説明

乗物の車速検出装置又は車速検出用ロータ

【課題】車速検出用ロータの軽量化を達成し、さらに、車速検出用ロータの撓みを防止できる、車速検出装置又は車速検出用ロータを提供する。
【解決手段】周方向に間隔をおいて複数の被検出部22bが形成された車速検出用ロータ22と、被検出部22bに対して車幅方向に隙間をおいて対向配置された車速センサー21と、を備えた乗物の車速検出装置20において、ロータ22の径方向の外周端部には、複数のロータ被取付部22aが、周方向に間隔をおいて形成され、各ロータ被取付部22aは、ブレーキディスク19の径方向内周端部に、周方向に間隔をおいて形成された、各ディスク被取付部19aと共に、共通の固定部材41により、車輪のホイール31の取付部31aに取り付けられ、ロータ22には、隣り合うロータ被取付部22a間に補強部22dが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の回転速度を検出する、乗物の車速検出装置又は車速検出用ロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の車両には、車速検出装置を搭載したものがある。車速検出装置は、回転する車輪の側面に取り付けられた車速検出用ロータに、車速センサーを車幅方向に隙間をおいて対向配置し、車速検出用ロータの回転速度を検出することにより、車速を検出するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−165949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ブレーキパッドとの摩擦が生じるブレーキディスクの温度は、車速検出用ロータの温度より高くなる。その結果、ブレーキディスクの熱膨張量は車速検出用ロータの熱膨張量より大きくなりやすい。ここで、車速検出用ロータとブレーキディスクとを共締めでホイールに取り付けていると、車速検出用ロータは、ブレーキディスクの熱膨張、熱収縮の影響を受けて、共締めしている取付部間で撓むことがある。そして、車速検出用ロータが撓むと、車速検出用ロータと車速センサーとの隙間量が変化し、車速を精度良く検出できないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明では、車速検出用ロータをブレーキディスクと共締めでホイールへ取り付けた場合でも、車速検出用ロータの撓みを防止できる、車速検出用ロータ又は車速検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1発明は、周方向に間隔をおいて複数の被検出部が形成された車速検出用ロータと、前記被検出部に対して車幅方向に隙間をおいて対向配置された車速センサーと、を備えた乗物の車速検出装置において、前記ロータの径方向の外周端部には、複数のロータ被取付部が、周方向に間隔をおいて形成され、前記各ロータ被取付部は、ブレーキディスクの径方向内周端部に、周方向に間隔をおいて形成された、各ディスク被取付部と共に、共通の固定部材により、車輪のホイールの取付部に取り付けられ、前記ロータには、隣り合う前記ロータ被取付部間に補強部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成において、車速検出用ロータをブレーキディスクと共通の固定部材によってホイールに取り付けているので、乗物の部品点数を減らして軽量化を達成することができる。また、ロータ被取付部間に補強部を設けているので、車速検出用ロータ全体について板厚を大きくしたり、剛性の高い材料を用いることなく、撓みが発生しやすい部分について集中的に剛性を高めることができ、車速検出用ロータの撓みを効果的に防止できる。
【0008】
前記第2発明は、更に、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記補強部は、前記ロータの径方向の外周端縁を折り曲げて形成されている。
(2)前記ロータの径方向の内周端部には、径方向の内方に突出して前記ホイールの環状段部に当接する複数の位置決め突起が、周方向に間隔をおいて形成されている。
(3)前記構成(2)において、前記位置決め突起は、前記ロータ被取付部間に配置されている。
【0009】
前記構成(1)によれば、ロータ被取付部間の内でも特に撓みが発生しやすい部分について剛性を高めることができ、撓みを効果的に防止できる。
【0010】
前記構成(2)によれば、位置決め突起によって、車速検出用ロータの取付性及び取付精度を向上させることができる。また、位置決め突起によって、車速検出用ロータの剛性を向上させることができる。
【0011】
前記構成(3)によれば、位置決め突起がロータ被取付部間に配置されることにより、車速検出用ロータの取付性及び取付精度を更に向上させる他、車速検出用ロータの剛性向上効果を得ることができる。
【0012】
