説明

乳酸の製造方法および製造装置

【課題】微生物培養由来の乳酸溶液中のカルシウム成分および硫酸を除去する、乳酸の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、微生物培養液由来の乳酸溶液中のカルシウム成分および硫酸をナノ濾過膜で分離することで、該カルシウム成分および硫酸を除去することを特徴とする、乳酸の製造方法を提供するもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法に関する。詳しくは、微生物培養液中に残存しているカルシウム成分をナノ濾過膜によって除去して乳酸溶液を得る乳酸の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸は、食品用、医薬用などといった用途の他に、生分解性プラスチックのモノマー原料として工業的用途にまで広く適用され、需要が増加している。2−ヒドロキシプロピオン酸、即ち乳酸は、微生物による発酵により生産されることが知られており、微生物はグルコースに代表される炭水化物を含有する基質を乳酸に変換する。乳酸は、カルボニルα位の炭素に結合している水酸基の立体により、(L)−体および(D)−体の光学異性体に分類される。微生物発酵によれば、微生物を適宜選択することにより(L)−体または(D)−体の乳酸を選択的に、または(L)−体及び(D)−体の混合体(ラセミ体)の乳酸を生産することができる。
【0003】
微生物発酵による乳酸の生産は、一般に、培養液中にアルカリ性物質を添加することで、微生物発酵に最適なpHに保持されながら行われる。微生物発酵により生産された酸性物質である乳酸の多くは、アルカリ性物質が添加さているために、培養液中では乳酸塩として存在している。この場合、フリーの乳酸は、発酵終了後、培養液に酸性物質を添加することで得られる。
【0004】
具体的には、培養液中に添加するアルカリ性物質として水酸化カルシウムがしばしば用いられるが、この場合、微生物発酵により生産された乳酸は培養液中では乳酸カルシウムとして存在している。その後、培養終了後の培養液に酸性物質(例えば、硫酸)を添加することで、フリーの乳酸溶液を得ることができるが、カルシウム塩(例えば、硫酸カルシウム)が副生する。
【0005】
ここで生じたカルシウム塩を除去して乳酸分離する方法としては、硫酸カルシウムのようにカルシウム塩が難溶性で沈殿する場合は、定性濾紙等により濾別する方法が用いられている。しかしながら、この方法の場合、固体として沈殿しているカルシウム塩は除去されるが、溶液中に溶解している微量のカルシウム塩は除去されず、乳酸溶液中に残存してしまう。そのために、この乳酸を含む濾液を、例えばその後の精製工程において濃縮操作を行うと、フリーの乳酸溶液中に再びカルシウム塩が析出(沈殿)するという問題がある。また、カルシウムイオンが十分に除去されていない状態のまま、蒸留等の操作により乳酸溶液を加熱すると、カルシウムイオンの影響により、乳酸のラセミ化およびオリゴマー化が進行することが知られている。そのために、乳酸溶液中に残留する微量のカルシウム成分(カルシウム塩)を効果的に除去する方法が求められている。
【0006】
乳酸溶液から微量のカルシウム成分を除去する方法としては、イオン交換樹脂を用いる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、イオン交換樹脂のイオン交換性能を保持するためには、定期的にイオン交換樹脂を再生する必要がある。また、イオン交換樹脂の再生には大量の塩化ナトリウム水溶液を用いて行われるが、再生に伴い、大量の廃液が排出され、廃液処理に多額のコストがかかるという問題点がある。さらに、繰り返しイオン交換樹脂の再生を行うとイオン交換樹脂の再生率が低下する上に、イオン交換性能が低下し、カルシウム塩の除去率が低下するという問題点があった。
【0007】
また、電気透析装置を用いたバイポーラ膜によって、乳酸溶液から微量のカルシウム成分を除去する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法で用いるバイポーラ膜は高価な上に、カルシウム塩の除去効率が決して高くないという問題点があった。
【特許文献1】特表2001−506274号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−270025号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したしたような課題、すなわち、カルシウム塩の存在下で微生物発酵により乳酸を製造する場合において、培養液中のカルシウム成分を効果的に除去するという課題を解決し、効率よく乳酸を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、微生物発酵培養液をナノ濾過膜を用いて濾過することにより、培養液中のカルシウム成分を高効率で除去することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(6)から構成される。
(1)カルシウム塩の存在下で微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法であって、該培養液中のカルシウム成分を硫酸を加えて難溶性硫酸塩として除去して乳酸を含む分離液を得る工程A、行程Aで得られた乳酸を含む分離液をナノ濾過膜に通じて濾過し、カルシウム成分を除去して乳酸溶液を得る工程Bを含み、工程Bのナノ濾過膜のメタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であることを特徴とする乳酸の製造方法。
