュードは、x−y平面内のロボットスレーブの移動速度の大きさに関連付けることができる。別の実施形態では、ユーザは、直列ロボット内に含まれるチューブ(以下に説明する)に力を直接加えることにより、スレーブ混成ロボットを制御することができる。更に、直列ロボットは、ユーザが加える力を読み取って信号をコントローラ310に送出することができる6軸の力及びモーメントセンサを通して、並列ロボットに接続することができ、コントローラは、外科医の手の震えをフィルタリングしながらこれらの指令を運動指令に変換する。振動減衰のためのあらゆる適切な方法を遠隔ロボットマスター305に含むことができる。例えば、振動減衰のためのあらゆる適切な協働操作方法を使用することができる。
【0035】
一部の実施形態では、機敏性最適化ツールは、ユーザの機敏性を増加するためのあらゆる機構を含むことができる。例えば、機敏性最適化ツールは、眼内に進入するための予め計画した経路を利用することができる。一部の実施形態では、機敏性最適化ツールは、予め計画した経路を使用することによって眼内へのチューブを送出する。
【0036】
遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボットは、高速専用「イーサネット(登録商標)」接続を通じて通信することができる。遠隔ロボットマスターとスレーブ混成ロボットの間の適切と思われるあらゆる通信機構を使用することができる。更に、医療専門家及び遠隔ロボットマスターは、スレーブ混成ロボット及び患者とは大きく異なる位置に存在することができる。
【0037】
図4Aを参照すると、一部の実施形態では、スレーブ混成ロボットは、直列ロボット405及び並列ロボット410を含むことができる。更に、一部の実施形態では、直列ロボット405は、プラットホーム415(例えば、並列ロボットプラットホーム)及び直列連接器407を接続するためのシリアルコネクタ406を含むことができる。並列ロボットプラットホーム及び直列連接器407を接続するために、あらゆる機械的接続を使用することができる。プラットホーム415は、基部425に取り付けられた脚部420に接続することができる。
【0038】
図4Bを参照すると、シリアルコネクタ406を含む直列ロボット405を図式的に示している。シリアルコネクタは、それをより鮮明に見るために拡大することができる。図4Cを参照すると、シリアルコネクタ406の考えられる構成をより鮮明にみるために、コネクタの分解組立図がある。シリアルコネクタ406のあらゆる適切な構成を使用することができる。例えば、シリアルコネクタ406は、直列連接器407(図4A)を並列ロボット410(図4A)と接続することができる。図4Cを参照すると、プラットホーム415(例えば、並列ロボット移動プラットホーム)は、第1の電気モータ435及び第2の電気モータ437を支持することができる中空アーム430を支持することができる。第1の電気モータ435及び第2の電気モータ437は、バックラッシュ防止傘歯車445を作動させる第1のワイヤドライブと、バックラッシュ防止傘歯車447を作動させる第2のワイヤドライブとを通じて、第1のキャプスタン440及び第2のキャプスタン443を作動させることができ、これらのワイヤドライブは、第3の傘歯車465をその軸の周りで差動させ、かつ支持ブラケット455を傾斜させることができる。第1の電気モータ435及び第2の電気モータ437を差動的に駆動させて、ブラケット455の傾き及び高速クランプ460のカニューレ軸周りの回転を制御することができる。
【0039】
更に、図4Cを参照すると、高速クランプ460の考えられる構成をより鮮明にみるために、高速クランプの分解組立図がある。シリアルコネクタ406に含まれる高速クランプ460は、クランプを通して挿入される器具を固定するために使用することができる。高速クランプ460のためのあらゆる適切な構成を使用することができる。例えば、高速クランプ460は、コレットハウジング450、連結ネジ470、及び可撓性コレット475を含むことができる。連結ネジ470は、コレットハウジング450を第3の傘歯車450に接続することができる。コレットハウジング450は、テーパ付き内腔を有することができ、可撓性コレット475がコレットハウジング450内の適合するネジ穴内に螺挿される時に、可撓性チップ(可撓性コレット475内に含まれている)は、テーパ付き内腔の軸に沿って軸線方向に駆動され、従って、可撓性コレット475の直径を低減することができる。これは、例えば、高速クランプ460を通して挿入される器具を固定するために行うことができる。器具を固定するための他のあらゆる適切な機構を使用することができる。
【0040】