本願の第2発明は、車速検出用ロータにおいて、周方向に間隔をおいて複数の被検出部が形成され、径方向の外周端部には、複数のロータ被取付部が、周方向に間隔をおいて形成され、前記各ロータ被取付部は、ブレーキディスクのディスク被取付部と共に、共通の固定部材により、車輪のホイールの取付部に取り付けられ、隣り合う前記ロータ被取付部間に補強部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記構成において、車速検出用ロータをブレーキディスクと共通の固定部材によってホイールに取り付けることで、乗物の部品点数を減らして軽量化を達成することができる。また、ロータ被取付部間に補強部を設けているので、車速検出用ロータ全体について板厚を大きくしたり、剛性の高い材料を用いることなく、撓みが発生しやすい部分について集中的に剛性を高めることができ、車速検出用ロータの撓みを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
要するに本発明によると、乗物の軽量化を達成し、さらに、車速検出用ロータの撓みを防止できる、車速検出装置又は車速検出用ロータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1の自動二輪車の後輪部分の右側面図である。
【図3】図2の車速検出装置部分の拡大図である。
【図4】車速検出用ロータの単体図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】ホイール、ブレーキディスク及び車速検出用ロータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車1の右側面図である。図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下部にて回転自在に支持されている。フロントフォーク4は、ステアリングシャフト5に支持されている。ステアリングシャフト5は、ヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。フロントフォーク4の上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)には、左右に延びるバー型のステアリングハンドル7が取り付けられている。従って、運転者がステアリングハンドル7を左右に揺動させることによって、ステアリングシャフト5を回転軸として、前輪2が操舵される。
【0017】
車体フレーム8は、ヘッドパイプ6から後方に延設されている。車体フレーム8の後下端部には、スイングアーム9の前端部がピボットボルト10で軸支されており、スイングアーム9の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。車体フレーム8の上方であって、ステアリングハンドル7の後方には、燃料タンク11が配置され、燃料タンク11の後方には、運転者用のシート12が配置されている。燃料タンク11の下方には、エンジン13が搭載されている。エンジン13の後部には、出力スプロケット(図示せず)が配置されており、出力スプロケットの動力がチェーン14を介して後輪3へと伝達される。
【0018】
ステアリングハンドル7の前方には、ヘッドランプ16が配置されており、ヘッドランプ16は、フロントカウル17で覆われている。フロントカウル17は、その上部がヘッドランプ16を覆い、その下部がエンジン13等を覆った、フルカウル型である。
【0019】
図2は、図1の自動二輪車1の後輪3部分の右側面図である。図2に示すように、スイングアーム9は、左右一対で、車体フレーム8に軸支されている。左右一対のスイングアーム9の間には、後輪3が配置され、後輪3は、後車軸18によってスイングアーム9に支持されている。後輪3は、ホイール31と、ホイール31の外周部に装着されたタイヤ32と、を有している。ホイール31の側面には、後輪用ブレーキディスク19が取り付けられている。また、ホイール31の側面には、車速センサー21と車速検出用ロータ22とを有する車速検出装置20が配置されている。ブレーキディスク19は、ブレーキキャリパ40に内蔵されたブレーキパッドによって両面から挟み込まれて、ブレーキがかけられるようになっている。
【0020】
図3は、図2の車速検出装置20部分の拡大図である。図3に示すように、車速検出用ロータ22は、本体部220が厚さ(側方方向長さ)が約1.6mmの円環薄板状であり、本体部220に被検出部である貫通孔22bを、周方向に略等間隔をおいて50個程度備えている。車速センサー21は、車速検出用ロータ22の貫通孔22bと対向するように設けられており、車速センサー21と車速検出用ロータ22との隙間(側方方向距離)は、1mm程度である。本実施形態では、車速センサー21は、磁気センサーであり、貫通孔22bを検出すると孔検出状態になり、貫通孔22b間の平面部分22b1で孔非検出状態となることによって、単位時間当たりに検出された孔検出状態を計数することで、車速検出用ロータ22の回転速度すなわち車速を検出することができるようになっている。被検出部の形態は、貫通孔22bに限定されるものではなく、切り欠きや凹部等、車速センサー21によって検出可能な形態であれば良い。
