説明

中間転写ベルト並びにこれを用いた画像形成装置及び画像形成方法

【課題】小粒子径のトナーを用いた場合でも、中間転写ベルトから転写体への転写効率が低下することがなく、クリーニング性が良好な中間転写ベルトを提供する。
【解決手段】電子写真方式の画像形成装置で使用され、基材層101及び表層を有する中間転写ベルトであって、前記表層が、少なくとも結着樹脂を含む材料で形成されたコート層102と体積平均粒子径30nm〜200nmの無機微粒子103からなり、該無機微粒子が、前記コート層の表面に偏在しかつ固定化されている中間転写ベルトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式あるいは静電記録方式を利用した画像形成装置に使用する中間転写ベルト並びにこれを用いた画像形成装置及び画像形成方法に関する。本発明の中間転写ベルトは、画像担持体上のトナー像を記録部材に転写する記録部材担持部材、画像担持体上のトナー像を転写する中間転写部材として用いることができる。本発明の中間転写ベルトを用いた画像形成装置としては、白黒、モノカラーあるいはフルカラーの電子写真複写機、プリンター、その他種々の記録機などがある。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を記録部材に転写するとき用いられる中間転写ベルトは、特許文献1に開示されているように、基層材料を多層で形成するなど様々なものがある。
例えば、(帯電)−(像露光)−(トナー現像)−(転写)−(クリーニング)といった画像形成手段を有する電子写真装置においては、感光体上のトナー像を記録部材(たとえば紙)に転写する手段として、中間転写部材上からトナー像を記録部材に転写して画像形成を行う、特許文献1の図1に示されるような転写装置が挙げられる。
また、多層で形成されている中間転写ベルトの材料、及び表面粗さを規定した先行技術としては、特許文献2に記載された技術がある。特許文献2では、転写基材にフッ素樹脂を含む水系エマルジョン塗料をコーティングして転写部材のRz(十点平均粗さ)を10ないし30μmの範囲にすることが提案されている。
さらには、中間転写ベルト表面に大気圧プラズマ法にて、Siなどの分子を蒸着させる方法が、特許文献3で提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
画像を高画質化するには、トナーを8μm以下の小粒子径にする必要がある。トナーを小径化して現像−転写を行う場合、トナーの荷電性が低下することで、電界移動性が低下すること、ベルト材表面への付着性が高まるといった理由から、中間転写ベルトから紙等の記録部材へのトナー像の転写効率が低下するといった課題が発生する。
特に、耐久時、トナーが劣化することで転写効率の低下が顕著になる。さらに、小粒子径のトナーを用いた場合には、二次転写後、中間転写ベルト上に残った転写残トナーをブレードで除去する際にブレードをすり抜け易くなり、クリーニング不良の要因となる。
転写効率の向上のための手段としては、従来から、単層ベルトでは、ポリイミドなど比較的表面高度の固い単層の中間転写ベルトを用いることが好ましいと一般に言われている。ベルトの表層の硬度を高くすることで、中間転写ベルトと外添剤を介して付着するトナーの接触面積が、転写時の圧力に対して大きく変化せず、付着力が低く安定するためと考えられている。
しかしながら、単層タイプの中間転写ベルトでは、トナーが劣化した際の転写効率の低下を抑制することは難しい。トナーが劣化したときには、トナーの表層に存在するはずの外添剤が離脱したり、埋没したりする。本来介在するはずの外添剤の効果が低減し、このことにより、トナーと中間転写ベルトの接触面積は増大するためである。
また、中間転写ベルトに表面層を設けない場合には、中間転写ベルトの耐久性に大きな課題を有している。これは、転写部材にトナーを転写する際、トナーの帯電性、搬送性を上げ、転写効率を向上させるために無機微粒子などをトナーに混入しているが、転写後、これら粒子を完全には回収できないままクリーニング、及び次の転写を行うことで、残留粒子による引掻き傷が発生する。これらは、転写効率やクリーニング性の低下の原因となる。
【0004】
このような問題を解決する方法としては、中間転写ベルト表層にハードコート層を設けることで、ベルト表面の劣化を抑制し、トナーの付着性が増大することを抑制する手法が挙げられる。
ハードコート層の付与方法は、大きく分けて、硬化性樹脂からなるコート層を表面に塗布する方法と大気圧プラズマ法などにより、Siなどの無機物を表面に蒸着する方法が提案されている。
さらに、トナーとベルトの付着力を低減させることで転写効率を上げるために、微粒子をハードコート層に含有させ、ハードコート層表面に適度な表面粗さ(凹凸)を設ける方法が提案されている。
表面粗さについては、本発明に至る検討の結果、トナーの体積平均粒子径よりも小さなRa(算術平均粗さ)であることが好ましく、外添剤と同程度の粒子径30nm〜200nmの微小な表面粗さを転写ベルト表層に再現することが転写性の向上に好ましいことが明らかになった。
このように適度な表面粗さを持つ表層を得るには、硬化性樹脂に微粒子を含有させ塗布する方法が簡単でよい。しかしながら、この方法では、所望の表面粗さは得られるものの、最表層は硬化性樹脂が覆うことになる。また、硬化性の樹脂は粘度が高く、1μm以下の薄層が形成されるように塗布することが困難で、表層の表面抵抗率の調整など、抵抗を制御する材料が必要となる。
一方、Siなどを大気圧プラズマ法によって、Åオーダーの厚みで表層を形成させる方法では、表面に30nm〜200nmの粗さを付与することは難しい。すなわち、表層の外添剤が離脱、埋没した劣化トナーに対しては大気圧プラズマ法の効果が小さい。また、表層が無機物であるため、可とう性が悪く、中間転写ベルトを高速で駆動ローラに沿って、移動させた場合には、表層が破壊するといった課題がある。
本発明の目的は、このような課題を解決できる中間転写ベルト及びこれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明で者らは転写効率を維持するために、中間転写ベルト表面に無機微粒子を含む表層を設けることで前述した問題を解決できると考えた。
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の中間転写ベルトは、電子写真方式の画像形成装置で使用され、基材層及び表層を有する中間転写ベルトであって、前記表層が、少なくとも結着樹脂を含む材料で形成されたコート層と体積平均粒子径30nm〜200nmの無機微粒子からなり、該無機微粒子が、前記コート層の表面に偏在しかつ固定化されていることを特徴とする。
