説明

中空封止型半導体装置の製造方法

【課題】工程の簡略化や装置の信頼性の向上を図ることが可能な半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】カバー基材10の一方の面に光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂層を形成する工程と、前記感光性樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を除去するフォトリソグラフィーにより、前記感光性樹脂層の一部を除去し、前記感光性樹脂層の残部からなり且つ接着性を有するスペーサー部30を形成する工程と、半導体又はMEMSを備える機能部40が形成されたウェーハ50の機能面に、前記スペーサー部30を介して前記カバー基材10を貼付し、前記スペーサー部30を硬化せしめて中空封止型積層体を得る工程と、前記中空封止型積層体をダイシングにより分割して前記中空封止型半導体装置を得る工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空封止型半導体装置の製造方法に関し、より詳しくは、半導体又はMEMS(マイクロ エレクトロ メカニカル システム)を備える中空封止型半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化並びに軽薄短小化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化が進んできている。このような電子機器に使用される半導体装置は、小型化且つ多ピン化が進んできており、また、半導体装置を含めた電子部品を実装する実装用基板も小型化、細配線化が進んできている。
【0003】
このような半導体装置の小型化に伴って、従来のようなリードフレームを使用する半導体装置ではその小型化に限界があるため、基板上に半導体素子を実装するBGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Scale Package)といったエリア実装型の搭載方式を採用した半導体装置の他に、MEMS(マイクロ エレクトロ メカニカル システム)といった特殊な機能を有する電子部品が搭載された半導体装置が提案されてきた。
【0004】
そして、このようなMEMSを搭載した半導体装置の製造方法として、例えば特開2004−255487号公報(特許文献1)には、ウェーハ上に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、前記ウェーハ上に複数のMEMS素子を形成するMEMS素子形成工程と、前記ウェーハの前記凹部以外の領域に前記MEMS素子に接続する外部接続端子を形成する端子形成工程と、樹脂膜が形成された基材を用意し、この基材に形成された前記樹脂膜を前記ウェーハ上に貼り付け、前記基材を前記樹脂膜より剥離することで、前記樹脂膜が前記ウェーハ上に形成された状態とし、前記樹脂膜により複数の前記凹部の内部を封止する樹脂膜形成工程と、前記ウェーハを複数の前記凹部毎に分割する分割工程とを含むMEMSの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のようなMEMSの製造方法においては、ウェーハ上にMEMSを形成させるために、ウェーハ上に凹部を形成する必要があったため、工程が増えて効率的に中空封止型半導体装置を製造することができなかった。
【0005】
また、特開2003−347357号公報(特許文献2)には、半導体又はMEMS素子機能面上に感光性樹脂を配置して、フォトリソグラフィーの手法により半導体素子機能面とサブストレートの間に空間部を形成させる半導体パッケージの製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載のような半導体パッケージの製造方法においては、機能面に感光性樹脂を配置させる必要があるため半導体又はMEMSがその感光性樹脂によって汚染されてしまうという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、例えば、特開2007−189032号公報(特許文献3)には、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置の製造方法であって、カバー基材に感光性樹脂を塗布し、カバー基材の一方の面に感光性樹脂層を形成する工程と、前記感光性樹脂層の一部をフォトリソグラフィーにより除去して前記感光性樹脂層の残部からなるスペーサー部を形成する工程と、半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの機能面に、スペーサー部を介してカバー基材を貼付して中空封止型積層体を得る工程と、前記中空封止型積層体をダイシングにより分割して前記中空封止型半導体装置を得る工程とを含む中空封止型半導体装置の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−255487号公報
【特許文献2】特開2003−347357号公報
【特許文献3】特開2007−189032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載のような中空封止型半導体装置の製造方法においては、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させるために、例えば前記ウェーハの機能面上の前記スペーサー部が貼付されるべき部分に予め接着剤層を付加的に形成するといった方法が採用されており、前記ウェーハ及び前記カバー基材のうちのいずれかに接着性を付与することが必要であった。また、このように接着剤層を付加的に形成する場合には、界面が増えることによる接続に起因する不具合の増加が考えられ、また、工程の簡略化という観点からも、このような接着剤層を形成しないでもウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができることが要求されていた。