説明

乳化物又は懸濁物の調製方法

【解決手段】平均粒径5〜30nmの水不溶性無機微粒子に、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースを水中で飽和吸着量の80〜100質量%を吸着させた後、これに水不溶性液体を混合して、撹拌装置により撹拌することを特徴とする粒径が制御された乳化物又は懸濁物の調製方法。
【効果】本発明によれば、従来制御が困難であった平均粒径1〜10μmという狭い範囲で均一な粒径の乳化物又は懸濁物を安定に得られるため、食品、化粧品等の分野における乳化組成物及び高分子化合物を製造する際の乳化又は懸濁重合等に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヨネーズやサラダドレッシング等の乳化食品、乳液等の乳化化粧料、シャンプーやリンス等の乳化洗浄料を製造する際、又は塩化ビニル、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル等のモノマーを水中で懸濁又は乳化重合する際に、予め所望の粒径の乳化物又は懸濁物を得ることが可能な乳化物又は懸濁物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にオイルや重合性モノマーを水中に分散させる方法として、低分子の界面活性剤を含有する水溶液中にオイル液やモノマー液を混合し撹拌して、界面活性剤の乳化分散力によってオイルやモノマーを水中に分散安定化させ、乳化(エマルション)と呼ばれる状態にすることが行われている。
【0003】
しかし、この方法によれば、ミセル形成とよばれる低分子界面活性剤の乳化作用により、水中に分散したオイル乃至モノマーの粒径は1μm以下の直径を有する微粒子の乳化粒子となって分散する。調製されたエマルションの用途において、乳化粒子が微粒子であって差し支えない場合や粒径の大小は問題とならない場合には、上記の低分子界面活性剤によるエマルションの調製が問題なく行われている。
【0004】
しかしながら、例えば、ドレッシングオイルや食用クリームのように、乳化粒子のオイル滴の粒径が制御されることによって、のどごしや食感等が異なる食品用の乳化物を調製しようとしたり、重合トナーのように、10〜数10μmオーダーの粒径を有する流動性のよい粒子を得ようとする場合には、調製される乳化物や懸濁物中のオイルやモノマーの液滴の粒径を調整する必要がでてくる。
【0005】
従来、液滴の粒径を調整しようとする場合には、エマルションの調製時に添加する水溶性高分子安定剤の量を変えたり、混合撹拌翼の大きさや撹拌速度、更には撹拌時間をコントロールすることが一般的であった。これらの方法で得られた粒子の大きさには分布があり、所望の均一な粒径のものを得ることが困難であった。
【0006】
これに対して特定分子量の水溶性のヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又はアルキルセルロースを含む水溶液中に水不溶性の液体を混合して、撹拌装置で一定回転数で一定時間撹拌して乳化物又は懸濁物の粒子径を10〜数10μmに調整する方法が特開平10−218901号公報(特許文献1)に開示されている。
【0007】
しかしながら、これら乳化物の粒径として1μm未満の低分子の界面活性剤で容易に形成できる粒径範囲と水溶性高分子安定剤で形成可能な10〜数10μm径の範囲の中間にある1〜10μmの粒子径の乳化物を安定的に得ることは極めて困難に状況にあった。特に、混合装置の大きさや撹拌速度をコントロールすることが困難である場合や、生産性の関係でこれらを変化しにくい場合に、乳化物又は懸濁物の粒径を1〜10μmという狭い範囲で調整するのは煩雑で、かつ困難であった。
【0008】
【特許文献1】特開平10−218901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、粒径の揃った均一な粒径の乳化物又は懸濁物を調製可能な乳化物又は懸濁物の調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、平均粒径5〜30nmの水不溶性無機微粒子に、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又はアルキルセルロースを水中で飽和吸着量の80〜100質量%を吸着させた後、水不溶性液体を混合して、撹拌装置により撹拌することにより、平均粒径1〜10μmという狭い範囲で均一な粒径の乳化物又は懸濁物を安定に得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
なお、飽和吸着量は、上記水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースの水溶液に水不溶性無機微粒子を分散させ、室温(25℃)で撹拌して上記水不溶性無機微粒子に水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースを吸着させる処理を行った場合における、上記水不溶性無機微粒子に対する上記水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースの飽和吸着量をいう。
【0012】
従って、本発明は以下の乳化物又は懸濁物の調製方法を提供する。
(1)平均粒径5〜30nmの水不溶性無機微粒子に、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースを水中で飽和吸着量の80〜100質量%を吸着させた後、これに水不溶性液体を混合して、撹拌装置により撹拌することを特徴とする粒径が制御された乳化物又は懸濁物の調製方法。
(2)前記水不溶性無機微粒子が、シリカ粒子である(1)記載の乳化物又は懸濁物の調製方法。
