説明

中継装置、中継方法

【課題】移動体通信システムにおいて良好な通信品質を維持しつつ移動端末からのデータを中継することができる中継局装置及び中継方法が求められていた。
【解決手段】本発明の中継装置は、基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置であって、複数の移動局装置と通信を行う第1通信手段と、第1通信手段で複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定手段と、複数のデータを一時記憶する記憶手段と、判定された優先度に基づいて複数のデータの送信順序を決定する決定手段と、決定された送信順序に従って記憶手段よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信手段と、を備える。受信したデータを一旦復号し、優先度に基づいて送信順序を決定するため通信品質を一定レベルに維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムで用いられる中継装置及び中継方法に関し、特に通信品質を保ちつつ移動局からのデータを基地局に中継する中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムでは高速移動時においても基地局との接続状態を維持できる技術の開発が進められている。
【0003】
ここで同一方向に共に移動する移動局が多数存在する状況においては、基地局が各移動局との間で個別に管理制御を実施すると、セル境界を超える時など移動局からの制御信号が瞬間的に増大するという課題がある。
【0004】
このような課題を解決する技術として特許文献1に開示されている移動通信制御方式がある。当該通信方式では、バスや電車などの移動媒体に中継装置を配置し、位置登録ゾーンの境界を通過するときに当該中継装置が移動媒体に登場している加入者がもつ移動局の加入者番号をとりまとめて基地局を介して制御局に通知する。このように中継装置が取り纏めて位置登録を行うことで、基地局は各移動局と個別に位置登録処理を行う必要がないため、瞬間的に制御信号が増大することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−244780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動媒体に中継装置を搭載する場合は、移動局の電力消費軽減の観点や、無線リソースの有効利用の観点から、中継装置は制御情報だけではなく通話など通常の通信データも中継することが好ましい。
【0007】
しかしながら、中継装置と各移動局との間の伝送路品質は相対位置が変化しないことから比較的安定しているのに対し、中継装置と基地局との間の伝送路品質は大きく変動する。
【0008】
ここで、中継装置への無線リソース割り当てが不十分な状況において複数の移動局から多量のデータが送られてきた場合、中継装置は当該データを適切に処理できず通話が途切れるなどの事態が発生する可能性が生じていた。
【0009】
本発明は上記課題を鑑み、移動体通信システムにおいて良好な通信品質を維持しつつ移動局からのデータを中継することができる中継装置及び中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中継装置は、基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置であって、前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信手段と、前記第1通信手段で前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定手段と、前記複数のデータを一時記憶する記憶手段と、前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定手段と、前記決定された送信順序に従って前記記憶手段よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信手段と、を備える。
【0011】
また、本発明の中継方法は、基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置で実行される中継方法であって、前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信ステップと、前記第1通信ステップで前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定ステップと、 前記複数のデータを記憶媒体に一時記憶する記憶ステップと、前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定ステップと、前記決定された送信順序に従って前記記憶媒体よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体通信システムにおいて良好な通信品質を維持しつつ移動局からのデータを中継することができる中継局装置及び中継方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる移動体通信システムの構成を示す概念図である。
