乗用移動農機
【課題】ステアリングホイルが設定角以上の転向によってエンジン回転を自動的に減速させるエンジン回転自動減速機構を備えるものでありながら、運転部のフロアを高床平坦面に形成できて、運転部の乗降や居住性が良好で、車体の最低地上高が低められることもない乗用移動農機を得る。
【解決手段】ハンドルコラム17に装設するステアリングホイル24の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部をハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設け、運転部のフロアを上下に凸部のない高床平坦面に形成できるものとした。
【解決手段】ハンドルコラム17に装設するステアリングホイル24の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部をハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設け、運転部のフロアを上下に凸部のない高床平坦面に形成できるものとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型の管理機や移植機などの乗用移動農機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転部のステアリングホイルを左或いは右回りに回転する操舵操作でもって機体を左右に転向する乗用移動農機は広く知られるところであるが、この種の乗用移動農機は、高速運行状態のもとで急旋回的な方向転換(例えば、圃場枕地部分での方向転換など)が図られた場合に操舵操作が間に合わなくて、圃場周辺の擁壁等の障害物に機体を衝突させてしまうといったことになり易く、オペレ−タが未習熟者であるとその度合いが益々大になることが危惧され、また、高速急旋回により機体を横転させ勝手とする力が働いて安定性が損なわれることにもなり易く、殊に、乗用移動農機が高床型である場合にその傾向が大になるという問題もある。
【0003】
このため、従来から、高速運行時にステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた構成を採ることによって上記問題点の解消を図った乗用移動農機が知られている。
【特許文献1】特開平10−136701号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のものは、ハンドルコラム下部のステアリング装置構成部分に関連させて同部分にエンジン回転自動減速機構が設けられていたから、そのエンジン回転自動減速機構の関連配設によってハンドルコラム下部辺りの装置構成部分のボリュ−ムが大きく且つ複雑化することになって、そのボリュ−ム大な装置構成部分を収容するために運転部のフロアに、上方に膨出する収容凸部を形成するか或いは車体フレ−ムから下方に出っ張る収容部を設けねばならなくて、フロアから上方に膨出する収容凸部が形成される場合にはフロアの平坦性が損なわれてオペレ−タの乗降や居住性が悪くなるし、又、車体フレ−ムから下方に出っ張る収容部が設けられる場合には、車体の最低地上高が低められるから高床式移動農機に実施するには不利であるといった問題があった。本発明が解決しようとする課題はこのような問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車体フレ−ム前端部に立設するハンドルコラムの後方に座席を配置し、ハンドルコラム周りから座席部にかけての車体フレ−ムにフロアを設けて運転部を構成し、ステアリングホイルによるステアリング装置をハンドルコラム部に装設してステアリングホイルの左右回動により機体を操向するように成し、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部分をハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設けて、前記フロアを上下に凸部のない高床平坦面に形成したことを特徴とする。
【0006】
そして、請求項2に係る発明では、前記ハンドルコラムを、車体フレ−ムに固装される後部半体と、それに着脱自在に合接される前部半体とに分割形成して、後部半体側にステアリング装置のステアリング軸支持筒を設け、そのステアリング軸支持筒にエンジン回転自動減速機構とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体を取り外してハンドルコラム内部を開放できるようにし、メンテナンス等が容易なものとしている。
【0007】
また、請求項3に係る発明では、前記ハンドルコラム内の上方部位に配設するエンジン回転自動減速機構に、ステアリングホイルの左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイルが左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイルのそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−を組入れて設けたものとし、また、請求項4に係る発明においては、遊動回転ストッパ−を備えるエンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着固定される回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装されるバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装される引っ張りバネとで構成して、連動ア−ムの下方腕を連結ロッドによりアクセル装置側に連繋接続するように構成している。
【0008】
更に、請求項5に係る発明では、前記エンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着する回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装するバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装する引っ張りバネとで構成し、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着した回転支持部材を、ステアリング装置のステアリング軸に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構が機能し、ステアリング軸への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構が機能しないように構成している。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転を自動的に減速させるエンジン回転自動減速機構を備える乗用移動農機でありながら、エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部がハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設けられて、運転部のフロア部は上方にも下方にも凸部のない平坦面に形成されるから、オペレ−タの乗降や居住性が良好で、また、車体の最低地上高が低められることもなくて高床式移動農機に実施するにも有利である。
【0010】
また、ハンドルコラムを、車体フレ−ムに固装される後部半体とそれに着脱自在に合接される前部半体とに分割形成して、後部半体側にステアリング装置のステアリング軸支持筒を設け、そのステアリング軸支持筒にエンジン回転自動減速機構とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体を取り外してハンドルコラム内部を開放できるように構成したことにより、ハンドルコラム内部のエンジン回転自動減速機構やそれに関連する他部材などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
また、ハンドルコラム内の上方部位に配設するエンジン回転自動減速機構に、ステアリングホイルの左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイルが左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイルのそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−を組入れて設けたものに構成し、また、その回転自動減速機構をステアリング装置のステアリング軸に嵌着固定される回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装されるバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装される引っ張りバネとで構成したことによって、ステアリングホイルを左回りにも右回りにも一回転させることができると共にその過回動を確実に阻止し得てステアリングホイルによる操舵操作を軽快かつ有利に行うことができながら、全体的に構成が簡潔コンパクトに纏まるものとなった。
【0012】
また、エンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着する回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装するバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装する引っ張りバネとで構成し、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着した回転支持部材を、ステアリング装置のステアリング軸に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構が機能し、ステアリング軸への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構が機能しないように構成したことにより、例えば、習熟度の高いオペレ−タが作業する場合など運行の迅速性が優先要求されるような場合には、エンジン回転自動減速機構が機能しないように変更してその要求に応えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図面は、乗用移動農機の一つである乗用管理機に本発明を適用した実施例を示し、図1は乗用管理機の左側面図、図2は同乗用管理機の平面概略図、図3は同乗用管理機の運転部の一部分を拡大して示した一部破断側面図、図4はその要部拡大断面図である。
【0015】
先ず、乗用管理機(乗用移動農機)の全体的な配置構成を、図1及び図2によって説明するが、図示の乗用管理機は、作物が植栽されている畦立圃場や軟弱圃場でも支障なく作業走行できるように高床式(ハイクリアランス式)に構成されている。
