説明

中間転写ベルトおよび画像形成装置

【課題】耐久時においても初期の優れた柔軟性および転写性を有し、画像濃度の低下や中抜けの発生を長期にわたって十分に抑制する中間転写ベルトおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】表面改質処理された弾性層3を表面に有し、表面硬度が0.01GPa以上であり、20μNの荷重で押し込んだときの変位が50nm以上であることを特徴とする中間転写ベルト1、および該中間転写ベルトを備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリおよびレーザプリンタ等の電子写真法による画像形成装置において、感光体表面に形成されたトナー像を一次転写するための中間転写ベルト、および該中間転写ベルトを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の中間転写ベルトは、弾性層を有し、該弾性層の表面上に別途、表面層(被覆層)を設けた構成が一般的である。弾性層は、凹凸のある用紙に対し良好な転写性を発揮する。表面層は、トナーに対して良好な転写性(離形性)を発揮する。特に、表面層は転写性を長期間保持するためにも、耐磨耗性が優れた材料であることが望まれ、有機材料や無機材料から形成される(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、表面層の構成材料として、耐磨耗性が優れる材料は一般的に硬い。そのような材料からなる表面層を弾性層の上に形成すると、弾性中間転写ベルトが本来持つべきベルトの柔軟性が損なわれ、画像濃度が低下したり、画像上に中抜けが発生したりした。ここで中抜けとは、中間転写ベルト上の画像が記録材に二次転写される際、画像に大きな圧力が加わることで、トナーが応力変形し、トナー同士の凝集力が増大し、画像の一部分が転写されずに中間転写ベルト上に残留してしまう現象である。
【0004】
そこで、弾性中間転写ベルトが持つべき柔軟性を優先すると、表面層の構成材料として軟らかい材料を使用したり、もしくは表面層厚を小さくしたりすることになり、長期間使用した際にベルト表面が磨耗してしまい、初期の機能を果たせなくなってしまった。そのため、やはり画像濃度が低下したり、画像上に中抜けが発生したりした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−84901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐久時においても初期の優れた柔軟性および転写性を有し、画像濃度の低下や中抜けの発生を長期にわたって十分に抑制する中間転写ベルトおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面改質処理された弾性層を表面に有し、表面硬度が0.01GPa以上であり、20μNの荷重で押し込んだときの変位が50nm以上であることを特徴とする中間転写ベルト、および該中間転写ベルトを備えた画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の中間転写ベルトは、耐久時においても初期の優れた柔軟性および転写性を有するので、画像濃度の低下や中抜けの発生を長期にわたって十分に抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)は本発明に係る中間転写ベルトの一例の概略断面図であり、(B)は本発明に係る中間転写ベルトの別の一例の概略断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る中間転写ベルトは弾性層を表面に有するものであり、当該弾性層の表面が所定の特性値を有する。本発明に係る中間転写ベルトは、さらに他の層、例えばいわゆる基材層を有しても良いし、または基材層と弾性層との間に接着層を有しても良い。本発明に係る中間転写ベルト1は具体的には、例えば図1(A)に示すように、基材層2上に弾性層3を有してなる構成を有していても良いし、または図1(B)に示すように、基材層を有することなしに、弾性層3単独からなる構成を有していても良い。
【0011】
(弾性層)
本発明において弾性層3は表面が表面改質処理されたものであり、すなわち表面改質処理によって弾性層3における表層部が改質されて改質層4が生成されている。そのため、有機材料や無機材料を含有する表面層を弾性層の上に形成しなくても、中間転写ベルトの柔軟性を損なうことなく、優れた転写性を長期にわたって得ることができ、また弾性層表面の粘着性を低減させることができる。
【0012】
弾性層3の表面、すなわち弾性層3における改質層4の表面は詳しくは、表面硬度が0.01GPa以上、特に0.01〜0.80GPaであり、好ましくは0.01〜0.20GPaである。改質の程度が小さく、表面硬度が小さすぎると、表面改質処理が不十分なため、転写性が低下し、画像濃度が低下する。
【0013】
表面硬度は、後で詳述する表面改質処理の処理条件を調整することによって制御できる。例えば、処理液との接触時間(浸漬時間)、処理温度、処理液濃度等の処理条件を強めると、表面硬度は大きくなる。一方、そのような処理条件を弱めると、表面硬度は小さくなる。
【0014】
本明細書中、表面硬度はナノインデーテンション法によって測定された任意の3点の測定値の平均値を用いている。測定装置としてはHYSITRON社製のTRIBOINDENTERを用い、先端圧子はcube corner Tip(先端稜角90度)を用い測定を行った。詳しくは、Handbook of Micro/Nano Tribology(Bharat Bhushan編 CRC)に記載に従い、圧子を試料表面に直角に当て、徐々に荷重を印加し、最大荷重到達後に荷重を0にまで徐々に戻した。
