説明

中継コネクタ

【課題】各平板状ケーブルの導電線同士が、押圧突起に対応する位置において接触点を形成するとともに、該接触点よりも挿入方向側において離間し、導電線間の接続抵抗が一定となり、安定した信号の伝送特性を得ることができるようにする。
【解決手段】端子は、第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルを両側から押圧する押圧突起を備えるとともに第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルの挿入方向に延在する第1腕部及び第2腕部、並びに、第1腕部と第2腕部とを連結する連結部を備え、アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると、第1腕部の押圧突起又は第2腕部の押圧突起が挿入方向に変位するように第1腕部又は第2腕部の角度が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル回路基板(FPC:Flexible Printed Circuit)、フレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)等と称される可撓(とう)性を備える平板状ケーブル同士を相互に接続するための中継コネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図7は従来の中継コネクタの要部を示す断面図である。
【0004】
図に示されるように、中継コネクタは、合成樹脂等の絶縁性材料から成るハウジング301と、金属等の導電性材料から成り、ハウジング301に保持される複数の端子302とを有する。該端子302は、ハウジング301のケーブル挿入口内に形成された端子収容溝に圧入されることによって固定される。また、前記端子302は、ハウジング301の奥に位置する本体部からハウジング301の前面に向けて延在する片持ち梁(はり)状の腕部材を上下に備える。
【0005】
そして、第1の平板状ケーブル303及び第2の平板状ケーブル306は、端部が積層された状態でハウジング301のケーブル挿入口に挿入される。前記第1の平板状ケーブル303は、帯状の絶縁性材料から成る本体の一面(図における下面)に形成された複数本の導電線304及び該導電線304の表面を覆う絶縁層305を備え、前記第2の平板状ケーブル306は、帯状の絶縁性材料から成る本体の一面(図における上面)に形成された複数本の導電線307及び該導電線307の表面を覆う絶縁層308を備える。なお、前記第1の平板状ケーブル303には電子部品309が実装され、該電子部品309の端子が導電線304に接続されている。
【0006】
前記第1の平板状ケーブル303の端部においては絶縁層305が除去されて導電線304が露出し、また、前記第2の平板状ケーブル306の端部においては絶縁層308が除去されて導電線307が露出しているので、図に示されるように、端部を積層してハウジング301のケーブル挿入口に挿入することによって、導電線304と導電線307とが互いに接触して導通し、第1の平板状ケーブル303と第2の平板状ケーブル306とが電気的に接続される。この場合、端子302の上下の腕部材によって、第1の平板状ケーブル303及び第2の平板状ケーブル306が上下から挟まれ、導電線304と導電線307とが互いに押付けられることによって、導電線304と導電線307とが確実に接触し、第1の平板状ケーブル303と第2の平板状ケーブル306との接続が確実なものとなる。なお、ハウジング301の後方から図示されないロック部材を嵌(はめ)付け、該ロック部材によって端子302の上下の腕部材を上下から更に締付けることによって、第1の平板状ケーブル303と第2の平板状ケーブル306との接続を更に確実なものとすることもできる。
【特許文献1】特開平6−203932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の中継コネクタにおいては、導電線304と導電線307との接続抵抗が変化し、信号の伝送特性が変化してしまう。すなわち、導電線304と導電線307とは、端子302の上下の腕部材によって互いに押付けられることによって接続しているが、微細に観ると、前記腕部材の突出部に対応する点においては確実に接触しているものの、その点の前後の範囲においては、接触状態が不確実であり、接触したり離間したりしている。そして、前記点の前後の範囲が接触しているときは、接触部の面積が広いので導電線304と導電線307との接続抵抗が低下するが、前記点の前後の範囲が離間して接触しなくなると、接触部の面積が狭くなるので、導電線304と導電線307との接続抵抗が増加する。