説明

乳癌の処置および診断のための組成物および方法

【課題】乳癌の検出および治療のための組成物および方法を提供する。
【解決手段】乳房腫瘤組織において優先的に発現されるヌクレオチド配列、前記ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドおよびこれらの化合物を含むワクチンおよび薬学的組成物。これらの化合物は、例えば、乳癌の予防および処置のために使用され得る。前記ポリペプチドはまた、乳癌患者における進行の診断およびモニターのために有用な抗体の産生のために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に乳癌の検出および治療法に関する。本発明は、より詳細には、乳房腫瘤(breast tumor)組織において優先的に発現されるヌクレオチド配列およびこのようなヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドに関する。ヌクレオチド配列およびポリペプチドは、乳癌の予防および処置のためのワクチンおよび薬学的組成物において使用され得る。ポリペプチドはまた、患者の乳癌の診断および進行のモニターのために有用な、抗体のような化合物の産生のために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、合衆国および世界中の女性にとっての重大な健康問題である。疾患の検出および処置において前進はなされているものの、乳癌は、なお、女性における癌関連死因の2番目の原因であり、毎年合衆国の180,000人を超える女性が罹患している。北アメリカの女性について、生涯の乳癌発症の確立は現在8人に1人である。
【0003】
乳癌の予防または処置のためのワクチンまたは他の普遍的に成功する方法は、現在利用できない。疾患の管理は、現在、初期の診断(日常的乳房スクリーニング手順による)および1つ以上の種々の処置(例えば、手術、放射線療法、化学療法、およびホルモン療法)を含み得る攻撃的処置の組合せに依存している。特定の乳癌のための一連の処置は、しばしば特定の腫瘍マーカーの分析を含む種々の予後パラメーターに基づいて選択される。例えば、Porter-JordanおよびLippman,Breast Cancer 8:73−100(1994)を参照のこと。しかし、確立されたマーカーを使用しても、しばしば解釈に困難である結果となり、そして乳癌患者に見られる高死亡率は、この疾患の処置、診断、および予防における改善が必要なことを示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、当該分野において、乳癌の治療および診断のための方法の改善の必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そして他の関連する利点をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔に述べると、本発明は、乳癌の診断および治療のための組成物および方法を提供する。1つの局面において、単離されたDNA分子が提供されるが、これは、
(a)正常組織に比較して乳癌組織において優先的に発現するヌクレオチド配列;
(b)ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特質が保持されるように、ヌクレオチド位の20%を超えない(好ましくは、5%を超えない)1つ以上のヌクレオチド置換、欠失、挿入、および/または修飾を含む、このような配列の改変体;または(c)上記の配列の少なくとも1つによりコードされるポリペプチドのエピトープをコードするヌクレオチド配列を包含する。1つの実施態様において、単離されたDNA分子は、配列番号1に示されるヒト内因性レトロウイルス配列を含む。他の実施態様において、単離されたDNA分子は、配列番号3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む。
【0006】
関連する実施態様において、単離されたDNA分子は、ポリペプチドのエピトープをコードし、ここで、このポリペプチドは以下のヌクレオチド配列によりコードされる:(a)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297のいずれか1つに示す配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列;および(b)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297のいずれか1つに示す配列に少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列;そしてここで、上記ヌクレオチド配列に対応するRNAは、ヒト乳房腫瘤組織において正常乳房組織よりも高いレベルで発現される。
【0007】
別の実施態様において、本発明は、ポリペプチドのエピトープをコードする単離されたDNA分子を提供する。このポリペプチドは、以下によりコードされる:(a)配列番号141の配列から転写されるヌクレオチド配列;または(b)ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特質を保持するような、ヌクレオチド位の20%を超えない1つ以上のヌクレオチド置換、欠失、挿入、および/または修飾を含む上記ヌクレオチド配列の改変体。上記のDNA分子に相補的なヌクレオチド配列を含む単離されたDNA分子およびRNA分子がまた提供される。
【0008】
関連する局面において、本発明は、上記のDNA分子を含む組換え発現ベクターおよびこのような発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0009】
さらなる局面において、上記のDNA分子によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドおよびこのようなポリペプチドに結合するモノクローナル抗体が提供される。
【0010】
さらに別の局面において、患者の乳癌の存在を決定するための方法が提供される。1つの実施態様において、この方法は、生物学的サンプル中の上記のポリペプチドを検出する工程を包含する。別の実施態様において、この方法は、生物学的サンプル中の上記のポリペプチドをコードするRNA分子を検出する工程を包含する。さらに別の実施態様において、この方法は、(a)上記のポリペプチドを患者に皮内注入する工程;および(b)患者の皮膚において免疫応答を検出し、そしてそれにより患者の乳癌の存在を検出する工程、を包含する。さらなる実施態様において、本発明は、上記のように患者における乳癌の存在を決定する方法を提供し、ここで上記ポリペプチドは、配列番号:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0011】
関連する局面において、乳癌の決定に有用な診断キットが提供される。この診断キットは、一般的に、1つ以上の上記のモノクローナル抗体、または配列番号
:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242および246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290において提供される配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドに結合する1つ以上のモノクローナル抗体、ならびに検出試薬を備える。
【0012】
関連する局面において、診断キットは、第1のポリメラーゼ連鎖反応プライマーおよび第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーを備え、これらプライマーの少なくとも1つは、本明細書に記載のRNA分子に特異的である。1つの実施態様において、これらプライマーの少なくとも1つは、上記のRNA分子の少なくとも約10の連続的ヌクレオチド、または配列番号:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードするRNA分子を含む。
【0013】
別の関連する局面において、診断キットは、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを備え、このプローブは、本明細書に記載のDNA分子に特異的である。1つの実施態様において、このプローブは、上記のDNA分子の少なくとも約15の連続的ヌクレオチド、または配列番号:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群より選択されるDNA分子を含む。
【0014】
別の関連する局面において、本発明は、患者の乳癌の進行をモニターするための方法を提供する。1つの実施態様において、本方法は、以下の工程:(a)生物学的サンプル中の上記のポリペプチドの量を、第1の時点で検出する工程;(b)引き続く時点において工程(a)を繰り返す工程;および(c)工程(a)および工程(b)において検出されたポリペプチドの量を比較し、これにより患者の乳癌の進行をモニターする工程を包含する。別の実施態様において、本方法は、(a)生物学的サンプル中の上記のポリペプチドをコードするRNA分子の量を、第1の時点で検出する工程;(b)引き続く時点において工程(a)を繰り返す工程;および(c)工程(a)および工程(b)において検出されたRNA分子の量を比較し、これにより患者の乳癌の進行をモニターする工程を包含する。さらに他の実施態様において、本発明は、上記のように患者の乳癌の進行をモニターするための方法を提供し、ここで、ポリペプチドは、配列番号:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされる。
【0015】
なお他の局面において、生理学的に受容可能なキャリヤと組合せて上記のポリペプチドを含む薬学的組成物、および免疫応答増強剤またはアジュバントと組合せて上記のポリペプチドを含むワクチンが提供される。さらに他の局面において、本発明は、配列番号:78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242および246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを含む、薬学的組成物およびワクチンを提供する。
【0016】
関連する局面において、本発明は、患者の乳癌の発達を阻害するための方法を提供し、この方法は、上記の薬学的組成物またはワクチンを患者に投与する工程を包含する。
【0017】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照して明白となる。このことから、本明細書中に開示される全ての参考文献は、各々が個々に援用されたかのように、それらの全体が参考として援用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記のように、本発明は一般的に、乳癌の診断、モニター、および治療のための組成物および方法に関する。本明細書中に記載される組成物は、ポリペプチド、核酸配列、および抗体を含む。本発明のポリペプチドは、一般的に、正常乳房組織よりもヒト乳房腫瘤組織において高いレベルで発現されるタンパク質の少なくとも一部を含む(すなわち、ポリペプチドをコードするRNAのレベルが、肺瘍組織において少なくとも2倍高い)。このようなポリペプチドは、本明細書中で乳房腫瘤特異的ポリペプチドと呼ばれ、そしてこのようなポリペプチドをコードするcDNA分子は、乳房腫瘤特異的cDNAと呼ばれる。本発明の核酸配列は、一般的に、上記のポリペプチドの全てもしくは一部をコードするか、またはこのような配列に相補的であるDNAまたはRNA配列を含む。抗体は、一般的に、上記のポリペプチドの一部に結合し得る免疫系タンパク質、またはそのフラグメントである。