(2)前記ナノ濾過膜の膜素材が架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする(1)に記載の乳酸の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)
(3)前記工程Bで得られる乳酸溶液を、さらに、1Pa以上大気圧以下の圧力下において、25℃以上200℃以下で蒸留する工程Cを含む、(1)または(2)に記載の乳酸の製造方法。
(4)前記工程Bで得られる乳酸溶液を、さらに、逆浸透膜で濾過して乳酸濃度を高める工程Dを含む、(1)または(2)に記載の乳酸の製造方法。
(5)前記工程Dの後に前期工程Cを含む、(4)に記載の乳酸の製造方法。
(6)カルシウム塩の存在下で微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法であって、該培養液中のカルシウム成分を硫酸を加えて難溶性硫酸塩として除去して乳酸を含む分離液を得る工程A、行程Aで得られた乳酸を含む分離液をナノ濾過膜に通じて濾過し、カルシウム成分を除去して乳酸溶液を得る工程Bを含み、工程Bのナノ濾過膜のメタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であることを特徴とする乳酸の製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る乳酸の製造方法は、発酵培養液中に溶解し又は難溶性固体として含まれるカルシウム成分を簡単な操作により効果的に除去することができる。従って、例えばその後の濃縮操作、蒸留操作等の精製工程において、濃縮によるカルシウム塩の再析出(沈殿)、残存カルシウムイオンによる乳酸のラセミ化やオリゴマー化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0015】
本発明の乳酸の製造方法は、カルシウム塩の存在下で微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法であって、発酵培養液をナノ濾過膜に通じて濾過して、発酵培養液中のカルシウム成分を除去して乳酸溶液を得る工程Bを含むものである。
【0016】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bで用いるナノ濾過膜とは、ナノフィルトレーション膜、NF膜とも呼ばれるものであり、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜である。数ナノメートル程度の微小空隙を有していると考えられる膜で、主として、水中の微小粒子や分子、イオン、塩類等を阻止するために用いられる。本発明の発明者らは、このナノ濾過膜の分画性能と、乳酸の透過性能およびカルシウムイオンの阻止性能および硫酸イオンの阻止性能との関係を詳細に検討した結果、本発明に用いるナノ濾過膜の分画性能が乳酸の透過性能およびカルシウムイオンの阻止性能および硫酸イオンの阻止性能と密接に関係があることを見出した。
【0017】
ナノ濾過膜や逆浸透膜の分離性能は、一般に荷電反発の影響がある塩化ナトリウム水溶液や硫酸マグネシウムの濾過テストおよび荷電反発の影響がないメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ホルマリン、尿素、ブドウ糖、ショ糖などの大きさの異なる有機物や、酢酸、クエン酸、エチレンジアミンなどの分子をpHを調整して非解離状態とした分子を含む水溶液の濾過テストによって評価される。分離性能は塩の除去率や分画分子量曲線で評価され、その際の濾過水量で透水性能が評価される。分離性能と透水性能は相反する性能で、すなわち分子の阻止性能を高めるために膜構造を緻密化すると透水性能が低下するので、単純に膜構造を平均的に緻密にすれば良いというものではなく、細かく種々の大きさの分子の阻止性能を評価・把握して、必要な分画曲線のシャープさ(均一性)を決めた上で、出来るだけ透水性能が高くなるような分子構造にする必要があるため、膜構造の設計は難易度が高い課題である。
【0018】
ここで本発明のナノ濾過膜は、メタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であると、乳酸の透過率が高く、カルシウムイオンの阻止率および硫酸イオンの阻止率が高くなることを見出すに至った。図1に本発明のナノ濾過膜の分画分子量曲線を示す。
【0019】
メタノール、イソプロパノール、クエン酸、ショ糖の分子径をB3LYP/6−31+G(d,p)レベルの分子軌道計算によって分子の構造最適化を行った後、分子内の各原子間の距離を計算し、最も遠い原子間距離とすると、それぞれ0.28nm、0.43nm、0.74nm、0.96nmとなる。一方、非解離の乳酸の大きさは0.50nmであるが、大きさ0.28nmのメタノールの除去率が10%を越えたり、大きさ0.43nmのイソプロパノールの除去率が50%を越えたり、大きさ0.74nmのクエン酸の除去率が95%を越えると乳酸の透過率と透水性能が低下してしまい、本発明用のナノ濾過膜として好ましくないことを見出した。
【0020】
また、カルシウムイオンの水和イオン構造を分子動力学計算によって求めたところ、カルシウムイオンは水分子が27水和した構造となっており、その水和イオンの大きさは1.2nmであることを明らかにした。このことを考慮してカルシウムの除去率を検討した結果、ショ糖の除去率が95%以上で、かつイソプロパノールの除去率が20%以上かつクエン酸の除去率が70%以上であれば、カルシウムイオンやその対イオンである硫酸イオンの除去率が高くなることを見出した。
