説明

乳化剤組成物、乳化組成物及びその安定性の改良方法

【課題】乳化性及び乳化安定性に優れた乳化剤組成物、及び粒子径が小さく、粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存、冷凍解凍、経時変化などの虐待(過酷条件)によっても乳化粒子同士が凝集したり、合一して乳化状態が劣化することがない、非常に安定な乳化組成物を提供する。
【解決手段】シュガービートペクチンにローメトキシルペクチンを混合する。好ましくは、ローメトキシルペクチンがアミド化されていないペクチンを使用する。シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの配合割合が重量比で、10:90〜90:10である。更に、シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンを混合後、相対湿度20〜90%および50〜150℃の条件下、粉末状態で1〜48時間加熱処理されたものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた乳化安定性を有する乳化剤組成物、乳化組成物及びその調製方法に関する。詳細には、従来優れた乳化力を有する素材として従来から知られているシュガービートペクチンに、更に良好な乳化安定性を付与した乳化剤組成物、及びかかる乳化剤組成物を用いた乳化組成物並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
シュガービートペクチンは、甜菜(Beta vulgaris LINNE var. rapa DUMORTIER)に由来する天然の高分子多糖類であり、α−1,4グリコシド結合したD−ガラクツロン酸の主鎖と、主にアラビノース、ガラクトースやグルコース等の中性糖からなる側鎖、及び側鎖に結合したタンパクから構成されている。その平均分子量はシトラス由来の一般的なペクチンの約1.5〜3倍に相当する約40〜55万程度であり、またシトラス由来のペクチンよりも側鎖の割合が多いため、より球状に近い構造をしているものと推定される。さらに、シュガービートペクチンは、メチルエステル化度が50%以上、総エステル化度が85%以上であり、ハイメトキシル(HM)ペクチンに該当する。
【0003】
ペクチンは、各種乳化組成物に使用できることが知られているが、(例えば、特許文献1、特許文献2など)、ローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチンのいずれも、シトラス由来のペクチン単独では充分な乳化力を示さない場合がある。それに対して、シュガービートペクチンは、シトラス由来のペクチンに比べて高い乳化力を持ち、シュガービートペクチンだけでも少ない添加量で小さな粒子径をもつエマルションを調製することができる。
【0004】
但し、シュガービートペクチンを使用した乳化組成物については、そのエマルションの保存時における乳化安定性が必ずしも良くないことが問題となっている。この問題を解決するために、シュガービートペクチンを加熱処理する方法(特許文献3、4など)、もしくは放射線照射処理するなどして高分子化する技術(特許文献5、6など)が報告されているが、それらの処理をするためには少なからず手間と費用が必要であり、また上記の改質技術では乳化安定性が不十分な場合もあった。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−96010号公報
【特許文献2】特開2000−139344号公報
【特許文献3】特表2005−525808号公報
【特許文献4】特開2005−261430号公報
【特許文献5】特開2006−274226号公報
【特許文献6】特表2004−536624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題に鑑み、本発明は、本来乳化力に優れた素材であるシュガービートペクチンに、更に優れた乳化安定性を付与することにより、更に安定な乳化組成物を提供することを目的とする。具体的には、本発明はシュガービートペクチンの乳化安定性を効率良く高める方法を提供することを目的とする。更に本発明は、こうして得られた乳化安定性に優れたシュガービートペクチンを含む乳化剤組成物の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題のもと鋭意研究を重ねていたところ、シュガービートペクチンにローメトキシルペクチンを混合することにより、シュガービートペクチンが有する高い乳化力に加えて、保存時における乳化安定性が向上した乳化組成物を調製できることを見いだした。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、下記の態様を含むものである:
項1.シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンを含むことを特徴とする乳化剤組成物。
項2.ローメトキシルペクチンがアミド化されていないことを特徴とする、項1に記載の乳化剤組成物。
項3.シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの配合割合が重量比で、10:90〜90:10である、項1又は2に記載の乳化剤組成物。
