説明

乗用型水田作業機

【課題】デフロックペダルの踏み込みで操作具が位置変更されることを避けながら操作具を格納位置から作用位置に位置変更した際のデフロック状態の確認を簡単にする。
【解決手段】操作具60とデフロックペダル45とを連係する連係機構70を備え、連係機構70に、操作具60の格納位置から作用位置への位置変更に伴ってデフロックペダル45がデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢に姿勢変更されるように操作具60の位置変更操作をデフロックペダル45に伝達し、かつ、デフロックペダル45のデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更操作が操作具60を格納位置から作用位置へ位置変化させる方向の操作として伝わらないようにする一方向伝達機構80を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部箇所に、格納位置と、その格納位置よりも機体前方側へ移動して地上から操作可能な作用位置とに操作位置を変更可能な操作具を備え、その操作具よりも後方側に運転座席、ならびにデフロックペダルを配設してある乗用型水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように操作具及びデフロックペダルを備えた乗用型水田作業機としては、次のような構造のものが知られている。
すなわち、走行機体の前部に備えた操作具を、機体前部で起立した格納位置と、その格納位置よりも前方側に移動して地上から操作可能な作用位置とに位置変更可能に構成してあるとともに、デフロックペダルも踏み込まれたデフロック作用姿勢と、踏み込み解除されたデフロック解除姿勢とに姿勢切換可能に構成してあり、かつ、前記操作具を格納位置から作用位置に位置変更するに伴って前輪デフ機構をデフロック状態とするように構成してある。そして、この構造では、前記操作具を格納位置から作用位置に位置変更した際に、前輪デフ機構はデフロック状態にしてもデフロックペダルの姿勢は変化させず、また、デフロックペダルを踏み込んでデフロック作用姿勢にしても、操作具の位置は変化させないようにする手段を備えている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178122号公報(段落〔0076〕、〔0081〕、図7、図8、図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構造のように、操作具を格納位置から作用位置に位置変更してもデフロックペダルの姿勢は変化させず、デフロックペダルを踏み込んでデフロック作用姿勢にしても操作具の位置が変化しないようにする手段を備えたものでは、デフロックペダルの踏み込み操作の都度、操作具が位置変更されない点では有用である。しかしながら、この構造では、操作具を格納位置から作用位置に位置変更した際には、操作具に作用する操作負荷の大小の度合いからデフロックが効いているのかどうかを判断しなければならず、デフロック状態の確認が簡単に行い難いという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、デフロックペダルの踏み込み操作の都度、操作具が位置変更されてしまうような不具合を避けながら、操作具を格納位置から作用位置に位置変更した際におけるデフロック状態の確認を簡単に行なえるようにした乗用型水田作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0007】
〔解決手段1〕
解決手段1にかかる発明では、走行機体の前部箇所に、格納位置と、その格納位置よりも機体前方側へ移動して地上から操作可能な作用位置とに操作位置を変更可能な操作具を備え、その操作具よりも後方側に運転座席、ならびにデフロックペダルを配設してある乗用型水田作業機であって、
前記デフロックペダルを、踏み込み操作によってデフロック状態となるデフロック作用姿勢と、踏み込み解除に伴ってデフロック状態が解除されるデフロック解除姿勢とに姿勢切換可能に構成し、前記操作具と前記デフロックペダルとを連係する連係機構を備えるとともに、
前記連係機構に、前記操作具の格納位置から作用位置への位置変更に伴って前記デフロックペダルがデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢に姿勢変更されるように操作具の位置変更操作をデフロックペダルに伝達し、かつ、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更操作が操作具を格納位置から作用位置へ位置変化させる方向の操作として伝わらないようにする一方向伝達機構を備えさせてあることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる発明によると、操作具とデフロックペダルとを連係する連係機構中に、前記一方向伝達機構が備えられていることにより、デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更操作が操作具を格納位置から作用位置へ位置変化させる方向の操作として伝わらないようにしながら、操作具の格納位置から作用位置への位置変更に伴ってデフロックペダルがデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢に姿勢変更されるように、操作具の位置変更操作をデフロックペダルに伝達することができる。
【0009】
したがって、デフロックペダルの踏み込み操作の都度、操作具が位置変更されるような不具合を回避できる点で有用であり、しかも、操作具を格納位置から作用位置に位置変更すると、これに伴ってデフロックペダルがデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢に姿勢変更されるので、そのデフロックペダルの姿勢変化を目視することでデフロック状態であることを簡単に判別することが可能となる利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記一方向伝達機構は、前記操作具の位置変更操作に連動して作動する第1操作伝達部材と、前記デフロックペダルの姿勢変更操作に連動して作動する第2操作伝達部材とを備え、