(3)前記水不溶性液体が、油分又は水不溶性モノマーである(1)又は(2)記載の乳化物又は懸濁物の調製方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来制御が困難であった平均粒径1〜10μmという狭い範囲で均一な粒径の乳化物又は懸濁物を安定に得られるため、食品、化粧品等の分野における乳化組成物及び高分子化合物を製造する際の乳化又は懸濁重合等に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体的に詳述する。
本発明は、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースの水溶液中に、平均粒径5〜30nmの水不溶性無機微粒子を分散させてヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースを水不溶性無機微粒子に吸着させた外相となる水相中に、内相となる水不溶性液体、特に油分や水不溶性モノマー液体を乳化又は懸濁させ、乳化物又は懸濁物の70質量%以上について平均粒径を安定的に1〜10μmに制御することができる。
【0015】
本発明の水不溶性無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、リチウムシリケート、酸化マグネシウム、酸化チタン等の酸化物、窒化物、セラミックス、更にイオン性が低い白金、金、銀等の金属、その他水に溶解しないいずれの無機質粒子を挙げることができる。この水不溶性無機微粒子の平均粒径は5〜30nmであり、この範囲外だと粒径1〜10μmの乳化物又は懸濁物が得られない。これは水不溶性無機微粒子が保護相のように水不溶性液体を被覆するとき、その粒子径が大きすぎても小さすぎても十分な被覆保護膜とならないためと考えられる。
【0016】
この水不溶性無機微粒子の平均粒径は、(株)堀場製作所製や(株)日立製作所製のレーザー光を用いる動的光散乱式粒径分布測定装置によって水中に粒子を分散した状態で測定できる。これらの無機微粒子の製造方法は特に限定されないが、例えばシリカ粒子であれば四塩化ケイ素を水素と酸素の存在下で1,000℃以上にて気相酸化した後、副生する塩酸を除いて得ることができ、水ガラスと呼ばれる珪酸ナトリウムに硫酸を反応させ、沈降してくるシリカ粒子を回収して得る湿式法によっても得ることができる。いずれの場合も必要な粉砕処理や分級処理を行って必要な平均粒径に調整することができる。
【0017】
本発明の水不溶性無機微粒子の添加量は、乳化又は懸濁する水相100質量部に対して1〜2質量部、特に1.1〜1.5質量部が好ましい。この範囲外では平均粒径1〜10μmの乳化物又は懸濁物が得られにくくなる場合がある。
【0018】
本発明の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられ、水溶性アルキルセルロースとしてはメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0019】
なお、これらの水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロースの置換割合は水溶性である観点から、例えば水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの場合、アルキル基は20〜31質量%、特に22〜30質量%、ヒドロキシアルキル基は4〜30質量%、特に5〜10質量%が好ましい。また、水溶性アルキルセルロースの場合、アルキル基は24〜31質量%、特に25〜31質量%が好ましい。
【0020】
更に、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロースの分子量は1万〜100万、特に5万〜70万が好ましく、20℃における2質量%水溶液の粘度は3〜100万mPa・s、特に15〜8,000mPa・sが好ましい。
【0021】
水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースは、分子内に親水性のヒドロキシアルキル基又は水酸基と疎水性のアルキル基を有しており、界面活性能を有しているが、その界面活性能は低分子の界面活性剤程でない。これらの水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースを用いた場合、油分や水不溶性モノマーである水不溶性液体を乳化又は懸濁したときに乳化物又は懸濁物は容易には10μm以下の粒径にはならないが、水不溶性無機微粒子は界面活性力で強固に吸着した状態で水不溶性液体を取り囲み、乳化物又は懸濁物を形成するので、一度形成された乳化物又は懸濁物は合一が起こりにくく、安定な状態が維持できると考えられる。
【0022】
一方、ヒドロキシエチルセルロースの如く親水基が多いセルロースは、界面活性が不足し、油分や水不溶性モノマーの表面への強固な吸着が少ないため安定な水不溶性無機微粒子にならず、安定した乳化物又は懸濁物を得るのに適していない。
【0023】
水不溶性無機微粒子に吸着させる水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロース量は、水不溶性無機微粒子を分散させる前後の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロース水溶液の濃度との差(dCg/g)と、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロース水溶液の質量(Cg)と、分散した水不溶性無機微粒子の質量(Mg)から、下記式により水不溶性無機微粒子あたりの吸着量を求めることができる。
(C×dC)/M(g/g)