このように、導電線304と導電線307との接続抵抗が変化すると、伝送特性が不安定になり、信号を安定的に伝送することができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来の中継コネクタの問題点を解決して、露出した導電線が対向するように積層された平板状ケーブルを挿入する中継コネクタであって、押圧突起を備えるとともに、平板状ケーブルの挿抜方向に延在する第1腕部及び第2腕部、並びに、第1腕部と第2腕部とを連結する連結部を備える端子を有し、アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると第1腕部又は第2腕部の押圧突起が挿入方向に変位するように第1腕部又は第2腕部の角度が変化することによって、各平板状ケーブルの導電線同士が、押圧突起に対応する位置において接触点を形成するとともに、該接触点よりも挿入方向側において離間するので、導電線間の接続抵抗が一定となり、安定した信号の伝送特性を得ることができる中継コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の中継コネクタは、露出した導電線が対向するように積層された第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルを挿入する挿入口を備えるハウジングと、該ハウジングに装填(てん)され、前記第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルを両側から挟込む端子と、前記第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルを挿入可能な第1位置と挿入された第1の平板状ケーブルの導電線と第2の平板状ケーブルの導電線とを電気的に接続させる第2位置との間を姿勢変化可能にハウジングに取付けられるアクチュエータとを有する中継コネクタであって、前記端子は、前記第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルを両側から押圧する押圧突起を備えるとともに前記第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルの挿抜方向に延在する第1腕部及び第2腕部、並びに、前記第1腕部と第2腕部とを連結する連結部を備え、前記アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記第1腕部の押圧突起又は第2腕部の押圧突起が前記挿入方向に変位するように第1腕部又は第2腕部の角度が変化する。
【0010】
本発明の他の中継コネクタにおいては、さらに、前記アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記挿入口に挿入された第1の平板状ケーブル及び第2の平板状ケーブルの少なくとも先端において、対向する面同士の間に空隙(げき)が形成される。
【0011】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記挿入口に挿入された第1の平板状ケーブルの導電線と第2の平板状ケーブルの導電線とが押圧突起に対応する位置において接触点を形成して相互に接触する。
【0012】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記挿入口に挿入された第1の平板状ケーブルの導電線と第2の平板状ケーブルの導電線とは、接触点以外において離間する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中継コネクタは、露出した導電線が対向するように積層された平板状ケーブルを挿入する中継コネクタであって、押圧突起を備えるとともに、平板状ケーブルの挿抜方向に延在する第1腕部及び第2腕部、並びに、第1腕部と第2腕部とを連結する連結部を備える端子を有し、アクチュエータを第1位置から第2位置に姿勢変化させると第1腕部又は第2腕部の押圧突起が挿入方向に変位するように第1腕部又は第2腕部の角度が変化する。これにより、各平板状ケーブルの導電線同士が、押圧突起に対応する位置において接触点を形成するとともに、該接触点よりも挿入方向側において離間するので、導電線間の接続抵抗が一定となり、安定した信号の伝送特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが開位置にあるときの斜視図、図2は本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが開位置にあるときの三面図、図3は本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの斜視図、図4は本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの断面図であり図3におけるA−A矢視断面図、図5は本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの拡大断面図であり図4におけるB部拡大図である。なお、図2(a)は上面図、図2(b)は正面図、図2(c)は側面図である。
【0016】
図において、10は本実施の形態における中継コネクタとしてのコネクタであり、フレキシブル回路基板、フレキシブルフラットケーブル等と称される第1の平板状ケーブル51aと第2の平板状ケーブル51bとを電気的に接続するために使用される。本実施の形態において、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bは、図3に示されるように、端部が積層された状態で、コネクタ10に挿入されて相互に接続される。この場合、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bは、導電線が形成された面が向合うようにして積層される。なお、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bは、同様の構成を備えるものであり、統合的に説明する場合には、平板状ケーブル51として説明する。該平板状ケーブル51は、例えば、FPC、FFC等と称される平板状可撓性ケーブルであるが、導電線を備える平板状のケーブルであれば、いかなる種類のものであってもよい。