【0016】
図1及び図2において、乗用管理機は、車体フレ−ム(1)の前方寄り部分に運転部(2)を設けると共に、車体フレ−ム(1)の後方寄り部分にエンジン(3)とミッション部(4)とを設け、側面視で前記運転部(2)の座席より下方の空間部においてフロントアクスルケ−ス(5)(5)に支持される左右一対の操向車輪(6)(6)と、前記ミッション部(4)に連動する伝動機構を内蔵したリヤアクスルケ−ス(7)(7)によって支持される左右一対の駆動車輪(8)(8)とを備えて、前輪操向・後輪駆動型の四輪走行車に構成されている。
【0017】
そして、車体フレ−ム(1)の後端部には、油圧シリンダ(9)など適宜の昇降作動手段によって昇降調節される作業機連結装置(10)と、その作業機連結装置(10)にロ−タリ耕耘部(11)等の各種駆動作業機を着装した場合に、同駆動作業機(11)に向けて動力伝達する伝動装置(12)を備えるものになっている。
【0018】
なお、本発明装置が適用される乗用管理機は、前輪操向・後輪駆動型に限られるものではなく、前輪駆動・後輪操向型のものでもよく、また、場合によっては操向車輪(6)(6)もが駆動される四輪駆動型の走行車であってもよい。
【0019】
また、図1及び図2中の(13)は、エンジン(3)とミッション部(4)とを覆うボンネット、(14)(14)は、前記ボンネット(13)の下端部に一体的に連設されて左右に拡翼状に張り出して駆動車輪(8)(8)から操向車輪(6)(6)にかけての上方部分を覆蓋するフェンダである。
【0020】
また、(15)は、前記車体フレ−ム(1)の構成部材である上部外周フレ−ムであり、該上部外周フレ−ム(15)は、平面視(図2参照)で後方開放のコ字状を呈し、側面視(図1参照)においては、前端部分が操向車輪(6)(6)よりやや前上方の低位置に在って少し前上がりに傾斜すると共に、その前上がり傾斜部分の後端から斜め後上方の高位置に向けて屈曲延伸して、その後上端に連なる後方部分が、前記フェンダ(14)(14)より上方部分において前記運転部(2)の座席左右脇部位から車体後端にかけての部分に略水平に位置するものになっており、この構成によって上部外周フレ−ム(15)が乗用管理機全体の前面部及び左右側面部をガ−ドする役目をも果すようになっている。なお、(16)は、運転部(2)の後背部に立設されて上部外周フレ−ム(15)の左右の後方延伸部分間を門型に連結補強する補助フレ−ムであり、該補助フレ−ム(16)は、必要に応じて後方向き又は前方向きの回倒姿勢に格納することもできるように設けられている。
【0021】
運転部(2)は、ステアリング装置の構成部材であるハンドルコラム(17)を車体フレ−ム(1)の前端部に立設すると共に、ハンドルコラム(17)に対応する座席(18)を前記ハンドルコラムの後方所定部位に配設し、また、ハンドルコラム(17)の基部周り及び座席(18)との間の部分の車体フレ−ム(1)にフロア(19)を形成し、そのフロア(19)に乗降するためのステップ部(20)を設けて構成されている。
【0022】
運転部(2)の座席(18)は、前記ボンネット(13)のエンジン覆蓋部分に比して一段低く形成して前方に延出させた前方覆蓋部(13a)の上方に配設して、前方覆蓋部(13a)によって車体下腹部から隔絶されるようにしている。
そして、前方覆蓋部(13a)によって車体下腹部から隔絶される部分において前記フロア(19)に足を載せて座席(18)に座乗したオペレ−タの周りが、上述した車体フレ−ム(1)の上部外周フレ−ム(15)及び補助フレ−ム(16)によってガ−ドされ、安全な体勢のもとで座席(18)の周囲に配設されている各種の操作具類や、ハンドルコラム(17)に設置されている各種の操作具類を操作して運転を行えるようになっている。
【0023】
また、フロア(19)は、上部外周フレ−ム(15)前端の前上がり傾斜部から屈曲後上方延伸部にかけての部分によって囲まれる部位に適宜の床部材を張設して上部外周フレ−ム(15)から上方に出っ張る凸部の無い平坦な床面に形成(図1〜図3参照)され、ステアリング装置のハンドルコラム(17)は、上部外周フレ−ム(15)前端の前上がり傾斜部に対して直交する方向、つまり、やや後傾姿勢で立設されているのであり、このように構成されることによって、運転部(2)がコンパクトに纏まりながら同運転部(2)への乗降や居住性は良好なものとなる。
【0024】
図1及び図3と図4にみられるように、ハンドルコラム(17)は、後部半体(17a)とそれに合接される前部半体(17b)とに分割形成され、両者(17a)(17b)の合接固定によって断面略四角形状の中空体を形成するものとなっており、その中空部分の後部半体(17a)側にステアリング軸支持筒(21)が固定的に設けられて、後部半体(17a)およびステアリング軸支持筒(21)を組付け固定状態に保ったままで、それらに対し前部半体(17b)を必要に応じて着脱自在に取り外してハンドルコラム(17)の内部を開放できるように構成されている。
【0025】
そして、前記ステアリング軸支持筒(21)の内部には、軸受(22)を介してステアリング軸(23)が回動自在に立設されて、そのステアリング軸(23)の上端部が前記後部半体(17a)上面の開孔部から上方に適宜長さで延出され、その上方延出部分にステアリングホイル(24)を着脱自在に嵌着固定し、ステアリングホイル(24)の左右回動によりステアリング軸(23)を左回り又は右回りに適宜に回転し得るようになっている。
【0026】
ステアリング軸支持筒(21)およびステアリング軸(23)の下端部は、前述したフロア(19)より下方において、上部外周フレ−ム(15)によって周りを囲われる部位に位置され、側面視において上部外周フレ−ム(15)前部の前上がり傾斜部の下側にできる三角状空間部(25)に鉛直状に軸受支持される操向ピニオン軸(26)にユニバ−サル継手(27)を介して連動連結されている。
【0027】
操向ピニオン軸(26)の下端には操向ピニオンギヤ(28)が嵌着され、このピニオンギヤ(28)が、その近傍の所定位置に左右回動自在に軸受支持されているカムギヤ(29)に噛合されて、操向ピニオンギヤ(28)により左又は右に適宜に回動されるカムギヤ(29)に連繋されているピットマンア−ム、ドラグリンク、ナックルア−ム等からなる操舵仕組を作動させるとともに、駆動車輪(8)(8)への伝動系中の差動機構(例えば、サイドクラッチ・ブレ−キ式差動機構)を同調作動させる作動仕組(図示省略)をも同時に動かすように構成されている。なお、前出の操舵仕組、差動機構とそれを動かす作動仕組、両仕組の連繋構成等は公知乃至周知のものを適宜に採用すればよいので図示は省略している。
【0028】
前述した操向ピニオンギヤ(28)やカムギヤ(29)と、それに連繋される操舵仕組および差動機構を同調作動させる作動仕組等の一部を含む、操向ピニオン軸(26)下方のステアリング装置構成部分は、上部外周フレ−ム(15)の前上がり傾斜部後端から後上方延伸部に変化する屈曲部分(車体フレ−ム全体の最下端部)と略面一か、同屈曲部分から下方に殆ど突出しない状態に納まるようになっており、このように構成したことによって、操向ピニオン軸(26)下方のステアリング装置構成部分が保護され、また、同構成部分が車体フレ−ムの最下端部から下方に出っ張らないので、ハイクリアランス式の乗用管理機に必要な高い車体の最低地上高が確保される。
【0029】
上記構成のステアリング装置は、前記ステアリングホイル(24)を常態位置(操向車輪が左右いずれにも転向しないで機体が直進する位置)から左回り(反時計回り)又は右回り(時計回り)にそれぞれ一回転(360°回転)させることができて、そのステアリングホイル(24)を左回りに一回転させた位置において操向車輪(6)(6)の左転向角が最大角(一般的には略65°前後)となり、また、ステアリングホイル(24)を右回りに回転させた場合にも、右回り一回転位置において操向車輪(6)(6)の右転向角が最大角(一般的には略65°)となるように設定されている。
【0030】
そして、ステアリングホイル(24)が前記常態位置から左回り又は右回りにそれぞれ一回転する範囲内において、ステアリングホイル(24)が常態位置から僅に左又は右に回転される微少動き範囲内では操向車輪(6)(6)の左右転向が行われなくて機体の直進状態が保たれ、微少動き範囲を越えてステアリングホイル(24)が左又は右回りに任意角度回転されれば、その任意の左右回転角に応じた転向角度に操向車輪(6)(6)が左転向又は右転向し、また、ステアリングホイル(24)が予め設定されている回転角位置及び同回転角位置を越える位置に左又は右回転されると、駆動車輪(8)(8)への伝動系中の差動機構が所期のように同調作動されることとなって、ステアリングホイル(24)の左右回転角に応じた旋回径での機体左側転向進行、右側転向進行が図れるのである。
【0031】
次に、上述したステアリング装置によって操向車輪(6)(6)を左又は右に転向する操舵操作に連動してエンジン(3)回転を手動或いは自動的に減増速させるアクセル装置について説明する。
【0032】
図3及び図4にみられるように、アクセル装置のアクセルレバ−(30)は、ハンドルコラム(17)の中空部に立設されているステアリング軸支持筒(21)の上下方向中程部の外周前側部分に左右横向きに支承されたレバ−支持軸(31)に取り付けて設けられるが、該レバ−支持軸(31)は、右端部をハンドルコラム(17)の後部半体(17a)の右側壁面から外方に突出させ、その突出部分に前記アクセルレバ−(30)の基筒部を嵌着して、レバ−支持軸(31)の軸心を中心にしてアクセルレバ−(30)が前後方向の所定範囲内を揺動し得るように成されている。
【0033】
そして、アクセルレバ−(30)の基筒部に、アクセルレバ−(30)の揺動によって上下方向の所定範囲内を揺動する揺動腕(32)が一体的に連設されて、その揺動腕(32)に前記エンジン(3)の回転速度調節機構部(図示省略)へ他端が繋がっているレリ−ズワイヤ−(33)のインナ−(33a)端部が接続され、また、レリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部が、レバ−支持軸(31)より適宜下方においてステアリング軸支持筒(21)の外周前側部分に装着して対応配置されているアウタ−受(34)に係合保持されている。
【0034】
そうして、アクセルレバ−(30)を手動操作によって前後方向揺動範囲の前端位置に動かすと、エンジン(3)回転が最低速状態になり、その最低速状態位置からアクセルレバ−(30)を任意量後方に揺動操作すれば、その揺動量の増加に応じてエンジン(3)回転が増速されて行き、アクセルレバ−(30)が前後方向揺動範囲の後端位置まで動かされた時にエンジン(3)回転が最高速状態となる。
【0035】
