説明

中空糸膜ろ過素子の包装体

【課題】浸漬型中空糸膜ろ過素子において、輸送やハンドリング中或いは保管中に中空糸膜が損傷することが無くコンパクトな中空糸膜ろ過素子の包装体を提供すること。
【解決手段】複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子をフィルム(例:ガス遮断性フィルム10,保護フィルム11)で包み込んだ包装体であって、少なくとも1つの端部固定部において、適宜緩衝材9を配置し、フィルムと中空糸膜の少なくとも一部とが密着した状態でフィルムが密封されている中空糸膜ろ過素子の包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜ろ過素子の包装体に関する。特に、膜分離活性汚泥法等で使用される浸漬型中空糸膜ろ過素子の包装体に関する。本発明では、浸漬型中空糸膜ろ過素子とは、ハウジングを有さず中空糸膜が露出したタイプの中空糸膜ろ過素子のことをいう。
【背景技術】
【0002】
一般に中空糸膜ろ過素子には、中空糸膜がハウジングに収納されているタイプとハウジングを有さず膜が露出したタイプがある。前者は、配管に接続して加圧してろ過する方法で使用される。一方後者は、ろ過の対象水中に浸漬した状態で吸引してろ過する方法で使用される。
【0003】
後者の中空糸膜ろ過素子の適用例として、活性汚泥槽に膜ろ過素子を浸漬し、ろ過により活性汚泥を分離する膜分離活性汚泥法がある。この方法は活性汚泥濃度(MLSS:Mixed Liquor Suspended Solid)を5000から20000mg/lと極めて高くしてろ過処理を行うことができる。このため、活性汚泥槽の容積を小さくできたり、あるいは活性汚泥槽内での反応時間を短縮できるという利点を有する。また、膜によってろ過を行うため、処理水中から浮遊物質(SS:Suspended Solid) を取り除くための最終沈殿槽が不要である。さらに、活性汚泥の沈降性の良否を問わずろ過ができるため、活性汚泥の沈降性が悪い場合にも、特別な対策をとる必要がない。このように、膜分離法は沈殿法と比較して多くのメリットがあり、近年急速に普及しつつある。
【0004】
通常、中空糸膜ろ過素子の保管や輸送に際しては、ポリエチレン製等のフィルムに包装された状態になっている。この際、中空糸膜が乾燥状態である場合もあるし、湿潤状態であって中空糸膜の乾燥防止や凍結防止、防菌防黴のために水又は各種水溶液を保存液として封入した状態にされている場合もある。
【0005】
中空糸膜がハウジングに収納されているタイプの中空糸膜ろ過素子では、中空糸膜が強固なハウジングで覆われているために、保管中や輸送中に中空糸膜の乾燥や膜の切断が起こることは通常無い。特許文献1には、中空糸膜の乾燥を防止することを目的として、PVDC、EVOH、ナイロンの少なくとも1種を含むフィルムで包装することが開示されている。
【0006】
一方、ハウジングを有さず膜が露出したタイプの中空糸膜ろ過素子すなわち本発明でいう浸漬型中空糸膜ろ過素子においては、輸送中やハンドリング中の振動によって中空糸膜が揺れ動くため、膜表面が損傷したり、場合によっては膜の切断を起こす場合があった。そこで、中空糸膜ろ過素子を筒状容器に入れ、水等の保存液を封入した状態で包装したりしていたが、包装体の体積が増大し、かつ、重量が大きいという問題があった。
【特許文献1】特開平6−246138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、浸漬型中空糸膜ろ過素子において、輸送やハンドリング中或いは保管中に中空糸膜が損傷することが無くコンパクトな中空糸膜ろ過素子の包装体を提供すること、更には、中空糸膜が保存液で湿潤されている場合においては、中空糸膜が損傷することが無くコンパクトであって、かつ、性能低下を起こさない中空糸膜ろ過素子の包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、包装フィルム内を減圧にして該フィルムを中空糸膜に密着させた状態で密閉することにより上記の問題を解決できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0009】
(1)複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を少なくとも1つのフィルムで包み込んだ包装体であって、少なくとも1つの端部固定部において、フィルムと中空糸膜の少なくとも一部とが密着した状態でフィルムが密封されていることを特徴とする中空糸膜ろ過素子の包装体。
(2)少なくとも1つの端部固定部において、フィルムと中空糸膜ろ過素子との間に中空糸膜の損傷が避けられるように該緩衝材が配置されていることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(3)少なくとも1つの端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周に端部固定部又は端部固定部囲繞部材とフィルムとの間に中空糸膜の損傷が避けられるように緩衝材が配置されていることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(4)緩衝材が独立空間内包構造を有する緩衝材であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(5)緩衝材が発泡シート或いは気泡シートから成ることを特徴とする(2)又は(3)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(6)中空糸膜ろ過素子を包み込むフィルムが複数存在し、該フィルムの少なくとも1つがガス遮断性フィルムを含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(7)中空糸膜ろ過素子を包み込むフィルムが複数存在し、該フィルムがガス遮断性フィルムと保護フィルムとを含み、ガス遮断性フィルムと中空糸膜とが密着し、更にガス遮断性フィルムと保護フィルムとが密着していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(8)ガス遮断性フィルムの厚みが0.03〜0.1mmであることを特徴とする(6)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(9)ガス遮断性フィルムが少なくともガス遮断性層と熱融着層とを含む多層フィルムであることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(10)保護フィルムの厚みが0.1〜0.3mmである、(7)〜(9)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(11)密封されたフィルム内が減圧状態であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(12)中空糸膜ろ過素子が、中空糸膜内の細孔部に水又は水溶液を含有した中空糸膜ろ過素子であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(13)水又は水溶液の含有容積が中空糸膜の保有可能容積の0.8〜1.5倍であることを特徴とする(12)に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(14)両方の端部固定部が10〜300束の小束として固定されていることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
(15)複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を包装するに際して、中空糸膜ろ過素子をフィルム内に収納する工程及びフィルム内の空気を除去して中空糸膜とフィルムとが密着した状態にし、その状態を保持しつつ密封する工程、を含むことを特徴とする請求項1記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。
(16)複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を包装するに際して、(A)中空糸膜ろ過素子の少なくとも片方の端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周を緩衝材で囲む工程、(B)中空糸膜ろ過素子をガス遮断性フィルム内に収納する工程、(C)中空糸膜ろ過素子を保護フィルム内に収納する工程、(D)フィルム内の空気を除去して中空糸膜とフィルムとが密着した状態にし、その状態を保持しつつ密封する工程、を含むことを特徴とする(2)又は(3)に記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。