抗体は、本明細書中に記載のような、または組換え抗体の産生を可能にするための、適切な細菌もしくは哺乳動物細胞宿主中への抗体遺伝子のトランスフェクションを介するモノクローナル抗体の作製を含む、細胞培養技術により産生され得る。
【0019】
本発明の範囲内のポリペプチドは、ヒト内因性レトロウイルス配列(例えば、B18Ag1(図5および配列番号1)と命名される配列)によりコードされるポリペプチド(およびそのエピトープ)を含むが、これらに限定されない。B18Ag1(配列番号141)を含むレトロウイルスゲノム内の他の配列によりコードされるポリペプチドもまた、本発明の範囲内である。このような配列は、配列番号3〜配列番号10に示される配列を含むが、これらに限定されない。B18Ag1は、Wernerら、Virology 174:225-238(1990)に記載されたように、内因性ヒトレトロウイルスエレメントS71のgag p30遺伝子と相同性を有し、他の約30のレトロウイルスgag遺伝子ともまた相同性を示す。以下により詳細に議論するように、本発明はまた、多数のさらなる乳房腫瘤特異的ポリペプチドを含む(例えば、配列番号11〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297に示されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド)。本明細書中に使用される用語「ポリペプチド」は、本明細書中に示す配列を含む全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含する。本明細書中に記載の配列を含むタンパク質のエピトープを含む、ポリペプチドは、もっぱらそのエピトープからなり得るか、またはさらなる配列を含み得る。さらなる配列は、ネイティブタンパク質に由来し得るか、または異種であり得、そしてこのような配列は、免疫原性または抗原性特性を有し得る(しかし有する必要はない)。
【0020】
本明細書中に使用される「エピトープ」は、B細胞および/またはT細胞表面抗原レセプターにより認識(すなわち、特異的に結合)されるポリペプチドの一部である。エピトープは、一般的に、周知の技術(例えば、Paul,Fundamental Immunology、第3版、243-247(Raven Press,1993)およびその中に引用される参考文献にまとめられている技術)を用いて同定され得る。このような技術は、抗原特異的抗血清および/またはT細胞株もしくはクローンと反応する能力について、ネイティブポリペプチド由来のポリペプチドをスクリーニングすることを含む。ポリペプチドのエピトープは、このような抗血清および/またはT細胞と、全長ポリペプチドの反応性と同様なレベルで反応する部分である(例えば、ELISAおよび/またはT細胞反応性アッセイにおいて)。このようなスクリーニングは、一般的に、当業者に周知の方法(例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988に記載の方法)を用いて行われ得る。B細胞およびT細胞エピトープはまた、コンピューター分析を介して推定され得る。腫瘍組織において優先的に発現されるポリペプチドのエピトープを含むポリペプチド(さらなるアミノ酸配列を有しても、有さなくても良い)は、本発明の範囲内である。
【0021】
本発明の組成物および方法はまた、上記のポリペプチドの改変体およびこのようなポリペプチドをコードする核酸配列を包含する。本明細書中で使用するポリペプチド「改変体」は、ポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特性が保持されるような置換および/または修飾において、ネイティブポリペプチドと異なるポリペプチドである。このような改変体は、一般的に、上記のポリペプチド配列の1つを修飾し、そして上記のように、修飾されたポリペプチドと抗血清および/またはT細胞との反応性を評価することにより同定され得る。核酸改変体は、コードされるポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特性が保持されるような1つ以上の置換、欠失、挿入および/または修飾を含み得る。本明細書中に記載されるポリペプチドの1つの好ましい改変体は、20%を超えないヌクレオチド位でのヌクレオチド置換、欠失、挿入および/または修飾を含む改変体である。
【0022】
好ましくは、改変体は保存的置換を含む。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されるものであり、その結果、ペプチド化学の分野の当業者はポリペプチドの2次構造およびハイドロパシー性質が実質的に変化されないと予測する。一般的に、以下のアミノ酸の群が保存的変化を表す:(1)ala,pro,gly,glu,asp,gln,asn,ser,thr;(2)cys,ser,tyr,thr;(3)val,ile,leu,met,ala,phe;(4)lys,arg,his;および(5)phe,tyr,trp,his。
【0023】
改変体はまた(または、代替的に)、例えば、ポリペプチドの免疫原性もしくは抗原性特性、2次構造およびハイドロパシー性質に対して最少の影響を有するアミノ酸の欠失または付加により修飾され得る。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時または翻訳後にタンパク質の移動を指向させるタンパク質のN末端でのシグナル(またはリーダー)配列に結合され得る。ポリペプチドはまた、ポリペプチドの合成、精製もしくは同定の簡便さのために(例えば、ポリ-His)、またはポリペプチドの固体支持体への結合を増強するために、リンカーもしくは他の配列に結合され得る。例えば、ポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域に結合され得る。
【0024】
一般的に、本明細書中に記載のポリペプチドの全てまたは一部をコードするヌクレオチド配列は、いくつかの任意の技術を用いて調製され得る。例えば、このようなポリペプチドをコードするcDNA分子は、ディファレンシャルディスプレーPCRを用いて、対応するmRNAの乳房腫瘤特異的発現に基づいてクローン化され得る。この技術は、正常組織から調製されたRNAテンプレートからの増幅産物と、乳房腫瘤組織から調製されたRNAテンプレートからの増幅産物を比較する。cDNAは、(dT)12AGプライマーを用いるRNAの逆転写により調製され得る。ランダムプライマーを用いるcDNAの増幅に続いて、腫瘍RNAに特異的な増幅産物に対応するバンドは、銀染色されたゲルから切り出され、そして適切なベクター(例えば、T-ベクター、Novagen,Madison,WI)中にサブクローン化され得る。本明細書中に開示される乳房腫瘤特異的ポリペプチドの全てまたは一部をコードするヌクレオチド配列は、配列番号87〜125に示されるランダムプライマーを用いて上記のように調製されるcDNAから増幅され得る。
【0025】
あるいは、本明細書中に記載されるポリペプチド(またはその一部)をコードする遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応を介して、ヒトゲノムDNAから、または乳房腫瘤cDNAから増幅され得る。このアプローチのために、B18Ag1配列特異的プライマーは、配列番号1に提供される配列に基づいて設計され得、そして購入または合成され得る。乳房腫瘤cDNAからの増幅のために1つの適切なプライマー対は、(5’ATG GCT ATT TTC GGG GGC TGA CA)(配列番号126)、および(5’CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)(配列番号127)である。次いで、B18Ag1の増幅部分は、周知の技術(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laoratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY(1989)において記載される技術)を用いて、ヒトゲノムDNAライブラリーから、または乳房腫瘤cDNAライブラリーから全長遺伝子を単離するために使用され得る。B18Ag1がその一部であるレトロウイルスゲノム中の他の配列は、B18Ag1特異的配列をプローブとして用いるヒトゲノムライブラリーのスクリーニングにより、同様に調製され得る。次いで、タンパク質に翻訳される、レトロウイルスゲノム由来の、配列番号141に示されるヌクレオチドは、対応するcDNAのクローニング、オープンリーディングフレームの推測、およびウイルスプロモーター(例えば、T7)を含むベクターへの適切なcDNAのクローニングにより決定され得る。得られる構築物は、発現タンパク質を生じるヌクレオチド配列を同定するために、当業者に公知の技術を用いて翻訳反応において使用され得る。同様に、本明細書中に記載の残りの乳房腫瘤特異的ポリペプチドに特異的なプライマーもまた、配列番号11〜配列番号86、および配列番号142〜配列番号297に提供されるヌクレオチド配列に基づいて設計され得る。
【0026】
上記のDNA配列によりコードされる組換えポリペプチドは、DNA配列から容易に調製され得る。例えば、培養培地に組換えタンパク質またはポリペプチドを分泌する適切な宿主/ベクター系由来の上清は、まず市販のフィルターを用いて濃縮され得る。濃縮に続いて、濃縮物は、適切な精製マトリックス(例えば、親和性マトリックスまたはイオン交換樹脂)に適用され得る。最終的に、組換えポリペプチドのさらなる精製のために、1つ以上の逆相HPLC工程が使用され得る。
【0027】
一般的に、当業者に公知の種々の発現ベクターの任意のものが、本発明の組換えポリペプチドを発現するために使用され得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされている、任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞は、原核生物細胞、酵母細胞、および高等真核生物細胞を含む。好ましくは、用いられる宿主細胞は、E.coli、酵母、または哺乳動物細胞株(例えば、COSまたはCHO)である。
【0028】
このような技術はまた、ネイティブタンパク質のエピトープまたは改変体を含むポリペプチドを調製するために使用され得る。例えば、ネイティブポリペプチドの改変体は、一般的に、標準的な変異誘発技術(例えば、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発)を用いて調製され得、そしてDNA配列のセクションは、短縮型ポリペプチドの調製を可能にするために除去され得る。約100未満のアミノ酸、そして一般的には約50未満のアミノ酸を有する部分および他の改変体はまた、当業者に周知の技術を用いる合成手段により作製され得る。例えば、このようなポリペプチドは、任意の市販の固相技術(例えば、伸張しているアミノ酸鎖にアミノ酸が連続的に付加される、Merrifield固相合成法を用いて合成され得る。Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149-2146(1963)を参照のこと。ポリペプチドの自動合成のための装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division,,Foster City,CAのような供給者から市販されており、そして製造業者の指示に従い操作され得る。