また、本発明の中間転写ベルトは、さらに、前記無機微粒子の固定化が、該無機微粒子表面に存在する官能基と前記結着樹脂との共有結合により行われることを特徴とする。
また、本発明の中間転写ベルトは、さらに、前記無機微粒子表面に存在する官能基が、イソシアネート基と結合可能な官能基であることを特徴とする。
また、本発明の中間転写ベルトは、さらに、前記コート層の厚みが0.2μm〜5μm、前記表層の表面抵抗率が1.0×10Ω/□〜1.0×1012Ω/□であることを特徴とする。
また、本発明の中間転写ベルトは、さらに、前記結着樹脂がイソシアネート化合物であることを特徴とする。
また、本発明の中間転写ベルトは、前記少なくとも結着樹脂を含む材料を前記基材層にコーティングしたあとで該コート層の表面に無機微粒子を散布することにより製造することを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、該トナー像を中間転写ベルトに一次転写し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録部材に二次転写する画像形成装置において、前記中間転写ベルトが、請求項1ないし6のいずれかに記載の中間転写ベルトであり、前記二次転写後、前記中間転写ベルト上に残った転写残トナーを回転部材で回収することを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、さらに、前記トナー像の形成に用いるトナーの体積平均粒子径が4.0μm〜8.0μmであることを特徴とする。
また、本発明の画像形成装置は、さらに、前記回転部材が、金属ローラ、ゴムローラ、ブラシローラ及びスポンジローラから選ばれるローラであることを特徴する。
本発明の画像形成方法は、像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、該トナー像を中間転写ベルトに一次転写し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録部材に二次転写する画像形成方法において、前記中間転写ベルトが、請求項1ないし6のいずれかに記載の中間転写ベルトであり、前記二次転写後、前記中間転写ベルト上に残った転写残トナーを回転部材で回収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、体積平均粒子径が8.0μm以下の小粒子径のトナーを用いた場合でも、中間転写ベルトから転写体への転写効率が低下することがなく、クリーニング性が良好な中間転写ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係るフルカラー画像形成装置を示す全体概略図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の部分拡大図である。
【図3】本発明の中間転写ベルトの構成示す断面図である。
【図4】実施例1で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図5】実施例3で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図6】実施例4で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図7】比較例1で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図8】比較例2で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図9】比較例3で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【図10】比較例4で得られた中間転写ベルトの表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における実施の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0009】
本発明の例としてフルカラー画像形成装置で説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置に4つの作像ユニットが並列配置されて、トナー像を転写される中間転写ベルトを備えている全体概略図である。図2は、図1の部分拡大図である。
本発明に係る画像形成装置1は、上の方から、置かれた原稿を自動的に搬送する自動原稿搬送装置(ADF)5と、原稿を読み取るスキャナ(読取装置)4、トナー画像を形成する画像形成部3、そして、その下に記録紙等の記録部材9を備え、供給する給紙部2が配置されている。
画像形成装置1は、その中央部に画像形成部3が配置されている。画像形成部3では、その内部の略中央に、プロセスカートリッジとしての作像ユニット10をイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナーに対応した4つを水平な横方向に並列に並べたタンデム型に配列している。4つの作像ユニット10Y、10C、10M、10Kの上方には、帯電した各感光体11の表面に各色の画像データに基づいて露光をし、潜像を形成する露光装置12が備えられている。また、4つの作像ユニット10Y、10C、10M、10Kの下方には、ポリイミドやポリアミド等の耐熱性材料からなり、中抵抗に調整された基体からなる無端状ベルトをローラ651、652に掛け回して支持し、回転駆動する中間転写ベルト61を備える転写装置60を配置している。
いずれの作像ユニット10でも同様の構成であるので、この図においては、色の区別に関係ない場合はY、C、M、Kの表示を省略する。各作像ユニット10Y、10C、10M、10Kは、感光体11Y、11C、11M、11Kを有し、各感光体11の周りには、感光体11表面に電荷を与える帯電装置20、感光体11表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置30、感光体11表面に、図示しない潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置、トナー像転写後の感光体11表面のクリーニングをするクリーニングブレードを備えるクリーニング装置40がそれぞれ配置されている。これで、一つの作像ユニット10を形成している。なお、ここでは、作像ユニット10は、感光体11と、帯電装置20、現像装置30、クリーニング装置40、潤滑剤塗布装置のいずれか1つ以上を一体的に支持されていて、画像形成装置1に着脱可能になっているプロセスカートリッジとして用いている。ただし、作像ユニット10の形態を成していれば良く、ここで例示した帯電装置等に限定するものではない。