前記操作具による格納位置から作用位置への位置変更操作に伴う第1操作伝達部材の作動方向と、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更に伴う第2操作伝達部材の作動方向とが同方向となるように、前記第1操作伝達部材と前記操作具、及び前記第2操作伝達部材と前記デフロックペダルとを連係してあり、
前記操作具による格納位置から作用位置への位置変更操作に伴って前記第1操作伝達部材が前記第2操作伝達部材に接当して前記位置変更操作を前記第2操作伝達部材に伝達し、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更に伴って、前記第2操作伝達部材が前記第1操作伝達部材から離れる側に移動して前記姿勢変更操作が前記第1操作伝達部材に伝達されないように構成してあるということである。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段2にかかる発明によると、操作具の格納位置から作用位置への位置変更操作による第1操作伝達部材の作動方向と、デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更による第2操作伝達部材の作動方向とが同方向であり、操作具が格納位置から作用位置へ位置変更される操作で、第1操作伝達部材が第2操作伝達部材を押して、デフロックペダルを強制的にデフロック作用姿勢に姿勢変化させることができる。
そして、デフロックペダルがデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢へ姿勢変更される操作では、第2操作伝達部材が第1操作伝達部材から離れて行く方向に作動するので、第1操作伝達部材には第2操作伝達部材の操作が伝達されず、操作具の無用な動きを生じさせることがない。
したがって、操作具とデフロックペダルとの操作に連動する第1操作伝達部材と第2操作伝達部材との作動方向と作動範囲を工夫する程度の簡単な構造で、前記一方向伝達機構を構成することができる利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記連係機構は、走行機体の機体一側方に沿って前後方向に配設された前後方向連係部材と、前記前後方向連係部材の後端部から前記前後方向連係部材が配設された側とは反対側の機体他側方に向けて延設された左右方向連係部材とを備え、前記前後方向連係部材の前端側に前記操作具を連係させてあり、前記左右方向連係部材の前記前後方向連係部材が配設された側とは反対側の端部に前記デフロックペダルを連係させてあるということである。
【0013】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3にかかる発明によると、前記連係機構は、前部の操作具とそれよりも後方側のデフロックペダルを連係させるように、単に前後方向に延設されただけのものではなく、機体一側方に沿って前後方向に配設された前後方向連係部材と、その前後方向連係部材の後端部から機体他側方に向けて延設された左右方向連係部材とが組み合わせられたものであるから、デフロックペダルを前後方向連係部材の後端部近くに配設しなければならないという制約がない。
したがって、デフロックペダルの配設位置に関して、操縦部周りに配設される他の機器との配設位置の取り合いを考慮しながら設計上の自由度を高め易くなる利点がある。
【0014】
〔解決手段4〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記連係機構の前後方向連係部材は、前車軸ケースの上側を通るように配設されているということである。
【0015】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段4にかかる発明によると、前後方向連係部材が前車軸ケースよりも上側に配設されているため、前車軸ケースが前後方向連係部材の下側を保護する役割を果たし、前後方向連係部材が畦と接触したり、前後方向連係部材に圃場の夾雑物が絡み付くなどの虞が少なくなる点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】乗用型田植機の全体正面図
【図4】乗用型田植機の前部を示す一部切り欠き側面図
【図5】操作具とデフロックペダルとの連係機構を示す平面図
【図6】操作具とデフロックペダルとの連係機構を示す側面図
【図7】ミッションケース及び前車軸ケースの水平方向での断面図
【図8】図5におけるVIII-VIII線断面図
【図9】一方向伝達機構を示す一部切り欠き平面図
【図10】一方向伝達機構を示す分解斜視図
【図11】連係機構の作動状態を示す説明図
【図12】連係機構の作動状態を示す説明図
【図13】ブレーキペダルと変速装置との連係関係を示す平面図
【図14】ブレーキペダルと変速装置との連係関係を示す側面図
【図15】ブレーキペダルと変速装置との連係関係を示す側面図
【図16】ブレーキペダルと変速装置との連係関係を示す側面図
【図17】別実施形態における操作具とデフロックペダルとの連係機構を示す側面図
【図18】別実施形態における操作具とデフロックペダルとの連係機構を示す側面図
【図19】別実施形態における操作具とデフロックペダルとの連係機構を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型田植機の全体構成〕
図1〜図3に基づいて乗用型水田作業機の全体構成について説明する。図1は、乗用型水田作業機の一例である乗用型田植機の全体を示す側面図であり、図2は、乗用型田植機の全体平面図であり、図3は、乗用型田植機の全体正面図である。