【0024】
ここで、水不溶性無機微粒子を分散させる前後の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロース水溶液の濃度との差は、以下の2通りの方法により定めることができる。
1つ目は、予め濃度が既知の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロース水溶液に対して5〜20質量%の水不溶性無機微粒子を25℃の室温にて15時間以上撹拌した後、分散液を5,000rpm以上で遠心分離し、上澄み溶液20質量部をとり、105℃で4時間乾燥して、乾燥物の質量を測定する方法である。
2つ目は、溶液の濃度に応じて溶液の屈折率の変化を求められる屈折率計等で予め測定した屈折率に対して、遠心分離した後の上澄み溶液の屈折率の測定から、上澄みの水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロースの水溶液の濃度を測定する方法である。
【0025】
そして、水不溶性無機微粒子を分散させる前の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロースの水溶液の濃度を変えて吸着量を求めていき、最大量となって濃度が変化しても吸着量が変わらなくなった飽和吸着量の80〜100質量%の吸着量になるように、水不溶性無機微粒子を分散させる前の濃度を決定して、水不溶性無機微粒子に添加する水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース又は水溶性アルキルセルロースの水溶液の濃度を決定する。この濃度が薄すぎて飽和吸着量の80質量%未満では、乳化物又は懸濁物の平均粒径は1〜10μmとならず、平均粒径が大きくなってしまう。
【0026】
本発明の水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースを水相の水溶液中に添加する場合の濃度については、上述したように、水不溶性無機微粒子への吸着量により決定されるが、概略添加する水不溶性無機微粒子1gに対して0.08〜0.20g、特に0.10〜0.13gの割合で混合する液中に存在するような水溶液として調整するか又はこの量より多い溶液濃度として水不溶性無機微粒子と混合して飽和吸着量とした後、遠心分離して上澄み溶液を除き、水を入れて洗浄した後に水不溶性液体を混合して乳化又は懸濁してもよい。
【0027】
本発明の水不溶性液体としては、水と溶解しないものならいずれも使用し得るが、例えばシリコーンオイル、サラダオイル等の飽和又は不飽和脂肪酸等の油分や、ヘキサン、ブタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等の水不溶性モノマーが挙げられる。なお、水不溶性液体の水中で混合撹拌したときに分散する程度の粘度として、数100mPa・s以下の粘度を有する液体であることが好ましい。
【0028】
本発明の水不溶性液体は、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又はアルキルセルロースが吸着した水不溶性無機微粒子を分散した水相の水溶液に対して、74容積%以下、好ましくは50容積%以下、更に好ましくは30容積%以下になるように混合して乳化又は懸濁させる。この割合が大きいと乳化又は懸濁した後の水不溶性液体が最密充填されにくくなり、水不溶性液体が合一して分離しやすくなる場合がある。なお、その下限は10容積%以上、特に20容積%以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の乳化又は懸濁に使用する撹拌装置における撹拌翼の径や形状、撹拌速度や時間については、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、数100〜10,000rpm程度の高速で、設定した撹拌速度を保ち、撹拌によって水不溶性液体が液滴になって水相中に分散して乳化又は懸濁状態になることが好ましい。
【0030】
乳化又は懸濁方法は、通常は高速撹拌装置により一定回転数で一定時間撹拌して乳化物又は懸濁物が調製される。
【0031】
なお、本発明における乳化物又は懸濁物の平均粒径とは、水相中に乳化又は懸濁した状態で分散している水不溶性液体の液滴の滴径を意味する。水相に添加する水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースが吸着した水不溶性無機微粒子により、希望する乳化又は懸濁粒子の粒径を長時間安定して得られるという効果が提供される。なお、乳化物又は懸濁物の平均粒径は、光学顕微鏡や、シメックス社製のフロー式粒子像分析装置又はペックマンコールター(株)製のコールターカウンターにより測定できる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
表1に示す各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロース0.5質量部に対して、水100質量部を加えて水溶液とし、表1に示す各種水不溶性無機微粒子1.0質量部を200mlビーカー内で加え、長さ約2cm、幅約0.5cmのケミカルスターラーチップにて500rpmで15時間撹拌した。その後、分散液を10,000rpmで遠心分離し、上澄み溶液20質量部をとり、105℃で4時間乾燥して、乾燥物の質量部(S)を測定した。その後、各種水不溶性無機微粒子への各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースの吸着量を下記式に従って求めた。
{(0.5×100)−(20×S×5)}/1.0
【0034】