(17)前記(A)〜(D)の工程に先立って(E)中空糸膜ろ過素子に水又は水溶液を含有させる工程を含み、かつ、該水又は水溶液の含有容積が中空糸膜の保有可能容積の0.8〜1.5倍になるように中空糸膜ろ過素子に水又は水溶液を含有させることを特徴とする(16)に記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装体は、浸漬型中空糸膜ろ過素子において、輸送やハンドリング中或いは保管中に中空糸膜が損傷することが無い。更には、中空糸膜が保存液で湿潤されている場合においては、中空糸膜が損傷することが無く、かつ、性能低下を起こさない。また、フィルムが中空糸膜に密着しているため中空糸膜ろ過素子全体が剛直になるので取り扱い性が向上して運搬が容易になると共に、体積が小さくなるので運送費用も安価になる。
また、本発明の製造方法によれば、前記の包装体を容易に、かつ、確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の包装体を構成する中空糸膜ろ過素子は、複数本の中空糸膜の片方又は両方の端部が固定されたものであって、少なくとも一方の中空糸膜端面において中空部が開口している。具体的な態様としては、(A)中空糸膜の両方の端部が固定されたものであって、片端の中空部が開口し、他端の中空部が閉塞している片端集水方式の中空糸膜ろ過素子、(B)中空糸膜の両方の端部が固定されたものであって、両方の端部の中空部が開口している両端集水方式の中空糸膜ろ過素子、(C)中空糸膜がU字状に束ねられ、中空糸膜の両端が中空糸膜ろ過素子の一方に纏められた状態で固定されており、中空部が開口している片端集水方式の中空糸膜ろ過素子が挙げられる。
【0012】
該中空糸膜ろ過素子は、該開口端面に濾過装置の配管と接続して原水を取り出すための部品が接続された状態で、外圧ろ過法などのろ過処理に用いられる。
図1に外圧ろ過法で使用される中空糸膜ろ過素子の一例を示す。該中空糸膜ろ過素子は、複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束1と、中空糸膜束1の両端に端部固定部囲繞部材の一種である上部ヘッド2および下部リング3とを有し、上部ヘッド側端部固定部4、及び下部リング側端部固定部5で中空糸膜を固定している。上部ヘッド側の中空糸膜は中空部が開口しており、下部リング側の中空糸膜は中空部が閉塞している。下部リング3は、その中央部が複数の貫通穴6’を有する仕切り板で区切られ、この部分に端部固定部5が形成されている。下部リング側端部固定部5には貫通穴6が形成されており、下部リングの仕切り板に設けられた貫通穴6’と連通している。該下部リング3において、端部固定部5の反対側には、空気溜り部7が設けられている。上部ヘッド2と下部リング3は支柱8により連結されている。支柱8の両端は、上部ヘッド側端部固定部4と下部リング側端部固定部5の内部に挿入されて固定されている。
【0013】
中空糸膜としては、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜などが適用できる。また、中空糸膜の素材は特に限定されず、公知の素材が中空糸膜に適用できる。例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4メチルペンテン、セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等やこれらの複合素材が挙げられる。好ましくはポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリルを使用できる。また、内径50μm〜3000μmで、内/外径比が0.3〜0.8の範囲の膜が好適に適用できる。
【0014】
端部固定部は、たとえば注型剤等の固定するための材料によって固定される。ここで注型剤とは、中空糸膜同士を接着及び/又は固定して固定部を形成するための樹脂であって、通常、2液混合型硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられる。2液混合型硬化性樹脂としては、反応性を有する複数の化合物を混合することによって硬化する樹脂であり、一般に2液型接着剤(two−component adhesive)、2液型注型剤(two−component casting resin)とも言われているもので、主剤と硬化剤と呼称する2液を使用時に混合して硬化させるものである。
【0015】
本発明においては、反応性基としてイソシアネートを含有する主剤と活性水素含有有機化合物を含有する硬化剤とから成るウレタン樹脂、反応性基としてエポキシ基を含有する主剤と活性水素含有有機化合物や有機酸無水物を含有する硬化剤とから成るエポキシ樹脂、ビニル基含有ポリシロキサンとヒドロシリル基含有ポリシロキサンとから成るシリコン樹脂などが好適に使用される。また、熱可塑性樹脂としては、該樹脂の融点が中空糸膜を構成するポリマーの融点よりも低く、かつ、ろ過対象原水に対して物理的及び化学的に安定である樹脂が望ましい。具体的には、ポリウレタンやポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂や、ワックス類等が挙げられる。
【0016】
中空糸膜ろ過素子では、通常少なくとも一方の中空糸膜端部固定部における中空糸膜束の外径が長さ方向の中央部における中空糸膜束の外径よりも大きくなる。このような中空糸膜ろ過素子をフィルムで包んだ上で減圧にしてフィルムを中空糸膜に密着させた場合、端部固定部の境界部分において束外周付近の中空糸膜が束中心側に押し付けられるために外周付近の中空糸膜が損傷し易くなる。特に、端部固定部において中空糸膜が小束を形成して密集した状態である場合には、フィルムを密着させても切断に至ることは少ないものの、中空糸膜1本1本が分散した状態の場合には、切断してしまう傾向が強くなる。なお本願明細書で言う端部固定部の境界部分とは境界部及びその近傍部分を含めた領域をいう。
【0017】
本発明の包装体では、このような端部固定部の境界部分における中空糸膜の損傷を避けられるように、緩衝材を配置するのが好ましい。緩衝材の配置としては、端部固定部と中空糸膜との境界部又は端部固定部囲繞部材と中空糸膜との境界部分の外周に配置した態様や端部固定部の境界部より中央側において中空糸膜束外周に配置した態様、端部固定部の境界部より中央側において中空糸膜束内部に緩衝材を挿入した態様が採用できる。中でも端部固定部と中空糸膜との境界部分又は端部固定部囲繞部材と中空糸膜との境界部分の外周が緩衝材で囲まれていると最も好ましい。即ち、中空糸膜端部固定部が端部固定部囲繞部材を使用しないで構成されている場合には、該端部固定部の境界部分において該端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周が緩衝材で囲まれている。また、中空糸膜端部固定部が端部固定部囲繞部材を使用して構成されている場合には、該端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周において端部固定部囲繞部材と中空糸膜束の周囲が緩衝材で囲まれている。以下、端部固定部と中空糸膜との境界部を端部固定部の境界面ということがある。
【0018】
緩衝材で囲む端部固定部の境界部分の領域としては、すくなくとも前記の境界面からろ過素子中央側へ+10mmから−10mmの範囲である。中空糸膜束の全長と端部固定部全体の範囲を囲んでもよく、+50mmから−50mmの範囲が好ましく、+300mmから端部固定部全体の範囲であることが、緩衝材による保護の確実性と経済性の観点から特に好ましい。この範囲を緩衝材で囲むことによって、フィルムで包んだ上で減圧にしてフィルムを中空糸膜に密着させたときに中空糸膜が損傷したり切断したりすることをより効果的に防止できる。
【0019】
該緩衝材は、輸送やハンドリング中に発生する振動等による外部から加わる力を吸収する機能を持つ。これによって、中空糸膜が外部から加わった力によって損傷することを防止できる。また、端部固定部又は端部固定部囲繞部材の外周が緩衝材で囲まれている場合には、端部固定部又は端部固定部囲繞部材のエッジ部とフィルムが擦れてフィルムが損傷したりすることを防止できる。
【0020】
該緩衝材としては、柔軟で軽量である多孔質材料が好ましく、スポンジ状の連続気孔構造を有するものや独立空間内包構造を有するものが好ましい。中でも、独立空間内包構造を有するものが特に好ましい。ここで独立空間内包構造とは、固体部分、および空間とから構成された三次元構造体であって、固体の部分で形づくられた構造体内部に空間を有するものである。該空間は密閉されていて外部の空間とは連通していない。また該空間は、複数に区切られていてもよい。該空間には気体および/または液体で満たされている。緩衝材が独立空間内包構造であることによって、包装用フィルムの内部が減圧された状態においても該緩衝材が容積を減じること無く、柔軟性を損なって緩衝機能を失うことが無い。これに対して、スポンジ構造のような内部空間と外部空間とが連通した連続気孔構造の緩衝材では、減圧された状態では容積が減少してしまい、柔軟性を損なって緩衝機能を失ってしまう場合がある。