図1〜図3に示すように、右及び左に操向操作自在な前輪1及び後輪2で支持された機体に、運転座席3を備えた運転部4が配置されている。機体の後部に平行4連式のリンク機構5を介して4条植え仕様の苗植付装置6が昇降自在に連結されており、リンク機構5を昇降駆動する油圧シリンダ7が備えられて、乗用型田植機が構成されている。
【0018】
苗植付装置6は所定のストロークで往復横送り駆動される苗のせ台8、植付伝動ケース9、植付伝動ケース9の後部で左右両側部に植付アーム10が上下揺動自在に支持され、植付アーム10に支持された一対の植付爪11、及び複数のフロート12等を備えて構成されており、植付アーム10の上下揺動によって、植付爪11が苗のせ台8の下部から苗を取り出して田面に植え付けるように構成されている。
【0019】
運転座席3の前側、運転座席3の右側及び左側に亘ってフロア13が形成されて、フロア13の前部にエンジンEが配置されている。エンジンEを覆う開閉式の前部ボンネット14、及びエンジンEの後部に配置された後部ボンネット15が備えられており、前輪1を右及び左に操向操作する操縦ハンドルHが後部ボンネット15上のパネル部16に配置されている。
【0020】
前部及び後部ボンネット14,15の右側部及び左側部にステップ部17が配置されて、フロア13に右側及び左側のステップ部17がつながるように構成されている。右側及び左側のステップ部17の右側部及び左側部には、それぞれ予備苗のせ台18が配設されている。
【0021】
〔乗用型田植機の伝動構造〕
図1〜図7に基づいて乗用型田植機の伝動構造について説明する。図4は乗用型田植機前部の側面図であり、図5は操作具としての畦越えアーム60とデフロックペダル45との連係構造等を示す平面図であり、図6は畦越えアーム60とデフロックペダル45とを連係する連係機構70を示す側面図、図7はミッションケース20及び前車軸ケース21の水平方向の断面図である。
【0022】
図1、図4、及び図7に示すように、後部ボンネット15の後側の下側にミッションケース20が配置され、ミッションケース20から左右に前車軸ケース21が延出されて、右側及び左側の前車軸ケース21の端部に右側及び左側の前輪1が操向自在に支持されている。機体後部側には、後車軸ケース23が連結されて、右側及び左側の後車軸ケース23の端部に右側及び左側の後輪2が支持されている。
【0023】
前進側及び後進側に無段階に変速自在な静油圧式無段変速装置24が、ミッションケース20上部の左側面に連結されており、エンジンEの動力がベルト伝達機構25を介して静油圧式無段変速装置24に伝達され、静油圧式無段変速装置24から出力される変速動力が前記ミッションケース20に入力されるように構成してある。ベルト伝達機構25にはテンションプーリ26が装備されている。
【0024】
ミッションケース20の内部には、図示しないブレーキ装置が内装されている。このブレーキ装置は、フロア13の右側(後部ボンネット15の右側)に配設したブレーキペダル27を踏み込むことによって制動状態となり、踏み込みを解除することで制動が解除されるように、図13に示すブレーキペダル27の枢支軸部27aに固定されたアーム27bの回動でブレーキロッド27cを介してブレーキ操作軸27dを回動操作し、左右の前輪1及び後輪2に制動を掛けることができるように構成してある。
前記ブレーキペダル27には、手動で操作可能な操作レバー19が一体に設けられていて、地上に降りた作業者が後述する畦越えアーム60を操作する際などに、機体の前方側からブレーキ操作を行うこうとが可能であるように機体前方側へ延設されている。
【0025】
図7に示すように、左右の前車軸ケース21に内装されている左右の前車軸32,32のうちの一方の前車軸32に相対回転自在に外嵌させてある筒軸33の一端側に、入力用ギヤ34が、スプライン構造により一体回転可能に外嵌されていて、この入力用ギヤ34に対してミッションケース20内の動力が伝達されるように、伝動上流側の伝動軸30に備えられた伝動ギヤ31が咬合している。そして、前記筒軸33の他端側には、出力用のベベルギヤ35がスプライン構造により一体回転可能に外嵌され、そのベベルギヤ35に咬合する動力取り出し用のベベルギヤ36を一体回転可能に備えた後輪伝動軸37が装着され、後車軸ケース23に内装されている後輪駆動軸(図外)に後輪駆動用の動力を伝達するように構成されている。
したがって、ミッションケース20の内部に設けられたブレーキ装置によって前記伝動上流側の伝動軸30に伝えられる動力が制動されていると、前車軸32に外嵌させてある筒軸33の入力用ギヤ34を介して、筒軸33、前輪デフ機構40のベベルケース40a、及び後輪伝動軸37も制動され、前輪1及び後輪2に制動を掛けることができる。
【0026】
前記ブレーキペダル27には、図示しない戻しバネが装備されており、ブレーキペダル27は踏み込み解除側である上方側に付勢されている。
図13乃至図16に示すように、ブレーキペダル27の枢支軸部27aの左側端部には、操作アーム28が固定されており、その操作アーム28に隣接して、中立戻し板29が前記枢支軸部27aに対して相対回動自在に装着されている。前記中立戻し板29には、上下一対の円弧状の長孔29a,29aが形成してあり、この上下の長孔29a,29a内でそれぞれ摺動自在なピン53aを備えた駒部材53,53を介して操作ロッド52,52が連結され、この操作ロッド52,52の他端側が静油圧式無段変速装置24を操作する操作体51に連結されている。
前記操作体51は、前記操作ロッド52,52が連結された三角形状の板体51aと、前記静油圧式無段変速装置24及び後述する変速操作レバー55への連係ロッド54が連結されるベルクランク状の板体51bとが機体側の固定位置に回動自在に枢支された横軸56に連結されて横軸芯p1周りで揺動自在に枢支されている。
この操作体51が前記ブレーキペダル27及び前記静油圧式無段変速装置24に連係されていることで、ブレーキペダル27の踏み込み操作に連動して静油圧式無段変速装置24を中立側へ戻し操作する中立戻し機構50としての役割を果たすように構成されている。
【0027】
