説明

乳酸菌からの抗炎症活性

本発明において、乳酸菌は、Gタンパク質に依存しかつ転写後である機構で炎症応答を阻害する可溶性因子(ペプチド若しくはタンパク質のような)を産生して、細胞によるタンパク質の産生若しくは分泌を効果的に阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦に支援された研究若しくは開発に関する声明
本発明はNIH助成金番号K08−DK02705からの資金で部分的に展開された。
関連出願への交差引用
本出願は2003年1月30日出願の米国仮出願第60/443,644号明細書(引用することにより本明細書に組み込まれる)からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は免疫学、医学、細胞生物学および分子生物学の分野に向けられる。特定の一態様において、本発明は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)および他の種を包含する乳酸菌から分泌される抗炎症性分子、ならびにそれに関する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロバイオティクスは単なる栄養を超えた正の健康上の利益をもつ片利共生微生物である(非特許文献1)。乳酸杆菌属(Lactobacillus)の片利共生種は臨床研究で最も普遍的に使用される生菌を代表する。それらの遍在する存在および自生の(固有の)微生物叢のメンバーとしての役割(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)が腸管に有益な細菌としてのそれらの役割における興味を刺激した。カプセル内視鏡検査により、Reuterら(非特許文献4)は、健康な小児および成人の胃腸管中に存する固有の腸内細菌として複数の乳酸杆菌属(Lactobacillus)種の存在を記述している。1つの研究(非特許文献5)は、ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)が、健康なヒト個体の口腔および直腸粘膜で見出される3種の最も普遍的に見出される腸内乳酸杆菌の1種であったことを示した。マウスを包含する健康なげっ歯類もまた、乳酸杆菌により一般に胃および腸にコロニーを作られる(非特許文献6)。この種はヒトの口腔に棲息しそしてう食中に見出された(非特許文献7)。L.ラムノスス(L.rhamnosus)は腸粘膜中でもまた見出されており(非特許文献8)、また、膣微生物叢の一部を含んでなる(非特許文献9)。
【0004】
ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GG(LGG)は、健康な個体の糞便からS.GorbachとB.Goldinにより1985年に単離され(非特許文献10;特許文献1)、そしてその後の研究は大腸炎を伴う患者で有益な効果を示した(非特許文献11)。この生物体は当初カセイ菌亜種ラムノスス(Lactobacillus casei subsp.Rhamnosus)と分類されたが、しかし、乳酸杆菌属(Lactobacillus)の分類法におけるその後の微細な区別がL.ラムノスス(L.rhamnosus)としての再分類をもたらした(非特許文献12;非特許文献13)。LGGはげっ歯類(非特許文献14)およびヒト(非特許文献15)の腸管にコロニーを形成し、かつ、多様なグラム陰性およびグラム陽性細菌の増殖を阻害する(非特許文献16)。この株は結腸粘膜に接着することがヒト個体で示されており(非特許文献17)、また、結腸粘膜および糞便から成功裏に回収され得る。それは大部分の個体で1〜3日間、および被験体の30%で7日まで生存する。それのコロニー形成能力に加え、LGGの存在は粘膜の免疫応答に影響を及ぼす。LGGは粘膜のIgA応答を刺激しかつパイエル板における抗原の取り込みを高める(非特許文献18)。
【0005】
潜在的な生菌剤として、複数の研究が腸管にコロニーを形成しかつ粘膜上皮および免疫応答を調節するLGGの能力を示した。LGGは一関連(mono−associated)無菌ラットの腸細胞増殖および絨毛の大きさを増大させた(非特許文献14)。LGGはまた、経口投与後にex vivoでネズミリンパ球応答の拡散も調節し(非特許文献19)、また、L.パラカセイ(L.paracasei)はCD4+ Tリンパ球の調節性サイトカインのプロファイルを変える(非特許文献20)。適応免疫応答に加え、LGGは自然免疫応答に対する影響を有する。LGGは核因子κB(NFκB)、ならびにヒトマクロファージのシグナル伝達物質および転写活性化因子(STAT)シグナル伝達経路を活性化し(非特許文献21)、また、L.ラムノスス(L.rhamnosus)はマクロファージによるインターロイキン−12(IL−12)産生を刺激する(非特許文献22)。LGGはまた小児においてIL−10のような免疫調節性サイトカインの産生も刺激し(非特許文献23)、そしてin vivoで炎症前応答を調節するかもしれない。マクロファージ、樹状細胞および好中球のような自然免疫のエフェクター細胞は免疫応答の大多数の一次駆動体である(非特許文献24)。自然免疫が抗原に対する自然および適応双方の応答の経過を自己若しくは非自己として指図するという考えは、炎症の制御における自然免疫の役割を強調している。
【0006】
特許文献2は製薬学的乳酸杆菌製剤、とりわけ特定の特性を有しかつある株であるものに関する方法に関し、該特性は、低栄養素を含んでなる培養物およびNaS、NH、低級脂肪酸若しくはそれらの混合物の群からの物質を含んでなる培養物中で増殖することを包含する。特定の態様において、本発明は胃炎および腸炎に向けられる。
【0007】
特許文献1は、ATCC受託番号53103を有する特定の乳酸杆菌属(Lactobacillus)株およびそれに関する方法に向けられ、該株はラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GGである。
【0008】
特許文献3は、新生児の壊死性全腸炎の胃腸組織の傷害を予防するのに有用な特定のL.サリバリウス(L.salivarius)およびL.プランタルム(L.plantarum)株を記述している。
【0009】
特許文献4は、サイトカインを産生するグラム陽性細菌若しくはサイトカインアンタゴニストを産生するグラム陽性細菌株を投与することにより炎症性腸疾患を治療することに関する。特定の態様において、IL−10、可溶性TNF受容体若しくは別のTNFアンタゴニスト、IL−12アンタゴニスト、インターフェロン−γアンタゴニスト、IL−1アンタゴニストおよび他者から選択されるサイトカイン若しくはサイトカインアンタゴニスト。特定の態様において、グラム陽性細菌がサイトカイン、サイトカインアンタゴニストなどを産生するよう遺伝子的に工作される。
【0010】
Borruelら(非特許文献25)は、数種の乳酸杆菌属(Lactobacillus)種の提供に際してのTNF−αのダウンレギュレーションを記述しているが、とは言え該効果はプロテアーゼ阻害剤により防止されなかった。
【0011】
乳酸杆菌属(Lactobacillus)種に加え、例えば乳製品を醗酵させかつ腸感染症および下痢を治療するのに使用されるビフィドバクテリウム属(Bifidobacteriium)、ならびに、食品工業でかつ下痢ならびに腸および膣感染症を治療しかつ微量養分を宿主に利用可能にすることにより食物の栄養価を向上させるために使用される連鎖球菌属(Streptococcus)(例えばストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus))のような他の乳酸菌が生菌として使用されている。
【0012】
多くの異なる乳酸が、抗菌性、免疫調節性および/若しくは抗炎症性の効果を有する多様な因子を産生することが既知であるとは言え、これらの因子は一般に複雑かつ/若しくは高分子量の産物である(例えば特許文献5の20kDAのタンパク質および「付加的因子(1種若しくは複数)」)。
【0013】
本発明は、しかしながら、とりわけTNF−αおよびGタンパク質の転写後阻害を含んでなる機構における抗炎症性の可溶性乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌剤の有効な接触非依存性の投与手段を提供するための当該技術分野における必要性を取り扱う。
【特許文献1】米国特許第4,839,281号明細書
【特許文献2】米国特許第4,314,995号明細書
【特許文献3】米国特許第6,132,710号明細書
【特許文献4】米国特許出願第20020019043 A1号明細書
【特許文献5】Panigrahi、2001年2月15日公開の国際公開第WO 01/10448号明細書
【非特許文献1】LillyとStillwell R.H.、1965
【非特許文献2】Alvarez−OlmosとOberhelman、2001
【非特許文献3】Holzapfelら、2001
【非特許文献4】Reuter、2001
【非特許文献5】Ahrneら、1998b
【非特許文献6】Tannock、1997
【非特許文献7】Marchantら、2001
【非特許文献8】Ahrneら、1998a
【非特許文献9】Pavlovaら、2002
【非特許文献10】Gorbach、2000a
【非特許文献11】Gorbachら、1987
【非特許文献12】Chenら、2000
【非特許文献13】Moriら、1997
【非特許文献14】Banasazら、2002
【非特許文献15】Alanderら、1997
【非特許文献16】Dongら、1987
【非特許文献17】Alanderら、1999
【非特許文献18】Gorbach、2000b
【非特許文献19】Kirjavainenら、1999
【非特許文献20】von derら、2001
【非特許文献21】Miettinenら、2000
【非特許文献22】Hessleら、1999
【非特許文献23】Pessiら、2000
【非特許文献24】Janeway,Jr.とMedzhitov、2002
【非特許文献25】Borruelら(2002)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
[発明の要約]
本発明は、炎症の阻害に有用である系、方法および組成物に向けられる。いくつかの態様において、本発明は、哺乳動物において炎症を促進若しくは調節するタンパク質(サイトカイン)の産生を阻害する細菌からの新規抗炎症化合物の単離方法に関する。本発明の特定の態様において、発明者は、自然免疫系による炎症前サイトカイン産生を特異的に阻害するLGGのような乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌の能力を特徴づける。ネズミのマクロファージモデルを用いて、本発明者はLGGがアポトーシス若しくは細胞傷害性の効果に依存せずにTNF−α産生を特異的に阻害することを示す。LGGは、他のサイトカインに対する効果と独立にリポ多糖(LPS)若しくはリポテイコ酸(LTA)で活性化したマクロファージによるTNF−α産生を減少させるタンパク質を包含する可溶性因子を分泌する。さらに、LGGのTNF−α阻害効果は、ヘリコバクター ピロリ(Helicobactor pylori)若しくはヘリコバクター ヘパティクス(Helicobactor hepaticus)馴化培地の刺激効果にもまた拮抗する。
【0015】
全般として、本発明は乳酸杆菌属(Lactobacillus)生物体(この属のいずれかの種)および他の乳酸菌、ならびにそれらが産生しかつそれらの環境中に分泌する可溶性因子に直接関する。これらの因子(これまでとりわけ同定されていない)は、Gタンパク質依存性の(Gタンパク質共役型受容体)機構によるmRNA合成後の(転写後)サイトカイン(例えばTNF−α)産生を阻害する。本発明のいくつかの態様は、Gタンパク質に依存しかつmRNA合成後の段階に作用して細胞によるタンパク質の産生若しくは分泌を効果的に阻害する機構で炎症応答を阻害する可溶性因子(ペプチド、タンパク質など)を乳酸杆菌が産生しているという事実に関する治療薬(抗炎症作用)の応用を含んでなる。
【0016】
従って、本発明者は、炎症前サイトカイン(例えばTNF−α)および/若しくはケモカイン(例えばIL−8)産生を減少させる乳酸杆菌属(Lactobacillus)および他の乳酸菌株を同定した。好ましい態様における細菌由来の可溶性因子は炎症前サイトカインの発現を阻害しかつ免疫系に対する正味の抗炎症効果をもたらす。他の態様は細菌生物体およびこれらの生物体により産生される可溶性因子を包含する。
【0017】
in vitroでの研究は多様な刺激物質により活性化した培養マクロファージ(免疫細胞)および上皮細胞を利用した。本発明において、乳酸杆菌は、自然免疫系の細胞上の受容体に結合しかつサイトカイン発現および自然免疫と適応免疫の間の連関を調節する可溶性ペプチド因子の分泌により接触非依存性の様式で炎症前サイトカイン発現を阻害する。すなわち、サイトカインの産生が阻害され、そして特定の態様においてそれはT細胞(適応)応答を低下させる。本発明はまた、これらの可溶性因子が他の病原体の炎症前効果を阻害かつ/若しくは拮抗することも示す。
【0018】
従って、本発明のさらなる特定の態様において、ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GGは接触非依存性の機構によりリポ多糖で活性化したネズミのマクロファージにおけるTNF−α産生を低下させ、また、L.ラムノスス(L.rhamnosus)GGは初代腹膜(129 SvEvの)および形質転換(RAW 264.7)マクロファージによるLPSおよびLTA媒介性のTNF−α産生を特異的に阻害する。
【0019】
いくつかの態様において、特定の乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌種が他者より好ましく、そして、当業者は、本明細書に提供される教示から至適の若しくは好ましい種を決定する方法を知っている。いくつかの態様において、特定の免疫効果が種若しくは株特異的であるかもしれない。本発明の好ましい態様において、抗炎症性の分泌型乳酸菌化合物の効果は血清および/若しくは接触非依存性であり、至適の調節活性のために可溶性LGGイムノモジュリンの存在を必要とする。
【0020】
特定の態様において、LGGはマクロファージによるTNF−α産生を阻害するために阻害性ヘテロ三量体G(Gi)タンパク質を利用する。当業者は、TNF−α産生が減少する一方でIL−10が影響されないためにLGGの正味の効果が本来免疫調節性であることを認識している。特定の態様において、腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus)は、アポトーシス前効果若しくは細胞壊死に依存せずにおそらく細胞表面受容体に結合しかつTNF−αの合成若しくは分泌を阻害する可溶性タンパク質因子を産生する。
【0021】
本発明の特定の態様において、本発明の化合物は乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌培養物からの最低1種の可溶性の剤であり、ここで該剤は抗炎症活性、抗サイトカイン産生活性、Gタンパク質受容体結合活性若しくはそれらの組合せを含んでなる。特定の態様において、該化合物は、タンパク質若しくはペプチドのようなポリペプチド、または核酸分子若しくは小分子のような非ポリペプチドである。本明細書で使用されるところの「ポリペプチド」は最低2アミノ酸の分子鎖であり、そして小型ペプチドを包含する。好ましい態様において、該化合物は本明細書で論考される実験で決定されるところの小型ペプチドである。