【0015】
弾性層3の表面、すなわち弾性層3における改質層4の表面は20μNの荷重で押し込んだときの変位が50nm以上、好ましくは50〜80nmである。改質の程度が大きすぎ、当該変位が小さすぎると、柔軟性および転写性が低下し、中抜けが発生する。
【0016】
そのような変位は、弾性層の厚みや後で詳述する表面改質処理の処理条件を調整することによって制御できる。例えば、厚みを小さくしたり、加熱時間、処理温度、処理液濃度等の処理条件を強めると、当該変位は小さくなる。一方、厚みを大きくしたり、そのような処理条件を弱めると、当該変位は大きくなる。
【0017】
20μNの荷重で押し込んだときの変位は、最大荷重を20μNとして変位を測定したこと以外、上記表面硬度の測定方法と同様の方法によって測定された任意の3点の測定値の平均値を用いている。
【0018】
改質層4を含む弾性層3の厚みは通常、100〜500μmであり、好ましくは200〜300μmである。
【0019】
改質層4は、弾性層3を形成した後、当該層の表面に対して表面改質処理を行うことによって形成できる。
【0020】
弾性層は、弾性を有する有機化合物層であり、弾性層を構成する弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、例えば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。弾性層を構成する好ましい弾性材料はNBRである。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0021】
弾性層には、抵抗値調節用導電剤が添加されてもよい。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子で被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではない。
【0022】
弾性層における導電剤の含有量は弾性材料100重量部に対して0.1〜30重量部、特に1〜30重量部が好ましい。
【0023】
本発明において改質層4を生成させるための表面改質処理としては、イソシアネート処理を採用することができる。
【0024】
表面処理は、弾性層表面にイソシアネート化合物を含浸させた後、熱処理を施すことにより行うことができる。すなわち、弾性層の外周面にイソシアネート化合物を含浸させた後、加熱し反応させることにより行うことができる。反応のための加熱温度および時間は、イソシアネートの含浸量にもよるが、80〜200℃の温度、30分〜12時間の範囲とすることができる。なお、弾性層の外周面へのイソシアネート化合物の含浸にあたっては、弾性層表面にイソシアネート化合物溶液を接触させて含浸させる方法を取ることができ、この接触時間によって、含浸量を調整することができる。
【0025】
ここで、イソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート,脂肪族イソシアネート等があげられ、具体的には、トルエンジイソシアネート(TDI),ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),クルードMDI等があげられる。表面層形成材料には、イソシアネート化合物の反応性を害しない範囲内で、他の化合物が添加されていてもよい。市販の材料として、MR400(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、コロネート65(日本ポリウレタン工業社製)等を用いることができる。
【0026】
具体的には、例えば、イソシアネート化合物として、MDIを含有するMR400(日本ポリウレタン工業社製)を酢酸エチルに溶解させて処理溶液を調製し、当該溶液を弾性層表面に接触させて含浸させ、加熱することによって表面処理を行うことができる。
【0027】
(基材層)
所望により形成される基材層2は有機高分子化合物層であり、これによってベルト全体の機械的強度の向上を達成できる。基材層を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、変性ポリカーボネート、およびそれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
基材層2には抵抗値調節用導電剤が添加されてもよい。抵抗値調節用導電剤としては弾性層に添加されてもよい抵抗値調節用導電剤と同様の物質が挙げられる。
【0029】
基材層における導電剤の含有量は弾性材料100重量部に対して0.1〜20重量部、特に1〜15重量部が好ましい。
【0030】
基材層2の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は50〜200μmであり、好ましくは80〜120μmである。
【0031】
本発明の中間転写ベルトは、弾性層3および所望により基材層2を形成した後、弾性層表面に対して前記した表面改質処理を行うことによって製造できる。
【0032】
弾性層3および基材層2の形成方法としては、例えば、金属製の軸体に基材となるフイルムと弾性層となるゴムシートを巻きつけて加熱加圧を行い、基材と弾性層が積層された弾性ベルトを形成する方法、回転する円筒形の型に材料を流し込み、ベルト形状の層を形成する遠心成型法、材料をスプレイ塗布またはディッピング塗布して層を形成する塗布法、内型と外型との間に材料を注入してベルト形状の層を形成する注型法等が挙げられる。弾性層の形成時においては所望により加熱により加硫および乾燥が行われる。基材層の形成時においては所望により加熱により乾燥がおこなわれる。