【0021】
したがって、図1に示すように本発明のナノ濾過膜のメタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であると、乳酸の透過率はおよそ40%から60%の間となり、カルシウムイオンの除去率はほぼ100%に近い値になり好ましく、ナノ濾過膜の分画性能が特定の範囲になる様にナノ濾過膜を設計してやることで高効率に乳酸が精製できることを見出した。
【0022】
ここで、メタノール、イソプロパノール、クエン酸、ショ糖の除去率の測定条件は次の通りである。膜面積30cm程度の平膜を用いて、原水濃度1,000mg/L、原水温度25℃、原水圧力0.75MPaで濾過して式1から求めた。原水pHは、メタノール、イソプロパノール、ショ糖は6.5、クエン酸は2.8とした。
除去率(%)=(1−(透過水濃度/原水濃度))×100‥‥‥(式1)
ナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマー、ポリアクリロニトリル、スルホン化ポリスルホンなどの高分子素材を使用することができる。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。
【0023】
これらの中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが適している。また、ポリアミド半透膜としては、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応により得られる架橋ポリアミドの機能層を支持体に有してなる複合半透膜が適している。
【0024】
ポリアミドを膜素材として含むナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物がより好ましい。前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、前記化学式1で示される構成成分を含有するアミン成分が好ましく、例えばピペラジン、ピペリジンなどが挙げられるが、ピペラジン、ピペリジンは、耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることからより好ましく用いられる。また、化学式1中、n=3のものがより好ましく用いられる。上記化学式1で示される構成成分としては、例えば、特開昭62−201606号公報に記載のものが挙げられる。
【0025】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bで用いるナノ濾過膜は、上記の1種類の素材で構成する膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜又は複数の膜を組み合わせた複合膜であってもよい。例えば、特開昭62−201606号公報に記載のように、ポリスルホンを膜素材とする支持膜に上記素材からなるナノ濾過膜を分離機能層として構成させた複合膜を用いることができる。
【0026】
ナノ濾過膜は一般にスパイラル型の膜エレメントとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜エレメントとして使用されることが好ましく、採用できる。
【0027】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bにおける、「ナノ濾過膜で濾過する」とは、微生物の発酵培養により生産された乳酸を含む分離液を、ナノ濾過膜に通じて濾過し、溶解しているカルシウム成分を除去または阻止し、乳酸溶液を濾液として透過させることを意味する。ここで、カルシウム成分には、培養液中に含まれるカルシウムイオン、カルシウム塩、カルシウムを含む化合物のいずれの形態のものも含まれ、また培養液中において溶解しているもの、培養液中に析出し若しくは沈殿して含まれているもののいずれも含まれる。
【0028】
溶解または固体として析出しているカルシウム成分の除去または阻止の程度を評価する方法としては、カルシウムイオン除去率(阻止率)を算出することで評価する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。カルシウムイオン阻止率(除去率)は、イオンクロマトグラフィーに代表される分析により、原水(分離液)中に含まれるカルシウムイオン濃度(原水カルシウムイオン濃度)および透過水(乳酸溶液)中に含まれるカルシウムイオンの濃度(透過水カルシウムイオン濃度)を測定することで、式2によって算出することができる。
【0029】
カルシウムイオン除去率(%)=(1−(透過水カルシウムイオン濃度/原水カルシウムイオン濃度))×100‥‥‥(式2)
乳酸水溶液のナノ濾過膜透過性の評価方法としては、乳酸透過率を算出して評価する方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。乳酸透過率は、高速液体クロマトグラフィーに代表される分析により、原水(分離液)中に含まれる乳酸濃度(原水乳酸濃度)および透過水(乳酸溶液)中に含まれる乳酸濃度(透過水乳酸濃度)を測定することで、式3によって算出することができる。
【0030】
乳酸透過率(%)=(透過水乳酸濃度/原水乳酸濃度)×100‥‥‥(式3)
膜単位面積、単位圧力当たりの透過流量(膜透過流束)の評価方法としては、透過水量および透過水量を採水した時間および膜面積を測定することで、式4によって算出することができる。