【図2】実施の形態1にかかる中継装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態2にかかる中継装置の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2にかかる上り方向のカプセル化の様子を説明する図である。
【図5】実施の形態2にかかる下り方向のカプセル化の様子を説明する図である。
【図6】実施の形態2にかかる上り方向の処理動作を示すシーケンス図である。
【図7】実施の形態2の変形例にかかる移動体通信システムの構成を示す概念図である。
【図8】実施の形態2にかかる位置登録時の処理の流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態1における移動体通信システム1000の構成を示すブロック図である。
【0015】
移動体通信システム1000は、基地局100と、中継局200と、複数の移動局300a〜300mと、を含んで構成される。なお、中継局200は、移動媒体10に搭載されており、移動局300a〜300mは当該移動媒体10と共に移動している。ここで、移動媒体10は、具体的には、バスや電車と言った乗り物である。また、基地局100は、中継局200の他、自局配下の移動局300nなどとも直接無線通信を行っている。
【0016】
図2は、中継局200の具体的構成を示すブロック図である。中継局200は、対移動局通信部210と、優先度判定部220と、記憶部230と、通信制御部240と、対基地局通信部250と、を備える。
【0017】
対移動局通信部210は、配下の移動局300a〜300mと無線通信を行う。対移動局通信部210は、移動局より送信された信号をアンテナを介して受信すると、受信信号に対してマッチング処理、増幅処理、フィルタリング処理等の一般的な受信処理を行った後、復調処理及び復号処理を行う。復号されたデータは優先度判定部220に出力される。また、対移動局通信部210は、通信制御部240からの制御に従って記憶部230に一時記憶されている移動局用データを読み込み、当該データに符号化処理及び変調処理を行った後にアップコンバート、増幅処理等の一般的な送信処理を行い、アンテナを介して移動局に無線送信する。
【0018】
優先度判定部220は、対移動局通信部210より入力したデータの優先度を判定する。具体的には、復号されたデータパケットのヘッダに含まれる優先度情報を参照し、各移動局より送信されたデータについて高い優先度を示すデータから送信するように送信順序を決定する。優先度情報としては、IPヘッダ内に含まれるTOS(Type of service)やDSCP(Differentiated services code point)といった情報を利用することができる。優先度判定部220は、上記優先度情報を利用して同一フレームで複数の移動局より送られてきた複数のデータに対して送信順序を決定する。優先度判定部220は、当該データを記憶部230に出力して記憶させると共に、送信順序を通信制御部240に通知する。また、優先度判定部220は、対基地局通信部250より入力した移動局宛てデータのデータパケットについても同様に優先度情報を参照し、送信順序を決定する。優先度判定部220は、決定した送信順序を通信制御部240に通知すると共に各データを記憶部230に出力する。
【0019】
記憶部230は、優先度判定部220より出力された基地局宛てデータ及び移動局宛てデータを一時記憶する。記憶部230は所謂バッファであり、通信制御部250からの制御に従って基地局宛てデータ及び移動局宛てデータが取り出され、それぞれ対基地局通信部250及び対移動局通信部210へ出力される。
【0020】
通信制御部240は、優先度判定部220より通知された送信順序に基づいて記憶部230に一時記憶されているデータを取り出し、優先度の高いデータから送信するように制御する。通信制御部240は、それぞれ取り出したデータを対基地局通信部250及び対移動局通信部210に出力する。
【0021】
また、通信制御部240は、移動局からの接続要求を受けて、各移動局に対して無線リソースを割り当てるスケジューリングを行う。また、移動局から受信するデータ量または記憶部230に一時記憶されている送信待ちのデータ量に応じて、基地局に対して必要量の無線リソース割り当てを要求する。このように、通信制御部240は、バッファである記憶部240のデータ蓄積量が一定閾値を超えると、無線リソース割り当て要求を送信し、当該無線リソース割り当て要求を受信した基地局は、配下の移動局よりも優先して当該中継局に対して使用帯域幅を増加させる。
【0022】
対基地局通信部250は、通信制御部240より受け取ったデータに対して符号化処理及び変調処理を行った後に、アップコンバートや増幅処理等の送信処理を行い、基地局100より自局に対して割り当てられているキャリアを用いてデータを無線送信する。ここで、移動体通信システムが適応変調方式を採用している場合は、対基地局通信部250は、基地局100より通知される符号化率及び変調方式でそれぞれ符号化処理及び変調処理を行う。
【0023】
以上本発明実施の形態1の中継局装置は、複数の移動局よりデータを受け取ると、一旦データを復号して当該データの優先度を確認した後に、優先度の高いデータから基地局に送信する。従って、基地局100から割り当てられる無線リソースがすべてのデータを送信するのに十分でない場合であっても、優先度判定部220が各データの優先度を判定し、適切な送信順序でデータが送信されるため、要求されるQoSを満たすことができる。