【0021】
図3に示すように、ブレーキディスク19は、本体部220が厚さが約5mmの円環板状であり、挿通孔を周方向に略間隔をおいて複数備えている。ブレーキディスク19は、車速検出用ロータ22よりも大きい厚みを有して、剛性が高く形成される。また挿通孔は、放熱性向上と軽量化の目的で形成される。ブレーキディスク19の本体部220の径方向の内周端部には、周方向に等間隔をおいて複数(本実施形態では4個)のディスク被取付部19aが、本体部220から径方向内方に突出するように形成されている。このディスク被取付部19aには、固定部材挿通用の孔が形成される。また、車速検出用ロータ22の本体部220の径方向の外周端部には、周方向に等間隔をおいて複数(本実施形態では4個)のロータ被取付部22aが、本体部220から径方向外方に突出するように形成されている。このロータ被取付部22aには、固定部材挿通用の孔が形成される。そして、各ロータ被取付部22aは、各ディスク被取付部19aと共に、固定部材41でホイール31に取り付けられている。具体的には、ブレーキディスク19と車速検出用ロータ22とは、それぞれの本体部220の中心軸が同軸となるように重ねられた状態で、ディスク被取付部19aとロータ被取付部22aとが互いに重なった状態に設定され、さらにそれぞれに形成される固定部材挿通用の孔の中心軸が同軸となるように設定される。同様にホイール31には、ブレーキディスク19本体部220と中心軸が同軸となるように重ねられた状態で、固定部材挿通用の孔に対応する位置に固定部材固定用の孔が形成される。
【0022】
固定部材がブレーキディスク19の固定部材挿通用の孔および車速検出用ロータ22の固定部材挿通用の孔を挿通した状態で、ホイール31に固定されることで、ブレーキディスク19及び車速検出用ロータ22とがホイール31に固定される。固定部材は、ボルトのような締結部材によって実現され、ブレーキディスク19及び車速検出用ロータ22をホイール31に押し付けて狭持するためのものである。このようにして車速検出装置20が自動二輪車1に搭載された状態では、固定部材によって固定部材挿通用の孔の周囲で、ディスク被取付部19aとロータ被取付部22aとが互いに圧接された状態に維持される。
【0023】
図4は、車速検出用ロータ22の単体図である。車速検出用ロータ22は、貫通孔22bが形成される本体部220と、上述したロータ被取付部22aと、位置決め突起22cと、を有している。位置決め突起22cは、本体部220の径方向の内周端部から、周方向に間隔をおいて3個以上(本実施形態では等間隔において4個)、本体部220から径方向内方に突出するように形成されている。それぞれの位置決め突起22cは、径方向内方側の先端部と本体部220の中心軸とを結ぶ径方向距離が予め定められた位置決め距離に形成される。本実施形態では、各位置決め突起22cは、内周面が円弧状にそれぞれ形成され、この円弧は、本体部220の中心軸を中心とする仮想円柱の周面に沿ってそれぞれ延びる。
【0024】
図6は、ホイール31、ブレーキディスク19及び車速検出用ロータ22の分解斜視図である。ホイール31は、中心軸から前記位置決め距離を半径とする外周面が形成される環状段部31cが形成される。これによって各位置決め突起22cの内周面と環状段部31cの外周面とが当接することで、車速検出用ロータ22は、本体部220の中心軸がホイール31と同軸となる状態に位置決めされることになる。本実施形態では、位置決め突起22cは、ロータ被取付部22a間に配置されている。具体的には、ロータ被取付部22a間の中央部に形成され、ロータ被取付部22a間の中央位置付近に近づくにつれて径方向の突出量が大きくなる盛上部と、両端の盛上部の間に形成されて前記内周面が形成される位置決め部とが形成される。盛上部が形成されることで応力集中を防ぐとともにロータの補強に寄与する部分を増やすことができる。
【0025】
本体部220に形成される貫通孔22bは、径方向において、ロータ被取付部22aと位置決め突起22cとの間に設けられている。ロータ被取付部22a、本体部220及び位置決め突起22cの板厚はそれぞれ略同じとなっており、両側面がほぼ同一平面となっている。
【0026】
