説明

中間転写体および製造方法

【課題】転写剥離の良い転写ベルトの製造
【解決手段】本教示は、基板層に配置されている表面層とを含む中間転写体54を提供する。表面層52は、以下の式を有するポリイミドポリマー51を含む。


〔式中、Rは、アルキルまたはアリールなど、およびこれらの混合物であり;nおよびmは、繰り返し単位のモル%である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および中間転写体に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーを静電転写するための中間転写体を用いて、カラー画像または白黒画像を作成する画像形成装置は、よく知られている。このような中間転写体を用いるカラー画像形成装置において、一枚の紙の上に画像が作成される場合、一般的に、最初に、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色によるカラー画像が、光受容体のような像担持体からそれぞれ順次転写され、これを中間転写体上で重ね合わせる(一次転写)。次いで、このフルカラー画像を、一段階で1枚の紙に転写する(二次転写)。白黒画像形成装置では、黒色の画像を光受容体から転写し、中間転写体上で重ね合わせ、次いで、一枚の紙の上に転写する。
【0003】
画像形成装置には、中間転写体が必要である。
【発明の概要】
【発明を解決するための手段】
【0004】
種々の実施形態によれば、本教示は、基板層と、この基板層に配置されている表面層とを含む中間転写体を提供する。表面層は、以下の式を有するポリイミドポリマー


〔式中、Rは、アルキルまたはアリール、およびこれらの混合物であり;nおよびmは、繰り返し単位のモル%であり、nは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%であり、mは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%である〕
を含む。
【0005】
本明細書に開示するさらなる態様は、中間転写体を製造する方法である。この方法は、以下の式を有するポリイミド


〔式中、Rは、アルキルまたはアリール、およびこれらの混合物であり;nおよびmは、繰り返し単位のモル%であり、nは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%であり、mは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%である〕
を溶媒に溶解することを含む。この溶解したポリイミドポリマーの溶液を導電性添加剤とともに粉砕し、分散物を作成する。この分散物を、基板層にコーティングする。次いで、この分散物を硬化させる。
【0006】
本明細書に開示するさらなる態様は、ポリイミドポリマーの底部層と、この底部層に配置されている表面層とを含む中間転写体である。表面層は、ヘキサデカン接触角が約20°〜約45°である多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)フルオロポリイミドポリマーと、表面層の約5〜約30重量%の導電性添加剤とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、画像装置の概略図である。
【図2】図2は、本明細書に開示している実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、画像形成装置は、以下に詳細に記載するような中間転写体を備えている。この画像形成装置は、一次転写によって、像担持体で作成されたトナー画像を中間転写体に転写するための第1転写ユニットと、二次転写によって、中間転写体に転写されたトナー画像を転写材料に転写するための第2転写ユニットとを備える、中間転写式の画像形成装置である。また、この画像形成装置において、中間転写体は、トナー画像を転写材料に転写するための転写領域に、転写材料を搬送するための転写搬送体として与えられてもよい。高品質の画像を転写し、長期間にわたって安定なままである中間転写体を有することが必要である。
【0009】
本明細書に記載する画像形成装置は、中間転写方式の画像形成装置であれば、特に制限されず、例としては、現像デバイスに単色のみが格納されている通常の単色画像形成装置、像担持体上に担持されているトナー画像を、順次中間転写体に繰り返し一次転写するためのカラー画像形成装置、中間転写体に連続して配置されるそれぞれの色の現像ユニットとともに、複数の像担持体を備えているタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。さらに特定的には、画像形成装置は、適宜、像担持体と、像担持体表面を均一に帯電させる帯電ユニットと、中間転写体表面を露光し、静電潜像を作成する露光ユニットと、現像溶液を用いて、像担持体表面に生成した潜像を現像し、トナー画像を作成する現像ユニットと、トナーユニットを転写材料に定着させる定着ユニットと、像担持体に付着したトナーおよび異物を除去するクリーニングユニットと、像担持体表面に残った静電潜像を除去する静電除去ユニットと、必要な場合には、既知の方法による他の要素とを備えていてもよい。