【0021】
独立空間内包構造を有する緩衝材としては、独立気泡状に発泡させて成形した所謂独立気泡型発泡体、多数の区画に空気を内包した状態で密封した所謂気泡シート状物、チューブに空気を封入した風船状物等が挙げられる。具体的は、梱包用資材として市販されている発泡ポリエチレンシートや気泡シート、ゴムチューブに空気を封入したもの等が好適な例として挙げられる。また、発泡体や発泡性ビーズを金型などで成形したものも好適に用いられる。
【0022】
緩衝材の形状は特に制限されないが、端部固定部の外部形状に適合させることができる形状であることが好ましい。このような形状としては、0.5〜5mmの厚みのシート状であることが特に好ましい。また、予め金型などで端部固定部の外部形状に合わせて成形しておくことも特に好適である。
【0023】
該緩衝材を構成する材料は特に限定されないが、比較的柔軟な材料であることが好ましい。例えば、引張弾性率が2,500MPa以下の熱可塑性樹脂やゴムなどが好適に用いられる。このような材料で構成された場合には、中空糸膜やフィルムと接触したときに損傷させる懸念がない。
【0024】
本発明の中空糸膜ろ過素子の包装体はフィルムで包まれており、該フィルムは中空糸膜と密着した状態で密封されている必要がある。密着した状態とは、中空糸膜長さ方向の50%以上の領域において中空糸膜束の最外周に存在する中空糸膜が、該中空糸膜外表面の少なくとも一部においてフィルム或いは緩衝材と接触して拘束された状態を意味する。このような状態であるとき、外部から振動を与えても該フィルム内で中空糸膜全体が揺動できない。このよう状態にすることによって、輸送やハンドリング中に生じる振動等によって中空糸膜が揺動して損傷してしまうことを防止できる。
【0025】
また、前記の緩衝材はフィルムと密着しているのが好ましい。このような状態にすることによって、緩衝材が固定されるため、輸送やハンドリング中の振動等によって緩衝材の位置が移動してしまいその効果を損なうことを防止することができる。密着した状態は、後記のようにフィルム内の空気を除去し、その状態で密封することによって実現し保持することができる。
【0026】
また、中空糸膜が湿潤状態である場合には、保管中に温度変化が繰り返し起こると細孔内の液体が蒸発してフィルム内で凝縮する現象が生じ、結果的に細孔中の液体が失われてしまって性能低下等の問題が起こることがある。これに対して、フィルムと中空糸膜とが密着した状態にした場合には、包装体内の空間が少なくなって蒸発分を微量にできるため前記のような問題が生じることを防止できる。
【0027】
前記のフィルムは複数を用いることが好ましく、また、少なくとも1つのフィルムがガス遮断性フィルムであることが好ましい。ガス遮断性フィルムとは、空気や水蒸気の透過性が低いフィルムであるが、水蒸気透過性を代表的な指標として用いることができる。本発明の包装体におけるガス遮断性フィルムとしては、ASTM−F1249(38℃、90%RH)の方法で測定した透湿度が10g/m・day以下であるフィルムが好ましく用いられる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン製フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体製フィルム、アルミニウム蒸着フィルム等が好適な例としてあげられる。なかでもガス遮断性フィルムが、少なくともガス遮断性層と熱融着層とを含む多層フィルムであることが特に好ましい。
【0028】
ガス遮断性フィルムは、その厚みが0.03〜0.1mmであることが好ましい。このような厚みのフィルムは柔軟であり、減圧状態にしたときに中空糸膜ろ過素子の形状に沿って密着し易い。すなわち、0.03mm以上であれば強度があるため破れにくく、0.1mm以下であれば柔軟性があるため中空糸膜ろ過素子の形状に沿って密着し易くなる。
【0029】
前記のガス遮断性フィルムの他に保護フィルムを使用することが好ましい。
保護フィルムは、ガス遮断性フィルムの破損及び/又は中空糸膜表面の損傷を防止する機能を担う。具体的には、低密度ポリエチレン製フィルムや表面に低密度ポリエチレン層を有する多層フィルム、ポリエステル製フィルム等が好適な例として挙げられる。これらの中でもポリエチレン製フィルムや表面に低密度ポリエチレン層を有する多層フィルムが、容易に熱融着させて密閉することができるので特に好ましい。保護フィルムは、ガス遮断性フィルムを外部からの衝撃等を保護する目的でガス遮断性フィルムの外側に配置することができる。また、ガス遮断性フィルムが中空糸膜ろ過素子の構成部材のエッジ等で損傷することを防止する目的でガス遮断性フィルムの内側に配置することもできる。
【0030】
保護フィルムは、その厚みが0.1〜0.3mmであることが好ましい。0.1mm以上であれば強度があるため保護効果が維持できる。また、0.3mm以下であれば柔軟性があるためガス遮断性フィルム或いは中空糸膜表面に密着させ易くなる。なお、ガス遮断性フィルムと保護フィルムの機能を合わせもった多層フィルムも本発明の包装体に使用できるが、フィルムの総厚みが同じ場合で比較した場合、ガス遮断性フィルムと保護フィルムの複数のフィルムを使用した方が、中空糸膜とフィルムとを密着させ易いのでより好適である。
【0031】
ガス遮断性フィルムと保護フィルムとを別体として用いた場合には、遮断性フィルムの傷付きを保護フィルムによって防止できるので以下の効果がある。
(1)膜性能を確実に維持できる。
(2)厚みが薄いガス遮断性フィルムを用いることができる。厚みが薄いガス遮断性フィルムは高い柔軟性を有するので中空糸膜束への密着性が良い。即ち、保護フィルムをガス遮断性フィルムと別体にしておくことによって、良好なフィルムの密着性とガス遮断機能を確実に保持することを同時に実現することができる。
複数のフィルムを使用する場合、少なくとも最内層のフィルムが前記のように中空糸膜と緩衝材とに密着している必要がある。更に各々のフィルムが密着した状態であると、包装体がより剛直になってハンドリング性が格段によくなるので特に好ましい。
【0032】
中空糸膜ろ過素子の中空糸膜は、乾燥した状態であってもよく、また、中空糸膜の細孔内が液で満たされた状態(以後、湿潤状態と略す)であってもよい。中空糸膜ろ過素子を包装する段階で湿潤状態にしておいた方が、ろ過装置で使用する際に直ちにろ過運転を開始できるので好ましい。この場合、保存期間や保存や輸送の環境条件によって適宜保存液を封入しておくことが好ましい。保存液としては、その目的によって公知の溶液が使用できる。例えば、保存期間が短く、かつ、25℃前後で温度変化も少ない場合には、純水であってもよい。保存期間が長く、かつ、零度以下の温度になる場合には、グリセリン水溶液や塩化カルシウム水溶液等の無機塩水溶液を使用するのが良い。本発明では細孔とは、中空糸膜の内表面と外表面との間(肉厚部)に存在する微細な孔のことをいう。
【0033】
前記の保存液を封入するのに際しては、中空糸膜ろ過素子における水又は水溶液の含有容積が、中空糸膜の保有可能容積の0.8〜1.5倍にしておくことが好ましい。より好ましくは、0.9〜1.2倍の範囲である。0.8倍以上であれば、保存や輸送の間に中空糸膜の細孔内から液が失われた結果として膜性能が低下するという傾向が出るのを防止できる。1.5倍以下であれば、包装体内に液が溜まることがなく、中空糸膜とフィルムとの密着性を低下させてしまう恐れもない。ここで水又は水溶液の含有容積とは、包装体内に保有されている全ての液の容積である。
【0034】
即ち、(A)中空糸膜の細孔内に存在している液、(B)中空糸膜の中空部に存在する液、(C)中空糸膜外表面やろ過素子の構成部材に付着している液、(D)フィルム内に溜まっている液の全容積である。前記(D)の値は、フィルム内に溜まっている液を回収して容積を直接測定することによって知ることができる。前記(A)、(B)、(C)の容積の合計値は、以下のような方法で知ることができる。先ず、(a)湿潤状態の中空糸膜ろ過素子の重量Waを測定する。次いで(b)中空糸膜ろ過素子を水中に浸漬して保存液を水で置換した後、中空糸膜ろ過素子を乾燥する。その後、(c)乾燥した中空糸膜ろ過素子の重量Wcを測定する。(d)保存液の密度をρとしたとき、次式で計算される値が前記(A)、(B)、(C)の容積の合計値である。
(Wa−Wc)/ρ
【0035】