すなわち、中立戻し機構50は、前記ブレーキペダル27の枢支軸部27aに固定された操作アーム28、中立戻し板29、駒部材53、操作ロッド52、及び操作体51などによって構成してある。前記操作アーム28は遊端側の部分が中立戻し板29側に屈曲形成されたL字状の部材によって構成してあり、ブレーキペダル27を踏み込むと前記中立戻し板29に係合して中立戻し板29を前記枢支軸部27aの軸芯p2周りで反時計回りに回動させるように構成してある。
前記操作体51は、連係ロッド54を介して変速操作レバー55に連係させてあり、変速操作レバー55の回動軸芯p3周りの操作位置に応じて静油圧式無段変速装置24を変速操作するように構成されているとともに、この操作体51の位置が変更されることによって前記連係ロッド54を介して変速操作レバー55の位置を変更することが可能であるように連係されている。
【0028】
したがって、図15に示すように、変速操作レバー55が前進位置Fに操作されている状態でブレーキペダル27を踏み込むと、前記操作アーム28が前記中立戻し板29に係合して中立戻し板29を前記枢支軸部27aの軸芯p2周りで反時計回りに回動させる。このとき、操作体51に連結されている下方側の操作ロッド52は、中立戻し板29の下方側の長孔29aの図中左端にピン53aが位置する状態で駒部材53と連結されているので、中立戻し板29の反時計回りの回動に伴って下方側へ引かれ、これに連結されている操作体51を横軸芯p1周りで反時計回りに回動操作する。前記操作体51に連結されている上方側の操作ロッド52は、前記中立戻し板29の上方側の長孔29aの図中左端にピン53aが位置する状態で駒部材53と連結されていて、中立戻し板29の反時計回りの回動に伴って前記駒部材53の左端のピン53aが長孔29a内を相対的に右側に移動するので、中立戻し板29の反時計回りの回動を妨げない。
その結果、操作体51の反時計回りの回動によって、前記変速操作レバー55が回動軸芯p3周りに回動して図14に実線で図示された中立位置Nに戻し操作されるとともに、静油圧式無段変速装置24も中立状態に戻し操作される。
【0029】
また、図16に示すように、変速操作レバー55が後進位置Rに操作されている状態でブレーキペダル27を踏み込むと、前記操作アーム28が前記中立戻し板29に係合して中立戻し板29を前記枢支軸部27aの軸芯p2周りで反時計回りに回動させる。
このとき、操作体51に連結されている下方側の操作ロッド52は、中立戻し板29の下方側の長孔29aの図中右端にピン53aが位置する状態で駒部材53と連結されているので、中立戻し板29の反時計回りの回動に伴って前記駒部材53の右端のピン53aが長孔29a内を相対的に左側に移動した状態となる。
前記操作体51に連結されている上方側の操作ロッド52は、前記中立戻し板29の上方側の長孔29aの図中右端にピン53aが位置する状態で駒部材53と連結されていて、中立戻し板29の反時計回りの回動に伴って前記駒部材53の右端のピン53aが長孔29aの右端に押されて左側へ押され、操作ロッド52を介して操作体51を横軸芯p1周りで時計回りに回動させる。
その結果、操作体51の時計回りの回動によって、前記変速操作レバー55が図14に実線で図示された中立位置Nに戻し操作されるとともに、静油圧式無段変速装置24も中立状態に戻し操作される。
【0030】
〔デフロック機構〕
前輪デフ機構40は、図7に示されるように、前記出力用のベベルギヤ35に連動連結されたベベルケース40aと、ベベルケース40aに自由回転自在に支持された複数のベベルギヤ40bと、複数のベベルギヤ40bに亘って咬合する一対のベベルギヤ40cとを備えて構成されている。
右側及び左側の前輪1に動力を伝達する右側及び左側の前車軸32がベベルケース40aに挿入され、右側及び左側の前車軸32が、スプライン構造により一体回転可能にベベルギヤ40cに内嵌されている。これにより、ミッションケース20側からの伝達動力が、入力用ギヤ34、筒軸33、及び前輪デフ機構40を介して、右側及び左側の前輪1に伝達される。
【0031】
図7に示すように、右側の前車軸32には、デフロック用のロック部材42がキー構造より一体回転可能でかつスライド自在に外嵌されている。このロック部材42の前記入力用ギヤ34に対向する面に係合部42aを形成してあり、前記入力用ギヤ34の前記ロック部材42と対向する面にも前記係合部42aと噛み合う係合部34aを形成してある。そして、ロック部材42と筒軸33の入力用ギヤ34を装備した側の端部とに亘って、ロック部材42が入力用ギヤ34の側面から離れるように図7の紙面右方に付勢するコイルバネ44が装着されている。
これにより、コイルバネ44の付勢力に抗してロック部材42を図7の紙面左方にスライド操作して、その係合部42aを入力用ギヤ34の係合部34aに咬合させると、入力用ギヤ34に咬合したロック部材42は、前述したように右側の前車軸32にキー構造で一体化されていて、筒軸33と一体回動するベベルケース40aと前車軸32とが相対回動しなくなり、前輪デフ機構40がデフロック状態となる。つまり、上記ロック部材42、入力用ギヤ34、筒軸33、ベベルケース40a等によってデフロック機構41が構成されている。
一方、コイルバネ44の付勢力によってロック部材42を図7の紙面右方にスライド操作して入力用ギヤ34の係合部34aから離間させると、前輪デフ機構40がデフ作動状態(デフロック解除状態)となる。
【0032】
前記デフロック用のロック部材42は、ミッションケース20に形成されたボス部に、回転自在に支持されている操作軸43によって、デフロック状態とデフロック解除状態とに切換可能に構成されている。
すなわち、前記操作軸43のミッションケース20の内部側の端部において、操作軸43の回転軸心から偏芯した断面円形の突起部43aが備えられ、突起部43aがロック部材42の前記係合部42aの裏面側に接当している。
【0033】