項4.シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンが、相対湿度20〜90%および50〜150℃の条件下、粉末状態で1〜48時間加熱処理されたものである、項1乃至3のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【0009】
項5.項1乃至4のいずれかに記載の乳化剤組成物を用いて調製することを特徴とする乳化組成物。
項6.乳化組成物が、精油、油性香料、油性色素、油溶性ビタミン、多価不飽和脂肪酸、動植物油脂及び中鎖トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1種の疎水性物質を分散質として有するO/W型またはW/O/W型の乳化物であることを特徴とする項5に記載の乳化組成物。
項7.飲食品である、項5又は6に記載の乳化組成物。
項8.乳化組成物の調製の際、項1乃至4のいずれかに記載の乳化剤組成物を用いることを特徴とする乳化組成物の安定性を改良する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シュガービートペクチンにローメトキシルペクチンを混合することにより、乳化力及び乳化安定性に優れた乳化剤組成物を取得することができる。
【0011】
斯くして調製される本発明の乳化剤組成物は、精油、油性色素、油性香料、油溶性ビタミン等の各種の疎水性物質の乳化に好適に使用することができる。本発明の乳化剤組成物を用いて調製される乳化組成物(エマルション)は、シュガービートペクチンのみを用いて調製した乳化組成物と比較して、粒子の粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存などの虐待(過酷条件)によっても乳化粒子同士が凝集したり、合一して乳化状態が劣化することが有意に抑制されており、非常に安定である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
(1)シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンを含む乳化剤組成物
本発明の乳化剤組成物は、シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンを併用して含むことを特徴とする。本発明により、本来高い乳化力を有するシュガービートペクチンに、高い乳化安定性を付与できるようになり、本発明の乳化剤組成物を使用することで、乳化組成物に高い乳化力及び乳化安定性を与えることができる。本発明の乳化剤組成物は、シュガービートペクチンにローメトキシルペクチンを粉体混合することによって調製することができる。また、粉体混合されたシュガービートペクチンとローメトキシルペクチンを流動層造粒機などの造粒装置を用いて造粒することにより、顆粒化した乳化剤製剤をつくることもできる。
【0013】
本発明において、原料として用いられるシュガービートペクチンは、甜菜(Beta vulgaris LINNE var. rapa DUMORTIER)に由来する天然の高分子多糖類であり、α−1,4グリコシド結合したD−ガラクツロン酸の主鎖と、主にアラビノース、ガラクトース及びグルコース等の中性糖からなる側鎖、及び側鎖に結合したタンパクから構成されている。その平均分子量はシトラス由来の一般的なペクチンの約1.5〜3倍に相当する約40〜55万程度であり、またシトラス由来のペクチンよりも側鎖の割合が多いため、より球状に近い構造をしているものと推察される。さらに、シュガービートペクチン(原料)は、メチルエステル化度が50%以上、総エステル化度が85%以上であり、HMペクチンに該当する。
【0014】
当該シュガービートペクチンは、市販されており、誰でも商業的に入手することができる。商業的に入手可能な製品としては、例えば、ビストップD−2250(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を挙げることができる。
【0015】
本発明で使用するローメトキシルペクチンも、また、食品添加物として広く流通しており、容易に入手することができるが、好ましくは食品分野において最も多く使われているシトラス由来のローメトキシルペクチンを使用できる。原料としてはレモン、ライム、オレンジもしくはグレープフルーツ等を挙げることができる。なお、当該ペクチンのエステル化度は50%未満であるローメトキシルペクチンであることが望ましい。シトラス由来のペクチンは、原料からの粗抽出段階ではエステル化度50%以上のハイメトキシル状態である。メトキシル化度を低減させるためには一般的に酸、アルカリ、酵素、アンモニア処理及びその組み合わせが用いられる。アンモニア処理の際にペクチンはアミド化されるが、本発明に用いるローメトキシルペクチンは、アミド化されていないものが好ましい。
【0016】
通常、シュガービートペクチンおよびローメトキシルペクチンは、塊状物、玉状物、粗粉砕物、顆粒状、粒状、または粉末状(スプレードライ粉末を含む)の形態の別を問わず、いずれの形態のものを使用することができる。
【0017】
更には、シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの配合割合は、重量比で、10:90〜90:10、より好ましくは、40:60〜80:20、更に好ましくは、50:50〜70:30とするのが好ましい。