【0029】
具体的な実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297のいずれか1つに示される配列を有するDNA分子によりコードされるアミノ酸配列、20%を超えないヌクレオチド位での1つ以上のヌクレオチド置換、欠失、挿入、および/または修飾を含むDNA分子によりコードされる、このようなポリペプチドの改変体、ならびに上記ポリペプチドのエピトープを包含する。本発明の範囲のポリペプチドはまた、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297のいずれか1つに示される配列を有するDNA分子にハイブリダイズするDNA配列によりコードされるポリペプチド(およびそのエピトープ)を含む。ここで、DNA配列は、示される配列に対して配列全体で少なくとも80%同一であり、そしてここでヌクレオチド配列に対応するRNAは、ヒト乳房腫瘤組織において正常乳房組織におけるよりも高いレベルで発現される。本明細書中に使用される「ストリンジェントな条件」は、6×SSC、0.2%SDSの溶液中での前洗浄;6×SSC、0.2%SDS、65℃にて一晩のハイブリダイズ;続いて1×SSC、0.1%SDS中で65℃にて各30分間の2回の洗浄、および0.2×SSC、0.1%SDS中で65℃にて各30分間の2回の洗浄をいう。本発明によるDNA分子は、上記の任意のポリペプチドをコードする分子を含む。
【0030】
本発明の別の局面において、抗体が提供される。このような抗体は、当業者に公知の種々の任意の技術により調製され得る。例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。このような技術の1つにおいて、ポリペプチドを含む免疫原は、まず広範な種々の任意の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギ)に注射される。この工程において、本発明のポリペプチドは、修飾のない免疫原として役立ち得る。あるいは、特に比較的短いポリペプチドについて、ポリペプチドがキャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン)に結合した場合、優れた免疫応答が誘発され得る。免疫原は、好ましくは1回以上の迫加免疫を含む予め決定されたスケジュールに従い動物宿主に注射され、そして動物は定期的に採血される。次いで、ポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体は、例えば、適切な固相支持体に結合したポリペプチドを用いるアフィニティクロマトグラフィーにより、このような抗血清から精製され得る。
【0031】
目的の抗原性ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)の技術ならびにその改良法を用いて調製され得る。簡潔には、これらの方法は、所望の特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生し得る不死細胞株の調製を含む。このような細胞株は、例えば、上記のように免疫された動物から取得される脾臓細胞から産生され得る。次いで、脾臓細胞は、例えば、骨髄腫細胞融合パートナー(好ましくは、免疫した動物と同系の骨髄腫細胞融合パートナー)との融合により不死化される。種々の融合技術が用いられ得る。例えば、脾臓細胞および骨髄腫細胞は、非イオン性界面活性剤と数分間組合わされ得、次いでハイブリッド細胞の増殖を支持するが骨髄腫細胞の増殖を支持しない選択培地上に低い密度で播種され得る。好ましい選択技術は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を使用する。通常約1〜2週間の十分な期間の後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一のコロニーが選択され、そしてその培養上清が、ポリペプチドに対する結合活性について試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0032】
モノクローナル抗体は、増殖しているハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、収率を増強するために種々の技術(例えば、マウスのような適切な脊椎動物宿主の腹腔内へのハイブリドーマ細胞株の注射)が使用され得る。次いで、モノクローナル抗体は、腹水または血液から回収され得る。混入物は、従来技術(例えば、クロマトグラフィー、ゲル濾過、沈降、および抽出)により抗体から除去され得る。本発明のポリペプチドは、例えば、アフィニティクロマトグラフィー工程における精製プロセスにおいて使用され得る。
【0033】
例えば、抗体は、患者の乳癌を検出するための方法において使用され得る。このような方法は、抗体を使用して、適切な生物学的サンプルにおける本明細書に記載の乳房腫瘤特異的ポリペプチドの存在または非存在を検出することを包含する。本明細書中に使用される適切な生物学的サンプルは、患者から得られた腫瘍または正常組織生検、乳房切除、血液、リンパ節、血清、もしくは尿サンプル、または他の組織、あるいはホモジネートまたはそれらの抽出物を含む。
【0034】
サンプル中のポリペプチドマーカーを検出するための抗体の使用について、当業者に公知の種々のアッセイ形式が存在する。例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。例えば、アッセイは、ウエスタンブロット形式において行われ得る。ここで、生物学的サンプル由来のタンパク質調製物は、ゲル電気泳動に供され、適切なメンブレンに移され、そして抗体と反応させられる。次いで、メンブレン上の抗体の存在は、下記のように、適切な検出試薬を用いて検出され得る。
【0035】
別の実施態様において、アッセイは、ポリペプチドと結合し、そしてこれをサンプルの残りから取り出すための固相支持体に固定された抗体の使用を包含する。次いで、結合ポリペプチドは、レポーター基を有する2次抗体または試薬を用いて検出され得る。あるいは、ポリペプチドがレポーター基で標識され、そして抗体とサンプルとのインキュベーション後、固定抗体と結合させられる、競合アッセイが使用され得る。サンプルの成分が標識ポリペプチドと抗体との結合を阻害する程度が、サンプルの固定抗体との反応性を示し、そして結果として、サンプル中のポリペプチドの濃度を示す。
【0036】
固相支持体は、抗体が付着し得る、当業者に公知の、任意の物質であり得る。
例えば、固相支持体は、マイクロタイタープレートの試験ウェルもしくはニトロセルロースフィルター、または他の適切なメンブレンであり得る。あるいは、支持体は、ビーズまたはディスク(例えば、ガラス、ガラス繊維、ラテックスまたは可塑性物質(例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル))であり得る。支持体はまた、磁性粒子または繊維光学センサー(例えば、米国特許第5,359,681号に開示される)であり得る。
【0037】
抗体は、特許文献および科学文献に詳細に記載されている、当業者に公知の種々の技術を用いて、固相支持体に固定され得る。本発明の文脈において、用語「固定」は、非共有的会合(例えば、吸着)および共有的付着(抗原と支持体上の官能基との間の直接的連結であり得るか、または架橋剤による連結であり得る)の両方をいう。マイクロタイタープレートのウェルまたはメンブレンへの吸着による固定が好ましい。このような場合において、吸着は、適切な緩衝液中の抗体を支持体と適切な時間にわたって接触させることにより達成され得る。接触時間は、温度により変化するが、代表的には、約1時間と1日の間である。一般的に、プラスティックマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル)のウェルと、約10ngから約1μg、および好ましくは約100〜200ngの範囲の量の抗体との接触が、適切な量のポリペプチドを固定するに十分である。
【0038】
抗体の固相支持体への共有的付着はまた、一般的に、支持体を、支持体と抗体上の官能基(例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基)の両方に反応する二官能性試薬とまず反応させることにより達成され得る。例えば、抗体は、適切なポリマーコートを有する支持体に、ベンゾキノンを用いるかまたは支持体上のアルデヒド基と結合パートナー上のアミンおよび活性水素との縮合により、共有的に付着され得る(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook(1991)A12〜A13を参照のこと)。
【0039】
特定の実施態様において、サンプル中のポリペプチドの検出のためのアッセイは、二抗体サンドイッチアッセイである。このアッセイは、まず、固相支持体(通常、マイクロタイタープレートのウェル)に固定されている抗体と、生物学的サンプルとを、サンプル中のポリペプチドが固定された抗体に結合するように接触させることにより行われ得る。次いで、非結合サンプルは、固定されたポリペプチド-抗体複合体から除去され、そしてポリペプチド上の異なる部位に結合し得る2次抗体(レポーター基を含む)が添加される。次いで、固相支持体に結合したままの2次抗体の量は、特定のレポーター基に適切な方法を用いて決定される。
【0040】
より詳細には、一旦抗体が支持体上に上記のように固定されると、支持体上の残りのタンパク質結合部位は代表的にはブロックされる。任意の適切なブロッキング剤(例えば、ウシ血清アルブミンまたはTween 20TM(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO))は、当業者に公知である。次いで、固定抗体はサンプルと共にインキュベートされ、そしてポリペプチドは抗体に結合させられる。サンプルは、インキュベーションの前に適切な希釈剤(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))で希釈され得る。一般的に、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、乳癌を有する個体から得られたサンプル中のポリペプチドの存在を検出するに十分な時間である。好ましくは、接触時間は、結合ポリペプチドと非結合ポリペプチドとの間の平衡で達成される結合レベルの少なくとも95%の結合のレベルを達成するに十分な時間である。当業者は、平衡を達成するに必要な時間は、一定時間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることにより容易に決定されることを理解する。室温では、約30分間のインキュベーション時間が一般的に十分である。
【0041】
次いで、結合していないサンプルは、固相支持体を適切な緩衝液(例えば、0.1%Tween 20TMを含むPBS)で洗浄することにより除去され得る。次いで、レポーター基を有する2次抗体が、固相支持体に添加され得る。好ましいレポーター基は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、基質、補因子、インヒビター、色素、放射性核種、発光基、蛍光基、およびビオチンを含む。レポーター基への抗体の結合は、当業者に公知の標準的方法を用いて達成され得る。
【0042】