【0010】
像担持体として、既知のものを使用してもよい。像担持体の感光層として、有機系、アモルファスシリコン、または他の既知の材料を使用してもよい。円筒形の像担持体の場合、アルミニウムまたはアルミニウム合金を押出成形し、表面処理を行う既知の方法によって得られる。ベルト形態の像担持体を使用してもよい。
【0011】
帯電ユニットは、特に制限されず、既知の帯電器を用いてもよく、例えば、導電性ローラまたは半導体ローラ、ブラシ、フィルム、およびゴム製ブレードを用いた接触型帯電器、コロナ放電を利用するスコロトロン帯電器またはコロトロン帯電器などを用いてもよい。中でも、優れた帯電補償能という観点から、接触型帯電ユニットが好ましい。帯電ユニットは、通常は、直流を電子写真用感光材料に印加するが、交流をさらに重ね合わせてもよい。
【0012】
露光ユニットは、特に制限されず、例えば、半導体レーザービーム、LEDビーム、液晶シャッタービームなどの光源を用いることによって、または、このような光源から多面鏡を通すことによって、電子写真用感光材料の表面に所望の画像を露光する光学系デバイスを用いてもよい。
【0013】
現像ユニットは、適切には、目的に応じて選択されてもよく、例えば、一液型現像溶液または二液型現像溶液を用いることによって現像するための既知の現像ユニットを、ブラシおよびローラを用いて、接触させるか、または接触させずに使用してもよい。
【0014】
第1転写ユニットは、既知の転写帯電器、例えば、部材、ローラ、フィルム、およびゴム製ブレードを用いる接触型転写帯電器、コロナ放電を利用するスコロトロン転写帯電器またはコロトロン転写帯電器を備えている。中でも、接触型転写帯電器は、優れた転写帯電補償能を与える。転写帯電器以外に、剥離型の帯電器を一緒に使用してもよい。
【0015】
第2転写ユニットは、第1転写ユニットと同じであってもよく、例えば、転写ローラなどを用いた接触型転写帯電器、スコロトロン転写帯電器およびコロトロン転写帯電器であってもよい。接触型転写帯電器の転写ローラによって強く押すことによって、画像転写段階を維持することができる。さらに、転写ローラまたは接触型転写帯電器を、ローラが中間転写体を導くような位置に押すことによって、トナー画像を中間転写体から転写材料へと移動させる作動を行ってもよい。
【0016】
光静電除去ユニットとして、例えば、タングステンランプまたはLEDを用いてもよく、光静電除去プロセスで使用する光質としては、タングステンランプの白色光、LEDの赤色光を挙げることができる。光静電除去プロセスで、照射光の強度として、通常は、出力を、光質の約数倍〜約30倍が、電子写真用感光材料の露光感度の半分を示すように設定する。
【0017】
定着ユニットは、特に制限されず、任意の既知の定着ユニットを使用してもよく、例えば、熱ローラ定着ユニットおよびオーブン定着ユニットを用いてもよい。
【0018】
クリーニングユニットは、特に制限されず、任意の既知のクリーニングデバイスを用いてもよい。
【0019】
一次転写を繰り返すためのカラー画像形成装置を、図1に模式的に示している。図1に示す画像形成装置は、像担持体として感光ドラム1と、中間転写体として転写体2(例えば、転写ベルト)と、転写電極としてバイアスローラ3と、転写材料として紙を供給するためのトレー4と、BK(ブラック)トナーによる現像デバイス5と、Y(イエロー)トナーによる現像デバイス6と、M(マゼンタ)トナーによる現像デバイス7と、C(シアン)トナーによる現像デバイス8と、部材クリーナー9と、剥離爪13と、ローラ21、23、24と、バックアップローラ22と、導電性ローラ25と、電極ローラ26と、クリーニングブレード31と、紙の束41と、ピックアップローラ42と、フィードローラ43とを備えている。
【0020】
図1に示す画像形成装置において、感光ドラム1は、矢印Aの方向に回転し、帯電デバイス(示していない)の表面を均一に帯電させる。帯電した感光ドラム1に、画像書き込みデバイス(例えば、レーザー書き込みデバイス)によって、第1色(例えば、BK)の静電潜像が作成される。この静電潜像は、現像デバイス5によって、トナーによって現像され、目に見えるトナー画像Tが作成される。トナー画像Tは、感光ドラム1が回転することによって、導電性ローラ25を備える一次転写ユニットに移動し、導電性ローラ25から、トナー画像Tに逆極性の電場がかけられる。トナー画像Tは、転写体2に静電的に吸着し、矢印Bの方向に転写体2が回転することによって、一次転写が行われる。
【0021】
同様に、第2色のトナー画像、第3色のトナー画像、第4色のトナー画像が、次々と作成され、転写体2に重ねて配置され、多層トナー画像が作成される。
【0022】