なお、アクセルレバ−(30)を手動操作で必要な位置に揺動移動させ、それぞれの揺動移動位置において保持する手段は図示していないが、この保持手段としては、例えば、バネの弾圧力や摩擦板の圧接力などによってアクセルレバ−(30)を所望位置に保持し、そのアクセルレバ−(30)に前記バネや摩擦板の保持力を越える手動外力を加えた場合にはアクセルレバ−(30)を自由に動かすことができるように構成するなど、適宜の保持手段を採用すればよい。
【0036】
前出のアウタ−受(34)は、レバ−支持軸(31)に平行な支点軸(35)を中心にして上下シ−ソ−状に揺動する回動ア−ム(36)の前側腕部に一体的に設けられ、その前側腕部とは180°反対方向に延出する後側腕部には連結ロッド(37)が連結されて、該連結ロッド(37)の他端が、後述するエンジン回転自動減速機構(38)に接続される。
【0037】
エンジン回転自動減速機構(38)は、殊に、図4に詳細構成がみられるように、前出のステアリング軸(23)に嵌着固定される回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装される鍔状のバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装される引っ張りバネ(46)等によって構成されており、連動ア−ム(45)の下方腕(45b)部に前述した連結ロッド(37)が枢着連結されて、エンジン回転減速機構(38)とアウタ−受(34)を備えた回動ア−ム(36)とが連繋接続される。
【0038】
エンジン回転自動減速機構(38)の各組成要素及びそれらの相対配置構成について、さらに説明を加えると、ステアリング軸支持筒(21)に固設されたバネ掛け体(43)の上側部において重ね合わせ状態に設けられる遊動回転ストッパ−(42)、回転カム板体(40)、回転支持部材(39)、ネジリコイルバネ(41)などは、ステアリングホイル(24)未着装状態のステアリング軸(23)の上端から所定順序で嵌め込んで組付けられ、また、ベルクランク状の連動ア−ム(45)は、バネ掛け体(43)より適宜下方においてステアリング軸支持筒(21)の外周前側部分に回動自在に軸受装着されて、前述の通り、連結ロッド(37)を介してアクセル装置の構成部材である回動ア−ム(36)に連結されるのである。
【0039】
したがって、前記回動ア−ム(36)と連結ロッド(37)までをも包含するエンジン回転自動減速機構(38)は、全体的にハンドルコラム(17)の中空内部の比較的高い位置に組成されることとなって泥土や水などの悪影響を受けることが殆ど無いし、また、ハンドルコラム(17)の車体に固定される側、つまり、後部半体(17a)に支持されるステアリング軸支持筒(21)に全ての組成要素を取り付けて前記エンジン回転減速機構(38)が構成されるので、エンジン回転自動減速機構(38)は組成状態に保ったままで、ハンドルコラム(17)の前部半体(17b)を取り外すだけでハンドルコラム(17)内を大きく開放することができ、邪魔物のない前方部からハンドルコラム(17)内部のエンジン回転自動減速機構(38)やそれに関連する他部材などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0040】
また、ステアリング軸支持筒(21)の上端部及び同軸筒(21)から上方に延出するステアリング軸(23)に、バネ掛け体(43)や遊動回転ストッパ−(42)など複数枚の板状部材を重ね合わせ状に配し、その近傍部にカムフォロワ−(44)を備えた連動ア−ム(45)を配置して連結ロッド(37)によりアクセル装置に連繋させるものであるから、全体的に構成が簡潔コンパクトであり、しかも、メカニカル構造であるので電気的に構成されるものに比すと泥土や水濡れ等につよく、耐久性もよい。
【0041】
前記エンジン回転自動減速機構(38)の回転支持部材(39)は、ステアリング軸(23)に回転可能に嵌挿して人形ピン等適宜の固定手段(47)によってステアリング軸(23)と共に回転するように止め付ける筒体(39a)と、その筒体(39a)の下端に一体的に連設する鍔状縁体(39b)とから成り、鍔状縁体(39b)の周縁の一部分を切り欠いて、その切欠部の中央部分にコイルバネ端係止片(39c)を上向きに立ち上がらせて設けている(図10〜図12参照)。
【0042】
また、前記鍔状縁体(39b)の下側において前記ステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装支持される回転カム板体(40)は、図5〜図7及び図10などにみられるように、円周縁の所定範囲を大径の高速維持カム面(40a)とし、他の残余範囲を小径の低速カム面(40b)としたカム面を備えて、高速維持カム面(40a)と低速カム面(40b)とが連なる部分(B)(C)をなだらかな彎曲面で連続させて形成されている。
なお、図示の実施例においては、大径の高速維持カム面(40a)を、ステアリング軸支持筒(21)の軸心を中心とする142°の円弧範囲に形成し、小径の低速カム面(40b)を、残余の218°の円弧範囲に形成している。
【0043】
また、回転カム板体(40)の軸孔寄り部分の上側には、前記回転支持部材(39)のコイルバネ端係止片(39c)に接近して対応位置するコイルバネ端係止体(40c)が立設されると共に、回転カム板体(40)の下面側の所定位置には、設定された回転位置において前記遊動回転ストッパ−(42)に係り合うことができる突起(40d)が固設されている。
【0044】
そして、前記回転支持部材(39)の筒体(39a)に外挿するネジリコイルバネ(41)の両バネ端を、そのネジリコイルバネ(41)が締まり勝手となるように、前記コイルバネ端係止片(39c)及びコイルバネ端係止体(40c)両者の回転方向前後両側に係り合わせて掛止装着するのであり、これによって、ステアリング軸(23)と共に回転支持部材(39)が左又は右回転されれば、ネジリコイルバネ(41)を介して回転カム板体(40)も共に回転するのである。
【0045】
また、回転カム板体(40)の下面側に配置される遊動回転ストッパ−(42)は、図8〜図9にみられるように、回転カム板体(40)の基筒部に回転自在に外嵌支持する円板体になっている。
そして、円板体の周外縁の所定部位には、その周外縁から半径方向外方に突出し、突出端部を上方に折曲した2個の上向き係合片(42a)(42b)が形成されており、これらの上向き係合片(42a)(42b)は、回転方向に位相が異なる所定部位にそれぞれ形設されている。また、2個の上向き係合片(42a)(42b)のいずれとも回転方向に位相が異なる他の所定部位には、円板体の周外縁から半径方向外方に突出し、突出端部を下方に折曲した1個の下向き係合片(42c)が形設されている。
【0046】
そして、2個の上向き係合片(42a)(42b)は、回転カム板体(40)が左或いは右回りに回転して定められた回転位置に至った際、択一に回転カム板体(40)の突起(40d)の左又は右側面に当接し、それ以降は遊動回転ストッパ−(42)をも回転カム板体(40)と共に左又は右回りに回転させるようになっている。また、下向き係合片(42c)は、遊動回転ストッパ−(42)が左又は右回転の終端に至った時に、同位置で待ち受ける前記バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)の左側面又は右側面に衝合するようになっている。
【0047】
また、回転カム板体(40)のカム面(40a) (40b)に当接するカムフォロワ−(44)は、ベルクランク状連動ア−ム(45)の上方腕(45a)に設ける横向き支軸(48)の一方軸端部を上向きに屈曲し、その上向き軸部に回転自在に嵌装して抜け止め支持するロ−ラ−に形成されており、前記横向き支軸(48)の他方軸端部は、ベルクランク状連動ア−ム(45)の反対側に延出されて、その延出部と前記バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)とに両バネ端を掛止して引っ張りバネ(46)を掛装し、引っ張りバネ(46)のバネ力でもって、前記カムフォロワ−(44)のカム面(40a)(40b)への当接力を強める方向に弾圧付勢している。
【0048】
なお、図1中の(49)は、PTOクラッチレバ−であるが、該クラッチレバ−をも含む
他の操作レバ−類も、前述したアクセルレバ−と同様に、ハンドルコラム(17)の後部半体(17a)のみに支承させて設けておくのがよい。
【0049】
以上のように構成された乗用管理機は、従前のものと同様、運転部(2)に搭乗着席するオペ−タの各種操作具類の操作と、ステアリングホイル(24)の操舵操作によって運行されるのであるが、その際には、ハンドルコラム(17)の右側外方に配設されているアクセルレバ−(30)を前後方向の任意位置に動かして保持することにより、エンジン(3)の回転数を任意に設定して運行するのである。
【0050】
しかして、ステアリグホイル(24)が左又は右のいずれにも回転しないニュ−トラル位置にある場合、エンジン回転減速機構(38)は、図10に示している状態に保たれる。
つまり、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)が機体進行方向の前面側に在ってその高速維持カム面(40a)の中央(A)部がカムフォロワ−(44)に当接し、中央部から左側に位置する部分(図10のA〜C部分)と、中央部から右側に位置する部分(図10のA〜B部分)とが等分(実施例では、A〜C部分72°、A〜B部分72°)となるように位置し、この状態において、回転カム板体(40)下面の突起(40d)は、前記中央(A)部よりも左側(回転カム板体左回り時の回転方向前方側)に位置している。
【0051】
また、上記状態の時、遊動回転ストッパ−(42)の一方の上向き係合片(42a)は、前記突起(40d)より更に回転カム板体左回り時の回転方向前方位置に在り、他方の 上向き係合片(42b)は、それよりも更に左回り時の前方で、前記中央(A)部とは反対側の部分に位置し、下向き係合片(42c)は、前記中央(A)部よりやや右側にずれた部位に位置している。また、バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)は、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)と低速カム面(40b)とが連なる右部分(D)付近に対応位置している。
【0052】
ステアリグホイル(24)が前述したニュ−トラル位置にあってエンジン回転減速機構(38)が図10の状態にある場合は、アクセルレバ−(30)の操作で予め設定されたエンジン回転数のもとで機体が直進走行するが、この際に、機体を左側転向させるべくステアリングホイル(24)が左回りに回動されると、そのステアリングホイル(24)の左回動量に応じ、ネジリコイルバネ(41)を介して回転カム板体(40)も左回りに回転される。
【0053】