【0031】
膜透過流束(m/(m・日))=透過水量/(膜面積×採水時間)‥‥‥(式4)
本発明の乳酸の製造方法の工程Bにおいて、微生物培養液のナノ濾過膜による濾過は、圧力をかけて分離を行う。その濾過圧は、0.1MPa以上8MPa以下の範囲で好ましく用いられるが、0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるため、0.5MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、乳酸溶液を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、1MPa以上6MPa以下で用いることが特に好ましい。
【0032】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bにおいて、ナノ濾過膜による濾過に供する分離液のpHは、4.5以下とするのが好ましい。ナノ濾過膜は、溶液中でイオン化している物質の方が、イオン化していない物質に比べて除去率が高い。したがって乳酸の解離定数pKaが3.86であることから、pHを3.86以上とすると、乳酸イオンと水素イオンに解離が進み、効率的な乳酸の透過が出来なくなってくる。pHの上限については、乳酸の透過率の観点から検討した結果、pHが4.5を越えると乳酸の透過率が効率的でなくなってくるので分離液のpHは4.5以下、好ましくは乳酸の解離定数pKaより小さい3.8以下とすることが重要である。
【0033】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bで用いるナノ濾過膜の透水性能としては、塩化ナトリウム(500mg/L)で0.3MPaの濾過圧において、水の透過水量(m/m/日)が0.5以上0.8以下のものが好ましく用いられる。
【0034】
ナノ濾過膜による分離で用いる微生物培養液中の乳酸溶液中の乳酸の濃度は、特に限定されないが、高濃度であれば、透過液中に含まれる乳酸の濃度も高いため、濃縮する時間を短縮することができることからコスト削減に好適であり、例えば10g/L以上100g/L以下が好ましい。
【0035】
本発明の乳酸の製造方法の工程Bにおいて、培養液中に含まれるカルシウム成分の濃度は、飽和溶解度以下であることが好ましい。すなわち、カルシウム成分が飽和溶解度以下であれば培養溶液中に溶解しており、ナノ濾過膜エレメント内部での析出が起こらなく、安定した分離操作が継続できる。一方飽和溶解度以上であれば、カルシウム成分が一部析出しているため、ナノ濾過膜による安定した乳酸の分離が困難となる。したがってカルシウム成分の濃度は飽和溶解度以下、すなわち2g/L以下が好ましい。
【0036】
本発明の乳酸の製造方法では、培養液中のカルシウム成分を難溶性の硫酸塩として除去する工程Aを行った後に得られる乳酸を含む分離液を、工程Bのナノ濾過膜に通じて濾過する工程に供する。具体的には、工程Aとして、例えば培養液中に硫酸を添加して、培養液中のカルシウム成分を、難溶性の硫酸カルシウムとして沈殿させ、沈殿物を重力濾過機、圧濾機、濾葉濾過機、真空連続濾過機などの濾過機や遠心分離器、精密濾過膜や限外濾過膜、濾布、濾紙などのフィルターなどで濾別する工程Aを行い、その濾液(乳酸を含む分離液)を工程Bのナノ濾過膜に通じることで、効果的にカルシウム成分を除去または阻止することができる。
【0037】
本発明の乳酸の製造方法において、工程Aの培養液をナノ濾過膜で濾過して得られる乳酸溶液を、さらに蒸留する工程Cに供することで、高純度の乳酸を得ることができる。蒸留工程は、1Pa以上大気圧(常圧、約101kPa)以下の減圧下で行うことが好ましい。減圧下で行う場合の蒸留温度は、20℃以上200℃以下で行うことが好ましいが、180℃以上で蒸留を行った場合、不純物の影響により、乳酸がラセミ化する虞があるため、50℃以上180℃以下であれば、好適に乳酸の蒸留を行うことができる。この蒸留工程に供する前に、ナノ濾過膜を透過した乳酸溶液を、一旦エバポレーターに代表される濃縮装置を用いて乳酸溶液を濃縮してもよい。
【0038】
また、工程Bで得られる乳酸溶液を、さらに、逆浸透膜で濾過して乳酸濃度を高める工程Dに供することも好ましく採用できる。ここで逆浸透膜とは、被処理水の浸透圧以上の圧力差を駆動力にイオンや低分子量分子を除去する濾過膜である。ここで使用される逆浸透膜としては、例えば酢酸セルロースなどのセルロース系や、多官能アミン化合物と多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させて微多孔性支持膜上にポリアミド分離機能層を設けた膜などが採用できる。逆浸透膜表面の汚れすなわちファウリングを抑制するために、酸ハライド基と反応する反応性基を少なくとも1個有する化合物の水溶液をポリアミド分離機能層の表面に被覆して、分離機能層表面に残存する酸ハロゲン基と該反応性基との間で共有結合を形成させた主に下水処理用の低ファウリング逆浸透膜なども好ましく採用できる。本発明の行程Bで二価のカルシウムイオンを大部分除去できているため、逆浸透膜面でのスケールの生成もなく安定した膜濃縮が行える。
【0039】
以下、本発明の乳酸の製造方法に供される微生物の発酵培養による乳酸生産について説明する。
【0040】
微生物の発酵培養による乳酸生産に使用する発酵原料としては、培養する微生物の生育を促し、目的とする発酵生産物である乳酸を良好に生産させうるものであればよく、炭素源、窒素源、無機塩類、及び必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が良い。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなども使用される。