【0017】
また、本実施の形態において、コネクタ10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、コネクタ10が図に示される姿勢である場合に適切であるが、コネクタ10の姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0018】
ここで、前記コネクタ10は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたハウジング31と、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成され、前記ハウジング31に姿勢変化可能に取付けられたアクチュエータ11とを有する。すなわち、該アクチュエータ11は、姿勢変化して第1位置としての開位置及び第2位置としての閉位置になるように前記ハウジング31に取付けられている。
【0019】
そして、該ハウジング31は、下部32、上部35、左右の側部36、並びに、前記下部32、上部35及び側部36の間に形成された前方(図1における左斜め下方)から平板状ケーブル51の端部を挿入したり抜出したりするための開口部である挿入口33を有し、該挿入口33には金属製の端子が装填される端子受入溝34が複数形成されている。なお、前記挿入口33内には、図4及び5に示されるように、端子受入溝34と端子受入溝34との間には平板状ケーブル51の先端が当接する当接部38が配設されている。そして、該端子受入溝34は、例えば、ピッチ約0.3〔mm〕で合計40本が形成されている。なお、前記端子受入溝34のピッチ及び数は適宜変更することができる。さらに、必ずしもすべての端子受入溝34に端子41が装填される必要はなく、平板状ケーブル51が備える導電線の配列に対応させて、端子41を適宜省略することができる。
【0020】
また、各ハウジング31の両側には、補助金具としてのストッパ21が装填される。該ストッパ21は、ハウジング31に取付けられたアクチュエータ11がハウジング31から離脱することを防止する。また、前記ストッパ21は、閉位置になったアクチュエータ11の側方突部と係合して、アクチュエータ11を停止させる。
【0021】
そして、前記アクチュエータ11は、略方形の厚板状の部材である本体部15、該本体部15に形成された複数の端子収容孔(こう)12、及び、該端子収容孔12内に形成された軸部17を有する。図4に示されるように、前記端子収容孔12には、端子41の上腕部44の作動レバー部44bが収容される。
【0022】
また、端子41は、図4及び5に示されるように、略H字状の形状を有し、平板状ケーブル51の挿抜方向、つまり、ハウジング31の前後方向に延在する第1腕部としての下腕部43及び第2腕部としての上腕部44、並びに、下腕部43と上腕部44とを連結する細長い帯状の連結部45を備える。該連結部45は、下腕部43における長手方向両端の間の位置に接続され、かつ、上腕部44における長手方向両端の間の位置に接続される。なお、上腕部44は下腕部43の上方に配設されている。
【0023】
ここで、該下腕部43は、連結部45側から前方に向けて突出する先端突出部43c、先端近傍であって先端突出部43cより後方に位置し、上方に突出する押圧突起としてのケーブル支持部43a、及び、連結部45との接続部よりも後方に接続され、軸部17を下方から支持する軸受部43bを備える。また、該軸受部43bの後端にはテール部42が接続されている。該テール部42は、下方に突出しているので、必要に応じて、基板の面上に形成される接続パッドにはんだ付等によって接続される基板用接続部として使用することもできる。なお、前記先端突出部43cの上端には上方に突出する突起43dが形成されている。
【0024】
そして、端子41は、ハウジング31の背面側(図4における右側)から端子受入溝34に挿入されて装填される。この場合、下腕部43のほぼ直線状の下端部が端子受入溝34の床面に当接し、先端突出部43cが端子受入溝34内に配設された端子支持部材32aの下側面と端子受入溝34の床面との間に圧入され、突起43dが端子支持部材32aの下側面穴部の天井面に喰(くい)込み、さらに、テール部42の突起42aがハウジング31の下部32における後端面の下端に喰込むことによって、端子41がハウジング31に固定される。
【0025】
また、上腕部44は、平板状ケーブル51を下腕部43に対して押付ける可動押圧部材として機能するものであり、その先端近傍には下方に突出する押圧突起としてのケーブル押圧部44aが形成されている。さらに、前記上腕部44は、連結部45との接続点より後方に延在し、アクチュエータ11の端子収容孔12内に進入して軸部17の上方への移動を規制する作動レバー部44bを備える。
【0026】
そして、前記軸部17は、略楕(だ)円形状又は長方形状の断面を備え、軸受部43bと作動レバー部44bとの間に位置し、回転することによってカムとして機能し、図4に示されるように開位置では垂直に近い角度になっているので、作動レバー部44bを上方に押上げるようになっている。そして、作動レバー部44bが上方に押上げられると、主として連結部45とその近傍部分が弾性的に変形し、上腕部44全体が回動して上腕部44と下腕部43との相対的角度が変化し、上腕部44の先端が下方に移動する。これにより、ケーブル押圧部44aがケーブル支持部43aに接近するように移動して、平板状ケーブル51に押付けられる。