【0018】
上記の方法によって調製される乳化剤組成物は、原料として用いたシュガービートペクチンに比べて乳化安定性に優れている。一般に乳化剤の乳化安定性は、調製されるエマルションの平均粒子径が小さく、またその粒子径が経時的に安定して保持されるほど、優れていると評価される(「アラビアゴムで乳化したO/Wエマルジョンの濁度比法による研究」、薬学雑誌、112(12).906−913.(1992)参照)。なお、ここでかかる本発明の乳化剤組成物の乳化力の評価基準となる乳化組成物(エマルション)の調製方法、その平均粒子径の測定方法及び経時的安定性の評価方法については、後述する実験例に記載する方法に従うことができる。
【0019】
更に、シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンは、粉体混合を行う前、もしくは、粉体混合した後に、加熱処理をすることにより、更に高い乳化安定性を付与することができる。更には、粉体混合後に加熱処理を行うのが好ましい。
【0020】
加熱処理の条件としては、相対湿度20〜90%および50〜150℃の条件下、粉末状態で1〜48時間である。詳細には、通常、上記の相対湿度および温度範囲になるように制御された恒温恒湿槽内で、粉末状のシュガービートペクチンとローメトキシルペクチンを、それぞれ単独か或いは両者を粉体混合した後、所定時間加熱処理することによって行うことができる。相対湿度20〜90%および温度50〜150℃の条件で1〜48時間加熱処理して調製されるものであるが、好適には相対湿度50〜90%および温度50〜90℃の条件、より好適には相対湿度60〜80%および温度60〜80℃の条件で、好ましくは1〜24時間程度、より好ましくは2〜24時間加熱処理したペクチンを用いることができる。
【0021】
このように調製される加熱処理ペクチンを乳化剤として使用すると、未加熱処理(未改質)のペクチンに比べて、乳化組成物を調製した場合の乳化粒子の平均粒子径が小さく、その経時的な変化も少ない(高い乳化性および乳化安定性を有する)。この作用機序としては、加熱処理によってタンパク質成分を介した分子間或いは分子内相互作用が起こり、ペクチンの疎水性が増すことによって界面活性が上昇するものと考えられる。前記加熱処理ペクチンを使用することにより、未加熱のペクチン(シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチン)を使用するよりも、乳化組成物の調製時に添加する量を減らすことができると言うメリットもある((2)乳化組成物にて詳述)。
【0022】
なお、当該加熱処理は減圧下で行うこともできる。減圧条件は、特に制限されないが、例えば0.01〜500mmHg程度、好ましくは0.01〜300mmHg程度、より好ましくは0.01〜200mmHg程度の条件を挙げることができる。
【0023】
本発明の乳化剤組成物は、特に食品、医薬品、医薬部外品、または香粧品の分野において、とりわけ経口的に摂取され得る可食性製品の乳化剤として好適に使用することができる。具体的には、飲料、粉末飲料、デザート、チューイングガム、錠菓、スナック菓子、水産加工品、畜産加工品、レトルト食品などの飲食品等の乳化、油性香料の乳化、油性色素の乳化などに、好適に使用することができる。本発明の乳化剤はそのまま水溶液の状態または顆粒状若しくは粉末状で用いることもできるが、必要に応じてその他の担体や添加剤を配合して調製することもできる。この場合、使用される担体や添加剤は、乳化剤組成物を用いる製品の種類やその用途に応じて、常法に従って適宜選択することができる。例えば、デキストリン、マルトース、乳糖等の糖類やグリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールと混合して使用することができる。
【0024】
(2)乳化組成物
また、本発明は、前述の乳化剤組成物を用いて調製される乳化組成物(エマルション)を提供する。当該乳化組成物は、前述の乳化剤組成物を使用して、分散質として疎水性物質を親水性分散媒中に分散安定化することによって調製することができる。ここで乳化組成物としては、水中油滴(O/W)型やW/O/W型の乳化組成物を挙げることができる。
【0025】
前述の乳化剤組成物の乳化組成物に対する配合割合は、最終乳化組成物100質量%中の濃度が0.01〜10質量%程度、好ましくは0.05〜5質量%となるような割合を挙げることができる。中でも、乳化剤組成物の配合割合として、少なくとも1.0質量%以上含むとより高い乳化安定効果を示すが、前述の加熱処理を行ったシュガービートペクチンとローメトキシルペクチンを使用した場合には、1.0質量%未満においても高い乳化安定性を有する乳化組成物を調製することが可能となる。
【0026】
ここで乳化される疎水性物質は通常エマルション形態に供されるもの若しくはその必要性のあるものであれば特に制限されないが、好ましくは食品、医薬品、医薬部外品または香粧品分野で用いられるもの、より好ましくは経口的に用いられることが可能な(可食性)疎水性物質を挙げることができる。
【0027】