【0010】
感光体11は、アモロファスシリコーン、セレン等の金属、または、有機感光体であり、ここでは、有機感光体で説明する。有機感光体11としては、導電性支持体上に、フィラー分散した樹脂層、電荷発生層及び電荷輸送層を有する感光層、その表面にフィラーを分散させた保護層を有する。
感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層構成の感光層でも構わないが、電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型が感度、耐久性において優れている。
電荷発生層は、電荷発生能を有する顔料を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。結着樹脂としてはポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100質量部に対し0〜500質量部、好ましくは10〜300質量部が適当である。
また、電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
また、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない感光体11を有用に用いることができる。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、シリカ等の無機フィラー、また有機フィラーを分散したもの等を添加することができる。保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体11を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層9の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5質量%以上、好ましくは10質量%以上、50質量%以下、好ましくは30質量%以下程度が良好である。
【0011】
帯電装置20は、帯電部材として導電性芯金の外側に中抵抗の弾性層を被覆して構成される帯電ローラ21を備える。帯電ローラ21は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。このイオンを放電する帯電ローラ21は、材質としては弾性樹脂ローラを用いている。また、帯電ローラ21は電気抵抗の調整のために、カーボンブラック等の無機導電材、イオン導電材を含有することがある。
また、帯電ローラ21は、感光体11に対して微小な間隙をもって配設される。この微小な間隙は、例えば、帯電ローラ21の両端部の非画像形成領域に一定の厚みを有するスペーサ部材を巻き付けるなどして、スペーサ部材の表面を感光体11表面に当接させることで、設定することができる。また、帯電ローラ21は、感光体に近接させずに、接触させても良い。ローラ形状であり、感光体11に近接している部分で、放電して、感光体11を帯電させることができる。また、近接させて非接触にすることで、帯電ローラ21の転写残トナーによる汚れの発生を抑えることができる。また、帯電ローラ21には、帯電ローラ21表面に接触してクリーニングする図示しない帯電クリーナローラが設けられている。
現像装置40は、感光体11と対向する位置に、図示しないが内部に磁界発生手段を備える現像スリーブが配置されている。現像スリーブの下方には、図示しないトナーボトルから投入されるトナーを現像剤と混合し、攪拌しながら現像スリーブへ汲み上げる機構を併せて有する攪拌・搬送スクリューが備えられている。現像スリーブによって搬送されるトナーと磁性キャリアからなる現像剤は、規制部材によって所定の現像剤層の厚みに規制され、現像スリーブに担持される。現像スリーブは、感光体11との対向位置において同方向に移動しながら、現像剤を担持搬送し、トナーを感光体11に供給する。また、未使用のトナーが収納された各色のトナーカートリッジが、着脱可能に感光体11上部の空間に収納される。図示しないモーノポンプやエアーポンプなどのトナー搬送手段により、各現像装置40に必要に応じトナーを供給するようになっている。消耗の多いブラックトナー用のトナーカートリッジを、特に大容量としておくことも可能である。
クリーニング装置40は、クリーニングブレードが感光体11と当接・離間する機構を備え、画像形成装置本体の制御部にて、任意に当接・離間させることができる。クリーニングブレードをカウンタ方式で、感光体11に当接し、これによって、感光体11上に残留するトナー、汚れとして付着している記録部材のタルク、カオリン、炭酸カルシウム等の添剤を感光体11から除去してクリーニングする。除去したトナー等は、廃トナー回収コイル22で、図示しない廃トナー容器に搬送し、貯留する。
【0012】
転写装置60は、トナー像が積層される中間転写ベルト61、感光体11上のトナー像を中間転写ベルト61に転写・積層させる一次転写ローラ62、積層されたトナー像を記録部材9に転写する二次転写ローラ63等を備えている。さらに、転写装置60は、二次転写ローラ63に対向する部分で、中間転写ベルト61の内側には、対向部材67を設けている。
中間転写ベルト61を挟んで、各感光体11と対向する位置には、感光体11上に形成されたトナー像を中間転写ベルト61上に一次転写する一次転写ローラ62がそれぞれ配置されている。一次転写ローラ62は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。印加する電圧の極性としては、トナーの電荷の極性とは逆の極性で、感光体11から中間転写ベルト61側に引き寄せ移行させることで、一次転写する。また、この一次転写ローラ62は電気抵抗の調整のために、カーボンブラック等の無機導電材、イオン導電材を含有させ、半導電性にすることが好ましい。一次転写ローラ62の抵抗値が異なっていても転写効率はほとんど変わらないが、画像面積比が異なると転写効率は大きく異なってくるため、安定して転写効率を維持できない。これは、転写ニップ部においてトナーが介在しない部分に電流が優先的に流れてしまう結果、画像面積比が小さい場合には転写電圧値が低くなって転写に必要な電界が十分得られなくなるためである。