説明

乗員拘束装置

【課題】 ルーフパネルにおいて結露した水滴がインフレータとハーネスとの接続部を濡らさないようにする。
【解決手段】 外表面が外気に接触して冷やされたルーフパネル11の車室側の面が結露しても、ルーフパネル11の車室側の面に結合されて外気に直接接触しないルーフアーチ47は結露しないため、インフレータ28とハーネス46とを接続するカプラ45をルーフアーチ47の下方に配置することで、結露により発生した水滴がカプラ45上に落下することが防止され、カプラ45の水濡れによる異常の発生を防止することができる。しかもハーネス46の車体に固定するクリップ48をルーフアーチ47に設けたので、結露により発生した水滴がハーネス46を伝わってカプラ45を濡らすこともなくなり、水濡れによる異常の発生を一層確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開口部の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグを配置し、車両の衝突時にインフレータが発生するガスで前記エアバッグを膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる乗員拘束装置において、ルーフサイドレールに設けたインフレータを制御装置に接続するハーネスを、ルーフサイドレールおよびリヤピラーに沿って複数のクリップで固定するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−114739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外表面が外気に接触して低温になったルーフパネルの内表面(車室側の面)に結露による水滴が発生すると、ルーフパネルから落下した水滴がインフレータおよびハーネスを接続するカプラを直接濡らしたり、ハーネスに付着した水滴が重力で流下して前記カプラを濡らしたりする可能性がある。このようにしてカプラが濡れると、インフレータに対する電気的な導通状態のチェックを行うような場合に、導通状態が正常であるのに異常であると誤判定されたり、異常であるのに正常であると誤判定されたりする可能性がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ルーフパネルにおいて結露した水滴がインフレータとハーネスとの接続部を濡らさないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ドア開口部の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグを配置し、車両の衝突時にインフレータが発生するガスで前記エアバッグを膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置において、前記インフレータとハーネスとの接続部をルーフパネルの車室側の面に結合されるルーフアーチの下方に配置するとともに、前記ハーネスの車体への固定点を前記ルーフアーチに設けたことを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記固定点は、前記ハーネスを車体に固定する複数の固定点のうちで最も高い位置にあることを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記固定点は、前記ハーネスを車体に固定する複数の固定点のうちで前記インフレータに最も近い位置にあることを特徴とする乗員拘束装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の前部ドア開口部18および後部ドア開口部19は本発明のドア開口部に対応し、実施の形態のカプラ45は本発明の接続部に対応し、実施の形態のクリップ48,49は本発明の固定点に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、外表面が外気に接触して冷やされたルーフパネルの車室側の面が結露しても、ルーフパネルの車室側の面に結合されて外気に接触しないルーフアーチは結露しないため、インフレータとハーネスとの接続部をルーフアーチの下方に配置することで、結露により発生した水滴がインフレータとハーネスとの接続部上に落下することが防止され、水濡れによる異常の発生を防止することができる。しかもハーネスの車体への固定点をルーフアーチに設けたので、結露により発生した水滴がハーネスを伝わってインフレータとハーネスとの接続部を濡らすこともなくなり、水濡れによる異常の発生を一層確実に防止することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、ハーネスを車体に固定する複数の固定点のうちで最も高い位置にある固定点をルーフアーチに設けたので、結露により発生した水滴が他の固定点からルーフアーチの固定点を経由してインフレータとハーネスとの接続部を濡らすことがなくなり、水濡れによる異常の発生をより一層確実に防止することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、ハーネスを車体に固定する複数の固定点のうちでインフレータに最も近い位置にある固定点をルーフアーチに設けたので、ルーフアーチの固定点と前記接続部との間のハーネスの長さを最小限に抑え、ルーフパネルから落下する水滴がハーネスを伝わって前記接続部を濡らす可能性を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エアバッグの非展開時の自動車の車室内面を示す図。