また、中空糸膜の保有可能容積とは、中空糸膜の中空部(lumen)の容積と細孔(pore)の容積の合計容積であって、次式で計算される値である。
(内径×π/4*中空部長さ)+((外径−内径)*π/4*膜有効長*細孔率)
ここで、内径、外径は、中空糸膜の内径と外径であり、膜有効長は中空糸膜のろ過部分の長さであって、通常2つの端部固定部間の長さである。また、中空部長さは、中空部が開口している側の端部固定部の長さと膜有効長との合計である。さらに、細孔率は、中空糸膜肉厚部の見掛けの容積に対する中空糸膜の細孔容積が占める割合である。
【0036】
本発明の中空糸膜ろ過素子の包装体は、以下の方法によって製造することができる。
中空糸膜ろ過素子を製造した後に、(A)中空糸膜ろ過素子の端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周を緩衝材で囲む工程、(B)中空糸膜ろ過素子をガス遮断性フィルム内に収納する工程、(C)中空糸膜ろ過素子を保護フィルム内に収納する工程、(D)フィルム内の空気を除去してフィルムと中空糸膜とを密着させた状態で密封する工程、を含む必要がある。更に、中空糸膜が湿潤状態にされている中空糸膜ろ過素子の包装体の場合には、(E)中空糸膜を湿潤状態にする工程が必要である。
【0037】
先ず、中空糸膜ろ過素子の端部固定部の境界部分を緩衝材で囲む工程を説明する。
この工程は、シート状の緩衝材を端部固定部と中空糸膜束の周囲に巻き付ける方法、或いは、予め端部固定部の形状に適合するように成形された緩衝材を用意してそれを装着する方法等によって実現できる。該工程は、中空糸膜ろ過素子を製造した後、後記のフィルム内に収納する工程の前に実施するか、又は、収納する途中で実施することができる。即ち、中空糸膜ろ過素子に緩衝材を装着した後にフィルム内に収納する方法、或いは、中空糸膜ろ過素子をフィルム内に収納した後、密封する前に緩衝材を装着する方法、が実施できる。前者の方が作業性が良いので好ましい。
【0038】
次に、フィルム内に収納する工程を説明する。予めフィルムを袋状にしたものを用意し、この袋の中に中空糸膜ろ過素子を挿入する方法でもよいし、フィルムでろ過素子を包み込む方法でもよい。複数のフィルムを用いる場合には、適宜順番に挿入、若しくは包み込む操作を行う。例えば、ガス遮断性フィルムと保護フィルムを用いる場合、先ずガス遮断性フィルムに収納し、次いで保護フィルムに収納するのが好ましい。
【0039】
次に、フィルムと中空糸膜を密着させる工程を説明する。この工程は、フィルム内の空気を除去することによって行うことができる。先ず、空気を除去し易いようにフィルムの一部のみが開口した状態にする。これは、フィルムの外周の一部を除いて周囲を接着或いは融着する方法で実施できるが、前記のように中空糸膜ろ過素子を収納する前に予め周囲を接着或いは融着して袋状にしておくことが特に好ましい。フィルム内の空気を除去する方法としては、開口部から空気を吸引して除去する方法や中空糸膜ろ過素子をそれを収納しているフィルムごと水中に沈め、水圧によってフィルム内の空気をフィルム外へ押して除去する方法が挙げられる。
【0040】
後者の方法では、フィルムの開口部以外の部分を水中に沈め、開口部は大気中に開放しておくようにし、空気は開口部から出ることができ、かつ、水はフィルム内に入らないようにする。また、前者の方法において吸引して減圧する際には、絶対圧力95kPa以下にするが、40kPa〜90kPaの範囲が好ましく、70kPa〜90kPaの範囲が特に好ましい。絶対圧力95kPa以下であればフィルムと中空糸膜を密着させて本発明の効果を発揮することができ、特に90kPa以下であればより確実に密着させることができると同時に仮に長期保存中にガスの滲入が多少あったとしても密着状態を維持することができる。40kPa以上であれば、フィルムが圧力によって塑性変形して強度低下を起こすことが無く、長期にわたって良好な状態を維持できる。また、70kPa以上であれば、中空糸膜が湿潤状態にされている場合に、中空糸膜中の湿潤液が気化してしまって膜の性能低下を起こすことがない。
【0041】
前記のようにしてフィルム内の空気を除去して中空糸膜とフィルムとが密着した状態になった後、その状態を保持しつつフィルムを密封する。密封するに際しては、フィルム内の空気を除去する操作を継続しながら密封作業を行うと中空糸膜とフィルムとが密着した状態を保持したまま密封することができるので好適である。密封する方法としては、フィルムがポリエチレン等の熱融着性の素材で構成されている場合、フィルムの開口部を加熱し、かつ、加圧することによって融着させる方法(以後、ヒートシール法と略す)が特に好適な方法としてあげられる。また他の方法として、フィルムの開口部を接着剤で接着する方法を採ることもできる。
【0042】
複数のフィルムに収納して密封する場合、(a)各フィルムに収納する毎に密封する操作を行う方法、或いは、(b)複数のフィルムに収納した後に数枚をまとめて密封する操作を行う方法、(c)複数のフィルムに収納した後に全てのフィルムをまとめて密封する操作を行う方法が採用できる。(a)の方法は、中空糸膜とフィルム、および、複数のフィルム同士をより確実に密着させることができるので特に好適である。
【0043】
中空糸膜を湿潤状態にする工程は、以下のとおりである。
中空糸膜の素材が親水性材料から成る場合には、中空糸膜を水中に浸漬する等、単に水と接触することによって湿潤状態にすることができる。一方、中空糸膜の素材が疎水性材料から成る場合には、中空糸膜をアルコール等の界面張力が低い液体と接触させて細孔中に該液体を浸入させ、次いで、水と接触させて細孔中の液体を水で置換することにより湿潤状態にすることができる。また、中空糸膜ろ過素子を水中に浸漬し、中空糸膜に高圧を印加して細孔内に水を浸入させることにより湿潤状態にすることもできる。
更に保存液を封入する場合には、中空糸膜の細孔内に保存液を含浸させておくのが良い。保存液を含浸させる方法は、前記の湿潤状態にする方法において水に替えて保存液を用いる方法や、前記の方法で湿潤状態にした後に保存液と接触させて水と置換する方法を用いることができる。
【0044】
上記のようにして中空糸膜を湿潤状態にした後、該中空糸膜ろ過素子に付着している余分な液を流出させる。付着水を流出させる方法は特に限定されないが、細孔内に含浸されている液体を流出させない方法・条件を選択した方がよい。例えば、(a)空気中で静置して重力の作用によって付着液を流出させる方法、(b)中空糸膜ろ過素子を回転させて遠心力の作用によって付着液を流出させる方法、(c)高湿度空気を中空糸膜ろ過素子に吹き付けて風力の作用によって付着液を流出させる方法等が挙げられる。このときの条件を選択することによって、好適な含有量に調整することができる。
【0045】
例えば、前記(a)の方法であれば静置時間を、(b)の方法であれば回転数と回転時間を、(c)の方法であれば吹き付ける空気の流速、流量、時間を適宜選択することにより好適な含有量に調整できる。
上記の湿潤状態にする作業は、液を貯留した専用の水槽内で中空糸膜と液とを接触させる方法でも良いし、中空糸膜ろ過素子をフィルム内に収納して該フィルム内で液と接触させる方法でも良い。
【実施例】
【0046】
本発明の実施例を以下に説明するが、それによって本発明が限定されることはない。
《中空糸膜ろ過素子の製造》
実施例1〜9と比較例1と2で用いた中空糸膜ろ過素子は、以下のようにして製造した。
ポリフッ化ビニリデン製の細孔径0.1μmの精密ろ過膜で、外径1.2mm、内径0.6mm、長さ2160mm、空孔率70%の中空糸膜1を3300本用いた。また、中空糸膜束を固定してろ過素子とする部材として、内径155mm、高さ70mmの上部ヘッド2と内径140mm、高さ88mmの下部リング3を、該上部ヘッド2と下部リング3とを連結する支柱8として直径13mm、長さ2080mmのパイプ2本を用いた。なお、上部ヘッド2には、内径140mm、深さ35mmの注型用カップ(図示せず)が一体的に設けられている。また、下部リング内には、高さ88mmのうち高さ38mmのところを仕切り板で高さ方向に対して垂直に仕切ることにより、膜固定部を形成するための区画が設けられている。なお、該仕切り板には直径11mmの貫通穴6’が24個設けられている。
【0047】
まず、注型冶具に上部ヘッド2、下部リング3とパイプを固定した。注型冶具は、中央部に中空糸膜束を収納するための断面がU字状で長さが1800mmの束受け部、その片端側に上部ヘッド2を固定するためのヘッド固定部、他の片端側には下部リング3を固定するためのリング固定部を有している。束受け部とヘッド固定部とリング固定部とはベース板で一体化されている。
中空糸膜束は、片端から5mm分の中空部を閉塞させたのち、各中空糸膜をバラした状態で110本ずつ30束に分けた。各束の中空部を閉塞させた側を直径17mmの穴を30個有した多孔板(直径150mm、厚み10mm)に挿入し、該多孔板を上部ヘッド2内に収容した。また、中空部が開口したままの側の端部を下部リング内に収容した。