【0022】
前述は、後に続く本発明の詳細な記述がより良好に理解されうるために本発明の特徴および技術的利点をむしろ広範に概説した。本発明の請求の範囲の主題を形成する本発明の付加的な特徴および利点を下述するであろう。開示される概念および特定の態様は、本発明の同一の目的を実施するために他の構造を改変若しくは設計するための基礎として容易に使用しうることが当業者により認識されるべきである。こうした同等の構築物が、付属として付けられる請求の範囲に示されるところの本発明の技術思想および範囲から離れないこともまた当業者により理解されるべきである。その構成および操作方法の双方に関して本発明の特徴であると考えられる新規特徴は、さらなる目的および利点と一緒に、付随する図とともに考慮される場合に以下の記述からより良好に理解されるであろう。しかしながら、図のそれぞれは具体的説明および記述のみの目的上提供されかつ本発明の制限の定義として意図されないことが明白に理解されるべきである。
[発明の詳細な記述]
定義
本明細書で明細中で使用されるところの「a」若しくは「an」(1つの)という用語は1個若しくはそれ以上を意味することがある。本明細書で請求項で使用されるところの、「含んでなる」という語とともに使用される場合の「a」若しくは「an」(1つの)という語は1個若しくは1個以上を意味することがある。本明細書で使用されるところの「別の」は少なくとも第二の若しくはそれ以上を意味することがある。
【0023】
本明細書で使用されるところの「大腸炎」という用語は、結腸、特定の態様においては大腸を内張する膜の急性若しくは慢性の炎症を指す。大腸炎の症状は、腹痛、下痢、直腸出血、疼痛性攣縮(テネスムス)、食欲の喪失、大腸潰瘍、発熱および/若しくは疲労感を包含しうる。本明細書で使用されるところの「接触非依存性」という用語は細胞と細胞の接触が必要とされない態様を指す。特定の一態様において、可溶性因子の利用が細胞と細胞の接触の要件を回避する。
【0024】
本明細書で使用されるところの「生菌」という用語は、腸管の健康および均衡に寄与する最低1種の生物体を指す。特定の態様において、それは、摂取される場合に健康な腸管の維持において補助しかつ疾病および/若しくは疾患との闘いにおいて補助する「友好的な」、「有益な」若しくは「善玉」細菌とも称される。
【0025】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、いずれかのかつ全部の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを包含する。製薬学的有効成分のためのこうした媒体および剤の使用は当該技術分野で公知である。いずれかの慣習的媒体若しくは剤が本発明のベクター若しくは細胞と不適合性である場合を除き、治療的組成物でのその使用が企図される。補助的有効成分もまた該組成物に組込み得る。
【0026】
本明細書で使用されるところの「治療上有効な量」という用語は、疾患、障害、または該疾患若しくは状態の症状の改善若しくは治療をもたらす量を指す。
【0027】
本明細書で使用されるところの「治療すること」および「処置」という用語は、被験体が該疾患の改善を有するように治療上有効な量の組成物を被験体に投与することを指す。改善は症状のいかなる改善若しくは治療であってもよい。改善は観察可能な若しくは測定可能な改善である。従って、当業者は、処置は疾患状態を改善するかもしれないがしかし疾患の完全な治癒でなくともよいことを理解している。
本発明
本発明は本明細書に抗炎症活性を含んでなる乳酸菌から分泌される化合物を含んでなる。該乳酸菌は、好ましくは、乳酸杆菌属(Lactobacillus)がアシドフィルス菌(L.acidophilus)、L.アニマリス(L.animalis)、L.ラムノスス(L.rhamnosusGG、イエンセン乳酸杆菌(L.johnsonii)、L.ムリヌス(L.murinus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.パラカセイ(L.paracasei)、デルブリュック乳酸杆菌(L.delbrueckii)、醗酵乳酸杆菌(L.fermentum)、乳酸短杆菌(L.brevis)、ブーフナー乳酸杆菌(L.buchneri)、L.ケフィ(L.kefi)、カセイ菌(L.casei)、L.クルバツス(L.curvatus)、L.コリニフォルミス(L.coryniformis)であり、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)およびそれらの混合物よりなる群から選択される。該化合物は、好ましくは、受容体結合活性、ならびにサイトカイン発現調節活性、ケモカイン発現調節活性、若しくは双方を好ましくは含んでなるポリペプチドである。本発明はまた、上のような最低1種の単離された細菌を包含するキット;該化合物を産生しかつ該化合物を分泌することが可能であるかもしれない単離された細菌;および細胞中でのサイトカイン発現の低下方法(ここでサイトカインはTNF−αであってよく、細胞はマクロファージのような免疫細胞であってよい)も含んでなる。本発明は、本明細書に、治療上有効な量の乳酸菌(ここで該乳酸菌は接触非依存性の機構により炎症を阻害しうる)を個体に送達する段階を含んでなる、例えば大腸炎、関節炎、滑膜炎、リウマチ性多発性筋痛、筋炎若しくは敗血症のような状態で見出されるところの個体における炎症の阻害方法をさらに含んでなる。別の態様において、乳酸菌は免疫細胞上の受容体に結合する可溶性化合物を産生するとさらに定義される。本方法は細胞のサイトカイン産生、サイトカイン分泌、ケモカイン産生若しくはそれらの組合せを少なくとも部分的に阻害するとさらに定義しうる。別の態様における阻害段階は、阻害性のヘテロ三量体G(Gi)タンパク質活性によりサイトカイン産生、サイトカイン分泌、ケモカイン産生若しくはそれらの組合せを阻害することを含んでなるとさらに定義される。好ましくはサイトカインはTNF−αである。別の好ましい態様においてケモカインはIL−8である。付加的な態様において、乳酸菌は、コルチコステロイド、スルファサラジン、スルファサラジンの誘導体、免疫抑制剤、シクロスポリンA、メルカプトプリン、アザチオプリンおよびそれらの混合物のような最低1種の付加的な治療薬とともに投与される。
【0028】
動物試験およびヒト臨床試験が、乳酸杆菌属(Lactobacillus)が慢性大腸炎における炎症を予防若しくは回復し得ることを示した。しかしながらこの効果の分子機構は明快に解明されてはいない。本発明者は、乳酸杆菌および他の乳酸菌が腸内微生物叢により誘発される炎症前サイトカイン応答をダウンレギュレートすることが可能であることを決定した。本明細書に提供される実施例は、乳酸杆菌がin vitroでネズミのマクロファージによる腫瘍壊死因子α(TNF−α)の産生を低下させかつTNF−α/インターロイキン−10(IL−10)の均衡を変えるかどうかを取り扱う。ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GG(LGG)により馴化した培地をリポ多糖(LPS)若しくはリポテイコ酸(LTA)と共インキュベートする場合、TNF−α産生は対照に比較して有意に阻害される一方、IL−10合成は影響されない。興味深いことに、LGG馴化培地は大腸菌(E.coli)およびヘリコバクター属(Helicobacter)馴化培地で活性化した腹膜マクロファージのTNF−α産生もまた低下させる。乳酸杆菌属(Lactobacillus)種および他の乳酸菌は、活性化したマクロファージでのTNF−α産生を阻害する可溶性分子を産生することが可能であるかもしれない。炎症前サイトカイン、とりわけTNF−αの過剰産生は慢性の腸の炎症の病因に関与しているため、炎症前サイトカイン産生の腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus)媒介性の阻害およびサイトカインプロファイルの変化は、胃腸管における片利共生細菌の重要な免疫調節性の役割を強調している。
【0029】
本発明のいくつかの態様において、乳酸杆菌属(Lactobacillus)および他の乳酸菌種は胃腸の感染症および炎症性腸疾患の生菌戦略で使用されている。Gαサブタイプ2(Gαi2)欠損マウスは、ヒトにおける潰瘍性大腸炎の病理学的病変を模倣する大腸炎を発症する。本発明者は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)の特定の単離物が、生菌の作用の主機構として初代マクロファージおよび形質転換マクロファージ双方でリポ多糖(LPS)誘発性のTNF−α産生を低下させることが可能であることを示す。さらに、いくつかの態様において、乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌種はマクロファージによるTNF−α産生を阻害するために阻害性のヘテロ三量体G(G)タンパク質を利用する。固有の腹膜マクロファージをGαi2欠損マウスおよび野性型129Svマウスから回収した。初代マクロファージは精製した大腸菌(E.coli)LPS単独で刺激したか、若しくは乳酸杆菌属(Lactobacillus)種からの馴化培地と共培養した。RAW 264.7γ(NO−)マクロファージを、Gタンパク質依存性の応答を除去するためにGタンパク質阻害剤、百日咳トキシン(PTx)に曝露した。PTx処理後にRAW 264.7細胞をLPS単独で刺激したか、若しくは乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地(CM)と共培養した。マクロファージ培養上清中のTNF−αレベルを定量的ELISAにより測定した。モデル生物体としてのラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GG−CMは、LPS単独に曝露した初代および形質転換マクロファージ(それぞれ1000pg/mlおよび1500pg/ml)に比較して、野性型の129Sv由来の腹膜マクロファージ(135pg/ml)およびRAW 264.7細胞(150pg/ml)でのTNF−α産生を阻害した。対照的に、Gαi2欠損マウスからの初代マクロファージは、LPSおよび乳酸杆菌属(Lactobacillus)CMへの曝露後に高レベルのTNF−αを産生した。ホモ接合性Gαi2ノックアウトマウス由来の細胞中のTNF−α産生のレベルはヘテロ接合性の動物からの細胞のほぼ2倍多かった(1800対960pg/ml)。TNF阻害効果を発揮する乳酸杆菌属(Lactobacillus)CMの能力は、RAW 264.7細胞をPTxで毒性化した(intoxicated)場合にもまた部分的に低下した(650pg/ml)。従って、ヒトから単離した乳酸杆菌属(Lactobacillus)および他の乳酸菌種はGタンパク質依存性の機構によりマクロファージのTNF−α産生を阻害する。
【0030】
当業者はin vivoモデルが本発明の態様で有用であることを認識している。例えば、特定の一態様において、in vivoモデルを使用して抗炎症活性、抗TNF−α活性、抗ケモカイン活性若しくはそれらの組合せを有すると疑われる乳酸杆菌属(Lactobacillus)から分泌されるような乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌からの化合物の安全性若しくは有効性を試験しうる。モデルのようなの一例は、MHCクラスI分子HLA−B27の遺伝子の過剰発現が大腸炎、胃十二指腸炎、末梢関節炎および脊椎炎の発症に至るHLA−B27トランスジェニックラットである(Rathら、およびその中で引用される参考文献)。モデルの他の例は当該技術分野で公知である(Arandaら、1997;Congら、1998;Contractorら、1998;Diandaら、1997;Garcia−Lafuenteら;1997;Kuhnら、1993;Onderdondoら、1981;Veltkampら、2001;Yamadaら、1993)。さらなる特定の態様において、こうしたモデルから得られる免疫細胞は、サイトカインおよび/若しくはケモカイン産生の変化についてアッセイするためのように有用である。
【0031】
本発明は、特定の態様において、アシドフィルス菌(L.acidophilus)ATCC 4796、L.アニマリス(L.animalis)ATCC 35046、L.ラムノスス(L.rhamnosusGG ATCC 53103、イエンセン乳酸杆菌(L.johnsonii)ATCC 33200、L.ムリヌス(L.murinus)ATCC 35020、L.プランタルム(L.plantarum)ATCC 14917、L.プランタルム(L.plantarum)ATCC 49445、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 53608、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 55148、L.サリバリウス(L.salivarius)ATCC 11471、L.パラカセイ(L.paracasei)、デルブリュック乳酸杆菌(L.delbrueckii)、L.コリニフォルミス(L.coryniformis)を包含する乳酸杆菌属(Lactobacillus)のいずれかの種、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、若しくはそれらの混合物を包含する乳酸菌のいずれかの種に関する。本発明のいくつかの態様において、TNF−αをコードする核酸配列がその発現レベルをモニターするためのように利用される。TNF−α配列の一例は配列番号1(GenBank受託番号A21522)に含まれる。類似の態様において、TNF−αタンパク質レベルを、配列番号2(CAA01558)の少なくとも一部分に対する抗体を使用することによるようにモニターする。当業者は、米国国立生命工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenBankデータベースを包含する公的に利用可能なデータベースからそれらを評価することによるような他の有用な配列を得る方法を認識している。
【0032】
米国特許第4,839,281号明細書(そっくりそのまま引用することにより本明細書に組込まれる)に記述されるところの特定の乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌株の例示的単離方法は、当該技術分野で既知である。
【0033】