図5を参照すると、一部の実施形態では、直列ロボットは、チューブ505及びカニューレ520の少なくとも一方を眼内に送出するための直列連接器407を含む。一部の実施形態では、例えば、直列ロボット連接器407は、チューブ505及びカニューレ520の少なくとも一方の送出を制御するサーボモータ510及び高精度ボールネジ515を含む。高精度ボールネジ515に連結されたサーボモータ510は、チューブ505に対するカニューレ520の位置を制御するために使用することができるシステムに自由度を付加することができる。例えば、サーボモータ510は、回転する時にナット(図示せず)を軸線方向に駆動する中空リードネジ(図示せず)に連結することができる。更に、例えば、カニューレ520は、前記ナットに接続され、サーボモータ510がリードネジ(図示せず)を回転させる時、上/下に動くことができる。チューブ505及びカニューレ520の送出を制御するあらゆる適切な機構を使用することができる。更に、一部の実施形態では、チューブ505は、カニューレ520を収容する。
【0041】
図6A〜図6Bを参照すると、一部の実施形態では、カニューレ520は、チューブ505を通して眼内に送出することができる。図6Aは、チューブ505内に収容されている間に直線状の姿勢になっているカニューレ520を図式的に示している。図6Bは、カニューレ520がチューブ505を出た(従って、カニューレはその予め曲げられた形状に戻った)時の曲がった姿勢のカニューレ520を図式的に示している。カニューレ520の予め曲げられた形状は、いずれかの形状記憶合金(例えば、NiTi)を使用して形状を決めることによって形成することができ、カニューレは、所定の温度(例えば、体温、室温など)において曲がった姿勢に戻る。更に、カニューレ520は、特定の予め曲げられた形状を有するように説明したが、適切と思われるあらゆる形状(例えば、s形、曲線など)を使用することができる。チューブ505は、近接端610及び遠位端615を含むことができる。更に、カニューレ520は、チューブ505の遠位端615を出ることができる。一部の実施形態では、カニューレ520は、チューブ505を出る時に曲がる予め曲げられたNiTiカニューレを含むことができる。チューブ505及びカニューレ520は、プラスチック(例えば、テフロン(登録商標)、ナイロンなど)、金属(例えば、ステンレス鋼、NiTiなど)、又は他のあらゆる適切な材料のような異なる適切な材料から構成することができる。更に、一部の実施形態では、チューブ505及びカニューレ520の少なくとも一方は、縦軸線620の周りに回転することができる。
【0042】
一部の実施形態では、カニューレ520又はチューブ505は、薬剤送達、吸引、及び光供給の少なくとも1つのために、かつマイクログリッパ、ピック、及びマイクロナイフの少なくとも1つを送出するために使用することができる。例えば、眼球の遠隔ロボット顕微鏡手術中に、医療専門家は、チューブ505からカニューレ520を眼窩内まで延ばすことができる。眼窩内にある間は、医療専門家は、カニューレ520を通してマイクロナイフを送出し、網膜上の組織を除去することができる。
【0043】
更に、一部の実施形態では、カニューレ520は、高精度の機敏な操作を提供するためのバックラッシュのない超弾性NiTiカニューレを含むことができる。バックラッシュのない超弾性NiTiカニューレを使用することは、カニューレの望ましくない移動(例えば、バックラッシュ)を除去することにより、眼窩内への送出の制御を増大させる。更に、チューブ505を出た時のカニューレ520の曲がりは、眼科手術の位置決め性能を増大させることができる。
【0044】
一部の実施形態では、スレーブ混成ロボットは、眼球を操作するように設計することができる。例えば、一部の実施形態では、チューブ505及びカニューレ520の少なくとも一方は、眼球に力を加え、従って、眼球の位置を移動させる。一部の実施形態では、眼球を操作するために眼球内にカニューレ520による力を加えることができる。チューブ505及びカニューレ520の少なくとも一方による目に対する力は、チューブ及びカニューレの少なくとも一方の位置を制御する並列ロボットを移動させることにより発生させることができる。
【0045】
図7を参照すると、並列ロボットは、複数の独立作動式脚部705を含むことができる。独立作動式脚部の長さを変化させると、プラットホーム415の位置及び方向が変化する。脚部705は、ユニバーサルジョイント710、高精度ボールネジ715、バックラッシュ防止歯車対720、及び玉継手725を含むことができる。並列ロボットは、あらゆる数の脚部705を含むことができる。例えば、並列ロボットは、3つから6つの脚部を含むことができる。
【0046】
一部の実施形態では、統一運動学モデルは、スレーブ混成ロボットの2つのロボットアームの関節速度(例えば、並列ロボット及び直列ロボットの移動中の部品が並進運動及び回転を行う速度)と、眼球及び眼球内の手術ツールの捩れの間の関係とを説明する。捩れは、直線速度及び角速度の6次元ベクトルに関連しており、直線速度が角速度の前に置かれることは理解されるであろう。捩れは、以下に示すように(図9の920)、エンドエフェクタの移動を示すことが必要である可能性がある。更に、この定義は、角速度が直線速度の前に置かれる(そのベクトル表記において)標準的な命名法とは異なる可能性がある。
【0047】