【0041】
窒素源としてはアンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
【0042】
本発明に使用する微生物が生育のために特定の栄養素(例えば、アミノ酸など)を必要とする場合には、その栄養物をそれ自体もしくはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用してもよい。本発明において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言う。培養液に追加する発酵原料の組成は、目的とする乳酸の生産性が高くなるように、培養開始時の発酵原料組成から適宜変更しても良い。
【0043】
本発明では、微生物の培養は、通常pH4−8、温度20−40℃の範囲で行われる。培養液のpHはアルカリ性物質、具体的には塩基性のカルシウム塩によって上記範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。塩基性カルシウム塩としては、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、酢酸カルシウムなどが好ましく用いられる。
【0044】
微生物の培養において、酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
【0045】
微生物の培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物濃度を高くした後に、連続培養(引き抜き)を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。適当な時期から原料培養液の供給及び培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養物の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養物の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。原料培養液には上記に示したような菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましく、一例として、乾燥重量として5g/L以上に維持することで良好な生産効率が得られる。
【0046】
発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、通常、単一の発酵槽で行うのが、培養管理上好ましい。しかしながら、菌体を増殖しつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることもあり得る。この場合、複数の発酵槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても発酵生産物の高生産性は得られる。
【0047】
本発明で使用される微生物については特に制限はないが、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌などが挙げられる。動物細胞、昆虫細胞等の培養細胞も、本発明で使用される微生物に含まれる。使用する微生物は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(乳酸生産能力を持つ酵母株の作製)
参考例1 乳酸生産能力を持つ酵母株の作製
乳酸生産能力を持つ酵母株を下記のように造成した。具体的には、ヒト由来LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結することでL−乳酸生産能力を持つ酵母株を造成した。ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)には、La−Taq(宝酒造社製)、あるいはKOD-Plus-polymerase(東洋紡社製)を用い、付属の取扱説明に従って行った。
【0050】
ヒト乳ガン株化細胞(MCF−7)を培養回収後、TRIZOL Reagent(Invitrogen社製)を用いてtotal RNAを抽出し、得られたtotal RNAを鋳型としてSuperScript Choice System(Invitrogen社製)を用いた逆転写反応によりcDNAの合成を行った。これらの操作の詳細は、それぞれ付属のプロトコールに従った。得られたcDNAを続くPCRの増幅鋳型とした。
【0051】
上記操作で得られたcDNAを増幅鋳型とし、配列番号1および配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたKOD-Plus-polymeraseによるPCRによりL−ldh遺伝子のクローニングを行った。各PCR増幅断片を精製し末端をT4 Polynucleotide Kinase(TAKARA社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(TAKARA社製)を用いて行った。ライゲーションプラスミド産物で大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドDNAを回収することにより各種L−ldh遺伝子(配列番号3)がサブクローニングされたプラスミドを得た。得られたL−ldh遺伝子が挿入されたpUC118プラスミドを制限酵素XhoIおよびNotIで消化し、得られた各DNA断片を酵母発現用ベクターpTRS11のXhoI/NotI切断部位に挿入した。このようにしてヒト由来L−ldh遺伝子発現プラスミドpL−ldh5(L−ldh遺伝子)を得た。
