説明

乳化型毛髪化粧料

【課題】 処理後の毛髪に良好な感触を付与でき、かつその効果の持続性に優れており、更に操作性も良好な乳化型毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 少なくとも、(a)炭素数が12〜22のアルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、(e)アミノ変性シリコーン、および(f)ヒアルロン酸またはその塩が配合されており、(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少ないことを特徴とする乳化型毛髪化粧料により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などに好適な乳化型の毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、毛髪に対し、熱を用いたパーマ処理や縮毛矯正処理、染毛処理などの化学処理を施すことが盛んであるが、こうした処理を繰り返すことによって毛髪にはダメージが蓄積される一方で、毛髪をより美しく保ちたいとする消費者の要望が高まっている。
【0003】
こうした事情の下、前記のような処理による毛髪のダメージを抑制したり、ダメージを受けた毛髪を補修したりすることを目的として、毛髪に対する吸着力が大きく、コンディショニング作用が良好であるカチオン性界面活性剤やアミノ変性シリコーンを配合した毛髪化粧料が種々開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1や特許文献2に開示の毛髪化粧料は、配合されたカチオン性界面活性剤やアミノ変性シリコーンの機能を有効に引き出して、毛髪を良好に処理し得るものであるが、その一方で、処理効果があまり長期にわたって持続し得るものではないことから、例えば、日々毛髪をケアすることで補う必要があった。
【0005】
一方、処理効果の持続性を高めた毛髪化粧料も種々開発されている。例えば、特許文献3には、シリコーンの反応性を利用した多剤式の毛髪化粧料が提案されている。また、特許文献4および特許文献5には、カチオン性物質とアニオン性物質とを、それぞれ別の製剤に配合しておき、これらの剤を連続的に毛髪に塗布することで、毛髪処理の有効成分となるコンプレックス(複合体)を形成させる多剤式の毛髪化粧料が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−332216号公報
【特許文献2】特開2003−342135号公報
【特許文献3】特開2006−306823号公報
【特許文献4】特開2001−48751号公報
【特許文献5】特開2006−124278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような多剤式の毛髪化粧料による毛髪の処理は、その操作性や効果の点で、専門の美容師が行うことが好ましい。そこで、通常のヘアトリートメントやヘアコンディショナーのように、家庭でも使用しやすく、しかも処理効果の持続性に優れた毛髪化粧料が望まれる。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理後の毛髪に良好な感触を付与でき、かつその効果の持続性に優れており、更に操作性も良好な乳化型毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成し得た本発明の乳化型毛髪化粧料は、少なくとも、以下の(a)〜(f)成分、(a)炭素数が12〜22のアルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル(e)アミノ変性シリコーン、および(f)ヒアルロン酸またはその塩が配合されており、(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少ないことを特徴とするものである。
【0010】
前記のような多剤式の毛髪化粧料は、カチオン性成分とアニオン性成分とのコンプレックスの作用により、毛髪の処理効果の持続性が良好である一方で、毛髪の処理に手間がかかるなどの問題もあり、例えば家庭での使用には不適な面もある。
【0011】
その一方で、家庭での使用を容易にすべく、例えば、カチオン性成分とアニオン性成分とを配合して1剤式の毛髪化粧料を構成すると、前記毛髪化粧料中においてコンプレックスが形成され、特に毛髪化粧料がクリーム状の場合、もろもろとした状態になって毛髪に均一に塗布することが困難となったり、毛髪に吸着しすぎて、ベタつきが生じたり毛髪が重い感触となったりする。
【0012】
そこで、本発明では、前記(a)〜(f)の各成分を配合し、かつ(b)成分であるカチオン性界面活性剤と、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルおよび(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとの配合比率を調整して乳化型毛髪化粧料を構成することとし、これにより、カチオン性成分とアニオン性成分とのコンプレックスを形成し得るようにして、処理後の毛髪に良好な感触を付与できるようにし、かつその処理効果の持続性を向上させつつ、製剤の状態の悪化を防止し、毛髪へ適用する際の操作性を高めることを可能にした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理後の毛髪に良好な感触を付与でき、かつその効果の持続性に優れており、更に操作性も良好な乳化型毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の乳化型毛髪化粧料に係る(a)成分の、炭素数が12〜22である1級アルコールには、飽和アルコールおよび不飽和アルコールが含まれるが、乳化型毛髪化粧料の粘度調節や毛髪への塗布がより容易となることから、飽和アルコールが好ましい。具体的には、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖1級アルコール;オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノールなどの、分岐鎖を含む1級アルコール;などの飽和アルコールなどが挙げられる。乳化型毛髪化粧料においては、前記例示のアルコールの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、乳化型毛髪化粧料の粘度を調整しやすくなる点で、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用することが、より好ましい。
【0015】
乳化型毛髪化粧料における(a)成分の配合量としては、処理後の毛髪に求められる感触や、乳化型毛髪化粧料の粘度、(a)成分以外の成分との組み合わせなどに応じて適宜調節すればよいが、例えば、2〜20質量%であることが好ましい。
【0016】
