説明

中詰材を貯留する有底密閉構造の壁体構造物

【課題】 用途や設置環境に応じて柔軟な設計が可能であり、低廉なコストで構築することができる壁体構造物を提供すること。
【解決手段】 1又は2以上の空間を備えた自立可能な側壁コンクリートセグメントを単層又は2層以上に組積し、当該空間の少なくとも1つに中詰材が充填された構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に中詰材を貯留する有底密閉構造の壁体構造物に関し、さらに詳細には、プレキャストコンクリートセグメントで外郭を構成し、その内部に、火山灰、フライアッシュ、溶融スラグ、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、クリンカーアッシュ、河川堆積物等の中詰材を密閉状態で長期間貯留する複合壁体構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
土止擁壁、砂防ダム、河川護岸等の築堤構造等において、鋼製壁面材、コンクリートブロック等によって形成された外壁部に中詰材を充填した複合壁体構造物が利用されている(特許文献1〜4)。これらの壁体構造物では、中詰材としてソイルセメントや土砂等が用いられているため、安全率を高く設定すると、それに伴い設置コストも高くなる問題があった。またこのような壁体構造物に要求される強度等は、用途や設置環境によって異なるが、これらの技術は、基本的に大まかな外枠を形成し、その内部に中詰材を充填するという簡単な構造であるため、設計の自由度が小さく、要求される強度等に応じて柔軟に設計することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−48461号公報
【特許文献2】特開2004−44119号公報
【特許文献3】特開2008−169630号公報
【特許文献4】特開2004−244983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、用途や設置環境に応じて柔軟な設計が可能であり、低廉なコストでコストで構築することができる壁体構造物が望まれており、本発明はそのような壁体構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決したものであり、1又は2以上の空間を備えた自立可能な側壁コンクリートセグメントを単層又は2層以上に組積して形成され、当該空間の少なくとも1つに中詰材が充填された有底密閉構造の壁体構造物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の壁体構造物は、複数の側壁コンクリートセグメントから構成され、各側壁コンクリートセグメントは1又は複数の空間を有しているため、例えば、負荷の大きな部分を構成する側壁コンクリートセグメントの空間には補強コンクリートを充填し、その他の部分には中詰材を充填するなど、要求される強度等に応じて柔軟に設計することができ、全体の設置コストを低減することが可能である。さらに中詰材として、ごみ焼却灰の溶融スラグ、火力発電所の副産物であるフライアッシュ、クリンカーアッシュ、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、火山噴火物、河川堆積物などを有効利用することにより、産業副産物等の処分費用を生産活動に転換し、従来のコンクリート砂防ダムや防波堤、河川堤防、コンクリート擁壁等と同等以上の性能を維持しながら剛結型の壁体構造物をより低廉に構築することができる。すなわち、従来の壁構造物の設計思想は力学的解析の結果から安全率を確保できる範囲内で経済断面を定める壁構造物設計法が採られてきたのに対し、本発明では力学的解析の結果で得られる総質量と同等以上の中詰材質量を定めた上で、中詰材に産業副産物等をセメントレスで大量活用することで、2次的な費用対効果が得られるため、結果として構造物の安全率を大きくとることにより、経済的相乗効果も向上する。つまり、本発明の壁体構造物では、中詰材の増大と単位体積当たりの構築費は半比例するため、安全率を高く設定すれば設置コストは低減し、投資効果も大となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明における第1の実施態様の壁体構造物を構成する有底型側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図2】同有底型側壁コンクリートセグメントを設置した状態の正面断面図である。
【図3】本発明の第2の実施態様の壁体構造物の斜視図である。
【図4】同壁体構造物の上蓋コンクリートセグメントを除いた状態の斜視図である。
【図5】同壁体構造物を構成する壁体表面が勾配を有する法面タイプの中間側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図6】同壁体構造物を構成する壁体表面が垂直である垂直タイプの中間側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図7】同壁体構造物を構成する壁体表面が勾配を有する法面タイプの隅角用側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図8】同壁体構造物を構成する壁体表面が垂直な垂直タイプの隅角用側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図9】同壁体構造物を構成する底版コンクリートセグメント及び地中杭を示す図である。
【図10】同壁体構造物の積層構造を模式的に示した図である。