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置を感光性樹脂による汚染を十分に防止しつつ効率よく且つ確実に製造することができ、しかも接着剤層を付加的に形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができるため、工程の簡略化や装置の信頼性の向上を図ることが可能な中空封止型半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カバー基材に感光性樹脂を塗布して前記カバー基材の一方の面に感光性樹脂層を形成させた後に、前記感光性樹脂層の一部をフォトリソグラフィーにより除去して前記感光性樹脂層の残部からなるスペーサー部を形成させ、その後、ウェーハの機能面に前記スペーサー部を介して前記カバー基材を貼り付け、これを分割して半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置を製造する方法において、光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂を用いて接着性を有するスペーサー部を形成することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の中空封止型半導体装置の製造方法は、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置の製造方法であって、
光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂をカバー基材に塗布し、前記カバー基材の一方の面に感光性樹脂層を形成する工程と、
前記感光性樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を除去するフォトリソグラフィーにより、前記感光性樹脂層の一部を除去し、前記感光性樹脂層の残部からなり且つ接着性を有するスペーサー部を形成する工程と、
半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの機能面に、前記スペーサー部を介して前記カバー基材を貼付し、前記スペーサー部を硬化せしめて中空封止型積層体を得る工程と、
前記中空封止型積層体をダイシングにより分割して前記中空封止型半導体装置を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0011】
このような本発明の中空封止型半導体装置の製造方法においては、スペーサー部自体が接着性を有しているため、従来のようにウェーハに接着剤層を形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができる。そのため、本発明においては、工程の簡略化を図ることが可能となると共に、従来のように接着剤層の存在によって中空封止型半導体装置の界面が増えることによる接続に起因する不具合の増加がないために、中空封止型半導体装置の構造上の信頼性の向上を図ることも可能となる。
【0012】
なお、本発明においては、前記カバー基材に感光性樹脂層の残部からなるスペーサー部を形成せしめた後に、そのスペーサー部を介してウェーハとカバー基材とを貼付するため、従来のようにウェーハ上に凹部を形成させる必要がない。また、本発明においては、カバー基材に感光性樹脂を塗布していることから、半導体又はMEMSが配置されたウェーハの機能面に感光性樹脂を塗布する必要がなく、半導体又はMEMSが感光性樹脂によって汚染されることが確実に防止される。
【0013】
このように、本発明によれば、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置を感光性樹脂による汚染を十分に防止しつつ効率よく且つ確実に製造することができ、しかも接着剤層を付加的に形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができるため、工程の簡略化や装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の中空封止型半導体装置の製造方法においては、前記ウェーハに貫通電極が更に形成されていることが好ましい。このように前記ウェーハに貫通電極が形成されていることにより、ウェーハの機能部が配置されていない面上に外部端子を設けることができ、従来のようにカバー基材の一部をダイシングにより除去して端子部を露出させる必要がなくなるため、より効率的に中空封止型半導体装置を得ることができる傾向にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置を感光性樹脂による汚染を十分に防止しつつ効率よく且つ確実に製造することができ、しかも接着剤層を付加的に形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができるため、工程の簡略化や装置の信頼性の向上を図ることが可能な中空封止型半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態においては、先ず、光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂をカバー基材に塗布し、前記カバー基材の一方の面に感光性樹脂層を形成する(工程(i))。
【0018】
図1は、感光性樹脂層が形成されたカバー基材を示す概略縦断面図である。図1に示すカバー基材10においては、その一方の面に感光性樹脂層20が形成されている。このような感光性樹脂層20が形成されたカバー基材10は、工程(i)を実施することによって得られる。
【0019】
カバー基材10としては、半導体又はMEMSを含む空間を封止するためにカバーとして利用でき、しかもダイシングが可能な基材であれば特に制限なく用いることができる。本実施形態においては、カバー基材10としてガラスを用いている。
【0020】
また、本発明に用いる感光性樹脂は、光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂であることが必要である。このような感光性樹脂としては、例えば、特開2006−3860号公報に記載の感光性樹脂組成物を用いることができ、具体的には、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物と、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物を、a/bのモル比が0.1〜10となる範囲で反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂(A)を樹脂成分の主成分として含有する感光性樹脂組成物を用いることができる。このような感光性樹脂組成物を用いることにより、光硬化反応の後にも接着性を有する感光性樹脂層20を形成することができるため、後述する工程(ii)においてそれ自体が接着性を有するスペーサー部を形成することが可能となる。なお、このような感光性樹脂組成物は、例えば、特開2006−3860号公報に記載の方法により製造することができる。