【0048】

【0049】

【0050】
一部の実施形態では、システムの運動学的モデル化は、眼球内の切り込み点による運動学的制約及び眼球の限られた自由度を含む。以下では、眼球を伴う2つのアームを有するロボットの運動学を説明しながら、網膜上の目標点に対する直列ロボットエンドエフェクタの相対的運動学を説明する。
【0051】

【0052】
混成ロボット内の最終的な直列フレーム{G}まで続けると、直線速度及び角速度は、次式のように書くことができる。
【0053】

【0054】
ロボットエンドエフェクタのフレーム{Gi}の運動学を表現するために、i番目の混成ロボットシステムの関節パラメータの関数として、以上に展開した直列関係を組み合わせることができる。フレーム{Gi}の捩れと{Ni}の捩れの間の関係で開始して、その中に{Ni}と{Qi}の間の関係を挿入し、次式を得る。
【0055】

【0056】
{Qi}と{Pi}の間の関係及びStewartのヤコビアン方程式(1)の逆行列を挿入し、項を凝集させることにより、i番目の混成ロボットに関する最終的なヤコビアンを以下のように得る。
【0057】

【0058】
エンドエフェクタの眼球に対する運動学もモデル化することができる。例えば、別々に特徴付けられた眼球及びi番目の混成ロボットシステムの運動学により、眼球及びi番目の混成ロボットの運動学的構造を定めるために定式化を組み合わせることができる。この関係は、眼球及び望ましい眼球の角速度に対するエンドエフェクタの望ましい速度に基づいて、ロボット関節パラメータの表現を可能にすることができる。この関係を得るために、網膜表面上の任意の目標点tiを選択することができる。眼球の角速度は、点tiにおける速度を与える。
【0059】

【0060】
方程式(13)及び方程式(15)を方程式(16)に挿入することにより、ロボット関節速度及び望ましい眼球速度の関数としてエンドエフェクタの直線速度を得る。
【0061】

【0062】
更に、線形方程式(17)及び角方程式(19)の速度を組み合わせることにより、点tiに対するエンドエフェクタの捩れを得る。
【0063】

【0064】
ロボットシステムは、挿入点を裂くことによって組織を傷付けることなく眼球を制御するために混成ロボットが協調的に動く(例えば、実質的に一緒に動く)ように制約することができる。この運動は、各挿入アームが挿入点においては眼球表面に等しい速度でのみ動き、挿入針に沿ってはあらゆる速度で動くことを可能にすることにより達成することができる。この組み合わせた運動は、組織を損傷することなく挿入針を挿入点に制約する。
【0065】

【0066】
方程式(28)及び方程式(29)を方程式(24)及び方程式(25)に代入すると、眼球−ロボットシステムの剛体運動に関して与えられる最終的な制約方程式を以下のように得る。
【0067】

【0068】
これらの制約を指標1及び2に関して混成システムの捩れと組み合わせると、混成ロボット関節パラメータを望ましいエンドエフェクタ捩れ及び望ましい眼球速度に関連付ける総合的な眼球−ロボットシステムの望ましい表現を以下のように得る。
【0069】