【0048】
次いで、直径11mm、長さ70mmのポリエチレン製の貫通穴形成ピンを24本、下部リング3に設けられた(一部のみ図示)貫通穴6’を通して中空糸膜束内に挿入した。この際、厚み1mmの発泡ポリエチレンシートを捲回して成形した円柱状のスペーサー(外径70mm、長さ800mm)を予め下部リング側の中空糸膜束内に挿入しておき、中空糸膜が下部リング内に均等に分散するようにした。なお、該貫通穴成形ピンは、片端に直径15mm、厚み2mmのツバ部を有した棒状のものであって、ツバ部が下部リング内の仕切り板に当接するようにした。
この後、中空糸膜束の周囲を布で覆い、この布の上から注型治具の束受け部ごと帯を巻いて固定した。そして、この注型治具を遠心接着用架台にセットした。
【0049】
上記の遠心接着用架台に設置された注型剤ポットと上部ヘッド2に設けられた注型用カップ部および下部リング3を注入ホースで接続した。この注型剤ポット内に注型剤(2液混合型ウレタン樹脂の混合物)を投入した。次いで、遠心接着用架台を177rpmの速度で回転させ、膜固定部形成領域に35Gの遠心力がかかるようにした。回転開始から90分後に回転を停止し、注型治具を遠心接着用架台から取り外した。注型用カップ部と注入ホースとの接続部分、および下部リングと注入ホースとの接続部分で切り離した。これを50℃の乾燥機内で24時間加熱した。次いで、注型用カップ部と上部ヘッド2との境目付近で切断して中空糸膜を開口させた。
その後、帯を外して注型治具から中空糸膜束が固定されたろ過素子を取り出し、下部リング側の中空糸膜束内に挿入されているスペーサーを取り除いた。また、下部リング3に挿入された全ての貫通穴形成ピンを抜いた。これにより下部リング側の端部固定部に、直径11mmの貫通穴が形成された。
【0050】
上記の操作によって、中空糸膜束の一方の端部が30束の小束に分割された状態で上部ヘッド2に固定され、他方の端部が中空糸膜1本ごとに分散した状態で下部リング3に固定された外圧型の中空糸膜ろ過素子が得られた。該ろ過素子は、膜有効長が2000mm、膜面積25m2 である。そして、上部ヘッドの端部固定部における中空糸膜束の外周と上部ヘッドの外周との差異が11mmであり、下部リングの端部固定部における中空糸膜束の外周と下部リングの外周との差異が5mmである。なお、該中空糸膜ろ過素子における中空糸膜の保有可能容積は、6.1リットルである。
【0051】
《中空糸膜ろ過素子の湿潤化処理》
中空糸膜ろ過素子を60重量%エタノール水溶液中に浸漬した状態で30分間吸引ろ過を行って、細孔内に該水溶液を満たした。次いで、流水中に浸漬した状態で30分間吸引して細孔内を水に置換した。
【0052】
《中空糸膜ろ過素子の純水透水量の測定》
中空糸膜ろ過素子を湿潤化処理した後に上部ヘッドにOリングを介してノズル付きキャップを気密的に接続し、純水を満たした水槽中に浸漬した。該ノズル部において−0.03MPa(ゲージ圧)の圧力になるように吸引して、中空糸膜を透過した水の流量を測定した。なお、測定時の水温を25℃に調整した。
前記の方法で製造した中空糸膜ろ過素子を測定したところ、3.3m/hであった。
【0053】
《保存液の含有容積の測定》
先ず、中空糸膜ろ過素子包装体のフィルムを切断して、フィルム内に流出している保存液を回収し、その容積Vz(l)を測定した。次いで、中空糸膜ろ過素子をフィルム内から取り出して重量Wa(kg)を測定した。その後、中空糸膜ろ過素子を水中に浸漬して保存液を水で置換した後、中空糸膜ろ過素子を乾燥機中で加熱して乾燥した。次に、乾燥した中空糸膜ろ過素子の重量Wc(kg)を測定した。保存液の密度ρは、回収したフィルム内の保存液を10mlのゲーリュサック型比重びんに分取して重量を測定し、該重量を比重びんの容量で除して求めた。次式(1)によって含有容積Vt(l)を求めた。
Vt=(Wa−Wc)/ρ+Vz ・・・(1)
なお、上記の各測定は、リーク試験や外観検査の合間に適宜行った。
【0054】
《中空糸膜ろ過素子包装体の輸送試験》
中空糸膜ろ過素子包装体を横置き状態でダンボール箱に収納し、トラックで2,000km走行した。その後、中空糸膜ろ過素子を取り出して、外観検査とリーク検査を行った。
なお輸送試験は、実施例1〜10及び比較例1〜3の包装体を同じトラックに搭載して行った。
【0055】
《中空糸膜ろ過素子のリーク試験》
中空糸膜ろ過素子の上部ヘッドにOリングを介してノズル付きキャップを気密的に接続し、水中に浸漬した。中空糸膜ろ過素子が完全に水中に浸漬された状態で該ノズルから空気をゲージ圧0.1MPaで印加し、中空糸膜から気泡がでてくるかどうかを目視観察した。連続的に気泡がでてくる場合に「リーク有り」と判断した。
【0056】
[実施例1]
厚み1.3mmの発泡ポリエチレンシートを緩衝材として用い、ポリ塩化ビニリデン層と低密度ポリエチレン層とを含む多層フィルム(旭化成製、商品名『バリアロン−S、Pタイプ』)をガス遮断性多層フィルムとして用い、厚み200μmの低密度ポリエチレン製フィルムを保護フィルムとして用いた0。該多層フィルムは、厚みが50μmであり、ASTM−F1249(38℃、90%RH)の方法で測定した透湿度が6g/(m・day)である。ガス遮断性フィルムと保護フィルムは、夫々予め2つの長辺と1つの短辺をヒートシールして袋状に成形した。
前記のようにして製造した中空糸膜ろ過素子の下部リング全外周部と下部リングから200mmまでの部分の中空糸膜束外周に緩衝材を3重に巻いてテープで固定した。
【0057】
次いで、該中空糸膜ろ過素子を袋状にしたガス遮断性多層フィルムの中に収納し、開口部から吸引ノズルを挿入して内部の空気を吸引して該フィルムが中空糸膜束外周に密着するまで減圧した。このときの吸引ノズルにおける絶対圧力は60kPaであった。吸引ノズルを引き抜いた後直ちに該フィルムの開口側端部を10mmの幅で熱融着させて密封した。更に、該包装体を保護フィルムの中に収納し、上記と同様にして絶対圧力60kPaに減圧した後、該フィルムの開口側端部を10mmの幅で熱融着させて密封した。これによって、中空糸膜ろ過素子の包装体が得られた。
【0058】
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。なお、上部ヘッド端と中空糸膜束外周との段差が大きいため、その段差部分にフィルムが追随できないために密着していない状態になったものである。
該中空糸膜ろ過素子包装体を横置き状態でダンボール箱に収納し、トラックでの輸送試験を行った。2000km走行後、リーク検査を実施したところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
該中空糸膜ろ過素子を湿潤化処理して純水透水量を測定したところ、3.2m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
【0059】
[実施例2]
先ず、下部リング側を緩衝材で囲む前に前記の方法で中空糸膜ろ過素子を純水で処理して湿潤状態にした後、25℃−70%RH環境下において縦置き状態で30分間静置した。中空糸膜を湿潤状態にしたろ過素子を用い、ガス遮断性多層フィルムの中に収納した際、及び、保護フィルムの中に収納した際の各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を85kPaに変えて包装した他は、実施例1と同様にして中空糸膜ろ過素子包装体を2本製造した。該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0060】
該包装体2本について輸送試験を行った。
2本の内1本を開封してフィルム中の液を回収して容積Vzを測定したところ0.2リットルであった。次いで、中空糸膜ろ過素子をフィルム内から取り出して重量Waを測定したところ13.6kgであった。その後にリーク検査を実施したところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m3/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
その後に該中空糸膜ろ過素子を乾燥機内で加熱して乾燥し、乾燥状態での重量Wcを測定したところ7.0kgであった。これらの測定値と保存液(水)の密度(1.0kg/l)から前記式(1)に基づいて含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ1.1倍であった。
【0061】
残りの1本を6ヶ月室内で保存した後に開封してフィルム中の液を回収して容積Vzを測定したところ0.2リットルであった。次いで、中空糸膜ろ過素子をフィルム内から取り出して重量Waを測定したところ13.6kgであった。その後にリーク検査を実施したところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