そして、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)の右端部(B部分)がカムフォロワ−(44)から外れない回動範囲内ではレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることはなくて、エンジン回転がアクセルレバ−(30)操作で設定された状態に保たれた侭での機体左側転向が行われ(図11参照)、また、それ以上に回転カム板体(40)の左回り回動が進むと、回転カム板体(40)の低速カム面(40b)にカムフォロワ−(44)が当接するように落ち込み、引っ張りバネ(46)のバネ力によってベルクランク状連動ア−ム(45)が揺動されて、その揺動により連結ロッド(37)を介してレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることとなってエンジン回転が一時的に減速され、前記低速カム面(40b)にカムフォロワ−(44)が当接した状態が継続する間は、エンジン回転の一時的減速状態が続きその状態のもとでの機体左側転向が行われるのである。
【0054】
上述のように回転カム板体(40)が左回り回転する際には、回転カム板体(40)の下面側に設けられている突起(40d)も共に回転移動して、遊動回転ストッパ−(42)の上向き係合片(42a)の後側面に当接し、この当接状態での回転カム板体(40)の左回転によって遊動回転ストッパ−(42)をも左回りに回転させる。
【0055】
そして、遊動回転ストッパ−(42)の左回りの回転は、下向き係合片(42c)がバネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)横側面に衝合するまで続き、この衝合によって遊動回転ストッパ−(42)の左回転が止り、以降は、回転カム板体(40)と回転支持部材(39)の両者に両バネ端を掛止して介装されているネジリコイルバネ(41)の許容範囲(図10のCからEの範囲・・・図示実施例では24°の範囲)内で回転カム板体(40)のみが回転してステアリングホイル(24)が一回転した左回り回転の終端に至る(図12参照)、つまり、操向車輪(6)(6)の左転向角が最大となるのであり、該位置からステアリングホイル(24)を右回りに戻し回転し、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)がカムフォロワ−(44)に当接する位置に復帰すれば、レリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)も元の位置に戻って、エンジン回転はアクセルレバ−(30)の操作によって設定された状態に復するのである。
【0056】
なお、ステアリングホイル(24)を右回りに回転操作して機体を左側転向させる場合の作動態様の図示は省略しているが、ステアリングホイル(24)が右回り回転されると、その右回動量に応じて回転カム板体(40)も右回り回転され、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)の左端部(C部分)がカムフォロワ−(44)から外れない回転範囲内ではレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることはなく、エンジン回転がアクセルレバ−(30)操作で設定された状態に保たれたままでの機体機体右側転向が行われ、それ以上に回転カム板体(40)の右回り回転が進められれば、先に述べた左回り回転の時と同じような作動経過をたどって、エンジン回転が一時的に減速される。
【0057】
そうして、右回り回転する回転カム板体(40)の突起(40d)が、遊動回転ストッパ−(42)の他方の上向き係合片(42b)側面に当接すれば遊動回転ストッパ−(42)も右回りに回転し、遊動回転ストッパ−(42)の下向き係合片(42c)がバネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)横側面に衝合すると、遊動回転ストッパ−(42)の右回転が止り、以降は、回転カム板体(40)と回転支持部材(39)の両者に両バネ端を掛止して介装されているネジリコイルバネ(41)の許容範囲内で回転カム板体(40)のみが右回転してステアリングホイル(24)が右回りに一回転した右回り回転の終端に至るのである。
【0058】
なお、エンジン回転自動減速機構(38)が機能するのは、同機構(38)の回動支持部材(39)がステアリング装置のステアリング軸(23)に固定されてステアリング軸(23)と共に回転する時であり、必要に応じて、ステアリング軸(23)との固定を解いて回動支持部材(39)を自由回転状態にすれば、エンジン回転自動減速機構(38)は機能せず、エンジン回転をアクセルレバ−(30)によって設定した速度に保ったままでのステアリング操作を行うことができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、車体フレ−ムの腹部に作業機を装設するミッドマウント型の乗用移動農機にも適用でき、また、走行部がクロ−ラ型である乗用移動農機にも適用できる。
また、ステアリングホイルが設定角以上に転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにステアリング装置とアクセル装置とを連繋する本発明の構成は、アクセル装置以外の他の速度調節装置である場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】乗用管理機の左側面図である。
【図2】乗用管理機の平面概略図である。
【図3】乗用管理機の運転部の一部分を拡大して示した一部破断側面図である。
【図4】その要部拡大断面図である。
【図5】エンジン回転減速機構の回転カム板体の平面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】図5のY−Y断面図である。
【図8】エンジン回転減速機構の遊動回転ストッパ−の平面図である。
【図9】図8のZ−Z断面図である。
【図10】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【図11】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【図12】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 車体フレ−ム
2 運転部
3 エンジン
17 ハンドルコラム
17a 後部半体
17b 前部半体
18 座席
19 フロア
21 ステアリング軸支持筒
23 ステアリング軸
24 ステアリングホイル
37 連結ロッド
39 回転支持部材
40 回転カム板体
41 ネジリコイルバネ
42 遊動回転ストッパ−
43 バネ掛け体
44 カムフォロワ−
45 連動ア−ム
45a 上方腕
45b 下方腕
46 引っ張りバネ
47 固定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型の管理機や移植機などの乗用移動農機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転部のステアリングホイルを左或いは右回りに回転する操舵操作でもって機体を左右に転向する乗用移動農機は広く知られるところであるが、この種の乗用移動農機は、高速運行状態のもとで急旋回的な方向転換(例えば、圃場枕地部分での方向転換など)が図られた場合に操舵操作が間に合わなくて、圃場周辺の擁壁等の障害物に機体を衝突させてしまうといったことになり易く、オペレ−タが未習熟者であるとその度合いが益々大になることが危惧され、また、高速急旋回により機体を横転させ勝手とする力が働いて安定性が損なわれることにもなり易く、殊に、乗用移動農機が高床型である場合にその傾向が大になるという問題もある。
【0003】
このため、従来から、高速運行時にステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた構成を採ることによって上記問題点の解消を図った乗用移動農機が知られている。
【特許文献1】特開平10−136701号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記した従来のものは、ハンドルコラム下部のステアリング装置構成部分に関連させて同部分にエンジン回転自動減速機構が設けられていたから、そのエンジン回転自動減速機構の関連配設によってハンドルコラム下部辺りの装置構成部分のボリュ−ムが大きく且つ複雑化することになって、そのボリュ−ム大な装置構成部分を収容するために運転部のフロアに、上方に膨出する収容凸部を形成するか或いは車体フレ−ムから下方に出っ張る収容部を設けねばならなくて、フロアから上方に膨出する収容凸部が形成される場合にはフロアの平坦性が損なわれてオペレ−タの乗降や居住性が悪くなるし、又、車体フレ−ムから下方に出っ張る収容部が設けられる場合には、車体の最低地上高が低められるから高床式移動農機に実施するには不利であるといった問題があった。本発明が解決しようとする課題はこのような問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車体フレ−ム前端部に立設するハンドルコラムの後方に座席を配置し、ハンドルコラム周りから座席部にかけての車体フレ−ムにフロアを設けて運転部を構成し、ステアリングホイルによるステアリング装置をハンドルコラム部に装設してステアリングホイルの左右回動により機体を操向するように成し、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部分をハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設けて、前記フロアを上下に凸部のない高床平坦面に形成したことを特徴とする。
【0006】
そして、請求項2に係る発明では、前記ハンドルコラムを、車体フレ−ムに固装される後部半体と、それに着脱自在に合接される前部半体とに分割形成して、後部半体側にステアリング装置のステアリング軸支持筒を設け、そのステアリング軸支持筒にエンジン回転自動減速機構とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体を取り外してハンドルコラム内部を開放できるようにし、メンテナンス等が容易なものとしている。
【0007】
また、請求項3に係る発明では、前記ハンドルコラム内の上方部位に配設するエンジン回転自動減速機構に、ステアリングホイルの左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイルが左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイルのそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−を組入れて設けたものとし、また、請求項4に係る発明においては、遊動回転ストッパ−を備えるエンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着固定される回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装されるバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装される引っ張りバネとで構成して、連動ア−ムの下方腕を連結ロッドによりアクセル装置側に連繋接続するように構成している。