転写体2が回転することによって、転写体2に転写された多層トナー画像が、バイアスローラ3を備える二次転写ユニットに移動する。二次転写ユニットは、転写体2のトナー画像を担持している側の表面に配置されているバイアスローラ3と、転写体2の裏側からバイアスローラ3と向かい合うように配置されているバックアップローラ22と、バックアップローラ22と密に接して回転する電極ローラ26とを備えている。
【0023】
紙41は、ピックアップローラ42によって、紙トレー4に入っている紙束から1枚ずつ取り出され、特定のタイミングで、フィードローラ43によって、二次転写ユニットの転写体2とバイアスローラ3との間の空間に供給される。供給された紙41は、バイアスローラ3とバックアップローラ22との間で押されながら搬送され、転写ベルト2の上に担持されているトナー画像が、転写体2が回転することによって紙41に転写される。
【0024】
トナー画像が転写された紙41は、最後のトナー画像の一次転写が終わるまで、剥離爪13を後退した位置に操作することによって転写体2から剥離され、定着デバイス(示されていない)に搬送される。トナー画像は、圧力や熱を加えることによって定着し、永久的な画像が作成される。多層トナー画像を紙41に転写した後、転写体2を、二次転写ユニットの下流に配置されているクリーナー9でクリーニングして残留トナーを除去し、次の転写に備える。バイアスローラ3は、ポリウレタンなどでできているクリーニングブレード31が常に接触していてもよく、転写によって付着したトナー粒子、紙粉、他の異物が除去されるように提供されている。
【0025】
単色画像を転写する場合、一次転写の後、トナー画像Tは、すぐに二次転写プロセスに送られ、定着デバイスに運ばれるが、複数の色を組み合わせて多色画像を転写する場合には、転写体2と感光ドラム1との回転が、一次転写ユニットで複数色のトナー画像の位置が正確に合い、複数色のトナー画像がずれないように同期化される。二次転写ユニットでは、トナーの極性と同じ極性の電圧(転写電圧)を、バイアスローラ3および転写体2とは反対側に配置されているバックアップローラ22と密に接触している電極ローラ26に加えることによって、静電反発力によって、トナー画像が紙41に転写される。これにより、画像が作成される。
【0026】
中間転写体2は、任意の適切な形状であってもよい。適切な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のないメビウスの輪、円板、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のない可とう性ベルト、パズルカットのつなぎ目がある、終端のないベルトなどが挙げられる。図1では、転写体2はベルトとして示されている。
【0027】
画像転写の場合の画像では、色トナー画像は、まず、光受容体に蓄積し、次いで、すべての色トナー画像が、同時に中間転写体に転写される。タンデム型転写では、トナー画像は、1回に1つの色が、光受容体から中間転写体の同じ領域に転写される。両実施形態が、本明細書に含まれる。
【0028】
現像した画像を光導電性部材から中間転写体に転写し、この画像を中間転写体から基板に転写することは、電子写真で従来から使用されている任意の適切な技術(例えば、コロナ転写、圧力転写、バイアス転写、およびこれらの転写手段の組み合わせなど)によって行うことができる。
【0029】
中間転写体は、任意の適切な形状であってもよい。適切な形状の例としては、シート、フィルム、ウェブ、箔、片、コイル、円筒形、ドラム、終端のない片、円板、ドレルト(drelt)(ドラムとベルトの中間物)、終端のないベルトを含むベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性ベルト、終端がなく、つなぎ目のある可とう性の作像ベルトが挙げられる。
【0030】
図2に示す実施形態では、中間転写体54は、二層構造のフィルムの形態である。中間転写体54は、ポリイミド基板層50を含む。多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)フルオロポリイミド52の外側層は、ポリイミド基板層51に配置されている。基板層も外側層も、導電性フィラー粒子51を含んでいる。POSSフルオロポリイミドは、ヘキサデカン接触角が、約20°〜約45°、または約25°〜約40°である。
【0031】
