説明

乳化物製造装置

【課題】効率よく短時間で乳化物を製造することができる乳化物製造装置を提供する。
【解決手段】多数のワイヤを有する回転ブラシ79は回転軸75の軸心方向へ直列に5個配置されており、これらの回転ブラシ79は容器9に収容されている。容器9内へ送給されたA重油と水は、最下段のカップ81a内で回転ブラシ79aによって攪拌・混合される。この際回転ブラシ79aは多数のワイヤを有しており、しかも回転ブラシ79aは高速で回転するので、A重油と水は次々に切られるようにして攪拌・混合される。カップ81a内で攪拌・混合されたA重油と水は穴87aから直ぐ上の段の回転ブラシ79bに向かって送られて、カップ81b内で回転ブラシ79bによって更に攪拌・混合される。同様にして回転ブラシ79c、79d、79eによって攪拌・混合される。A重油と水が十分に攪拌・混合されて乳化物となり、加水燃料が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化物製造装置に係り、例えば油と水とを混合して成る加水燃料を製造するための乳化物製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
重油等と水とから成る加水燃料は燃費効率を高める目的でボイラー等に使用されている。特許文献1に記載された乳化物製造装置及び乳化方法は加水燃料を得るためのものであり、傾斜した長尺筒状容器と、その上方から下底部の間に挿設された螺旋帯の回転体と、筒状容器の上方部の最上部壁に乳化剤と水の混合液の供給口と、それに続く下側の上方部壁に油供給口と、筒状容器の下底部に突設された乳化物吐出口とを設け、また油供給口と筒状容器の下底部開口部との間に円筒状容器の外側に並設して乳化物の一部を油供給口へ返送させる乳化物返送パイプを設け、回転体を回転させて、乳化剤と水との混合物と油とを攪拌する。そして、乳化剤と水との混合物と油を長尺筒状容器内に返送・循環して攪拌処理して乳化物を製造するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−152214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の乳化物製造装置は、螺旋帯の回転体を回転させて、乳化剤と水との混合物と油とを攪拌するため攪拌の能率が低い。このため長尺筒状容器内に返送・循環して攪拌処理を何度か行う必要があり、乳化物を得るのに相当な時間がかかってしまうという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、効率よく短時間で乳化物を製造することができる乳化物製造装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、長尺筒状の容器と、前記容器の一端側に設けられた導入口と、前記容器の他端側に設けられた排出口と、前記容器に収容され回転軸に固定された回転ブラシと、前記回転軸を回転させる回転軸駆動手段と、前記導入口から容器内へ送り込まれた油と水が前記回転ブラシを通り抜けるように流路を規制する流路規制手段と有し、前記導入口から油と水を前記容器内へ送給し、容器内に送給された油と水を前記回転ブラシによって攪拌・混合して乳化物とし、前記乳化物を前記排出口から排出することを特徴とする乳化物製造装置である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した乳化物製造装置において、回転ブラシは複数設けられ、前記回転ブラシは軸心方向へ直列に配置されていることを特徴とする乳化物製造装置である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した乳化物製造装置において、流路規制手段は、回転ブラシに被せられ、下面が開口し、上面に穴を有するカップによって構成されていることを特徴とする乳化物製造装置である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した乳化物製造装置において、油と水を容器の導入口から容器内へ送給する送給手段を備え、前記送給手段の駆動力は回転軸駆動手段から得ていることを特徴とする乳化物製造装置である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載した乳化物製造装置において、送給手段はギヤポンプであり、前記ギヤポンプのギヤは回転ブラシが固定された回転軸に取り付けられていることを特徴とする乳化物製造装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳化物製造装置によれば、効率よく短時間で乳化物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る乳化物製造装置の斜視図である。
【図2】図1の乳化物製造装置のギヤポンプの分解斜視図である。
【図3】図1の乳化物製造装置の回転ブラシとカップの斜視図である。
【図4】図1の乳化物製造装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る乳化物製造装置1を図面にしたがって説明する。
符号3はベースを示し、このベース3の下面の四隅にはキャスタ5が取り付けられている。ベース3の上面には送給手段としてのギヤポンプ7、長尺筒状の容器9、貯留タンク11等が備えられている。
【0013】
ギヤポンプ7の構造について説明する。
符号15はある程度の厚さ寸法をもつ略平盤状のケース本体を示し、このケース本体15の上面には円形の大凹部17、この大凹部17に連通する円形の小凹部19及び大凹部17と小凹部19との間に形成された連通部21が設けられている。これらの大凹部17、小凹部19及び連通部21は連続して形成されており、全体として平面視略ダルマ状を為している。
【0014】