【0008】
更に、請求項5に係る発明では、前記エンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着する回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装するバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装する引っ張りバネとで構成し、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着した回転支持部材を、ステアリング装置のステアリング軸に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構が機能し、ステアリング軸への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構が機能しないように構成している。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ステアリングホイルが設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン回転を自動的に減速させるエンジン回転自動減速機構を備える乗用移動農機でありながら、エンジン回転自動減速機構及びそれとアクセル装置との連繋部がハンドルコラム内の上方部位乃至中程部位に設けられて、運転部のフロア部は上方にも下方にも凸部のない平坦面に形成されるから、オペレ−タの乗降や居住性が良好で、また、車体の最低地上高が低められることもなくて高床式移動農機に実施するにも有利である。
【0010】
また、ハンドルコラムを、車体フレ−ムに固装される後部半体とそれに着脱自在に合接される前部半体とに分割形成して、後部半体側にステアリング装置のステアリング軸支持筒を設け、そのステアリング軸支持筒にエンジン回転自動減速機構とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体を取り外してハンドルコラム内部を開放できるように構成したことにより、ハンドルコラム内部のエンジン回転自動減速機構やそれに関連する他部材などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
また、ハンドルコラム内の上方部位に配設するエンジン回転自動減速機構に、ステアリングホイルの左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイルが左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイルのそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−を組入れて設けたものに構成し、また、その回転自動減速機構をステアリング装置のステアリング軸に嵌着固定される回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装されるバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装される引っ張りバネとで構成したことによって、ステアリングホイルを左回りにも右回りにも一回転させることができると共にその過回動を確実に阻止し得てステアリングホイルによる操舵操作を軽快かつ有利に行うことができながら、全体的に構成が簡潔コンパクトに纏まるものとなった。
【0012】
また、エンジン回転自動減速機構を、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着する回転支持部材と、回転支持部材の下面側においてステアリング軸支持筒の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体と、これら二者に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネと、前記回転カム板体の下面側に配置してステアリング軸支持筒側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−と、遊動回転ストッパ−の下面側において前記ステアリング軸支持筒に固装するバネ掛け体と、回転カム板体外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−を上方腕部に備えたベルクランク状の連動ア−ムと、その上方腕とバネ掛け体とに掛装する引っ張りバネとで構成し、ステアリング装置のステアリング軸に嵌着した回転支持部材を、ステアリング装置のステアリング軸に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構が機能し、ステアリング軸への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構が機能しないように構成したことにより、例えば、習熟度の高いオペレ−タが作業する場合など運行の迅速性が優先要求されるような場合には、エンジン回転自動減速機構が機能しないように変更してその要求に応えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図面は、乗用移動農機の一つである乗用管理機に本発明を適用した実施例を示し、図1は乗用管理機の左側面図、図2は同乗用管理機の平面概略図、図3は同乗用管理機の運転部の一部分を拡大して示した一部破断側面図、図4はその要部拡大断面図である。
【0015】
先ず、乗用管理機(乗用移動農機)の全体的な配置構成を、図1及び図2によって説明するが、図示の乗用管理機は、作物が植栽されている畦立圃場や軟弱圃場でも支障なく作業走行できるように高床式(ハイクリアランス式)に構成されている。
【0016】
図1及び図2において、乗用管理機は、車体フレ−ム(1)の前方寄り部分に運転部(2)を設けると共に、車体フレ−ム(1)の後方寄り部分にエンジン(3)とミッション部(4)とを設け、側面視で前記運転部(2)の座席より下方の空間部においてフロントアクスルケ−ス(5)(5)に支持される左右一対の操向車輪(6)(6)と、前記ミッション部(4)に連動する伝動機構を内蔵したリヤアクスルケ−ス(7)(7)によって支持される左右一対の駆動車輪(8)(8)とを備えて、前輪操向・後輪駆動型の四輪走行車に構成されている。
【0017】
そして、車体フレ−ム(1)の後端部には、油圧シリンダ(9)など適宜の昇降作動手段によって昇降調節される作業機連結装置(10)と、その作業機連結装置(10)にロ−タリ耕耘部(11)等の各種駆動作業機を着装した場合に、同駆動作業機(11)に向けて動力伝達する伝動装置(12)を備えるものになっている。
【0018】
なお、本発明装置が適用される乗用管理機は、前輪操向・後輪駆動型に限られるものではなく、前輪駆動・後輪操向型のものでもよく、また、場合によっては操向車輪(6)(6)もが駆動される四輪駆動型の走行車であってもよい。
【0019】
また、図1及び図2中の(13)は、エンジン(3)とミッション部(4)とを覆うボンネット、(14)(14)は、前記ボンネット(13)の下端部に一体的に連設されて左右に拡翼状に張り出して駆動車輪(8)(8)から操向車輪(6)(6)にかけての上方部分を覆蓋するフェンダである。
【0020】
また、(15)は、前記車体フレ−ム(1)の構成部材である上部外周フレ−ムであり、該上部外周フレ−ム(15)は、平面視(図2参照)で後方開放のコ字状を呈し、側面視(図1参照)においては、前端部分が操向車輪(6)(6)よりやや前上方の低位置に在って少し前上がりに傾斜すると共に、その前上がり傾斜部分の後端から斜め後上方の高位置に向けて屈曲延伸して、その後上端に連なる後方部分が、前記フェンダ(14)(14)より上方部分において前記運転部(2)の座席左右脇部位から車体後端にかけての部分に略水平に位置するものになっており、この構成によって上部外周フレ−ム(15)が乗用管理機全体の前面部及び左右側面部をガ−ドする役目をも果すようになっている。なお、(16)は、運転部(2)の後背部に立設されて上部外周フレ−ム(15)の左右の後方延伸部分間を門型に連結補強する補助フレ−ムであり、該補助フレ−ム(16)は、必要に応じて後方向き又は前方向きの回倒姿勢に格納することもできるように設けられている。
【0021】
運転部(2)は、ステアリング装置の構成部材であるハンドルコラム(17)を車体フレ−ム(1)の前端部に立設すると共に、ハンドルコラム(17)に対応する座席(18)を前記ハンドルコラムの後方所定部位に配設し、また、ハンドルコラム(17)の基部周り及び座席(18)との間の部分の車体フレ−ム(1)にフロア(19)を形成し、そのフロア(19)に乗降するためのステップ部(20)を設けて構成されている。
【0022】
運転部(2)の座席(18)は、前記ボンネット(13)のエンジン覆蓋部分に比して一段低く形成して前方に延出させた前方覆蓋部(13a)の上方に配設して、前方覆蓋部(13a)によって車体下腹部から隔絶されるようにしている。
そして、前方覆蓋部(13a)によって車体下腹部から隔絶される部分において前記フロア(19)に足を載せて座席(18)に座乗したオペレ−タの周りが、上述した車体フレ−ム(1)の上部外周フレ−ム(15)及び補助フレ−ム(16)によってガ−ドされ、安全な体勢のもとで座席(18)の周囲に配設されている各種の操作具類や、ハンドルコラム(17)に設置されている各種の操作具類を操作して運転を行えるようになっている。
【0023】
また、フロア(19)は、上部外周フレ−ム(15)前端の前上がり傾斜部から屈曲後上方延伸部にかけての部分によって囲まれる部位に適宜の床部材を張設して上部外周フレ−ム(15)から上方に出っ張る凸部の無い平坦な床面に形成(図1〜図3参照)され、ステアリング装置のハンドルコラム(17)は、上部外周フレ−ム(15)前端の前上がり傾斜部に対して直交する方向、つまり、やや後傾姿勢で立設されているのであり、このように構成されることによって、運転部(2)がコンパクトに纏まりながら同運転部(2)への乗降や居住性は良好なものとなる。
【0024】