具体的には、オレンジ、ライム、レモン及びグレープフルーツなどの柑橘系植物等の基原植物から得られる各種精油、ペパー、シンナモン及びジンジャーなどの基原植物からオレオレジン方式で得られるオレオレジン、ジャスミンやローズなどの基原植物からアブソリュート方式で得られるアブソリュート、その他、合成香料化合物、及び油性調合香料組成物などの油性香料;β-カロチン、パプリカ色素、リコピン、パーム油、カロチン、アスタキサンチン、ドナリエラカロチン及びニンジンカロチンなどの油性色素;ビタミンA,D,E及びKなどの油溶性ビタミン;ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、及びγ−リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸;大豆油、菜種油、コーン油、植物性ステロール及び魚油などの動植物油脂;SAIB(Sucrose acetate isobutyrate:ショ糖酢酸イソ酪酸エステル)、エステルガム(Glycerol Triabietate Ester:トリアビエチン酸エステル)またはC6〜C12の中鎖トリグリセライドなどの加工食品用油脂及びこれら可食性油性材料の任意の混合物を例示することができる。
【0028】
乳化組成物(乳化組成物)の調製方法は、特に制限されず、水中油滴(O/W)型エマルションまたはW/O/W型エマルションの調製に関する常法に従って、疎水性物質と親水性分散媒とを上記乳化剤組成物の存在下で、ホモジナイザーや高圧噴射などを利用して機械的に攪拌乳化することによって行うことができる。より具体的には、下記の方法を例示することができる。
【0029】
まず、シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンを含む本発明の乳化剤組成物を水等の親水性溶媒に溶解し、これに、目的の疎水性物質(例えば油脂、また予め油脂に香料や色素を溶解した混合液)を撹拌機等で混合し、予備乳化する。なお、この際、必要に応じてエステルガムやSAIB等の比重調整剤を用いて疎水性物質の比重を調整してもよい。次いで得られた予備乳化混合液を、乳化機を利用して乳化する。
【0030】
なお、ここで疎水性物質としては前述のものを例示することができるが、油性香料や油性色素を用いて乳化香料や乳化色素を調製する場合は、上記疎水性物質として予め油脂に油性香料や油性色素を溶解した混合液を用いることが好ましい。これによって、より乳化を安定化し、また成分の揮発を予防することができる。また油性香料や油性色素を溶解する油脂としては、特に制限されないが、通常、中鎖トリグリセライド(炭素数6〜12の脂肪酸トリグリセライド)、及びコーン油、サフラワー油、または大豆油などの植物油を用いることができる。
【0031】
乳化に使用する乳化機は、特に制限されず、目的とする乳化粒子の大きさや、試料の粘度などに応じて適宜選択することができる。例えば、高圧ホモジナイザーの他、ナノマイザーやディスパーミル、コロイドミルなどの乳化機を使用することができる。
【0032】
乳化工程では、前述するように、親水性分散媒中に、攪拌下、疎水性物質を添加し、攪拌羽を回転して予備乳化し、粒子径約2〜5μmの乳化粒子を調製した後、ホモジナイザーやナノマイザーなどの乳化機を用いて微細で均一な粒子(例えば、平均粒子径1μm以下、好ましくは0.8μm以下)を調製する。
【0033】
なお、β−カロチンなどの色素の多くは、それ自身、結晶の状態でサスペンションとして存在する。したがって、これらの色素をエマルション(乳化色素)として調製するには、まず、色素の結晶を適当な油脂と高温で混合し溶解してから、親水性分散媒に添加することが好ましい。
【0034】
斯くして前述の乳化剤組成物を用いて調製される乳化組成物(エマルション)は、シュガービートペクチンのみを用いて調製した乳化組成物と比較して、粒子の粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存、経時変化などの虐待(過酷条件)によっても、乳化粒子同士が凝集したり、合一して乳化状態が劣化することが有意に抑制されており、乳化安定性が高い。
【0035】
なお、本発明の乳化組成物中における、親水性分散媒と疎水性物質の配合割合としては任意に調整することができるが、例えば、親水性分散媒:疎水性物質=50:50〜99:1、好ましくは、70:30〜95:5の割合で配合することができる。
【0036】
本発明の乳化剤組成物を使用して調製した乳化組成物を用いる飲食物としては、特に制限はされないが、例えば、乳飲料、乳酸菌飲料、炭酸飲料、果実飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、紅茶飲料、緑茶飲料などの飲料類;カスタードプリン、ミルクプリンなどのプリン類;ゼリー、ババロア及びヨーグルトなどのデザート類;ミルクアイスクリーム、アイスキャンディーなどの冷菓類;チューインガムや風船ガムのガム類;マーブルチョコレートなどのコーティングチョコレートの他、メロンチョコレートなどの香味を付与したチョコレートなどのチョコレート類;ハードキャンディー、ソフトキャンディー、キャラメル、ドロップなどのキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかきなどの焼き菓子類;コーンスープ、ポタージュスープなどのスープ類、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、たれ、ソースなどのソース類;ハム、ソーセージ、焼き豚などの畜肉加工品;魚肉ソーセージ、蒲鉾などの水産練り製品;バター、マーガリン、チーズなどの油脂製品類などの加工食品を例示することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の内容を以下の実施例及び比較例、並びに実験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、下記において特に言及しないかぎり、「%」は「重量%」を意味するものとする。
