説明

中空壁貫通穴の形成方法とそれに用いる枠体

【課題】
中空壁の片側からだけでの作業で、中空壁内部空間への小動物の侵入、火炎の侵入を確実に防止できる中空壁貫通穴を形成する。
【解決手段】
中空壁10の一方の壁板10Aに大サイズ開口部18を形成し、他方の壁板10Bに小サイズ開口部20を形成する。大サイズ開口部18側から枠体22を挿入する。枠体20は、大型フランジ部28、筒部24、小型フランジ部30を有している。枠体20の大型フランジ部28を一方の壁板10Aの外面に密接させビス31で固定すると共に、小型フランジ部30を他方の壁板10Bの内面に密接させビス31で固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空壁貫通穴の形成方法、特に中空壁の片側から貫通穴を形成するのに好適な貫通穴形成方法と、それに用いる枠体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内の間仕切りとして、軽量鉄骨を柱とし、その両面に石膏ボード等の耐火ボードを張り付けて構成される中空壁(間仕切り壁)が普及している。この中空壁は耐火性があり、施工が簡単で、コストが安いという利点がある。
【0003】
このような中空壁に貫通穴を形成して、ケーブル等を通す場合には、次のような方法をとっていた。まず図7(A)に示すように、中空壁10を構成する2枚の壁板10A、10B(1枚の壁板は通常2枚の石膏ボードで構成される)に同じ大きさの開口部12A、12Bを形成する。次に同図(B)に示すように、一方の壁板10Aの外側からフランジ14A付きの筒体16Aを挿入し、他方の壁板10Bの外側からフランジ14B付きの筒体16Bを挿入し、内部空間S内で筒体16Aと16Bを嵌合させると共に、フランジ14Aを一方の壁板10Aの外面に密接させ、フランジ14Bを他方の壁板10Bの外面に密接させて固定していた。ケーブル等を通す場合には、筒体16A、16B内(貫通穴)にケーブル等を通した後、筒体16A、16B内の空隙に防火処理用充填材を詰める(特許文献1参照)。
【0004】
中空壁の貫通穴を上記のような構造にするのは、貫通穴を形成した部分から中空壁の内部空間Sに小動物が入り込むのを防ぐと共に、火災発生時に内部空間S内に火炎が侵入するのを防ぐためである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−247735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の中空壁貫通穴の形成方法では、中空壁の両側から開口部にフランジ付き筒体を挿入する作業を行う必要がある。しかし中空壁の設置場所によっては中空壁の片側でしか作業ができない(反対側に作業ができるだけのスペースがない)場合があり、従来の中空壁貫通穴の形成方法では、中空壁の内部空間への小動物の侵入、火炎の侵入を確実に防止できる貫通穴を形成することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、中空壁の片側での作業で、中空壁内部空間への小動物の侵入、火炎の侵入を確実に防止できる中空壁貫通穴の形成方法と、それに用いる枠体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る中空壁貫通穴の形成方法は、
中空壁の一方の壁板に大サイズ開口部を形成し、他方の壁板に前記大サイズ開口部よりも一回り小さい小サイズ開口部を形成し、前記大サイズ開口部側から、
前記大サイズ開口部には挿入できるが前記小サイズ開口部よりは一回り大きい外周寸法と前記一方の壁板の外面から他方の壁板の内面に達する長さとを有する筒部と、外周縁が前記大サイズ開口部よりも一回り大きく、内周縁が前記筒部の一方の端縁とつながっている大型フランジ部と、外周縁が前記筒部の他方の端縁とつながり、内周縁が前記小サイズ開口部と同じかそれより若干大きい小型フランジ部とを備えた枠体、
を挿入し、前記大型フランジ部を前記一方の壁板の外面に密接させると共に、前記小型フランジ部を前記他方の壁板の内面に密接させる、ことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明に係る中空壁貫通穴用枠体は、中空壁の一方の壁板に形成された大サイズ開口部と、他方の壁板に形成された前記大サイズ開口部よりも一回り小さい小サイズ開口部とに跨って挿入される枠体であって、