図1及び図3と図4にみられるように、ハンドルコラム(17)は、後部半体(17a)とそれに合接される前部半体(17b)とに分割形成され、両者(17a)(17b)の合接固定によって断面略四角形状の中空体を形成するものとなっており、その中空部分の後部半体(17a)側にステアリング軸支持筒(21)が固定的に設けられて、後部半体(17a)およびステアリング軸支持筒(21)を組付け固定状態に保ったままで、それらに対し前部半体(17b)を必要に応じて着脱自在に取り外してハンドルコラム(17)の内部を開放できるように構成されている。
【0025】
そして、前記ステアリング軸支持筒(21)の内部には、軸受(22)を介してステアリング軸(23)が回動自在に立設されて、そのステアリング軸(23)の上端部が前記後部半体(17a)上面の開孔部から上方に適宜長さで延出され、その上方延出部分にステアリングホイル(24)を着脱自在に嵌着固定し、ステアリングホイル(24)の左右回動によりステアリング軸(23)を左回り又は右回りに適宜に回転し得るようになっている。
【0026】
ステアリング軸支持筒(21)およびステアリング軸(23)の下端部は、前述したフロア(19)より下方において、上部外周フレ−ム(15)によって周りを囲われる部位に位置され、側面視において上部外周フレ−ム(15)前部の前上がり傾斜部の下側にできる三角状空間部(25)に鉛直状に軸受支持される操向ピニオン軸(26)にユニバ−サル継手(27)を介して連動連結されている。
【0027】
操向ピニオン軸(26)の下端には操向ピニオンギヤ(28)が嵌着され、このピニオンギヤ(28)が、その近傍の所定位置に左右回動自在に軸受支持されているカムギヤ(29)に噛合されて、操向ピニオンギヤ(28)により左又は右に適宜に回動されるカムギヤ(29)に連繋されているピットマンア−ム、ドラグリンク、ナックルア−ム等からなる操舵仕組を作動させるとともに、駆動車輪(8)(8)への伝動系中の差動機構(例えば、サイドクラッチ・ブレ−キ式差動機構)を同調作動させる作動仕組(図示省略)をも同時に動かすように構成されている。なお、前出の操舵仕組、差動機構とそれを動かす作動仕組、両仕組の連繋構成等は公知乃至周知のものを適宜に採用すればよいので図示は省略している。
【0028】
前述した操向ピニオンギヤ(28)やカムギヤ(29)と、それに連繋される操舵仕組および差動機構を同調作動させる作動仕組等の一部を含む、操向ピニオン軸(26)下方のステアリング装置構成部分は、上部外周フレ−ム(15)の前上がり傾斜部後端から後上方延伸部に変化する屈曲部分(車体フレ−ム全体の最下端部)と略面一か、同屈曲部分から下方に殆ど突出しない状態に納まるようになっており、このように構成したことによって、操向ピニオン軸(26)下方のステアリング装置構成部分が保護され、また、同構成部分が車体フレ−ムの最下端部から下方に出っ張らないので、ハイクリアランス式の乗用管理機に必要な高い車体の最低地上高が確保される。
【0029】
上記構成のステアリング装置は、前記ステアリングホイル(24)を常態位置(操向車輪が左右いずれにも転向しないで機体が直進する位置)から左回り(反時計回り)又は右回り(時計回り)にそれぞれ一回転(360°回転)させることができて、そのステアリングホイル(24)を左回りに一回転させた位置において操向車輪(6)(6)の左転向角が最大角(一般的には略65°前後)となり、また、ステアリングホイル(24)を右回りに回転させた場合にも、右回り一回転位置において操向車輪(6)(6)の右転向角が最大角(一般的には略65°)となるように設定されている。
【0030】
そして、ステアリングホイル(24)が前記常態位置から左回り又は右回りにそれぞれ一回転する範囲内において、ステアリングホイル(24)が常態位置から僅に左又は右に回転される微少動き範囲内では操向車輪(6)(6)の左右転向が行われなくて機体の直進状態が保たれ、微少動き範囲を越えてステアリングホイル(24)が左又は右回りに任意角度回転されれば、その任意の左右回転角に応じた転向角度に操向車輪(6)(6)が左転向又は右転向し、また、ステアリングホイル(24)が予め設定されている回転角位置及び同回転角位置を越える位置に左又は右回転されると、駆動車輪(8)(8)への伝動系中の差動機構が所期のように同調作動されることとなって、ステアリングホイル(24)の左右回転角に応じた旋回径での機体左側転向進行、右側転向進行が図れるのである。
【0031】
次に、上述したステアリング装置によって操向車輪(6)(6)を左又は右に転向する操舵操作に連動してエンジン(3)回転を手動或いは自動的に減増速させるアクセル装置について説明する。
【0032】
図3及び図4にみられるように、アクセル装置のアクセルレバ−(30)は、ハンドルコラム(17)の中空部に立設されているステアリング軸支持筒(21)の上下方向中程部の外周前側部分に左右横向きに支承されたレバ−支持軸(31)に取り付けて設けられるが、該レバ−支持軸(31)は、右端部をハンドルコラム(17)の後部半体(17a)の右側壁面から外方に突出させ、その突出部分に前記アクセルレバ−(30)の基筒部を嵌着して、レバ−支持軸(31)の軸心を中心にしてアクセルレバ−(30)が前後方向の所定範囲内を揺動し得るように成されている。
【0033】
そして、アクセルレバ−(30)の基筒部に、アクセルレバ−(30)の揺動によって上下方向の所定範囲内を揺動する揺動腕(32)が一体的に連設されて、その揺動腕(32)に前記エンジン(3)の回転速度調節機構部(図示省略)へ他端が繋がっているレリ−ズワイヤ−(33)のインナ−(33a)端部が接続され、また、レリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部が、レバ−支持軸(31)より適宜下方においてステアリング軸支持筒(21)の外周前側部分に装着して対応配置されているアウタ−受(34)に係合保持されている。
【0034】
そうして、アクセルレバ−(30)を手動操作によって前後方向揺動範囲の前端位置に動かすと、エンジン(3)回転が最低速状態になり、その最低速状態位置からアクセルレバ−(30)を任意量後方に揺動操作すれば、その揺動量の増加に応じてエンジン(3)回転が増速されて行き、アクセルレバ−(30)が前後方向揺動範囲の後端位置まで動かされた時にエンジン(3)回転が最高速状態となる。
【0035】
なお、アクセルレバ−(30)を手動操作で必要な位置に揺動移動させ、それぞれの揺動移動位置において保持する手段は図示していないが、この保持手段としては、例えば、バネの弾圧力や摩擦板の圧接力などによってアクセルレバ−(30)を所望位置に保持し、そのアクセルレバ−(30)に前記バネや摩擦板の保持力を越える手動外力を加えた場合にはアクセルレバ−(30)を自由に動かすことができるように構成するなど、適宜の保持手段を採用すればよい。
【0036】
前出のアウタ−受(34)は、レバ−支持軸(31)に平行な支点軸(35)を中心にして上下シ−ソ−状に揺動する回動ア−ム(36)の前側腕部に一体的に設けられ、その前側腕部とは180°反対方向に延出する後側腕部には連結ロッド(37)が連結されて、該連結ロッド(37)の他端が、後述するエンジン回転自動減速機構(38)に接続される。
【0037】
エンジン回転自動減速機構(38)は、殊に、図4に詳細構成がみられるように、前出のステアリング軸(23)に嵌着固定される回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装される鍔状のバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装される引っ張りバネ(46)等によって構成されており、連動ア−ム(45)の下方腕(45b)部に前述した連結ロッド(37)が枢着連結されて、エンジン回転減速機構(38)とアウタ−受(34)を備えた回動ア−ム(36)とが連繋接続される。
【0038】
エンジン回転自動減速機構(38)の各組成要素及びそれらの相対配置構成について、さらに説明を加えると、ステアリング軸支持筒(21)に固設されたバネ掛け体(43)の上側部において重ね合わせ状態に設けられる遊動回転ストッパ−(42)、回転カム板体(40)、回転支持部材(39)、ネジリコイルバネ(41)などは、ステアリングホイル(24)未着装状態のステアリング軸(23)の上端から所定順序で嵌め込んで組付けられ、また、ベルクランク状の連動ア−ム(45)は、バネ掛け体(43)より適宜下方においてステアリング軸支持筒(21)の外周前側部分に回動自在に軸受装着されて、前述の通り、連結ロッド(37)を介してアクセル装置の構成部材である回動ア−ム(36)に連結されるのである。
【0039】
したがって、前記回動ア−ム(36)と連結ロッド(37)までをも包含するエンジン回転自動減速機構(38)は、全体的にハンドルコラム(17)の中空内部の比較的高い位置に組成されることとなって泥土や水などの悪影響を受けることが殆ど無いし、また、ハンドルコラム(17)の車体に固定される側、つまり、後部半体(17a)に支持されるステアリング軸支持筒(21)に全ての組成要素を取り付けて前記エンジン回転減速機構(38)が構成されるので、エンジン回転自動減速機構(38)は組成状態に保ったままで、ハンドルコラム(17)の前部半体(17b)を取り外すだけでハンドルコラム(17)内を大きく開放することができ、邪魔物のない前方部からハンドルコラム(17)内部のエンジン回転自動減速機構(38)やそれに関連する他部材などのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0040】
また、ステアリング軸支持筒(21)の上端部及び同軸筒(21)から上方に延出するステアリング軸(23)に、バネ掛け体(43)や遊動回転ストッパ−(42)など複数枚の板状部材を重ね合わせ状に配し、その近傍部にカムフォロワ−(44)を備えた連動ア−ム(45)を配置して連結ロッド(37)によりアクセル装置に連繋させるものであるから、全体的に構成が簡潔コンパクトであり、しかも、メカニカル構造であるので電気的に構成されるものに比すと泥土や水濡れ等につよく、耐久性もよい。
【0041】
前記エンジン回転自動減速機構(38)の回転支持部材(39)は、ステアリング軸(23)に回転可能に嵌挿して人形ピン等適宜の固定手段(47)によってステアリング軸(23)と共に回転するように止め付ける筒体(39a)と、その筒体(39a)の下端に一体的に連設する鍔状縁体(39b)とから成り、鍔状縁体(39b)の周縁の一部分を切り欠いて、その切欠部の中央部分にコイルバネ端係止片(39c)を上向きに立ち上がらせて設けている(図10〜図12参照)。
【0042】
また、前記鍔状縁体(39b)の下側において前記ステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装支持される回転カム板体(40)は、図5〜図7及び図10などにみられるように、円周縁の所定範囲を大径の高速維持カム面(40a)とし、他の残余範囲を小径の低速カム面(40b)としたカム面を備えて、高速維持カム面(40a)と低速カム面(40b)とが連なる部分(B)(C)をなだらかな彎曲面で連続させて形成されている。