図5は、図4のV−V断面図である。隣り合うロータ被取付部22a間において、補強部となる補強リブ22dが、図5に示すように、車速検出用ロータ22の外周端縁を折り曲げて形成されている。言い換えると、本体部220の径方向の外周端部には、ロータ被取付部22aを除く全領域(隣り合うロータ被取付部22aの間)であって、周方向に間隔をおいて、本体部220から径方向外方に突出するように補強リブ22dが形成されている。補強リブ22dは、本体部220から径方向に離れるとともに、本体部220から厚み方向に離れるように、本体部220から屈曲して形成される。補強リブ22d自体の板厚は、本体部220の板厚とほぼ同様に設定される。補強リブ22dの折り曲げ方向は、側方内方(ホイール31側)であり、折り曲げ角度θ1は45°程度である。また、図4に示すように、ロータ被取付部22aと補強リブ22dとは、その境界Aが滑らかになるよう連続している。境界Aにおける角度θ2は、150°程度である。補強リブ22dの範囲は、ロータ中心O1からの角度θ3で示すと、40°程度である。補強リブ22dは、補強リブ22dの周方向端部(ロータ被取付部22a近傍)では、補強リブ22dの周方向中央部に比べて、折り曲げ量が小さくなっている。すなわち、補強リブ22dは、境界付近では、周方向端部から周方向中央部に向かって、徐々に折り曲げ量が増加するようになっている。また境界付近よりも周方向中央寄りの領域では、径方向の幅寸法および折り曲げ角度が一様となる。ブレーキディスク19と車速検出用ロータ22とが同軸に重ねあわされ、かつディスク被取付部19aの孔とロータ被取付部22aの孔とが同軸に位置決めされた状態で、補強リブ22dは、ディスク被取付部19aが車速検出用ロータ22に重なる領域を除いて形成され、隣接するディスク被取付部19aの間の空間に配置される。これによって、補強リブ22dとブレーキディスク19とが干渉することが防がれる。
【0027】
図6を用いて、ブレーキディスク19及び車速検出用ロータ22の、ホイール31への取り付けを、より具体的に説明する。図6に示すように、ホイール31には、ディスク被取付部19a及びロータ被取付部22aと同数の取付部31aが、ハブ部31bの外周端部に、周方向に間隔をおいて、側方外方に突出するよう形成されている。固定部材41はネジであり、側方外方から順に、ロータ被取付部22aに形成された孔、そして、ディスク被取付部19aに形成された孔を通り、取付部31aに形成されたネジ孔に螺合することによって、ホイール31に、側方内方から順に、ブレーキディスク19、そして、車速検出用ロータ22を取り付けるようになっている。
【0028】
前記構成の車速検出装置20又は車速検出用ロータ22によれば、次のような効果を発揮できる。
【0029】
(1)車速検出用ロータ22をブレーキディスク19と共通の固定部材41によってホイール31に取り付けているので、別々にホイール31に取り付ける場合に比べて部品点数を減らすことができ、自動二輪車1の軽量化を達成することができる。また、ロータ被取付部22a間に補強リブ22dを設けているので、車速検出用ロータ22の剛性を向上させ、車速検出用ロータ22の撓みを防止できる。
【0030】
具体的には、ブレーキ時にパッドとディスクとの摩擦熱が発生することで、ブレーキディスク19は熱膨張が生じる。その後、温度が低下するにつれて膨張状態に対して熱収縮が生じる。このようにしてブレーキディスク19には熱膨張と熱収縮とが繰り返される。ブレーキディスク19のほうが車速検出用ロータ22よりも剛性が高いこと、ブレーキディスク19と車速検出用ロータ22とがディスク被取付部19aとロータ被取付部22aとで面接触固定されることによって、温度変化によるブレーキディスク19の体積変化に伴って、ロータ被取付部22aに引張応力および圧縮応力が生じる。このような応力がロータ被取付部22aに生じることで、ロータ被取付部22a間が撓みやすい状態となる。
【0031】
本実施形態では、このように歪みが生じやすいロータ被取付部22a間について補強リブ22dによって補強することで、車速検出用ロータ22全体の板厚を大きくしたり、剛性の高い材料を用いることなく、撓みが発生しやすい部分について集中的に剛性を高めることができる。これによって、車速検出用ロータ22全体の板厚を大きくする場合に比べて車速検出用ロータ22の軽量化を達成することができる。また、剛性の高い材料を用いる場合に比べて、材料選択の幅を広げることができ安価な材料を用いることができる。また、撓みが生じやすい部分について集中的に補強することで、撓みが生じにくい部分(ロータ被取付部22a)、補強リブ22dによって撓みが防止される部分(本体部220)の板厚を薄くすることができる。このようにして板厚を薄くすることで、撓みを防ぎつつ、車速検出用ロータ22の軽量化を実現することができる。
【0032】
(2)補強リブ22dは、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁を折り曲げて形成されているので、ロータ被取付部22a間のうちでも、とくに撓みが発生しやすい部分について剛性を高めることができ、撓み防止効果を高めることができる。また、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁を折り曲げて補強リブ22dを形成することによって、外周端縁を肉厚化して補強部を形成する場合と比べ、車速検出用ロータ22の軽量化を図ることができる。また、肉厚一定の板材をプレス加工することによって、本実施形態の車速検出用ロータ22を容易に形成できる。