前記大サイズ開口部には挿入できるが前記小サイズ開口部よりは一回り大きい外周寸法と前記一方の壁板の外面から他方の壁板の内面に達する長さとを有する筒部と、外周縁が前記大サイズ開口部よりも一回り大きく、内周縁が前記筒部の一方の端縁とつながっている大型フランジ部と、外周縁が前記筒部の他方の端縁とつながり、内周縁が前記小サイズ開口部と同じかそれより若干大きい小型フランジ部とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る中空壁貫通穴用枠体は、周方向に複数の部品に分割されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中空壁の片側だけでの作業で貫通穴を形成することができる。また形成された貫通穴は、大サイズ開口部側から挿入された枠体の筒部が一方の壁板の外面から他方の壁板の内面に達し、枠体の大型フランジ部が一方の壁板の外面に密接し、小型フランジ部が他方の壁板の内面に密接するので、小動物の侵入や火炎の侵入を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔実施形態1〕 図1は本発明に係る中空壁貫通穴形成方法の一実施形態を示し、図2はそれに用いる枠体を示す。この貫通穴形成方法では、まず図1(A)に示すように、中空壁10の一方の壁板10A(作業が行える側の壁板)に大サイズ開口部18を形成し、他方の壁板10Bに前記大サイズ開口部18よりも一回り小さい小サイズ開口部20を形成する。小サイズ開口部20はケーブル等を通すのに必要な大きさとする。大サイズ開口部18と小サイズ開口部20は相似形とし、中心軸線を一致させることが好ましい。次に図1(B)に示すように、大サイズ開口部18側から金属板製の枠体22を挿入する。
【0013】
この枠体22は、図2に示すように、筒部24と、大型フランジ部28と、小型フランジ部30とを有している。
【0014】
筒部24は、前記大サイズ開口部18には挿入できるが前記小サイズ開口部20よりは一回り大きい外周寸法を有し、かつ前記一方の壁板10Aの外面(作業を行う側の面)から他方の壁板10Bの内面(内部空間S側の面)に達する長さを有している。
【0015】
大型フランジ部28は、外周縁が前記大サイズ開口部18よりも一回り大きく、内周縁が前記筒部24の一方の端縁とつながっている。大型フランジ部28には適当間隔でビス穴29が形成されている。
【0016】
小型フランジ部30は、外周縁が前記筒部24の他方の端縁とつながり、内周縁が前記小サイズ開口部20と同じかそれより若干大きい程度に形成されている。小型フランジ部30にも適当間隔でビス穴29が形成されている。
【0017】
このように形成された枠体22を、大サイズ開口部18側から、補助筒部26が小サイズ開口部20に入るように挿入し、大型フランジ部28を一方の壁板10Aの外面に密接させると共に、小型フランジ部30を他方の壁板10Bの内面に密接させる。この状態で、ビス31により大型フランジ部28を一方の壁板10Aに、小型フランジ部30を他方の壁板10Bに固定する。
【0018】
以上のようにして形成された中空壁貫通穴は、2枚の壁板10A、10Bに形成された大サイズ開口部18と小サイズ開口部20に跨って枠体22が挿入され、大型フランジ部28が一方の壁板10Aの外面に密接し、小型フランジ部30が他方の壁板10Bの内面に密接しているため、中空壁10の内部空間Sに小動物や火炎が侵入するのを確実に防止できる。
【0019】
この中空壁貫通穴には、例えば図3(A)に示すようにケーブル32が挿通され、さらに同図(B)に示すように枠体22内の空隙に防火処理用充填材34が充填される。このようにすると、中空壁10の片側で火災が発生したときに、ケーブル32の延焼により中空壁10の反対側に火災が拡大するのを阻止できる。
【0020】
〔実施形態3〕 図4は本発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、枠体22を周方向に分割された4つの部品22A〜22Dで構成し、これらの部品22A〜22Dを現場で組み立てることにより枠体22を構成できるようにしたものである。4つの部品22A〜22Dはそれぞれ、筒部の構成部分24P、大型フランジ部の構成部分28P、小型フランジ部の構成部分30Pを有している。上下の部品22A、22Cの両側には、左右の部品22B、22Dの上辺部及び下辺部と重なる組立代36が形成されている。
【0021】
このような組立式の枠体22を使用すると、中空壁に形成した大サイズ開口部及び小サイズ開口部にケーブル等を通した後でも、枠体を組み立てて、小動物や火炎が侵入するおそれのない貫通穴を形成することができる。
【0022】
〔実施形態4〕 図5は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、枠体22の小型フランジ部30の内周縁に、小サイズ開口部20に挿入される補助筒部26を一体に形成したものである。それ以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。このような構成でも実施形態1と同様の効果が得られる。