【図2】図1の2部拡大図。
【図3】図2の3方向矢視図。
【図4】図3の要部の分解斜視図。
【図5】図2の5−5線断面図。
【図6】図2の6−6線断面図。
【図7】図2の7方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1に示すように、ルーフパネル11の側部に沿ってルーフサイドレール12が車体前後方向に配置されており、ルーフサイドレール12からAピラー13,13、Bピラー14、Cピラー15およびDピラー16が下向きに延出する。前後2本に分割されたAピラー13,13の間に前部窓開口部17が形成され、後側のAピラー13およびBピラー14間に前部ドア開口部18が形成され、Bピラー14およびCピラー15間に後部ドア開口部19が形成され、Cピラー15およびDピラー16間に後部窓開口部20が形成される。乗員拘束装置のロール状に折り畳まれたエアバッグ21は、ルーフサイドレール12に沿って車体前後方向に取り付けられる。尚、乗員拘束装置は、実質的に同一構造のものが車体の左右両側にそれぞれ設けられているが、以下その代表として車体の右側に設けられたものについて説明する。
【0016】
エアバッグ21は2枚重ねの基布を縫製して構成されるもので、その上部に沿って合成樹脂製の第1プロテクタ22、第2プロテクタ23および第3プロテクタ24を装着し、エアバッグ21の展開時に破断可能なテープ25…でロールが解けないように結束される。エアバッグ21の上縁から上方に突出する複数の取付片21a…が、第1〜第3プロテクタ22,23,24に重ねられた状態あるいは単独で、固定部材26…を介してルーフサイドレール12等に固定される。Bピラー14およびCピラー15の間のルーフサイドレール12には、前後一対の取付ブラケット27,27を介してインフレータ28が固定される。インフレータ28の前端から前方に突出するガス供給パイプ29がエアバッグ21の前後方向中間部に接続される。
【0017】
後側のAピラー13およびBピラー14の間のルーフサイドレール12には、前席の乗員用のアシストグリップ41を取り付けるためのアシストグリップベース30が固定され、Cピラー15の上方のルーフサイドレール12には、後席の乗員用のアシストグリップ41を取り付けるためのアシストグリップベース31が固定される。尚、エアバッグ21の後端部は、Dピラー16の手前で前向きに折り返される。
【0018】
図5に示すように、ルーフパネル11の車幅方向外端に連なるルーフサイドレール12は、ルーフサイドパネルアウター32と、ルーフサイドレールインナー33と、それらを結合して補強するルーフサイドレールスチフナ34,35とを備えて閉断面に構成される。Cピラー15は、ルーフサイドパネルアウター32から下方に延びるCピラーアウター36と、ルーフサイドレールインナー33から下方に延びるCピラーインナー37とを備えて閉断面に構成される。後部ドア開口部19を開閉する後部ドア38はスライドドアで構成される。
【0019】
ルーフパネル11の下面およびルーフサイドレール12の内面はルーフライニング39で覆われ、Cピラー15の内面はCピラーガーニッシュ40で覆われる。第3プロテクタ24、インフレータ28、アシストグリップベース31はルーフサイドレール12およびルーフライニング39に挟まれた空間に配置され、アシストグリップベース31に固定されるアシストグリップ41はルーフライニング39を貫通して車室内に露出する。
【0020】
図2に示すように、第3プロテクタ24は、折り畳んだエアバッグ21の上半部を覆う半割円筒状のカバー部24aと、カバー部24aの車幅方向外側部分から下向きに延びる前後の取付部24b,24cとを備える。
【0021】
図3に詳細に示すように、後側の取付部24cは、水平方向に延びる3枚の横リブa,b,cと、2枚の横リブb,cの間に形成されたボックス構造のクリップ貫通部dと、2枚の横リブa,bおよびクリップ貫通部dに3方を囲まれた切欠き状の開口部eと、横リブaの上面に設けられて車幅方向に延びる3枚の縦リブf…と、前後方向に延びて3枚の縦リブf…を接続する縦リブgと、クリップ貫通部dの上面に設けられて車幅方向に延びる2枚の縦リブh,hと、前後方向に延びて2枚の縦リブh,hを接続する縦リブiと、横リブcの上面に設けられて車幅方向に延びる2枚の縦リブj,jとを備える。
【0022】
図3、図4および図6に示すように、アシストグリップベース31は、前後の2カ所の締結部31a,31aがボルト42,42でルーフサイドレール12に固定される。固定部材26には一対の固定突起26a,26aと、一対の係止突起26b,26bとが形成され、かつ第3プロテクタ24のカバー部24aから上方に突出するプロテクタ固定部24dには一対の係止孔24e,24eが形成されており、係止突起26b,26bを係止孔24e,24eに係止することで、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dに固定部材26が固定される。そして固定部材26の固定突起26a,26aを、エアバッグ21の取付片21aに形成した一対の固定孔21b,21bと、アシストグリップベース31のエアバッグ取付部31bに形成した一対の固定孔31d,31dとに挿入した状態で、固定部材46を貫通させたボルト43をアシストグリップベース31に締結することで、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dおよびエアバッグ21の取付片21aがアシストグリップベース31に固定される。
