説明

乗り物用物入れ装置

【課題】蓋体を開成しても、ヒンジ部など機構部品が露出しない乗り物用物入れ装置を提供する。
【解決手段】開口を備えた収納体と、開口を開閉自在なる蓋体4と、蓋体4を開閉させる開閉機構17とよりなる。蓋体4は、収納体に上下回転自在に軸支される裏側部材8と、該裏側部材8に対して保持・離脱可能なるロック部16により前後スライド可能なるインナパネル4bと、該インナパネル4bに対して覆うように固定されたアウタパネル4aとよりなる。開閉機構17は、裏側部材8の上側に、前後スライド可能なるように支持され、一方向に常時付勢されるロック部材9,10と、該ロック部材9,10の付勢力に抗して該ロック部材を後ろ側に移動させることによりロック部16のロック位置部16cから離脱可能で、開閉駆動域16dをスライド可能なることで蓋体4を開成回転可能なるロックピン9a、10aとよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道、航空機、船舶などの乗り物用物入れ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗り物、特に自動車用物入れ装置としては、収納ボックスの蓋体が開放を開始すると、蓋体の摺動部が回転軸の周囲を回動するのに伴って、ピニオン歯車の第1歯車が第1ラック歯に沿って転動し、第2歯車が第2ラック歯に沿って転動して、摺動部を右方へ変位させる。これによって、摺動部は、収納ボックスの後方へ変位しながら開放し、蓋体の摺動部の前端部は、全体として凸状に湾曲し、且つ連続した滑らかな軌跡を描く(先行技術文献。)ものが、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−036671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、蓋体を開成すると、ヒンジ部が露出する、という課題がある。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、蓋体を開成しても、ヒンジ部など機構部品が露出しない乗り物用物入れ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の乗り物用物入れ装置は、開口を備えた収納体と、前記開口を開閉自在となるように前記収納体に配されてなる蓋体と、該蓋体を開閉させる開閉機構とを少なくとも備えてなり、前記蓋体は、前記収納体に上下方向に回転自在に軸支されてなる裏側部材と、該裏側部材に対して所定位置で保持可能なると共に離脱可能なるロック部により前後スライド可能なるインナパネルと、該インナパネルに対して覆うように固定され且つ乗員の肘を保持可能としたアウタパネルとより構成されてなり、前記開閉機構は、前記裏側部材に、前後スライド可能なるように支持されてなると共に一方向に常時付勢されてなるロック部材と、該ロック部材の付勢力に抗して該ロック部材を後ろ側に移動させることによりロック部のロック位置部から離脱可能なると共に、開閉駆動域をスライド可能なることで前記蓋体を開成回転可能なるロックピンとよりなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の乗り物用物入れ装置は、請求項1記載の前記ロック部は、最前位置に形成されてなるロック位置部と、最後位置に形成されてなる開成位置部と、前記ロック位置部から前記裏側部材のスライドによる最後位置に形成されてなると共に前記開成位置部にロックピンが回転可能なるロック解除位置部とより構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、請求項1記載の発明によれば、開閉機構は、裏側部材に、前後スライド可能なるように支持されてなると共に一方向に常時付勢されてなるロック部材と、該ロック部材の付勢力に抗して該ロック部材を後ろ側に移動させることによりロック部のロック位置部から離脱可能なると共に、開閉駆動域をスライド可能なることで前記蓋体を開成回転可能なるロックピンとよりなるため、蓋体の裏側部材にロック部材が隠されてなることで、蓋体を開成しても、ヒンジ部など機構部品が露出しないことで、見映えを向上した、という効果を奏する。
【0009】
また、本発明は、請求項2記載の発明によれば、前記ロック部は、最前位置に形成されてなるロック位置部と、最後位置に形成されてなる開成位置部と、前記ロック位置部から前記裏側部材のスライドによる最後位置に形成されてなると共に前記開成位置部にロックピンが回転可能なるロック解除位置部とより構成されてなるため、前記ロックピンが、ロック位置部にあっても、開成位置部にあっても、ロック解除位置部にあっても、ロック溝部内にあるから、こうした機構が露出しないことで、見映えを向上した、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る蓋体を閉成した状態における乗り物用物入れ装置を斜め前側より示す斜視図。
【図2】図1の蓋体を開成した状態における図1相当図。
【図3】図1及び図2に示す乗り物用物入れ装置の構成部材の分解斜視図。
【図4】図1のA−A線に沿った断面図。
【図5】図2の蓋体を全閉したまま後ろ側にスライドさせた状態を示す図2相当断面図。
【図6】図1のB−B線に沿った断面図。