【0027】
なお、アクチュエータ11が開位置にあるときは、軸部17が水平に近い角度になっているので、作動レバー部44bは上方に押上げられておらず、上腕部44の先端が下方に移動していない。そのため、ケーブル押圧部44aとケーブル支持部43aとの間隔が十分に広いので、挿入口33から挿入された平板状ケーブル51の端部は、ケーブル押圧部44a及びケーブル支持部43aから接触圧を受けずに、又は、わずかな接触圧しか受けずに挿入されるので、実質的にZIF(Zero Insertion Force)構造が実現されている。
【0028】
次に、前記平板状ケーブル51を接続する動作について説明する。
【0029】
図6は本発明の実施の形態における中継コネクタの端子の動作を模式的に説明する図である。
【0030】
ここで、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの各々には、電気的絶縁性を示す絶縁層上に導電性を備える箔(はく)状の導電線が複数本、例えば、40本、所定のピッチ、例えば、約0.3〔mm〕で並列に配設されている。なお、前記導電線の上面は他の絶縁層によって覆われている。なお、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bにおけるコネクタ10の挿入口33に挿入される端部(図4における右端部)側、すなわち、先端部側では、先端から所定の長さ範囲に亘(わた)って、絶縁層が除去され、前記導電線の上面が露出している。そして、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端部側は、各々の導電線が形成された面が向合うようにして積層される。この場合、導電線の上面が露出している範囲において、第1の平板状ケーブル51aの各導電線と第2の平板状ケーブル51bの各導電線とが互いに対向するように積層される。なお、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端の両側には、外方へ突出する図示されない耳部が各々形成されていてもよい。
【0031】
そして、オペレータは、このように積層された第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bを先端からハウジング31の挿入口33に挿入する。この場合、図1及び2に示されるように、アクチュエータ11はあらかじめ開位置にされている。すると、積層された第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端から所定の範囲は、端子受入溝34内に収容された端子41の上腕部44と下腕部43との間に挿入される。
【0032】
なお、図に示される例においては、第1の平板状ケーブル51aが下側に位置し、第2の平板状ケーブル51bが上側に位置するようになっているが、第1の平板状ケーブル51aが上側に位置し、第2の平板状ケーブル51bが下側に位置するようにしてもよい。そして、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端は、端子受入溝34内に位置する当接部38に当接する。これにより、平板状ケーブル51の長さ方向の位置決めが行われ、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの挿入が完了した状態となる。
【0033】
続いて、オペレータがアクチュエータ11を手指等によって操作し、図1及び2に示されるような開位置にあるアクチュエータ11を図3及び4に示されるような閉位置にある状態とする。この場合、図2(c)において、アクチュエータ11は時計回り方向に姿勢変化させることによって閉位置にすることができる。
【0034】
これにより、アクチュエータ11の本体部15が回転し、図3及び4に示されるように、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの挿入方向とほぼ平行な状態になる。また、軸部17が回転し、図4に示されるように、垂直に近い角度になる。すなわち、略楕円形状又は長方形状である軸部17の断面の長軸が垂直に近い角度になる。
【0035】
そのため、前記軸部17が軸受部43bと作動レバー部44bとの間隔を押広げ、該作動レバー部44bを上方に押上げるので、主として連結部45とその近傍部分が弾性的に変形し、上腕部44全体が回動して上腕部44と下腕部43との相対的角度が変化し、上腕部44の先端が下方に移動する。そして、ケーブル押圧部44aがケーブル支持部43aに接近するように移動して、第2の平板状ケーブル51bの上側の面、すなわち、導電線と反対側の面に押付けられる。そのため、第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線が、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線に押付けられる。
【0036】
この場合、ケーブル押圧部44aと対向する位置にケーブル支持部43aがあるので、第1の平板状ケーブル51aの下側の面、すなわち、導電線と反対側の面に対して、ケーブル支持部43aが押付けられる。その結果、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bは、ケーブル押圧部44aとケーブル支持部43aとによって上下から挟まれた状態となり、図5に示されるように、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線とがケーブル支持部43a及びケーブル押圧部44aに対応する位置において接触点55を形成して電気的に接続される。