【0024】
なお、優先度判定部220は、受け取った各データの優先度に基づいて当該データの許容遅延時間を算出し、送信順序に加えて当該許容遅延時間を通信制御部240に通知しても良い。通信制御部240は、当該許容遅延時間を満たすように記憶部230よりデータを取り出して対基地局通信部250より送信させる制御を行っても良い。優先度判定部220は、パケットに含まれる優先度情報に上記許容遅延時間が記されている場合は、当該許容遅延時間に基づいて上記制御を行っても良い。また、通信制御部240は、優先度情報からデータの種類を特定し、データの種類毎に許容遅延時間が纏められた許容遅延時間管理テーブルを参照して、上記許容遅延時間を求めても良い。
【0025】
ここで、基地局100から割り当てられる周波数帯域が少ない場合や、適応変調が行われる場合において伝送路品質が悪く、高符号化率又は多値変調方式で符号化処理又は変調処理を行えない場合は、許容遅延時間にデータを送れない場合がある。この場合は、通信制御部240は、許容遅延時間内に送信できなかったデータを破棄する制御を行っても良い。通話データのように、許容遅延時間を超えたデータは送信しても最終的に破棄されうるため、中継局内で破棄することで基地局100と中継局200との間の無線リソースを有効に活用することができる。
【0026】
また、優先度判定部220は、対移動局通信部210より入力したデータの送信元IPアドレス、送信先IPアドレス、使用プロトコル、ポート番号等に基づいて当該データの優先度を判定し、データの送信順序を決定しても良い。また、優先度判定部220は、拡張MACフレームのヘッダに含まれる情報を用いて上記優先度判定を行い、データの送信順序を決定しても良い。
【0027】
また、基地局は、当該中継局におけるセル間移動時や妨害電波による瞬間的な切断からの復旧時には、追加のリソース割り当て要求を待たずに使用帯域幅を増加させるスケジューリングを行っても良い。移動している当該中継局と基地局との間で切断が起きても中継局と移動局間での通信は継続されるため、複数の移動局より送信されたデータが中継局の記憶部に多量に蓄積されている可能性があるためである。
【0028】
また、中継局と移動局と間の伝送レートが小さく、大規模データを転送する際にボトルネックとなっている場合は、基地局は送信データを中継局までは先に転送させ、中継局で送信データを蓄積する構成としても良い。この場合、中継局は、バッファとして機能する上述した記憶部とは別に、第2の記憶部を備える構成としても良い。中継局において通信制御部は、移動局との間の伝送レートが低い場合は、基地局より送信された大規模データを第2の記憶部に格納し、移動局との通信状況に応じて当該第2の記憶部より随時データを読み込んで転送するよう構成しても良い。
【0029】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る中継局装置は、新たにデータをカプセル化するカプセル化手段を備えることを特徴とする。以下図面を用いて説明する。なお、図1で説明したブロックについては同一の符号を付し、発明の明確化のために一部説明を省略する。
【0030】
図3は、本実施の形態2に係る中継局装置500の構成を示すブロック図である。
【0031】
通信制御部540は、通信制御部240の機能に加えて、優先度判定部220より通知された送信順序、基地局より通知された無線リソース量、記憶部230に残存している未送信データ、に基づいてデータをそのまま送信するか、カプセル化して送信するかの判定を行う。カプセル化することで、制御信号のオーバーヘッドを解消し、無線リソースを有効活用できるためである。通信制御部540は、前記判定の結果、カプセル化すると決定した場合は、カプセル化処理部560に該当データのカプセル化を指示する。
【0032】
カプセル化処理部560は、通信制御部540からの制御に従い、記憶部230よりカプセル化するデータを読み込み、パケットを集約した上でデータを暗号化し、データをカプセル化した上で通信制御部540に出力する。通信制御部540は、カプセル化されたデータを対基地局通信部250に出力する。対基地局通信部250は当該データを基地局100に送信する。また、カプセル化処理部560は、対基地局通信部250よりカプセル化されたデータを受け取り、カプセル化を解除して優先度判定部220に出力する。
【0033】
図4は、上り方向のカプセル化の様子を示す概念図である。移動局A〜Cから送信された各データは中継局装置500において受信され、優先度判定及びカプセル化判定が行われる。ここでは、移動局Aより送られたX宛のデータと移動局Cより送られたZ宛のデータが1つのカプセルに纏められて基地局400へ送信されている。一方、移動局Bより送られたY宛のデータはカプセル化されず、通常通り単独で送信されている。基地局400は、カプセル化されたデータを受信するとカプセル化を解除し、各データに分離した後にコアネットワーク側に出力する。
【0034】
図5は、下り方向のカプセル化の様子を示す概念図である。コアネットワーク側より受け取った移動局A〜C宛の各データは基地局400において、優先度判定及びカプセル化判定が行われる。ここでは、移動局A宛のデータと移動局B宛のデータが1つのカプセルに纏められて中継局装置500へ送信されている。一方、移動局C宛のデータはカプセル化されず、通常通り単独で送信されている。中継局装置500は、カプセル化されたデータを受信するとカプセル化を解除し、各データに分離した後に優先度に従って各移動局に送信する。