【図7】図4乃至図6に示す構成部材との位置関係を示す分解斜視図。
【図8】図7の裏側部材にロック部材、付勢手段等を組み込んだ平面図。
【図9】図4及び図5のロック部と、ロック部材との関係を示す斜視図。
【図10】図4及び図5のロック部と、ロック部材との組立後にあって、前記蓋体の開成時と閉成時とにおけるロック部材を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明において、蓋体を開成しても、ヒンジ部など機構部品が露出しない乗り物用物入れ装置を提供する、という目的を、開口を備えた収納体と、前記開口を開閉自在となるように前記収納体に配されてなる蓋体と、該蓋体を開閉させる開閉機構とを少なくとも備えてなり、前記蓋体は、前記収納体に上下方向に回転自在に軸支されてなる裏側部材と、該裏側部材に対して所定位置で保持可能なると共に離脱可能なるロック部により前後スライド可能なるインナパネルと、該インナパネルに対して覆うように固定され且つ乗員の肘を保持可能としたアウタパネルとより構成されてなり、前記開閉機構は、前記裏側部材に、前後スライド可能なるように支持されてなると共に一方向に常時付勢されてなるロック部材と、該ロック部材の付勢力に抗して該ロック部材を後ろ側に移動させることによりロック部のロック位置部から離脱可能なると共に、開閉駆動域をスライド可能なることで前記蓋体を開成回転可能なるロックピンとよりなることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1に係る構造を、図1〜図10を用いて説明する。「車両用物入れ」である自動車用センターコンソールボックス1は、フロアパネル19(図5参照)上に配置されてなる収納体3と、該収納体3の開口2bを開閉する蓋体4と、前記収納体3の前側FRに配される変速機のチェンジ装置(図示省略)及び該チェンジ装置の根本を覆うブーツ(図示省略)を挿通可能なる挿通孔2aと、前記収納体3のボックス3bの後ろ側RRを覆うリアフィニッシャ22とを備えてなる。符号13は、蓋体4を支持するタワーである。
【0013】
前記蓋体4は、合成樹脂製の裏側部材8と、アウタパネル4aと、該アウタパネル4aの表面を覆う加飾用の表皮部4cと、前記アウタパネル4aの裏面を覆うインナパネル4bとよりなる。符号5は、前記インナパネル4bに保持するアッパスライド5aと、該アッパスライド5aを前後にスライド自在なるロアスライド5bとよりなるスライダーである。前記裏側部材8の回転中心貫通孔8aは、前記タワー13にシャフト11により上下回動自在に軸支されてなる。前記蓋体4のアウタパネル4aは、図1に示す前側位置及び図5に示す後ろ側位置まで前記裏側部材8に対して前後摺動可能である。符号18は、前記アッパスライド5aを不用意にスライドさせないように保持する保持部である。
【0014】
符号9,10は、「ロック部材」である第1ロック部材9と第2ロック部材10とよりなる。前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10には、図7に示すように、ロックピン9a、10aが水平方向に突出してなり、ロック部16に係合している。前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10は、前記裏側部材8の上側UPに乗り、「付勢手段」であるコイルスプリング6により常時前側FRに付勢されてなる。
【0015】
前記蓋体4のインナパネル4bの下側には、ボス4cが垂下されてなり、図4に示す蓋体4の位置から、図5に示すように、後ろ側RRにスライドさせることで、該ボス4cが前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10を後ろ側RRに押すことで、スライダー5により図示しないロック部を離脱させて移動し、前記ロック部16のロック位置部16cにあった前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10のロックピン9a、10aが外れ、ロック解除位置部16dに移動することで、上側UPに移動可能となる。「第2付勢手段」である巻きスプリング14によって、前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10が、後ろ側RRのシャフト11を中心に上側UPに持ち上がり、図2に示すようになる。「開閉補助部」である前記ロック部16は、前記ロック位置部16c及びロック解除位置部16dの他、「開閉規制部」であるロック溝部16aと、「開閉駆動域」である摺動溝部16bと、開成位置部16eとよりなる。符号17は、開閉機構である。
【0016】
従って、本実施例1によれば、開閉機構17は、裏側部材8の上側UPに、前後スライド可能なるように支持されてなると共に前方向FRに常時付勢されてなる第1ロック部材9及び第2ロック部材10と、該第1ロック部材9及び第2ロック部材10に加わるコイルスプリング6による前側FRへの付勢力に抗して該第1ロック部材9及び第2ロック部材10を後ろ側RRに移動させることにより第1ロック部材9及び第2ロック部材10のロック位置部16cから離脱可能なると共に、「開閉駆動域」である摺動溝部16bをスライド可能なることで前記蓋体4を開成回転可能なるロックピン9a、10aとよりなるため、蓋体4の裏側部材8の上側UPに第1ロック部材9及び第2ロック部材10が隠されてなることで、蓋体4を開成しても、機構部品が露出しないことで、見映えを向上した、という効果を奏する。