【0021】
本発明に用いる感光性樹脂においては、前記アルカリ可溶性樹脂(A)が下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
前記一般式(1)において、R、R、R、Rは、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示すが、R、R、R、Rが、水素原子であることが好ましい。また、Rは、水素原子又はメチル基を示す。さらに、Aは−CO−、−SO−、−C(CF−、−Si(CH−、−CH−、−C(CH−、−O−、9,9−フルオレニル基又は直結合を示すが、Aが9,9−フルオレニル基であることが好ましい。また、Xは4価のカルボン酸残基を示す。また、Y、Yは独立に水素原子、−OC−Z−(COOH)で示されるカルボン酸残基(mは1〜3の整数を示す。)を示す。さらに、nは1〜20の整数を示すが、nの平均値が1〜10の範囲であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる感光性樹脂は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)に加え、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー(B)、光重合開始剤若しくは増感剤(C)、並びに少なくとも1つのエポキシ基を有するエポキシ化合物(D)を更に含有することが好ましい。
【0025】
前記光重合性モノマー(B)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。これらの光重合性モノマー(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、前記光重合性モノマー(B)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)と前記光重合性モノマー(B)との質量比[(A)/(B)]が20/80〜90/10となる量であることが好ましく、40/60〜80/20となる量であることがより好ましく、60/40〜80/20となる量であることが特に好ましい。前記質量比が前記下限未満では、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジがぎざついてシャープにならないといった問題が生じる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅よりも細くなり、パターンの欠落が生じ易くなるといった問題が生じる傾向にある。
【0027】
前記光重合開始剤若しくは増感剤(C)としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルビイミダゾール、2,4,5−トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類;2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルチオスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、1−(4−フェニルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−ベンゾアート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1,2−ジオン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニルフェニル)ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート等のO−アシルオキシム系化合物類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類;アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンが挙げられる。これらの光重合開始剤若しくは増感剤(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、これらの光重合開始剤若しくは増感剤(C)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)と前記光重合性モノマー(B)の合計量100質量部に対して2〜30質量部となる量であることが好ましく、5〜20質量部となる量であることがより好ましい。光重合開始剤若しくは増感剤(C)の含有量が前記下限未満では、光重合の速度が遅くなって感度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太くなった状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現しにくくなる傾向にある。
【0029】
前記エポキシ化合物(D)としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を少なくとも1個有する化合物が挙げられる。これらのエポキシ化合物(D)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのエポキシ化合物(D)を配合することにより、本発明に用いる感光性樹脂に熱硬化性或いは粘着性を付与することができる。
【0030】
また、前記エポキシ化合物(D)の含有量は、前記アルカリ可溶性樹脂(A)と前記光重合性モノマー(B)の合計量100質量部に対して10〜30質量部となる量であることが好ましく、10〜20質量部となる量であることがより好ましい。前記エポキシ化合物(D)の含有量が前記下限未満では、塗膜の耐湿性及び耐熱性、並びに基材との密着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パターニング性及び感光性樹脂の保存性が低下する傾向にある。
【0031】
以上説明した本発明に用いる感光性樹脂を塗布する方法としては特に制限されず、フィルム状の感光性樹脂をラミネートする方法、液状の感光性材料をコーティングする方法、感光性材料を印刷により配置する方法等の公知の方法を適宜選択して採用することができる。
【0032】