また、ケース本体15には油供給穴25、水供給穴27及び油直通穴29が形成されている。油供給穴25はケース本体15の一方側の側面から小凹部19の内面に通じており、水供給穴27はケース本体15の一方側の側面から大凹部17の内面に通じている。また油直通穴29は、ケース本体15の前述した油供給穴25、水供給穴27が形成された側面と対向する側の側面から連通部21の内面に通じている。
【0015】
油供給穴25には油供給用ホース33の一端が接続されており、油供給用ホース33の他端は図示しない油タンクに接続されている。水供給穴27には水供給用ホース35の一端が水供給開閉バルブ36を介して接続されており、水供給用ホース35の他端は図示しない水タンクに接続されている。また油直通穴29には油直通用ホース37の一端が接続されており、油直通用ホース37の他端は図示しないボイラーのバーナーに接続されている。
ケース本体15に形成された大凹部17の底面の中心には支持穴39が形成されている。
【0016】
符号41は閉蓋を示し、この閉蓋41はケース本体15の上面を閉塞している。閉蓋41には丸穴43が形成されている。
符号45は連結蓋を示し、この連結蓋45は円盤状の取付部49と、この取付部49に一体に形成された嵌合部47とから成っており、嵌合部47は取付部49より一回り小さい径寸法に設定されている。嵌合部47は丸穴43に嵌められており、取付部49は閉蓋41上に位置している。連結蓋45の中心には回転軸挿通穴51が形成されており、また連結蓋45には、導入口としての連通穴53が形成されている。
【0017】
符号57は大ギヤを示し、この大ギヤ57は大凹部17に収容されている。大ギヤ57の中心部には軸受59が設けられており、この軸受59には支持軸61が挿通されている。支持軸61の下端部は、支持穴39に嵌められてケース本体15に固定されており、支持軸61の上端部は、閉蓋41に形成された図示しない支持穴に嵌められて閉蓋41に固定されている。これにより大ギヤ57は支持軸61によって回転自在に支持されている。
符号63は小ギヤを示し、この小ギヤ63は小凹部19に収容され、大ギヤ57に噛み合っている。
【0018】
長尺筒状の容器9の下端部には取り付けベース67が外嵌されており、この取り付けベース67は閉蓋41に取り付けられている。また容器9の下側開口は連結蓋45によって塞がれており、この連結蓋45に形成された連通穴53を介して連通部21と容器9とが連通している。
また、容器9の上端にはモータベース71が取り付けられており、このモータベース71には回転軸駆動手段としてのモータ73が支持されている。モータ73の図示しない駆動軸には回転軸75が連結されており、この回転軸75は容器9内を通り、回転軸75の先端部分は容器9の下端から突出している。この回転軸75の先端部分は回転軸挿通穴51に挿通され、連結蓋45の下面から突出しており、この突出部分には小ギヤ63が固定されている。
【0019】
図3において符号79は回転ブラシを示し、この回転ブラシ79はワイヤブラシであり、筒状の中心部材と、この中心部材に植設された多数のワイヤとによって構成されている。多数のワイヤは先端部を外方向へ向けて円筒状を為すように植設されている。なお、ワイヤの直径0.7mmである。回転ブラシ79は回転軸75に外嵌され固定されている。回転ブラシ79は回転軸75の軸心方向へ直列に5個配置された状態で容器9に収容されている。図4に示す5個の回転ブラシ79については、各回転ブラシ79を区別するため便宜的に最下段から上段に向かって79a、79b、79c、79d、79eを付すこととする。
【0020】
符号81は流路規制手段としてのカップを示し、このカップ81は円筒部83と、この円筒部83に一体に形成された上板部85とから成っており、上板部85の中心には穴87が形成されている。カップ81は5個の回転ブラシ79にそれぞれ上から被せられており、回転軸75は穴87を貫いている。図4に示す5個のカップ81については、各カップ81を区別するため便宜的に最下段から上段に向かって81a、81b、81c、81d、81eを付すこととする。また穴87についてもカップ81と同様に87a、87b、87c、87d、87eを付すこととする。
【0021】
図2に示すように容器9の上端部には排出口91が形成されており、この排出口91には供給管89の一端が接続されている。供給管89の他端は貯留タンク11の上端部に接続されている。貯留タンク11の下端部には乳化物供給用ホース93の一端が乳化物開閉バルブ95を介して接続されており、乳化物供給用ホース93の他端は図示しないボイラーのバーナーに接続されている。
【0022】
次に、乳化物製造装置1の動作について説明する。
モータ73の図示しないスイッチを押すと、駆動軸と共に回転軸75が回転して、この回転軸75と共に回転ブラシ79と小ギヤ63が図2において時計回りの方向に回転する。そして小ギヤ63と噛み合っている大ギヤ57が反時計回りの方向に回転する。
【0023】
小ギヤ63が回転すると、図示しない油タンクからA重油が油供給用ホース33、油供給穴25を通って小凹部19に引き入れられ、また大ギヤ57が回転すると、図示しない水タンクから水が水供給用ホース35、水供給開閉バルブ36、水供給穴27を通って大凹部17に引き入れられる。A重油は小ギヤ63の歯によって搬送され、水は大ギヤ57の歯によって搬送されて連通部21へ送られる。連通部21において、A重油と水には極めて大きな圧力がかかった状態となり、この圧力によってA重油と水は連通穴53を通って容器9内へ連続して送給される。上記のようにA重油と水には極めて大きな圧力がかかっているので、A重油と水のクラスターが小さくなり、乳化されやすくなることも期待できる。
水供給開閉バルブ36は、大凹部17に引き入れられる水の量が小凹部19に引き入れられるA重油の量の略半分に調整されている。従って、容器9内へ送り込まれるA重油と水の比率は略2対1となる。