【0038】
シュガービートペクチンとして、分子量 約50万、乾燥減量 約10%の粉末状(粒子径:100〜150μm)のもの(ビストップD−2250、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を用いた。シトラス由来のローメトキシルアミド化ペクチンとして、分子量 約20万、エステル化度 約30%、アミド化度 約20%、乾燥減量 約10%の粉末状(粒子径:100〜150μm)のもの(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を用いた。シトラス由来のローメトキシルペクチン(アミド化していないもの)として、分子量 約10万、エステル化度 約30%、アミド化度 0%、乾燥減量 約10%の粉末状(粒子径:100〜150μm)のもの(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を用いた。シトラス由来のハイメトキシルペクチンとして、分子量 約20万、エステル化度 約72%、乾燥減量 約10%の粉末状(粒子径:100〜150μm)のもの(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を用いた。
【0039】
実施例1 シュガービートペクチンとローメトキシルアミド化ペクチンの乳化剤組成物
シュガービートペクチン50gとシトラス由来のローメトキシルアミド化ペクチン50gとを粉体混合した。
【0040】
実施例2 シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの乳化剤組成物
シュガービートペクチン50gとシトラス由来のローメトキシルペクチン50gとを粉体混合した。
【0041】
実施例3 シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの乳化剤組成物
シュガービートペクチン30gとシトラス由来のローメトキシルペクチン70gとを粉体混合した。
【0042】
実施例4 シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの乳化剤組成物
シュガービートペクチン10gとローメトキシルペクチン90gとを粉体混合した。
【0043】
実施例5 シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの乳化剤組成物造粒品
流動層造粒機(UNI GRATT; 大河原製作所製) にシュガービートペクチン200gおよびシトラス由来のローメトキシルペクチン200gを入れ、吸気温度を85 ℃ に設定して、イオン交換水噴霧下で加熱流動させながら造粒した。該造粒品は粒子径200〜1000μmの顆粒となり、乾燥減量は約10%となった。
【0044】
実施例6 シュガービートペクチンとローメトキシルアミド化ペクチンの乳化剤組成物(加熱処理品)
実施例1の乳化剤組成物を、底面10cm×10cmの陶器製の容器に均一に入れ(厚さ5mm程度)、温度を80℃、相対湿度を80%に調整した恒温槽中で24時間加熱処理した。加熱処理後の粉末の粒子径は処理前から変化しなかったが、乾燥減量は約14%となった。
【0045】
実施例7 シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの乳化剤組成物(加熱処理品)
実施例2の乳化剤組成物を、底面10cm×10cmの陶器製の容器に均一に入れ(厚さ5mm程度)、温度を80℃、相対湿度を80%に調整した恒温槽中で24時間加熱処理した。加熱処理後の粉末の粒子径は処理前から変化しなかったが、乾燥減量は約14%となった。
【0046】
比較例1 シュガービートペクチン(単品)
シュガービートペクチン(単品)を用いた。
【0047】
比較例2 ローメトキシルアミド化ペクチン(単品)
シトラス由来のローメトキシルアミド化ペクチン(単品)を用いた。
【0048】
比較例3 ローメトキシルペクチン(単品)
シトラス由来のローメトキシルペクチン(アミド化していないもの)(単品)を用いた。
【0049】
比較例4 シトラス由来のハイメトキシルペクチン(単品)
シトラス由来のハイメトキシルペクチン(単品)を用いた。
【0050】
比較例5 シュガービートペクチンとシトラス由来のハイメトキシルペクチンの乳化剤組成物
シュガービートペクチン50gとシトラス由来のハイメトキシルペクチン50gとを粉体混合した。
【0051】
実験例1:乳化性及び乳化安定性の評価(1)
上記実施例1乃至7及び比較例1乃至5で調製した乳化剤組成物を用い、各々下記の方法によって乳化組成物を調製し(実施例1−1〜1−7,比較例1−1〜1−5)、乳化性及び乳化安定性を評価した。
【0052】
<乳化組成物の調製>
実施例1−1