特に、一次転写ローラ62の抵抗値が低い場合には転写部に介在するトナーの抵抗値の影響が大きくなるため、一次転写ローラ62の抵抗値が低い場合ほど顕著になる。このように定電流制御を採用する場合には一次転写ローラ62として抵抗値の高いものを使用することが望まれるが、その抵抗値が5×10Ωを越えると電流のリークによってトナー像を乱すおそれが強まる。したがって、一次転写ローラの抵抗値は、1×10Ω以上5×10Ω以下の範囲内のものを用いるのが好ましい。トナーが介在しない部分に電流が優先的に流れてしまう現象は、上述のトナー抵抗によるだけでなく、一次転写ローラ62の中心に設けられている芯金に印加される一次転写電圧と感光体11との電位差が、トナーが現像されていない個所の方がトナーが現像された個所よりも大きいために、より大きな電位差の方に転写電流が流れ易いことにもよる。これは、トナー像が感光体11の帯電極性と同じで、感光体11の像露光を受けて感光体電位が除電された個所にトナーが現像されることで感光体11上にトナー像を形成する画像形成装置1の場合に発生する。トナー像の形成されていない個所の感光体電位が高く、トナー像の形成された個所の感光体電位は低いが、転写電位は感光体電位とは逆極性なので、一次転写電圧と感光体電位との差が、トナーが現像されていない個所の方がトナーが現像された個所よりも大きくなる。この場合一次転写ローラ62の抵抗値は、望ましくは、5×10Ω以上5×10Ω以下の範囲内のものが好ましい。5×10Ω以上5×10Ω以下の範囲内では、一次転写ローラ62の低温環境での抵抗上昇があると、上記範囲に入ることが困難となり、二次転写は定電流制御していますので、斥力ローラ67に印加される電圧が上昇し、電流のリークが生じてしまう。そこで、本発明の画像形成層1のように、低温環境下に装置が置かれた場合に、全ての一次転写ローラ62を保温することにより、全ての一次転写ローラ62の抵抗上昇を低減することで、リークの発生を防止することができる。
【0013】
また、中間転写ベルト61に積層されたトナー像は、二次転写ローラ63で記録部材に二次転写される。二次転写ローラ63には、一次転写ローラ62と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加される。印加する電圧の極性としては、トナーの電荷の極性とは逆の極性で、中間転写ベルト61から、搬送されてきた記録部材側に引き寄せ移行させることで、二次転写する。
また、中間転写ベルト61には、二次転写後の中間転写ベルト61の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置64が設けられている。回転部材642が中間転写ベルト61と当接・離間する機構を備え、画像形成装置1本体の制御部にて、任意に当接・離間させることができる。回転部材642を中間転写ベルト61に当接し、これによって、中間転写ベルト61上に残留するトナー、汚れとして付着している記録部材の添剤を中間転写ベルト61から除去してクリーニングする。除去したトナー等は、図示しない容器に貯留する。
回転部材64としては、金属ローラ、ゴムローラ、ブラシローラ及びスポンジローラから選ばれるローラを用いることができる。また、トナーとしては、体積平均粒子径が8.0μm以下、好ましくは4.0μm〜8.0μmのトナー用いることができる。
【0014】
さらに、この画像形成装置1には、中間転写ベルト61に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置93が設けられている。潤滑剤塗布装置93は、固定されたケースに収容された固形潤滑剤932と、固形潤滑剤932に接触して潤滑剤を削り取り、中間転写ベルト61に塗布するブラシローラ931とブラシローラ931で塗布された潤滑剤を均す潤滑剤塗布ブレード934を備える。固形潤滑剤932は、直方体状に形成されており、加圧バネ933によってブラシローラ931側に付勢されている。固形潤滑剤932はブラシローラ931によって削り取られ消耗し、経時的にその厚みが減少するが、加圧バネ933で加圧されているために常時ブラシローラ931に当接している。ブラシローラ931は、回転しながら削り取った潤滑剤を中間転写ベルト61表面に塗布する。
なお、同様の機能を有する潤滑剤塗布装置を感光体11に対して配設してもよい。
本実施形態においては、上記ブラシローラ931による潤滑剤塗布位置に対して移動方向の下流側の中間転写ベルト61表面に潤滑剤均し手段としての不図示の潤滑剤塗布ブレードを当接させている。潤滑剤塗布ブレードは弾性体であるゴムから構成されているものであり、クリーニング手段としての機能も持たせ、中間転写ベルト61の移動方向に対してカウンタ方向に当接してある。上記固形潤滑剤932としては、乾燥した固体疎水性潤滑剤を用いることが可能であり、ステアリン酸亜鉛の他にも、ステアリン酸、オレイン酸、パルチミン酸等の脂肪酸基を有する金属化合物なども使用できる。さらに、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、オオバ油、みつろう、ラノリンなどのワックス等も使用できる。
転写装置60の下方には、記録紙上のトナー像を記録紙に半永久的に定着させる定着装置70が備えられている。定着装置70は、図示しないが、主に、内部にハロゲンヒータを有する定着ローラと、これに対向し、圧接して配置される加圧ローラとから構成されている。定着装置70は、フルカラーとモノクロ画像、あるいは片面か両面かにより定着条件を制御したり、用紙の種類に応じて最適な定着条件となるよう、不図示の制御手段により制御される。
【0015】
画像形成動作は、まず、負荷電極性の感光体11に対し、露光装置12のレーザビームにより各感光体11の表面に形成された色毎の静電潜像が形成される。次に、現像装置40で、感光体11の帯電極性と同極性(負極性)の所定の色のトナーで現像され、顕像となる反転現像がおこなわれる。このときに、無端状の中間転写ベルト61が、複数のローラ651〜653により支持されて、感光体11Y、11C、11M、11Kの上部に設けられて、各感光体11Y、11C、11M、11Kの現像工程後の一部が接触するように張架、配置されて、走行している。また、中間転写ベルト61には、各感光体11Y、11C、11M、11Kに形成されたトナー画像を1次転写ローラ62Y、62C、62M、62Kで、中間転写ベルト61上に転写され、トナー画像が重ねられて、未定着の画像が形成される。中間転写ベルト61の外周部には、クリーニングバックアップローラ641に対向する位置にベルトクリーニング装置64が設けられている。このベルトクリーニング装置64は、中間転写ベルト61の表面に残留する不要なトナーや、紙粉などの異物を拭い去る。さらに、中間転写ベルト61の外周で、支持ローラ653の対向する位置には、二次転写ローラ63が設けてある。中間転写ベルト61と2次転写ローラ63の間に記録部材9を通過させながら、二次転写ローラ63にバイアスを印加することで中間転写ベルト61が担持するトナー画像が記録部材9に転写される。二次転写ローラ63に印加される転写電圧の極性は、トナーの極性と逆のプラス極性である。これらの中間転写ベルト61に関連する部材は、中間転写ベルト61とともに転写装置60として一体的に構成してあり、画像形成装置1に対し着脱が可能となっている。
