説明

乗用芝刈機

【課題】比較的コンパトな構成で、しかもシュータ内に芝草が詰まったときにも容易にそれを除去できる構成を備えたフロントモーア型乗用芝刈機を提供すること。
【解決手段】カッター5を有するモー6アと、該モーア6で刈り取られた芝草を送風搬送するスロア23と、該スロア23により搬送される芝草を搬送するシュータ26,27と、該シュータ26,27により搬送される芝草を収容するコレクタバック14を走行車体2に支持させて備えた芝刈機であり、乗用芝刈機は、芝刈用カッター5を有するフロントモーア6と該モーア6で刈り取られた芝草を送風搬送するスロア23と芝草の送風搬送路であるモーア側シュータ27とをフロア7より下方の走行車体2の腹下部に配置し、カッター5とスロア23のメンテナンス用の開閉蓋42をフロア7に設け、該開閉蓋42の開放操作を検出するセンサ30が開閉蓋の開放操作を検出するとカッター5及び/又はスロア23の駆動を停止させる制御部33を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝刈りなどの対地作業を行うモーアを車体の下方に搭載した乗用芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
対地作業機としての典型例である芝刈機(モーア)を車体前部に装着した、いわゆるフロントモーア型乗用芝刈機が特開平5−76231号公報などに開示されている。この乗用芝刈機は、モーアで刈り取った芝草を車体側部に配したシュータを介して車体後部のコレクターバックに集草する構成としている。
また、特開2004−65114号公報に開示されたように、車体腹部下方にモーアを備え、このモーアで刈り取った芝草を車体幅方向である左右の後輪間に配したシュータを介して、車体後部のコレクターバックに集草する乗用芝刈機が知られている。
【特許文献1】特開平5−76231号公報
【特許文献2】特開2004−65114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のフロントモーア型乗用芝刈機は、シュータを車体側部に備えた構成であるため、車幅が広くなり、芝草の刈り残し生じ易かったり、作業上での旋回時に障害物に接触し易いという問題点があった。
また、前記フロントモーア型乗用芝刈機のシュータを前記左右の車輪間に配する構成では、シュータ内に芝草が詰まったときに、これを除去し難いという問題点もあった。
そこで本発明の課題は、比較的コンパトな構成で、しかもシュータ内に芝草が詰まったときにも容易にそれを除去できる乗用芝刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、カッター(5)を有するモーア(6)と、該モーア(6)で刈り取られた芝草を送風搬送するスロア(23)と、該スロア(23)により搬送される芝草を搬送するシュータ(26,27)と、該シュータ(26,27)により搬送される芝草を収容するコレクタバック(14)を走行車体(2)に支持させた乗用芝刈機において、モーア(6)とモーア側シュータ(27)はフロア(7)より下方の走行車体(2)の腹下部に配置し、モーア(6)のカッター(5)とスロア(23)のメンテナンス用の開閉蓋(42)をフロア(7)に設け、該開閉蓋(42)の開放操作を検出するセンサ(30)を該開閉蓋(42)の近傍に設け、該センサ(30)が開閉蓋(42)の開放操作を検出すると、前記カッター(5)及び/又はスロア(23)の駆動を停止させる制御部(33)を備えた乗用芝刈機である。
【0005】
請求項2記載の発明は、フロア(7)上には操縦席(11)を設け、該操縦席(11)も前記フロア(7)の開閉蓋(42)と一体化して開閉自在とし、モーア側シュータ(27)の上方部も開閉自在とする請求項1記載の乗用芝刈機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、センサ(30)がメンテナンス用開閉蓋(42)の開放操作を検出すると、モーア(6)のカッター(5)及び/又はスロア(23)の駆動を停止するので、安全にモーア(6)、シュータ(27)及びスロア(23)を点検・修理できる。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、操縦席(11)をフロア(7)の開閉蓋(42)と一体化して開閉自在とし、モーア側シュータ(27)の上方部も開閉自在とするとモーア側シュータ(27)内部の点検が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