【0037】
一方、前記接触点55よりも後方側、すなわち、挿入方向の前側(図5における右側)においては、第1の平板状ケーブル51aの上側の面と第2の平板状ケーブル51bの下側の面とが離間して、空隙Cが形成されている。すなわち、前記接触点55よりも前側においては、第1の平板状ケーブル51aの導電線と第2の平板状ケーブル51bの導電線とが離間し、電気的に接続されていない。また、前記接触点55よりも反挿入方向側、すなわち、後側においても、同様に、第1の平板状ケーブル51aの上側の面と第2の平板状ケーブル51bの下側の面とが離間して、空隙Dが形成されている。すなわち、前記接触点55よりも後側においても、第1の平板状ケーブル51aの導電線と第2の平板状ケーブル51bの導電線とが離間し、電気的に接続されていない。
【0038】
これは、上腕部44のケーブル押圧部44aが、第2の平板状ケーブル51bの上側の面に押付けられる際に、挿入方向に、すなわち、第2の平板状ケーブル51bの前端に向けて変位するためである。本実施の形態においては、端子41の寸法及び形状を調整して、アクチュエータ11を開位置から閉位置に姿勢変化させることによって、ケーブル押圧部44aをケーブル支持部43aに接近するように移動させる際に、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接してから移動が完了するまでに、前記ケーブル押圧部44aの挿入方向に関する位置が、図5における右方向に移動するようになっている。
【0039】
図6には、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に押付けられる際の上腕部44の動きと平板状ケーブル51との関係が模式的に、かつ、誇張して示されている。なお、図6(a)は上腕部44の動きを示し、図6(b)はケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接する前の状態を示し、図6(c)はケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接した状態を示し、図6(d)はアクチュエータ11が閉位置となりケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に押付けられた状態を示している。
【0040】
まず、アクチュエータ11が開位置にある場合、上腕部44は図6(b)に示されるように、その先端(図における左端)が斜め上を向いている。つまり、下腕部43の延在方向を基準とした場合、上腕部44の回動中心から先端を観た仰角、すなわち、上腕部44の延在方向の仰角がプラスになっている。
【0041】
続いて、アクチュエータ11を開位置から閉位置に姿勢変化させると、上腕部44全体が回動して上腕部44と下腕部43との相対的角度が変化し、下腕部43の延在方向を基準とした場合の上腕部44の延在方向の仰角が減少し、上腕部44の先端が下方に移動する。そして、前記仰角がゼロになると、図6(c)に示されるように、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接した状態となる。
【0042】
続いて、上腕部44の先端が更に下方に移動すると、下腕部43の延在方向を基準とした場合の上腕部44の延在方向の仰角がマイナスとなり、該仰角の絶対値が増加する。そして、アクチュエータ11が閉位置になると、図6(d)に示されるように、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に押付けられた状態となる。
【0043】
この状態では、下腕部43の延在方向を基準とした場合の上腕部44の延在方向の仰角が、絶対値の大きなマイナスの値となっている。また、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線とが、ケーブル支持部43a及びケーブル押圧部44aに対応する位置において接触点55を形成し、電気的に接続される。そして、該接触点55よりも挿入方向側においては、第1の平板状ケーブル51aの上側の面と第2の平板状ケーブル51bの下側の面とが離間して空隙Cが形成され、前記接触点55よりも反挿入方向側においても、第1の平板状ケーブル51aの上側の面と第2の平板状ケーブル51bの下側の面とが離間し、空隙Dが形成される。
【0044】
図6(a)には、前記図6(b)〜(d)に示される上腕部44の動きがまとめて示されている。そして、ケーブル押圧部44aの軌跡が矢印Eで示されている。また、矢印Fは、説明のために矢印Eの曲率を誇張して示したものである。矢印Fを観ると、図6(c)に示されるように、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接した状態から、図6(d)に示されるように、ケーブル押圧部44aが第2の平板状ケーブル51bの上側の面に押付けられた状態となるまでの間に、ケーブル押圧部44aが挿入方向に、すなわち、平板状ケーブル51の前端に向けて距離Gだけ変位していることが分かる。
【0045】