【0035】
なお、上記図4及び図5で説明したカプセル化は一例であり、3つ以上の移動局から送信されたデータをカプセル化しても良い。
【0036】
次に、カプセル化の処理の流れを説明する。図6は、図4で示した上り方向の処理動作を示すシーケンス図である。
【0037】
まず、フレーム毎に中継局装置500が割り当てたキャリアを使用して複数の移動局よりデータが送信されるS101a〜S101c。ここでは、中継局装置500は、移動局Aに通信キャリアF1を、移動局Bに通信キャリアF2を、移動局Cに通信キャリアF3をそれぞれ割り当てており、各移動局は割り当てられたキャリアを使用してデータを中継局装置500に送信する。
【0038】
中継局装置500において、対移動局通信部210は、S101で受信したデータを復調・復号し(S102)、優先度判定部220は、各データの優先度を判定する(S103)。続いて、通信制御部530は、基地局400より割り当てられている無線リソース量や記憶部230に送信待ちの状態で蓄積されているデータに基づいて、カプセル化して送信するかどうかを判定する(S104)。この時、通信制御部530は、どの移動局からのデータとどの移動局からのデータを1つのカプセルに纏めて送信するかを決定する。S104でカプセル化すると決定した場合は、通信制御部530は、カプセル化処理部560に当該データのカプセル化を指示し、カプセル化処理部560は、対象データに暗号化を行った後に送信パケットを集約してカプセル化を行い、宛先を基地局400としたカプセルを生成する(S105)。
【0039】
対基地局通信部250は、カプセル化処理部560より受け取ったカプセル化されたデータに対して基地局より指定された符号化率及び変調方式を用いて符号化処理及び変調処理を行い、基地局より割り当てられた通信キャリアF0を使用してデータを送信する(S106)。
【0040】
基地局400は、受け取ったデータがカプセル化されている場合は、カプセル化を解除して分離し(S107)、分離後の各データをコアネットワーク側に送信する(S108)。続いて、対基地局通信部250は、カプセル化されなかった移動局Bから送信されたデータを基地局400に送信する。(S109)。基地局400は、当該受信したデータをコアネットワーク側へ送信する(S110)。
【0041】
このように本実施の形態2に係る中継局装置は、移動局から受信したデータに対して優先度に従って送信することに加えて必要に応じてカプセル化を行った上でデータを送信する。従って、中継局装置は、複数のパケットを集約して送信できるため制御信号のオーバーヘッドを解消することができ、無線リソースを有効に使用することができる。
【0042】
なお、通信制御部540は、上記送信データをカプセル化して送信するかどうかの判定を送信データのパケットサイズに基づいて決定しても良い。通信制御部540は、送信パケットのヘッダ情報や復号結果に基づいてパケットサイズを判定し、所定の基準サイズより小さいサイズの複数のパケットをカプセル化して送信すると決定し、カプセル化処理部560に通知する。カプセル化処理部560は、通信制御部540より通知された複数の未送信パケットを記録部560より読み出し、1つのパケットのペイロードとしてカプセル化する。
【0043】
当該構成とすることで、基地局−中継局間の使用周波数帯域幅と中継局−移動局の使用周波数帯域幅中継との差に起因して発生する転送遅延において、中継局内で音声データ等の小サイズパケットを結合して1パケットとして送信することで無線リソースの有効活用を図ることができる。
【0044】
現在運用されている規格のG.711では、20msec周期で音声をパケット化する場合において、1秒間に創出するパケット数は50ppsであり、音声1チャンネル当たりの必要帯域は64kbsであり、ペイロードサイズは160byteである。また、G.729では、1秒間に創出するパケット数は50ppsであり、音声1チャンネル当たりの必要帯域は8kbsであり、ペイロードサイズは20byteである。ここで、音声をIP化する場合にレイヤ3以上のオーバーヘッドとして40byteが必要となるため、音声パケットの長さはそれぞれ200byteと60byteとなり、オーバーヘッドが占める割合が非常に大きい。そこで、中継局は、このような種類のパケットを移動局から受信した場合は、1つのパケットに集約して基地局に送信することで中継局−基地局間の無線リソースを有効活用することができる。
【0045】
なお、通信制御部540は、データのTOSやDSCPに基づいて、所定の種類のパケットについては許容遅延時間以内の範囲内で複数のパケットを結合して1つのパケットに統合した後に送信するよう構成しても良い。対向装置である基地局は、受信パケットのヘッダ情報に基づいてカプセル化したパケットを認識し、分解して個別パケットに戻したうえで以降の管理を行う。
【0046】