本発明の特定の態様において、本発明の化合物は乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌からの最低1種の可溶性の剤であり、ここで該剤は抗炎症活性、抗サイトカイン産生活性、Gタンパク質受容体結合活性若しくはそれらの組合せを含んでなる。特定の態様において、該化合物はタンパク質若しくはペプチドのようなポリペプチド、または核酸分子若しくは小分子のような非ポリペプチドである。特定の一態様において、抗炎症性はGタンパク質受容体リガンドである。当業者は、当該技術分野で標準的な方法により分泌された化合物を得かつ/若しくは単離する方法を認識している。例えば、化合物は多様な画分中の活性について試験すること、次いで付加的な分画および活性について試験することにより精製しうる。試験されるべき活性は、プロテアーゼ感受性、抗炎症活性、抗サイトカイン若しくはケモカイン発現活性、Gタンパク質受容体結合活性またはそれらの組合せを包含する。特定の態様においてはサイトカイン発現がモニターされ、その例はインターロイキンIL−1、IL−6、IL−12、IL−10および/若しくはTGFを包含する。
【0034】
特定の態様において、2次元ゲルを化合物の同定で利用する。
乳酸杆菌
乳酸杆菌は通常杆状形であり、短い曲がった杆状体から長くかつ細い杆状体まで変動する。大部分の種はホモ型醗酵性であるが、とは言え数種はヘテロ型醗酵性である。ホモ型醗酵性種は主産物として乳酸を産生し、45℃で増殖する数種は長い杆状体を含んでなりかつグリセロールテイコ酸を含んでなる(デルブリュック乳酸杆菌(L.delbrueckii)およびアシドフィルス菌(L.acidophilus)のような)一方、他のホモ型醗酵性種は15℃で増殖し、45℃で変動性の増殖を有し、短い杆状体およびコリネ型であり、そしてリビトールおよびグリセロールテイコ酸を含んでなる(カセイ菌(L.casei)、L.プランタルム(L.plamtarum)およびL.クルバツス(L.curvatus)のような)。醗酵乳酸杆菌(L.fermentum)、乳酸短杆菌(L.brevis)、ブーフナー乳酸杆菌(L.buchneri)およびL.ケフィ(L.kefi)のような)ヘテロ型醗酵性種はブドウ糖から約50%の乳酸を産生しかつCOおよびエタノールを産生する。
サイトカインおよびケモカイン
本発明の特定の一態様において、乳酸杆菌属(Lactobacillus)に分泌される化合物の存在に際してサイトカインの産生が阻害される。サイトカインは本明細書で宿主防御および修復に関与する過程における細胞の複製、分化および/若しくは活性化を調節する細胞由来のホルモン様ポリペプチドと称される。
【0035】
多数のサイトカインが当該技術分野で既知である。例を表1(ダルハウジー医科大学(Dalhousie Medical School)のウェブサイトから再掲)に具体的に説明する。
表1:例示的サイトカイン
サイトカイン 主供給源 主な活性
IL−1 マクロファージT、B細胞活性化;発熱;炎症
IL−2 T細胞 T細胞増殖
IL−3 T細胞 多くの細胞型の増殖
IL−4 T細胞 B細胞の増殖および分化
IL−5 T細胞 B細胞、好酸球増殖
IL−6 マクロファージ、T細胞 B細胞刺激、炎症
IL−7 間質細胞 初期のBおよびT細胞の分化
IL−8 マクロファージ好中球(PMN)誘引
IL−9 T細胞 マイトジェン
IL−10 T細胞 Th1サイトカイン産生を阻害する
IL−11 骨髄間質 造血
IL−12 APC T、NK細胞を刺激する
IL−13 T細胞 IL−4と同様
IL−14 樹状細胞、T細胞 B細胞記憶
IL−15 T細胞 IL−2に同一
IL−16 − −
IFNα 大部分の細胞 抗ウイルス
IFNβ 大部分の細胞 抗ウイルス
IFNγ T、NK細胞 炎症、マクロファージを活性化する
TGFβ マクロファージ、リンパ球 標的に依存
TNFα マクロファージ炎症;腫瘍殺傷
TNFβ T細胞 炎症;腫瘍殺傷;食作用を高める

全部のサイトカインは共通してある特性を有する。それらは全部低分子量のペプチド若しくは糖ペプチドである。多くはリンパ球、単球/マクロファージ、肥満細胞、好酸球、なお血管を内張する内皮細胞のような複数の細胞型により産生される。各個々のサイトカインはそれを産生する細胞およびそれが作用する標的細胞(1種若しくは複数)に依存して多くの機能を有し得る(多面発現性と呼ばれる)。また、数種の異なるサイトカインが同一の生物学的機能を有し得る(冗長性と呼ばれる)。サイトカインは、離れた標的細胞(内分泌性)、それらを産生する細胞に隣接する標的細胞(パラクリン)若しくは該サイトカインを産生する同一細胞(オートクリン)に対して、血流を通じてそれらの効果を発揮し得る。生理学的には、大部分のサイトカインはパラクリンおよび/若しくはオートクリンの様式でそれらの最も重要な効果を発揮するようである。それらの主機能は宿主防御若しくは血液要素の維持および修復を伴うようである(表1)。
【0036】
当業者は、サイトカインがそれらの主要な特定の機能(1種若しくは複数)により分類され、そしてサイトカインの4種の主要な範疇、すなわちインターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子およびインターロイキンが存在することを認識している。インターフェロンはウイルス複製を妨害し、そしてインターフェロンの供給源に基づき3種の主要な型が存在する。インターフェロンα(IFNα)は白血球からのバフィーコート層により産生され、そして多様な悪性および免疫障害の処置で使用される。インターフェロンβ(IFNβ)は繊維芽細胞により産生され、そして現在、多発性硬化症の処置で評価されている。インターフェロンγ(IFNγ)は活性化T細胞により産生され、そしてとりわけアレルギー性疾患において重要な免疫調節分子である。
【0037】
コロニー刺激因子は骨髄の多様な要素の増殖および分化を支援する。多くは顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のようなそれらが支援する特定の要素により命名される。他のCSFは、多様な造血前駆細胞を刺激し得るインターロイキン(IL)−3;およびc−Kitリガンド(幹細胞因子)を包含する。
【0038】
腫瘍壊死因子(TNF)は注入に際してそれらの腫瘍の出血性壊死を引き起こす。TNFαは活性化マクロファージにより産生され、また、TNFβは活性化T細胞(THおよびCTL双方)により産生される。ヒト腫瘍を臨床で治療するためのTNFの使用に対する試みもまたなされているが、しかし、それらの極めて狭い治療窓(有効性対毒性)により、これを有用な独立した癌治療とみなす者はほとんどない。
【0039】
最大の群はインターロイキン(interleukin)であり、それらの基礎的な機能が白血球(leucocutes−leukin)の多様な集団間(inter−)の通信であるようであるためにそう命名された。インターロイキン(IL)は番号を与えられている。それらは単球/マクロファージ、T細胞、B細胞およびなお非白血球のような多様な細胞型により産生される。
【0040】
ケモカインは効果的な白血球活性化および/化学走性活性を含んでなる構造的に関連した糖タンパク質の一族である。それらは長さ70ないし90アミノ酸かつ分子量がおよそ8ないし10kDaである。それらの大部分は、2個のアミノ末端システイン残基が直接隣接しているか1アミノ酸により分離されているかどうかに依存して、4個のシステイン残基を有する2個のサブファミリーに入る。CXCケモカインとしてもまた知られているαケモカインは、1番目および2番目のシステイン残基の間に単一アミノ酸を含んでなり;βすなわちCCケモカインは隣接したシステイン残基を有する。大部分のCXCケモカインは好中球に対する化学誘引物質である一方、CCケモカインは一般に単球、リンパ球、好塩基球および好酸球を誘引する。
【0041】
ケモカインの2つの付加的な小さなサブグループが知られている。Cグループは1メンバー(リンフォタクチン)を有する。それは4システインモチーフ中のシステインの1個を欠くが、しかしそのカルボキシル末端でC−Cケモカインと相同性を共有する。Cケモカインはリンパ球特異的であると思われる。第四のサブグループはC−X3−Cサブグループである。C−X3−Cケモカイン(フラクタルカイン/ニューロタクチン)は最初の2個のシステインの間に3アミノ酸残基を有する。それは長いムチン柄を介して細胞膜に直接結合されており、そして白血球の接着および遊走双方を誘導する。
Gタンパク質受容体
本発明の好ましい一態様において、分泌された乳酸杆菌属(Lactobacillus)化合物は細胞中でGタンパク質受容体に対する作用を間接的に若しくは直接引き起こす。当業者は、Gタンパク質は通常、不活性の静止状態で受容体の近くに存することを認識している。受容体がリガンド結合により活性化される場合に、それは迅速にGタンパク質を誘導することができる。Gタンパク質はそれ自身のスイッチを活性状態に入れることにより応答する。活性状態に一旦なれば、Gタンパク質は細胞にさらにシグナルを送ることができ、1種のシグナルはサイトカインおよび/若しくはケモカイン発現の直接若しくは間接的いずれかの低下である(転写後にのような)。しかしながら、Gタンパク質は短期間のみ活性状態に留まることができ、その後それはそれ自身で遮断することができる。事実上、Gタンパク質は、一旦入れられればそれがそれ自身を遮断する前に制限された時間入れられたまま留まることができる二相スイッチのように作用する。
【0042】
Gタンパク質の2種の状態(入若しくは切)は、それが結合するグアニンヌクレオチドにより決定される(これゆえにGタンパク質という用語)。それが不活性である場合、それはGDPを結合するが、しかしそれが活性である場合、それはGTPを結合する。従って、休止状態の切の形態のGタンパク質は結合したGDPを含んでなる。リガンドで活性化した受容体がそれを誘導する場合、Gタンパク質はその結合したGDPを放出しかつGTP分子を結合させ、そしてこのGTPを結合した形態のGタンパク質はGタンパク質の活性の入のかたちを表す。活性化状態にある際に、Gタンパク質は下流のシグナルを達成する。短時間(数秒若しくはそれ未満)の後に、Gタンパク質はその後、それ自身のGTPをGDPに加水分解してそれによりそれ自身を遮断することができる。この加水分解は、Gタンパク質が短時間のみ活性のシグナルを発射する「入」様式にあることを確実にするネガティブフィードバック機構を表す。
【0043】
免疫細胞中のGタンパク質受容体の例は当該技術分野で公知であるが、しかし、特定の例は少なくともCCR1;CCR4;CXCR1;CXCR2;CXCR4;HM63;FPR1;EX33;マウスF4/80、ヒトEGFモジュール含有ムチン様ホルモン受容体(EMR)1、ヒトEMR2、ならびにヒトおよびマウスCD97を含んでなるEGF−TM7グループを包含する。当業者は、Gタンパク質共役受容体データベース(G Protein Coupled Receptor Database)のようなワールドワイドウエブ上で利用可能なデータベースを包含するGタンパク質受容体を列挙する多様な供給源を知っている。
転写後修飾
本発明の一態様において、サイトカイン産生(発現ともまた称される)および/若しくはケモカイン産生は、乳酸杆菌属(Lactobacillus)が産生する可溶性分子の提供に応答して変えられる。当業者は、この転写後修飾がサイトカイン産生を好ましく低下させてそれにより抗炎症効果を提供することを認識している。特定の態様において、1種以上のサイトカインおよび/若しくはケモカインの転写後修飾が起こる。
【0044】
転写後修飾の特定の例は当該技術分野で公知である。例は、少なくとも:多重遺伝子転写単位の利用;代替プロモーターの利用;選択的スプライシング;選択的ポリアデニル化;転写後切断;二本鎖RNA(dsRNA)により誘導されるような転写後スプライシング(RNA干渉(RNAi)として知られる);CからUへのRNA編集;リン酸化;二方向プロモーターからのアンチセンス転写;Laタンパク質結合(Laは3’エキソ核分解性(exonucleolytic)消化からRNAを保護しかつまたそれらの核保持にも寄与する);Q/RのRNA編集;塩基の脱アミノ化RNA編集;GからAへの編集;CからUへの編集;分解;若しくはそれらの組合せを包含する。
【0045】
示されるとおり、RNA編集は転写後修飾の一形態である。RNA編集は、ゲノム内に存在する塩基に一致しないRNA転写物内のヌクレオチドの生成をもたらす。哺乳動物のRNA編集事象(通常はシチジンからウリジンおよびアデノシンからイノシンへの転化)は主として塩基の脱アミノ化により媒介される。
【0046】
当業者は、リポ多糖により刺激される骨髄系細胞でのようなTNFαの安定性を媒介する因子の例を知っている(Mahtaniら、2001、およびその中で引用される参考文献)。具体的には、Mahtaniらは、トリステトラプロリンのリン酸化がp38で調節されるキナーゼMAPKAPK2により媒介されて転写後レベルでTNFα遺伝子発現を調節する機構への直接の関連を提供することを示している。
合理的な薬物設計
合理的な薬物設計の最終目標は、それらが相互作用する生物学的に活性のポリペプチド若しくは化合物の構造的アナログ(アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤、結合パートナーなど)を製造することである。こうしたアナログを創製することにより、天然分子より活性若しくは安定であるか、変更に対し異なる感受性を有するか、または多様な他の分子の機能に影響を与えうる薬物を作り上げることが可能である。一アプローチにおいて、とりわけ抗炎症活性を含んでなる乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌から分泌されるポリペプチド、またはそれらのフラグメントの三次元構造を生成することができる。これはx線結晶学、コンピュータモデル化若しくは双方のアプローチの組合せにより達成し得るであろう。代替の一アプローチ、「アラニンスキャン」は、分子全体の残基のアラニンでの無作為置換を必要とし、そして機能に対する生じる影響を決定する。
【0047】
機能アッセイにより選択したとりわけ抗炎症活性を含んでなる乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌種から分泌されるポリペプチドに対する特異的抗体を単離すること、およびその後その結晶構造を解明することもまた可能である。原則として、このアプローチはその後の薬物設計が基づくことができるファルマコア(pharmacore)を生じる。機能的な薬理学的に活性の抗体に対する抗イディオタイプ抗体を生成することによりタンパク質結晶学を全く迂回することが可能である。一鏡像の一鏡像として、抗イディオタイプの結合部位は元の抗原のアナログであると期待することができる。抗イディオタイプをその後、化学的に若しくは生物学的に製造したペプチドのバンクからペプチドを同定かつ単離するのに使用し得る。選択されたペプチドがその後ファルマコアとしてはたらくとみられる。抗イディオタイプは、抗体を抗原として使用して本明細書に記述される抗体の製造方法を使用して生成しうる。
【0048】
従って、改善された抗炎症活性を有するか、またはサイトカイン若しくはケモカインの刺激物質、阻害剤、アゴニスト若しくはアンタゴニストとして作用する薬物、またはサイトカイン若しくはケモカインの機能により影響される分子を設計しうる。結晶学的研究を実施するために十分な量の本発明の化合物を製造し得る。加えて、ポリペプチド配列の知識が構造と機能の関係のコンピュータを使用する予測を可能にする。
【0049】
本発明は多様な動物モデルの使用もまた包含する。増大されたレベルのTNF−αを含んでなる変異体細胞株を開発若しくは単離することにより、いくつかの態様において、ヒトおよび他の哺乳動物中でそれを高度に予測することができる、マウスのようなげっ歯類の大腸炎モデルを生成し得る。野性型サイトカインおよび/若しくはケモカインを欠くトランスジェニック動物を、大腸炎の発症および処置のモデルとして使用しうる。