なお、図示の実施例においては、大径の高速維持カム面(40a)を、ステアリング軸支持筒(21)の軸心を中心とする142°の円弧範囲に形成し、小径の低速カム面(40b)を、残余の218°の円弧範囲に形成している。
【0043】
また、回転カム板体(40)の軸孔寄り部分の上側には、前記回転支持部材(39)のコイルバネ端係止片(39c)に接近して対応位置するコイルバネ端係止体(40c)が立設されると共に、回転カム板体(40)の下面側の所定位置には、設定された回転位置において前記遊動回転ストッパ−(42)に係り合うことができる突起(40d)が固設されている。
【0044】
そして、前記回転支持部材(39)の筒体(39a)に外挿するネジリコイルバネ(41)の両バネ端を、そのネジリコイルバネ(41)が締まり勝手となるように、前記コイルバネ端係止片(39c)及びコイルバネ端係止体(40c)両者の回転方向前後両側に係り合わせて掛止装着するのであり、これによって、ステアリング軸(23)と共に回転支持部材(39)が左又は右回転されれば、ネジリコイルバネ(41)を介して回転カム板体(40)も共に回転するのである。
【0045】
また、回転カム板体(40)の下面側に配置される遊動回転ストッパ−(42)は、図8〜図9にみられるように、回転カム板体(40)の基筒部に回転自在に外嵌支持する円板体になっている。
そして、円板体の周外縁の所定部位には、その周外縁から半径方向外方に突出し、突出端部を上方に折曲した2個の上向き係合片(42a)(42b)が形成されており、これらの上向き係合片(42a)(42b)は、回転方向に位相が異なる所定部位にそれぞれ形設されている。また、2個の上向き係合片(42a)(42b)のいずれとも回転方向に位相が異なる他の所定部位には、円板体の周外縁から半径方向外方に突出し、突出端部を下方に折曲した1個の下向き係合片(42c)が形設されている。
【0046】
そして、2個の上向き係合片(42a)(42b)は、回転カム板体(40)が左或いは右回りに回転して定められた回転位置に至った際、択一に回転カム板体(40)の突起(40d)の左又は右側面に当接し、それ以降は遊動回転ストッパ−(42)をも回転カム板体(40)と共に左又は右回りに回転させるようになっている。また、下向き係合片(42c)は、遊動回転ストッパ−(42)が左又は右回転の終端に至った時に、同位置で待ち受ける前記バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)の左側面又は右側面に衝合するようになっている。
【0047】
また、回転カム板体(40)のカム面(40a) (40b)に当接するカムフォロワ−(44)は、ベルクランク状連動ア−ム(45)の上方腕(45a)に設ける横向き支軸(48)の一方軸端部を上向きに屈曲し、その上向き軸部に回転自在に嵌装して抜け止め支持するロ−ラ−に形成されており、前記横向き支軸(48)の他方軸端部は、ベルクランク状連動ア−ム(45)の反対側に延出されて、その延出部と前記バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)とに両バネ端を掛止して引っ張りバネ(46)を掛装し、引っ張りバネ(46)のバネ力でもって、前記カムフォロワ−(44)のカム面(40a)(40b)への当接力を強める方向に弾圧付勢している。
【0048】
なお、図1中の(49)は、PTOクラッチレバ−であるが、該クラッチレバ−をも含む
他の操作レバ−類も、前述したアクセルレバ−と同様に、ハンドルコラム(17)の後部半体(17a)のみに支承させて設けておくのがよい。
【0049】
以上のように構成された乗用管理機は、従前のものと同様、運転部(2)に搭乗着席するオペ−タの各種操作具類の操作と、ステアリングホイル(24)の操舵操作によって運行されるのであるが、その際には、ハンドルコラム(17)の右側外方に配設されているアクセルレバ−(30)を前後方向の任意位置に動かして保持することにより、エンジン(3)の回転数を任意に設定して運行するのである。
【0050】
しかして、ステアリグホイル(24)が左又は右のいずれにも回転しないニュ−トラル位置にある場合、エンジン回転減速機構(38)は、図10に示している状態に保たれる。
つまり、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)が機体進行方向の前面側に在ってその高速維持カム面(40a)の中央(A)部がカムフォロワ−(44)に当接し、中央部から左側に位置する部分(図10のA〜C部分)と、中央部から右側に位置する部分(図10のA〜B部分)とが等分(実施例では、A〜C部分72°、A〜B部分72°)となるように位置し、この状態において、回転カム板体(40)下面の突起(40d)は、前記中央(A)部よりも左側(回転カム板体左回り時の回転方向前方側)に位置している。
【0051】
また、上記状態の時、遊動回転ストッパ−(42)の一方の上向き係合片(42a)は、前記突起(40d)より更に回転カム板体左回り時の回転方向前方位置に在り、他方の 上向き係合片(42b)は、それよりも更に左回り時の前方で、前記中央(A)部とは反対側の部分に位置し、下向き係合片(42c)は、前記中央(A)部よりやや右側にずれた部位に位置している。また、バネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)は、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)と低速カム面(40b)とが連なる右部分(D)付近に対応位置している。
【0052】
ステアリグホイル(24)が前述したニュ−トラル位置にあってエンジン回転減速機構(38)が図10の状態にある場合は、アクセルレバ−(30)の操作で予め設定されたエンジン回転数のもとで機体が直進走行するが、この際に、機体を左側転向させるべくステアリングホイル(24)が左回りに回動されると、そのステアリングホイル(24)の左回動量に応じ、ネジリコイルバネ(41)を介して回転カム板体(40)も左回りに回転される。
【0053】
そして、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)の右端部(B部分)がカムフォロワ−(44)から外れない回動範囲内ではレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることはなくて、エンジン回転がアクセルレバ−(30)操作で設定された状態に保たれた侭での機体左側転向が行われ(図11参照)、また、それ以上に回転カム板体(40)の左回り回動が進むと、回転カム板体(40)の低速カム面(40b)にカムフォロワ−(44)が当接するように落ち込み、引っ張りバネ(46)のバネ力によってベルクランク状連動ア−ム(45)が揺動されて、その揺動により連結ロッド(37)を介してレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることとなってエンジン回転が一時的に減速され、前記低速カム面(40b)にカムフォロワ−(44)が当接した状態が継続する間は、エンジン回転の一時的減速状態が続きその状態のもとでの機体左側転向が行われるのである。
【0054】
上述のように回転カム板体(40)が左回り回転する際には、回転カム板体(40)の下面側に設けられている突起(40d)も共に回転移動して、遊動回転ストッパ−(42)の上向き係合片(42a)の後側面に当接し、この当接状態での回転カム板体(40)の左回転によって遊動回転ストッパ−(42)をも左回りに回転させる。
【0055】
そして、遊動回転ストッパ−(42)の左回りの回転は、下向き係合片(42c)がバネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)横側面に衝合するまで続き、この衝合によって遊動回転ストッパ−(42)の左回転が止り、以降は、回転カム板体(40)と回転支持部材(39)の両者に両バネ端を掛止して介装されているネジリコイルバネ(41)の許容範囲(図10のCからEの範囲・・・図示実施例では24°の範囲)内で回転カム板体(40)のみが回転してステアリングホイル(24)が一回転した左回り回転の終端に至る(図12参照)、つまり、操向車輪(6)(6)の左転向角が最大となるのであり、該位置からステアリングホイル(24)を右回りに戻し回転し、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)がカムフォロワ−(44)に当接する位置に復帰すれば、レリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)も元の位置に戻って、エンジン回転はアクセルレバ−(30)の操作によって設定された状態に復するのである。
【0056】
なお、ステアリングホイル(24)を右回りに回転操作して機体を左側転向させる場合の作動態様の図示は省略しているが、ステアリングホイル(24)が右回り回転されると、その右回動量に応じて回転カム板体(40)も右回り回転され、回転カム板体(40)の高速維持カム面(40a)の左端部(C部分)がカムフォロワ−(44)から外れない回転範囲内ではレリ−ズワイヤ−(33)のアウタ−(33b)端部を支持するアウタ−受(34)が動かされることはなく、エンジン回転がアクセルレバ−(30)操作で設定された状態に保たれたままでの機体機体右側転向が行われ、それ以上に回転カム板体(40)の右回り回転が進められれば、先に述べた左回り回転の時と同じような作動経過をたどって、エンジン回転が一時的に減速される。
【0057】
そうして、右回り回転する回転カム板体(40)の突起(40d)が、遊動回転ストッパ−(42)の他方の上向き係合片(42b)側面に当接すれば遊動回転ストッパ−(42)も右回りに回転し、遊動回転ストッパ−(42)の下向き係合片(42c)がバネ掛け体(43)のバネ係止部(43a)横側面に衝合すると、遊動回転ストッパ−(42)の右回転が止り、以降は、回転カム板体(40)と回転支持部材(39)の両者に両バネ端を掛止して介装されているネジリコイルバネ(41)の許容範囲内で回転カム板体(40)のみが右回転してステアリングホイル(24)が右回りに一回転した右回り回転の終端に至るのである。
【0058】
なお、エンジン回転自動減速機構(38)が機能するのは、同機構(38)の回動支持部材(39)がステアリング装置のステアリング軸(23)に固定されてステアリング軸(23)と共に回転する時であり、必要に応じて、ステアリング軸(23)との固定を解いて回動支持部材(39)を自由回転状態にすれば、エンジン回転自動減速機構(38)は機能せず、エンジン回転をアクセルレバ−(30)によって設定した速度に保ったままでのステアリング操作を行うことができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、車体フレ−ムの腹部に作業機を装設するミッドマウント型の乗用移動農機にも適用でき、また、走行部がクロ−ラ型である乗用移動農機にも適用できる。