また、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用する場合、乳化型毛髪化粧料における配合量は、直鎖1級アルコールを1質量%以上15質量%以下とし、分岐鎖を含む1級アルコールを1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。なお、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用する場合、処理後の毛髪の軽さと重さとのバランスをより良好にする観点からは、分岐鎖を含む1級アルコールの量を調整することがより好ましく、その乳化型毛髪化粧料における配合量を、2質量%以上4質量%以下とすることが特に好ましい。
【0017】
乳化型毛髪化粧料に係る(b)成分のカチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)などのモノアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型4級アンモニウムなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記例示のカチオン性界面活性剤の中でも、毛髪にやわらかさを付与する作用が特に良好である点で、前記のモノアルキル型4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0018】
乳化型毛髪化粧料における(b)成分の配合量としては、特に毛髪のダメージを受けている箇所への吸着をより良好とし、また、乳化型毛髪化粧料の乳化安定性をより高める観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1.4質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(b)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料の粘度が高くなりすぎて、毛髪に塗布しにくくなる虞があり、また、処理後の毛髪の感触が軽くなりすぎる虞があることから、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
乳化型毛髪化粧料に係る(c)成分のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビットなどが挙げられる[前記の各化合物中、「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している]。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルは、前記例示のもののうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料による前記の効果(毛髪に良好な感触を付与し、かつその持続性を向上させ、また、操作性を高める効果)をより良好に確保する観点からは、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、10モル以上であることが好ましく、また、60モル以下であることが好ましい。
【0020】
乳化型毛髪化粧料における(c)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(c)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
乳化型毛髪化粧料に係る(d)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル部分の炭素数が12〜22のものが好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、2〜50モルであることが好ましく、なかでも、エチレンオキサイドの付加モル数が10モル以下の場合には、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保できることから、特に好ましい。
【0022】
乳化型毛髪化粧料における(d)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(d)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
乳化型毛髪化粧料に係る(e)成分のアミノ変性シリコーンとは、アミノ基を含有するシリコーンをいい、例えば、化粧品の表示名称で、アモジメチコン、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー、アミノプロピルジメチコンなどが知られている。本発明の乳化型毛髪化粧料では、このようなアミノ変性シリコーンを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、処理後の毛髪の感触をより高める観点からは、アミノ含量が0.5%以上3.0%以下のアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0024】
アミノ変性シリコーンのアミノ含量は、シリコーンメーカー各社からアミノ変性シリコーンの物性値の一つとして示されており、具体的には、アミノ変性シリコーン中のN(窒素)含有量(質量基準)で、例えば、0.1%以上のアミノ含量のアミノ変性シリコーンが知られている。また、一般に、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンは、アミノ基を多く含んでおり、例えば毛髪への吸着がより良好であることが知られている。よって、アミノ変性シリコーンとしては、アミノ含量が0.5%以上と高く、毛髪への吸着性に優れたものを使用することが、処理後の毛髪の感触をより高め得る点で好ましい。
【0025】
なお、アミノ変性シリコーンのアミノ含量が高すぎると、毛髪に硬さやベタつきを生じさせやすくなる傾向にあることから、アミノ変性シリコーンのアミノ含量は、3.0%以下であることが好ましく、2.2%以下であることがより好ましい。
【0026】
なお、アモジメチコンの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF8004」、「KF−867S」、「KF−880」;東レ・ダウコーニング株式会社製の「BY−22−079」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「XF42−C0345」;などが挙げられる。また、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーの市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製の「FZ4671」、「FZ4672」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「XF42−B1989」;などが挙げられる。