次いで、2次抗体は、固定抗体-ポリペプチド複合体と共に、結合したポリペプチドを検出するに十分な時間インキュベートされる。適切な時間の長さは、一般的に、所定の時間にわたって生じる結合のレベルをアッセイすることにより決定され得る。次いで、結合していない2次抗体が除去され、そして結合した2次抗体はレポーター基を用いて検出される。レポーター基を検出するために用いられる方法は、レポーター基の性質に依存する。放射活性基については、シンチレーション計数法またはオートラジオグラフィー法が一般的に適切である。分光法は、色素、発光基および蛍光基を検出するために使用され得る。ビオチンは、異なるレポーター基(通常は、放射活性基もしくは蛍光基または酵素)に結合されたアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基は、一般的に、基質の添加(一般的に特定の時間の間)、続いて反応産物の分光分析または他の分析により検出され得る。
【0043】
乳癌の存在または非存在を決定するために、固相支持体に結合したままのレポーター基から検出されるシグナルは、一般的に、非腫瘍組織から確立された事前に決定されたカットオフ値に対応するシグナルと比較される。1つの好ましい実施態様において、カットオフ値は、固定抗体が乳癌を有さない患者由来のサンプルとインキュベートされる場合に得られる平均シグナルである。一般的に、事前に決定されたカットオフ値の3標準偏差を超えるシグナルを生じるサンプルは、乳癌について陽性と考えられ得る。別の好ましい実施態様において、カットオフ値は、Sackettら、Clinical Epidemiology:A Basic Science for Clinical Medicine 106-7頁、(Little Brown and Co,1985)の方法に従うReceiver Operator Curveを用いて決定される。簡潔に述べると、この実施態様においては、カットオフ値は、診断試験結果についてそれぞれの可能なカットオフ値に対応する真の陽性率(すなわち、感度)と偽陽性率(100%特異性)との対をプロットすることにより決定され得る。プロット上の左上角に最も近いカットオフ値(すなわち、最も大きな面積を囲む値)が、最も正確なカットオフ値であり、この方法により決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを生じるサンプルは、陽性であると考えられ得る。あるいは、カットオフ値は、偽陽性率を最少にするためにプロットに沿って左に、または偽陰性率を最少にするために右にシフトされ得る。一般的に、この方法により決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを生じるサンプルは、乳癌について陽性と考えられる。
【0044】
関連する実施態様において、フロースルー試験またはストリップ試験形式においてアッセイが行われる。ここで、抗体はメンブレン(例えば、ニトロセルロース)に固定されている。フロースルー試験において、サンプル中のポリペプチドは、サンプルがメンブレンを通り抜ける際に、固定抗体に結合する。次いで、標識した2次抗体が、2次抗体を含む溶液がメンブレンを通って流れる際に抗体-ポリペプチド複合体に結合する。次いで、結合した2次抗体の検出は、上記のように行われ得る。ストリップ試験形式においては、抗体が結合しているメンブレンの一方の端が、サンプルを含む溶液に浸される。サンプルは、2次抗体を含む領域を通り、そして固定抗体の範囲へメンブレンに沿って移動する。固定抗体の範囲での2次抗体の濃度が、乳癌の存在を示す。代表的には、この部位での2次抗体の濃度は、視覚的に読み取り得るパターン(例えば、線)を生じる。このようなパターンが存在しないことは、結果が陰性であることを示す。一般的に、メンブレン上に固定される抗体の量は、生物学的サンプルが、上で議論した形式の二抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性のシグナルを生じるに十分なレベルのポリペプチドを含む場合に、視覚的に判別し得るパターンを生じるように選択される。好ましくは、メンブレン上に固定される抗体の量は、約25ng〜約1μgの範囲であり、そしてより好ましくは約50ng〜約1μgの範囲である。このような試験は、代表的には、非常に少量の生物学的サンプルを用いて行われ得る。
【0045】
患者における乳癌の存在または非存在はまた、生物学的サンプル(例えば、患者由来の生検、乳房切除、および/または血液サンプル)中の本明細書中に記載される乳房腫瘤特異的ポリペプチドをコードするmRNAのレベルを、事前に決定されるカットオフ値と比較して評価することにより決定され得る。このような評価は、当業者に公知の任意の種々の方法(例えば、インサイチュハイブリダイゼーションおよびポリメラーゼ連鎖反応による増幅)を用いて達成され得る。
【0046】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応は、上記の生物学的サンプルの1つから単離されるRNAから調製されるcDNAからの配列を増幅するために使用され得る。このような増幅において使用するための配列特異的プライマーは、配列番号1、配列番号11〜86、および配列番号142〜297のいずれか1つに提供される配列に基づいて設計され得、そして購入または合成され得る。本明細書中に記載されるB18Ag1の場合、1つの適切なプライマー対は、B18Ag1-2(5'ATG GCT ATT TTC GGG GGC TGA CA)(配列番号126)およびB18Ag1-3(5'CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)(配列番号127)である。次いで、PCR反応産物は、ゲル電気泳動により分離され、そして当業者に周知の方法に従って可視化され得る。増幅は、代表的には、適合する組織の対(同じ個体由来の腫瘍組織および非腫瘍組織)または適合しない組織の対(異なる個体由来の腫瘍組織および非腫瘍組織)から得られるサンプルにおいて行われる。増幅反応は、好ましくは、2桁にわたるいくつかのcDNAの希釈において行われる。腫瘍サンプルのいくつかの希釈において、同じ希釈の非腫瘍サンプルと比較して、2倍以上の発現の増加は、陽性とみなされる。
【0047】
本明細書中で使用される用語「DNA/RNA分子に対して特異的なプライマー/プローブ」は、問題のDNA/RNA分子に対して、少なくとも約80%の同一性、好ましくは少なくとも約90%の同一性、そしてより好ましくは少なくとも約95%の同一性を有するオリゴヌクレオチド配列を意味する。本発明の診断法に有用に使用され得るプライマーおよび/またはプローブは、好ましくは、少なくとも約10〜40ヌクレオチドを有する。好ましい実施態様において、ポリメラーゼ連鎖反応のプライマーは、本明細書に開示されるポリペプチドの1つをコードする少なくとも約10の連続したDNA/RNA分子のヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明の診断法において使用されるオリゴヌクレオチドプローブは、本明細書に開示されるポリペプチドの1つをコードする少なくとも約15の連続したDNA/RNA分子のオリゴヌクレオチドを含む。PCRに基づくアッセイおよびインサイチュハイブリダイゼーションアッセイの両方のための技術が、当該分野において周知である。
【0048】
アガロースおよびエチジウムブロマイド染色を用いる従来のRT-PCRプロトコルは、遺伝子特異性を規定するに重要であるが、これを定量化するには時間および労力(すなわち、飽和および/または力価曲線の構築)が必要なこと、およびそのサンプル処理量のために、このプロトコルは診断キット開発に役立たない。この問題は、アッセイが1つのチューブにおいて行われることを可能にし、次には、96ウェルプレート形式においての使用のために改変され得るリアルタイムRT-PCRのような手順の開発により克服される。このような方法論を行うための機材は、Perkin Elmer/Applied Biosystems Divisionから入手可能である。あるいは、標識プローブ(例えば、ジゴキシゲニン)と、このようなプローブに対する標識(例えば、酵素、蛍光、放射活性)抗体を組み合わせて用いる他の高処理量アッセイはまた、96ウェルプレートアッセイの開発に使用され得る。
【0049】
患者における乳癌の存在または非存在を決定するためのなお別の方法において、記載される乳房腫瘤特異的ポリペプチドの1つ以上が、皮膚試験において使用され得る。本明細書中で用いられる「皮膚試験」は、患者において直接行われる任意のアッセイであり、そこでは遅延型過敏症(DTH)反応(例えば、腫脹、赤色化(reddening)、または皮膚炎)が、上記の1つ以上のポリペプチドの皮内注射後に測定される。このような注射は、ポリペプチドを患者の皮膚細胞に接触させるのに十分な任意の適切なデバイス(例えば、ツベルクリンシリンジまたは1mLシリンジ)を用いて達成され得る。好ましくは、この反応は、注射後少なくとも48時間、より好ましくは48〜72時間に測定される。
【0050】
DTH反応は、細胞媒介免疫応答であり、これは試験抗原(すなわち、用いられるポリペプチドの免疫原性部分、またはその改変体)に予め曝露された患者においてより大きい。この応答は、定規を用いて視覚的に測定され得る。一般に、直径が約0.5cmより大きい応答、好ましくは直径が約5.0cmより大きい応答が、陽性の応答であり、乳癌の指標である。
【0051】
本明細書中に記載される乳房腫瘤特異的ポリペプチドは、好ましくは、皮膚試験における使用のために、少なくとも1つのポリペプチドおよび生理学的に受容可能なキャリア(例えば、水、生理食塩水、アルコール、または緩衝液)を含む薬学的組成物として処方される。このような組成物は、代表的には1つ以上の上記のポリペプチドを、約1μg〜100μg、好ましくは約10μg〜50μgの範囲の量で0.1mLの容量中に含む。好ましくは、このような薬学的組成物において使用されるキャリアは、適切な保存料(例えば、フェノールおよび/またはTween 80TM)を含んだ生理食塩水溶液である。
【0052】
本発明の他の局面において、乳癌の処置に対する進行および/または応答は、任意の上記のアッセイを一定の時間にわたって行い、そして応答のレベル(すなわち、検出されるポリペプチドまたはmRNAの量、または皮膚試験の場合には、検出される免疫応答の程度)の変化を評価することによってモニターされ得る。例えば、アッセイは、毎月から1月おきに1〜2年の期間行われ得る。一般に、乳癌は、応答のレベルが経時的に増加する患者において進行している。対照的に、乳癌は、検出されるシグナルが一定のままかまたは時間が経つにつれ減少する場合、進行していない。
【0053】
本発明のさらなる局面において、本明細書中で記載される化合物は、乳癌の免疫治療のために用いられ得る。これらの局面において、化合物(これは、ポリペプチド、抗体、または核酸分子であり得る)は、好ましくは薬学的組成物またはワクチン中に組み込まれる。薬学的組成物は、1つ以上のこのような組成物および生理学的に受容可能なキャリアを含む。ワクチンは、1つ以上のポリペプチドおよび免疫応答増強剤(例えば、アジュバントまたはリポソーム(この中に、化合物が組み込まれる))を含み得る。薬学的組成物およびワクチンはさらに、送達システム(例えば、生分解性ミクロスフェア(これは、例えば米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示されている))を含み得る。本発明の範囲内の薬学的組成物およびワクチンはまた、他の化合物(1つ以上のより別々のポリペプチドを含む)を含み得る。