このように、本実施の形態においては、上腕部44の角度が変化して、ケーブル押圧部44aは、第2の平板状ケーブル51bの上側の面に接してから、挿入方向に変位するので、接触点55よりも挿入方向側においては、第1の平板状ケーブル51aの上側の面と第2の平板状ケーブル51bの下側の面とが離間して空隙Cが形成される。これは、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの本体が合成樹脂等のようにある程度柔軟で弾塑性を備える材質から成る板状部材であるため、積層された状態でピンポイント的な狭い範囲を上下から押圧されると、当該範囲では互いに密着するように変形するとともに、当該範囲外では当該範囲における変形の影響を受けて、互いに離間するように変形するためであると考えられる。そして、ケーブル押圧部44aによって第2の平板状ケーブル51bの上側の面が挿入方向に変位させられるので、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの本体を構成する部材が挿入方向にわずかながら流動することによって、接触点55よりも挿入方向側においては、大きな空隙Cが形成されると考えられる。一方、前記部材が挿入方向にわずかながら流動することによって、接触点55よりも反挿入方向側においては、空隙Cよりも小さな空隙Dが形成されると考えられる。
【0046】
したがって、アクチュエータ11が閉位置になると、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線とが接触点55において電気的に接続されて導通するとともに、接触点55外の範囲では、接触することがないので、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線との間の接続抵抗が、変化することなく、一定となる。そのため、安定した信号の伝送特性を得ることができる。
【0047】
ところで、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bにおいて絶縁層を除去して導電線の上面を露出させる範囲は、絶縁層を除去する工程を考慮すると、通常、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端から所定の範囲であり、しかも、該範囲は、端子受入溝34内の当接部38からケーブル押圧部44a及びケーブル支持部43aまでの長さよりもわずかに長い程度の範囲である。そのため、接触点55よりも反挿入方向側においては、導電線の露出している範囲が短いので、空隙Dが小さくても、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線とが接触してしまうことがない。
【0048】
一方、接触点55よりも挿入方向側においては、導電線の露出している範囲が長く、接触点55から先端までの全範囲に亘って第1の平板状ケーブル51aの上側の面及び第2の平板状ケーブル51bの下側の面において導電線が露出しているが、ケーブル押圧部44aが挿入方向に変位することによって、大きな空隙Cが形成されているので、第1の平板状ケーブル51aの上側の面において露出している導電線と第2の平板状ケーブル51bの下側の面において露出している導電線とが接触してしまうことがない。
【0049】
なお、図6においては、下腕部43の延在方向を基準とした場合の上腕部44の延在方向の仰角がプラスからマイナスになる例について説明したが、上腕部44と下腕部43との相対的角度の変化は、図6における説明に限定されるものでなく、ケーブル押圧部44aが挿入方向に変位することによって、第2の平板状ケーブル51bの上側の面が挿入方向に変位させられるのであれば、いかなるものであってもよい。例えば、アクチュエータ11が開位置にある場合から下腕部43の延在方向を基準とした場合の上腕部44の延在方向の仰角がマイナスであって、アクチュエータ11を開位置から閉位置に姿勢変化させると、前記仰角が絶対値の大きなマイナスになっていくようにしてもよい。
【0050】
また、アクチュエータ11を姿勢変化させることによって上腕部44が回動する例について説明したが、下腕部43が回動するようにしてもよい。この場合には、ケーブル支持部43aがケーブル押圧部44aに接近し、かつ、挿入方向に変位することによって、第1の平板状ケーブル51aの下側の面が挿入方向に変位させられる。
【0051】
このように、本実施の形態において、端子41は、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bを両側から押圧するケーブル支持部43a及びケーブル押圧部44aを備えるとともに第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの挿抜方向に延在する下腕部43及び上腕部44、並びに、下腕部43と上腕部44とを連結する連結部45を備え、アクチュエータ11を開位置から閉位置に姿勢変化させると、ケーブル支持部43a又はケーブル押圧部44aが挿入方向に変位するように下腕部43又は上腕部44の角度が変化する。
【0052】
これにより、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの導電線同士が、ケーブル支持部43a及びケーブル押圧部44aに対応する位置において接触点55を形成して相互に接触する。そして、前記導電線同士は接触点55以外において離間する。これにより、導電線間の接続抵抗が一定となり、安定した信号の伝送特性を得ることができる。