また、中継局は、送信データに疑似カプセル化を行い、送信する構成としても良い。予め基地局と中継局との間で送信データのヘッダ情報を共有しておき、中継局は、アドレス情報などの重複部分や0パディングなどの不要な情報を取り除いた有効データに当該データを識別するための識別情報を付加して送信する。すなわち、中継局は、音声パケットなど定期的に送信される小サイズパケットに関し、当該パケットのヘッダ情報を基地局との間で設けられた専用インタフェースを用いて基地局に送信し、基地局に所定の識別情報と対応付けて一時記憶させておく。そのような処理を行った後に、中継局は、移動局より送られてくる音声パケットから有効データ部分を取り出し、前記基地局に通知した識別情報を有効データに付加して送信データとして送信する。なお、このような処理は、中継局内の通信制御部が行っても良いし、別途上記処理を行う処理部を設けても良い。対向装置である基地局は、受信データに付加された識別情報からデータを識別し、予め中継局より別途送信されて一時記憶しているヘッダ情報を読み込んで受信データに含まれる有効データと組み合わせて元のデータに復元する。このような構成とすることで、オーバーヘッドを更に削減することができる。
【0047】
なお、本発明の中継局装置は図7に示すように複数のアンテナを備えMIMO通信を行うよう構成されていても良い。基地局装置と中継局装置との間の通信レートを向上させることで、中継局装置を中継することによる処理遅延や通信レートの低減を改善させることができる。
【0048】
また、本発明の中継局装置が搭載された移動媒体がセルエッジを超える場合など、各移動局が位置登録を行う場合には、中継局装置がこれらの位置登録を纏めて行うよう構成されていても良い。
【0049】
図8は、当該位置登録時の処理の流れを示すシーケンス図である。各基地局はサーチ信号をブロードキャストしており(S201)、当該基地局がカバーするセル圏内に中継局装置を搭載した移動媒体が入ると、当該中継局装置はサーチ信号を検出する(S202)。中継局装置はサーチ信号を検出する当該基地局に対して位置登録を要求する(S203)。中継局装置より位置登録要求を受け取ることで基地局は、中継局装置を検出し(S204)、当該中継局装置の位置登録を行った後に、中継局装置に位置登録確認を返す(S205)。
【0050】
中継局装置は、基地局より位置登録確認を受け取ると移動局検出を開始する(S206)。中継局装置は基地局がサーチ用に用いる制御チャネルと同一の制御チャネルを使用してサーチ信号を移動媒体をカバーする程度の送信電力でブロードキャストする(S207)。移動媒体内に存在する移動局は、S207で中継局装置より送信されるサーチ信号を検出する(S208)。
【0051】
サーチ信号を検出した各移動局は中継局装置に対して位置登録要求を送信する(S209)。中継局装置は、各移動局より送信された位置登録要求を受信することで移動局を検出する(S210)。中継局装置は、移動局を検出すると各移動局に位置登録確認を返信(S211)。中継局装置は、S210で検出した移動局に関する情報を纏めて位置登録要求と共に基地局装置に送信する(S212)。
【0052】
基地局装置は纏めて受信した複数の移動局の位置登録要求を分離した後、上位局に送信して位置登録を行う(S213)。基地局装置は、移動局の位置登録確認を返し、移動局の位置登録が完了する(S214)。このような手順で位置登録を行っても良い。中継局装置は基地局装置と良好な通信を行えるよう見通し通信を行える良好な位置に取り付けられており、また、より感度の良いアンテナや高品質な増幅器を搭載しているため、移動媒体内の位置局に比べて早く新たな基地局装置を捕捉することができる。そこで、当該基地局装置に対して位置登録を要求する一方、移動媒体内の移動局に対してサーチを行い、移動局を検出する。そして、中継局装置が検出した自局配下の移動局について纏めて位置登録を行う。従って、基地局よりサーチ信号を受信した各移動局が位置登録を行うことなく、中継局装置が纏めて位置登録を行うため、移動局から基地局へ送信される制御信号が瞬間的に増えることを防ぎ無線リソースを有効に利用することができる。また、当該中継局装置は基地局装置と同一の制御チャネルを用いて移動局に対してサーチをかけるため、中継局専用制御チャネルを用意する必要が無く、従来の移動局端末もそのまま利用することができる。
【0053】
以上説明したように、本発明によれば中継装置において複数の移動局より受信したデータの優先度を考慮した上でデータが送信されるため、基地局と中継局間で伝送品質が悪い場合であっても一定の品質を保ちつつデータを中継することができる。さらに、データの優先度や記憶部に残っている送信待ちのデータ、その他基地局から自局に割り当てられる無線リソースに基づいて複数のデータを結合してカプセル化するかどうかの判定も行う構成とすることで制御信号のオーバーヘッドを低減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、以下の構成をとることが可能である。
【0055】
(1)基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置であって、前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信手段と、前記第1通信手段で前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定手段と、前記複数のデータを一時記憶する記憶手段と、前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定手段と、前記決定された送信順序に従って前記記憶手段よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信手段と、を備える中継装置。
(2)前記判定手段は、受信したデータのパケットに含まれる優先度情報に基づいてデータの優先度を判定する、(1)に記載の中継装置。