【0054】
あるいは、ワクチンは、ポリペプチドがインサイチュで生成されるように、上記の1つ以上のポリペプチドをコードするDNAを含み得る。このようなワクチンにおいて、DNAは、当業者に公知の任意の種々の送達システム(核酸発現系、細菌およびウイルス発現系を含む)内に存在し得る。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なDNA配列(例えば、適切なプロモーターおよび終結シグナル)を含む。細菌送達システムは、その細胞表面上にポリペプチドの免疫原性部分を発現する細菌(例えば、Bacillus-Calmette-Guerrin)の投与を含む。好ましい実施態様において、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニアもしくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、またはアデノウイルス)を用いて導入され得、これは非病原性の(不完全な)、複製コンピテントなウイルスの使用を包含し得る。DNAをこのような発現系に組み込むための技術は、当業者に周知である。DNAはまた、例えば、Ulmerら、Science 259:1745-1749(1993)に記載され、そしてCohen,Science 259:1691-1692(1993)によって総説されるように「裸で」あり得る。裸のDNAの取込みは、DNAを生分解性のビーズ(これは、効率的に細胞内に輸送される)上にコートすることによって増大され得る。
【0055】
当業者に公知の任意の適切なキャリアが、本発明の薬学的組成物において用いられ得るが、キャリアのタイプは、投与の態様に依存して変化する。非経口投与(例えば、皮下注射)のためには、キャリアは、好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂質、蝋、または緩衝液を含む。経口投与のためには、上記のキャリアのいずれかまたは固体キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、および炭酸マグネシウム)が用いられ得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリラクテート、ポリグリコレート)はまた、本発明の薬学的組成物のためのキャリアとして用いられ得る。
【0056】
任意の種々のアジュバントが、本発明のワクチンにおいて、免疫応答を非特異的に増強するために用いられ得る。ほとんどのアジュバントは、迅速な代謝から抗原を保護するために設計された物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)および免疫応答の刺激剤(例えば、脂質A、Bortadella pertussisまたはMycobacterium tuberculosis由来タンパク質)を含む。適切なアジュバントは、例えば、Freund's Incomplete AdjuvantおよびComplete Adjuvant(Difco Laboratories,Detroit,MI)、Merck Adjuvant 65(Merck and Company,Inc.,Rahway,NJ)、ミョウバン、生分解性ミクロスフェア、モノホスホリルリピドA、ならびにquilAとして市販されている。サイトカイン(例えば、GM-CSFまたはインターロイキン-2、-7、もしくは-12)もまた、アジュバントとして用いられ得る。
【0057】
上記の薬学的組成物およびワクチンは、例えば患者の乳癌の治療のために用いられ得る。本明細書中で用いられる「患者」は、任意の温血動物、好ましくはヒトをいう。患者は、乳癌に苦しんでいてもいなくてもよい。従って、上記の薬学的組成物およびワクチンは乳癌の発達を防止するため、または乳癌に苦しむ患者を処置するために用いられ得る。乳癌の発達を防止するために、本明細書中に記載される1つ以上のポリペプチドを含む、薬学的組成物またはワクチンが、患者に投与され得る。あるいは、そのポリペプチドをコードする裸のDNAまたはプラスミドもしくはウイルスベクターが投与され得る。乳癌を有する患者を処置するためには、その薬学的組成物またはワクチンは、1つ以上のポリペプチド、抗体、または本明細書中に記載されるポリペプチドをコードするDNAに相補的なヌクレオチド配列(例えば、アンチセンスRNAまたはアンチセンスデオキシリボヌクレオチドオリゴヌクレオチド)を含み得る。
【0058】
投与の経路および頻度ならびに投与量は、個人によって変化する。一般に、薬学的組成物およびワクチンは、注射(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、または皮下)によって、鼻腔内に(例えば、吸入によって)、または経口的に投与され得る。1と10との間の用量が、52週間投与され得る。好ましくは、6用量が、1月の間隔で投与され、そしてブースターワクチン投与がその後定期的に与えられ得る。代わりのプロトコルが、個々の患者にとって適切であり得る。適切な用量は、上記のように投与された場合に、抗腫瘍免疫応答を促進し得る化合物の量である。このような応答は、患者における抗腫瘍抗体を測定することによって、またはインビトロで患者の腫瘍細胞を死滅させ得る細胞溶解性エフェクター細胞のワクチン依存的生成によってモニターされ得る。このようなワクチンはまた、ワクチン投与されていない患者に比較して、改善された臨床的結果(例えば、より頻繁な寛解、完全なまたは部分的なまたはより長い疾患なしの生存)を導く免疫応答を、ワクチン投与された患者に引き起こし得るべきである。一般に、1つ以上のポリペプチドを含む薬学的組成物およびワクチンについては、1用量に存在する各ポリペプチドの量は、約100μgから5mgまでの範囲である。適切な用量サイズは、患者のサイズにより変化するが、代表的には約0.1mLから約5mLまでの範囲である。
【0059】
以下の実施例は、例示のために提供され、そして限定するためではない。
【実施例】
【0060】
実施例1
ディファレンシャルディスプレイRT-PCRを用いた乳房腫瘤特異的cDNAの調製
本実施例は、ディファレンシャルディスプレイスクリーニングを用いる乳房腫瘤特異的ポリペプチドをコードするcDNA分子の調製を例示する。
【0061】
A.B18Ag1 cDNAの調製およびmRNA発現の特徴付け
組織サンプルを、乳癌を有する(これは、患者から組織を取り出した後の病理によって確認した)患者の乳房腫瘤および正常組織から調製した。正常RNAおよび肺瘍RNAをサンプルから抽出し、そしてmRNAを単離し、そして(dT)12AG(配列番号130)を連結した3'プライマーを用いてcDNAに変換した。次いで、ディファレンシャルディスプレイPCRを、ランダムに選択したプライマー(CTTCAACCTC)(配列番号103)を用いて実行した。増幅条件は、1.5mM MgCl2、20pmolのプライマー、500pmol dNTP、および1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer,Branchburg,NJ)を含む標準緩衝液であった。40サイクルの増幅を、94℃での変性を30秒間、42℃でのアニーリングを1分間、および72℃での伸長を30秒間を用いて行った。76個の増幅産物を含有するRNAフィンガープリントを得た。乳房腫瘤組織のRNAフィンガープリントは、正常乳房組織のRNAフィンガープリントに対して98%を超えて同一であったが、バンドは、腫瘍のRNAフィンガープリントパターンに特異的であることが繰り返し観察された。このバンドを銀染色ゲルから切りだし、Tベクター(Novagen,Madison,WI)中にサブクローニングし、そして配列決定した。
【0062】
cDNA(B18Ag1と呼ばれる)の配列は、配列番号1に提供される。GENBANKおよびEMBLのデータベース検索によって、最初にクローン化されたB18Ag1フラグメントが、内因性ヒトレトロウイルスエレメントS71(これは、シミアン肉腫ウイルス(SSV)に相同な短縮型レトロウイルスエレメントである)に77%同一であることが明らかになった。S71は、不完全gag遺伝子、pol遺伝子の一部、およびLTR様構造を3'末端に含む(Wernerら、Virology 174:225-238(1990)を参照のこと)。B18Ag1はまた、P30(gag)遺伝子座に対応する領域においてSSVに64%同一である。B18Ag1は、哺乳動物に感染するレトロウイルスの広範な種々のgagタンパク質にかなりの相同性を共有する領域をカバーする、3つの別々のそして不完全なリーディングフレームを含む。さらに、S71に対する相同性は、gag遺伝子内のみでなく、LTRを含む数kbの配列にわたる。
【0063】
B18Ag1特異的PCRプライマーを、コンピューター分析ガイドラインを用いて合成した。RT-PCR増幅(94℃、30秒;60℃→42℃、30秒;72℃、30秒を40サイクル)により、B18Ag1が、患者の乳房腫瘤組織中に比較的高レベルで存在する実際のmRNA配列を表すことを確認した。増幅において用いたプライマーは、3.5mMマグネシウム濃度およびpH8.5でB18Ag1-1(CTG CCT GAG CCA CAA ATG)(配列番号128)およびB18Ag1-4(CCG GAG GAG GAA GCT AGA GGA ATA)(配列番号129)、そして2mMマグネシウム、pH9.5でB18Ag1-2(ATG GCT ATT TTC GGG GCC TGA CA)(配列番号126)およびB18Ag1-3(CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)(配列番号127)であった。同一の実験は、この患者の正常な乳房組織において非常に低いレベルから存在しないレベルの発現を示した(図1を参照のこと)。次いで、RT-PCR実験を用いて、B18Ag1 mRNAが、9つの他の乳房腫瘤サンプル(ブラジル人およびアメリカ人の患者由来)中に存在するが、各癌患者に対応する正常乳房組織中に存在しないかまたは非常に低いレベルで存在することを示した。RT-PCR分析はまた、B18Ag1転写物が種々の正常組織(リンパ節、心筋層、および肝臓を含む)に存在せず、そして比較的低いレベルでPBMCおよび肺組織中に存在することを示した。乳房腫瘤サンプル中のB18Ag1 mRNAの存在、および正常乳房組織からのその非存在は、図2に示すようにノーザンブロット分析によって確認されている。
【0064】
乳房腫瘤組織中でのB18Ag1のディファレンシャル発現をまた、RNase保護アッセイによって確認した。図3は、4つの異なるRNase保護アッセイにおいて決定された種々の組織型でのB18Ag1 mRNAのレベルを示す。レーン1〜12は、種々の正常乳房組織サンプルを表し、レーン13〜25は、種々の乳房腫瘤サンプルを表し;レーン26〜27は、正常前立腺サンプルを表し;レーン28〜29は、前立腺腫瘍サンプルを表し;レーン30〜32は、結腸腫瘍サンプルを表し;レーン33は、正常大動脈を表し;レーン34は、正常小腸を表し;レーン35は、正常皮膚を表し、レーン36は、正常リンパ節を表し;レーン37は、正常卵巣を表し;レーン38は、正常肝臓を表し;レーン39は、正常骨格筋を表し;レーン40は、第一の正常胃サンプルを表し、レーン41は、第二の正常胃サンプルを表し;レーン42は、正常肺を表し;レーン43は、正常腎臓を表し;そしてレーン44は、正常膵臓を表す。実験間の比較を、各アッセイにおける公知のβアクチンメッセージ多量の陽性コントロールRNAを含ませ、そしてこの陽性コントロールに関して異なるアッセイの結果を規格化させることによって容易にした。