基板層50に適したポリイミドとしては、種々のジアミンおよび二無水物から形成されるもの、例えば、ポリ(アミド−イミド)、ポリエーテルイミド、シロキサンポリエーテルイミドブロックコポリマー、例えば、General Electric(マサチューセッツ州ピッツフィールド)から入手可能なSILTEM STM−1300などが挙げられる。例えば、芳香族ポリイミドを含むポリイミド(例えば、ピロメリット酸とジアミノジフェニルエーテルとを反応させることによって得られるポリイミド)は、DuPontから商品名KAPTON(登録商標)HN型で販売されている。DuPontから入手可能であり、KAPTON(登録商標)FPC−E型として販売されている別の適切なポリイミドは、酸コポリマー(例えば、ビフェニルテトラカルボン酸およびピロメリット酸)を2種類の芳香族ジアミン(例えば、p−フェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルエーテル)でイミド化することによって製造される。別の適切なポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物およびベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物の酸コポリマーを、Ethyl Corporation(ルイジアナ州バトンルージュ)からEYMYD L−20N型として入手可能な2,2−ビス[4−(8−アミノフェノキシ)フェノキシ]−ヘキサフルオロプロパンと反応させたものが挙げられる。他の適切な芳香族ポリイミドとしては、1,2,1’,2’−ビフェニルテトラカルボキシイミドおよびパラ−フェニレン基を含有するもの、例えば、Uniglobe Kisco,Inc.(ニューヨーク州ホワイトプレインズ)から入手可能なUPILEX(登録商標)−S、ビフェニルテトラカルボキシイミド官能基とジフェニルエーテル末端スペーサーとを有するという特徴を有するもの、例えば、Uniglobe Kisco,Inc.から入手可能なUPILEX(登録商標)−Rが挙げられる。また、ポリイミド混合物を用いてもよい。
【0032】
(POSS)フルオロポリイミドの例として、以下の化学構造を有するものが挙げられる。


式中、Rは、アルキル(例えば、イソブチル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、メチル)、またはアリール(例えば、フェニル、ドデカフェニル、フェネチル、フェネチルイソブチル)など、およびこれらの混合物であり;nおよびmは、繰り返し単位のモル%であり、nは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%、または約60モル%〜約80モル%であり、mは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%、または約40モル%〜約20モル%である。
【0033】
実施形態では、POSSフルオロポリイミドは、Tが、約200〜約340℃、または約240〜約300℃である。それに加えて、POSSは、数平均分子量が、約10,000〜200,000、または約50,000〜約100,000であり、重量平均分子量が、約50,000〜約500,000、または約100,000〜約300,000である。
【0034】
市販のPOSSフルオロポリイミドの例は、ManTech International Corporationから入手可能なCORIN(登録商標)XLSである。この物質は、Tが約266℃と高く、優れた属性を有している。数平均分子量は、約86,000であると決定され、重量平均分子量は、約231,000であった。POSSフルオロポリイミドは、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)またはN−メチルピロリドン(NMP)のような一般的な有機溶媒に可溶性である。対照的に、一般的なポリイミドは、DMF、DMAcまたはNMPのような高沸点溶媒にのみ可溶性である。
【0035】
実施形態では、ポリイミド基板層50およびPOSSフルオロポリイミド外側層52の両方に分散している特定の電気導電性粒子51は、抵抗率を、約10オーム/スクエア〜約1013オーム/スクエアの範囲、または約1010オーム/スクエア〜約1012オーム/スクエアの範囲の望ましい表面抵抗率まで下げる。体積抵抗率は、約10オーム−cm〜約1012オーム−cm、または約10オーム−cm〜約1011オーム−cmである。この抵抗率は、導電性粒子の濃度を変えることによって与えることができる。
【0036】
導電性フィラーの例としては、カーボンブラック、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなど;金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンをドープした酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムをドープした三酸化スズ、ポリアニリンおよびポリチオフェン、およびこれらの混合物が挙げられる。導電性フィラーは、中間転写体の固形分の合計重量の約1〜約60重量部、または約3〜約40重量部、または約5〜約20重量部の量で存在してもよい。
【0037】
カーボンブラック表面の基は、酸またはオゾンで酸化することによって形成されてもよく、例えば、カルボキシレート、フェノールなどに由来する、吸収された酸素基または化学的に吸着された酸素基が存在する。炭素表面は、主に、酸化プロセスおよび遊離ラジカル反応を除き、ほとんどの有機反応化学に対し、本質的に不活性である。
【0038】