画像形成装置1の下側には記録部材9を供給可能に収納した給紙カセット81を備える給紙装置80が配備されている。この給紙カセット81から、確実に記録部材9の一枚だけが搬送ローラ82によりレジストローラ84に送られる。さらに、二次転写ローラ63を通過した記録部材9は、搬送方向下流に備えられた定着装置70まで搬送される。定着後の記録部材9は、排紙ローラ85により、画像形成装置1の外に設けた排紙トレイに排紙、スタックさせる。図1において、66は搬送ベルト、83は搬送ローラ、図2において、92はテンションローラである。
【0016】
ここで、本発明の実施形態に係る画像形成装置では、中間転写ベルト61は、基材層及び表層を有する中間転写ベルトであって、前記表層が、少なくとも結着樹脂を含む材料で形成されたコート層と平均粒子径20nm〜200nmの無機微粒子からなり、該無機微粒子が、前記コート層の表面に偏在しかつ固定化されているものである。
図3は本発明の中間転写ベルトの構成を示す断面図である。無機微粒子は、耐久印刷した場合にも、脱落したり、埋没したりしないようにするため、少なくとも結着樹脂を含む材料で、基材層101上にコート層102を形成し、このコート層102の表面に、無機微粒子103を偏在させかつ共有結合で固定化するようにした。
ここで、無機微粒子の遍在とは、図3に示すようにコート層の内部には粒子が存在せず、コート層の表面付近に粒子を存在させ、微粒子が表面に現れた状態をいう。このような状態にする方法としては、樹脂層をコートした後に、無機微粒子を散布することが好ましい。
【0017】
以下、本発明の中間転写ベルトを構成する材料について説明する。
(基材層)
本発明において、基材層を構成する材料としては、板状に加工することができ、かつ適度な導電性を有するものであればどのようなものでも構わない。例えば、熱可塑性の高分子フィルム材料、金属材料などを使用することができる。
高分子フィルム材料は熱可塑性樹脂材料であればどのようなものでも使用できる。例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン−1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド系材料、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸等のすべての熱可塑性樹脂材料及びこれらの混合樹脂、またその混合樹脂により形成された熱可塑性エラストマーも使用することができる。
金属材料としては、SUS、アルミニウム及び銅などの金属を板状に延伸し、フィルム化したものを挙げることができる。
基材層の体積抵抗率は10Ω・cm〜1010Ω・cmであることが好ましく、より好ましくは10Ω・cm〜10Ω・cmである。
また、基材層の厚みは50μm〜200μm程度とすることができる。
【0018】
(無機微粒子)
本発明において、微粒子としては、トナーと接触したときの付着性が良好である観点から、無機微粒子を用いる。
無機微粒子を構成する無機化合物としては、二酸化珪素、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム及び珪酸マグネシウム等の珪素を含む化合物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、及びリン酸カルシウム等が好ましく、さらに好ましくは、珪素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムである。無機微粒子は、表面に、イソシアネート基と結合可能な−OH、−COOH、−NHなどの官能基を有することが好ましい。
例えば、二酸化珪素は、表面にシラノール基(Si―O―H)が存在するので水にぬれやすく親水性シリカといわれている。一方、シラノール基を化学的にメチル基で置換したものは水にぬれにくく、疎水性シリカといわれている。
無機微粒子は、体積平均粒子径が10nm〜300nmのものを用いる。このような平均粒子径とする理由は、表層の表面粗さは、トナーの体積平均粒子径よりも小さいRa(算術平均粗さ)であることが好ましく、外添剤と同程度の体積平均粒子径30nm〜200nmの微小な表面粗さを中間転写ベルト表層に再現することが転写性の向上に好ましいことによる。無機微粒子の体積平均粒子径は、好ましくは30nm〜200nmである。
【0019】
(結着樹脂)
結着樹脂は、少なくとも1官能基以上のイソシアネート基を含有するイソシアネート化合物であることが好ましい。本発明に用いるポリイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)などの芳香族系ポリイソシアネート化合物;キシリレンジイソシアネート、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートなどのアラルキルポリイソシアネート化合物;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、及びリジントリイソシアネートなどの脂肪族系ポリイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、並びに2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族系ポリイソシアネート化合物;ならびにそれらポリイソシアネート化合物の各種変性体が挙げられる。本発明においては、ポリイソシアネート化合物は1種のみ用いることも、2種以上を併用することもできる。
基材層との接着性の点で、コート層には応力緩和性を持たせることが好ましい。応力緩和性を付与するためには、イソシアネート化合物をポリオール化合物などで高分子量化する方法などが挙げられる。
ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらは、1種のみ用いることも、2種以上を併用することもできる。例えば、可とう性では、ポリエーテルポリオールが好ましく。基材層を構成する樹脂との接着性では、ポリエステルポリオールが好ましく、結着樹脂の硬さの観点からは、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0020】
(結着樹脂の塗布)
イソシアネート化合物を酢酸エチルなどの溶媒に溶解させた溶液を、以下に挙げる塗布方法で基材層上に塗布し、コート層を形成する。塗布方法としては、グラビア法、スプレー法、インクジェット法などが挙げられる。
コート層の厚みは0.2μm〜5μmであることが好ましい。
(無機微粒子の散布)
基材層の表面にイソシアネート化合物の溶液を塗布した後、無機微粒子を散布する。無機微粒子の散布方法としては、湿式法と乾式法が挙げられる。湿式法としては、有機溶媒に無機微粒子を分散し、この分散液をグラビア法、スプレー法、インクジェット法などで塗布する方法が挙げられる。乾式法として、ふるい散布法、スプレー法などが挙げられる。
中間転写ベルト表面への散布量は、ベルト表面に均一になるように、過剰量を散布した後、エアーガンで余分量を飛ばしたりして調整する。散布した際の均一性は、大粒子径の無機微粒子が小粒子径のものに比べて、均一に散布され易い。
【0021】
(無機微粒子の固定化)
コート層に無機微粒子を散布し、コート層の表面に偏在させた後、これらの無機微粒子をコート層表面に固定化し、表層を形成する。無機微粒子の固定化は、コート層に存在する官能基と散布された無機微粒子の表面に存在する官能基とが反応することにより行われる。結着樹脂としてイソシアネート化合物を使用する場合、イソシアネート基と、無機微粒子表面に存在するイソシアネート基と結合可能な官能基(−OH基、−COOH、−NH基など)との反応により無機微粒子が固定化される。
このようなイソシアネートの反応は常温において進行するが、より好ましくは基材層に、結着樹脂の溶液を塗布し、さらに無機微粒子を散布した後、40℃〜80℃程度に加熱すると反応が進み易い。
表層の表面抵抗率は1.0×10Ω/□〜1.0×1012Ω/□であることが好ましく、より好ましくは1.0×10Ω/□〜1.0×1010Ω/□である。
(コート層に固定化した無機微粒子の状態観察及び平均粒子径の測定)
コート層に偏在し固定化させた無機微粒子を観察するために、中間転写ベルトの断面試料を作製し、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。また、表面に偏在している無機微粒子の粒径は、断面SEM観察の視野にある任意の10個の無機微粒子の直径を平均して求めた。
【0022】
本発明の中間転写ベルトは、最表層に無機微粒子が固定化されているので、適度な表面粗さを有し、中間転写ベルトを高速移動させたときにも表層が破壊しない。
本発明の画像形成方法は、上記中間転写ベルトを用い、二次転写後、前記中間転写ベルト上に残った転写残トナーを回転部材で回収する画像形成方法である。回転部材としては、金属ローラ、ゴムローラ、ブラシローラ及びスポンジローラから選ばれるローラを用いることができる。また、トナーとしては、体積平均粒子径が8.0μm以下、好ましくは4.0μm〜8.0μmのトナー用いることができる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
(大粒子径シリカの作製)
シリカ粒子の製造方法には、以下のようなものが挙げられる。
(1)アルカリ金属珪酸塩溶液中和法
(2)金属アルコキシドを原料とするゾル−ゲル法
(3)イオン交換樹脂法(原料−珪酸ソーダ)
(4)気相法(アエロジル)
本発明で用いるシリカについては、これらの製法について限定されるものではないが、大粒子径化の制御がし易いといった観点から、(1)の方法で大粒子径シリカの作製を行った。
(シリカ粒子の調製)
攪拌機及び加温装置を有する20リットル反応槽に、3号珪酸ナトリウム溶液(SiO:29.1%、NaO:9.25%、SiO/NaOモル比3.14)3070g、無水硫酸ナトリウム394g及び純水12800mlを投入した。これを攪拌しながら45℃に加温した後、12.3%硫酸溶液300mlを10分かけて滴下し、反応液のpHを11.1とした。
硫酸溶液滴下後、直ちに35分かけて90℃まで加温した。昇温後90℃に保ちながら、12.3%硫酸溶液1300mlを90分かけて滴下し、反応液のpHを9.7とした。硫酸溶液滴下後90℃に保ちながら、攪拌下で90分熟成した。硫酸溶液滴下後95℃に保ちながら、攪拌下で90分熟成した。熟成後直ちに急冷した後、吸引ろ過、水洗、脱水、乾燥することでシラノール基を含有する親水性シリカ粒子を得た。得られたシリカの一次粒子径をコールターカウンター(ベックマンコールター社製)にて測定した結果、約100nmであった。
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチル90質量部及びイソホロンジイソシアネート10質量部をビーカーで10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
上記結着樹脂液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布してコート層を形成し、篩に入れた体積平均粒子径100nmのシラノール基を有する親水性シリカ粒子のコート層表面に散布し、コート層に固定化することにより、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図4参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0024】
(実施例2)
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチル90質量部、イソホロンジイソシアネート10質量部及びポリエステルポリオール(クラレ社製、クラポールP−2010)5質量部をビーカーで60℃10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
実施例1と同様に、上記結着樹脂溶液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布してコート層を形成し、篩に入れた体積平均粒子径100nmのシラノール基を有する親水性シリカ粒子のコート層表面に散布し、コート層に固定化することにより、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0025】