【図11】図10の連続臥梁コンクリートセグメントの位置における断面図である。
【図12】同壁体構造物において、連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋、連続臥梁コンクリートセグメント用補強鉄筋を配筋し、側壁コンクリートセグメントに防食材を設置した状態を示す図である。
【図13】図12の防食材を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施態様の壁面構造物の上方からみた断面図である。
【図15】同壁体構造物の側壁コンクリートセグメントの組積に際し連結梁コンクリートセグメントの使用形態を示す図である。
【図16】図15における各層の連結梁コンクリートセグメントを示した図である。
【図17】本発明の第3の実施態様の別の実施形態を構成する側壁コンクリートセグメントを示す図である。
【図18】同実施形態の側面からみた断面図である。
【図19】本発明の第4の実施態様の側壁構造物を構成する外側に連続柱コンクリートセグメントを配置する無底函型側壁コンクリートセグメントの図である。
【図20】本発明の第4の実施態様の側壁構造物を構成する内部に連続柱コンクリートセグメントを配置する無底函型コンクリートセグメントの図である。
【図21】本発明の第4の実施態様の側壁構造物を構成する無底函型側壁コンクリートセグメントを設置した状態の図である。
【図22】本発明の第5の実施態様の壁体構造物を構成する側壁コンクリートセグメントの斜視図である。
【図23】同壁体構造物の上方からみた断面図である。
【図24】同壁体構造物の斜視図である。
【図25】壁体構造物が河川堤防に供された例を示す図である。
【図26】壁体構造物が土留用壁に供された例を示す図である。
【図27】本発明の壁体構造物を地中杭を用いて設置した状態を示す断面図である。
【図28】地中杭を持つ壁体構造物を設置した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の壁体構造物の実施態様を図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0009】
本発明の第1の実施態様の壁体構造物を構成する有底型側壁コンクリートセグメントを図1〜2に示す。本実施態様は、安定な設置基礎地盤上に単層組積して形成されるものである。有底型側壁コンクリートセグメント(31)は、底版コンクリートセグメント(2)が一体成型され、内部に1つの貯留空間(99)が形成されるとともに、外壁(40)上部から有底型側壁コンクリートセグメント用補強鉄筋(31−23)が突出している。
【0010】
この有底型側壁コンクリートセグメント(31)は、設置計画に従い組積され、壁体構造物の外郭が形成された後、中詰材貯留空間(99)に中詰材(100)が充填される。中詰材(100)は上蓋コンクリートセグメント(14)の版厚が均一に確保できる平坦性を確保し整正される。中詰材(100)の上面を整正した後、その上に路盤紙(80)を敷並べ、上蓋コンクリートセグメントの高品質確保を図る。路盤紙の上に上蓋コンクリートセグメント用補強鉄筋(14−23)の配筋を行い上蓋コンクリートセグメント(14)を設置する。
【0011】
有底型側壁コンクリートセグメント(31)から突出する有底型側壁コンクリートセグメント用補強鉄筋(31−23)は、上蓋コンクリートセグメント(14)内に設ける上蓋コンクリートセグメント用補強鉄筋(14−23)の直径の40倍相当長を上蓋コンクリートセグメント(14)枠内で重複接合させる。これに上蓋コンクリートセグメント(14)を打設することで個々の独立有底型側壁コンクリートセグメント(31)は、上蓋コンクリートセグメントの硬化拘束によって一体化構造を形成し密閉構造壁構造体と成る。有底型側壁コンクリートセグメント用補強鉄筋(31−23)と上蓋コンクリートセグメント用補強鉄筋(14−23)との結合方法は特に限定されるものではなく、このような重ね継ぎ方式の他にも、例えば継ぎ手金具を用いたボルト結合やセグメント内部にシース管を埋設し、この中にピアノ線を貫通させる結合方法を用いることもできるが、中でも重ね継ぎ方式が好ましく、特に鉄筋直径の40倍の重ね継ぎ方式が好適に採用される(以下、これらの鉄筋継ぎ手方法を「有効結合手段」と略記する場合がある)。
【0012】
中詰材(100)としては、従来公知のものを利用することもできるが、フェロニッケルスラグ、フライアッシュ、クリンカーアッシュ、高炉スラグ、ごみ焼却溶融スラグ、火山灰、火山礫等の火山噴火物、河川堆積土砂等が好ましく用いられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらは土壌汚染対策防止法で要求される有害物質が指定基準を超えないように改質されたものであることが望ましく、これらをセメントレス状態で用いることが好適である。
【0013】
中詰材(100)は種類によってその密度や単位容積質も相違する。例えば溶融スラグの単位容積質量は概ね1.6t/m程度、高炉スラグやフェロニッケルスラグの単位容積質量は概ね1.8t/m、火山灰の単位容積質量は概ね1.5/m内外である。したがって、これらを2種以上適度な混合比で混合することにより、単位容積質量を適宜調整することができる。また、火山灰を中詰材(100)とする場合、例えば、新燃岳の火山灰はPH5.8〜6.5であり、この程度の弱酸性であれば、壁体構造物内部の乾燥域で貯留するにあたって、側壁コンクリートセグメント等に防食対策を施す必要なくそのまま使用できる。
【0014】