本実施例の乗用型芝刈機1の側面図を図1に、平面図を図2に示す。
走行車体2の前部と後部に夫々前輪3、3と後輪4、4を備え、車体2の前部の下方にはカッター5を有する芝草刈り取り用のモーア6が設けられ、車体2の前部上方のフロア7にはステアリングコラム8を立設し、該コラム8の上部にはハンドル10が設けられている。またハンドル10の後方には操縦席11を設け、該操縦席11の後方にはエンジン12及びラジエータ9を内蔵したボンネット34が配置されており、該ボンネット34を囲むように正面視門型のコレクタバック14が設けられている。車体フレーム2の操縦席11の後方部位の左右側面に立設された一対のロプス13と前記コレクタバック14の両側面には一対のコレクタ昇降リンク17が回動自在に取り付けられている。
【0009】
図1の側面図に示すように本実施例の乗用芝刈機1は後輪操舵のフロントモーア6の前端とフロア7の前端を芝刈機側面視でほぼ同一前後位置に配置し、また前輪3の車軸3aと作業者の操縦席11の着座位置も芝刈機側面視でほぼ同一前後位置に配置している。
【0010】
フロア7の前端がモーア6の前端に比べて前過ぎると芝草の刈り残しができ、またフロア7の前端がモーア6の前端に比べて後ろ過ぎると芝草の刈取り位置合わせが困難となる。さらにフロア7の前端とモーア6の前端が同一芝刈機側面視でほぼ同一前後位置にあると、壁際等で前進作業した場合に障害物とモーア6の距離が分りやすいので、芝草の刈取作業性が良い。また、操縦席11の作業者は、前輪3の真上にいることになり、旋回軸(車軸3a)に近い位置に着座していることになり、芝刈機6の旋回時に作業者が振られにくく、操作性が良い。
【0011】
モーア6は車体2に端部が回動自在に取り付けられたリンクアーム38の他端部に連結しており、該リンクアーム38が操縦席11のサイドに配置されたモーア昇降レバー39の操作により車体2に取り付けられたシリンダー37を作動してモーア6の昇降を行うことができる。
【0012】
エンジン12の出力はユニバーサルジョイント35を介してHST19を経てミッションケース15に入力され、エンジン12の回転動力は変速装置で変速され、該変速された走行動力により後輪4,4が駆動される。
【0013】
さらに、ミッションケース15の前方上側にスロア駆動軸20を突設し、下側にPTO軸16を突設し、PTO軸16からモーア駆動軸18に動力を伝達している。スロア23はスロア入切クラッチ41を経由してスロア駆動軸20に伝達された変速装置からの動力で作動する。また、PTO軸16にはPTO入切クラッチ40を介して変速装置からの動力が伝達される。また、PTO軸16にはモーア駆動軸18が接続されているので、PTO軸16を介してモーア駆動軸18へ動力が伝達され、モーア6が駆動される。
【0014】
スロア23はスロアケース24に収容されているが、該スロアケース24の上部にはスロアケース24とコレクタバック14を繋ぐ芝草搬送用のコレクタ側シュータ26が設けられている。また、スロア23とモーア6の間にはモーア側シュータ27が配置されていて、モーア6により刈り取られた芝草はモーア側シュータ27とコレクタ側シュータ26を経由してスロア23により後方のコレクタバック14に空気搬送される。
【0015】
ミッションケース15の前面にPTO軸16とモーア駆動軸18を設け、該ケース15に隣接させてスロアケース24を直接接続しているので、これら2つのケース15,24の取付構造が簡素化、かつ互いに強固に接続できる。
【0016】
前記モーア駆動軸18には電磁バルブで作動制御されるクラッチを介してモーア6のカッター5の回転軸に動力が伝達され、カッター5の回転動力となる。
【0017】
本実施例の乗用芝刈機の操縦席11は、図1の点線で示すようにフロア7の一部であるシートフロア(開閉蓋)42と共にフロア7に設けられた回動軸36を中心に上方へ回動可能な構成であり、該フロア7の一部を開くと、図2に示すようにモーア側シュータ27とスロア23をメンテナンスできる。
【0018】
また、図3に示すようにモーア側シュータ27の上半分27a(天井センサと一部側板)を開閉できる構成にしておくと、フロア7の一部を開放する場合に、前記シュータ上半分27aが回動でき、シュータ27内部及びスロア23およびスロアケース24内部での芝草などの詰まりを除去するなど、シュータ27とスロア23のメンテナンスが可能となる。
【0019】