【0052】
ヒト由来LDH遺伝子を含むプラスミドpL−ldh5を増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号5で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.3kbのヒト由来LDH遺伝子、及びサッカロミセス・セレビセ由来のTDH3遺伝子のターミネーター配列含むDNA断片を増幅した。また、プラスミドpRS424を増幅鋳型として、配列番号6および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより1.2kbのサッカロミセス・セレビセ由来のTRP1遺伝子を含むDNA断片を増幅した。それぞれのDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCR法によって得られた産物を1.5%アガロースゲル電気泳動して、ヒト由来LDH遺伝子及びTRP1遺伝子が連結された2.5kbのDNA断片を常法に従い調製した。この2.5kbのDNA断片で出芽酵母NBRC10505株を常法に従いトリプトファン非要求性に形質転換した。
【0053】
得られた形質転換細胞がヒト由来LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結されている細胞であることの確認は、下記のように行った。まず、形質転換細胞のゲノムDNAを常法に従って調製し、これを増幅鋳型とした配列番号8および配列番号9で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより0.7kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。また、形質転換細胞が乳酸生産能力を持つかどうかは、SC培地(METHODS IN YEAST GENETICS 2000 EDITION、 CSHL PRESS)で形質転換細胞を培養した培養上澄に乳酸が含まれていることを下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
【0054】
カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)、移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)、反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)、検出方法:電気伝導度、温度:45℃。
【0055】
また、L−乳酸の光学純度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
【0056】
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)、移動相 :1mM 硫酸銅水溶液、流速:1.0ml/min、検出方法 :UV254nm、温度 :30℃。
【0057】
また、L−乳酸の光学純度は式5で計算される。ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
【0058】
光学純度(%)=100×(L−D)/(L+D)‥‥‥(式5)
HPLC分析の結果、4g/LのL−乳酸が検出され、D−乳酸は検出限界以下であった。以上の検討により、この形質転換体がL−乳酸生産能力を持つことを確認した。得られた形質転換細胞を酵母SW−1株として、続く実施例に用いた。
【0059】
参考例2 バッチ発酵によるL−乳酸の製造
微生物を用いた発酵形態として最も典型的なバッチ発酵を行い、その乳酸生産性を評価した。表1に示す乳酸発酵培地を用い、バッチ発酵試験を行った。該培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。微生物として参考例1で造成した酵母SW−1株を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、参考例1に示したHPLCを用いて評価し、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬)を用いた。参考例2の運転条件を以下に示す。
【0060】
反応槽容量(乳酸発酵培地量):2(L)、 温度調整:30(℃)、反応槽通気量:0.2(L/min)、反応槽攪拌速度:400(rpm)、pH調整:1N 水酸化カルシウムによりpH5に調整。
【0061】
まず、SW−1株を試験管で5mlの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(前培養)。温度調整、pH調整を行い、発酵培養を行った。この時の菌体増殖量は、600nmでの吸光度で15であった。回分発酵の結果を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例1
(ナノ濾過膜で分離する分離液の準備)
参考例1、2で乳酸発酵した培養液(2L)をpHが2.6になるまで濃硫酸(和光純薬製)を滴下後、1時間25℃で撹拌し、培養液中の乳酸カルシウムを乳酸と硫酸カルシウムに変換した。次いで、沈殿した硫酸カルシウムを定性濾紙No2(アドバンテック製)を用いて吸引濾過により、沈殿物を濾別し、濾液2Lを回収した。