一方、中詰材(100)が汚染物質を含む場合には、成分溶脱を抑止するため、ポルトランドセメント又はアスファルトで固形化することが望ましい。その他、本発明の壁体構造物は密閉構造であって紫外線劣化の影響を受けないため、このような中詰材処理方法として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、又はポリウレア樹脂、ポリマーセメントなどで、固形化し、溶脱防止処理を施してもよい。
【0015】
また、今後火力発電所の稼働率が上昇する傾向にあり、副産物であるフライアッシュの処理方法が望まれている。本発明の壁体構造物は密閉構造であり、セメントレス状態で中詰材の安定貯留が可能であるが、フライアッシュの粒径は細かく、例えばJISA6201−2008において最も粗粒なフライアッシュIV種の場合、比表面積は1500cm/g以上であり、これは普通ポルトランドセメントの2500cm/gに比べやや粗い粒度である。この様な微細なフライアッシュを単味で中詰材に供する場合は、より高い機能の保存性が得られるため若干の固形化処理を行った上で中詰材とすることが好ましい。
【0016】
フライアッシュの固形化方法として、例えば、フライアッシュに、比表面積4000cm/g程度の高炉スラグ微粉末、高炉水砕スラグ及び消石灰などから構成される固形材と水を添加して混練・固化する方法が挙げられる。固形材はフライアッシュ1tに対し150〜400kg程度添加すればよく、材令に伴う所要の圧縮強度が得られる。例えば、材令28日においては5N/mm前後、材令91日においては10N/mm前後の圧縮強度が確保され、中詰材として安定的に貯留することができる。
【0017】
一方、一般的なポルトランドセメントを用いてフライアッシュを固定する場合は、質量比80:20(フライアッシュ:セメント)で混合すればよい。水の添加量はフライアッシュとセメントの合計量の41質量%が標準的な量である。フライアッシュ80対セメント20で混合したモルタルは、28日強度が5.5N/mm程度となり、長期強度の伸びが著しいフライアッシュ特性を有しており、密閉状態の貯留環境下では、このようなフライアッシュ対セメントとを混合比10〜15%程度で固形化したフライアッシュ中詰材が長期的に安定で好適である。上記高炉スラグ微粉末、高炉水砕スラグ及び消石灰を含有する固形材を使用した固形化方法は、セメントによる固形化よりも圧縮強度の発現が若干遅延するが、より低コストで中詰材として安定的に貯留することが可能である。
【0018】
本発明の第2の実施態様の壁体構造物を図3〜13に示す。本実施態様は、側壁コンクリートセグメントを多段積層させた壁体表面が勾配を有する法面タイプである。底版コンクリートセグメント(2)上に側壁コンクリートセグメントが積層され、最上段の側壁コンクリートセグメント上に上蓋コンクリートセグメント(14)が設けられる。各層は4隅に配置される隅角用側壁コンクリートセグメント(7)とその間に配置される中間用側壁コンクリートセグメント(4)から構成される。本実施態様の壁体構造物を構成する側壁コンクリートセグメントの例を図5〜8に示す。各側壁コンクリート(4)及び(7)は内壁によって区画されており、隣接する側壁コンクリート同士で空間を形成する。また上下の側壁コンクリート(4)及び(7)の内壁の位置が重なり合うように積層されるため、各空間は底版コンクリートセグメントから上蓋コンクリートセグメントまで連通して形成される。
【0019】
これらの空間のうち、中詰材貯留空間(99)には、中詰材(100)が充填される。中詰材(100)の種類等は第1の実施態様と同様である。また各隅角用側壁コンクリート(7)には、それぞれ内壁によって独立に形成された柱状空間(9)を備えており、この空間内に連続柱コンクリートセグメント(11)が設けられ、底版コンクリートセグメント(2)、側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)並びに上蓋コンクリートセグメント(14)を固定して一体化構造を形成する。その他の空間としては、調整空間(5)及び補助空間(21)がある。調整空間(5)は、側壁コンクリートセグメントに架かる外力条件に対応させる空間であって、外部から加わる荷重条件等に応じて、壁面補強コンクリート(10)を充填するか、又は中詰材(100)の貯留空間として使用する。一方補助空間(21)は、基本的に隣接する壁面コンクリートセグメント同士が形成する空間であり、壁体構造物の規模、用途、荷重条件等により、壁面補強コンクリート(10)の充填、連続柱コンクリートセグメント(11)の設置あるいは中詰材(100)の貯留のための空間として自在に転用される。このように壁面の荷重条件等に対応して、各空間の配置や実質的な用途は適宜設定されるが、連続柱コンクリートセグメント(11)の設置間隔は少なくとも6m以内に設けるのが良い。
【0020】
このような多段構造の壁体構造物の構築方法を図9〜12に基づいて説明する。先ず、壁体構造物(1)の設置位置に底版コンクリートセグメント補強鉄筋(図示せず)が配置され、これと有効結合手段により配筋された連続柱コンクリート用補強鉄筋(11-23)が底版コンクリートセグメント(2)上面から突出した状態となるように設置される。次いで、ここに底版コンクリートセグメント(2)を打設する。次に硬化した底版コンクリートセグメント上に隅角用側壁セグメント(7)を組積するが、その際柱状空間(9)に連続柱コンクリート補強鉄筋(11−23)を貫通させて載置する。次いで隣接する中間側壁コンクリートセグメント(4)または隅角用側壁コンクリートセグメント(7)を順次配置していき底版コンクリートセグメント(2)上の一連の組積を完了し、第1層の側壁コンクリートセグメントの構築が完成する。
【0021】