【0033】
図1(A)に示す構造の中間転写ベルトを製造する場合、弾性層3および基材層2の形成順序は特に制限されず、例えば、遠心成型法によって先に弾性層を形成した後で、遠心成型法または塗布法によって基材層を形成できる。その後、弾性層表面に対して前記表面改質処理を行えばよい。
また例えば、遠心成型法によって先に基材層を形成した後で、遠心成型法または塗布法によって弾性層を形成できる。その後、弾性層表面に対して前記表面改質処理を行えばよい。
また例えば、注型法によって弾性層を形成した後で、塗布法によって基材層を形成できる。その後、弾性層表面に対して前記表面改質処理を行えばよい。
また例えば、注型法によって基材層を形成した後で、塗布法によって弾性層を形成できる。その後、弾性層表面に対して前記表面改質処理を行えばよい。
【0034】
図1(B)に示す構造の中間転写ベルトを製造する場合、弾性層3は、例えば、遠心成型法または注型法によって形成できる。その後、弾性層表面に対して前記表面改質処理を行えばよい。
【0035】
(画像形成装置)
本発明に係る中間転写ベルトは、複写機、ファクシミリおよびレーザプリンタ等の電子写真法による画像形成装置において、感光体表面に形成されたトナー像を紙等の記録材に転写する際、トナー像を一旦、自己の表面に保持して搬送するものである。本発明の中間転写ベルトが用いられる画像形成装置の一例を図2に示す。
【0036】
図2は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるタンデム方式の多色画像形成装置の概略構成図を示すものである。本実施形態において、本発明の中間転写ベルトは「1」で示され、無端形態を有している。中間転写ベルト1は、支持体として駆動ローラ110a、テンションローラ110b、及びバックアップローラ110cに巻回されている。中間転写ベルト1の水平部に沿って、4つの画像形成部が直列状に配置されている。これらの画像形成部は、ほぼ同様の構成をしており、それぞれイエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(K)色のトナー像を形成する点が異なる。
【0037】
先ず、画像形成部について説明する。画像形成部は、回転可能に配置された像担持体であるドラム状の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という)103を備えている。感光ドラム103の周囲には、一次帯電手段としての一次帯電器104、露光手段としての露光装置105、現像手段としての現像器106、一次転写手段としての転写装置107、及びクリーニング手段としてのクリーニング装置108等のプロセス機器が配置されている。他の画像形成部も同様の構成である。つまり、この画像形成部は、それぞれ感光ドラム103、一次帯電器104、露光装置105、現像器106、転写ローラ107、及び、クリーニング装置108を備えている。これら画像形成部は、それぞれがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する点で異なる。各画像形成部に配置した現像器106の周囲には通常、現像槽(図示せず)が形成され、それぞれの現像槽にはイエロートナー(イエロー現像剤)、マゼンタトナー(マゼンタ現像剤)、シアントナー(シアン現像剤)またはブラックトナー(ブラック現像剤)が収容される。
【0038】
次に、上記構成の画像形成装置の画像形成動作について説明する。感光ドラム103は、一次帯電器104によって一様に帯電され、露光装置(静電像形成手段)105から原稿のイエロー成分色による画像信号がポリゴンミラー等を介して感光ドラム103上に投射されて静電潜像が形成される。次いで、現像器106からイエロートナーが供給されて静電潜像がイエロートナー像として現像される。このイエロートナー像は、感光ドラムの回転に伴って、感光ドラム103と中間転写ベルト1とが当接する一次転写部に到来する。一次転写部には、本実施例では、一次転写手段として転写ローラ107が配置されており、一次転写バイアスが印加されている。従って、感光ドラム103上のイエロートナー像が中間転写ベルト1へ一次転写される。イエロートナー像を担持した中間転写ベルト1は、次の画像形成部に搬送される。このときまでに、画像形成部において、上記と同様の方法で感光ドラム上に形成されたマゼンタトナー像が、転写ローラが配置された一次転写部において、イエロートナー像上へ転写される。同様に、中間転写ベルトが矢印方向に沿って進行するにつれて、転写ローラが配置された各一次転写部において、シアントナー像、ブラックトナー像が前述のトナー像に重畳転写される。このときまでに、給紙カセットから、給紙ローラ及び、その他の搬送ローラにより送り出された記録材が二次転写部に達する。二次転写部には、バックアップローラ110cと対向して、中間転写ベルト1を挟持する態様で二次転写手段としての二次転写装置、本実施例では、二次転写ローラ110d(二次転写手段)が配置されている。二次転写ローラ110dに転写バイアスが印加されており、これによって、上述の4色のトナー像は記録材S上に転写(二次転写)される。トナー像が転写された記録材は定着部111に搬送される。定着部では熱と圧力によってトナー像を記録材S上に固着させる。一次転写部にて転写しきれなかった感光ドラム103上の転写残トナーは、それぞれクリーニング装置108によってクリーニングされる。また、二次転写部によって転写しきれなかった中間転写ベルト1上の転写残トナーは、中間転写体クリーニング手段としての中間転写体クリーニング装置102にてクリーニングされ、つぎの画像形成に供される。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