【0024】
図4に示すように容器9内へ送給されたA重油と水は、最下段のカップ81a内で回転ブラシ79aによって攪拌・混合される。この際、前述したように回転ブラシ79aは多数のワイヤを有しており、しかも回転ブラシ79aは高速で回転するので、A重油と水は次々に切られるようにして攪拌・混合される。なお、回転軸75の回転速度は一例として1800rpmである。
そして、カップ81a内で攪拌・混合されたA重油と水は穴87aから直ぐ上の段の回転ブラシ79bに向かって送られる。そしてA重油と水はカップ81b内で回転ブラシ79bによって更に攪拌・混合される。同様にしてA重油と水は穴87b、87c、87dから回転ブラシ79c、79d、79eに向かって送られて、回転ブラシ79c、79d、79eによって攪拌・混合される。これによりA重油と水が十分に攪拌・混合されて乳化物となり、加水燃料が製造される。
【0025】
このようにA重油と水を5個の回転ブラシ79によって次々に攪拌・混合され、連続して効率よく短時間で加水燃料を製造することができる。
上記したようにA重油と水はカップ81の穴87から直ぐ上の段の回転ブラシ79に向かって送られる。即ちカップ81は、A重油と水が回転ブラシ79を通り抜けるように流路を規制しているので、A重油と水は回転ブラシ79に確実に巻き込まれる。
【0026】
最上段のカップ81の穴87を通過した加水燃料は排出口91から排出され、供給管89を通って貯留タンク11に送給される。そして加水燃料は乳化物供給用ホース93を通って図示しないバーナーに送給される。
なお、バーナーの着火時には着火不良を確実に防止するためA重油のみを送る。すなわち、乳化物開閉バルブ95と水供給開閉バルブ36を閉じ、図示しない油直通開閉バルブを開いて、A重油のみを油直通穴29、油直通用ホース37を介してバーナーへ送給する。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、回転ブラシ79を5個設けたが、回転ブラシ79の数は適宜変更してもよい。
上記実施の形態では、流路規制手段をカップ81によって構成したが、流路規制手段を、例えば容器9内を区画する仕切り板によって構成してもよい。
上記実施の形態では、送球手段をギヤポンプ7によって構成したが、送球手段を他の種類のポンプ、例えばダイヤフラムポンプによって構成してもよい。
回転ブラシ79のワイヤの直径0.7mmに限定されるものではなく、回転ブラシのサイズ等に応じて適宜選択する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は乳化物、例えば油と水とを混合して成る加水燃料を製造するための乳化物製造装置の製造業に利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1…乳化物製造装置 3…ベース 5…キャスタ
7…ギヤポンプ 9…長尺筒状の容器 11…貯留タンク
15…ケース本体 17…大凹部 19…小凹部
21…連通部 25…油供給穴 27…水供給穴
29…油直通穴 33…油供給用のホース
35…水供給用ホース 36…水供給開閉バルブ
37…油直通用のホース 39…支持穴 41…閉蓋
43…丸穴 45…連結蓋 47…嵌合部
49…取付部 51…回転軸挿通穴 53…連通穴
57…大ギヤ 59…軸受 61…支持軸
63…小ギヤ 67…取り付けベース 71…モータベース
73…モータ 75…回転軸 79…回転ブラシ
81…カップ 83…円筒部 85…上板部
87…穴 89…供給管 91…排出口
93…乳化物供給用ホース 95…乳化物開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺筒状の容器と、前記容器の一端側に設けられた導入口と、前記容器の他端側に設けられた排出口と、前記容器に収容され回転軸に固定された回転ブラシと、前記回転軸を回転させる回転軸駆動手段と、前記導入口から容器内へ送り込まれた油と水が前記回転ブラシを通り抜けるように流路を規制する流路規制手段と有し、前記導入口から油と水を前記容器内へ送給し、容器内に送給された油と水を前記回転ブラシによって攪拌・混合して乳化物とし、前記乳化物を前記排出口から排出することを特徴とする乳化物製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載した乳化物製造装置において、回転ブラシは複数設けられ、前記回転ブラシは軸心方向へ直列に配置されていることを特徴とする乳化物製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した乳化物製造装置において、流路規制手段は、回転ブラシに被せられ、下面が開口し、上面に穴を有するカップによって構成されていることを特徴とする乳化物製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した乳化物製造装置において、油と水を容器の導入口から容器内へ送給する送給手段を備え、前記送給手段の駆動力は回転軸駆動手段から得ていることを特徴とする乳化物製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載した乳化物製造装置において、送給手段はギヤポンプであり、前記ギヤポンプのギヤは回転ブラシが固定された回転軸に取り付けられていることを特徴とする乳化物製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−72955(P2011−72955A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229335(P2009−229335)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(309030768)
【Fターム(参考)】