【0023】
〔実施形態5〕 図6は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、枠体22の筒部24を、大型フランジ部28と一体の第一の筒部24Aと、小型フランジ部30と一体の第二の筒部24Bとで構成し、第一の筒部24Aと第二の筒部24Bを嵌合させるようにしたものである。この場合は、まず大サイズ開口部18から第二の筒部24B側の部品を中空壁10内に入れ、補助筒部26を小サイズ開口部20に挿入すると共に小型フランジ部30を壁板10Bの内面に密接させてビス31で固定する。次に大サイズ開口部18に第一の筒部24Aを挿入し、その先端部を第二の筒部24Bに嵌合させると共に大型フランジ部28を壁板10Aの外面に密接させてビス31で固定する。このような構成にすると、中空壁10の2枚の壁板10A、10Bの寸法誤差や間隔の違いにも柔軟に対応することができる。
【0024】
〔その他の実施形態〕 以上の実施形態では、大サイズ開口部及び小サイズ開口部が四角形で、枠体も四角筒状の場合を示したが、大サイズ開口部及び小サイズ開口部が円形の場合には、枠体もそれにあわせて円筒状のものにすればよい。
【0025】
また組立式の枠体の場合は、周方向に4つの部品に分割する形態以外でも、例えば周方向に2つ又は3つの部品に分割する形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)、(B)は本発明に係る中空壁貫通穴形成方法の一実施形態を工程順に示す断面図。
【図2】図1の貫通穴形成方法に使用した枠体の、(A)は前方上側斜視図、(B)は後方上側斜視図。
【図3】(A)、(B)は図1で形成した貫通穴にケーブルを通し、防火処理を行う状態を工程順に示す断面図。
【図4】本発明に係る中空壁貫通穴用枠体の他の実施形態を示す分解斜視図。
【図5】本発明に係る中空壁貫通穴用枠体のさらに他の実施形態を使用状態で示す断面図。
【図6】本発明に係る中空壁貫通穴用枠体のさらに他の実施形態を使用状態で示す断面図。
【図7】(A)、(B)は従来の中空壁貫通穴形成方法を工程順に示す断面図。
【符号の説明】
【0027】
10:中空壁
10A、10B:壁板
S:内部空間
18:大サイズ開口部
20:小サイズ開口部
22:枠体
22A〜22D:枠体を組み立てる部品
24:筒部
24A:第一の筒部
24B:第二の筒部
26:補助筒部
28:大型フランジ部
30:小型フランジ部
32:ケーブル
34:防火処理用充填材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空壁の一方の壁板に大サイズ開口部を形成し、他方の壁板に前記大サイズ開口部よりも一回り小さい小サイズ開口部を形成し、前記大サイズ開口部側から、
前記大サイズ開口部には挿入できるが前記小サイズ開口部よりは一回り大きい外周寸法と前記一方の壁板の外面から他方の壁板の内面に達する長さとを有する筒部と、外周縁が前記大サイズ開口部よりも一回り大きく、内周縁が前記筒部の一方の端縁とつながっている大型フランジ部と、外周縁が前記筒部の他方の端縁とつながり、内周縁が前記小サイズ開口部と同じかそれより若干大きい小型フランジ部とを備えた枠体を、
挿入し、前記大型フランジ部を前記一方の壁板の外面に密接させると共に、前記小型フランジ部を前記他方の壁板の内面に密接させる、ことを特徴とする中空壁貫通穴の形成方法。
【請求項2】
中空壁の一方の壁板に形成された大サイズ開口部と、他方の壁板に形成された前記大サイズ開口部よりも一回り小さい小サイズ開口部とに跨って挿入される中空壁貫通穴用枠体であって、
前記大サイズ開口部には挿入できるが前記小サイズ開口部よりは一回り大きい外周寸法と前記一方の壁板の外面から他方の壁板の内面に達する長さとを有する筒部と、外周縁が前記大サイズ開口部よりも一回り大きく、内周縁が前記筒部の一方の端縁とつながっている大型フランジ部と、外周縁が前記筒部の他方の端縁とつながり、内周縁が前記小サイズ開口部と同じかそれより若干大きい小型フランジ部とを備えていることを特徴とする中空壁貫通穴用枠体。
【請求項3】
周方向に複数の部品に分割されていることを特徴とする請求項2記載の中空壁貫通穴用枠体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−104738(P2006−104738A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291682(P2004−291682)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000165996)株式会社古河テクノマテリアル (23)
【Fターム(参考)】