また、ステアリングホイルが設定角以上に転向されるとエンジン回転が自動的に減速されるようにステアリング装置とアクセル装置とを連繋する本発明の構成は、アクセル装置以外の他の速度調節装置である場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】乗用管理機の左側面図である。
【図2】乗用管理機の平面概略図である。
【図3】乗用管理機の運転部の一部分を拡大して示した一部破断側面図である。
【図4】その要部拡大断面図である。
【図5】エンジン回転減速機構の回転カム板体の平面図である。
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】図5のY−Y断面図である。
【図8】エンジン回転減速機構の遊動回転ストッパ−の平面図である。
【図9】図8のZ−Z断面図である。
【図10】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【図11】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【図12】エンジン回転減速機構の作動態様説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 車体フレ−ム
2 運転部
3 エンジン
17 ハンドルコラム
17a 後部半体
17b 前部半体
18 座席
19 フロア
21 ステアリング軸支持筒
23 ステアリング軸
24 ステアリングホイル
37 連結ロッド
39 回転支持部材
40 回転カム板体
41 ネジリコイルバネ
42 遊動回転ストッパ−
43 バネ掛け体
44 カムフォロワ−
45 連動ア−ム
45a 上方腕
45b 下方腕
46 引っ張りバネ
47 固定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)及びそれとアクセル装置との連繋部分をハンドルコラム(17)内の上方部位乃至中程部位に設けて、前記フロア(19)を上下に凸部のない高床平坦面に形成したことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項2】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記ハンドルコラム(17)を、車体フレ−ム(1)に固装される後部半体(17a)と、それに着脱自在に合接される前部半体(17b)とに分割形成して、後部半体(17a)側にステアリング装置のステアリング軸支持筒(21)を設け、そのステアリング軸支持筒(21)に前記エンジン回転自動減速機構(38)とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体(17b)を取り外しハンドルコラム(17)の内部を開放できるようにしたことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項3】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させ、そのエンジン回転自動減速機構(38)をハンドルコラム(17)内の上方部位に配設した乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)に、ステアリングホイル(24)の左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイル(24)が左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイル(24)のそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−(42)を組入れて設けてあることを特徴とする乗用移動農機。
【請求項4】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着固定される回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装されるバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装される引っ張りバネ(46)で構成して、連動ア−ム(45)の下方腕(45b)を連結ロッド(37)を介してアクセル装置側に連繋接続したことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項5】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着する回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装するバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装する引っ張りバネ(46)などで構成し、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着した回転支持部材(39)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構(38)が機能し、ステアリング軸(23)への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構(38)が機能しないようにしたことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項1】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)及びそれとアクセル装置との連繋部分をハンドルコラム(17)内の上方部位乃至中程部位に設けて、前記フロア(19)を上下に凸部のない高床平坦面に形成したことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項2】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記ハンドルコラム(17)を、車体フレ−ム(1)に固装される後部半体(17a)と、それに着脱自在に合接される前部半体(17b)とに分割形成して、後部半体(17a)側にステアリング装置のステアリング軸支持筒(21)を設け、そのステアリング軸支持筒(21)に前記エンジン回転自動減速機構(38)とアクセル装置及び両者の連繋部を保持させて、これらを組付状態としたままで前部半体(17b)を取り外しハンドルコラム(17)の内部を開放できるようにしたことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項3】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させ、そのエンジン回転自動減速機構(38)をハンドルコラム(17)内の上方部位に配設した乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)に、ステアリングホイル(24)の左回り一回転と右回り一回転を共に許し、ステアリングホイル(24)が左回り一回転の終端に至った時と右回り一回転の終端に至った時にそれぞれステアリングホイル(24)のそれ以上の回転を阻止し得る遊動回転ストッパ−(42)を組入れて設けてあることを特徴とする乗用移動農機。
【請求項4】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着固定される回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装配置される回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持される遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装されるバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装される引っ張りバネ(46)で構成して、連動ア−ム(45)の下方腕(45b)を連結ロッド(37)を介してアクセル装置側に連繋接続したことを特徴とする乗用移動農機。
【請求項5】
車体フレ−ム(1)の前端部に立設するハンドルコラム(17)の後方部位に座席(18)を配置し、ハンドルコラム(17)周りから座席(18)部にかけての車体フレ−ム(1)にフロア(19)を設けて運転部(2)を構成し、ステアリングホイル(24)によるステアリング装置を前記ハンドルコラム(17)部に装設してステアリングホイル(24)の左右回動によって機体を操向するように成し、ステアリングホイル(24)が設定角以上に左或いは右転向されるとエンジン(3)回転が自動的に減速されるようにエンジン回転自動減速機構(38)を介してステアリング装置とアクセル装置とを連繋させた乗用移動農機において、前記エンジン回転自動減速機構(38)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着する回転支持部材(39)と、回転支持部材(39)の下面側においてステアリング軸支持筒(21)の外周に自由回転状態に嵌装配置する回転カム板体(40)と、これら二者(39)(40)に両バネ端を掛け止めて介装するネジリコイルバネ(41)と、前記回転カム板体(40)の下面側に配置してステアリング軸支持筒(21)側に遊転状態に支持する遊動回転ストッパ−(42)と、遊動回転ストッパ−(42)の下面側において前記ステアリング軸支持筒(21)に固装するバネ掛け体(43)と、回転カム板体(40)外周のカム面に転動自由に当接するカムフォロワ−(44)を上方腕(45a)部に備えたベルクランク状の連動ア−ム(45)と、その上方腕(45a)とバネ掛け体(43)とに掛装する引っ張りバネ(46)などで構成し、ステアリング装置のステアリング軸(23)に嵌着した回転支持部材(39)を、ステアリング装置のステアリング軸(23)に掛止固定するとエンジン回転自動減速機構(38)が機能し、ステアリング軸(23)への掛止固定を解くとエンジン回転自動減速機構(38)が機能しないようにしたことを特徴とする乗用移動農機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−111038(P2006−111038A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297377(P2004−297377)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
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