続いて第2層の積層を行うが、それに先立って、第1層の外周を構成する側壁コンクリートセグメントの上端に備える水平連結開口部(12)において、連続臥梁コンクリートセグメント用補強鉄筋(13−23)、連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋(11−23)を有効結合手段で交錯させ配筋を行う。次いで、第1層の側壁コンクリートセグメント上の全周に配置した連続臥梁コンクリートセグメント用補強鉄筋(13−23)を跨ぐ形態で、第2層の側壁コンクリートセグメントの組積を第1層の組積手順と同様にして行うが、その際に第1層の隅角用側壁コンクリート(7)の柱状空間(9)から伸びる連続柱コンクリート補強鉄筋(11−23)を、第2層の隅角用側壁コンクリートセグメント(7)の柱状空間(9)に貫通させて組積する。さらに隣接する第2層中間側壁コンクリートセグメント(4)又は隅角用側壁コンクリートセグメント(7)を順次組積していき、第1層の側壁コンクリートセグメント上の全てに第2層の側壁コンクリートセグメントを積層すれば第2層の組積が完了する。
【0022】
次に第1層と第2層の目地部分、つまり第1層と第2層の側壁セグメントを均等に跨ぐ形式で連続臥梁コンクリートセグメント用補強鉄筋及び連続柱コンクリート補強鉄筋(11−23)を包括する連続臥梁コンクリートセグメント(13)、及び連続柱コンクリートセグメント(11)の打設を行う(図10、11参照)。
【0023】
連続水平臥梁コンクリート(13)は側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)の上下部分に備える水平連結開口部(12)を通過する形態で側壁コンクリートセグメントの上下間に設ける。これにより、地震による振動、ねじれ現象に対する壁体構造物の安定性が強化される。連続臥梁コンクリートセグメント(13)の部材寸法は、組積される側壁セグメントの幅及び壁体構造物の構築高さによって適宜設定されるが、少なくとも厚さ300mm幅500〜600mm以上が望ましい。また連続臥梁コンクリートセグメント(13)は、1層の側壁コンクリートセグメント毎に設けることが望ましく、その設置間隔は約3m程度が好適である。
【0024】
連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋(11−23)、連続臥梁コンクリート用補強鉄筋(13−23)、後述する連結梁用コンクリートセグメント用補強鉄筋(20―23)などは全て有効結合手段で連結し、上下側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)の組積目地を境界として、連続臥梁コンクリートセグメント(13)及び連続柱コンクリートセグメント(11)が連続成型されることで、側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)の壁体構造部材を囲む連続臥梁コンクリートセグメント(13)と連続柱コンクリートセグメント(11)が完全一体化する。連続柱コンクリートセグメント(11)の成型長は各層を形成する側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)高さの80%程度に止めて成型することが好ましい。
【0025】
このようにして連続臥梁コンクリートセグメント(13)及び連続柱コンクリートセグメント(11)を打設し、これらの圧縮強度が12N/mm程度まで硬化してから貯留空間(99)に中詰材(100)を充填する。中詰材(100)の種類や充填方法等は、第1の実施態様と同様である。
【0026】
中詰材(100)が強酸性を示す場合、中詰材(100)と接触する側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)や底版コンクリートセグメント(2)に防食手段を施すことが好ましい。例えば、中詰材(100)との接触面に硫黄とフライアッシュの混合物を加熱溶解し、これに骨材加えて成型した硫黄コンクリート製パネル(22)を、側壁コンクリートセグメントの内壁面に配置したり、硫黄コンクリート製ブロックを組積してこれらの接触を遮断することができる(図12、13参照)。硫黄コンクリートの他に、水ガラス系の耐硫酸性コンクリート製パネル等を用いても良い。また、壁面コンクリートセグメント(4)及び(7)や底版コンクリートセグメント(2)と中詰材(100)との接触面に、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、セラミックパウダー入りエポキシ樹脂、不飽和エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等による塗布、ライニングを施し遮断する方法もあり、防食対策は中詰材(100)の性質に応じ、最適な手法を選定すればよい。
【0027】
一方、上蓋コンクリートセグメント(14)の裏面の防食は、予め上蓋コンクリートセグメント(14)裏面と中詰材(100)との間に200〜300mmの空間を設け、この空間に鉄鋼スラグ(Bfs)と消石灰の混合物を中詰材(100)の上に敷きならし、散水しながら振動転圧機を用いて締め固め、平坦に仕上げることにより達成することができる。
【0028】
第2層と同様にして第3層以降の各層の側壁コンクリートセグメントを組積して所望の高さまで積層する。最上段の側壁コンクリートセグメントから突出した連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋(11−23)を、上蓋コンクリートセグメント(14)内に設ける上蓋コンクリートセグメント補強鉄筋(14−23)と有効結合手段により連結し、上蓋コンクリートセグメント(14)を打設することにより、密閉構造の多段壁構造体が形成される。