【0050】
試験化合物での動物の処置は適切な形態の化合物の動物への投与を伴うことができる。投与は、限定されるものでないが経口、鼻、頬側、直腸、膣若しくは局所を挙げることができる臨床的若しくは非臨床的目的上利用し得るいかなる経路によることもできる。あるいは、投与は気管内点滴注入、気管支点滴注入、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内若しくは静脈内注入によることができる。全身静脈内注入、血液若しくはリンパ供給を介する局所投与および腸内注入がとりわけ企図されている。
【0051】
in vivoでの化合物の有効性の決定は多様な異なる基準を必要としうる。こうした基準は、限定されるものでないが、生存、大腸炎の症状(1種若しくは複数)の低下、大腸炎の阻害若しくは予防、増大された活性レベルおよび改善された結腸機能を挙げることができる。
製薬学的組成物および投与経路
本発明の組成物は、結腸疾患、関節疾患、若しくは全身性炎症状態のようないずれかの炎症状態に対する治療的投与のための、ならびにいくつかの態様においては抗大腸炎疾患剤および/若しくは抗炎症剤である有効量の化合物(第二の剤)と組合せの乳酸杆菌属(Lactobacillus)が分泌する抗炎症化合物の有効量を有しうる。こうした組成物は一般に製薬学的に許容できる担体若しくは水性媒体に溶解若しくは分散することができる。
【0052】
「製薬学的若しくは薬理学的に許容できる」という句は、適切なように動物若しくはヒトに投与される場合に有害な、アレルギー性の若しくは他の不利な反応を生じさせない分子化合物および組成物を指す。本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」は、いずれかのおよび全部の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを包含する。製薬学的有効成分のためのこうした媒体および剤の使用は当該技術分野で公知である。いずれかの慣習的媒体若しくは剤が該有効成分と不適合性である場合を除き、治療的組成物中でのその使用が企図されている。他の抗癌剤のような補助的有効成分もまた該組成物に組込み得る。
【0053】
静脈内若しくは筋肉内注入のような非経口投与のため処方された化合物に加え、他の製薬学的に許容できる形態は、例えば経口投与のための錠剤若しくは他の固形物;調時放出カプセル剤;およびクリーム剤、ローション剤、含漱剤、吸入剤などを包含する現在使用されているいかなる他の形態も包含する。
【0054】
本発明の発現ベクターおよび送達ベヒクルは古典的製薬学的製剤を包含しうる。本発明のこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限りはいずれの普遍的経路も介することができる。これは経口、鼻、頬側、直腸、膣若しくは局所を包含する。あるいは、投与は同所、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内若しくは静脈内注入によってよい。こうした組成物は通常、上述された製薬学的に許容できる組成物として投与することができる。
【0055】
本発明の送達ベヒクル、ベクターおよび/若しくは製薬学的組成物は、有利には、液体の溶液若しくは懸濁剤いずれかとして注入可能な組成物の形態で投与され;注入前に液体の溶液若しくは懸濁剤に適する固体の形態もまた製造しうる。これらの製剤はまた乳化してもよい。こうした目的上典型的な組成物は、リン酸緩衝生理的食塩水1ミリリットルあたり50mg若しくは約100mgまでのヒト血清アルブミンを含んでなる。他の製薬学的に許容できる担体は、塩、保存剤、緩衝剤などを包含する水性溶液、非毒性の賦形剤を包含する。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油およびテイルオレエート(theyloleate)のような注入可能な有機エステルである。水性担体は、水、アルコール性/水性溶液、生理的食塩水溶液、塩化ナトリウム、リンゲル液などのような非経口ベヒクルを包含する。静脈内ベヒクルは液体および栄養素補給剤を包含する。保存剤は抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスを包含する。薬品中の多様な成分のpHおよび正確な濃度は公知のパラメータに従って補正する。
【0056】
製剤は経口投与に適する。経口製剤は、例えば製薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような典型的な賦形剤を包含する。組成物は溶液、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤若しくは散剤の形態をとる。経路が局所である場合、該形態はクリーム剤、軟膏剤(ointment)、軟膏剤(salve)若しくはスプレー剤であってもよい。
【0057】
治療薬の有効量は意図される目標に基づき決定する。「単位用量」という用語は被験体での使用に適する物理的に別個の単位を指し、各単位はその投与、すなわち適切な経路および処置レジメンとともに所望の応答を生じさせるよう計算された予め決められた量の治療的組成物を含有する。処置の回数および単位用量双方に従って投与されるべき量は、治療されるべき被験体、被験体の状態および所望の保護に依存する。治療的組成物の正確な量もまた実務者の判断に依存しかつ各個体に独特である。
【0058】
大腸炎のような炎症性疾患の予防および/若しくは処置に必要とされる不可欠の物質および試薬の全部をキットに一緒に集めてよい。キットの成分を1種若しくはそれ以上の液体溶液で提供する場合、該液体溶液は好ましくは水性溶液であり、無菌水性溶液がとりわけ好ましい。
【0059】
in vivo使用のために、抗炎症性疾患剤および/若しくは抗大腸炎剤を単一の若しくは別個の製薬学的に許容できる注入可能な(syringeable)組成物に処方しうる。この場合、容器手段は、それ自身が製剤を肺のような感染した身体領域に適用しうるか、動物に注入しうるか、若しくはなおキットの他成分に適用しかつそれらと混合しうる吸入装置、シリンジ、ピペット、点眼容器、若しくは他のこうした類似の装置であってよい。
【0060】
キットの成分は乾燥若しくは凍結乾燥した形態で提供してもまたよい。試薬若しくは成分が乾燥した形態として提供される場合、再構成は一般に適する溶媒の添加による。溶媒もまた別の容器手段中に提供してよいことが予見される。本発明のキットは遺伝子治療および/若しくは抗大腸炎疾患薬物の投与を定義する説明書(instruction sheet)もまた包含してよい。
【0061】
本発明のキットはまた、典型的には、例えば所望のバイアルを保持する射出成型若しくは吹込成形プラスチック容器のような商業的販売のため緊密な限局にバイアルを含有するための手段も包含することができる。容器の数若しくは型に関係なく、本発明のキットはまた、最終的な複雑な組成物の動物の身体内への注入/投与若しくは設置で補助するための機器を含んでもそれらとともに包装してもよい。こうした機器は吸入装置、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼容器、若しくはいずれかのこうした医学的に承認された送達媒体であってよい。
【0062】
本発明の有効成分はしばしば非経口投与のため処方される、例えば静脈内、筋肉内、皮下若しくはなお腹腔内経路を介する注入のため処方されることができる。有効成分としての第二の剤(1種若しくは複数)を含有する水性組成物の製剤は本開示に照らして当業者に既知であろう。典型的には、こうした組成物は液体の溶液若しくは懸濁剤いずれかの注入可能物として製造し得;注入の前に液体の添加に際して溶液若しくは懸濁剤を調製するために使用するのに適する固体の形態もまた製造し得;そして、該製剤はまた乳化もし得る。
【0063】
遊離塩基若しくは薬理学的に許容できる塩としての有効成分の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適して混合した水中で製造し得る。分散剤もまたグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油中で製造し得る。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防止するための保存剤を含有する。
【0064】
注入可能な使用に適する製薬学的形態物は、無菌の水性溶液若しくは分散剤;ゴマ油、ラッカセイ油若しくは水性プロピレングリコールを包含する製剤;および無菌の注入可能な溶液若しくは分散剤の即時調製のための無菌粉末を包含する。全部の場合において、該形態物は無菌でなくてはならず、また、容易な注入可能性が存在する程度まで流動性でなくてはならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなくてはならず、かつ、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。
【0065】
有効成分は中性のすなわち塩の形態で組成物に処方しうる。製薬学的に許容できる塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)を包含し、そしてそれらは例えば塩酸若しくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは鉄のような無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基由来でもあり得る。
【0066】
担体はまた、例えば水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適する混合物ならびに植物油を含有する溶媒若しくは分散媒でもあり得る。例えばレシチンのようなコーティングの使用により、分散系の場合には必要とされる粒子径の維持により、および界面活性剤の使用により適正な流動性を維持し得る。微生物の作用の予防は多様な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらし得る。多くの場合、等張剤、例えば糖若しくは塩化ナトリウムを包含することが好ましいであろう。注入可能な組成物の持続性吸収は、組成物中での吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらし得る。
【0067】
無菌の注入可能な溶液は、必要とされるところの多様な上に列挙された他の成分とともに適切な溶媒中に必要とされる量の有効成分を組込むこと、次いで濾過滅菌により製造する。一般に、分散系は、基礎的な分散媒および上で列挙されたものからの必要とされる他成分を含有する無菌ベヒクル中に多様な滅菌した有効成分を組込むことにより製造する。無菌の注入可能な溶液の製造のための無菌粉末の場合、好ましい製造方法は、それらの事前に滅菌濾過した溶液から有効成分およびいずれかの付加的な所望の成分の粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0068】
ある場合には、本発明の治療的製剤をクリーム剤およびローション剤でのような局所投与に適する形態でも製造し得る。
【0069】
処方に際して、溶液は投薬製剤と適合性の様式でかつ治療上有効であるような量で投与することができる。製剤は、上述された注入可能な溶液の型のような多様な投薬形態物で容易に投与され、薬物放出カプセルなどさえ使用可能である。
【0070】
例えば水性溶液中での非経口投与のために、溶液は必要な場合は適して緩衝されるべきであり、また、液体希釈剤を十分な生理的食塩水若しくはブドウ糖で最初に等張にすべきである。これらの特定の水性溶液は静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与にとりわけ適する。これに関して、使用し得る無菌の水性媒体が本開示に照らして当業者に既知であろう。例えば、一投薬量を1mLの等張のNaCl溶液に溶解し得、そして1000mLの皮下注射液に添加し得るか若しくは提案される注入部位に注入し得るかのいずれかである(例えば“Remington’s Pharmaceutical Sciences”第15版、1035−1038および1570−1580ページを参照されたい)。治療されている被験体の状態に依存して投薬量の何らかの変動が必然的に起こるであろう。投与の責任をもつ人がいずれにしても個々の被験体の適切な用量を決定するであろう。
【0071】
腸組織への標的設定は多様な方法のいずれか1つで達成してよい。プラスミドベクターおよびレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターならびに他のウイルスベクターは全部それにより腸組織を標的とする手段を提示する。発明者は、本発明のポリペプチド若しくはそれをコードする核酸の標的を細胞(例は免疫細胞を包含する)に定めるためのリポソームの使用について特定の成功を予期する。例えば、ポリペプチドをコードするDNAを上述された様式でリポソームと複合体形成することができ、そしてこのDNA/リポソーム複合体を炎症性疾患を伴う患者に注入し、ここで静脈内注入を使用して該DNAをいかなる細胞にも向けることができる。疾患に罹った組織の近くにリポソーム複合体を直接注入することは、いくつかの形態の炎症性疾患との複合体のターゲッティングもまた提供する。もちろん、免疫細胞のような細胞の一集団により選択的に取り込まれるリポソームの可能性が存在し、そしてこうしたリポソームは遺伝子のターゲッティングにもまた有用であろう。
【0072】
当業者は、腸組織を治療するために本発明の化合物を使用するための最良の処置レジメンを直接決定し得ることを認識するであろう。これは実験の問題でなく、しかしむしろ医学の技術分野で慣例に実施される至適化の問題である。一例示的態様において、ヌードマウスにおけるin vivo研究が、投薬量および送達レジメンを至適化するために開始すべき出発点を提供する。注入の頻度はいくつかのマウス研究でなされたとおり当初は週1回であることができる。しかしながら、この頻度は、初期の臨床試験から得られる結果および特定の一患者の必要性に依存して1日から2週間ごとないし毎月まで至適に調節してよい。ヒトの投薬量は当初、マウスで使用した化合物の量から外挿することにより決定し得る。ある態様において、投薬量が、約1mgのポリペプチドをコードするDNA/kg体重から約5000mgのポリペプチドをコードするDNA/kg体重までの間;または約5mg/kg体重から約4000mg/kg体重まで若しくは約10mg/kg体重から約3000mg/kg体重まで;または約50mg/kg体重から約2000mg/kg体重まで;または約100mg/kg体重から約1000mg/kg体重まで;または約150mg/kg体重から約500mg/kg体重まで変動してよいことが予見される。他の態様において、この用量は約1、5、10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000mg/kg体重であってよい。他の態様において、より高用量を使用してよいことが予見され、こうした用量は約5mgのポリペプチドをコードするDNA/kg体重ないし約20mgのポリペプチドをコードするDNA/kg体重の範囲にあってよい。他の態様において、該用量は約8、10、12、14、16若しくは18mg/kg体重であってよい。もちろん、この投薬量は、初期の臨床試験の結果および特定の一患者の必要性に依存して、こうした処置プロトコルで慣例になされるとおり上方若しくは下方に調節してよい。