このように操縦席11とフロア7の一部を開放した場合にはモーア6とブロワ23の駆動を「切」になるようにモーア6とブロワ23の駆動系統に安全装置を設ける。該安全装置は操縦席11とフロア7の一部の開放を検出するスイッチ30と該スイッチ30にスロア23のクラッチ作動用の電磁バルブを連動する構成としている。前記操縦席11とフロア7の一部を開放を検出するスイッチ30は、操縦席11の下方のフロア7に設ける。
【0020】
前記スロア駆動用のPTO軸16に設けられたクラッチ40及びモーア駆動軸18に設けられたクラッチ(図示せず)を共に油圧パックと電磁バルブの組み合わせから構成した場合には、前記操縦席11とフロア7の一部を開放する動作に連動する図示しないワイヤーを設け、前記フロア7などの開放動作に連動するワイヤーの牽引力により前記PTO軸16のクラッチ40及びモーア駆動軸18のクラッチを作動させる油圧パックがオフとなりスロア23とモーア6が停止する構成を採用しても良い。
【0021】
図4には制御装置33のブロック図を示す。制御装置33にはスイッチ30が接続され、スロア駆動部とカッター駆動部が接続されている。スイッチ30により操縦席11とフロア7の一部を開放したときスロア23又はモーア6の誤作動を防止する。
【0022】
上記スイッチ30及びワイヤーにより、操縦席11とフロア7の一部を開放したときスロア23又はモーア6の誤作動を防止することができ、作業者の受傷防止を図り、安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、家庭用、産業用の乗用芝刈機として有用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の乗用芝刈機の側面図である。
【図2】図1の乗用芝刈機の平面図である。
【図3】図1の乗用芝刈機のモーア側シュータの上半分を開閉できる構成の斜視図である。
【図4】図1の乗用芝刈機のスイッチにより操縦席とフロアの一部を開放したときスロア又はモーアの誤作動防止をする制御ブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
1 乗用型芝刈機 2 走行車体
3 前輪 3a 前輪車軸
4 後輪 5 カッター
6 モーア 7 フロア
8 ステアリングコラム 9 ラジエータ
10 ハンドル 11 操縦席
12 エンジン 13 ロプス
14 コレクタバック 15 ミッションケース
16 PTO軸 17 コレクタ昇降リンク
18 モーア駆動軸 19 HST
20 スロア駆動軸 23 スロア
24 スロアケース 26 コレクタ側シュータ
27 モーア側シュータ 27a シュータ上半分
30 スイッチ(センサ) 33 制御装置
34 ボンネット 35 ユニバーサルジョイント
36 シート回動軸 37 モーア昇降シリンダ
38 リンクアーム 39 モーア昇降レバー
40 PTO入切クラッチ 41 スロア入切クラッチ
42 シートフロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッター(5)を有するモーア(6)と、該モーア(6)で刈り取られた芝草を送風搬送するスロア(23)と、該スロア(23)により搬送される芝草を搬送するシュータ(26,27)と、該シュータ(26,27)により搬送される芝草を収容するコレクタバック(14)を走行車体(2)に支持させた乗用芝刈機において
モーア(6)とモーア側シュータ(27)はフロア(7)より下方の走行車体(2)の腹下部に配置し、モーア(6)のカッター(5)とスロア(23)のメンテナンス用の開閉蓋(42)をフロア(7)に設け、該開閉蓋(42)の開放操作を検出するセンサ(30)を該開閉蓋(42)の近傍に設け、該センサ(30)が開閉蓋(42)の開放操作を検出すると、前記カッター(5)及び/又はスロア(23)の駆動を停止させる制御部(33)を備えたことを特徴とする乗用芝刈機。
【請求項2】
フロア(7)上には操縦席(11)を設け、該操縦席(11)も前記フロア(7)の開閉蓋(42)と一体化して開閉自在とし、モーア側シュータ(27)の上方部も開閉自在とすることを特徴とする請求項1記載の乗用芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−304660(P2006−304660A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130004(P2005−130004)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】