【0029】
本発明の第3の実施態様の壁体構造物を図14〜16に示す。本実施形態も2層以上に積層されるものであり、底版コンクリートセグメント(2)上に側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)が積層され、最上段の側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)上に上蓋コンクリートセグメント(14)が設けられるが、側壁コンクリートセグメント(4)及び(7)は各層の外周部のみに組積され、これらの内壁面によって底版コンクリートセグメント(2)から上蓋コンクリートセグメント(14)まで連通した貯留空間(99)が形成される。また隣接する側壁コンクリートセグメント(4)又は(7)同士は内壁によって空間を形成し、これらの各空間も底版コンクリートセグメント(4)から上蓋コンクリートセグメント(14)まで連通している。各空間は、柱状空間(9)、調整空間(5)、補助空間(21)であるが、各空間の配置、数等は、固定されるものではなく、用途や中詰材の種類等に応じて適宜設定されるものであり、このような複数の空間を設けることにより、壁体構造物の構成部材である共通のコンクリートセグメントの軽量化によるコスト縮減を図りつつ、壁体構造物(1)が受ける部分的な荷重条件へ柔軟な対応が可能となる。
【0030】
即ち、壁体構造物(1)に作用する荷重条件に応じて、連続柱コンクリートセグメント(11)を柱状空間(9)だけでなく、隣接する側壁コンクリートセグメント間に形成される補助空間(21)の一部又は全部に設けたり、また調整空間(5)の一部又は全部に壁面補強コンクリート(10)を充填することができる。このようにして、壁面補強コンクリート(10)や連続柱コンクリートセグメント(11)の充填位置や充填量を増減したり、同様に中詰材(100)の充填位置等を調整することによって、壁体構造物(1)に作用する荷重条件に柔軟に対応することができる。例えば、壁体構造物(1)において、特定の部分が大きな外力を負担する場合には、当該部分を構成する側壁コンクリートセグメント(4)には、調整空間(5)に中詰材に代わって壁面補強コンクリート(10)を充填したり、必要に応じ、補助空間(21)に連続柱コンクリートセグメント(11)を設けてもよい。壁面補強コンクリート(10)は、主として壁体構造物の外側面から内面側に働く外力(主として瞬間的に働く衝突荷重や磨り減り)に対する補強を目的として設けられる。壁面補強コンクリート(10)には、鉄筋を配筋することが不要であり、部材に曲げ応力や引張り応力の働かない部分を補強することができる。これに対し連続柱コンクリートセグメント(11)は曲げ応力、せん断応力及び引張り応力など、構造物が受ける複雑な外力に対処する構造部材であり、補強鉄筋コンクリート構造となる。
【0031】
より具体的には、例えば土中に埋設される河川の堤防に供する壁体構造物や宅地造成の土留め擁壁等に供する壁体構造物であれば、特に壁面の補強は不要であるため、調整空間(5)には中詰材(100)が充填される。一方、砂防堰堤に供する場合には、上流側では土石流による過酷な衝撃への対策が必要となるため、調整空間(5)及び補助空間(21)には共に壁面補強コンクリート(10)を充填し部分的に必要な強度補強を行う。図14は、河川砂堰堤に供する壁体構造物の例であり、壁体構造物の上流側に予想される土石流に伴う転石等の外力(26)に対する措置を示したものである。上流側に配置される側壁コンクリートセグメント(4)は、転石等の外力(26)の衝撃緩和のために、調整空間(5)及び補助空間(21)に壁面補強コンクリート(10)を充填して補強される。一方、下流側もしくは側面に配置される側壁コンクリートセグメント(4)の調整空間(5)には中詰材(100)を充填することで砂防堰堤の機能が確保され、調整空間(5)や補助空間(21)に壁面補強コンクリート(10)を充填することは要しない。
【0032】
図17〜18は、側壁コンクリートセグメント(4)の補助空間の全てに連続柱コンクリートセグメント(11)を設置し、調整空間に中詰材を貯留した事例である。
【0033】
本実施態様の壁体構造物も、第2の実施態様と同様にして構築すればよいが、離間する側壁コンクリートセグメント間には、連結梁コンクリートセグメント用補強鉄筋(20―23)を配筋して、連結梁コンクリートセグメント(20)を臥梁コンクリートセグメント(13)と同時に設置することにより、上層に用いる側壁コンクリートセグメントの組積が安定する(図15〜16参照)。
【0034】
本発明の第4の実施態様の壁体構造物を図19〜21に示す。これらは、無底函独立型コンクリートセグメント(32)、無底函外柱型コンクリートセグメント(29)、無底函コンクリートセグメント(30)などの無底函型の側壁コンクリートセグメントを用いて形成される。これら無底函型の側壁コンクリートセグメントの設置方法は共通であるが、無底函独立型コンクリートセグメント(32)を例にとって説明する(図21参照)。無底函独立型コンクリートセグメント独立型(32)は柱状空間(9)に代わり外壁(40)の上下面から突出する補強鉄筋(32−23)を備えている。第1層の組積手段としては、下端から突出する補強鉄筋(32−23)を底版セグメント補強鉄筋(2−23)へ、上端から突出する補強鉄筋(32−23)は、側壁セグメント(32)が単層組積される際は上蓋コンクリートセグメント補強鉄筋(2−23)に、側壁セグメント(32)が複層組積される際は連続臥梁コンクリートセグメントに、それぞれ有効結合手段で固定し、このような側壁セグメント(32)の単層組積構造では、連続柱コンクリートセグメント(11)の機能も有する。側壁セグメント(32)が多層に組積される時は補助空間(21)に相当する間隔を開けて隣接する側壁セグメント(32)を設置し、所要の位置の補助空間(21)を柱状空間として連続柱コンクリートセグメント(11)を設置する。