【0073】
本発明の特定の一態様において、化合物は丸剤若しくはカプセル剤として口により、または代替の一態様においては直腸により投与する。直腸投与のためには内視鏡および/若しくは結腸鏡のような装置による補助が有用なことがある。
キット
本明細書に記述される組成物のいずれもキットに含んでよい。制限しない一例において、幹細胞、脂質および/若しくは付加的な剤をキットに含んでよい。キットは、従って、適する容器手段中に幹細胞および脂質、ならびに/若しくは本発明の付加的な剤を含むことができる。
【0074】
該キットは、適して分注された幹細胞、脂質、および/若しくは検出アッセイのための標準曲線を作成するのに使用しうるところの標識されているにしろされていないにしろ本発明の付加的な剤の組成物を含んでよい。キットの成分は水性媒体中若しくは凍結乾燥された形態でのいずれで包装してもよい。キットの容器手段は、一般に、成分を入れかつ好ましくは適して分注しうる最低1個のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ若しくは他の容器手段を包含することができる。キット中に1種以上の成分が存在する場合、キットは一般に付加的な成分を個別に入れてよい第二、第三若しくは他の付加的な容器もまた含有することができる。しかしながら、成分の多様な組合せが1本のバイアル中に含まれてもよい。本発明のキットはまた、典型的には、商業的販売のために、緊密な限局に幹細胞若しくは本発明の薬理学的組成物、脂質、付加的な剤を含有するための手段およびいかなる他の試薬容器も包含することができる。こうした容器は、所望のバイアルを保持する射出成型若しくは吹込成形プラスチック容器を包含してよい。
【0075】
本発明の治療キットは幹細胞を含んでなるキットである。こうしたキットは一般に、適する容器手段中に幹細胞の製薬学的に許容できる製剤を含有することができる。該キットは単一の容器手段を有してよく、かつ/若しくはそれは各化合物について別個の容器手段を有してもよい。
【0076】
キットの成分が1種かつ/若しくはそれ以上の液体溶液で提供される場合、該液体溶液は水性溶液であり、無菌の水性溶液がとりわけ好ましい。幹細胞組成物はまた注入可能な組成物に処方してもよい。その場合、該容器手段は、それ自身が、感染した身体部位に製剤を適用することができ、動物に注入することができ、かつ/またはキットの他成分になお適用かつ/若しくはそれらと混合してもよいシリンジ、ピペット、および/若しくは他のこうした類似の装置であってよい。
【0077】
しかしながら、キットの成分は乾燥した粉末(1種若しくは複数)として提供してもよい。試薬および/若しくは成分が水分を含まない粉末として提供される場合、該粉末は適する溶媒の添加により再構成し得る。該溶媒を別の容器手段中で提供してもまたよいことが予見される。
【0078】
該容器手段は、一般に、幹細胞が入れられている、好ましくは適して割り当てられている最低1個のバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジおよび/若しくは他の容器手段を包含することができる。キットは、無菌の製薬学的に許容できる緩衝液および/若しくは他の希釈剤を含有するための第二の容器手段もまた含んでよい。
【0079】
本発明のキットはまた、典型的には、例えば所望のバイアルを保持する射出成型および/若しくは吹込成形プラスチック容器のような商業的販売のための緊密な限局にバイアルを含有するための手段もまた包含することができる。
【0080】
容器の数および/若しくは型に関係なく、本発明のキットはまた、動物の身体内への最終結果幹細胞組成物の注入/投与および/若しくは配置で補助するための機器も含んでよくかつ/若しくはそれとともに包装してもよい。こうした機器は、シリンジ、ピペット、鉗子および/若しくはいずれかのこうした医学的に承認された送達媒体でありうる。
【0081】
実施例
以下の実施例は本発明の好ましい態様を示すために包含する。後に続く実施例に開示される技術は本発明の実務において十分に機能することが発明者により発見された技術を表し、そして従ってその実務の好ましい様式を構成すると考え得ることが当業者により認識されるはずである。しかしながら、当業者は、本開示を鑑み、開示されかつ本発明の技術思想および範囲から離れることなくほぼ等しい(like)若しくは類似の(similar)結果をなお得る特定の態様において多くの変更をなし得ることを認識するはずである。
【実施例1】
【0082】
LPS活性化マクロファージによるTNF−α産生のLGG媒介性の阻害
われわれは培養マクロファージにおける炎症応答をダウンレギュレートする乳酸菌種の能力を調べるためのin vitroバイオアッセイを開発した(図1)。自然免疫系の細胞は、生殖細胞系にコードされるパターン認識受容体(PRR)を利用して病原体若しくは片利共生関連の分子パターン(P/CAMP)を認識する。1つのこうしたP/CAMPが細菌LPSであり、それはそれがPRRに対する1リガンド、Toll様受容体4(TLR4)としてはたらく(Lienら、2000;Poltorakら、1998)。われわれはBALB/cマウスからの形質転換腹膜マクロファージ株、RAW 264.7マクロファージをレポーター細胞として使用した(Raschkeら、1978)。野性型RAW 264.7マクロファージおよび自発的変異体RAW 264.7γNO(−)双方を比較した。γNO(−)細胞は一酸化窒素の産生および完全な活性化にIFN−γおよびLPSの双方を必要とする自発的変異体である(Lowensteinら、1993)。簡潔には、RAW 264.7マクロファージを培養しかつLPSに曝露させ、そしてマクロファージ培養上清を活性化後30分、1、3、5、7、9、12および24時間に収集した。LPS活性化後の最大TNF−α分泌にはおよそ5時間で達し、定量的ELISAにより測定されるところの活性化後24時間と比較した場合に有意差はなかった。TNF−α産生のレベルは、野性型マクロファージでγNO(−)細胞に対しより高いことが示された(50,000細胞あたりのレベル:それぞれ>2500pg/mlおよび2000〜2500pg/ml)。定量的ELISAは、単量体および二量体を包含する全部の形態のTNF−αを検出するよう設計されているため、これらのレベルはTNF−αホモ三量体のレベルを高く見積もりすぎているかもしれないことに注意しなくてはならない。
【0083】
生存可能な無傷の紫外光(UV)で殺傷した、および超音波処理した乳酸杆菌属(Lactobacillus)細胞は、共インキュベーション実験でマクロファージのLPS媒介性の活性化に対し異なる影響を有した。生存可能な若しくはUVで殺傷した細菌いずれへの細菌へのマクロファージの曝露もTNF−α分泌を誘導しなかった一方、細菌細胞の超音波処理物は高レベルのTNF−αを導き出した(データは示されない)。無傷の生存可能なおよびUVで殺傷したの双方のLGG細胞は、マクロファージをLPSに共曝露した場合にTNF−α産生を阻害することに失敗した。
【0084】
大腸菌(E.coli)Nissleおよび多様な乳酸杆菌からの細菌細胞を含まない馴化培地を炎症前サイトカイン出力に対する影響について試験した(図2)。免疫調節効果がLGG由来の細胞を含まない馴化培地で観察され、可溶性の免疫応答調節分子すなわちイムノモジュリン(1種若しくは複数)の存在を示した。LGG馴化培地(LGG−cm)の存在下で、LPSで活性化したマクロファージは、LPS単独に曝露したマクロファージに比較した場合にTNF−α分泌の有意の減少を有する(p<0.025)。マクロファージでのLPS誘発性のTNF−α産生を阻害するLGGの能力はLPSの相対濃度および推定の細菌のイムノモジュリンに依存する。LPSの濃度が増大される際に、TNF−α応答を調節するLGG−cmの能力が低下する(データは示されない)。逆に、LPS濃度を2ng/ウェルに維持することおよびLGG−cmの量を変動させることは類似の結果を生じた。
【0085】
LGG−cmの調節活性は濃度依存性であると思われたため、われわれは、推定のイムノモジュリンによるLPS媒介性のTNF−α産生を阻害する能力(2ng LPS/ウェルを用いて)が細菌密度依存性であるかどうかを検査した。接種後4、8および24時間に収集したLGG−cmを比較した。これら3つの時間点は、吸光度分光測光法に基づき、LGG増殖のそれぞれ対数期初期、対数中期および対数後期/プラトー初期を表す。免疫調節活性は24時間で収集したLGG−cmで最も強力であった一方、対数期の細菌の馴化培地は部分的な免疫調節活性のみを有した。再攻撃実験を実施してTNF−α阻害活性の寿命を決定した。マクロファージはLPSを伴うLGG−cm若しくはLPS単独を使用して刺激した。活性化後の5時間の終了時に細胞培地を除去しかつ新鮮培地で置き換えた。24時間後にLPSを伴うLGG若しくはLPSで処理した細胞の双方をLPS単独で再攻撃した。TNF−αは双方の群で検出可能であり、推定のイムノモジュリンが可逆的様式でTNF−αを阻害することを示した(図3)。
【0086】
PRRを介してP/CAMPを認識するマクロファージおよび他の免疫細胞は、可溶性CD14(sCD14)およびLPS結合タンパク質(LBP)のような血清中の可溶性補助因子を必要とすると考えられる(MutaとTakeshige、2001)。血清を含まない培地中でバイオアッセイを実施し、そしてLPSに曝露した細胞でTNF−αを測定した。われわれのin vitro系で、マクロファージによるLPS誘発性のTNF−α産生は血清に可溶性の補助因子に依存しなかったとは言え、血清を補充したマクロファージに比較して、血清を枯渇した細胞で、TNF−αの産生のわずかなしかし重要でない差違が存在した。重要なことに、LGGの免疫調節活性は血清の非存在下で保持された(図4)。
【実施例2】
【0087】
LTAで活性化したマクロファージによるTNF−α産生のLGG媒介性の阻害
他の病原体若しくはグラム陽性細菌のリポテイコ酸(LTA)のような片利共生関連分子パターン(P/CAMP)生体分子はPRRを介してマクロファージを活性化することが示されている(Takeuchiら、1999)。Toll様受容体(TLR2)媒介性の経路を探究するために、LGG馴化培地をLTAで活性化したマクロファージに添加した。事実、LGG−cmは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、E.フェーカリス(E.gaecalis)若しくは枯草菌(B.subtilis)からのLTAにより誘導されるマクロファージによるTNF−α分泌を阻害した。本アッセイにおいて、LTAは、LPSのレベルに匹敵したTNF−αレベルを誘導することが可能であった。該バイオアッセイで使用したLTAの濃度はLPSの濃度の10倍以上であった(それぞれ25ng/50000細胞および2ng/50000細胞)一方で、同量のLGG−cmがLTAおよびLPSで活性化したマクロファージ双方についてTNF−α分泌を阻害した(実験の手順を参照されたい)ことは言及に値する。しかしながら、マクロファージをLPSおよびLTA双方に曝露した場合、LGGのTNF−α阻害活性は部分的に低下される(図5)。これらの結果は、TLR2およびTLR4媒介性の経路の二重の刺激がTNF−α産生の阻害を部分的に克服することを示唆している。
【実施例3】
【0088】
サイトカインプロファイルおよび細菌−細菌拮抗作用の評価
自然免疫応答のサイトカインネットワークに対するLGGによるTNF−α阻害の意味をさらに理解するために、われわれは、LGG−cmの存在若しくは非存在下でのLPSで刺激したマクロファージのサイトカインプロファイルを評価した。バイオアッセイを実施し、そしてLuminex LabMAP 100TM系によりサイトカインを定量した(Martinsら、2002)。インターロイキン−1β(IL−1β)、IL−10、IL−12およびTNF−αは、LPSで刺激したマクロファージの培養上清で検出されたが、しかし、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−6(IL−6)およびインターフェロン−γ(IFN−γ)はされなかった。LGG処理したLPSで刺激したマクロファージでのIL−1βおよびIL−10のレベルは、LPSで刺激した細胞により産生される量に匹敵した。ELISAデータと同様に、LGG処理したLPSで刺激した細胞ではLPS単独に比較してTNF−αレベルの7倍の低下が観察された。興味深いことに、IL−10のレベルは、マクロファージをLPS単独に曝露しようとLGG−cmと共インキュベートしようと影響されなかった。LGG処理したマクロファージはLPS単独に比較して低下したTNF−α/IL−10比を有し(図6)、正味の免疫調節効果を示した。グラム陰性細菌由来の産物はナイーブなマクロファージを刺激するため、われわれは、大腸菌(E.coli)若しくは病原性ヘリコバクターにより誘導されるTNF−α産生をLGGが予防し得るかどうかを確立したいと思った。われわれのアッセイにおいて、大腸菌(E.coli)、H.ピロリ(H.pylori)若しくはH.ヘパティクス(H.hepaticus)のようなグラム陰性細菌の馴化培地はマクロファージによるTNF−α分泌を誘導することが可能である。しかしながら、馴化培地中に存在するH.ピロリ(H.pylori)若しくはH.ヘパティクス(H.hepaticus)由来のP/CAMPのいずれも、マクロファージにおけるTNF−α分泌の刺激において大腸菌(E.coli)由来のP/CAMPほど強力でない。マクロファージ活性化の属間の比較は、H.ピロリ(H.pylori)馴化培地が約900pg/mlのTNF−αを導き出す一方、H.ヘパティクス(H.hepaticus)はH.ピロリ(H.pylori)に誘導されるレベルのおよそ半分を生じさせることを示している。LGG−cmの存在下でTNF−α誘導は有意に阻害され、ヘリコバクター属(Helicobacter)由来の免疫調節因子に対するLGG由来のイムノモジュリンの拮抗作用を示している(p<0.01)。大腸菌(E.coli)による誘導がLGG−cmの添加により影響されないことを示すことは興味深い。LGGは、所定の性質若しくは特定の閾値濃度のLPS(若しくは免疫刺激性P/CAMP)が存在する場合にのみTNF−αを阻害するとみられる(図7)。
【0089】
この推定のイムノモジュリンをさらに特徴づけるため、LGGからの馴化培地をDNアーゼI、プロテイナーゼK若しくはプロテアーゼEで処理した。馴化培地のプロテアーゼ処理、次いでプロテアーゼの熱不活性化は、未改変のLGG−cmに関して部分的なしかし有意の(p<0.05)LGG−cmのTNF−α阻害性活性の喪失をもたらした(図8)。これは、該推定のイムノモジュリンが、マクロファージでのTNF−α産生を阻害するタンパク質若しくはペプチド成分を有することを意味している。
【実施例4】
【0090】
本発明の意義