カーボンブラックの導電率は、主に、表面積および構造に依存し、一般的には、表面積が大きくなり、高構造になるほど、カーボンブラックの導電性が大きくなる。表面積は、カーボンブラックの単位重量あたりのB.E.T.窒素表面積で測定され、一次粒子の大きさの測定値である。本明細書に記載したカーボンブラックの表面積は、約460m/g〜約35m/gである。構造は、カーボンブラックの一次凝集物の形態を指す、複雑な性質である。構造は、一次凝集物を含む一次粒子の数と、一緒に「融合した」様式の測定値である。高構造のカーボンブラックは、かなりが「分岐し」、「鎖状になった」多くの一次粒子で構成される凝集物を特徴としており、一方、低構造のカーボンブラックは、少ない一次粒子で構成される小さな凝集物を特徴としている。構造は、カーボンブラック内にある空隙によるフタル酸ジブチル(DBP)の吸収量によって測定される。高構造になるほど、空隙が多く、DBPの吸収量が多い。
【0039】
ITMの導電性成分として選択されるカーボンブラックの例としては、Cabot Corporationから入手可能な、VULCAN(登録商標)カーボンブラック、REGAL(登録商標)カーボンブラック、MONARCH(登録商標)カーボンブラック、BLACK PEARLS(登録商標)カーボンブラックが挙げられる。導電性カーボンブラックの特定の例は、BLACK PEARLS(登録商標)1000(B.E.T.表面積=343m/g、DBP吸収量=1.05ml/g)、BLACK PEARLS(登録商標)880(B.E.T.表面積=240m/g、DBP吸収量=1.06ml/g)、BLACK PEARLS(登録商標)800(B.E.T.表面積=230m/g、DBP吸収量=0.68ml/g)、BLACK PEARLS(登録商標)L(B.E.T.表面積=138m/g、DBP吸収量=0.61ml/g)、BLACK PEARLS(登録商標)570(B.E.T.表面積=110m/g、DBP吸収量=1.14ml/g)、BLACK PEARLS(登録商標)170(B.E.T.表面積=35m/g、DBP吸収量=1.22ml/g)、VULCAN(登録商標)XC72(B.E.T.表面積=254m/g、DBP吸収量=1.76ml/g)、VULCAN(登録商標)XC72R(VULCAN(登録商標)XC72のふわふわした泡状物)、VULCAN(登録商標)XC605、VULCAN(登録商標)XC305、REGAL(登録商標)660(B.E.T.表面積=112m/g、DBP吸収量=0.59ml/g)、REGAL(登録商標)400(B.E.T.表面積=96m/g、DBP吸収量=0.69ml/g)、REGAL(登録商標)330(B.E.T.表面積=94m/g、DBP吸収量=0.71ml/g)、MONARCH(登録商標)880(B.E.T.表面積=220m/g、DBP吸収量=1.05ml/g、一次粒子の直径=16ナノメートル)、およびMONARCH(登録商標)1000(B.E.T.表面積=343m/g、DBP吸収量=1.05ml/g、一次粒子の直径=16ナノメートル);Evonik−Degussaから入手可能なChannel carbon black;Special Black 4(B.E.T.表面積=180m/g、DBP吸収量=1.8ml/g、一次粒子の直径=25ナノメートル)、Special Black 5(B.E.T.表面積=240m/g、DBP吸収量=1.41ml/g、一次粒子の直径=20ナノメートル)、Color Black FW1(B.E.T.表面積=320m/g、DBP吸収量=2.89ml/g、一次粒子の直径=13ナノメートル)、Color Black FW2(B.E.T.表面積=460m/g、DBP吸収量=4.82ml/g、一次粒子の直径=13ナノメートル)、Color Black FW200(B.E.T.表面積=460m/g、DBP吸収量=4.6ml/g、一次粒子の直径=13ナノメートル)が挙げられる。
【0040】
導電性フィラーのさらなる例としては、ドープされた金属酸化物が挙げられる。ドープされた金属酸化物としては、アンチモンをドープした酸化スズ、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、アンチモンをドープした二酸化チタン、同様のドープされた金属酸化物、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
適切なアンチモンをドープした酸化スズとしては、不活性コア粒子をコーティングした、アンチモンをドープした酸化スズ(例えば、ZELEC(登録商標)ECP−S、M、T)、コア粒子を含まない、アンチモンをドープした酸化スズ(例えば、ZELEC(登録商標)ECP−3005−XCおよびZELEC(登録商標)ECP−3010−XC、ZELEC(登録商標)は、DuPont Chemicals Jackson Laboratories(ニュージャージー州ディープウオーター)の商標である)が挙げられる。コア粒子は、中空部または固体コアを有する、マイカ、TiOまたは針状粒子であってもよい。