【0033】
(3)補強リブ22dは、側方内方(車速センサー21と反対側)に折り曲げられているので、車速検出用ロータ22の径方向外方に配置される車速センサー21との干渉を防止することができる。また、補強リブ22dの折り曲げ角度は約45°であるので、折り曲げによる車速検出用ロータ22dの剛性向上を達成しながら、車速検出用ロータ22の厚さ(側方方向長さ)の増加量を小さくすることができる。さらに、ディスク被取付部19a間に空間が形成されるので、ブレーキディスク19と補強リブ22dとの干渉を防止できる。
【0034】
(4)補強リブ22dは、周方向端部から周方向中央部に向かって、徐々に折り曲げられる量が増加するようになっているので、無理なく折り曲げられる部分を形成でき、また、応力集中を防ぐことができると共に、周方向中央部で必要な強度を得ることができる。
【0035】
(5)車速検出用ロータ22の径方向の内周端部には、径方向の内方に突出してホイール31の環状段部31cに当接する複数の位置決め突起22cが、周方向に間隔をおいて形成されているので、ホイール31に車速検出用ロータ22が取り付けられると、位置決め突起22cは、環状段部31cに当接するようになっている。したがって、車速検出用ロータ22は、位置決め突起22cと環状段部31cとによって、ホイール31に対して、位置決めされ、且つ、保持されるので、車速検出用ロータ22のホイール31に対する取付性及び取付精度を向上させることができる。さらに、位置決め突起22cがホイール31に面接触することで、車速検出用ロータ22が径方向内側に撓むことを防止できる。
【0036】
(6)車速検出用ロータ22の径方向の内周端部に位置決め突起22cを設けることによって、補強リブ22dの効果に加えて、車速検出用ロータ22の剛性をより向上させることができる。
【0037】
(7)位置決め突起22cは、ロータ被取付部22a間に配置されているので、車速検出用ロータ22のホイール31への取付性及び取付精度を更に向上させる他、車速検出用ロータの剛性向上効果を得ることができる。また、位置決め突起22cは、ロータ被取付部22a間に配置されているので、ロータ被取付部22aの形状に影響を受けることなく、位置決め突起22cを形成することができる。
【0038】
(8)ロータ被取付部22aが、車速検出用ロータ22の径方向の外周端部に、径方向外方に突出するように形成されているので、貫通孔22bをより径方向外方に形成することができる。その結果、貫通孔22b間の周方向間隔を大きくすることができ、車速センサー22による貫通孔22bの検出精度を向上させることができる。また、貫通孔22b間の周方向間隔を大きくすることによって、貫通孔22bの製作性や、車速センサー21の配置の自由度についても、向上させることができる。
【0039】
(9)取付部31aが側方外方に突出するよう形成され、取付部31aにネジ孔が形成されているので、固定部材41であるネジが車速検出用ロータ22から側方外方へ突出する長さを、短くすることができる。
【0040】
(10)車速センサー21によって検出される、車速検出用ロータ22の被検出部が、貫通孔22bであるので、簡単な構成で被検出部を形成することができる。
【0041】
(11)車速検出用ロータ22は、ブレーキディスク19に対して側方外方(車速センサー21側)に配置されているので、車速検出用ロータ22の貫通孔22bを検出する車速センサー21の配置を容易とすることができる。
【0042】
(他の実施形態)
本実施形態では、補強リブ22dは、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁が折り曲げられて形成されているが、他の実施形態として、補強リブは、車速検出用ロータ22の径方向の内周端縁が折り曲げられて形成されても良い。この場合、位置決め突起22cがその他の部分と比べて、折り曲げられたり、厚さ(側方方向長さ)が大きく形成されたりすることによって、位置決め突起22cが補強リブとしての機能を有しても良い。また、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁及び内周端縁の両方に、補強リブが形成されても良い。
【0043】
本実施形態では、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁に補強リブ22dが形成されているので、補強リブ22dは、内周端縁に形成された位置決め突起22cに干渉することはない。したがって、補強リブ22dの設計の自由度を向上させることができ、外周端縁という変形しやすい部分の補強リブ22dを設けることで、車速検出用ロータ22を効果的に補強することができる。