【0070】

【0071】

【0072】
一部の実施形態では、システムの運動学的モデル化は、中空器官上の切り込み点の運動学的制約を含むことができる。以下に、器官を伴う3つのアームを有するロボットの運動学を説明し、器官上の目標点に対する直列ロボット(例えば、眼球内機敏性ロボット)エンドエフェクタの相対的運動学を説明する。
【0073】

【0074】
一部の実施形態では、モデル化は、器官の弾性及び周辺の組織を考慮することによって達成することができる。更に、一部の実施形態では、以下の分析は、器官弾性を含んでいない。更に、6次元捩れベクトルは、以下のパラメータ化を使用して器官の運動を説明するのに使用することができる。
【0075】

【0076】
一部の実施形態では、直列ロボット(例えば、眼球内機敏性ロボット)エンドエフェクタの器官に対する運動学をモデル化することができる。更に、一部の実施形態では、このモデルは、エンドエフェクタの器官に対する望ましい速度及び器官自体の望ましい速度を表現することができ、器官の内面上の任意の目標点tiを選択することができる。エンドエフェクタフレームの目標点に対する直線速度及び角速度は、次のように書くことができる。
【0077】

【0078】
更に、方程式36及び方程式37を組み合わせることにより、点tiに対するエンドエフェクタの捩れを以下のように得る。
【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
ロボットヤコビ行列の特性を分析することにより、ロボットの静力学的性能を評価することができる。更に、ヤコビアンの特異値を計算する時、ヤコビアンの正規化が必要である可能性がある。これらの特異値は、ヤコビアンの個々のセルの単位に依存する可能性がある。ヤコビアンの単位の不均一性は、エンドエフェクタ捩れの単位の不均一性及び結合空間における単位の不均一性(例えば、直線又は角度のように全ての結合が同じタイプのものであるわけではない場合など)から生じる可能性がある。ヤコビ行列の正規化には、正規化のためにヤコビアンを乗算することにより、結合及びタスク空間変数の範囲に対応するスケーリング行列が必要である。更に、長さの単位を有するヤコビアンの部分を正規化するために特性長さを使用し、正規化されたヤコビアンの最小特異値と最大特異値の比として定められる運動学的調節指数を使用して性能を評価することができる。更に、ヤコビアンスケーリング行列は、変換後の捩れの単位を均一化すると考えられるエンドエフェクタ捩れの物理学的に意味のある変換を使用することによって見つけることができる。設計者は、ヤコビアンの調節指数の計算の前にヤコビアンのスケーリング/正規化係数を判断する必要がある可能性がある。使用される方法論は、各ロボットアームの直列部分及び並列部分における個々の特性長さの使用に依存する。
【0083】

【0084】

【0085】

【0086】
一部の実施形態では、器官内操作及び器官の固定化、制約された器官内移動を伴った器官操作(例えば、眼球内の目標点に対する眼球内の装置の相対位置を維持した状態での眼球の操作)、制約のない器官内移動を伴った器官操作(例えば、眼球内の装置と眼球の間の相対運動に無関係の眼球操作)、並びに器官操作と器官内手術の同時進行の少なくとも4つの手術モードを手術のためのロボットシステムによって実施することができる。
【0087】
更に、上述の4つのモードの各々は、機敏性評価を与えるために使用することができる。例えば、器官固定化を伴った器官内手術は、眼球内機敏性、つまり、このシステムがその2つのアームの一方によって眼球内で特定の手術作業をいかに良く実施できたかの程度を分析するために使用することができる。更に、例えば、制約された器官内移動を伴った器官操作は、軌道上の機敏性、つまり、2つのアームが切り込み点における運動学的制約を順守して網膜に対するグリッパのゼロの速度を維持しながら眼球の回転位置をいかに良く大きく操作できたかの程度を評価するために使用することができる。更に、例えば、制約のない器官内移動を伴った器官操作は、網膜に対するグリッパのゼロの速度の制約がない状態での軌道上の機敏性を評価するために使用することができる。更に、例えば、器官操作と器官内手術の同時進行は、眼球の回転と眼球内手術作業とを同時に行いながら、眼球内及び軌道上の機敏性を評価するために使用することができる。
【0088】