これにより、通常は、コイルバネ44の付勢力によってロック部材42が図7の紙面右方にスライド操作されて、ロック部材42が入力用ギヤ34の係合部34aから離間し、前輪デフ機構40がデフ作動状態となる。一方、操作軸43が回転操作されて、ロック部材42が図7の紙面左方にスライド操作されると、ロック部材42が入力用ギヤ34の係合部34aに咬合し、前輪デフ機構40がデフロック状態となる。
【0034】
前記操作軸43は、図5乃至図8に示すようにデフロックペダル45の操作に連係して作動するように構成されている。
すなわち、デフロックペダル45を支持する回転軸部46に操作アーム46aが一体回動するように連設してあり、前記操作軸43のミッションケース20外への突出部分にも操作軸43の外周側へ突出する操作片43bが設けてあり、前記操作アーム46aの遊端側と前記操作片43bの遊端側とを連係ロッド47を介して連結してあり、デフロックペダル45の踏み込み操作に伴って前記操作軸43がデフロック操作側に操作され、デフロックペダル45の踏み込み解除に伴って前記操作軸43がデフロック解除側に操作されるように連動連結されている。
【0035】
前記デフロックペダル45は、図5及び図8に示すように構成されている。
すなわち、左右の車体フレームF1,F1を貫通する杆状の部材の右端側を上方側に折り曲げてアーム部45bを形成し、そのアーム部45bの遊端側に踏面45aを備え、このアーム部45bと踏面45aとによってデフロックペダル45が構成されている。
車体フレームF1,F1を貫通する杆状の部材の直線状の部分は、アーム部45bを機体左右方向の回転軸芯x1周りで揺動作動させるように支持する前記回転軸部46を構成しており、アーム部45bの遊端側に備えられた踏面45aは、運転部4のフロア13の上側に露出するように設けてある。
前記回転軸部46には、図5に示すように、デフロックペダル45をデフロック解除側へ付勢する復帰バネ46bが装着されていて、デフロックペダル45の踏み込み操作が解除されるとデフロックペダル45をデフロック解除側へ復帰させるように構成してある。
上記デフロックペダル45は、地上に降りた作業者が畦越えアーム60を握った状態で機体前方側から見える位置に配設されている。
【0036】
〔操作具〕
図1乃至図5に示すように、走行機体の前部には、機体前方側から人為的に操作可能な畦越えアーム60(操作具に相当する)が装備されている。この畦越えアーム60は、後述する横軸芯x2周りで下方側へ押し下げるように回動させて機体前方側へ延出された状態にして、畦越え作業などの際に機体前部が浮き上がらないように機体前部に体重を掛けて押し下げ操作する場合などに用いるものである。
この畦越えアーム60は、左右に長い握り部60Aと、上下に長いアーム状のアーム部60Bとを備えて、丸パイプ材により一体的に形成されている。そして、機体の前部で起立し機体側に格納した格納位置Aと、その格納位置Aから前方に揺動した倒伏姿勢で、機体から降りた作業者が地上から操作可能な作用位置Bとに位置変更可能に構成してある。これによって、前記作用位置Bでは、握り部60Aを片手又は両手で握って機体前方から乗用型田植機を操作できるように構成されている。
【0037】
前記畦越えアーム60は、エンジン搭載用の前部フレームF2の前端側位置で、横軸芯x2周りで上下揺動自在に枢着してあり、エンジンEを覆う開閉式の前部ボンネット14よりも前方側に位置させてある。
この畦越えアーム60は、格納位置Aにおいて上端が前部ボンネット14及び後部ボンネット15よりも上方側で、操縦ハンドルHの上面よりも下方側に位置し、左右方向幅が、前部ボンネット14及び後部ボンネット15の左右方向幅よりも幅狭であるように形成されている。
【0038】
畦越えアーム60の基端側では、長いアーム部60Bの左側端部に、前記横軸芯x2を挟んでアーム部60Bとは反対側の後方側へ延出された連結用アーム部61を、畦越えアーム60の前記横軸芯x2周りでの揺動に伴って一体に作動するように設けてあり、この連結用アーム部61に、畦越えアーム60を前記デフロックペダル45と連係させるための連係機構70を連結してある。
尚、畦越えアーム60は、図3及び図5に示すように、圧縮バネ62を用いて任意の操作位置で摩擦保持可能に構成されているが、これに代えて、適宜係合保持手段を用いるなどして、前記格納位置A及び作用位置Bを含む複数の位置で係止させて固定できるように構成してもよい。
【0039】
〔連係機構〕
図5及び図6に示すように、前記畦越えアーム60とデフロックペダル45とを連係する連係機構70は、走行機体の左側の横側方に沿って前後方向に配設された前後向き連係ロッド(前後方向連係部材に相当する)71と、その前後向き連係ロッド71が配設された側とは反対側の機体他側方に向けて左右向きに延設された前記回転軸部(左右方向連係部材に相当する)46と、これらの前後向き連係ロッド71及び回転軸部46を連係作動させる一方向伝達機構80とを備えて構成されている。
【0040】
前記前後向き連係ロッド71は、前端側を機体中央側に屈曲させて前記畦越えアーム60の連結用アーム部61に形成されている連結用孔に挿入して係止してある。後端側は図8及び図9に示すように、この前後向き連係ロッド71の後端部に巻回したストローク吸収用のバネ72の後端側を止め板73で位置決めし、前記バネ72の前端側で前後向き連係ロッド71に対して前後移動自在に外嵌させた摺動操作体81を介して一方向伝達機構80に連係させてある。
【0041】
前後向き連係ロッド71は、図1、及び図4乃至図6に示すように、側面視では僅かな屈曲はあるがほぼ直線的に形成してあり、平面視ではほぼ直線的な前後向き連係ロッド71の前端側が機体中央側に向けて斜め前方内側に屈曲した形状にして、その前端側を前記畦越えアーム60の連結用アーム部61に連結してある。
この前後向き連係ロッド71は、図1、4、及び図5に示すように、ステップ部17及びフロア13の下方側で、前車軸ケース21の上側を通り、かつ静油圧式無段変速装置24よりも下方側で、静油圧式無段変速装置24への入力プーリ24aの横外側に位置するように配設されている。
【0042】