【0023】
このように、第3プロテクタ24のプロテクタ固定部24dは、アシストグリップベース31を介してルーフサイドレール12に固定され、かつ後側の取付部24cのクリップ貫通部dを貫通するクリップ44でルーフサイドレール12に固定される。そしてアシストグリップベース31の前後の締結部31a,31aおよびエアバッ取付部31bに挟まれた前後のアシストグリップ取付部31c,31cに、アシストグリップ41が固定される。
【0024】
尚、第3プロテクタ24は、その前側の取付部24bもクリップ44によってルーフサイドレール12に固定される(図2参照)。
【0025】
図2および図7に示すように、ルーフサイドレール12に一対の取付ブラケット27,27を介して固定されたインフレータ28の後端には、カプラ45を介してハーネス46が接続される。カプラ45の上方に位置するルーフパネル11の下面には車幅方向に延びるルーフアーチ47が固定されており、カプラ45から延びるハーネス46は上方に屈曲してルーフアーチ47の下面にクリップ48で固定され、そこからルーフサイドレール12に沿って後方に延びた後に下向きに屈曲し、第3プロテクタ24の後側の取付部24cの開口部eを上から下に通過してCピラー15に沿って下方に延びている。ハーネス46は、ルーフサイドレール12およびCピラー15の複数個所において前記クリップ48とは別のクリップ49…で固定される(図5参照)。
【0026】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0027】
低温時にルーフパネル11の外表面が外気に接触して冷やされると、ルーフパネル11の内表面に接触する車室内の空気が冷やされて結露による水滴が発生し、その水滴がルーフパネル11から落下する場合がある。ルーフパネル11から落下する水滴がインフレータ28のカプラ45を濡らしたり、ハーネス46を伝ってカプラ45を濡らしたりすると、その水滴がカプラ25の内部に侵入して短絡等の不具合の原因となる可能性がある。
【0028】
ルーフパネル11の下面に設けられたルーフアーチ47は直接外気に接触しないため、車室の気温と略等しくなって結露による水滴が発生することがない。従って、ルーフアーチ47の下方にインフレータ28およびハーネス46を接続するカプラ45を配置することで、ルーフパネル11から落下する水滴がカプラ45を濡らすのを防止することができる。またハーネス46を固定する複数のクリップ48,49…のうち、最もカプラ45に近いクリップ48がハーネス46の最も高い部分をルーフアーチ47に固定しており、しかも最もカプラ45に近い前記クリップ48と該カプラ45との間のハーネス46はルーフアーチ47の下方に位置するので、ルーフパネル11から落下した水滴がハーネス46に付着しても、その水滴はカプラ45から遠ざかる方向に流れて該カプラ45を濡らすことがなくなり、カプラ45の水濡れによる不具合を未然に防止することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
例えば、本発明のピラーはCピラー15に限定されず、他の任意のピラーであっても良い。
【0031】
また本発明の固定点はクリップ48,49を用いたものに限定されず、ボルト等の任意の手段を用いたものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
11 ルーフパネル
18 前部ドア開口部(ドア開口部)
19 後部ドア開口部(ドア開口部)
21 エアバッグ
28 インフレータ
45 カプラ(接続部)
46 ハーネス
47 ルーフアーチ
48 クリップ(固定点)
49 クリップ(固定点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部(18,19)の上縁に沿って折り畳み状態のエアバッグ(21)を配置し、車両の衝突時にインフレータ(28)が発生するガスで前記エアバッグ(21)を膨張させて車室の側部内面に沿ってカーテン状に展開させる乗員拘束装置において、
前記インフレータ(28)とハーネス(46)との接続部(45)をルーフパネル(11)の車室側の面に結合されるルーフアーチ(47)の下方に配置するとともに、前記ハーネス(46)の車体への固定点(48)を前記ルーフアーチ(47)に設けたことを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記固定点(48)は、前記ハーネス(46)を車体に固定する複数の固定点(48,49)のうちで最も高い位置にあることを特徴とする、請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記固定点(48)は、前記ハーネス(46)を車体に固定する複数の固定点(48,49)のうちで前記インフレータ(28)に最も近い位置にあることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の乗員拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95305(P2013−95305A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240970(P2011−240970)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】