(実施例3)
実施例2と同様にして形成したコート層の表面に、体積平均粒子径40nmの親水性のシリカ(エアロジル社製、AEROSIL(登録商標)OX50)を散布し、コート層に固定化し、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図5参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ偏在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0026】
(実施例4)
(シリカ粒子の調製)
攪拌機及び加温装置を有する20リットル反応槽に、3号珪酸ナトリウム溶液3070g、無水硫酸ナトリウム592g及び純水12800mlを投入した。これを攪拌しながら45℃に加温した後、12.3%硫酸溶液300mlを10分かけて滴下し、反応液のpHを11.0とした。硫酸溶液滴下後、直ちに50分かけて95℃まで加温した。昇温後95℃に保ちながら、12.3%硫酸溶液1300mlを90分かけて滴下し、反応液のpHを9.6とした。硫酸溶液滴下後95℃に保ちながら、攪拌下で90分熟成した。熟成後直ちに急冷した後、吸引ろ過、水洗、脱水、乾燥することでシラノール基を含有する親水性シリカ粒子を得た。得られたシリカの一次粒子径をコールターカウンターにて測定した結果、約200nmであった。
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチル90質量部、イソホロンジイソシアネート20質量部及びポリエステルポリオール(クラレ社製、クラポールP−2010)10質量部をビーカーで60℃10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
実施例1と同様に、上記結着樹脂溶液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布してコート層を形成し、篩に入れた体積平均粒子径200nmのシラノール基を有する親水性シリカ粒子のコート層表面に散布し、コート層に固定化することにより、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図6参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約3μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1012Ω/□であった。
【0027】
(比較例1)
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチル90質量部、イソホロンジイソシアネート10質量部及びポリエステルポリオール(クラレ社製、クラポールP−2010)5質量部をビーカーで60℃10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
実施例1と同様に、上記結着樹脂溶液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布してコート層を形成し、篩に入れた体積平均粒子径20nmの親水性のシリカ(エアロジル社製、AEROSIL(登録商標)90G)をコート層表面に散布し、コート層に固定化し、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図7参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0028】
(比較例2)
(シリカ粒子の調製)
攪拌機及び加温装置を有する20リットル反応槽に、3号珪酸ナトリウム溶液3070g、無水硫酸ナトリウム592g及び純水12800mlを投入した。これを攪拌しながら45℃に加温した後、12.3%硫酸溶液300mlを10分かけて滴下し、反応液のpHを11.0とした。硫酸溶液滴下後、直ちに50分かけて98℃まで加温した。昇温後98℃に保ちながら、12.3%硫酸溶液1300mlを90分かけて滴下し、反応液のpHを9.6とした。硫酸溶液滴下後98℃に保ちながら、攪拌下で90分熟成した。熟成後直ちに急冷した後、吸引ろ過、水洗、脱水、乾燥することでシラノール基を含有する親水性シリカ粒子を得た。得られたシリカの一次粒子径をコールターカウンターにて測定した結果、約300nmであった。
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチル90質量部、イソホロンジイソシアネート10質量部及びポリエステルポリオール(クラレ社製、クラポールP−2010)5質量部をビーカーで60℃10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
実施例1と同様に、上記結着樹脂溶液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布してコート層を形成し、篩に入れた体積平均粒子径300nmの親水性のシリカをコート層表面に散布し、コート層に固定化し、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図8参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0029】
(比較例3)
(結着樹脂溶液の調製)
酢酸エチルを90質量部、イソホロンジイソシアネート10質量部、ポリエステルポリオール(クラレ社製、クラポールP−2010)5質量部をビーカーで60℃10分間混合攪拌し、結着樹脂溶液を得た。
(結着樹脂溶液の塗布及び無機微粒子の散布)
実施例1と同様に、この結着樹脂溶液をバーコーターでポリエステル樹脂製の中間転写ベルト(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布したあと、篩に入れた体積平均粒子径100nmの疎水性のシリカ(信越化学社製、X−24)を散布し、表層へ固定化し、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察(図9参照)から、無機微粒子がコート層表面に現れ遍在していることを確認した。コート層の厚みは、約1μmであった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1010Ω/□であった。