【0065】
RT-PCRおよびサザンブロット分析は、B18Ag1遺伝子座が、ヒトゲノムDNA中に単一コピーの内因性レトロウイルスエレメントとして存在することを示した。約12〜18kbのゲノムクローンを、初めのB18Ag1配列をプローブとして用いて単離した。4つのさらなるサブクローンもまた、XbaI消化によって単離した。これらのクローンのXbaI消化物(図4に示すように位置する)の末端から得られるさらなるレトロウイルス配列が、配列番号3から配列番号10として示され、ここで配列番号3は、図4に10と表示される配列の位置を示し、配列番号4は、11〜29と表示される配列の位置を示し、配列番号5は、3と表示される配列の位置を示し、配列番号6は、6と表示される配列の位置を示し、配列番号7は、12と表示される配列の位置を示し、配列番号8は、13と表示される配列の位置を示し、配列番号9は、14と表示される配列の位置を示し、そして配列番号10は、11〜22と表示される配列の位置を示す。
【0066】
引き続く研究は、12〜18kbのゲノムクローンが、図5Aおよび5Bに示されるように、約7.75kbのレトロウイルスエレメントを含むことを実証した。このレトロウイルスエレメントの配列は、配列番号141に示される。図5Aの上段の番号を付した線は、レトロウイルスゲノムクローンのセンス鎖配列を表す。この線の下のボックスは、選択された制限部位の位置を示す。矢印は、レトロウイルスエレメントを配列決定するために用いた異なる重複するクローンを示す。矢の方向は、単一継代サブクローン配列が、センスまたはアンチセンス鎖のいずれかに対応するかを示す。図5Bは、エレメント内のウイルス遺伝子の構成を示す、B18Ag1を含むレトロウイルスエレメントの模式図である。オープンボックスは、エレメント全体に見出される、メチオニンで始まる推定リーディングフレームに対応する。6つの可能性のあるリーディングフレームの各々が、ボックスの左に示されるように示され、フレーム1〜3は、センス鎖上に見出されるものに対応する。
【0067】
配列番号1のcDNAをプローブとして用いて、配列番号141に示すゲノム配列に比較して、わずかなヌクレオチドの差異(1%未満)を含むより長いcDNAを得た(配列番号227)。
【0068】
B.他の乳房腫瘤特異的ポリペプチドをコードするcDNA分子の調製
上記のように、正常RNAおよび腫瘍RNAを調製し、そしてmRNAを単離し、そして(dT)12AGを連結した3'プライマーを用いてcDNA中に変換した。次いで、ディファレンシャルディスプレイPCRを、ランダムに選択したプライマー(配列番号87〜125)を用いて実行した。増幅条件は、上記と同様であり、腫瘍のRNAフィンガープリントパターンに特異的であることが観察されたバンドを銀染色ゲルから切り出し、Tベクター(Novagen,Madison,WI)またはpCRIIベクター(Invitrogen,San Diego,CA)のいずれかにサブクローニングし、そして配列決定した。配列は、配列番号11〜配列番号86に提供された。単離した79の配列のうち、67は新規であることが見出された(配列番号11〜26および28〜77)(図6〜20もまた参照のこと)。
【0069】
B15Ag1抗原(配列番号27で提供された本来の同定された部分的配列)のための伸張されたDNA配列(配列番号290)をさらなる研究で得た。上記に記載されるように、ジーンバンクにおける配列と、配列番号290の配列との比較が、公知のヒトβ-Aアクチン遺伝子に対する相同性を示した。
【0070】
引き続く研究によって、さらなる146配列(配列番号142-289)が同定され、そのうち115は、新規のようである(配列番号142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288および291)。本発明者らの知識の限りでは、以前に同定された配列でこれまでに、正常乳房組織においてよりもヒト乳房腫瘤組織において、より大きいレベルで発現されることが示されたものはない。
【0071】
さらなる研究において、6つの異なるスプライス形態(それぞれの種々のスプライス形態は、わずかに異なるバージョンのB11Ag1コードフレームを含む)のB11Ag1抗原を単離した。スプライス結合配列は、種々のパターンおよび配置において種々のスプライス形態を構成する、個々のエキソンを定義する。プラーマーを、以下に記載するようなRT-PCRを使用して、各エキソンの発現パターンを試験するために設計した。各エキソンが、本来のB11Ag1クローンと同じ発現パターンを示し、発現は乳房腫瘤、前立腺および精巣特異的であることが見出された。単離されたタンパク質をコードするエキソンについて決定されたcDNA配列を、それぞれ配列番号292〜297に提供する。
【0072】
実施例2
ヒトゲノムDNAからのB18Ag1 DNAの調製
本実施例は、ヒトゲノムDNAからの増幅によるB18Ag1 DNAの調製を例示する。
【0073】
B18Ag1 DNAは、20pmolのB18Ag1特異的プライマー、500pmolのdNTP、および1単位のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer,Branchburg,NJ)を用いて、250ngのヒトゲノムDNAから以下の増幅パラメーターを用いて調製され得る:94℃での30秒間の変性、30秒間の60℃から42℃まで2サイクル毎に2℃の増分でのタッチダウンアニーリング、および30秒間の72℃での伸長。最後の増分(42℃アニーリング温度)は、25回サイクルさせるべきである。プライマーを、コンピューター分析を用いて選択した。合成されたプライマーは、B18Ag1-1、B18Ag1-2、B18Ag1-3、およびB18Ag1-4であった。用いられ得るプライマー対は、1+3、1+4、2+3、および2+4である。
【0074】
ゲル電気泳動後、B18Ag1 DNAに対応するバンドを切り出し、そして適切なベクターにクローン化し得る。
【0075】
実施例3
乳房腫瘤cDNAからのB18Ag1 DNAの調製
本実施例は、ヒト乳房腫瘤cDNAからの増幅によるB18Ag1 DNAの調製を例示する。
【0076】
第一鎖cDNAを、最終容量30μl中の500ngのポリA+RNA、200pmolのプライマー(T)12AG(すなわち、TTT TTT TTT TTT AG)(配列番号130)、1×第一鎖逆転写酵素緩衝液、6.7mM DTT、500mmol dNTP、および1単位のAMVまたはMMLV逆転写酵素(例えば、Gibco-BRL(Grand Island,NY)のような任意の供給業者から)を含有する反応混合物中のヒト乳房腫瘤組織から調製されたRNAから合成する。第一鎖合成後、cDNAを約25倍希釈し、そして1μlを実施例2に記載されるように増幅のために使用する。いくつかのプライマー対は、転写物の不均一な集団を生じ得るが、プライマーB18Ag1-2(5'ATG GCT ATT TTC GGG GGC TGA CA)(配列番号126)およびB18Ag1-3(5’CCG GTA TCT CCT CGT GGG TAT T)(配列番号127)は、単一の151bp増副産物を生じる。
【0077】
実施例4
B18Ag1のB細胞およびT細胞エピトープの同定
本実施例は、B18Ag1エピトープの同定を例示する。
【0078】
B18Ag1配列を、種々のコンピューターアルゴリズムを用いてスクリーニングし得る。B細胞エピトープを決定するために、Hopp,Prog.Clin.Biol.Res.172B:367-77(1985)、または代わりにCeaseら、J.Exp.Med.164:1779-84(1986)もしくはSpougeら、J.Immunol.138:204−12(1987)の方法を用いて、配列を疎水性および親水性値についてスクリーニングし得る。さらなるクラスII MHC(抗体またはB細胞)エピトープを、AMPHI(例えば、Margalitら、J.Immunol.138:2213(1987))のようなプログラムまたはRothbardおよびTaylor(例えば、EMBO J.7:93(1988))の方法を用いて推定し得る。
【0079】
一旦ペプチド(15〜20アミノ酸長)がこれらの技術を用いて同定されると、個々のペプチドを、自動化ペプチド合成装置(Perkin Elumar Applied Biosystems Division,Foster City,CA)のような製造業者から入手可能)およびMerrifield合成のような技術を用いて合成し得る。合成の後、ペプチドを用いて、正常または乳癌患者のいずれかから回収した血清をスクリーニングし、乳癌患者がそのペプチドと反応性の抗体を保有するか否かを決定し得る。乳癌患者におけるこのような抗体の存在は、問題の特定のB細胞エピトープの免疫原性を確認する。ペプチドはまた、インビボでの免疫化後に、その血清学的または体液性免疫を動物(マウス、ラット、ウサギ、チンパンジーなど)中に生成する能力について試験され得る。このような免疫化後のペプチド特異的抗血清の生成は、問題の特定のB細胞エピトープの免疫原性をさらに確認する。
【0080】
T細胞エピトープを同定するために、B18Ag1配列を、HLAクラスI MHC分子(例えば、Rammenseeら、Immunogenetics 41:178-228(1995)を参照のこと)に結合し得るB18Ag1配列内の8〜10アミノ酸モチーフを同定する際に有用な異なるコンピューターアルゴリズムを用いてスクリーニングし得る。合成後、このようなペプチドを、標準的な結合アッセイ(例えば、Setteら、J.Immunol.153:5586-92(1994))を用いて、クラスI MHCに結合するその能力について試験し得、そしてより重要なことには、例えば、Bakkerら、Cancer Res.55:5330-34(1995);Visserenら、J.Immunol.154:3991−98(1995);Kawakamiら、J.Immunol.154:3961-68(1995);およびKastら、J.Immnunol.152:3904−12(1994)の方法を用いて、患者または正常末梢単核細胞のインビトロ刺激後の抗原反応性細胞傷害性T細胞を生成するその能力について試験し得る。インビトロペプチド刺激後の自己(同一のクラスI MHC分子を保有する)腫瘍細胞を死滅させ得るT細胞の首尾良いインビトロ生成は、B18Ag1抗原の免疫原性をさらに確認する。さらに、このようなペプチドを用いて、マウスペプチドおよびB18Ag1反応性細胞傷害性T細胞を、特定のヒトMHCクラスIハプロタイプの発現についてトランスジェニックにされたマウスでのインビボ免疫化の後に、生成し得る(Vitielloら、J.Exp.Med.173:l007-15(1991))。
【0081】
推定のB18Ag1 B細胞およびT細胞エピトープの代表的なリスト(推定のHLAクラスI MHC結合抗原に従って分析した)を以下に示す:
推定Thモチーフ(B細胞エピトープ)(配列番号131〜133)

推定HLA A2.1モチーフ(T細胞エピトープ)(配列番号134〜140)

【0082】
実施例5
ディファレンシャルディスプレイPCRによって発見された乳房腫瘤遺伝子の特徴付け
ディファレンシャルディスプレイPCRによって発見された乳房腫瘤遺伝子の特異性および感受性をRT-PCRを用いて決定した。この手順は、乳房腫瘤遺伝子mRNA発現の迅速な評価を半定量的に大量のRNAを使用せずに可能にした。遺伝子特異的プライマーを用いて、種々の組織(8つの乳房腫瘤、5つの正常乳房、2つの前立腺腫瘍、2つの直腸腫瘍、1つの肺腫瘍、および14の他の正常成人ヒト組織(正常前立腺、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、骨格筋、皮膚、胃、および精巣を含む)を含む)中のmRNA発現レベルを試験した。