【0042】
別の実施形態では、電気導電性粒子としては、不活性コア粒子をコーティングした、アンチモンをドープした酸化スズ(例えば、ZELEC(登録商標)ECP−S、M、T)が挙げられる。ZELEC(登録商標)は、DuPont Chemicals Jackson Laboratories(ニュージャージー州ディープウオーター)の商標である。コア粒子は、中空部または固体コアを有する、マイカ、TiOまたは針状粒子であってもよい。
【0043】
別の実施形態では、アンチモンをドープした酸化スズ粒子は、アンチモンをドープした酸化スズの薄層を、シリカシェルまたはシリカ系粒子の表面に密に積層することによって調製され、ここで、シェルは、コア粒子に堆積している。導体の結晶子が、シリカ層の上に高密度の導電性表面を形成するような様式で分散している。これにより、最適な導電率が得られる。また、粒子は、十分な透明度を与えるように、十分に微細な大きさである。シリカは、中空シェルであってもよく、不活性コアの表面に積層していてもよく、これにより固体構造を形成する。アンチモンをドープした酸化スズの形態は、DuPont Chemicals Jackson Laboratories(ニュージャージー州ディープウオーター)から、ZELEC(登録商標)ECP(電気導電性粉末)という商標名で市販されている。特に好ましいアンチモンをドープした酸化スズは、ZELEC(登録商標)ECP 1610−S、ZELEC(登録商標)ECP 2610−S、ZELEC(登録商標)ECP 3610−S、ZELEC(登録商標)ECP 1703−S、ZELEC(登録商標)ECP 2703−S、ZELEC(登録商標)ECP 1410−M、ZELEC(登録商標)ECP 3005−XC、ZELEC(登録商標)ECP 3010−XC、ZELEC(登録商標)ECP 1410−T、ZELEC(登録商標)ECP 3410−T、ZELEC(登録商標)ECP−S−X1などである。針状の中空シェル製品(ZELEC(登録商標)ECP−S)、等軸晶の二酸化チタンコア製品(ZELEC ECP−T)、平板状のマイカコア製品(ZELEC(登録商標)ECP−M)といった、3種類の商業グレードのZELEC(登録商標)ECP粉末が好ましい。
【0044】
POSSフルオロポリイミド外側層は、中間転写体外側層の固形分の合計重量のうち、約1〜約95重量部、または約10〜約60重量部の量で存在するポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリエーテルイミドなど、およびこれらの混合物を含むポリイミドポリマーを含んでいてもよい。
【0045】
外側層で使用可能なポリイミドの例は、既知の低温で迅速に硬化するポリイミドポリマー、例えば、VTEC(商標) PI 1388、080−051、851、302、203、201、PETI−5(すべて、Richard Blaine International,Incorporated(ペンシルバニア州レディング)から入手可能)を含む。これらの熱硬化性ポリイミドは、短時間(例えば、約10〜約120分、または約20〜約60分)で、約180〜約260℃の温度で硬化させることができ、数平均分子量が、約5,000〜約500,000、または約10,000〜約100,000であり、重量平均分子量が、約50,000〜約5,000,000、または約100,000〜約1,000,000である。また、300℃を超える温度で硬化させることができる他の熱硬化性ポリイミドとしては、PYRE M.L(登録商標)RC−5019、RC5057、RC−5069、RC−5097、RC−5053、RK−692(すべて、Industrial Summit Technology Corporation(ニュージャージー州パーリン)から市販されている);RP−46およびRP−50(両方とも、Unitech LLC(バージニア州ハンプトン)から市販されている);DURIMIDE(登録商標)100(FUJIFILM Electronic Materials U.S.A.,Inc.(ロードアイランド州ノースキングストン)から市販);KAPTON(登録商標)HN、VNおよびFN(すべて、E.I.DuPont(デラウェア州ウィルミントン)から市販されている)が挙げられる。
【0046】
中間転写体の外側層で使用可能なポリアミドイミドの例は、VYLOMAX(登録商標)HR−11NN(N−メチルピロリドンの15重量%溶液、T=300℃、M=45,000)、HR−12N2(N−メチルピロリドン/キシレン/メチルエチルケトン=50/35/15の30重量%溶液、T=255℃、M=8,000)、HR−13NX(N−メチルピロリドン/キシレン=67/33の30重量%溶液、T=280℃、M=10,000)、HR−15ET(エタノール/トルエン=50/50の25重量%溶液、T=260℃、M=10,000)、HR−16NN(N−メチルピロリドンの14重量%溶液、T=320℃、M=100,000)(すべて、日本の東洋紡から市販)、TORLON(登録商標)AI−10(T=272℃)(Solvay Advanced Polymers、LLC(ジョージア州アルファレッタ)から市販)である。