【0027】
乳化型毛髪化粧料における(e)成分の配合量としては、例えば、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であって、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0028】
乳化型毛髪化粧料に係る(f)成分であるヒアルロン酸またはその塩は、アニオン性の成分であり、カチオン性の成分である(b)成分(カチオン性界面活性剤)や(e)成分(アミノ変性シリコーン)とコンプレックスを形成しやすく、しかも、乳化型毛髪化粧料中において前記コンプレックスが形成されても、毛髪表面に均一性の高い被膜として付着しやすいため、乳化型毛髪化粧料の操作性が損なわれず、また、処理した毛髪に付与される良好な感触が長期にわたって持続するようになる。
【0029】
ヒアルロン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、乳化型毛髪化粧料には、これらの塩やヒアルロン酸のうち、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。より具体的には、例えば、いずれも商品名で、紀文フードケミファ社製の「FCH−200」、「FCH−150」、「FCH−120」、「FCH−80」、「FCH−60」、「FCH−SU」(いずれもヒアルロン酸ナトリウム);キューピー社製の「ヒアルロンサンHA−Q」、「ヒアルロンサンHA−QSS」、「ヒアルロンサンHA−M5070」、「ヒアルロンサンHA−L510」、「ヒアルロンサンHA−LQ」、「ヒアルロンサンHA−LQH」、「ヒアルロンサンHA−LQSH」(いずれもヒアルロン酸ナトリウム);などの市販品を使用することができる。
【0030】
乳化型毛髪化粧料における(f)成分の配合量としては、(f)成分の使用による効果をより良好に確保する観点からは、0.0001質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(f)成分が多すぎると、処理後の毛髪の感触が重くなる傾向にあるため、その配合量は、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明の乳化型毛髪化粧料においては、(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量を、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なくする。(b)成分、(c)成分および(d)成分の配合量がこのような関係となるように調整することで、乳化型毛髪化粧料中で形成されるカチオン性成分とアニオン性成分とのコンプレックスによる操作性の低下を良好に抑制できる。また、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンを使用した乳化型毛髪化粧料では、経時的な黄変が生じやすいが、(b)成分、(c)成分および(d)成分の配合量を前記のような関係に調整することで、乳化型毛髪化粧料の経時的な黄変も抑制できる。
【0032】
なお、乳化型毛髪化粧料における(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和は、(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量の、1.2倍以上であることがより好ましく、また、3倍以下であることがより好ましい。
【0033】
更に、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保する観点からは、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量を、(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量よりも少なくすることが好ましい。
【0034】
また、部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪に対しても、より均一なやわらかさを付与しやすくなる点で、乳化型毛髪化粧料における(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和と、(e)成分であるアミノ変性シリコーンの配合量との比を、1:1〜3:1にすることが好ましい。
【0035】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、pHが3〜5であることが好ましい。乳化型毛髪化粧料のpHをこのように調整することで、処理後の毛髪の感触を、より良好にすることができる。
【0036】
乳化型毛髪化粧料のpHは、必要に応じてpH調整剤を配合して調整することができる。pH調整剤については特に制限はなく、通常の化粧料に使用されている各種pH調整剤が適用可能である。なお、本発明の乳化型毛髪化粧料は、前記の通りpHが低くすることが好ましいため、pH調整剤としては、公知の有機酸または無機酸を好ましく用いることができ、処理後の毛髪の感触がより良好となる点で、有機酸がより好ましく、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸などのα−ヒドロキシ酸が特に好ましい。また、無機酸としては、リン酸などが好ましい。
【0037】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料には、(g)グリセリン脂肪酸エステルを配合することが好ましく、この場合には、乳化型毛髪化粧料の乳化状態の安定性を高めることができる。(g)成分であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
乳化型毛髪化粧料における(g)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、例えば、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0039】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、乳化物であり、主たる分散媒として水を使用する。分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料の構成成分の一部は、分散媒に溶解していてもよい。乳化型毛髪化粧料における分散媒の配合量は、例えば、50〜80質量%とすることが好ましい。
【0040】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、クリーム状、乳液状、ゲル状などの形態とすることができるが、操作性がより良好となる点で、クリーム状とすることが好ましい。