【0030】
(比較例4)
UV硬化性樹脂100質量部と体積平均粒子径200nmの親水性のシリカ(実施例4で調製したシリカ粒子と同様のもの)5質量部との混合物を、ポリエステル樹脂製の中間転写ベルト基材層(体積抵抗率10Ω・cm、厚み100μm)に塗布し、紫外線を照射して硬化させ、中間転写ベルトを得た。
得られたベルトの表面のSEM観察から、コート層の厚みは、約10μmであった。また、図10に示すように、シリカ粒子の表面への偏在は確認できなかった。ベルトの表面抵抗率をハイレスタUP
MCP−HT450型(三菱化学アナリテック社製、測定条件:バイアス電圧500V)で測定したところ、1013Ω/□であった。
【0031】
(評価)
実施例1ないし実施例4及び比較例1ないし比較例4で得られた中間転写ベルトを市販のレーザープリンターに搭載し、トナーが紙へ転写した後の中間転写ベルト上に残るトナー量の測定、クリーニング性評価、及び4,000枚耐刷後の表層のひび割れを目視観察した。転写残トナー量については、○:転写残トナー量が少ない、△:転写残トナー量がやや多い、×:転写残トナー量が多い、の基準で評価し、クリーニング性については、○:良好、△:やや劣る、×:劣る、の基準で評価し、中間転写ベルトの表層のひび割れについては、○:ひび割れが観察されない、△:ひび割れがある、×:ひび割れが多い、の基準で評価した。結果を以下の表に示す。
【0032】
【表1】

以上に示したように実施例の中間転写ベルトでは、中間転写ベルトの表面にシリカ粒子を偏在させ、結着樹脂で中間転写ベルトと共有結合により結合させることで、耐久時の転写性と耐久性に優れる中間転写ベルトの効果を確認することができた。
【符号の説明】
【0033】
1 画像形成装置
2 給紙部
3 画像形成部
4 スキャナ部
5 原稿自動搬送装置(ADF)
9 記録部材
10 作像ユニット(プロセスカートリッジ)
11 感光体
12 露光装置
20 帯電装置
21 帯電ローラ
30 現像装置
40 クリーニング装置
60 転写装置
61 中間転写ベルト
62 一次転写ローラ
63 二次転写ローラ
64 ベルトクリーニング装置
641 クリーニングバックアップローラ
642 回転部材
65 支持ローラ
651 従動ローラ
652 駆動ローラ
653 支持ローラ
66 搬送ベルト
70 定着装置
80 給紙装置
81 給紙カセット
82 給紙ローラ
83 搬送ローラ
84 レジストローラ
85 排紙ローラ
92 テンションローラ
93 潤滑材塗布装置
931 ブラシローラ
932 固体潤滑剤
933 加圧バネ
101 基材層
102 コート層
103 無機微粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2007−183401号公報
【特許文献2】特開2002−072698号公報
【特許文献3】特開2008−268714号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置で使用され、基材層及び表層を有する中間転写ベルトであって、
前記表層が、少なくとも結着樹脂を含む材料で形成されたコート層と体積平均粒子径30nm〜200nmの無機微粒子からなり、
該無機微粒子が、前記コート層の表面に偏在しかつ固定化されている
ことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記無機微粒子の固定化が、該無機微粒子表面に存在する官能基と前記結着樹脂との共有結合により行われる
ことを特徴とする請求項1記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記無機微粒子表面に存在する官能基が、イソシアネート基と結合可能な官能基である
ことを特徴とする請求項2記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記コート層の厚みが0.2μm〜5μm、前記表層の表面抵抗率が1.0×10Ω/□〜1.0×1012Ω/□である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記結着樹脂がイソシアネート化合物である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の中間転写ベルト
【請求項6】
前記少なくとも結着樹脂を含む材料を前記基材層にコーティングしたあとで該コート層の表面に無機微粒子を散布することにより製造する
ことを特徴とする請求項1記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、該トナー像を中間転写ベルトに一次転写し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録部材に二次転写する画像形成装置において、
前記中間転写ベルトが、請求項1ないし6のいずれかに記載の中間転写ベルトであり、
前記二次転写後、前記中間転写ベルト上に残った転写残トナーを回転部材で回収する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記トナー像の形成に用いるトナーの体積平均粒子径が4.0μm〜8.0μmである
ことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記回転部材が、金属ローラ、ゴムローラ、ブラシローラ及びスポンジローラから選ばれるローラである
ことを特徴する請求項7又は8記載の画像形成装置。
【請求項10】
像担持体上に静電潜像を形成し、該静電潜像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー像を形成し、該トナー像を中間転写ベルトに一次転写し、該中間転写ベルト上のトナー像を記録部材に二次転写する画像形成方法において、
前記中間転写ベルトが、請求項1ないし6のいずれかに記載の中間転写ベルトであり、
前記二次転写後、前記中間転写ベルト上に残った転写残トナーを回転部材で回収する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−39430(P2011−39430A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189059(P2009−189059)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】