【0047】
中間転写体の外側層で使用可能なポリエーテルイミドの例は、ULTEM(登録商標)1000(T=210℃)、1010(T=217℃)、1100(T=217℃)、1285、2100(T=217℃)、2200(T=217℃)、2210(T=217℃)、2212(T=217℃)、2300(T=217℃)、2310(T=217℃)、2312(T=217℃)、2313(T=217℃)、2400(T=217℃)、2410(T=217℃)、3451(T=217℃)、3452(T=217℃)、4000(T=217℃)、4001(T=217℃)、4002(T=217℃)、4211(T=217℃)、8015、9011(T=217℃)、9075、9076(すべて、Sabic Innovative Plasticsから市販されている)である。
【0048】
また、中間転写体の外側層として選択してもよいポリイミドは、完全にイミド化したポリマーとして調製してもよく、このポリマーは、任意の「アミド」酸を含有せず、これを高温で硬化してイミド形態に変換する必要はない。この種類の典型的なポリイミドは、ジ−(2,3−ジカルボキシフェニル)−エーテル二無水物と、5−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンとを反応させることによって調製してもよい。このポリマーは、Ciba−Geigy Corporation(ニューヨーク州アーズリー)によって販売されているPolyimide XU 218として入手可能である。他の完全にイミド化したポリイミドは、テキサス州ダラスにあるLenzing Corporationから入手可能であり、Lenzing P83ポリイミドとして販売されており、三井東圧化学(ニューヨーク州ニューヨーク)によってLarc−TPIとして販売されている。
【0049】
この二層構造の外側層は、約200℃〜約340℃、または約240℃〜約300℃、または約266℃のガラス転移点を有する。
【0050】
外側層の厚みは、約1ミクロン〜約150ミクロン、または約10ミクロン〜約100ミクロンである。
【0051】
中間転写体を製造する方法は、下式を有するPOSSフルオロポリイミド


〔式中、Rは、アルキル(例えば、イソブチル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、メチル)、またはアリール(例えば、フェニル、ドデカフェニル、フェネチル、フェネチルイソブチル)など、およびこれらの混合物であり;nおよびmは、繰り返し単位のモル%であり、nは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%、または約60モル%〜約80モル%であり、mは、上述のポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%、または約40モル%〜約20モル%である〕
を溶媒に溶解することを含む。溶媒は、低温で硬化したポリイミドを溶解する任意の溶媒であってよい。例としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)またはN−メチルピロリドン(NMP)など、およびこれらの混合物が挙げられる。溶解したPOSSフルオロポリイミドの溶液を、導電性添加剤とともに粉砕し、分散物を作成する。この分散物を、ポリイミドポリマー層にコーティングし、硬化させる。
【0052】
外側層を、任意の適切な既知の様式で基板層にコーティングする。このような物質を基板層にコーティングする典型的な技術としては、流し塗り、液体スプレーコーティング、浸漬コーティング、ワイヤ捲きロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電吹き付け、音波による吹き付け、ブレードコーティング、成形、ラミネート加工などが挙げられる。
【0053】
上述の層のいずれかに、添加剤およびさらなるフィラーが存在してもよい。
【実施例】
【0054】
実験的に、CORIN(登録商標)XLS POSSフルオロポリイミド(数平均分子量は、約86,000であると決定され、重量平均分子量は約231,000であり、ガラス転移点は約266℃であった、ManTech SRS Technologies(アラバマ州ハンツビル)から入手可能)をTHFに溶解し、次いで、カーボンブラックFW−1(B.E.T.表面積が320m/g、DBP吸収量が2.89ml/g、一次粒子の直径が13ナノメートル、Evonik製)と、固形分約20重量%で、重量比95/5で混合した。混合物をボールミルで粉砕し、ITB外側層コーティング分散物を得た。この分散物をポリイミド/ポリアニリン=90/10基板層(厚み約75ミクロン、このポリイミドは、