【0041】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、動物油や植物油などの油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、多価アルコール、エーテル、エステル、非イオン性界面活性剤[(c)成分、(d)成分および(g)成分を除く]、水溶性高分子、(e)成分以外のシリコーン、植物海藻エキス、アミノ酸およびその誘導体、タンパク質およびその誘導体、ビタミンおよびその誘導体、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料などが挙げられ、このような成分の中から好ましいものを、適宜選択して配合することができる。
【0042】
なお、(e)成分以外のシリコーンとしては、例えば、ジメチルシロキサン、ジメチコノール、ポリエーテル変性シリコーン、フェニル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0043】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などとして好適に用いることができる。
【0044】
すなわち、本発明の乳化型毛髪化粧料により毛髪を処理する際には、例えば、通常のシャンプーなどを用いて洗浄した後の毛髪に、本発明の乳化型毛髪化粧料を適量塗布し、好ましくは毛髪を揉み込むようにして、乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後、水ですすぎ、乾燥すればよい。また、パーマネントウェーブ処理の前処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤、または染毛用の前処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、例えば、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で毛髪を処理した後、または前記と同様の方法で乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後(水ですすぐことなく)、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を毛髪に施せばよい。更に、パーマネントウェーブ処理の後処理剤、ストレートパーマ処理の後処理剤、または染毛用の後処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を施した後の毛髪を、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で処理すればよい。
【0045】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料は、他の毛髪化粧料と組み合わせた多段階式の毛髪処理剤の一部として利用することも可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、後記の表1および表2では乳化型毛髪化粧料全体で100%となるように、それぞれ各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、これらの表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0047】
実施例1〜10および比較例1〜4
実施例1〜10および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、表1および表2に示す組成で調製した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
なお、表1および表2において、水の欄の「計100とする」とは、乳化型毛髪化粧料を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、「セトステアリルアルコール」は、セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物である。更に、「POE」はポリオキシエチレンの意味であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している。
【0051】
また、実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
(1)アミノ変性シリコーン(A):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「XF42−C0345」(アミノ含量:0.9%)。
(2)アミノ変性シリコーン(B):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社「XF42−C0330」(アミノ含量:0.3%)。
(3)テトラオレイン酸POE(60)ソルビット:日光ケミカル社製「NIKKOL GO−460V」。
(4)POE(2)ステアリルエーテル:日光ケミカル社製「NIKKOL BS−2」。
(5)ステアリン酸グリセリル:日光ケミカル社製「NIKKOL MGS−BSE」。
(6)ヒアルロン酸ナトリウム:紀文フードケミファ社製「FCH−150」。
(7)キサンタンガム(アニオン性ポリマー):大日本住友製薬社製「エコーガム」。
(8)カルボキシメチルキトサン(アニオン性ポリマー):川研ファインケム社製「キトアクア」。
(9)架橋型ポリアクリル酸ナトリウム(アニオン性ポリマー):日本純薬社製「レオジック」。
【0052】
下記の評価用毛束を作製し、これらを、実施例1〜10および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料によって処理した。
【0053】
<評価用毛束の作製>
長さ20cmの毛髪:2.5gを纏めて1つの毛束とし、これを複数用意した。なお、毛束に用いた毛髪は同一人のものである。
【0054】
毛髪は、ヘアカラーおよびパーマを施した場合に最も化学的損傷を受ける。そこで、前記の各毛束には、更にブリーチ処理およびパーマネントウェーブ処理を施した。
【0055】
まず、35質量%濃度の過酸化水素水6.0質量%を含み、精製水によって全量を100質量%にしたものと、25質量%のアンモニア水を8.5質量%含み、精製水によって全量を100質量%にしたものとを等量混合して、ブリーチ処理のためのブリーチ剤を調製した。
【0056】
また、パーマネントウェーブ用剤の第1剤として、DL−システイン塩酸塩5.5質量%と、アセチルシステイン0.5質量%と、50質量%濃度のチオグリコール酸アンモニウム液1.8質量%と、80質量%濃度のモノエタノールアミン液4.7質量%とを含み、アンモニア水(25質量%)でpHを9.3に調整し、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。更に、パーマネントウェーブ用剤の第2剤として、臭素酸ナトリウム6.5質量%と、クエン酸0.1質量%と、リン酸0.05質量%と、リン酸水素一水素ナトリウム0.5質量%とを含み、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。