また、感光性樹脂層20の厚みは、スペーサー部を形成せしめて半導体又はMEMSを配置した所定の領域を空間部が形成されるようにして封止することが可能となるような厚みであれば特に制限されず、製造する中空封止型半導体装置の構成に応じて適宜設計を変更してその厚みを調整することができる。
【0033】
次に、前記感光性樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を除去するフォトリソグラフィーにより、前記感光性樹脂層の一部を除去し、前記感光性樹脂層の残部からなり且つ接着性を有するスペーサー部を形成する(工程(ii))。
【0034】
図2及び図3は、それぞれスペーサー部が形成されたカバー基材の一実施形態を示す概略縦断面図である。図2又は図3に示すカバー基材10においては、その一方の面にスペーサー部30が形成されている。なお、図3に示すカバー基材10においては、後述する工程(iv)においてダイシングラインがスペーサー部30と重ならないように、ダイシングラインと重なる部分の感光性樹脂も除去している。図2又は図3に示すカバー基材10は、図1に示すような感光性樹脂層20が形成されたカバー基材10を用いて、工程(ii)を実施することによって得ることができる。
【0035】
スペーサー部30を形成させるための前記感光性樹脂層の一部をフォトリソグラフィーにより除去する方法としては、前記感光性樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を除去することができる方法であればよく、公知のフォトグラフィー技術を適宜採用することができる。また、前記フォトリソグラフィーにおいて感光性樹脂に光照射する際の光照射量としては、雰囲気温度や感光性樹脂層の厚みにより異なり、特に限定されないが、50〜1000mJ/cmの範囲であることが好ましく、200〜800mJ/cmの範囲であることがより好ましい。光照射量が前記下限未満では、光照射されている箇所が可溶性となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるスペーサー部の接着性及び熱硬化性が低下する傾向にある。本発明においては、前記スペーサー部を形成するための前記感光性樹脂として前述したものを用い、前記フォトリソグラフィーによりスペーサー部を形成する際の条件を調整することにより、それ自体が接着性を有するスペーサー部を形成することが可能となる。なお、形成させるスペーサー部の厚みや幅は特に制限されず、製造する中空封止型半導体装置の構成に応じて適宜設計を変更してその厚みや幅を調整することができる。
【0036】
次に、半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの機能面に、前記スペーサー部を介して前記カバー基材を貼付し、前記スペーサー部を硬化せしめて中空封止型積層体を得る(工程(iii))。
【0037】
工程(iii)においては、先ず、半導体又はMEMSを備える機能部40が形成されたウェーハ50を準備する。図4は、半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの一実施形態を示す概略縦断面図である。図4に示すウェーハにおいては、ウェーハ50の一方の面上に機能部40が配置されるとともに、貫通電極60が形成されている。また、図4においては、点線Lはダイシングラインを示す。本発明においては、凹部を形成させたウェーハを用いることなく、図4に示すような一方の面上に機能部40を直接形成させたウェーハ50を用いることができるため、より効率的に中空封止型半導体装置を製造することができる。
【0038】
機能部40には、製造する中空封止型半導体装置の使用目的に応じて半導体又はMEMSを適宜配置することでき、例えば、半導体センサーのセンサー部やMEMSの駆動部等を配置することができる。
【0039】
また、本発明においては、図4に示すようにウェーハ50に貫通電極60が更に形成されていることが好ましい。このようにウェーハ50に貫通電極60が形成されているより、ウェーハ50の機能部40が配置されていない面上に外部端子70を設けることができ、従来のようにカバー基材の一部をダイシングにより除去して端子部を露出させる必要がなくなるため、より効率的に中空封止型半導体装置を得ることができる傾向にある。
【0040】
さらに、貫通電極60は、得られる中空封止型半導体装置において外部に信号を引き出すための外部端子としての役割を果たすものであり、半導体装置の端子部に用いられる公知の材料を適宜選択して形成させることができる。更に、図4に示すウェーハ50においては、機能部40と貫通電極60とは図示を省略した配線等によって接続されている。
【0041】
工程(iii)においては、次に、ウェーハ50の機能面に、スペーサー部30を介してカバー基材10を貼付し、スペーサー部30を熱又は光により硬化せしめて中空封止型積層体を得る。
【0042】
図5及び図6は、それぞれダイシング前の中空封止型積層体の一実施形態を示す概略断面図である。このような中空封止型積層体においては、カバー基材10とウェーハ50とがスペーサー部30を介して積層されている。また、カバー基材10とウェーハ50とスペーサー部30とによって覆われた領域に空間部が形成されており、更にその領域内のウェーハ50の機能部40及び貫通電極60が配置されている。
【0043】
図5又は図6に示す中空封止型積層体は、図2又は図3に示すようなカバー基材10と、図4に示すようなウェーハ50とを用い、工程(iii)を実施することで得ることができる。すなわち、図4に示すようなウェーハ50の機能面上に、図2又は図3に示すようなカバー基材10を、カバー基材10とウェーハ50とスペーサー部30とによって覆われた領域に空間部が形成され、更にその領域内のウェーハ50の機能部40及び貫通電極60が配置されるように貼付し、スペーサー部30を熱又は光により硬化せしめることで図5又は図6に示す中空封止型積層体が得られる。
【0044】