その後に該中空糸膜ろ過素子を乾燥機内で加熱して乾燥し、乾燥状態での重量Wcを測定したところ7.0kgであった。これらの測定値と保存液(水)の密度(1.0kg/l)から含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.1倍であった。
【0062】
[実施例3]
厚み2.3mmの気泡シートを緩衝材として用い、エチレンビニルアルコール共重合体層とナイロン層と低密度ポリエチレン層とを含む多層フィルム(四国化成製、商品名『キャンズフィルム、Gタイプ』)をガス遮断性多層フィルムとして用いた。該多層フィルムは、厚みが80μmであり、ASTM−F1249(38℃、90%RH)の方法で測定した透湿度が8g/(m・day)である。なお、中空糸膜の湿潤処理は、静置時間を15分にした他は実施例2と同様にして行った。また、保護フィルムは実施例1と同じものを用いた。
ガス遮断性フィルムと保護フィルムは、夫々予め2つの長辺と1つの短辺をヒートシールして袋状に成形した。
湿潤処理した中空糸膜ろ過素子の下部リング全外周部と下部リングから200mmまでの部分の中空糸膜束外周に緩衝材を2重に巻いてテープで固定した。
【0063】
次いで、該中空糸膜ろ過素子を袋状にしたガス遮断性多層フィルムの中に収納し、さらに、保護フィルムの中に収納した。ガス遮断性多層フィルムの開口部から吸引ノズルを挿入して内部の空気を吸引して該フィルムが中空糸膜束外周に密着するまで減圧した。このときの吸引ノズルにおける絶対圧力は85kPaであった。吸引ノズルを引き抜いた後直ちにガス遮断性多層フィルムの開口側端部を10mmの幅で熱融着させて密封した。その後、保護フィルムの開口部から吸引ノズルを挿入して内部の空気を吸引して該フィルムがガス遮断性フィルムに密着するまで減圧した。このときの吸引ノズルにおける絶対圧力は85kPaであった。吸引ノズルを引き抜いた後直ちに保護フィルムの開口側端部を10mmの幅で熱融着させて密封した。このような方法よって、中空糸膜ろ過素子の包装体を2本製造した。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約50mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0064】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、13.9kg、7.0kgであった。これらの値と保存液(水)の密度(1.0kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.2倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.2m3/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、13.9kg、7.0kgであった。これらの値と保存液(水)の密度(1.0kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.2倍であった。
【0065】
[実施例4]
保存液として65重量%のグリセリン水溶液を用い、各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0066】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.5倍であった。
【0067】
[実施例5]
保存液として30重量%の塩化カルシウム水溶液を用いて25℃−湿度40%RHの環境下で4時間静置して湿潤化処理を行い、各フィルム内の減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0068】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.2m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.1リットル、13.3kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(塩化カルシウム水溶液)の密度(1.30kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ0.8倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.2m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.1リットル、13.3kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(塩化カルシウム水溶液)の密度(1.30kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に0.8倍であった。
【0069】
[実施例6]
ガス遮断性フィルムとして、6−ナイロン層と低密度ポリエチレン層とを含む多層フィルム(オザキ軽化学社製、商品名『トリプルナイロン』)を用い、保護フィルムを用いなかった。該多層フィルムは、厚みが100μmであり、ASTM−F1249(38℃、90%RH)の方法で測定した透湿度が8g/(m・day)である。該多層フィルムからなるガス遮断性フィルムは、チューブ状の開口端の片側を予めヒートシールして袋状に成形した。
ガス遮断性フィルム内での減圧操作における圧力を50kPaとした他は、実施例1と同様にして包装体を得た。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の80%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0070】
該中空糸膜ろ過素子包装体について実施例1と同様にしてトラックでの輸送試験を行った。2000km走行後、リーク検査を実施したところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
該中空糸膜ろ過素子を湿潤化処理して純水透水量を測定したところ、3.2m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
【0071】
[実施例7]
厚み5mmの連続気泡構造を有するスポンジシートを緩衝材として用いた例を示す。
保存液として65重量%のグリセリン水溶液を用いた他は、実施例2と同様にして中空糸膜ろ過素子の湿潤化処理を行った。該中空糸膜ろ過素子の下部リング全外周部と下部リングから200mmまでの部分の中空糸膜束外周に前記の緩衝材を3重に巻いてテープで固定した。次いで、各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルム或いは緩衝材とが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0072】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ傷は全くなく、部分的に軽微な凹みが生じていただけであり、実用上問題ないと推定される状態であった。なお、包装体から取り出した後の緩衝材は、塑性変形して厚みが薄くなっていた。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.5倍であった。
【0073】
[実施例8]
発泡ポリエチレン製の成形体を緩衝材として用い、中空糸膜束の外周に配置した例を示す。該成形体は、内径120mm、外径150mm、長さ300mmの円筒を長さ方向に半割りしたものであり、2個を相対させることによって円筒を呈する。
保存液として65重量%のグリセリン水溶液を用いた他は、実施例2と同様にして中空糸膜ろ過素子の湿潤化処理を行った。該中空糸膜ろ過素子の下部リング側端部固定部の境界面から50mm離れた位置から350mmまでの部分の中空糸膜束外周に前記の成形体2個を被せ、形成された円筒内に中空糸膜束を収容した後、2個の緩衝材をテープで固定した。このとき、2個の成形体の合わせ目のところに支柱8が位置するようにした。次いで、各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の70%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルムとが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0074】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m3/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.5倍であった。