【0089】
器官固定化を伴った器官内手術に対しては、2つのモジュール構成を考慮することができる。第1の構成において、ロボットアームは、遠位機敏性がない標準的眼科のための器具(例えば、それ自体の縦軸線の周りに回転することができる直線状カニューレ)を使用することができる。これは、7自由度ロボットアームをもたらす。7自由度ロボットアームに関するヤコビ行列は、方程式56及び方程式57において

とすることができる。第2の構成において、ロボットアームは直列ロボットを使用し、従って、運動学モデルを方程式34によって表すことができる。眼球内機敏性評価は、これらの両構成(例えば、直列ロボットを含むか含まないか)におけるシステムの性能を比較するために使用することができる。
【0090】

【0091】
制約された器官内移動を伴った器官操作は、眼球を回転させるために両アームを同時に使用する時の軌道機敏性を評価するために使用することができる。この評価は、医療専門家が網膜の周辺領域の視界を得るために顕微鏡の下で眼球を回転させる必要性を扱うように計画することができる。
【0092】
2つのアームは、網膜上のターゲット点に近づくために予め判断することができる。ロボットエンドエフェクタのターゲット点に対する相対位置及び方向は、一定に保たれる。網膜上のターゲット点は、眼球及び所属する座標系{E}において定められた

になるように選択することができる。フレーム{E}は、器官座標系{O}と同様に定めることができ、{W}に対する眼球の相対回転を表すことができる。それにより、ターゲット点は、操作の間に眼球と共に回転することができるようになる。
【0093】
導出の精度を検証するために、10°/secのy軸の周りの眼球の望ましい回転速度を指定することができ、入力関節作動速度は、ヤコビ行列の逆行列によって計算することができる。エンドエフェクタをターゲット点に固定することによって眼球を回転させるために、2つの直列ロボット(例えば、眼球内機敏性ロボット)及び眼球は、その間の相対運動を可能にしない剛体を形成する。直列ロボット関節の速度は、ゼロであるように予想することができる。
【0094】

【0095】
器官操作と器官内手術の同時進行において、両アームは、眼球を操作するために連動する。更に、一方のアームはまた、眼球内で指定された経路に沿って作動する。この組合せ運動を利用するロボットの全体的な機敏性を評価することができる。眼球がy軸の周りに10°だけ回転することができると仮定すると、ロボットシステムの一方のアームは、独立して網膜を走査することができ、これは、このアームと眼球の間に指定された相対運動が存在することができることを意味していることは理解されるであろう。ポート

を通して挿入されたアームが、眼球に対する適切な位置及び方向に固定されたままであると仮定すると、ポート

を通して挿入されたアームは、上述のアームと連動して、眼球をy軸の周りに10°回転させることができるが、このアームはまた、許容域円θ=5π/6に沿って60°だけ網膜を走査する。
【0096】
直線速度及び角速度を並列ロボットプラットホーム中心からフレーム{Qi}に変換することにより、次式に帰結する。
【0097】

