説明

乗客コンベア

【課題】過積載状態をより確実に解消するとともに、無制限に軽度の過積載状態が継続されることを防止することのできる乗客コンベアの提供。
【解決手段】過積載状態を検出し過積載状態を示す出力信号を出力する過積載検出部(3a)と、この出力信号に応じて警報を行う警報部4と、運転制御を行う制御部3とを備えた乗客コンベアにおいて、過積載検出部の出力信号に応じ、制御部は第1の警報指令を出力し、警報部により第1の警報を行い、次いで、第1の所定時間、この出力信号が継続して出力されることに応じて、制御部は第2の警報指令および通報指令を出力し、警報部により第1の警報より抑制力の強い第2の警報を行うとともに、通報部5により管理者が待機する詰所に通報を行い、この後、第2の所定時間、この出力信号が継続して出力されていることに応じて、制御部は運転停止指令を出力し乗客コンベアを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関し、特に、乗客の乗り過ぎによる過積載に対応可能な乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベアにあっては、乗客の乗り過ぎによる過積載状態を検出し、モータを保護するために乗客コンベアを停止するようになっている。しかし、従来のこの種の装置では、予告なしに停止するため乗客が転倒するという危険があるとともに、過積載となる度に乗客コンベアを停止することから、運転効率およびサービス性が著しく低下するという問題があった。
【0003】
そこで、従来、軽度の過積載時に、音声で乗客コンベアへの乗り込みを抑制するとともに、重度の過積載時に、音声で乗客コンベアを停止することを知らせた後、運転を停止するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−277191号公報(段落番号0008,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1では、軽度の過積載時に、音声で警報放送を行い乗客コンベアへの乗り込みを抑制するものの、重度の過積載に至らない範囲で乗客が乗り込み続けた場合、軽度の過積載状態が無制限に継続されることになる。この状況は安全上、芳しくないとともに、モータに軽度とはいえ過剰な負荷が掛り続けることになり、継続時間によっては焼けつきを招く恐れもあった。一方、乗客コンベアにあっては、モータ保護のため過積載状態を解消する必要があるものの、サービス性、および人動線確保の観点から可能な限り運転停止を回避することが望ましい。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、過積載状態をより確実に解消するとともに、無制限に軽度の過積載状態が継続されることを防止することのできる乗客コンベアを提供することにある。
【0007】
尚、上記した課題以外のその他の課題は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、過積載状態を検出し過積載状態を示す出力信号を出力する過積載検出部と、前記出力信号に応じて警報を行う警報部と、運転制御を行う制御部とを備えた乗客コンベアにおいて、前記過積載検出部の出力信号に応じ、前記制御部は第1の警報指令を出力し、前記警報部により第1の警報を行い、次いで、第1の所定時間、前記出力信号が継続して出力されることに応じて、前記制御部は第2の警報指令および通報指令を出力し、前記警報部により前記第1の警報より抑制力の強い第2の警報を行うとともに、管理者が待機する詰所に通報を行い、この後、第2の所定時間、前記出力信号が継続して出力されていることに応じて、前記制御部は運転停止指令を出力し乗客コンベアを停止することを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明では、乗客の乗り過ぎにより過積載状態となった場合、まず、第1の警報を行い乗客コンベアへの乗り込みを抑制する。この第1の警報にもかかわらず、所定時間,過積載状態が継続されると、第2の警報を行うとともに、管理者が待機する詰所に通報を行う。この第2の警告により、より明確に乗り込みを抑制し、かつ、詰所の管理者が現場に赴き乗り込みの整理を行う。このような対応が取られたにもかかわらず過積載状態が継続されると、乗客コンベアは過負荷によりモータが焼けつくことを防止するために停止する。
【0010】
このように、過積載状態が生じた場合、第1の警報により乗客コンベアへの乗り込みを抑制するとともに、過積載状態が継続された場合、抑制力の強い第2の警報により乗客コンベアへの乗り込みを抑制し、かつ、管理者を動員して乗り込みを抑制することから、従来のものと比べ、過積載状態をより確実に解消することができる。また、過積載状態を時間的観点から監視し、所定時間以上この状態が継続されると運転停止となることから、従来のように無制限に軽度の過積載状態が継続されるといった事態を防ぐこともできる。
【0011】
尚、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過積載状態をより確実に解消することができるとともに、過積載状態を時間的観点から監視することで、無制限に軽度の過積載状態が継続されるといった事態を防ぐことができ、これによって、過負荷によりモータが焼けつくといった事態を防ぐことができる。また、可能な限り過積載による運転停止を回避することで、サービス性の低下を防ぐとともに、人動線を確保することができる。
【0013】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施例を示す概略構成図である。