要約すれば、これらの結果は、L.ラムノスス(L.rhamnosus)GGがネズミのマクロファージモデルにおいてTNF−α産生を特異的に阻害しかつTNF−α/IL−10比を低下させることを示す。正味の影響は本来免疫調節性である。他の乳酸杆菌属(Lactobacillus)種はこうした調節性の効果を有さず、特定の免疫効果が種若しくは株特異的でありうることを示す。in vivoでは細胞外pHが免疫応答に影響しうると考えられている(Lardner、2001)。乳酸杆菌属(Lactobacillus)の培地(MRS培地)はわずかに酸性(pH約6)であり、そして乳酸菌による培地中の炭水化物の利用がpHを約4までさらに減少させる。マクロファージ細胞培養物への乳酸杆菌馴化培地の添加(RAWアッセイ)はpHを酸性範囲に移動させ、そしてTNF−α産生に影響していたかもしれない。TNF−α産生に対するpHの可能な影響を取り扱うため、MRS培地を乳酸杆菌馴化培地に匹敵するpH(およそpH4)まで酸性化し、そして対照として使用した。酸性化したMRSは、LPS媒介性のTNF−α産生を阻害せず、そして、その酸性化したMRS単独ではナイーブなマクロファージでTNF−α産生を誘導し得なかった(データは示されない)。
【0091】
加えて、乳酸がTNF−α産生に人工的に影響するはずであるとすれば、TNF−α産生のL.ラムノスス(L.rhamnosus)GG媒介性の減少というわれわれの観察結果はより広く受け入れられるとみられる(すなわち、より多くの単離物がこの効果を表すとみられる)。乳酸杆菌の大部分の種および単離物は、低下した酸素圧力下で培養される場合に多様な炭水化物を乳酸に醗酵する。われわれは試験した100以上から10未満の株でTNF−α阻害を見出したのみであったため、乳酸若しくは他の酸代謝物がTNF−α阻害を与えることは高度にありそうにないと思われる。われわれのデータは、乳酸アシドーシスがラット腹膜マクロファージでのTNF−α産生を増加させるという(Jensenら、1990)の知見によりさらに裏付けられる。
【0092】
この効果は血清および接触非依存性であり、完全な調節活性のために可溶性LGGイムノモジュリンの存在を必要とする。インターロイキン−12(IL−12)のような他のNF−κB依存性サイトカインは阻害されず、そしてIL−10産生は影響されない。従って、この調節効果はTNF−αに特異的であるようであり、かつ、NF−κB非依存性でありうる。腸内乳酸杆菌は、おそらく細胞表面受容体に結合しかつアポトーシス前効果若しくは細胞壊死に依存せずにTNF−αの合成若しくは分泌をいくぶん阻害する可溶性タンパク質因子を産生する(その結果好ましくはこれらの化合物は毒性効果によりヒト細胞を殺さずかつ/若しくはそれらに損傷を与えない)。
【0093】
TNF−αはTh1免疫応答を刺激する活性化したマクロファージにより産生される強力な炎症前サイトカインを代表する。LPSで活性化したマクロファージでのTNF−α産生はNF−κBの活性化に依存する。NF−κBは宿主の自然免疫応答で重要な炎症前遺伝子の重要な転写調節因子であると考えられている。TNF−α産生の阻害はNF−κBの活性化の妨害に二次的であるとみられ、TNF−αの転写を阻害する。LGGおよびネズミのマクロファージに関して、IL−12のような他のNF−κBに調節される遺伝子が減少されないため、この経路は影響されていると思われない。データは、TNF−αのmRNAレベルがLPS若しくはLTAで活性化したマクロファージで影響されないことを示している。代わりに、TNF−α産生は、転写後機構により特異的に阻害されるようである。
【0094】
片利共生細菌は、免疫応答を調節することにより宿主における感染を高めうる免疫調節因子を産生することが知られている(Wilsonら、1998)。こうしたイムノモジュリンは腸の健康の維持および全身性の炎症応答の抑制において重要な役割を有するとみられる。ラクトバチルス パラカセイ(Lactobacillus paracasei)は、高レベルの調節性サイトカインIL−10およびトランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)を産生する調節性CD4+ T細胞の集団を誘導する(von der Weidら、2001)。乳酸杆菌は、種依存性の様式でサイトカインプロファイル全体を変えるという正味の影響を伴い、骨髄由来樹状細胞におけるサイトカイン産生を調節する(Christensenら、2002)。非毒性のサルモネラ属(Salmonella)株は、NF−κBの阻害性サブユニットIκBαのユビキチン化を予防することにより炎症前サイトカイン産生のNF−κB依存性の誘導を調節する(Neishら、2000)。
【0095】
原核生物は炎症前サイトカイン応答を阻害しかつ長期のコロニー形成および微生物:宿主の共存を助長するための機構を発展させてきた。乳酸杆菌はげっ歯類モデルにおいて粘膜および全身双方のサイトカインレベルに対し異なる影響を発揮し(Haら、1999;Tejada−Simonら、1999)かつサイトカイン合成の量的な差異の検査の重要性を強調しているかもしれない。これらの表面上は異質の結果は、ライセートを用いた実験的研究を無傷の細胞若しくは馴化培地と区別することの重要性を強調する。加えて、いずれかの属の異なる種若しくは株は異なる生物学的影響を有するようである。病因および片利共生に重要な生物学的単位は最終的にクローンである。株の差異の裏付けとして、研究が、デルブリュック乳酸杆菌(Lactobacillus delbrueckii)の免疫増強効果の株依存性を示している(Nagafuchiら、1999)。
【0096】
病原性細菌は、多様な機構により宿主免疫細胞でのTNF−α発現を減少させかつおそらく全身性の展開および増殖を助長するタンパク質を産生する。例えば、ブタ流産菌(Brucella suis)は、感染の間のヒトマクロファージによるTNF−α産生を阻害する主要外膜タンパク質Omp25を産生する(Jubier−Maurinら、2001)。炭疽菌(Bacillus anthracis)により産生される炭疽菌致死因子はマクロファージ中で2種のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPKK)を切断して、リポ多糖に応答した一酸化窒素(NO)およびTNF−α若しくはIFN−γの産生の実質的低下を引き起こす(Pellizzariら、1999)。腸の病原体エルジニア エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)は、NF−κBおよびMAPK経路を妨害することによりネズミの単球−マクロファージ中でのTNF−α産生を妨害するタンパク質YopPを発現する(BolandとCornelis、1998)。
【0097】
生菌の乳酸杆菌属(Lactobacillus)種、ならびに他の生菌乳酸菌種は数種の動物モデルおよび臨床試験で有効であった。IL−10欠損マウスへのL.ロイテリ(L.reuteri)の投与は、処理した動物での大腸炎の回復および腸内微生物叢の性質の見かけ上の移動をもたらした(Madsenら、1999;Madsenら、2000)。酢酸誘発性ラット大腸炎モデルで、L.ロイテリ(L.reuteri)およびL.ラムノスス(L.rhamnosus)GGは有益な効果を生じかつ粘膜の炎症を低下させた(Holmaら、2001)。多様な種の乳酸杆菌属(Lactobacillus)が、ヒト患者の抗生物質関連性大腸炎、ウイルス性胃腸炎および炎症性腸疾患の処置のための現代の生菌処方に包含されている。ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GGの経口摂取は抗生物質関連性大腸炎の再発のリスクを低下させた(Bennettら、1996)。ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)の投与は疾患の長さを短縮しかつロタウイルス性胃腸炎による症状を回復させた(Shornikovaら、1997)。最後に、結腸直腸吻合術後の潰瘍性大腸炎患者における乳酸杆菌属(Lactobacillus)およびビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)種の混合物(VSL#3)の投与は、慢性回腸嚢炎の突発の再発を低下させた(Gionchettiら、2000)。
【0098】
乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは当該技術分野で既知のところの他の乳酸菌種のメンバーを包含する生菌生物体は抗炎症生物治療剤として興味深い可能性を提供する。胃腸管の炎症および感染性疾患の処置のためのプロバイオティクスにおける増大する興味は、新たな治療レジメンに対する熱意を生成したが、しかしこれらの目的上至適の細菌株はさらなる検討を必要とする。免疫調節の分子機構のより完全な理解が、次世代のプロバイオティクスの発展を助長するであろうし、かつ、宿主と微生物の相互作用のわれわれの理解を高めるであろう。宿主および片利共生生物体の共進化が、われわれが前進する際の科学的疑問を組み立てるための価値ある情況としてはたらく。乳酸杆菌を包含する明らかに片利共生性の細菌は、宿主粘膜と単純な接着を超えて緊密に相互作用する。表面結合型および分泌型因子の産生は特定の真核生物シグナル伝達経路を誘発し、そして最終的には特定の宿主タンパク質の産生に影響を及ぼす。こうした分子相互作用は、粘膜の炎症および宿主免疫応答の調節への洞察を明らかにしかつ新たな機構を明らかにするであろう。
【実施例5】
【0099】
例示的実験手順
以下の材料および方法は本発明に関し例示的であるとは言え、特定の一態様においてそれらは実施例1〜4に記述される実験に有用である。
細菌学的方法
乳酸杆菌属(Lactobacillus)種(アシドフィルス菌(L.acidophilus)ATCC 4796、L.アニマリス(L.animalis)ATCC 35046、L.ラムノスス(L.rhamnosus)GG ATCC 53103、イエンセン乳酸杆菌(L.johnsonii)ATCC 33200、L.ムリヌス(L.murinus)ATCC 35020、L.プランタルム(L.plantarum)ATCC 14917、L.プランタルム(L.plantarum)ATCC 49445、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 53608、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 55148、L.サリバリウス(L.salivarius)ATCC 11471)および大腸菌(E.coli)Nissle(V.Fussing、Statens Serum Institut、デンマーク・コペンハーゲンから得られた)を、それぞれde Man、Rogosa、Sharpe(MRS)およびLuria−Bertani(LB)培地(Difco、メリーランド州スパークス)中で増殖させた。乳酸杆菌の一夜培養物を1.0のOD600(およそ10細胞/mlに相当する)に希釈しかつさらに10倍希釈し、そして追加の4、8および24時間増殖させた。ヘリコバクター ピロリ(Helicobactor pylori)Sydneyおよびヘリコバクター ヘパティクス(Helicobactor hepaticus)3B1は、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したBrucella培地(Difco)中で48時間培養した。培養物を10倍希釈しそして別の24および48時間増殖させた。細菌細胞を含まない馴化培地を8500rcfで4℃で10分間の遠心分離により収集した。馴化培地を細胞ペレットから分離し、そして0.22μm孔のフィルター装置(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を通して濾過した。無傷のUVで殺傷した細菌は、PBS中で乳酸杆菌を洗浄することおよび細胞を1のOD600まで再懸濁することにより調製した。細菌細胞をStratalinker(R)UV架橋装置(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)で2400μジュールのUV254nm光に曝露し、そして生存率を評価するためMRSアガー上にプレーティングした。UVで殺傷した細胞の無傷性をグラム染色形態学により評価した。
馴化培地の操作
乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地を分解酵素および温度移動で処理して、これらの微生物によりおそらく分泌されている免疫調節性分子の性質を決定した。馴化培地を以下、すなわち、3周期の凍結および融解、95℃での15分加熱、Troomでの15分のDNアーゼI(Ambion、テキサス州オースティン)処理、またはプロテイナーゼK若しくはプロテアーゼE(Sigma、ミズーリ州セントルイス)での37℃での20分消化、次いで95℃での10分の熱不活性化にかけた。MRS培地を、乳酸杆菌馴化培地に匹敵するpH(およそpH4)まで塩酸で酸性化しかつ対照として使用した。
細胞培養物およびバイオアッセイ
マウス単球/マクロファージ細胞株RAW 264.7(ATCC TIB−71)およびRAW 264.7γNO(−)(ATCC CRL−2278)を、炎症応答経路を研究するためのレポーター細胞として使用した。RAW 264.7細胞は、10%FBSおよび2%抗生物質(5000単位/mlのペニシリンおよび5mg/mlのストレプトマイシン、Sigma)を補充したダルベッコの改変イーグル培地(野性型マクロファージのため)若しくはRPMI培地1640(γNO(−)細胞のため)(Gibco−Invitrogen、カリフォルニア州カールスバード)のいずれか中、5%CO 37℃で80〜90%コンフルエントまで増殖させた。およそ5×10細胞を96ウェル細胞培養クラスターに接種し、そしてLPS活性化および馴化培地の添加前に2時間接着させた。ナイーブなRAW 264.7細胞を、細胞を含まない大腸菌(E.coli)若しくはヘリコバクター属(Helicobactor)馴化培地、大腸菌(E.coli)血清型O127:B8からの精製したリポ多糖(LPS)、若しくは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロコッカス フェーカリス(Enterococcus faecalis)および枯草菌(Bacillus subtilis)からのリポテイコ酸(LTA)(Sigma)に曝露した。活性化培地は、2ngのLPS若しくは25ngのLTAをウェルあたり20μlの馴化培地に添加することにより作成した。マクロファージは、無傷の細胞の実験でマクロファージあたり20若しくは200いずれかの乳酸杆菌細胞に曝露した。マクロファージは、細胞を含まない乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地と前インキュベート若しくは共インキュベートのいずれかをした。組換えmIL−10(R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス)を免疫調節研究の対照として使用した。細胞生存率はトリパンブルー(Invitrogen)排除アッセイにより評価した。
サイトカイン測定
マクロファージ細胞培養上清中のTNF−αの産生はマウスTNF−α特異的サンドイッチエンザイムイムノアッセイ(Biosource、カリフォルニア州カマリロ)を用いて測定した。推定の免疫調節物質の存在下での活性化したマクロファージ培養物のサイトカイン環境を研究するために、Luminex LabMAP 100TM系(Biosource)のためのマウス特異的サイトカイン抗体ビーズキットを使用して、Luminex 100機器(Luminex Corp.、テキサス州オースティン)で培養上清中のIL−1β、IL−6、IL−10、IL−12(p70およびp40特異的)、TNF−α、IFN−γおよびGM−CSFを検出かつ定量した。