実施例1で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド(オクタン酸・デカン酸トリグリセライド)であるO.D.O(商品名、日清オイリオ株式会社製)(以下、同様)15gを添加混合した。衝突型ジェネレーター(Nano-Mizer NM2, 吉田機械興業株式会社製)を用いて圧力50MPaでのホモジナイズを2回繰り返し、乳化組成物を調製した。
【0053】
実施例1−2
実施例2で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0054】
実施例1−3
実施例3で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0055】
実施例1−4
実施例4で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0056】
実施例1−5
実施例5で調製した乳化剤組成物造粒品1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0057】
実施例1−6
実施例6で調製した乳化剤組成物(加熱処理品)0.75g(粉末換算)を25℃のイオン交換水84.25gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0058】
実施例1−7
実施例7で調製した乳化剤組成物(加熱処理品)0.75g(粉末換算)を25℃のイオン交換水84.25gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0059】
比較例1−1
比較例1のシュガービートペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0060】
比較例1−2
比較例2のシトラス由来のローメトキシルアミド化ペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0061】
比較例1−3
比較例3のシトラス由来のローメトキシルペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0062】
比較例1−4
比較例4のシトラス由来のハイメトキシルペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0063】
比較例1−5
比較例5で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を25℃のイオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサーを用いて24000rpmで攪拌下、中鎖トリグリセライド15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例1−1と同じ)。
【0064】
<乳化性および保存後の乳化安定性の評価方法>
上記で得られた各エマルションについて、乳化直後及び60℃で3日間保存した後の体積平均粒子径(μm)と粒子の分布範囲を、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100(島津製作所(株))を用いて測定した。なお、平均粒子径が小さい程、また、粒子の分布範囲が狭い程、安定な乳化状態であることを示す。結果を表1及び2に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
乳化直後の実施例1−1乃至1−5と比較例1−1の平均粒子径および分布範囲には顕著な差が認められなかった。また、比較例1−2乃至1−4の乳化直後の平均粒子径は比較例1−1と比べて顕著に大きく、シトラス由来のペクチン単独ではローメトキシルペクチン、ハイメトキシルペクチンのいずれにおいても乳化性が不十分であることがわかった。比較例1−5の乳化直後の平均粒子径は比較例1−1と比べて僅かに大きくなった。
【0068】
更に、60℃で3日間保存後では、比較例1−1では約4倍の粒子径の増加が確認されたが、実施例1−1乃至1−5では平均粒子径の増加が抑制された。中でも、実施例1−2、1−3及び1−5でこの効果が顕著であり、乳化安定性が向上することが示された。これらの結果からアミド化されていないローメトキシルペクチンのほうがハイメトキシルペクチン及びアミド化されているローメトキシルペクチンに比べてより高い乳化安定効果を発揮することが確認された。中でも、シュガービートペクチンとシトラス由来のローメトキシルペクチンの配合割合が、3:7〜5:5である実施例1−1〜1−3、1−5が非常に良好な乳化安定性を示した。
【0069】
更には、乳化剤組成物の濃度が実施例1−1〜1−5の半分(0.75%)である、乳化剤組成物加熱処理品を用いた実施例1−6及び1−7の平均粒子径は実施例1−1及び1−2と同等であり、60℃で3日間保存後においても十分に小さかった。本発明の乳化剤組成物は加熱処理することにより、非加熱のものと比較して、約半分の添加量で同等の乳化性と乳化安定性を示すことが確認された。
【0070】
実験例2:乳化性及び乳化安定性の評価(2)
上記の実施例2及び比較例1で調製した乳化剤組成物を用い、下記の様々なオイルを用いて乳化組成物を調製し、その乳化性及び乳化安定性を評価した。
【0071】
実施例2−1