【0035】
無底函独立型コンクリートセグメント(32)による単層の壁体構造物(1)の設置方法をより具体的に説明する。無底函独立型コンクリートセグメント(32)の組積に先立って、壁体構造物(1)の設置位置に底版コンクリートセグメント用補強鉄筋(2−23)を配筋する。その上面に無底函独立型コンクリートセグメント(32)を組積する。無底函独立型コンクリートセグメント(32)の組積にあたっては、底版コンクリートセグメント用補強鉄筋(2−23)の保護対策として、無底函独立型コンクリートセグメント(32)の設置位置に底版コンクリートセグメント(2)の版厚相当のスペーサーブロックを配置し、底版コンクリートセグメント(2)の版厚を確保した上で組積を行う。計画平面の全てに無底函独立型コンクリートセグメント(32)の組積及び中詰材(100)の充填を終えた後に底版コンクリートセグメント(2)の打設を行う。
【0036】
無底函独立型コンクリートセグメント(32)による複層の壁体構造物(1)の構築方法は上記第2の実施態様と同様である。無底函独立型コンクリートセグメント(32)の部材寸法等は、壁体構造物(1)の構築規模に拠って定めればよい。組積によって得られた貯留空間(99)内に中詰材(100)を規定高まで充填した後、上蓋コンクリートセグメント(14)の設置を以って壁体構造物(1)の設置は完成する。
【0037】
無底函独立型コンクリートセグメント(32)を用いて複層の壁体構造物(1)を構築するケースに於いても連続臥梁コンクリートセグメント(13)の設置により壁体構造物(1)の一体性が確保され高層の壁体構造物(1)が構築される。無底函型コンクリートセグメントの中詰材貯留空間(99)は、連続柱状空間(9)と計画的に配置転換して設置することもできる。すなわち、調整空間(5)又は中詰材貯留空間(99)を用途区分しておらず、現地の条件に応じて貯留空間(99)を調整空間(5)に置換してこれに壁面補強コンクリート(10)を設置することができる。また連続柱コンクリートセグメント(11)の形状寸法や間隔は壁体構造物の用途又は規模によって適宜設定される。従って無底函型コンクリートセグメントが備える中詰材貯留空間(99)が、予定とする柱状空間(9)より過大な空間である場合はその空間内に補助型枠を設置し対応すればよい。
【0038】
本発明の第5の実施態様の壁体構造物を図22〜24に示す。これらは調整空間を備えない側壁コンクリートセグメントを用いて組積した後、側壁コンクリートセグメントの控壁(6)の背後に調整空間形成用として隔壁パネル(8)を置き調整空間を形成したものである。隔壁パネルとして、プレキャストコンクリートパネル、若しくは合板を用い、これを中詰材貯留空間と調整空間の間に設置して壁面補強コンクリート(10)と中詰材(100)の充填作業を平行して行う。壁面補強コンクリート(10)の硬化後は隔壁パネルの除去はしなくても良い。組積された側壁コンクリートセグメントの内郭は中詰材貯留空間(99)が形成され、大容量の中詰材(100)が貯留可能である。
【0039】
以上説明した本発明の壁体構造物は、河川堤防のコアなど、その全部又は一部が土砂に埋設状態ないし接触状態となるようにして構築される(図25〜28)。従来の河川堤防は水衝部の表面に法面保護用のコンクリートブロックが用いられ、その他の殆どの部分は土砂による盛土である。この盛土用土には、河川水による洗掘と漏水を防ぐことが求められるため、良質な粘土と砂礫による混合土砂が用いられている。しかし、良質な粘土の大量確保が容易な現状ではでない。
【0040】
これに対し、河川堤防のコアに本発明の壁体構造物を設置し、その表面を覆土ないし埋設して形成された河川堤防は、河川堤防に準じた断面形状と、表面を覆う土砂流出抑制機能を備える意匠特性を備えた側壁コンクリートセグメントにより構築されるため、多量の粘土を必要としない。また本発明の壁体構造物をコアとすることにより、生態系に配慮し、漏水機能に優れた災害に強い河川堤防を構築することが可能となる。
【0041】
また本発明の壁体構造物は道路構造物や宅地造成等の土留擁壁への適用が可能である。壁体構造物の安定性は構築される壁体構造物の総質量で定まる。本発明では壁体構造物の中詰材(100)の種類によって構築される壁体構造物の総質量も定まる。つまり、全てをコンクリート造とした壁体構造物の質量を、中詰材(100)を貯留する壁体構造物の総質量を担保すれば従来のコンクリート土止擁壁同等の性能が備わる。中詰材(100)の大量充填による相乗効果は上記した通りであり、壁体構造物の安全率は経済効果に正比例する。
【0042】
さらに、道路側壁に本発明の壁体構造物を用いれば、従来の盛土工法に比べ道路占有面積の狭小化が可能となる。新しい時代に求められる道路設計思想には緊急避難拠点を兼ねる高路盤構造の道路建設が必要で、本発明による壁体構造物はこれに即応できる。
【0043】
図27〜28に基づき本発明の壁体構造物の設置方法を説明する。本発明の壁体構造物を設置するにあたって、設置地盤には相応の地盤支持力が必要である。壁体構造物の安定計算書には必要とする地盤許容支持力が記されてある。しかし実際は壁体構造物の設置段階になって現地掘削の結果から地盤支持力の不足が発覚するケースが殆どである。このように現地の基礎掘削の段階で基礎地盤の補強が必要と判断されたケースであっても、本発明の壁体構造物は、地中杭の設置に即応することが可能であり、実用性が高い。
【0044】