【0075】
[実施例9]
発泡ポリエチレン製の外径70mm、全長500mmに成形したものを緩衝材として用い、中空糸膜束の内部に配置した例を示す。該成形体は、両端が外径70mmの半球状を呈している円柱状であって約80gと極軽いものである。
保存液として65重量%のグリセリン水溶液を用いた他は、実施例2と同様にして中空糸膜ろ過素子の湿潤化処理を行った。該中空糸膜ろ過素子の下部リング側端部固定部の境界面から50mm離れた位置に前記の成形体の端部が在るようにして中空糸膜束の中央部に前記の成形体を挿入した。挿入の際には、中空糸膜を引っ掛けて傷つけてしまわないように注意して行った。次いで、各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルムとが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0076】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、中空糸膜束の外周にある中空糸膜を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.3m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と同じであった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ部分的な凹みや傷等の異常も全く無かった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.2kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.5倍であった。
【0077】
[実施例10]
緩衝材を用いず中空糸膜とフィルムとを密着させて包装した例を示す。
先ず、以下のようにして中空糸膜ろ過素子を製造した。
ポリフッ化ビニリデン製の細孔径0.1μmの精密ろ過膜で、外径1.2mm、内径0.6mm、長さ2160mm、細孔率70%の中空糸膜1を3300本用いた。また、中空糸膜束を固定してろ過素子とする部材として、内径155mm、高さ70mmの上部ヘッド2と内径150mm、高さ88mmの下部リング3を、該上部ヘッド2と下部リング3とを連結する支柱8として直径13mm、長さ2080mmのパイプ2本を用いた。なお、上部ヘッド2には、内径150mm、深さ35mmの注型用カップ(図示せず)が一体的に設けられている。また、下部リング内には、高さ88mmのうち高さ38mmのところを仕切り板で高さ方向に対して垂直に仕切ることにより、膜固定部を形成するための区画が設けられている。なお、該仕切り板には直径11mmの貫通穴6’が中心間距離15〜20mmの間隔で19個設けられている。
【0078】
まず、実施例1〜9の中空糸膜ろ過素子の製造で用いた注型冶具に上部ヘッド2、下部リング3とパイプを固定した。下部リング3に設けられた貫通穴6’を通して直径11mm、長さ70mmのポリエチレン製の貫通穴形成ピンを19本挿入した。なお、該貫通穴成形ピンは、実施例1〜9の中空糸膜ろ過素子の製造で用いたものと同様であり、ツバ部が下部リング内の仕切り板に当接するようにした。
中空糸膜束は、片端から5mm分の中空部を閉塞させたのち、各中空糸膜をバラした状態で110本ずつ30束に分け、その端部を幅5mmのテープで固定した。各束の中空部を閉塞させた側を直径17mmの穴を30個有した多孔板(直径150mm、厚み10mm)に挿入し、該多孔板を上部ヘッド2内に収容した。
次いで、110本の小束の中空部が開口した側を下部リング3の貫通穴形成ピンの間に挿入し、30束が下部リング内に略均等に分散するように配置した。この際、厚み1mmの発泡ポリエチレンシートを捲回して成形した円柱状のスペーサー(外径70mm、長さ800mm)を予め下部リング側の中空糸膜束内に挿入しておいた。
この後、実施例1〜9の中空糸膜ろ過素子の製造と同様にして中空糸膜ろ過素子を作製した。
【0079】
上記の操作によって、中空糸膜束の一方の端部が30束の小束に分割された状態で上部ヘッド2に固定され、他方の端部が同様に30束の小束に分割された状態で下部リング3に固定された外圧型の中空糸膜ろ過素子が得られた。該ろ過素子は、膜有効長が2000mm、膜面積25m2 である。そして、上部ヘッドの端部固定部における中空糸膜束の外周と上部ヘッドの外周との差異が11mmであり、下部リングの端部固定部における中空糸膜束の外周と下部リングの外周との差異が5mmである。なお、該中空糸膜ろ過素子における中空糸膜の保有可能容積は、6.1リットルである。
【0080】
次いで、保存液として65重量%のグリセリン水溶液を用いた他は、実施例2と同様にして中空糸膜ろ過素子の湿潤化処理を行った。
その後、該中空糸膜ろ過素子を実施例2と同じ2種類のフィルムに収納し、各フィルム内での減圧操作における絶対圧力を80kPaに変えた他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。なお、該包装体では緩衝材を使用していない。
該中空糸膜ろ過素子包装体は、中空糸膜の長さ方向の95%以上の領域において中空糸膜束外周部とガス遮断性フィルムとが密着しており、上部ヘッド端から約30mmの領域において中空糸膜束外周がガス遮断性フィルムと密着していない状態であった。
【0081】
該包装体2本について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にして輸送試験後直後のリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ傷は全くなく、部分的に軽微な凹みが生じていただけであり、実用上問題ないと推定される状態であった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.4m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.3kg、7.1kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を測定し、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところリークは無かった。また、前記と同様に中空糸膜の外観を詳細に観察したところ傷は全くなく、部分的に軽微な凹みが生じていただけであり、実用上問題ないと推定される状態であった。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.2m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.3kg、7.1kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ前記と同様に1.5倍であった。
本実施例のように中空糸膜が小束状態で固定されている場合には、緩衝材を用いなくてもよい。通常は10本〜300本、好ましくは20本〜150本の小束とするのが良い。
【0082】
[比較例1]
緩衝材とガス遮断性フィルムを用いず、フィルム内の空気を除去する操作を行わずに密封した他は、実施例1と同様にして包装体を1本製造した。該包装体内では、中空糸膜とフィルムとが密着しておらず、中空糸膜が容易に移動できる状態であった。
該包装体について輸送試験を行った。
実施例1と同様にしてリーク試験を行ったところ、4ヶ所でリークが確認された。該リーク個所を観察したところ、中空糸膜束外周の中空糸膜4本が下部リング端において切断していた。また、中空糸膜外周の中空糸膜において、凹んでいる部分が15か所確認された。
【0083】
[比較例2]
ガス遮断性フィルムを用いず、フィルム内の空気を除去する操作を行わずに密封した他は、実施例2と同様にして包装体を2本製造した。該包装体内では、中空糸膜とフィルムとが密着しておらず、中空糸膜が容易に移動できる状態であった。
該包装体について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にしてリーク試験を行ったところリークは無かった。中空糸膜の外観を詳細に観察したところ、凹んでいる部分が7か所確認された。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ3.2m/hであり、製造直後の中空糸膜ろ過素子の測定値と有意差が無かった。
また、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.2リットル、13.6kg、7.0kgであった。これらの値と回収した保存液(水)の密度(1.0kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ1.1倍であった。