【0057】
始めに、前記の各毛束を前記のブリーチ剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうすることで、各毛束をブリーチ処理し、精製水で洗浄した。次に、洗浄後の各毛束を直径10mmのロッドに巻き付け、これら全体を前記パーマネントウェーブ用第1剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥し、更に前記パーマネントウェーブ用第2剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥して、パーマネントウェーブ処理を行うことによって各毛束に化学処理による損傷を受けさせた。
【0058】
前記の化学処理を行った各毛束を、27質量%濃度のラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水ですすぎ流して乾燥させて、評価用毛束とした。
【0059】
次に、実施例1〜10および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、それぞれ異なる評価用毛束に0.5g塗布し、揉み込むようにして毛束全体に乳化型毛髪化粧料を馴染ませた後、水ですすぎ乾燥させて、処理を行った。
【0060】
前記の各乳化型毛髪化粧料を前記処理後の各毛束の感触(やわらかさ、およびベタつきのなさ)、および処理効果の持続性について、下記の平均摩擦係数(MIU)測定および官能評価による評価を行い、また、乳化型毛髪化粧料を毛髪に塗布する際の操作性について、下記の官能評価を行った。これらの結果を表3に示す。
【0061】
<塗布時の操作性>
専門のパネラー5名によって、各乳化型毛髪化粧料を毛髪に塗布する際の操作性を評価し、下記基準に従って点数付けを行った。なお、ここでいう「操作性」とは、乳化型毛髪化粧料がダマにならずに均一に塗布できるか否かを意味している。
5点:非常によい。4点:よい。3点:普通。2点:悪い。1点:非常に悪い。
【0062】
そして、各パネラーの付けた点数を合計して、下記基準に従って総合的に評価した。◎および○の評価のものが合格である。
【0063】
<塗布時の操作性の総合評価基準>
評価◎:点数の合計が20点以上。
評価○:点数の合計が15点以上20点未満。
評価△:点数の合計が10点以上15点未満。
評価×:点数の合計が10点未満。
【0064】
<毛髪の感触>
毛髪の滑らかさを表わす毛髪表面のMIU測定に関しては、測定用サンプルとして、処理後の各毛束から、それぞれ10本ずつ毛髪を採取し、それらをスライドガラス上に1mm間隔で揃えて並べ、セロハンテープで両端を固定したものを用いた。なお、毛髪の採取には、できるだけ太さが同等のものを選ぶようにした。これらの測定用サンプルのMIU測定を、恒温恒湿室(25℃、45%RH)内で、すべり試験機(加藤テック社製「KES−SE」)を用いて実施した。測定には摩擦子としてシリコンゴムを用い、25gの荷重をかけ、毛髪の根元部分から毛先部分へ向かって1mm/secの速度で摩擦感テスターを移動させてMIUを測定した。なお、MIUの値が小さいほど、毛髪が滑らかであると評価できる。
【0065】
また、専門のパネラー5名によって、処理後の毛髪の感触(やわらかさ、およびベタつきのなさ)を評価し、下記基準に従って点数付けを行った。
5点:非常によい。4点:よい。3点:普通。2点:悪い。1点:非常に悪い。
【0066】
そして、各パネラーの付けた点数を合計して、下記基準に従って総合的に評価した。◎および○の評価のものが合格である。
【0067】
<塗布時の操作性の総合評価基準>
評価◎:点数の合計が20点以上。
評価○:点数の合計が15点以上20点未満。
評価△:点数の合計が10点以上15点未満。
評価×:点数の合計が10点未満。
【0068】
<処理効果の持続性>
処理後の各毛束について、シャンプー(ミルボン社製「ディーセスシャンプーS」)で洗浄して水ですすぎ流し、続いて、ヘアトリートメント(ミルボン社製「ディーセストリートメントSF」)によりトリートメント処理し、水ですすぎ流して乾燥する一連の操作を10回繰り返した後に、前記の「毛髪の感触」評価と同じ方法で、MIU測定および官能評価を実施した。
【0069】
【表3】

【0070】
表3における「処理後の毛髪」の欄は、毛束を各乳化型毛髪化粧料で処理した後(処理効果の持続性評価の前)でのMIU測定結果および官能評価結果を示している。
【0071】
表3から明らかなように、実施例1〜10の乳化型毛髪化粧料は、塗布時の操作性が良好であり、また、処理後の毛髪の感触は、MIU測定結果、官能評価のいずれにおいても良好であると認められる。更に、実施例1〜10の乳化型毛髪化粧料で処理した毛髪は、シャンプーを用いた洗浄を繰り返しても、その感触が良好であると認められることから、実施例1〜10の乳化型毛髪化粧料では、その処理効果の持続性も優れている。
【0072】
これに対し、アニオン性成分にヒアルロン酸またはその塩以外のポリマーを使用した比較例1〜3の乳化型毛髪化粧料、および(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量が、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも大きな比較例4の乳化型毛髪化粧料は、塗布時の操作性、毛髪の処理効果、および処理効果の持続性のいずれもが劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、以下の(a)〜(f)成分
(a)炭素数が12〜22のアルコール、
(b)カチオン性界面活性剤、
(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、
(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(e)アミノ変性シリコーン、および
(f)ヒアルロン酸またはその塩
が配合されており、
(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少ないことを特徴とする乳化型毛髪化粧料。
【請求項2】
(a)炭素数が12〜22のアルコールとして、直鎖1級アルコールと、分岐鎖を含む1級アルコールとが配合されている請求項1に記載の乳化型毛髪化粧料。
【請求項3】
更に、(g)成分として、グリセリン脂肪酸エステルが配合されている請求項1または2に記載の乳化型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2009−280530(P2009−280530A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135264(P2008−135264)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】