前記デフロックペダル45と連係する回転軸部46は、図1、2、5、及び図8に示すように、フロア13の下方側で左右の車体フレームF1,F1を貫通し、右側の車体フレームF1の外側で後方上方側に向けてデフロックペダル45のアーム部45bが一体形成されている。回転軸部46の左側端部では、左側の車体フレームF1の外側に突出した部分に一方向伝達機構80が装着されている。
この回転軸部46は、一方向伝達機構80が装着された左側よりも、デフロックペダル45のアーム部45bが装備される右側が、車体フレームF1からの突出量が少ない状態で取り付けてある。
【0043】
〔一方向伝達機構〕
前記デフロックペダル45の踏面45aが設けられた側とは反対側の回転軸部46の端部には、デフロックペダル45の踏み込み及び踏み込み解除による姿勢変更操作と、前記畦越えアーム60の位置変更操作とを連係させるための連係機構70の途中で、畦越えアーム60の位置変更操作をデフロックペダル45に伝達し、デフロックペダル45のデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更操作を畦越えアーム60側には伝えないようにするための一方向伝達機構80が装着されている。
【0044】
この一方向伝達機構80は、図8乃至図10に示すように、回転軸部46の端部に固定された揺動操作体(第2操作伝達部材に相当する)82と、前記前後向き連係ロッド71の後端側に摺動自在に装着された摺動操作体(第1操作伝達部材に相当する)81とから構成してあり、摺動操作体81に設けたピン83が揺動操作体82に形成されている長孔84に係入して相対移動可能に構成されている。
【0045】
前記揺動操作体82は、左右両側のガイド板部85a,85aと、その左右のガイド板部85a,85a同士を上部側で接続する接続板部85bとを備えて、コの字状に屈曲された板材85で構成してあり、前記接続板部85bに近い箇所の左右のガイド板部85a,85aを前記回転軸部46が貫通するように取付孔85cが形成してある。また、ガイド板部85a,85aのうちで前記接続板部85bから遠い側は、接続板部85bに近い側よりも前後方向で幅広に形成してあって、その幅広の部分に前後方向の直線状の長孔84が形成されている。
この長孔84は、図11に示すようにデフロックペダル45を、デフロック解除姿勢の実線の状態からデフロック作用姿勢となる仮想線の状態に踏み込んだときに、回転軸部46と一体回動する揺動操作体82が摺動操作体81のピン83を前方側へ押さずにデフロックペダル45がデフロック作用姿勢となることを許し得る長さを有している。
【0046】
前記摺動操作体81は、平面視L字状に屈曲された板材からなる取付板部86の前記揺動操作体82に対向する側の面に、その揺動操作体82の長孔84に係入するピン83を突設することにより構成してある。
取付板部86の前記ピン83を突設していない側の板面には、前記前後向き連係ロッド71の後端部を挿通可能な孔86aを形成してあって、摺動操作体81が前後向き連係ロッド71の長さ方向に沿って摺動自在に嵌入させてあり、一方向伝達機構80を前後向き連係ロッド71に対して装着させるための部材を兼用するように構成してある。
前後向き連係ロッド71の後端側の端部に止めピン74によって抜け止め状態に装着された止め板73と、前記取付板部86の前記前後向き連係ロッド71の後端部を挿通可能な孔86aを形成してある面との間でストローク吸収用のバネ72を挟み込むように、前記取付板部86の前側も止めピン74で係止してある。
【0047】
上記のように構成された一方向伝達機構80は、図6に示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されていないデフロック解除姿勢にあり、畦越えアーム60が起立した格納位置Aにある状態から、図12に示すように、畦越えアーム60を実線で示すように作用位置Bに押し下げると、横軸芯x2周りで反時計回りに回動する連結用アーム部61が前後向き連係ロッド71を前方側へ引き操作する。
これにともなって、一方向伝達機構80の摺動操作体81におけるピン83が長孔84の前端側に接当して前方側へ移動すると、揺動操作体82が回転軸芯x1周りで時計回りに回動し、デフロックペダル45が図12で仮想線の状態から実線で示すデフロック作用姿勢に姿勢変更される。同時に回転軸部46の回転にともなって操作アーム46aが時計回りに一体回動し、連係ロッド47を介してデフロック操作用の操作軸43がデフロック作用側へ回転操作され、ロック部材42が入力用ギヤ34に咬合して前輪デフ機構40がデフロック状態となる。
【0048】
また、図6に示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されていないデフロック解除姿勢にあり、畦越えアーム60が起立した格納位置Aにある状態から、図11に示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されて図中仮想線に示すようにデフロック作用姿勢となった場合には、デフロックペダル45と一体に回動する回転軸部46の左側端部に装着されている一方向伝達機構80の揺動操作体82が回転軸芯x1周りで時計回りに回動する。
このとき、図11で実線で描かれたデフロック解除姿勢では、一方向伝達機構80の摺動操作体81におけるピン83が、揺動操作体82の長孔84内での前端近くに位置しているので、デフロックペダル45の踏み込みに伴って揺動操作体82が回転軸芯x1周りで時計回りに回動しても、相対的に摺動操作体81のピン83が揺動操作体82の長孔84内を前端側から後端側へ移動するように姿勢変化するだけで、揺動操作体82の回転が摺動操作体81のピン83を移動させる作用としては機能しないので、デフロックペダル45の姿勢が変化してデフロック作用姿勢となるだけで、畦越えアーム60は起立した格納位置Aに維持されたままである。
【0049】
つまり、上記の一方向伝達機構80では、操作具としての畦越えアーム60の位置変更操作に連動して作動する第1操作伝達部材としての摺動操作体81に設けたピン83の作動方向と、第2操作伝達部材としての揺動操作体82に形成されている長孔84の長さ方向とが同方向(必ずしも同じ方向という意味ではなく、逆方向もしくは直交方向ではなくて、ほぼ沿う方向を意味する)となるように形成されている。