実施例2で調製した乳化剤組成物2.0g(粉末換算)を、イオン交換水68gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、エステルガム(ハーキュリーズ社製)を用いて比重を約0.95g/mlに調整したオレンジオイル(FUSGAARD社製)30gを添加混合した。衝突型ジェネレーター(Nano-Mizer NM2, 吉田機械興業株式会社製)(以下、同様)を用いて、圧力20MPaでのホモジナイズを2回繰り返し、乳化組成物を調製した。
【0072】
実施例2−2
実施例2で調製した乳化剤組成物2.0g(粉末換算)を、イオン交換水68gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(Sucrose acetate isobutyrate)であるSAIB(EASTMAN CHEMICAL PRODUCTS社製)を用いて比重を約0.95g/mlに調整したライムオイル(J.MANHEIMER社製)30gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0073】
実施例2−3
実施例2で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を、イオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、コーヒーフレーバーオイル(J.MANHEIMER社製)15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0074】
実施例2−4
実施例2で調製した乳化剤組成物1.5g(粉末換算)を、イオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、大豆白絞油(不二製油社製)15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0075】
比較例2−1
比較例1のシュガービートペクチン(単品)2.0g(粉末換算)を、イオン交換水68gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、エステルガム(ハーキュリーズ社製)を用いて比重を約0.95g/mlに調整したオレンジオイル(FUSGAARD社製)30gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0076】
比較例2−2
比較例1のシュガービートペクチン(単品)2.0g(粉末換算)を、イオン交換水68gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(Sucrose acetate isobutyrate)であるSAIB(EASTMAN CHEMICAL PRODUCTS社製)を用いて比重を約0.95g/mlに調整したライムオイル(J.MANHEIMER社製)30gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0077】
比較例2−3
比較例1のシュガービートペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を、イオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、コーヒーフレーバーオイル(J.MANHEIMER社製)15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0078】
比較例2−4
比較例1のシュガービートペクチン(単品)1.5g(粉末換算)を、イオン交換水83.5gに溶解し、クエン酸水溶液でpHを3.25に調整した。この水溶液に、高速ミキサー(Heidlph社製)を用いて24000rpmで攪拌下、大豆白絞油(不二製油社製)15gを添加混合した。衝突型ジェネレーターを用いて乳化し、乳化組成物を調製した(乳化条件は実施例2−1と同じ)。
【0079】
<乳化性および乳化安定性の評価方法>
上記で得られた各乳化組成物について、乳化直後及び60℃で3日間保存した後の体積平均粒子径(μm)と粒子の分布範囲を、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2100、島津製作所(株))を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例2−1乃至2−4と比較例2−1乃至2−4を比較すると、本実験で用いられた全てのオイルにおいて、実施例(シュガービートペクチンとシトラス由来のローメトキシルペクチンの組成物)は比較例(シュガービートペクチン単品)に比べ、乳化直後の平均粒子径は全てのオイルでほぼ同等であり、粒子の分布範囲もコーヒーを除いてほぼ同等であったのに対し、平均粒子径及び分布範囲ともに、60℃、3日後の経時変化が小さく、高い乳化安定性を示した。本実験で用いた4種類のオイルは、いずれも食品産業界で汎用されているものであり、この結果から、本発明の乳化剤組成物が幅広い食品に適応できることがわかる。
【0082】
実験例3:本発明の乳化剤組成物によって調製された乳化組成物の飲料中での安定性試験
<オレンジオイルエマルションを用いた飲料の調製>
実施例3−1