統計学的解析
全部の実験は最低3回(各回三重で)実施し、そして独立サンプルT検定(Independent Samples T−Test)(SPSS for Windows バージョン11.0.1、SPSS Inc.、イリノイ州シカゴ)を使用してp<0.05という有意性レベルで解析した。図中の誤差の棒は標準偏差(SD)を表す。
【実施例6】
【0100】
付加的な態様
ラクトバチルス ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)GG(LGG)のグラム染色を行い(100倍)、LPSで活性化したRAW 264.7マクロファージのヘマトキシリン−エオシン染色を行った(40倍)。
【0101】
図9は、LPSで活性化したマクロファージに対する細菌馴化培地の影響を示す。マクロファージをLPSおよび細菌馴化培地の混合物で活性化した。活性化5時間後に培地をTNF−αについて試験した。アシドフィルス菌(L.acidophilus)4796はMRS+LPSのみで活性化したマクロファージに比較してTNF−α産生を有意に増大させた(p<0.01)一方、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 55148は影響を有しなかった。LGGはTNF−α産生を有意に減少させた(p<0.01)。大腸菌(E.coli)のようなグラム陰性細菌は培地単独に比較してTNF−α産生を有意に増大させた。
【0102】
図10は免疫調節がpHの影響によらないことを示す。乳酸産生および低下されたpHの影響について制御するために、酸性化したMRS培地(pH4)を試験し、そしてLGG−cmの存在を伴わずにTNF−αレベルに影響しなかった。他の乳酸菌由来の馴化培地はTNF−α分泌を阻害せず、そして乳酸産生による一般的なpHの影響と矛盾しなかった。
【0103】
図11はLTAで活性化したマクロファージに対するLGG馴化培地の影響を提供する。マクロファージを、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、枯草菌(B.subtilis)およびE.フェーカリス(E.faecalis)由来のLTAで活性化した。LGG馴化培地は、MRS培地単独に比較して、LTAで活性化したマクロファージでの炎症前サイトカイン発現を有意に低下させた(p<0.01)。
【0104】
図12は免疫調節効果が10kDAの画分に保持されることを示す。サイズ排除フィルターを使用してLGG馴化培地を分画した。TNF−α産生の阻害は<10kDaの画分で観察された。対照的に>10kDaの画分は免疫調節活性を喪失した。発明者からの以前のデータと一緒にすれば、これは、小型ペプチドが免疫調節の原因でありかつ血清を必要としないことを示す。
【0105】
図13は免疫調節がヘテロ三量体のGタンパク質を利用することを示す。PTx処理後に、RAW 264.7細胞を、LPS単独で刺激したか、若しくは乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地(CM)と共培養した。TNF阻害効果を発揮する乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地の能力は、RAW 264.7細胞をPTxで毒性化した場合に部分的に低下した。
【0106】
図14はTNF−α/IL−10の比がLGGの存在下で低下することを示す。LPSで活性化したマクロファージのサイトカインレベルを、マウス特異的多サイトカイン抗体ビーズサンドイッチイムノアッセイを使用してLuminex 100機器で測定した。LGG−cm+LPSで刺激したマクロファージのIL−10およびTNF−αのレベルをLPS単独に曝露したマクロファージに関して比較した。LGG(L.ラムノスス(L.rhamnosus)馴化培地)およびLPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【0107】
ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)およびストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)で得られた類似の結果は、本明細書の図に示されない。
【実施例7】
【0108】
付加的な例示的手順
以下の材料および方法は本発明に関する例示であるとは言え、特定の態様において、それらは実施例6に記述される実験に有用である。
細菌培養物
L.ラムノスス(L.rhamnosus)GGおよび大腸菌(E.coli)NissleをそれぞれMRS培地およびLB培地中で増殖させた。一夜培養物を10倍希釈し、そして別の4、8および24時間増殖させた。ヘリコバクター ピロリ(Helicobactor pylori)Sydneyおよびヘリコバクター ヘパティクス(Helicobactor hepaticus)3B1は、ウシ胎児血清(FBS)を補充したBrucella培地中で48時間培養した。培養物を10倍希釈し、そして別の24および48時間増殖させた。細菌により馴化された培地を、培養物を遠心分離することにより収集した。
RAWバイオアッセイ
129 SvEvマウスからの腹膜マクロファージおよび単球/マクロファージ細胞株RAW 264.7γNO(−)を、炎症応答経路を研究するためのレポーター細胞として使用した。ナイーブなRAW 264.7γNO(−)細胞を、細胞を含まない大腸菌(E.coli)若しくはヘリコバクター属(Helicobactor)馴化培地、および大腸菌(E.coli)血清型O127:B8からの精製したリポ多糖(LPS)(Sigma、ミズーリ州セントルイス)若しくは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、枯草菌(Bacillus subtilis)およびエンテロコッカス フェーカリス(Enterococcus faecalis)からのグラム陽性リポテイコ酸(Sigma)に曝露した一方、初代マクロファージをLPS若しくはLTAに曝露した。マクロファージは、細胞を含まない乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地と前インキュベート若しくは共インキュベートのいずれかをした。トキシンアッセイのため、RAW 264.7マクロファージを、Giタンパク質依存性の応答を排除するためにGiタンパク質阻害剤、百日咳トキシン(PTx)に曝露した。PTx処理後にRAW 264.7細胞をLPS単独で刺激したか、若しくは乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地(CM)と共培養した。細胞培養上清中でのTNF−αの産生を、サンドイッチエンザイムイムノアッセイ、マウスTNF−α ELISA(BioSource、カリフォルニア州カマリロ)を用いて測定した。
サイトカイン測定
推定の免疫調節物質の存在下での活性化したマクロファージ培養物のサイトカイン環境を研究するために、マウス多重サイトカイン検出系(Cytokine Detection System)2(BioSource)を使用して、Luminex 100(Luminex Corp.、テキサス州オースティン)機器で培養上清中のIL−1α、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12(p70)、TNF−α、IFN−αおよびGM−CSFを検出かつ定量することができる。
【実施例8】
【0109】
健康なおよびIL−10欠損マウスからの腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus
乳酸杆菌属(Lactobacillus)種は胃腸感染症および炎症性腸疾患の処置のための生菌剤として使用されている。ネズミの胃腸管は、ヒトを包含する他の哺乳動物と同様に、腸の健康の維持に重要と考えられる十分な数の片利共生乳酸杆菌を含有する。インターロイキン−10(IL−10)欠損マウスは、重要な免疫調節性サイトカイン(IL−10)の非存在により、腸内細菌にコロニー形成される場合に大腸炎を発症する。
【0110】
健康なおよびIL−10欠損マウスからの乳酸杆菌属(Lactobacillus)微生物叢を比較するために、小腸の多様な領域および糞便から腸内乳酸杆菌を単離した。候補のネズミの腸内乳酸杆菌を選択培地上で培養し、そしてグラム染色形態学および選択された生化学的検査によりスクリーニングした。乳酸杆菌属(Lactobacillus)単離物を、詳細な生化学的研究、16S rRNAシークェンシングおよびrep−PCRに基づくDNAフィンガープリント法により特徴付けした。
【0111】
腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus)単離物の詳細な生化学的および分子研究は、IL−10欠損マウスに対する健康なマウスでの異なる乳酸杆菌属(Lactobacillus)集団の存在を強調した。同一の動物から単離したおよび腸管の多様な領域から培養した腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus)単離物は、DNAフィンガープリント法により同一であった。健康な動物からの単離物は、生化学的分析およびDNAシークェンシングによりラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)(若しくはL.ロイテリ(L.reuteri)/醗酵乳酸杆菌(L.fermentum)複合物)と同定された。対照的に、IL−10欠損マウスからの単離物は、生化学的研究およびDNAシークェンシングによりラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)若しくはアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)と同定された。これらのデータに一致して、健康なおよび疾患に罹った動物からの単離物は、rep−PCRに基づくDNAフィンガープリント法に基づくクラスター分析により明瞭に識別された(図15および16)。
【0112】
異なる腸内乳酸杆菌属(Lactobacillus)種が、健康な動物および大腸炎を伴うIL−10欠損マウスで優位を占める。乳酸杆菌属(Lactobacillus)微生物叢の性質が腸の健康若しくは炎症に部分的に寄与するとみられ、また、生菌処置戦略に適切であるとみられる。
【実施例9】
【0113】
TNF−αの阻害性(「イムノモジュリン」)活性はGタンパク質Giα2の存在を必要とする
野性型およびヘテロ接合性ノックアウト動物からのマクロファージは、LPS単独で刺激した場合に匹敵するレベルのTNF−αを分泌した。ヘテロ接合性Giα2+/−マクロファージは乳酸杆菌属(Lactobacillus)CMの存在下で中間レベルのTNF−αを産生した(図17)。ホモ接合性Giα2欠損マクロファージは、乳酸杆菌属(Lactobacillus)由来のCMの存在にもかかわらず過剰量のTNF−αを産生した(図17)。乳酸杆菌属(Lactobacillus)種由来のCMは、野性型マクロファージによるLPSで刺激されたTNF−α分泌を阻害したが、しかし、この効果はGiα2欠損細胞中では阻害された(図17)。これらの結果は、片利共生乳酸杆菌属(Lactobacillus)種によるマクロファージのサイトカイン応答の調節におけるGタンパク質Giα2の重要性を示し、かつ、Giα2欠損マウスモデルの提案された研究を正当化する。
参考文献
本明細中で言及される全部の特許および刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者の水準を暗示する。全部の特許および刊行物は、各個々の刊行物が引用することにより組み込まれることをとりわけかつ個々に示された場合と同一の程度まで、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0114】
特許および特許出願
米国特許第4,314,995号
米国特許第4,839,281号
米国特許第5,032,399号
米国特許第6,132,710号
米国特許出願第20020019043 A1号
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
【表6】

【0121】
【表7】

【0122】
【表8】

【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
本発明およびその利点を詳細に記述したとは言え、多様な変更、置換および変化を、付属として付けられる請求の範囲により定義されるところの本発明の技術思想および範囲から離れることなく本明細書で行い得ることが理解されるべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細に記述された方法(process)、機械、製造、組成物、手段、方法(method)および段階の特定の態様に制限されることを意図していない。当業者が本発明の開示から容易に認識するであろうとおり、本明細書に記述される対応する態様と実質的に同一の機能を遂行する若しくは実質的に同一の結果を達成する、現在存在する若しくは後で開発されるべき方法(process)、機械、製造、組成物、手段、方法(method)若しくは段階を、本発明により利用してよい。従って、付属として付けられる請求の範囲は、こうした方法(process)、機械、製造、組成物、手段、方法(method)若しくは段階をそれらの範囲内に包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0126】
本発明のより完全な理解のため、今や付随する図面とともに解釈される以下の記述に言及する。
【図1】LGG−マクロファージバイオアッセイの図解を提供する。マクロファージを大腸菌(E.coli)からの精製したLPSで刺激する。活性化は細胞過程の空胞化および放出のような形態学的変化を特徴とする。加えて、活性化はTNF−αのような炎症前サイトカインの分泌もまたもたらす。乳酸杆菌により作成される推定のイムノモジュリンの存在はTNF−αのLPS媒介性の産生を阻害するとみられる。
【図2】図2Aおよび2B LGG馴化培地がLPSで活性化したマクロファージによるTNF−α産生を阻害することを示す。大腸菌(E.coli)と対照的に、乳酸杆菌属(Lactobacillus)若しくは他の乳酸菌種により馴化された培地は、定量的ELISAにより測定されるところのRAW 264.7マクロファージでのTNF−α産生を誘導しない(図1A)。LGGからの馴化培地のみがマクロファージによるLPS媒介性のTNF−α産生を阻害した(B)。選択した細菌種の馴化培地が表される。すなわち、Lacid 4796(アシドフィルス菌(L.acidophilus)ATCC 4796)、LGG(L.ラムノスス(L.rhamnosus)GG)、Lreut 55148(L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 55148)、Ec Nissle(大腸菌(E.coli)Nissle)。培地対照:MRS(deMan、Rogosa、Sharpe)およびLB(Luria−Bertani)。