このようにスペーサー部30を貼付し熱又は光により硬化せしめる際の雰囲気等は特に制限されず、例えば、所定の真空度に真空排気された容器内で加圧、加熱する方法を採用することができる。また、硬化温度も特に限定されず、150〜250℃の範囲とすることが好ましく、180〜230℃の範囲とすることがより好ましい。硬化温度が前記下限未満では、スペーサー部とウェーハとの接着性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、半導体又はMEMSを備える機能部への熱によるダメージが大きくなると共に、感光性樹脂層が熱により分解するという問題が生じやすくなる傾向にある。さらに、硬化圧力も特に限定されないが、0.1〜1.0MPaの範囲とすることが好ましく、0.3〜0.8MPaの範囲とすることがより好ましい。硬化圧力が前記下限未満では、スペーサー部とウェーハとの接着性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、半導体又はMEMSを備える機能部への機械的なダメージが大きくなると共に、感光性樹脂層への機械的なダメージが大きくなる傾向にある。
【0045】
本発明においては、このようにスペーサー部30自体が接着性を有しているため、従来のようにウェーハ50又はスペーサー部30に接着剤層を形成しなくとも、ウェーハ50の機能面にスペーサー部30を介してカバー基材10を接合させることができる。
【0046】
次に、前記中空封止型積層体をダイシングにより分割して前記中空封止型半導体装置を得る(工程(iv))。
【0047】
図7は、ダイシング後の中空封止型半導体装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。図7に示すダイシング後の中空封止型半導体装置は、図5に示す中空封止型積層体をダイシングラインLに沿って分割したものである。また、図8は、ダイシング後の中空封止型半導体装置の他の実施形態を示す概略縦断面図である。図8に示すダイシング後の中空封止型半導体装置は、図6に示す中空封止型積層体をダイシングラインLに沿って分割したものである。このように工程(iv)においては、図5に示すようにカバー基材10とウェーハ50をダイシングする際にスペーサー部30を同時にダイシングしてもよく、図6に示すようにカバー基材10とウェーハ50をダイシングする際にダイシングラインLがスペーサー部30に重ならないようにダイシングしてもよい。また、工程(iv)において、前記中空封止型積層体をダイシングにより分割する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。
【0048】
本発明の中空封止型半導体装置の製造方法は、以上説明した工程(i)、工程(ii)、工程(iii)及び工程(iv)を含む方法である。このような中空封止型半導体装置の製造方法においては、スペーサー部自体が接着性を有しているため、従来のようにウェーハに接着剤層を形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができる。そのため、このような中空封止型半導体装置の製造方法においては、工程の簡略化を図ることが可能となると共に、従来のように接着剤層の存在によって中空封止型半導体装置の界面が増えることによる接続に起因する不具合の増加がないために、中空封止型半導体装置の信頼性の向上を図ることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置を感光性樹脂による汚染を十分に防止しつつ効率よく且つ確実に製造することができ、しかも接着剤層を付加的に形成しなくとも、ウェーハの機能面にスペーサー部を介してカバー基材を貼付し接合させることができるため、工程の簡略化や装置の信頼性の向上を図ることが可能な中空封止型半導体装置の製造方法を提供することが可能となる。
【0050】
したがって、本発明の中空封止型半導体装置の製造方法は、半導体又はMEMSを備える種々の中空封止型半導体装置を製造する方法として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】感光性樹脂層が形成されたカバー基材の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】スペーサー部が形成されたカバー基材の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図3】スペーサー部が形成されたカバー基材の他の実施形態を示す概略縦断面図である。
【図4】半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図5】ダイシング前の中空封止型積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
【図6】ダイシング前の中空封止型積層体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図7】ダイシング後の中空封止型積層体の一実施形態を示す概略断面図である。
【図8】ダイシング後の中空封止型積層体の他の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10…カバー基材、20…感光性樹脂層、30…スペーサー部、40…機能部、50…ウェーハ、60…貫通電極、70…外部端子部、L…ダイシングライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体又はMEMSを備える中空封止型半導体装置の製造方法であって、
光照射後において接着性を有し且つ硬化性を有する感光性樹脂をカバー基材に塗布し、前記カバー基材の一方の面に感光性樹脂層を形成する工程と、
前記感光性樹脂層の所定箇所に光照射した後に光照射されていない箇所を除去するフォトリソグラフィーにより、前記感光性樹脂層の一部を除去し、前記感光性樹脂層の残部からなり且つ接着性を有するスペーサー部を形成する工程と、
半導体又はMEMSを備える機能部が形成されたウェーハの機能面に、前記スペーサー部を介して前記カバー基材を貼付し、前記スペーサー部を硬化せしめて中空封止型積層体を得る工程と、
前記中空封止型積層体をダイシングにより分割して前記中空封止型半導体装置を得る工程と、
を含むことを特徴とする中空封止型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ウェーハに貫通電極が更に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の中空封止型半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−10328(P2010−10328A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166951(P2008−166951)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】