【0065】
(ナノ濾過膜による分離実験)
次いで、図2に示す、膜濾過装置の原水槽1に上記で得られた濾液2Lを注入した。メタノールの除去率が1%かつイソプロパノールの除去率が35%かつクエン酸の除去率が86%かつショ糖の除去率が99.7%であるナノ濾過膜7(ピペラジンポリアミド半透膜UTC60、東レ社製)を直径64mmφに切り取り、図3のステンレス(SUS316製)製のセルにセットし、高圧ポンプ3の圧力を4MPaに調整し、透過水4を回収した。原水槽1、透過水4に含まれる、硫酸イオン、カルシウムイオンの濃度をイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)、乳酸濃度を、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)により分析した。結果を表3に示す。
【0066】
表3に示すように、硫酸イオン、カルシウムイオンが高効率で除去されたことがわかった。
【0067】
【表3】

【0068】
実施例2
(乳酸溶液の蒸留)
実施例1のナノ濾過膜分離した、透過液1L(乳酸濃度:24g/L)をロータリーエバポレーター(東京理化社製)を用いて、減圧下(50hPa)で水を蒸発させて濃縮した。この時、硫酸カルシウムの析出は見られなかった。
【0069】
次いで、133Pa、130℃で減圧蒸留を行った。蒸留した乳酸のラセミ化を確認するために、蒸留の前後で光学純度を高速液体クロマトグラフィーにより測定を行ったところ、光学純度の低下は見られなかった。表4に結果を示す。
【0070】
【表4】

【0071】
以上の実施例及び比較例の結果から、メタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であるナノ濾過膜により、培養液中の硫酸カルシウムおよび硫酸を高効率で除去できることが明らかとなった。すなわち、本発明によって、微生物培養液中の乳酸溶液中のカルシウム成分および硫酸イオンをナノ濾過膜によって高効率で除去することができ、濃縮してもカルシウム成分が析出せず、さらに、蒸留工程にかけてもラセミ化、オリゴマー化が進行しないことが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明のナノ濾過膜の分画分子量曲線である。
【図2】本発明で用いたナノ濾過膜製造装置の一つの実施の形態を示す概要図である。
【図3】本発明で用いたナノ濾過膜製造装置のナノ濾過膜が装着されたセル断面図の一つの実施の形態を示す概要図である。
【符号の説明】
【0073】
1 原水槽
2 ナノ濾過膜が装着されたセル
3 高圧ポンプ
4 膜透過液の流れ
5 膜濃縮液の流れ
6 高圧ポンプにより送液された培養液の流れ
7 ナノ濾過膜
8 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩の存在下で微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法であって、該培養液中のカルシウム成分を硫酸を加えて難溶性硫酸塩として除去して乳酸を含む分離液を得る工程A、行程Aで得られた乳酸を含む分離液をナノ濾過膜に通じて濾過し、カルシウム成分を除去して乳酸溶液を得る工程Bを含み、工程Bのナノ濾過膜のメタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であることを特徴とする乳酸の製造方法。
【請求項2】
前記ナノ濾過膜の膜素材が架橋ピペラジンポリアミドを主成分とし、かつ、化学式1で示される構成成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の乳酸の製造方法。
【化1】

(式中、Rは−Hまたは−CH、nは0から3までの整数を表す。)
【請求項3】
前記工程Bで得られる乳酸溶液を、さらに、1Pa以上大気圧以下の圧力下において、25℃以上200℃以下で蒸留する工程Cを含む、請求項1または2に記載の乳酸の製造方法。
【請求項4】
前記工程Bで得られる乳酸溶液を、さらに、逆浸透膜で濾過して乳酸濃度を高める工程Dを含む、請求項1または2に記載の乳酸の製造方法。
【請求項5】
前記工程Dの後に前期工程Cを含む、請求項4に記載の乳酸の製造方法。
【請求項6】
カルシウム塩の存在下で微生物の発酵培養により培養液中に生産された乳酸を分離して製造する方法であって、該培養液中のカルシウム成分を硫酸を加えて難溶性硫酸塩として除去して乳酸を含む分離液を得る工程A、行程Aで得られた乳酸を含む分離液をナノ濾過膜に通じて濾過し、カルシウム成分を除去して乳酸溶液を得る工程Bを含み、工程Bのナノ濾過膜のメタノールの除去率が10%以下かつイソプロパノールの除去率が20%以上50%以下かつクエン酸の除去率が70%以上95%以下かつショ糖の除去率が95%以上であることを特徴とする乳酸の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−34030(P2009−34030A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200439(P2007−200439)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度新エネルギー・産業技術総合開発機構、「微生物機能を活用した環境調和型製造基盤技術開発/微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】