【0084】
さらに、残1本について実施例2と同時に6ヶ月保存した。保存後にリーク試験を行ったところ、中空糸膜の多数個所(数え切れなかった)から気泡が連続的に発生した。中空糸膜を観察したところ、特に切断している部位は見つからなかったが、凹んでいる部分が7か所確認された。
次いで、該中空糸膜ろ過素子の純水透水量を測定したところ2.2m/hであり、保存前の中空糸膜ろ過素子の測定値に比べて著しく低下していた。
該中空糸膜ろ過素子を60重量%エタノール水溶液に浸漬して湿潤処理を行った後に、再度リーク試験を行ったところ、気泡の発生は全く無かった。この結果と純水透水量の測定結果とから、前記のリーク試験時に発生した気泡は、細孔内の液が失われてしまったための現象であると判断された。即ち、6ヶ月の保存中に中空糸膜が乾いてしまったと判断された。
【0085】
[比較例3]
各フィルム内の空気を除去する操作を行わずに密封した他は、実施例10と同様にして包装体を2本製造した。該包装体内では、中空糸膜とフィルムとが密着しておらず、中空糸膜が容易に移動できる状態であった。
該包装体について輸送試験を行った。
1本について実施例2と同様にしてリーク試験を行ったところ、1ヶ所でリークが確認された。中空糸膜の外観を詳細に観察したところ、中空糸膜束外周の中空糸膜1本が下部リング端において切断していた。また、中空糸膜外周の中空糸膜において、凹んでいる部分が8か所確認された。なお、実施例2と同様にしてVz、Wa、Wcを測定したところ、各々、0.5リットル、17.3kg、7.1kgであった。これらの値と回収した保存液(グリセリン水溶液)の密度(1.16kg/l)から液の含有容積を求め、保有可能容積との比を計算したところ1.5倍であった。
さらに、残1本についても同様にしてリーク試験を行ったところ、2ヶ所でリークが確認された。中空糸膜の外観を詳細に観察したところ、中空糸膜束外周の中空糸膜2本が下部リング端において切断していた。また、中空糸膜外周の中空糸膜において、凹んでいる部分が10か所確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の包装体は、輸送やハンドリング中或いは保管中に中空糸膜が損傷することが無く、更に中空糸膜が保存液で湿潤されている場合においては、中空糸膜が損傷することが無く、かつ、性能低下を起こさないので、特に膜分離活性汚泥法に用いる中空糸膜ろ過素子のような浸漬型中空糸膜ろ過素子の包装体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】中空糸膜ろ過素子の一例を示す説明図である。
【図2】中空糸膜ろ過素子の包装体の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0088】
1 :中空糸膜束
2 :上部ヘッド
3 :下部リング
4 :上部ヘッド側端部固定部
5 :下部リング側端部固定部
6 :貫通穴(下部リング側端部固定部に設けられた貫通穴)
6’ :貫通穴(下部リング内の仕切り板に設けられた貫通穴)
7 :空気溜まり部
8 :支柱
9 :緩衝材
10 :ガス遮断性フィルム
11 :保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を少なくとも1つのフィルムで包み込んだ包装体であって、少なくとも1つの端部固定部において、フィルムと中空糸膜の少なくとも一部とが密着した状態でフィルムが密封されていることを特徴とする中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項2】
少なくとも1つの端部固定部において、フィルムと中空糸膜ろ過素子との間に中空糸膜の損傷が避けられるように緩衝材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項3】
少なくとも1つの端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周に端部固定部又は端部固定部囲繞部材とフィルムとの間に中空糸膜の損傷が避けられるように緩衝材が配置されていることを特徴とする請求項1記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項4】
緩衝材が独立空間内包構造を有する緩衝材であることを特徴とする請求項2又は3に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項5】
緩衝材が発泡シート或いは気泡シートから成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項6】
中空糸膜ろ過素子を包み込むフィルムが複数存在し、該フィルムの少なくとも1つがガス遮断性フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項7】
中空糸膜ろ過素子を包み込むフィルムが複数存在し、該フィルムがガス遮断性フィルムと保護フィルムとを含み、ガス遮断性フィルムと中空糸膜とが密着し、更にガス遮断性フィルムと保護フィルムとが密着していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項8】
ガス遮断性フィルムの厚みが0.03〜0.1mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項9】
ガス遮断性フィルムが少なくともガス遮断性層と熱融着層とを含む多層フィルムであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項10】
保護フィルムの厚みが0.1〜0.3mmである、請求項7〜9のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項11】
密封されたフィルム内が減圧状態であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項12】
中空糸膜ろ過素子が、中空糸膜内の細孔部に水又は水溶液を含有した中空糸膜ろ過素子であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項13】
水又は水溶液の含有容積が中空糸膜の保有可能容積の0.8〜1.5倍であることを特徴とする請求項12に記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項14】
両方の端部固定部が10〜300束の小束として固定されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の中空糸膜ろ過素子の包装体。
【請求項15】
複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を包装するに際して、中空糸膜ろ過素子をフィルム内に収納する工程及びフィルム内の空気を除去して中空糸膜とフィルムとが密着した状態にし、その状態を保持しつつ密封する工程、を含むことを特徴とする請求項1記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。
【請求項16】
複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束の少なくとも一端部が注型剤で固定された端部固定部を有する浸漬型中空糸膜ろ過素子を包装するに際して、(A)中空糸膜ろ過素子の少なくとも片方の端部固定部と中空糸膜との境界部分の外周を緩衝材で囲む工程、(B)中空糸膜ろ過素子をガス遮断性フィルム内に収納する工程、(C)中空糸膜ろ過素子を保護フィルム内に収納する工程、(D)フィルム内の空気を除去して中空糸膜とフィルムとが密着した状態にし、その状態を保持しつつ密封する工程、を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。
【請求項17】
前記(A)〜(D)の工程に先立って(E)中空糸膜ろ過素子に水又は水溶液を含有させる工程を含み、かつ、該水又は水溶液の含有容積が中空糸膜の保有可能容積の0.8〜1.5倍になるように中空糸膜ろ過素子に水又は水溶液を含有させることを特徴とする請求項16に記載の中空糸膜ろ過素子包装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−154910(P2009−154910A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334216(P2007−334216)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】