【0053】
特に、第1の平板状ケーブル51a及び第2の平板状ケーブル51bの先端において、対向する面同士の間に大きな空隙Cが形成されるので、接触点55以外において導電線同士が接触してしまうことを確実に防止することができる。
【0054】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが開位置にあるときの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが開位置にあるときの三面図である。
【図3】本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの断面図であり図3におけるA−A矢視断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における中継コネクタのアクチュエータが閉位置にあるときの拡大断面図であり図4におけるB部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態における中継コネクタの端子の動作を模式的に説明する図である。
【図7】従来の中継コネクタの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10 コネクタ
11 アクチュエータ
12 端子収容孔
15 本体部
17 軸部
21 ストッパ
31、301 ハウジング
32 下部
32a 端子支持部材
33 挿入口
34 端子受入溝
35 上部
36 側部
38 当接部
41、302 端子
42 テール部
42a、43d 突起
43 下腕部
43a ケーブル支持部
43b 軸受部
43c 先端突出部
44 上腕部
44a ケーブル押圧部
44b 作動レバー部
45 連結部
51a、303 第1の平板状ケーブル
51b、306 第2の平板状ケーブル
55 接触点
304、307 導電線
305、308 絶縁層
309 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)露出した導電線が対向するように積層された第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)を挿入する挿入口(33)を備えるハウジング(31)と、
(b)該ハウジング(31)に装填され、前記第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)を両側から挟込む端子(41)と、
(c)前記第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)を挿入可能な第1位置と挿入された第1の平板状ケーブル(51a)の導電線と第2の平板状ケーブル(51b)の導電線とを電気的に接続させる第2位置との間を姿勢変化可能にハウジング(31)に取付けられるアクチュエータ(11)とを有する中継コネクタ(10)であって、
(d)前記端子(41)は、前記第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)を両側から押圧する押圧突起(43a、44a)を備えるとともに前記第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)の挿抜方向に延在する第1腕部(43)及び第2腕部(44)、並びに、前記第1腕部(43)と第2腕部(44)とを連結する連結部(45)を備え、
(e)前記アクチュエータ(11)を第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記第1腕部(43)の押圧突起(43a)又は第2腕部(44)の押圧突起(44a)が前記挿入方向に変位するように第1腕部(43)又は第2腕部(44)の角度が変化することを特徴とする中継コネクタ(10)。
【請求項2】
前記アクチュエータ(11)を第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記挿入口(33)に挿入された第1の平板状ケーブル(51a)及び第2の平板状ケーブル(51b)の少なくとも先端において、対向する面同士の間に空隙が形成される請求項1に記載の中継コネクタ(10)。
【請求項3】
前記アクチュエータ(11)を第1位置から第2位置に姿勢変化させると、前記挿入口(33)に挿入された第1の平板状ケーブル(51a)の導電線と第2の平板状ケーブル(51b)の導電線とが押圧突起(43a、44a)に対応する位置において接触点(55)を形成して相互に接触する請求項1に記載の中継コネクタ(10)。
【請求項4】
前記挿入口(33)に挿入された第1の平板状ケーブル(51a)の導電線と第2の平板状ケーブル(51b)の導電線とは、接触点(55)以外において離間する請求項3に記載の中継コネクタ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−265825(P2007−265825A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89873(P2006−89873)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレーテッド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】