【0017】
また、前記ロック部16は、最前位置に形成されてなるロック位置部16cと、最後位置に形成されてなる開成位置部16eと、前記ロック位置部16cから前記裏側部材8のスライドによる最後位置に形成されてなると共に前記開成位置部16eにロックピン9a、10aが回転可能なるロック解除位置部16dとより構成されてなるため、前記ロックピン9a、10aが、ロック位置部16cにあっても、開成位置部16eにあっても、ロック解除位置部16dにあっても、ロック溝部16a内にあるから、こうした機構が露出しないことで、見映えを向上した、という効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、以上の実施例では、自動車用センターコンソールボックス1を例にして説明したが、自動車用だけでなく、航空機、船舶、鉄道などあらゆる乗り物の物入れ装置に適用されるものである。
【0019】
本発明は、以上の実施例では、自動車用センターコンソールボックス1は、前後関係では、図示しないインストルメントパネルの後ろ側RRに配され、上下関係では、フロアパネル19の上に配され、左右関係では、図示しない座席と座席との間に配されているものとして説明したが、こうしたレイアウトに限定されるものではなく、座席そのものに組み込まれたものでも、天井に組み込まれたものでも、左右何れかの、或いは左右双方の壁に組み込まれたものでも、床に組み込まれたものでも、良い。
【0020】
本発明は、以上の実施例では、収納体3の上面3aは、ほぼ水平な状態の面のものとして説明したが、こうした状態だけに限定されるものではなく、ほぼ垂直な状態までの間のあらゆる角度でも使用可能であるので、一方の面とした。
【0021】
本発明は、以上の実施例では、前記第1ロック部材9及び前記第2ロック部材10は、前記裏側部材8の上側UPに乗るものとして説明したが、こうした状態だけに限定されるものではなく、前記裏側部材8の下側に配されるものでも、前記裏側部材8の構造を変えて、内部に組み込むようにしても良い。
【0022】
本発明は、以上の実施例では、開閉機構17は、裏側部材8の上側UPに、前後スライド可能なるように支持されてなると共に前方向FRに常時付勢されてなる第1ロック部材9及び第2ロック部材10として説明したが、こうした状態だけに限定されるものではなく、ロック時以外にスライドしない構造の自動車用センターコンソールボックス1であって、常に第1ロック部材9及び第2ロック部材10を後方RRへ付勢されてなるようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 「乗り物用物入れ装置」である自動車用センターコンソールボックス
2b 開口
3 収納体
3a 収納体の上面
4 蓋体
4a 蓋体のアウタパネル
4b 蓋体のインナパネル
5 スライダー
5a アッパースライダー
5b ロアスライダー
6 付勢手段であるコイルスプリング
8 裏側部材
9,10 「ロック部材」である第1,第2ロック部材
9a、10a ロックピン
16 ロック部
16a 「開閉規制部」であるロック溝部
16b 「開閉駆動域」である摺動溝部
16c ロック位置部
16d ロック解除位置部
16e 開成位置部
17 開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備えた収納体と、前記開口を開閉自在となるように前記収納体に配されてなる蓋体と、該蓋体を開閉させる開閉機構とを少なくとも備えてなる乗り物用物入れ装置において、
前記蓋体は、前記収納体に上下方向に回転自在に軸支されてなる裏側部材と、該裏側部材に対して所定位置で保持可能なると共に離脱可能なるロック部により前後スライド可能なるインナパネルと、該インナパネルに対して覆うように固定され且つ乗員の肘を保持可能としたアウタパネルとより構成されてなり、
前記開閉機構は、前記裏側部材に、前後スライド可能なるように支持されてなると共に一方向に常時付勢されてなるロック部材と、該ロック部材の付勢力に抗して該ロック部材を後ろ側に移動させることによりロック部のロック位置部から離脱可能なると共に、開閉駆動域をスライド可能なることで前記蓋体を開成回転可能なるロックピンとよりなることを特徴とする乗り物用物入れ装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗り物用物入れ装置であって、
前記ロック部は、最前位置に形成されてなるロック位置部と、最後位置に形成されてなる開成位置部と、前記ロック位置部から前記裏側部材のスライドによる最後位置に形成されてなると共に前記開成位置部にロックピンが回転可能なるロック解除位置部とより構成されてなることを特徴とする乗り物用物入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−11820(P2012−11820A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147832(P2010−147832)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】