すなわち、構造物に用いる基礎杭としてプレキャストコンクリート杭の存在は公知である。しかしこの設置には大型の機械装置を必要とするため、急峻地形に設置例が多い小規模の壁体構造物への適用は制約が多い。一方、簡易杭の例として実用新案2019066号公報に記載された技術があり、これは木杭に代わるか簡易な鉄筋コンクリート杭であるが、この種の杭では機能不足で対処できない。このため、従来、この種の基礎対策として専ら安定地盤である岩盤層まで掘削する「岩着」と呼ばれる施工が主流であった。岩着方法は安定地盤上に堆積する土砂を全て除去し、この容積をコンクリートで補填し、基礎とする方法である。従って、この作業の工程は堆積土砂の除去、埋め戻しコンクリート施工、作業期間に必要な排水費用などが地中部分の構築費用が嵩む欠点がある。
【0045】
これに対し、本発明の壁体構造物では、地中杭(3)を底版コンクリートセグメント(2)に付帯させることができ、その設置に際し、設置地盤に存在する堆積土砂を完全排除する作業を省略し、堆積土砂を残した上に壁体構造物(1)を設置することが可能である。つまり、堆積土砂の除去や、コンクリートの補填、水替などを行うことなく、壁体構造物の安定性を確保することができる。具体的には、地中杭(3)の設置位置から軟弱な堆積土砂(51)を排除した後、アースオーガー等の掘削機材を用い、支持力が得られる安定地盤(52)に達する深さに縦穴を設ける。ここで安定地盤(52)とは壁体構造物(1)の規模によって定まる支持力が得られる地盤を指し、通常は安定した砂利層、若しくは軟岩層又は硬岩層などである。
【0046】
地中杭(3)の断面寸法は、底版コンクリートセグメントの単位面積当たりに作用する壁体構造物(1)の総質量(t/m2)と地中杭の総面積から安全率を考慮して定める。また地中杭(3)の断面形状は特に定めず、使用する掘削機の形態によって決定する。地中杭(3)の長さは底版コンクリートセグメント(2)から安定地盤までの深さで定める。但し地中杭長は3m程度以内に設けることが望ましい。
【0047】
底版コンクリートセグメント(2)の下部に一体成型する地中杭(3)は、連続柱コンクリートセグメント(11)の設置位置と合致させる必要はなく、底版コンクリートセグメント(2)の範囲内であれば良い。地中杭(3)の設置数量は1本の地中杭面積に働く上載荷重(t/m2)より地盤許容支持力(t/m2)が大きな数値となるよう地中杭の設置数量に分散させて設置する。
【0048】
地中杭用の補強鉄筋(3−23)は地中杭(3)の上端から有効結合手段で底版コンクリートセグメント用補強鉄筋(2−23)と結合できる長さを確保し、これを地中杭面から突出状態で型枠内に設置する。補強鉄筋(23)は長尺のまま使用する。
【0049】
伏流水を持つ堆積土砂内に地中杭コンクリートを打設する場合、地中杭のコンクリートの製造には高機能特殊増粘剤を用いた水中不分離コンクリートを用いることで高品質の地中杭が設置できる。水中不分離コンクリートの配合は、水セメント比45〜50%、コンクリートの28日圧縮強度は40〜50N/mm2程度を目標とし、高機能特殊増粘剤を使用する。高機能特殊増粘剤の具体例として花王社製ビスコトップ100A及びビスコトップBを単位水量に対し0.5〜5.0%の範囲で用いれば水中でも所期の品質を備えた地中杭を設置することができる。
【0050】
地中杭(3)の設置数量が多く、設置間隔が過密な配置で行われる場合、底版コンクリートセグメント(2)設置予定周辺の堆積土砂(51)は掘削によって表面が乱され、その結果、地中杭の独立保持形態が損なわれ、その結果堆積土砂間の静水現象は、流速を伴う流水現象を誘発しそこに優れた品質の地中杭を独立状態に設置することが困難となる。従ってこのようなケースにおいては、個々の土中杭(3)が個別に設置できる条件維持に配慮し、全面の地中杭位置を同時掘削することは避けることが望ましい。
【0051】
地中杭(3)のコンクリート上面は設置地盤面と合致する高さで成型し、その上に底版コンクリートセグメント(2)の型枠と底版コンクリートセグメント用補強鉄筋(2−23)、連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋(11−23)及び地中杭用補強鉄筋(3−23)を底版コンクリートセグメント(2)の内部に有効結合手段を以て配筋する。地中杭(3)及び底版コンクリートセグメント(2)の成型に用いるコンクリートは、水セメント比45〜50%で製造したコンクリートが好適であり、これを打設して底版コンクリートセグメント(2)の設置が完成する。
【0052】
このようにして、底版コンクリートセグメント(2)と一体成型の地中杭(3)を備え、連続柱コンクリートセグメント(11)、連続臥梁コンクリート(13)、上蓋コンクリートセグメント(14)、側壁セグメントセグメント(4)及び(7)が緊密に結合した構造が形成され、本発明の壁体構造物(1)は従来以上に安全率を高めて設計しても建設コストを軽減することができる。
【0053】
特に産業副産物を中詰材とする本発明の壁体構造物(1)は、全てをコンクリート造とする壁体構造物の直接工費と比べ概ね80%程コストを低減でき、従来埋設処分されていたこのような産業副産物を有効活用できる効果は非常に大きい。
【0054】
またこのような産業副産物等を中詰材とする壁体構造物(1)は多彩な形状、寸法に対応が可能である。従って広範囲に用途展開が可能であり、例えば緊急非難拠点に供する構築物や、高層道路の路盤形成など新しい国土保全整備構想に即応できるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 壁体構造物
2 底版コンクリートセグメント
3 地中杭
4 側壁コンクリートセグメント法面タイプ
5 側壁コンクリートセグメントに備わる調整空間
6 側壁セグメントに備わる控壁