したがって、デフロックペダル45のデフロック作用姿勢への姿勢変化に伴う揺動操作体82に形成されている長孔84が、摺動操作体81に設けたピン83の作動方向における移動範囲と重複する範囲で作動するとき、つまり、畦越えアーム60側ではなくデフロックペダル45を踏み込んでデフロック作用姿勢にしたときには、上述のように揺動操作体82の回転が摺動操作体81のピン83を移動させる作用としては機能せず、畦越えアーム60にデフロックペダル45の操作が伝わらない。
逆に、畦越えアーム60を起立した格納位置Aから前倒しした作用位置Bに操作したときには、摺動操作体81に設けたピン83が揺動操作体82に形成されている長孔84の前端側から前方側へ移動するので、揺動操作体82を回転させてデフロックペダル45をデフロック作用姿勢に操作する。
【0050】
〔別実施形態の1〕
前記畦越えアーム60とデフロックペダル45とを連係する連係機構70、及び一方向伝達機構80としては、上記した実施形態に示す構造に限らず、例えば図17乃至図19に示すように構成してもよい。
すなわち、この実施形態では、走行機体の右側に配設されたデフロックペダル45を、走行機体の右側の横側方に沿って前後方向に配設された前後向き連係ロッド(前後方向連係部材に相当する)71を介して畦越えアーム(操作具に相当する)60の右側に連結している。この構造では、図19に示すように、左右向きに延設された回転軸部(左右方向連係部材に相当する)46が短いので、この回転軸部46も走行機体の右側に位置している。
【0051】
この構造では、デフロックペダル45と一体に回動する回転軸部46に、操作アーム46aが一体回動するように装着され、その操作アーム46aとデフロック操作用の操作軸43の外周側に突出する操作片43bとを連係ロッド47で連結してある点では前記実施形態のものと同様である。
【0052】
この実施形態における一方向伝達機構80は、前後向き連係ロッド71に取り付けられる部材が前後向き連係ロッド71に対して相対的に摺動するものではなく、揺動操作体(第1操作伝達部材に相当する)82を回動自在に支持する支持体75によって構成されている。
前記支持体75は、平面視コの字状に形成され、前後向き連係ロッド71の長手方向に沿う面にピン75aが装着され、その長手方向に沿う面に直交する前後の面を前後向き連係ロッド71が貫通する状態で前後向き連係ロッド71に固定されている。
揺動操作体82は、デフロックペダル45の踏み込み操作に連動して揺動作動するのではなく、機体側の適所に固定された枢支軸48に揺動自在に枢着されていて、かつ前記支持体75のピン75aによってピン連結されている。また、この揺動操作体82には、この揺動操作体82と前記操作軸43の操作片43bとを連係する第2連係ロッド(第2操作伝達部材に相当する)87が係入するための長孔84を備えている。
これによって、前記操作軸43の操作片43bには、デフロックペダル45の回転軸部46に設けられた操作アーム46aと連係する連係ロッド47と、一方向伝達機構80の揺動操作体82と連係する第2連係ロッド87との両者が連係されている。
【0053】
したがって、図17に仮想線で示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されていないデフロック解除姿勢にあり、畦越えアーム60が起立した格納位置Aにある状態から、同図に実線で示すように、畦越えアーム60を作用位置Bに押し下げると、横軸芯x2周りで反時計回りに回動する連結用アーム部61が前後向き連係ロッド71を前方側へ引き操作する。
これにともなって、一方向伝達機構80の支持体75におけるピン75aが揺動操作体82の下端側を前方側へ引き操作し、揺動操作体82が図18に示す状態から前記枢支軸48周りで図中時計回りに回動して図17に示すように姿勢変化する。
このとき、操作軸43の操作片43bに連係された第2連係ロッド87は、揺動操作体82の長孔84の下端側に接当して押し上げられ、操作軸43をデフロック作用側へ回動操作する。同時に、操作軸43の同じ操作片43bに連係されている連係ロッド47を介して操作アーム46aが図17に実線で示すように時計回りに回動され、回転軸部46が回転することによってデフロックペダル45が同図に実線で示されるようにデフロック作用姿勢に姿勢変更される。
【0054】
また、図18に実線で示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されていないデフロック解除姿勢にあり、畦越えアーム60が起立した格納位置Aにある状態から、同図に仮想線で示すように、デフロックペダル45が踏み込み操作されて図中仮想線に示すようにデフロック作用姿勢となった場合には、デフロックペダル45と一体に回動する回転軸部46の操作アーム46aが図18に仮想線で示すように時計回りに回動され、操作軸43をデフロック作用側へ回動操作する。
このとき、操作軸43の操作片43bは図18に示される下向きの位置から図17に示される上向きの状態に回動操作される。この回動に伴って第2連係ロッド87が引き上げられたとき、揺動操作体82の長孔84に係入している箇所の第2連係ロッド87は、第2連係ロッド87の下端側が前記長孔84内を下方から上方へ移動するだけで、揺動操作体82には第2連係ロッド87の引き上げによる操作が伝わらないので、畦越えアーム60は起立した格納位置Aに維持されたままである。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0055】
〔別実施形態の2〕
上記の各実施形態では、操作具の一例として畦越えアーム60を例示したが、同様の機能を果たすものであれば操作具として異なる構成を採用してもよい。例えば走行機体の前部から前方側へ引き出して使用する操作レバー(図示せず)を操作具として採用したり、また、例えば、ハンドルHを前方に揺動させて地上から操作可能に構成したもの(図示せず)で操作具を構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様である。