【0044】
一方、車速検出用ロータ22の径方向の内周端縁に補強リブを形成すると、外周端縁に補強リブを形成する場合と比べ、内周端縁の面積が外周端縁の面積より小さいことから、車速検出用ロータ22の軽量化を図ることができる。また、車速検出用ロータ22の径方向の外周端縁及び内周端縁の両方に補強リブを形成すると、車速検出用ロータ22の剛性をより向上させることができ、より撓みを防止できる。
【0045】
本実施形態では、補強リブ22dは、側方内方に折り曲げられて形成されているが、他の実施形態として、補強リブは、ロータ被取付部22a間で、他の部分と比べ、厚さ(側方方向長さ)が大きくなるよう形成されても良い。この場合、車速検出用ロータ22を径方向に大型化することなく、車速検出用ロータの剛性をより向上させることができる。このように補強部は、折り曲げ形状に限定されず、残余の部分に比べて被取付部の間を補強する機能を有するものであれば良い。例えば、折り曲げることで剛性を高めることが効果的であるが、ロータ被取付部22a近傍に比べてロータ被取付部22a間の径方向幅寸法または材質を部分的に異ならせて剛性を高めても良い。
【0046】
本実施形態では、補強リブ22dは、ロータ被取付部22aを除く全領域に配置されているが、ロータ被取付部22a間のうちで撓みが発生しやすい部分(たとえば中央部)にのみ配置される場合も含む。
【0047】
本実施形態では、後輪の車速を検知する必要があるアンチブレーキングシステム(ABS)を搭載する車両について好適に適用できるが、ABSを搭載しない車両にも本発明を適用可能である。また本発明は、ブレーキディスク19の熱変形が大きい後輪3の車速検知装置として設けることが好ましいが、前輪2に設けても良く、車速を検出するための車輪を有する乗物について広く適用できる。
【0048】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の車速検出装置又は車速検出用ロータでは、車速検出用ロータの撓みを防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0050】
1 自動二輪車
2 前輪 3 後輪 4 フロントフォーク 5 ステアリングシャフト
6 ヘッドパイプ 7 ステアリングハンドル 8 車体フレーム
9 スイングアーム 10 ピボットボルト 11 燃料タンク 12 シート
13 エンジン 14 クランクケース 15 ギヤケース 16 ヘッドランプ
17 フロントカウル 18 後車軸
19 ブレーキディスク 19a ディスク被取付部
20 車速検出装置
21 車速センサー
22 車速検出用ロータ 220 本体部
22a ロータ被取付部 22b 貫通孔 22c 位置決め突起 22d 補強リブ
31 ホイール
31a 取付部 31b ハブ部 31c 環状段部
41 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に間隔をおいて複数の被検出部が形成された車速検出用ロータと、前記被検出部に対して車幅方向に隙間をおいて対向配置された車速センサーと、を備えた乗物の車速検出装置において、
前記ロータの径方向の外周端部には、複数のロータ被取付部が、周方向に間隔をおいて形成され、
前記各ロータ被取付部は、ブレーキディスクの径方向内周端部に、周方向に間隔をおいて形成された、各ディスク被取付部と共に、共通の固定部材により、車輪のホイールの取付部に取り付けられ、
前記ロータには、隣り合う前記ロータ被取付部間に補強部が形成されていることを特徴とする、乗物の車速検出装置。
【請求項2】
前記補強部は、前記ロータの径方向の外周端縁を折り曲げて形成されている、請求項1記載の乗物の車速検出装置。
【請求項3】
前記ロータの径方向の内周端部には、径方向の内方に突出して前記ホイールの環状段部に当接する複数の位置決め突起が、周方向に間隔をおいて形成されている、請求項1又は2に記載の乗物の車速検出装置。
【請求項4】
前記位置決め突起は、前記ロータ被取付部間に配置されている、請求項3に記載の乗物の車速検出装置。
【請求項5】
周方向に間隔をおいて複数の被検出部が形成され、
径方向の外周端部には、複数のロータ被取付部が、周方向に間隔をおいて形成され、
前記各ロータ被取付部は、ブレーキディスクのディスク被取付部と共に、共通の固定部材により、車輪のホイールの取付部に取り付けられ、
隣り合う前記ロータ被取付部間に補強部が形成されていることを特徴とする、乗物の車速検出用ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−76645(P2012−76645A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224941(P2010−224941)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】