7 柱状空間を備える隅角用側壁コンクリートセグメント法面タイプ
8 側壁コンクリートセグメント背後に設ける調整空間形成用の隔壁
9 側壁コンクリートセグメントに備わる柱状空間
10 側壁補強コンクリート
11 連続柱コンクリートセグメント
12 水平連結開口部
13 連続臥梁コンクリートセグメント
14 上蓋コンクリートセグメント
15 中間側壁コンクリートセグメント垂直タイプ
16 隅角用側壁コンクリートセグメント垂直タイプ
20 連結梁コンクリートセグメント
21 補助空間
22 防食材
23 補強鉄筋
2−23 底版コンクリートセグメント用補強鉄筋
3−23 地中杭用補強鉄筋
11−23 連続柱コンクリートセグメント用補強鉄筋
13−23 連続臥梁コンクリートセグメント用補強鉄筋
14−23 上蓋コンクリートセグメント用補強鉄筋
20−23 連結梁コンクリートセグメント用補強鉄筋
29−23 無底函型側壁コンクリートセグメント外柱型用補強鉄筋
30−23 無底函型側壁コンクリートセグメント内柱型用補強鉄筋
31−23 有底型側壁コンクリートセグメント用補強鉄筋
32−23 無底函型側壁コンクリートセグメント用補強鉄筋
24 盛土
25 背面土
26 外力
28 排気口
29 無底函型側壁コンクリートセグメント外柱型
30 無底函型側壁コンクリートセグメント内柱型
31 有底型側壁コンクリートセグメント
32 無底函型側壁コンクリート
40 内壁
50 基礎地盤
51 堆積土砂
52 安定地盤(岩盤層)
80 路盤紙
99 中詰材貯留空間
100 中詰材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の空間を有する自立可能な側壁コンクリートセグメントを単層又は2層以上に組積して形成され、当該空間の少なくとも1つに中詰材が充填されてなる有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項2】
側壁コンクリートセグメントが、外壁、底版及び外壁の上部から突出した上蓋コンクリート補強鉄筋とを備え、当該側壁コンクリートセグメントを基礎地盤上に単層に組積し、上蓋コンクリートセグメントによって各側壁コンクリートセグメントが一体に形成されたものである請求項1記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項3】
底版コンクリートセグメント上に側壁コンクリートセグメントが2層以上に組積して形成され、最上段の側壁コンクリートセグメント上に上蓋コンクリートセグメントが設けられ、隣接する側壁コンクリートセグメントが、底版コンクリートセグメントから上蓋コンクリートセグメントまで連通した2以上の空間を形成するとともに、当該空間の少なくとも一つに連続柱コンクリートセグメントを設けることによって、底版コンクリートセグメント、側壁コンクリートセグメント及び上蓋コンクリートセグメントを固定して一体化構造を形成する請求項1記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項4】
側壁コンクリートセグメントが各層の外周部に組積され、各側壁コンクリートセグメントの内壁面によって底版コンクリートセグメントから上蓋コンクリートセグメントまで連通した中詰材貯留空間を形成するものである請求項3記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項5】
側壁コンクリートセグメントが上部及び下部に水平連結開口部を備え、当該水平連結開口部内に設けられる連続臥梁コンクリートセグメントを介して、積層される上下の側壁コンクリートセグメント間が接合されるものである請求項3又は4記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項6】
中詰材と接触する側壁コンクリートセグメント及び/又は底版コンクリートセグメントの内壁面の一部又は全面に防食手段が施される請求項1ないし5のいずれかの項記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項7】
壁体構造物の全部又は一部が土砂に埋設状態ないし接触状態となるようにして構築される請求項1ないし6のいずれかの項記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項8】
底版コンクリートセグメントが、一体成型された地中杭が設けられたものである請求項1ないし7のいずれかの項記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項9】
中詰材が、フェロニッケルスラグ、フライアッシュ、クリンカーアッシュ、高炉スラグ、ごみ焼却溶融スラグ、火山噴火物および河川堆積土砂よりなる群から選ばれた1種又は2種であって、セメントレス状態で充填されたものである請求項1ないし8のいずれかの項記載の有底密閉構造の壁体構造物。
【請求項10】
中詰材が土壌汚染対策法に求められる指定基準値以内に改質されたものである請求項1ないし9のいずれかの項記載の有底密閉構造の壁体構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−241481(P2012−241481A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115368(P2011−115368)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(596160425)和光コンクリート工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】