同様にして、水100質量部に対して各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースを0.3〜0.8質量部添加して調製した溶液について、各種水不溶性無機微粒子に対する各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースの吸着量を求めたところ、いずれの場合においても、その水溶液の濃度を高めてもほとんど変化しない吸着量(飽和吸着量)は0.1〜0.13g/シリカ1g、即ち0.15〜0.20g/シリカ1.5gであるとわかった。
【0035】
次に、水100質量部に対して上記の飽和吸着量を考慮して算出された各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースにつき表1に示す量を加え、水溶液を調製した。調製した水溶液に表1に示す量の水不溶性無機微粒子を加え、25℃の室温下で300mlビーカー内にて、長さ約2cm、幅約0.5cmのケミカルスターラーチップにて500rpmで15時間撹拌した。その後、表1に示す量の水不溶性液体を加え、粒ヤマト科学社製のウルトラデイスパーザー撹拌装置にて撹拌翼としてS−25−N−25F型をとりつけて30分間撹拌して、乳化物又は懸濁物の平均粒径を500倍顕微鏡で測定した。約100個の粒径を計測した場合における平均粒径1〜10μmの粒子数が70%以上あるか否か及び観察される平均粒径についての観察結果を表1に示した。
【0036】
更に調製された乳化物又は懸濁物を1ヶ月間放置し、再び乳化物又は懸濁物の平均粒径を顕微鏡観察した測定結果も表1に示した。
【0037】
表1から、飽和吸着量の80質量%以上に相当する量の各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び水溶性アルキルセルロースを含む水溶液中に水不溶性無機微粒子を分散吸着させ、この溶液に水不溶性液体を添加し、撹拌して得られる乳化物又は懸濁物の平均粒径は、その70質量%以上が1〜10μmとなっており、1ヶ月経過しても安定していた。
【0038】
一方、各種水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを添加しない場合(比較例1及び4)又は水不溶性無機微粒子を添加しない場合(比較例2)、水溶性ヒドロキシアルキルセルロースを添加した場合(比較例3)には、乳化物又は懸濁物の平均粒径が1〜10μmのものが観察されないか又はその割合が60質量%以下であった。
【0039】
【表1】


エアロジルシリカ130(デグッサ社製、AEROSIL シリカ 130、平均粒径約16nm)
エアロジルシリカ380(デグッサ社製、AEROSIL シリカ 380、平均粒径約7nm)
エアロジルシリカ50(デグッサ社製、AEROSIL シリカ 50、平均粒径約30nm)
メチルセルロース(信越化学工業(株)製、SM−100:20℃,2質量%水溶液粘度 100mPa・s)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製、60SH−400:20℃,2質量%水溶液粘度 400mPa・s)
ヒドロキシエチルメチルセルロース(信越化学工業(株)製、SEW−60T:20℃,2質量%水溶液粘度 65,000mPa・s)
ヒドロキシエチルセルロース SE−TYLOSE社製(H200YG4:20℃,2質量%水溶液粘度 400mPa・s)
シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、ジメチルシリコーンオイル KF96,粘度 1mPa・s)
綿実油(日清製油(株)製、綿実油)
*×500倍光学顕微鏡による視野内の粒子100個中、平均粒径1〜10μmのものをカウントした。
【0040】
[実施例6]
水不溶性無機微粒子として平均粒径約20nmの日産化学工業(株)製のアルミナゾル520(固形分20質量%)7.5質量部、水100質量部、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとして表1記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース0.25質量部を溶解した溶液92.5質量部を加え、水不溶性無機微粒子として表1記載のシリコーンオイルを添加して撹拌して、乳化物又は懸濁物の平均粒径を測定した。70質量%以上が平均粒径1〜10μmとなっており、1ヶ月経過しても安定していた。
【0041】
[比較例5,6]
水不溶性無機微粒子として平均粒径1nm及び100nmの水不溶性無機微粒子を用いた以外は、実施例6と同様にして乳化物又は懸濁物の平均粒径を測定したところ、10μmを超えていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径5〜30nmの水不溶性無機微粒子に、水溶性ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及び/又は水溶性アルキルセルロースを水中で飽和吸着量の80〜100質量%を吸着させた後、これに水不溶性液体を混合して、撹拌装置により撹拌することを特徴とする粒径が制御された乳化物又は懸濁物の調製方法。
【請求項2】
前記水不溶性無機微粒子が、シリカ粒子である請求項1記載の乳化物又は懸濁物の調製方法。
【請求項3】
前記水不溶性液体が、油分又は水不溶性モノマーである請求項1又は2記載の乳化物又は懸濁物の調製方法。

【公開番号】特開2008−80226(P2008−80226A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261811(P2006−261811)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】