【図3】LGGによるTNF−α産生の阻害が可逆的であることを示す。RAW 264.7マクロファージをLGG−cm+LPS若しくはLPS単独で活性化した。活性化5時間後に、定量的ELISAを使用して細胞培地をTNF−αについてアッセイした。消費された培地を除去しそして新鮮培地を補充した。マクロファージを一夜増殖させ、その後LPS単独で再攻撃した。培地をLPS再攻撃5時間後にTNF−αについてアッセイした(PLS再攻撃)。LPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【図4】図4Aおよび4B LPSによるマクロファージ活性化およびLGGの免疫調節効果が血清非依存性であることを示す。FBSを含まない条件でRAW 264.7マクロファージバイオアッセイを実施して、定量的ELISAにより測定されるところのTNF−α産生に対する観察された効果に血清溶解性の補助因子が必要とされるかどうかを決定した。FBS補充条件(図4A)とFBSを含まない条件(図4B)との間に有意差は示されなかった。MRS(deMan、Rogosa、Sharpe培地)、LPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【図5】図5Aから5B LGG馴化培地がLTAで活性化したマクロファージによるTNF−α産生を阻害することを示す。3種の異なるグラム陽性細菌からの精製したLTAを、LPSを伴い若しくは伴わずにマクロファージを刺激するのに使用した(図5A)。LGG馴化培地の存在下で、定量的ELISAにより測定されるとおりTNF−α産生が減少した(図5B)。培地のみ/MRS(deMan、Rogosa、Sharpe培地)、Saur(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、Efaec(エンテロコッカス フェーカリス(Enterococcus faecalis)Bsub(枯草菌(Bacillus subtilis))、LTA(リポテイコ酸)、LPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【図6】TNF−α/IL−10比がLGGの存在下で減少されることを示す。LPSで活性化したマクロファージのサイトカインレベルを、マウス特異的多サイトカイン抗体ビーズサンドイッチイムノアッセイを使用してLuminex 100機器にて測定した。LGG−cm+LPSで刺激したマクロファージでのIL−10およびTNF−αのレベルをLPS単独に曝露したマクロファージに関して比較した。LGG(L.ラムノスス(L.rhamnosus)馴化培地)およびLPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【図7】LGG由来因子がヘリコバクター属(Helicobactor)種によるマクロファージの活性化に拮抗するがしかし大腸菌(E.coli)による活性化はしないことを示す。マクロファージを、LPS補充したヘリコバクター属(Helicobactor)若しくは大腸菌(E.coli)馴化培地、またはグラム陰性馴化培地単独のいずれかで活性化した。LGG馴化培地をヘリコバクター属(Helicobactor)若しくは大腸菌(E.coli)馴化培地に添加し(1:1の比)、LGGがヘリコバクター属(Helicobactor)で活性化したマクロファージでのTNF−α産生を低下させ得たかどうかを定量的ELISAを使用して決定した。Hp(H.ピロリ(H.pylori)馴化培地)、LGG(L.ラムノスス(L.rhamnosus)馴化培地)、Hh(H.ヘパティクス(H.hepaticus)馴化培地)およびEc Nissle(大腸菌(E.coli)Nissle馴化培地)。
【図8】LGG由来タンパク質が免疫調節効果を与えることを示す。マクロファージをLPSおよび改変LGG馴化培地の混合物で活性化し、そしてTNF−α産生を定量的ELISAにより測定した。馴化培地はLPSと混合する前に多様な処理にかけた。すなわち、未処理対照(未改変)、凍結融解循環(F/T)、熱変性(熱)、DNアーゼI処理(DNase)およびプロテイナーゼK消化次いでプロテイナーゼKの熱不活性化(PK)。
【図9】LPSで活性化したマクロファージに対する細菌馴化培地の効果を示す。マクロファージはLPSおよび細菌馴化培地の混合物で活性化した。活性化5時間後に培地をTNF−αについて試験した。アシドフィルス菌(L.acidophilus)4796はMRS+LPSのみで活性化したマクロファージに比較してTNF−α産生を有意に増大させた(p<0.01)一方、L.ロイテリ(L.reuteri)ATCC 55148は効果を有しなかった。LGGはTNF−α産生を有意に低下させた(p<0.01)。大腸菌(E.coli)のようなグラム陰性細菌は培地単独に比較してTNF−α産生を有意に増大させた。
【図10】免疫調節がpHの影響によらないことを示す。乳酸産生および低下されたpHの影響について制御するために、酸性化したMRS培地(pH4)を試験し、そしてLGG−cmの存在を伴わずにTNF−αレベルに影響しなかった。他の乳酸菌由来の馴化培地はTNF−α分泌を阻害せず、そして乳酸産生による一般的なpHの影響と矛盾しなかった。
【図11】LTAで活性化したマクロファージに対するLGG馴化培地の影響を提供する。マクロファージを黄色ブドウ球菌(S.aureus)、枯草菌(B.subtilis)およびE.フェーカリス(E.faecalis)由来のLTAで活性化した。LGG馴化培地は、MRS培地単独に比較して、LTAで活性化したマクロファージにおける炎症前サイトカイン発現を有意に減少させた(p<0.01)。
【図12】免疫調節効果が10kDAの画分に保持されることを示す。サイズ排除フィルターを使用してLGG馴化培地を分画した。培地対照を「mock」により示す。TNF−α産生の阻害は<10kDaの画分で観察された。対照的に>10kDaの画分は免疫調節活性を喪失した。発明者からの以前のデータと一緒にすれば、これは、小型ペプチドが免疫調節の原因でありかつ血清を必要としないことを示す。
【図13】免疫調節がヘテロ三量体のGタンパク質を利用することを示す。PTx処理後に、RAW 264.7細胞をLPS単独で刺激したか、若しくは乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地(CM)(特定の乳酸菌株(1種若しくは複数)の増殖により馴化した培地)と共培養した。TNF阻害効果を発揮する乳酸杆菌属(Lactobacillus)馴化培地の能力は、RAW 264.7細胞をPTxで毒性化した場合に部分的に低下した。
【図14】TNF−α/IL−10の比がLGGの存在下で低下することを示す。LPSで活性化したマクロファージのサイトカインレベルを、マウス特異的多サイトカイン抗体ビーズサンドイッチイムノアッセイを使用してLuminex 100機器で測定した。LGG−cm+LPSで刺激したマクロファージのIL−10およびTNF−αのレベルをLPS単独に曝露したマクロファージに関して比較した。LGG(L.ラムノスス(L.rhamnosus)馴化培地)およびLPS(大腸菌(E.coli)O127:B8由来リポ多糖)。
【図15】乳酸杆菌属(Lactobacillus)株のクラスター図を具体的に説明する。乳酸杆菌属(Lactobacillus)種は「L.spp」により示し;ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)は「L.r.」により示し;イエンセン乳酸杆菌(L.johnsonii)を「L.j.」により示し、そして「野性型」を「W−t」により示す。右側の欄で、「t」はゲルDNAプロファイル上のDNAフラグメント位置に関して「上」を指しかつ「b」は「下」を指す。
【図16】乳酸杆菌属(Lactobacillus)株のクラスター図を具体的に説明する。略語は図15でのとおりである。
【図17】TNF−α阻害(「イムノモジュリン」)活性がGタンパク質Gi α 2の存在を必要とすることを示す。Giα2欠損マウス(129 Svバックグラウンド)からの固有の腹膜マクロファージをLPS単独(MRS+LPS)若しくはLPSおよび乳酸杆菌属(Lactobacillus)由来CM(LGG+LPS、MM7+LPS、CF48+LPS)で刺激した。相対的TNF−αレベルを定量的ELISA(Quantikine M、R&D Systems)により測定した。MRS、deMan、Rogosa、Sharpe培地;LGG、L.ラムノスス(L.rhamnosus)株GG;MM7、L.ロイテリ(L.reuteri)株MM7;CF48、L.ロイテリ(L.reuteri)株CF48。WT、野性型Giα2+/+マクロファージ;Hetzyg、ヘテロ接合性ノックアウトGiα2+/−マクロファージ;Homzyg、ホモ接合性ノックアウトGiα2−/−マクロファージ。
【配列表】









【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸菌から分泌される、抗炎症活性を含んでなる化合物。
【請求項2】
前記乳酸菌が、乳酸杆菌属(Lactobacillus)がアシドフィルス菌(L.acidophilus)、L.アニマリス(L.animalis)、L.ラムノスス(L.rhamnosus)GG、イエンセン乳酸杆菌(L.johnsonii)、L.ムリヌス(L.murinus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.ロイテリ(L.reuteri)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.パラカセイ(L.paracasei)、デルブリュック乳酸杆菌(L.delbrueckii)、醗酵乳酸杆菌(L.fermentum)、乳酸短杆菌(L.brevis)、ブーフナー乳酸杆菌(L.buchneri)、L.ケフィ(L.kefi)、カセイ菌(L.casei)、L.クルバツス(L.curvatus)、L.コリニフォルミス(L.coryniformis)であり、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物がポリペプチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が受容体結合活性をさらに含んでなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、サイトカイン発現調節活性、ケモカイン発現調節活性、若しくは双方をさらに含んでなる、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の化合物を含んでなるキット。
【請求項7】
請求項1を産生する最低1種の単離された細菌を含んでなるキット。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物を産生する単離された細菌。
【請求項9】
前記細菌が、請求項1に記載の化合物を分泌することが可能であるとさらに定義される、請求項8に記載の細菌。
【請求項10】
前記細菌が乳酸杆菌属(Lactobacillus)である、請求項8に記載の細菌。
【請求項11】
請求項8に記載の細菌を含んでなる培養物。
【請求項12】
請求項8に記載の細菌を含んでなるキット。
【請求項13】
乳酸菌から分泌された化合物を細胞に投与する段階を含んでなる、細胞中のサイトカイン発現の低下方法。
【請求項14】
前記サイトカイン発現が転写後に低下される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記分泌された化合物のGタンパク質受容体への結合をさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインがTNF−αである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が免疫細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫細胞がマクロファージである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療上有効な量の乳酸菌を個体に送達する段階を含んでなり、前記乳酸菌は接触非依存性の機構により前記炎症を阻害する、個体における炎症の阻害方法。
【請求項20】
前記乳酸菌が、免疫細胞上の受容体に結合する可溶性化合物を産生するとさらに定義される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該方法が、前記細胞中でサイトカイン産生、サイトカイン分泌、ケモカイン産生若しくはそれらの組合せを少なくとも部分的に阻害するとさらに定義される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記阻害段階が、阻害性のヘテロ三量体のG(Gi)タンパク質活性による、前記サイトカイン産生、サイトカイン分泌、ケモカイン産生若しくはそれらの組合せを阻害することを含んでなるとさらに定義される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サイトカインがTNF−αである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ケモカインがIL−8である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
乳酸菌が最低1種のさらなる治療薬とともに投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
最低1種の治療薬が、コルチコステロイド、スルファサラジン、スルファサラジンの誘導体、免疫抑制剤、シクロスポリンA、メルカプトプリン、アザチオプリン、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記個体が、大腸炎、関節炎、滑膜炎、リウマチ性多発性筋痛、筋炎若しくは敗血症に悩まされている、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
ポリペプチドでありかつ抗炎症活性を有する乳酸菌分泌物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−519014(P2006−519014A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503222(P2006−503222)
【出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/002789
【国際公開番号】WO2004/069178
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
WINDOWS
【出願人】(500155578)バイオガイア・エイビー (13)
【氏名又は名称原語表記】Biogaia AB
【出願人】(505279411)
【Fターム(参考)】