【0056】
〔別実施形態の3〕
上記の各実施形態では、一方向伝達機構80として、長孔84とこれに係入するピン83、あるいは長孔84とこれに係入する第2連係ロッド87とを用いたものであるが、このような構造に限らず、例えば、デフロックペダル45の踏み込み操作に連動して揺動作動する揺動操作体82に、前後向き連係ロッド71を挿通可能の孔(図示せず)を設け、その揺動操作体82の背部側で前後向き連係ロッド71に押圧部材(図示せず)を固定して、畦越えアーム60などの操作具を作用位置Bに位置変更すると、前後向き連係ロッド71に固定の押圧部材で背後から揺動操作体82を押してデフロックペダル45を作用姿勢側に姿勢変更するように構成し、デフロックペダル45を踏み込み操作したときには、揺動操作体82が前記押圧部材よりも前側で前方側へ移行するようにして、前後向き連係ロッド71に前方側への押し操作が伝わらないように構成したものであってもよい。
【0057】
〔別実施形態の4〕
上記の各実施形態では、連係機構70の前後方向連係部材として前後向き連係ロッド71を用いた構造を示したが、これに限らず、例えばワイヤーを用いて前方側へ引き操作する構造としてもよい。
また、連係機構70の前後方向連係部材として、引き操作によって畦越えアーム60などの操作具の位置変更を伝えるものに限らず、押し操作によって操作具の位置変更を伝える構造であってもよい。
【0058】
〔別実施形態の5〕
上記の各実施形態では、デフロックペダル45を走行機体の右側に配設した構造を示したが、これに限らず、デフロックペダル45を走行機体の左側に配設して、連係機構70の前後方向連係部材を走行機体の右側、あるいは左側に配設するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、実施の形態で示したような4条植え仕様の苗植付装置6を備えた乗用型田植機に限らず、異なる植付条仕様の苗植付装置6を備えた乗用型田植機であったり、圃場に種籾を播種する直播機であったり、あるいは薬剤散布機であるなどの各種の乗用型水田作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
3 運転座席
21 前車軸ケース
24 静油圧式無段変速装置
45 デフロックペダル
46 左右方向連係部材(回転軸部)
60 操作具(畦越えアーム)
70 連係機構
71 前後方向連係部材(前後向き連係ロッド)
80 一方向伝達機構
81 第1操作伝達部材
82 第2操作伝達部材
A 格納位置
B 作用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部箇所に、格納位置と、その格納位置よりも機体前方側へ移動して地上から操作可能な作用位置とに操作位置を変更可能な操作具を備え、その操作具よりも後方側に運転座席、ならびにデフロックペダルを配設してある乗用型水田作業機であって、
前記デフロックペダルを、踏み込み操作によってデフロック状態となるデフロック作用姿勢と、踏み込み解除に伴ってデフロック状態が解除されるデフロック解除姿勢とに姿勢切換可能に構成し、前記操作具と前記デフロックペダルとを連係する連係機構を備えるとともに、
前記連係機構に、前記操作具の格納位置から作用位置への位置変更に伴って前記デフロックペダルがデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢に姿勢変更されるように操作具の位置変更操作をデフロックペダルに伝達し、かつ、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更操作が操作具を格納位置から作用位置へ位置変化させる方向の操作として伝わらないようにする一方向伝達機構を備えさせてあることを特徴とする乗用型水田作業機。
【請求項2】
前記一方向伝達機構は、前記操作具の位置変更操作に連動して作動する第1操作伝達部材と、前記デフロックペダルの姿勢変更操作に連動して作動する第2操作伝達部材とを備え、
前記操作具による格納位置から作用位置への位置変更操作に伴う第1操作伝達部材の作動方向と、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更に伴う第2操作伝達部材の作動方向とが同方向となるように、前記第1操作伝達部材と前記操作具、及び前記第2操作伝達部材と前記デフロックペダルとを連係してあり、
前記操作具による格納位置から作用位置への位置変更操作に伴って前記第1操作伝達部材が前記第2操作伝達部材に接当して前記位置変更操作を前記第2操作伝達部材に伝達し、前記デフロックペダルのデフロック解除姿勢からデフロック作用姿勢への姿勢変更に伴って、前記第2操作伝達部材が前記第1操作伝達部材から離れる側に移動して前記姿勢変更操作が前記第1操作伝達部材に伝達されないように構成してある請求項1記載の乗用型水田作業機。
【請求項3】
前記連係機構は、走行機体の機体一側方に沿って前後方向に配設された前後方向連係部材と、前記前後方向連係部材の後端部から前記前後方向連係部材が配設された側とは反対側の機体他側方に向けて延設された左右方向連係部材とを備え、前記前後方向連係部材の前端側に前記操作具を連係させてあり、前記左右方向連係部材の前記前後方向連係部材が配設された側とは反対側の端部に前記デフロックペダルを連係させてある請求項1又は2記載の乗用型水田作業機。
【請求項4】
前記連係機構の前後方向連係部材は、前車軸ケースの上側を通るように配設されている請求項3記載の乗用型水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−161249(P2012−161249A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21978(P2011−21978)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】