糖度55%のシロップ120gに1.5mlの20%安息香酸ナトリウム水溶液と0.5gの実施例2−1(オレンジオイルエマルション)を添加し、プロペラ攪拌機を用いて回転速度2000rpmで10分間攪拌した。この溶液のpHを50%クエン酸水溶液を用いて3.3に調整し、溶液重量をイオン交換水で125gに調整した後に、プロペラ攪拌機を用いて回転速度2000rpmで60分間攪拌し、シロップエマルションを調製した。300ml容量のペットボトルに250gのミネラル炭酸水(サントリー社製)を注ぎ、その上から上記シロップエマルション混合液50gを添加し、ペットボトルをゆっくりと10回転倒し、内容物を穏やかに攪拌することによってオレンジオイルエマルションを用いた飲料を調製した。
【0083】
比較例3−1
糖度55%のシロップ120gに1.5mlの20%安息香酸ナトリウム水溶液と0.5gの比較例2−1(オレンジオイルエマルション)を添加し、プロペラ攪拌機を用いて回転速度2000rpmで10分間攪拌した。この溶液のpHを50%クエン酸水溶液を用いて3.3に調整し、溶液重量をイオン交換水で125gに調整した後に、プロペラ攪拌機を用いて回転速度2000rpmで60分間攪拌し、シロップエマルションを調製した。300ml容量のペットボトルに250gのミネラル炭酸水(サントリー社製)を注ぎ、その上から上記シロップエマルション混合液50gを添加し、ペットボトルをゆっくりと10回転倒し、内容物を穏やかに攪拌することによってオレンジオイルエマルションを用いた飲料を調製した。
【0084】
<安定性の評価>
飲料の安定性は、調製直後および40℃で7日保存後における外観から評価した。評価を表4及び図1に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
表中の「クリーミング」「下すき」「ネックリング」の語についての説明
クリーミング:乳化粒子同士が合一(凝集)し、大きくなり、系内の連続相(本実験例の場合は水相)との比重差の影響が大きくなるために起こる、乳化粒子が容器上部、水面近くに浮き上がる現象のことを言う。粒子径1μm以上の粒子が多くなるとクリーミングしやすくなる。
下すき:クリーミングによって、乳化粒子が容器上部に偏るため、その分容器下部の水相の割合が大きくなる結果、容器下部が透明になっていく現象のことを言う。
ネックリング:クリーミングによって容器上部のクリーミング層は表面張力の影響でボトル壁面付近に集まり易くなり、容器上部(ボトルネック)にリング状の層を作る。この現象のことを言う。
【0087】
表4より、シュガービートペクチンとシトラス由来のローメトキシルペクチンの乳化剤組成物によって調製されたオレンジオイルエマルションを用いた実施例3―1の飲料は、シュガービートペクチン単独のものに比べて顕著に安定性が向上した。本発明の乳化剤組成物は、乳化安定性が良好な飲料を提供するのに役立つことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明により、乳化性及び乳化安定性に優れた乳化剤を取得することができ、粒子径が小さく、粒度分布が均一であり、かつ、加熱や長期保存、冷凍解凍、経時変化などの虐待(過酷条件)によっても乳化粒子同士が凝集したり、合一して乳化状態が劣化することが抑制されており、非常に安定な乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実験例3において、40℃で7日間保存後の容器入り飲料の写真であり、写真左の比較例3−1は、飲料上部にネックリング、下部に下すきが見られ、乳化安定性が悪くなっているのに対し、写真右の実施例3−1はネックリングも下すきも見られず良好な安定状態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンを含むことを特徴とする乳化剤組成物。
【請求項2】
ローメトキシルペクチンがアミド化されていないものを使用する、請求項1に記載の乳化剤組成物。
【請求項3】
シュガービートペクチンとローメトキシルペクチンの配合割合が重量比で、10:90〜90:10である、請求項1又は2に記載の乳化剤組成物。
【請求項4】
シュガービートペクチン及びローメトキシルペクチンが、相対湿度20〜90%および50〜150℃の条件下、粉末状態で1〜48時間加熱処理されたものである、請求項1乃至3のいずれかに記載の乳化剤組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の乳化剤組成物を用いて調製することを特徴とする乳化組成物。
【請求項6】
乳化組成物が、精油、油性香料、油性色素、油溶性ビタミン、多価不飽和脂肪酸、動植物油及び中鎖トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1種の疎水性物質を分散質として有するO/W型またはW/O/W型の乳化物であることを特徴とする請求項5に記載の乳化組成物。
【請求項7】
飲食品である、請求項5又は6に記載の乳化組成物。
【請求項8】
乳化組成物の調製の際、請求項1乃至4のいずれかに記載の乳化剤組成物を用いることを特徴とする乳化組成物の安定性を改良する方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−194613(P2008−194613A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32200(P2007−32200)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】