【図2】本実施例における処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施例の乗客コンベアは、図1に示すように、無端状に連結され、乗客等を搬送する図示しないステップを駆動するモータ1と、このモータ1に接続されるインバータ2と、運転制御を行う制御部3と、過積載状態を検出し過積載状態を示す出力信号を出力する過積載検出部3aと、乗客コンベア本体側に設けられ、警報を行う警報部4と、管理者が待機する詰所に設けられ、通報を行う通報部5とを備えている。ここで、過積載検出部3aは、制御部3内に具備されており、例えばインバータ2のインバータ負荷情報に基づき過積載状態を検出して過積載状態を示す出力信号を出力する。
【0017】
本実施例にあっては、図2の手順S1に示すように、平常運転が行われていた乗客コンベアにあって、手順S2として過積載検出部3aがインバータ負荷情報に基づき過積載状態を検出して過積載状態を示す出力信号を出力すると、制御部3は、警報部4に第1の警報指令を出力し、警報部4は、手順S3として、過積載状態にあるので乗り込みを控えるよう第1の警報、すなわち、放送を行う。
【0018】
この第1の警報にもかかわらず、手順S4で所定時間(第1の所定時間),過積載状態が継続されていることが判断されると、制御部3は、警報部4に第2の警報指令を出力するとともに、通報部5に通報指令を出力する。これに応じて手順S5として、警報部4は、例えば、第1の警報より大音量、かつ、厳しい語調で乗り込みを控えるよう、第1の警報よりも抑制力の強い第2の警報を行い、また、通報部5は、管理者が待機する詰所にて通報を行う。この通報に応じて管理者は過積載状態となっている乗客コンベアに赴き乗り込みの整理を行う。
【0019】
これらの対応にもかかわらず、手順S6で所定時間(第2の所定時間),過積載状態が継続されていることが判断されると、制御部3は、警報部4に停止予告警報指令を出力する。これに応じて警報部4は、手順S7として過積載状態が継続しているゆえに乗客コンベアを停止する旨の警報(停止予告警報)を行い、この後、制御部3は、停止指令を出力し、手順S8として乗客コンベアを停止する。
【0020】
尚、手順S2で過積載状態にないと判断された場合、および、手順S4で過積載状態が第1の所定時間継続する前に過積載状態が解消された場合、および、手順S6で過積載状態が第2の所定時間継続する前に過積載状態が解消された場合は、手順S1の平常運転に戻る。これらの判断は、制御部3において行われる。
【0021】
尚、手順S4における第1の所定時間継続しているかの判断は、手順S2で過積載状態が開始してからの通算の経過時間で判断してもよいし、手順S3で第1の警報を行ってからの経過時間で判断してもよい。また、手順S6における第2の所定時間継続しているかの判断は、手順S2で過積載状態が開始してからの通算の経過時間で判断してもよいし、手順S3で第1の警報を行ってからの経過時間で判断してもよいし、手順S5で第2の警報および通報を行ってからの経過時間で判断してもよい。
【0022】
本実施例によれば、過積載状態が生じた場合、第1の警報により乗客コンベアへの乗り込みを抑制するとともに、過積載状態が継続された場合、抑制力の強い第2の警報により乗客コンベアへの乗り込みを抑制し、かつ、管理者を動員して乗り込みを抑制することから、過積載状態をより確実に解消することができるとともに、過積載状態を時間的観点から監視することで、無制限に軽度の過積載状態が継続されるといった事態を防ぐことができ、これによって、過負荷によりモータが焼けつくといった事態を防ぐことができる。また、可能な限り過積載による運転停止を回避することで、サービス性の低下を防ぐとともに、人動線を確保することができる。
【0023】
なお、前述した実施例では、インバータ負荷情報に基づき過積載状態を検出する過積載検出部3aを設けた例を示したが、本発明はこれに限られることはなく、他の形態の検出手段により過積載状態を検出するようにしても良い。例えば、モータに流れる電流値を計測することによって過積載状態を検出するようにしても良い。
【0024】
以上、本発明の実施例を用いて説明してきたが、これまでの実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 モータ
2 インバータ
3 制御部
3a 過積載検出部
4 警報部
5 通報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過積載状態を検出し過積載状態を示す出力信号を出力する過積載検出部と、前記出力信号に応じて警報を行う警報部と、運転制御を行う制御部とを備えた乗客コンベアにおいて、
前記過積載検出部の出力信号に応じ、前記制御部は第1の警報指令を出力し、前記警報部により第1の警報を行い、次いで、第1の所定時間、前記出力信号が継続して出力されることに応じて、前記制御部は第2の警報指令および通報指令を出力し、前記警報部により前記第1の警報より抑制力の強い第2の警報を行うとともに、管理者が待機する詰所に通報を行い、この後、第2の所定時間、前記出力信号が継続して出力されていることに応じて、前記制御部は運転停止指令を出力し乗客コンベアを停止することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記警報部による前記第1の警報および前記第2の警報は、放送であることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記通報により、前記管理者に対して乗客コンベアへの乗客の乗り込みの整理をさせることを特徴とする請求項1または2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記過積載検出部は、インバータ負荷情報に基づき過積載状態を検出して前記過積載状態を示す出力信号を出力することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−86928(P2012−86928A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234119(P2010−234119)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】