【0083】
RT-PCRの半定量的性質を確認するために、試験される組織の各々についてβアクチンを内部標準として用いた。第一鎖cDNAの連続希釈物を調製し、そしてβアクチン特異的プライマーを用いるRT-PCRアッセイを行った。次いで、βアクチンテンプレート線型範囲(linear range)増幅を可能にする希釈(これは最初のコピー数の差異を反映するのに十分感受性であった)を選択した。この条件を用いて、βアクチンレベルを各組織からの各逆転写反応について決定した。DNA夾雑をDNase処理によって、および逆転写酵素の添加をせずに調製された第一鎖cDNAを用いた場合は陰性の結果を保証することによって最小にした。
【0084】
遺伝子特異的プライマーを用いて、mRNA発現レベルを種々の組織において決定した。現在までに、38の遺伝子がRT-PCRによって首尾良く試験されており、そのうちの5つ(B15AG-1、B31GA1b.B38GA2a、B11A1aおよびB18AG1a)が乳房腫瘤に対して良好な特異性および感受性を示す。図21Aおよび21Bは、これらの遺伝子のうち3つについての結果を示す:B15AG-1(配列番号27)、B31GA1b(配列番号148)およびB38GA2a(配列番号157)。表Iは、正常乳房組織および乳房腫瘤、ならびにまた他の組織において試験された全ての遺伝子の発現レベルを要約する。

【0085】
以上から、本発明の特定の実施態様が本明細書中で例示の目的で記載されたが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることが認識される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】正常乳房組織から調製したcDNAから得た、ゲル電気泳動により分離した、ディファレンシャルディスプレーPCR産物(レーン1および2)、および同じ患者由来の乳房腫瘤組織から調製したcDNAから得た、ゲル電気泳動により分離したディファレンシャルディスプレーPCR産物(レーン3および4)を示す。矢印は、B18Ag1に対応するバンドを示す。
【図2】乳房腫瘤組織(レーン1)におけるB18Ag1 mRNAレベルと正常乳房組織におけるレベルとを比較するノーザンブロットである。
【図3】RNase保護アッセイにより決定した種々の正常組織および非乳房腫瘤組織におけるB18Ag1 mRNAと比較した乳房腫瘤組織におけるB18Ag1 mRNAのレベルを示す。
【図4】B18Ag1と比較したXbaI制限消化物(配列番号3〜配列番号10において提供される)の末端から得た付加的レトロウイルス配列の位置を示すゲノムクローンマップである。
【図5】図5AおよびBは、B18Ag1を含むレトロウイルスエレメントについての配列決定ストラテジー、ゲノム構成、および推定オープンリーディングフレームを示す。
【図6】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B18Ag1のヌクレオチド配列を示す。
【図7】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B17Ag1のヌクレオチド配列を示す。
【図8】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B17Ag2のヌクレオチド配列を示す。
【図9】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B13Ag2aのヌクレオチド配列を示す。
【図10】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B13Ag1bのヌクレオチド配列を示す。
【図11】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B13Ag1aのヌクレオチド配列を示す。
【図12】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B11Ag1のヌクレオチド配列を示す。
【図13】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B3CA3cのヌクレオチド配列を示す。
【図14】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B9CG1のヌクレオチド配列を示す。
【図15】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B9CG3のヌクレオチド配列を示す。
【図16】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B2CA2のヌクレオチド配列を示す。
【図17】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B3CA1のヌクレオチド配列を示す。
【図18】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B3CA2のヌクレオチド配列を示す。
【図19】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B3CA3のヌクレオチド配列を示す。
【図20】代表的な乳房腫瘤特異的cDNA B4CA1のヌクレオチド配列を示す。
【図21A】乳房腫瘤組織(レーン1〜8)ならびに正常乳房組織(レーン9〜13)、およびH20(レーン14)における乳房腫瘤遺伝子のRT-PCR分析を示す。
【図21B】前立腺腫瘍(レーン1、2)、結腸腫瘍(レーン3)、肺腫瘍(レーン4)、正常前立腺(レーン5)、正常結腸(レーン6)、正常腎臓(レーン7)、正常肝臓(レーン8)、正常肺(レーン9)、正常卵巣(レーン10、18)、正常膵臓(レーン11、12)、正常骨格筋(レーン13)、正常皮膚(レーン14)、正常胃(レーン15)、正常精巣(レーン16)、正常小腸(レーン17)、HBL-100(レーン19)、MCF-12A(レーン20)、乳房腫瘤(レーン21〜23)、H2O(レーン24)、および結腸肺瘍(レーン25)における、乳房腫瘤遺伝子のRT-PCR分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたDNA分子であって、以下
:(a)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択されるヌクレオチド配列;
(b)該ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特性が保持されるように、20%を越えないヌクレオチド位で1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入、および/または修飾を含む、該ヌクレオチド配列の改変体;または
(c)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択される少なくとも1つの配列によりコードされるポリペプチドのエピトープをコードするヌクレオチド配列、
を含む、DNA分子。
【請求項2】
ポリペプチドのエピトープをコードする単離されたDNA分子であって、ここで該ポリペプチドは、以下のヌクレオチド配列:
(a)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択される配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列;および
(b)配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択される配列と少なくとも80%同一であるヌクレオチド配列;
によりコードされる、DNA分子。
【請求項3】
ポリペプチドのエピトープをコードする単離されたDNA分子であって、ここで該ポリペプチドは、以下:
(a)配列番号141の配列から転写されるヌクレオチド配列;または
(b)該ヌクレオチド配列によりコードされる該ポリペプチドの抗原性および/または免疫原性特性が保持されるように、20%を越えないヌクレオチド位で1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入、および/または修飾を含む、該ヌクレオチド配列の改変体
によりコードされる、DNA分子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA分子に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離されたDNA分子またはRNA分子。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA分子を含む、組換え発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA分子によりコードされるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリペプチドであって、ここで、該ポリペプチドは、配列番号1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列のエピトープを含む、ポリペプチド。
【請求項9】
請求項7に記載のポリペプチドに結合する、モノクローナル抗体。
【請求項10】
患者における乳癌の存在を決定するための方法であって、生物学的サンプル中の、請求項7に記載の少なくとも1つのポリペプチドを検出する工程、およびそれにより該患者における乳癌の存在を決定する工程を包含する、方法。
【請求項11】
患者における乳癌の存在を決定するための方法であって、生物学的サンプル中の、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるヌクレオチド配列、ならびにストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列によりコードされる少なくとも1つのポリペプチドを検出する工程を包含する、方法。
【請求項12】
前記生物学的サンプルが乳房腫瘤の一部である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出の工程が、前記生物学的サンプルと請求項9に記載のモノクローナル抗体とを接触させる工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、ここで前記検出の工程が、前記生物学的サンプルと、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるヌクレオチド配列、ならびにストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列によりコードされるポリペプチドに結合するモノクローナル抗体とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項15】
患者における乳癌の存在を検出するための方法であって、生物学的サンプル中の、請求項7に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードするRNA分子を検出する工程、およびそれにより該患者における乳癌の存在を決定する工程を包含する、方法。
【請求項16】