によって表されるような、E.I.DuPont(デラウェア州ウィルミントン)から市販されているKAPTON(登録商標)KJであり、式中、xは2に等しく;yは2に等しく;mおよびnは約10〜約300であり;このポリアニリンは、Panipol Oy(フィンランド)から入手可能なPANIPOL(商標)Fである)にコーティングし、次いで、80℃で20分間乾燥した。外側表面層の厚みが約20ミクロンである二重層の中間転写体を得た。
【0055】
二層間の接着性を以下のように試験した。1インチ×6インチの中間転写体サンプルを少なくとも3枚切り取ることによって、180°剥離強度の測定(接着性試験)を行った。それぞれのサンプルについて、外側表面層(第2層)を、カミソリの刃を使って試験サンプルから部分的にはがしておき、次いで、片方の端から約3.5インチのところまで手で剥離させ、サンプル内側の基板支持層を露出させた。次いで、このはがしたサンプルを、両面テープを用いて2インチ×6インチ、厚み0.25インチのアルミニウム製裏当て板に固定した(第2層は裏当て板に面している)。得られた集合体のなかで、第2層がはがれていない末端の反対側の端をInstron Tensile Testerの上部つかみに入れた。この部分的に剥離した第2層の固定されていない末端をInstron Tensile Testerの下部つかみに入れた。次いで、これらのつかみをクロスヘット速度1インチ/分で動かし、角度180°でサンプルを少なくとも2インチ剥離させた。次いで、記録された負荷を計算し、試験サンプルの剥離強度を求めた。剥離強度は、基板支持層から第2層をはがすのに必要な負荷を試験サンプルの幅(1インチまたは2.54cm)で割ったものになるように決定された。
【0056】
接着力は、約15gF/cmであると決定され、この値は、層間の接着性が良好であることを示していた。
【0057】
上述のITB部材またはITBデバイスについて、High Resistivity Meter(三菱化学株式会社から入手可能なHiresta−Up MCP−HT450)を用い、表面抵抗率(さまざまな点で4〜6点の測定値を平均、72°F/室内の湿度65%)を測定した。表面抵抗率は、約5.9×10オーム/スクエアであった。適切な量のカーボンブラック(例えば、中間転写体外側層の5重量%)を用い、表面抵抗率が約10〜約1013オーム/スクエアの機能範囲になるように調整してもよい。
【0058】
ヘキサデカンは、トナーまたはインクの良好な模擬物質であり、接触角を測定するために広く使用されている。ヘキサデカン接触角が大きいほど、トナーまたはインクの接着性が低く、剥離性がよい。接触角のデータを表1にまとめた。
【表1】

【0059】
開示されているPOSSフルオロポリイミド外側層の表面特性は、PTFEの特性に最も近かった。POSSフルオロポリイミド外側層は、接触角が大きく、特に、米国特許出願第12/635,101号および第12/635,101号におけるフルオロポリイミド外側層よりもヘキサデカン接触角が大きく、もちろん、ポリイミド層よりも接触角がかなり大きかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板層と;
以下の式を有するポリイミドポリマーを含む、前記基板層に配置されている表面層と;


〔式中、Rは、アルキルまたはアリール、およびこれらの混合物であり;nは、前記ポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%であり、前記mは、前記ポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%である〕
を含む、中間転写体。
【請求項2】
以下の式を有するポリイミド


〔式中、Rは、アルキルまたはアリールなど、およびこれらの混合物であり;nは、前記ポリイミドポリマーの約50モル%〜約99モル%であり、mは、前記ポリイミドポリマーの約50モル%〜約1モル%である〕
を溶媒に溶解することと;
前記溶解したポリイミドを導電性添加剤とともに粉砕し、分散物を作成することと;
前記分散物を、基板層にコーティングし、中間転写体を作成することと;
前記分散物を硬化させることとを含む、中間転写体を製造する方法。
【請求項3】
ポリイミドポリマーを含む底部層と;
ヘキサン接触角が約20°〜約45°である多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)フルオロポリイミドポリマーおよび表面層の約5〜約20重量%の導電性添加剤を含み、前記底部層に配置されている表面層とを含む、中間転写体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−221528(P2011−221528A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76639(P2011−76639)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】