(3)前記決定手段は、前記データの遅延許容時間を求め、前記遅延許容時間以内に前記データを送信するように前記送信順序を決定する、(1)に記載の中継装置。
(4)前記決定手段は、前記遅延許容時間以内に送信できないデータを破棄する制御を行う、(3)に記載の中継装置。
(5)データをカプセル化するカプセル化手段を更に備え、
前記決定手段は、前記複数のデータの優先度に基づいて前記複数のデータに対してカプセル化を行うかどうかの決定を行い、前記カプセル化手段は、前記決定手段で決定されたデータに対してカプセル化を行い、前記第2通信手段は、カプセル化されたデータを基地局に送信する、(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の中継装置。
(6)前記決定手段は、前記記憶手段に一時記憶されているデータ及び前記基地局より割り当てられた無線リソースに基づいてカプセル化を行うかどうかの決定を行う、(5)に記載の中継装置。
(7)基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置で実行される中継方法であって、前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信ステップと、前記第1通信ステップで前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定ステップと、前記複数のデータを記憶媒体に一時記憶する記憶ステップと、前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定ステップと、前記決定された送信順序に従って前記記憶媒体よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信ステップと、を備える中継方法。
【符号の説明】
【0056】
10 移動媒体
100 基地局 200 中継局
210 対移動局通信部 220 優先度判定部
230 記憶部 240 通信制御部
240 通信制御部 250 対基地局通信部
300 移動局 400 基地局
400 基地局装置 500 中継局
540 通信制御部 550 カプセル化処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置であって、
前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信手段と、
前記第1通信手段で前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定手段と、
前記複数のデータを一時記憶する記憶手段と、
前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定手段と、
前記決定された送信順序に従って前記記憶手段よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信手段と、
を備える中継装置。
【請求項2】
前記判定手段は、受信したデータのパケットに含まれる優先度情報に基づいてデータの優先度を判定する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記データの遅延許容時間を求め、前記遅延許容時間以内に前記データを送信するように前記送信順序を決定する、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記遅延許容時間以内に送信できないデータを破棄する制御を行う、
請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
データをカプセル化するカプセル化手段を更に備え、
前記決定手段は、前記複数のデータの優先度に基づいて前記複数のデータに対してカプセル化を行うかどうかの決定を行い、
前記カプセル化手段は、前記決定手段で決定されたデータに対してカプセル化を行い、
前記第2通信手段は、カプセル化されたデータを基地局に送信する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記記憶手段に一時記憶されているデータ及び前記基地局より割り当てられた無線リソースに基づいてカプセル化を行うかどうかの決定を行う、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
基地局装置と複数の移動局装置の間の通信を中継する中継装置で実行される中継方法であって、
前記複数の移動局装置と通信を行う第1通信ステップと、
前記第1通信ステップで前記複数の移動局装置より受信した複数のデータの優先度を判定する判定ステップと、
前記複数のデータを記憶媒体に一時記憶する記憶ステップと、
前記判定された優先度に基づいて前記複数のデータの送信順序を決定する決定ステップと、
前記決定された送信順序に従って前記記憶媒体よりデータを取り出して基地局に送信する第2通信ステップと、
を備える中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38652(P2013−38652A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174164(P2011−174164)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】