患者における乳癌の存在を決定するための方法であって、生物学的サンプル中の、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする少なくとも1つのRNA分子を検出する工程、ならびにそれにより該患者における乳癌の存在を決定する工程を包含する、方法。
【請求項17】
前記生物学的サンプルが乳房腫瘤の一部である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、ここで、前記検出の工程は:
(a)前記生物学的サンプル中のRNA分子からcDNAを調製する工程;および
(b)請求項7に記載のポリペプチドの少なくとも一部をコードし得るcDNA分子を特異的に増幅する工程、およびそれにより該患者における乳癌の存在を決定する工程、を包含する、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、ここで、前記検出の工程は、以下:
(a)前記生物学的サンプル中のRNA分子からcDNAを調製する工程;ならびに
(b)配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの少なくとも一部をコードし得るcDNA分子を特異的に増幅する工程;およびこれにより該患者における乳癌の存在を決定する工程を包含する、方法。
【請求項20】
患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって、以下:
(a)生物学的サンプル中の、請求項7に記載の少なくとも1つのポリペプチドの量を最初の時点で検出する工程;
(b)引き続く時点で工程(a)を繰り返す工程;および(c)工程(a)および(b)で検出されたポリペプチドの量を比較する工程、およびそれにより該患者における乳癌の進行をモニターする工程、
を包含する、方法。
【請求項21】
患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって、以下:
(a)生物学的サンプルにおける、少なくとも1つのポリペプチドの量を最初の時点で検出する工程であって、該ポリペプチドは、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされている、工程;
(b)引き続く時点で工程(a)を繰り返す工程;ならびに
(c)工程(a)および(b)で検出されたポリペプチドの量を比較し、それにより該患者における乳癌の進行をモニターする工程、
を包含する、方法。
【請求項22】
前記生物学的サンプルが乳房腫瘤の一部である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記検出の工程が、前記生物学的サンプルの一部と、請求項9に記載のモノクローナル抗体とを接触させる工程を包含する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
請求項21に記載の方法であって、前記検出の工程が、前記生物学的サンプルと、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされる、ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項25】
請求項20に記載の方法であって、ここで前記ポリペプチドは、配列番号
1、3〜26、28〜77、142、143、146〜152、154〜166、168〜176、178〜192、194〜198、200〜204、206、207、209〜214、216、218、219、221〜240、243〜245、247、250、251、253、255、257〜266、268、269、271〜273、275、276、278、280、281、284、288、および291〜297からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列のエピトープを含む、方法。
【請求項26】
患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって:
(a)生物学的サンプル中の、請求項7に記載のポリペプチドをコードする少なくとも1つのRNA分子の量を最初の時点で検出する工程;
(b)引き続く時点で工程(a)を繰り返す工程;ならびに
(c)工程(a)および(b)で検出されたRNA分子の量を比較し、それにより該患者における乳癌の進行をモニターする工程、
を包含する、方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、ここで前記検出の工程は、以下:
(a)前記生物学的サンプル中のRNA分子からcDNAを調製する工程;および
(b)請求項7に記載のポリペプチドの少なくとも一部をコードし得るcDNA分子を特異的に増幅する工程、
を包含する、方法。
【請求項28】
患者における乳癌の進行をモニターするための方法であって、以下:
(a)生物学的サンプル中の、少なくとも1つのRNA分子の量を最初の時点で検出する工程であって、該RNA分子は、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする、工程;
(b)引き続く時点で工程(a)を繰り返す工程;ならびに
(c)工程(a)および(b)で検出されたRNA分子の量を比較し、それにより患者における乳癌の進行をモニターする工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項7に記載のポリペプチドおよび生理学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項30】
乳癌の発達を阻害するための薬学的組成物であって、該薬学的組成物はポリペプチドおよび生理学的に受容可能なキャリアを含み、該ポリペプチドは、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290、およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされている、薬学的組成物。
【請求項31】
請求項7に記載のポリペプチドおよび免疫応答増強剤を含む、ワクチン。
【請求項32】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA分子を含む、ワクチン。
【請求項33】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のDNA分子を含む組換え発現ベクターを含む、ワクチン。
【請求項34】
乳癌の発達を阻害するためのワクチンであって、該ワクチンはポリペプチドおよび免疫応答増強剤を含み、該ポリペプチドは、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290およびストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされている、ワクチン。
【請求項35】
患者に投与する工程を包含する、患者における乳癌の発達を阻害するため医薬の製造における使用のための、請求項29〜30のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項36】
患者における乳癌の発達を阻害するため医薬の製造における使用のための、請求項31〜34のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項37】
診断キットであって、以下:
(a)請求項9に記載の1つ以上のモノクローナル抗体;および
(b)検出試薬
を含む、キット。
【請求項38】
診断キットであって、以下:
(a)配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、290に提供される配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドに結合する1つ以上のモノクローナル抗体;ならびに
(b)検出試薬
を含む、キット。
【請求項39】
前記モノクローナル抗体が固相支持体に固定されている、請求項37または38のいずれか1項に記載のキット。
【請求項40】
2つのポリメラーゼ連鎖反応プライマーを含む診断キットであって、少なくとも1つのプライマーは、請求項4に記載のRNA分子に特異的である、診断キット。
【請求項41】
少なくとも1つのポリメラーゼ連鎖反応プライマーが、請求項4に記載のRNA分子の少なくとも約10の連続的ヌクレオチドを含む、請求項40に記載の診断キット。
【請求項42】
2つのポリメラーゼ連鎖反応プライマーを含む診断キットであって、少なくとも1つのプライマーは、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードするRNA分子に特異的である、診断キット。
【請求項43】
少なくとも1つのポリメラーゼ連鎖反応プライマーは、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードするRNA分子の少なくとも約10の連続的ヌクレオチドを含む、請求項42に記載の診断キット。
【請求項44】
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含む診断キットであって、該オリゴヌクレオチドプローブが、請求項4に記載のDNA分子の少なくとも約15の連続的ヌクレオチドを含む、診断キット。
【請求項45】
少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含む診断キットであって、該オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるDNA配列の少なくとも約15の連続的ヌクレオチドを含む、診断キット。
【請求項46】
請求項4に記載のDNA分子に特異的な少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含む、診断キット。
【請求項47】
前記オリゴヌクレオチドプローブが請求項4に記載のDNA分子の少なくとも約15の連続的ヌクレオチドを含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるDNA配列に特異的な、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含む、診断キット。
【請求項49】
前記オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号78〜86、144、145、153、167、177、193、199、205、208、215、217、220、241、242、246、248、249、252、256、267、270、274、277、279、282、283、285〜287、289、および290からなる群から選択されるDNA配列の少なくとも約15の連続的ヌクレオチドを含む、請求項48に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2008−289472(P2008−289472A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106951(P2008−106951)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【分割の表示】特願平10−543059の分割
【原出願日】平成10年4月9日(1998.4.9)
【出願人】(397069329)コリクサ コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】