【0098】

【0099】

【0100】

【0101】
以上に呈示した考えの他の実施形態、拡張、及び変更も含まれており、本発明の開示を精査すると当業者の理解の範囲内にあるはずである。従って、開示した内容のその様々な態様における範囲は、上述の実施例によって限定されるべきではない。開示した内容の個々の態様及び開示した内容の全体は、本発明の開示の範囲内でそのような設計変更及び将来の発展を考慮するように見なされるべきである。開示した内容は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定することができる。
【符号の説明】
【0102】
101 初期設定
102 器官進入
104 器官内手術
105 器官操作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムであって、
遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボット、
を含み、
前記遠隔ロボットマスターは、少なくとも2つのユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを有し、
前記スレーブ混成ロボットは、患者の頭部に取外し可能に取付け可能なフレームに取り付けられた少なくとも2つのロボットアームを有し、
前記少なくとも2つのロボットアームの各々は、並列ロボットに連結された直列ロボットを有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記並列ロボットは、6自由度を有し、前記直列ロボットは、2自由度を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記直列ロボットは、その縦軸線の周りの1回転自由度、及びエンドエフェクタを曲げる1自由度を含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記エンドエフェクタは、カニューレ及びチューブを含むことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記カニューレは、前記チューブの外側で移動する時に1自由度で曲がるNiTiカニューレであることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記カニューレは、眼球の内側の操作をもたらすためのバックラッシュのない超弾性NiTiカニューレであることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記NiTiカニューレは、薬剤送達と、吸引と、光供給と、マイクログリッパ、ピック、及びマイクロナイフのうちの少なくとも1つの送出とのうちの少なくとも1つのための構造的設計を有することを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記直列ロボットは、前記ロボットアームの各々が実質的に一緒に移動しながら、眼球を操作して固定化することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記スレーブ混成ロボットは、ツール交換、眼球の内側の制御可能な視覚化、制御可能な光源、薬剤送達、及び吸引のうちの少なくとも1つを有する構造的構成を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
眼球内機敏性、眼球の内側の双アーム機敏操作、力のフィードバック、制御可能な照明、吸引及び薬剤送達、並びに眼球の固定化及び操作のうちの少なくとも1つのための構造を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記フレームは、係止バイトプレート及び冠状ストラップの少なくとも一方に取外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記直列ロボットは、前記並列ロボットに取外し可能に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも2つのロボットアームは、眼球の固定化及び操作のうちの少なくとも一方を行うように配置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも2つのロボットアームは、システムの初期設定の位置に調節するための調節可能な構造を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
眼科手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムであって、
フレーム、
第1のロボットアーム、
第2のロボットアーム、及び
遠隔ロボットマスター、
を含み、
前記フレームは、手術される対象物に取外し可能に取り付けることができ、
前記第1のロボットアーム及び第2のロボットアームの各々は、並列ロボット及び直列ロボットを含み、
前記遠隔ロボットマスターは、マスタースレーブユーザ制御式インタフェースを含み、
前記直列ロボットは、チューブ及びカニューレを含む、
ことを特徴とするシステム。
【請求項16】
前記チューブ及びカニューレの少なくとも一方は、眼球の固定化、位置決め、及び操作のうちの少なくとも1つを行うために眼球に力を加えることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記カニューレは、予め曲げられたNiTiカニューレを含み、該カニューレは、チューブから延びていることを特徴とする請求項16に記載のチューブ。
【請求項18】
薬剤送達と、吸引と、光供給と、マイクログリッパ、ピック、及びマイクロナイフのうちの少なくとも1つの送出とのうちの少なくとも1つに対して設計されていることを特徴とする請求項17に記載のカニューレ。
【請求項19】
前記チューブ及び前記予め曲げられたNiTiカニューレのうちの少なくとも一方は、それらの縦軸線の周りに回転することを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のための遠隔ロボット顕微鏡手術システムであって、
遠隔ロボットマスター及びスレーブ混成ロボット、
を含み、
前記遠隔ロボットマスターは、少なくとも1つのユーザ制御式マスタースレーブインタフェースを含み、
前記スレーブ混成ロボットは、患者に取外し可能に取付け可能なフレームに取り付けられた少なくとも1つのロボットアームを含み、
前記少なくとも1つのロボットアームは、並列ロボット及び直列ロボットを含む、
ことを特徴とするシステム。
【請求項21】
前記並列ロボットは、6自由度を有するロボットを含み、前記直列ロボットは、2自由度を有するロボットを含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
チューブと、該チューブの外側で移動する時に1自由度で曲がるNiTiカニューレとを更に含むことを特徴とする請求項21に記載の直列ロボット。
【請求項23】
前記チューブ及びカニューレの少なくとも一方は、それらの縦軸線の周りに回転することを特徴とする請求項22に記載の直列ロボット。
【請求項24】
中空の解剖学的に懸吊された器官の手術のためのスレーブ混成ロボットであって、
患者に取外し可能に取り付けることができ、かつ少なくとも1つのロボットアームが取外し可能に取り付けられたフレーム、
を含み、
前記少なくとも1つのロボットアームは、並列ロボット及び直列ロボットを含み、
前記直列ロボットは、予め曲げられたNiTiカニューレを送出するためのチューブを含み、
前記チューブ及び前記予め曲げられたNiTiカニューレのうちの少なくとも一方は、それらの縦軸線の周りに回転することができ、
前記予め曲げられたNiTiカニューレは、前記チューブから延ばされる時に曲がる、
ことを特徴とするスレーブ混成ロボット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2010−504151(P2010−504151A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529220(P2009−529220)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020281
【国際公開番号】WO2008/036304
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(506118526)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】