<基材用フイルムの作成>
3、3′、4、4′−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物とp−フェニレンジアミンとを等モル量でN−メチルピロリドン中、18℃で重縮合反応してポリアミド酸溶液(固形分濃度18重量%)を得た。このポリアミド酸溶液に、酸化処理によりpH3、揮発分14%に調製したカーボンブラック(粒子径25μm、比表面積180m/g)を固形分に対して14重量%になるように、N−メチルピロリドン(希釈用)と共に攪拌羽根付き攪拌機中に入れて粗混合した。次にこの混合液をボ−ルミル機に入れ、60℃以下の温度で十分に混合分散して基材原液を得た。
【0040】
内面鏡面仕上げした内径300mm、幅450mmの金属性の成型ドラムを回転させながら上記基材原液400gを供給し、成形ドラム上に基材原液を塗布した。加熱開始とともに成形ドラムの回転を徐々に速くし、温度が120℃に到達した時点で700rpmに達するようにした。120℃、700rpmの状態で120分間維持した後、加熱を停止し回転しつつ常温まで冷却することにより、若干量のN−メチルピロリドンを含有するポリイミドフィルムを得た。
【0041】
次に鏡面仕上げした外径295mm、長さ400mmの円筒金属金型に上記ポリイミドフィルムを嵌挿して、これを熱風乾燥機に投入して徐々に昇温し、400℃に到達したらその温度で20分間加熱し、脱溶媒処理を施した。その後常温に冷却し、基材用フイルムを得た。
【0042】
<ゴムシートの作成>
NBR(日本ゼオン社製、ニポールDN202)100部と、亜鉛華1号(堺化学工業社製)5部と、ステアリン酸(花王社製、ルナックS30)0.5部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)30部と、サンセラーCZ(三新化学社製)1.5部と、サンセラーTT(三新化学社製)1.0部と、硫黄1.0部とを混練した後、この混合物をシート状に成形して、弾性層として用いるゴムシートを作製した。
【0043】
<弾性ベルトの作成>
アルミニウム製の軸体に上記基材用フイルムを巻きつけ、さらに、基材用フイルムの外周に上記ゴムシートを巻き付け、加熱加圧(160℃×60分)を行い、弾性ベルトを形成した。
【0044】
<表面処理>
MR400(日本ポリウレタン社製)100重量部を、酢酸エチル900重量部に溶解させ、表面処理液を調製した。この表面処理液を20℃に保ったまま、これに上記弾性ベルトを10秒間浸漬後、100℃に保持されたオーブンで10時間加熱し、表面処理された弾性ベルトを得た。
【0045】
(実施例2)
表面処理におけるオーブンでの加熱時間を5時間としたこと以外、実施例1と同様の方法により、中間転写ベルトを製造した。
【0046】
(実施例3)
表面処理における浸漬時間を30秒としたこと以外、実施例1と同様の方法により、中間転写ベルトを製造した。
【0047】
(実施例4)
表面処理における浸漬時間を30秒とし、オーブンでの加熱時間を5時間としたこと以外、実施例1と同様の方法により、中間転写ベルトを製造した。
【0048】
(比較例1〜5)
表面処理における浸漬時間と加熱時間を調整することにより、表1に示す硬度と変位を有する中間転写ベルトを製造した。
【0049】
(評価)
コニカミノルタ製bizhubC650に、上記で製造された中間転写ベルトを搭載し、各色印字率5%の画像を100000枚プリントした後、シアン色ベタ画像をプリントした。プリントされたベタ画像の画像濃度、および120μm幅のライン画像の中抜けについて評価した。
【0050】
・画像濃度
透過濃度測定機(TD904;マクベス社製)により画像の透過濃度を測定した。
○:透過濃度が0.9以上であった;
△:透過濃度が0.8以上0.9未満であり、実用上問題があった;
×:透過濃度が0.8未満であった。
【0051】
・中抜け
画像を目視により評価した。
○:中抜けが全く発生しなかった;
△:中抜けが僅かに発生し、実用上問題があった;
×:中抜けが発生した。
【0052】
【表1】

【符号の説明】
【0053】
1:中間転写ベルト
2:基材層
3:弾性層
4:改質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質処理された弾性層を表面に有し、表面硬度が0.01GPa以上であり、20μNの荷重で押し込んだときの変位が50nm以上であることを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
表面改質処理として、イソシアネート処理を行った請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
請求項1または2に記載の中間転写ベルトを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−2867(P2012−2867A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135167(P2010−135167)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】