乾溜装置および乾溜油化システム
【課題】 被処理物を均一かつ効率的に熱分解できるとともに、発生した乾溜ガスを円滑に外部へ排出することのできる乾溜装置を提供する。
【解決手段】 上面が開口したカートリッジ20の内部に、被処理物を挿入したバスケット40を収納した後、当該カートリッジ20の上面開口部を蓋体30にて閉塞するとともに、当該カートリッジ20を乾溜釜10の内部へ収納し、当該乾溜釜10内で被処理物を加熱して乾溜処理する。バスケット40は、上面が開口した籠状をして、複数個が上下方向に連結されている。各バスケット40の間には間隙が形成されるとともに、各バスケット40の内部には乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体42,43が底面から上方に延出して設けてあり、当該筒状体42,43の周面には多数の通気孔が形成してある。
【解決手段】 上面が開口したカートリッジ20の内部に、被処理物を挿入したバスケット40を収納した後、当該カートリッジ20の上面開口部を蓋体30にて閉塞するとともに、当該カートリッジ20を乾溜釜10の内部へ収納し、当該乾溜釜10内で被処理物を加熱して乾溜処理する。バスケット40は、上面が開口した籠状をして、複数個が上下方向に連結されている。各バスケット40の間には間隙が形成されるとともに、各バスケット40の内部には乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体42,43が底面から上方に延出して設けてあり、当該筒状体42,43の周面には多数の通気孔が形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃タイヤゴムや廃プラスチックなどの被処理物を加熱分解して、油分を含む乾溜ガスを取り出す乾溜装置、および当該乾溜ガスから重質油、軽質油、塔頂油を分離抽出する装置構造を含む乾溜油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乾溜装置としては、特許文献1および特許文献2に開示された構成のものがある。
特許文献1には、被処理物を密封した容器を加熱し、被処理物の熱分解により高温の乾溜ガスを発生させる熱分解炉が開示されており、これが乾溜装置に相当する。廃タイヤなどの被処理物は容器内に投入され、この容器ごと熱分解炉の中空部内に収容配置される。熱分解炉は容器を周囲から加熱し、これにより容器内の被処理物が熱分解されて、油分を含んだ乾溜ガスが発生する。乾溜ガスは、容器の蓋に接続した連通パイプを通して一次冷却器に運ばれ、比重の違う油分に分離して抽出される。
特許文献2にも、同様に構成をした乾溜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−277767号公報
【特許文献2】特開2003−286490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、各特許文献に開示された乾溜装置は、熱分解炉と別体の容器を備えており、この容器を熱分解炉から取り出し、炉外で容器に被処理物を挿入した後、熱分解炉内に収容する構成となっていたので、例えば、複数の容器を用意しておき、熱分解炉に収容した容器内の被処理物に対する熱分解処理と並行して、他の容器に対する被処理物の挿入作業を実行し、逐次容器を交換して熱分解炉へ収容することができる。そのため、作業効率が高く生産性が向上するという利点を有している。
【0005】
しかし、廃タイヤなどの被処理物は、チップ状にして容器内に高密度に充填されるため、容器の周囲から放射される輻射熱が被処理物へ均等に伝わらず、容器の内壁近くにある被処理物に比べ、内部側にある被処理物が熱分解されにくい。このため、部分的に油分が分解しきれず生焼き状態の被処理物が残存してしまうおそれがあった。
また、被処理物から発生した乾溜ガスの容器内における流動性も悪く、乾溜ガスを円滑に容器外へ排出することができず、熱分解処理の作業工程が終了した後も、容器内に多量の乾溜ガスが残存し、その除去作業に長時間を要するおそれもあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、被処理物を均一かつ効率的に熱分解できるとともに、発生した乾溜ガスを円滑に外部へ排出することのできる乾溜装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の乾溜装置は、上面が開口しており当該上面開口から被処理物が挿入されるとともに、複数個が上下方向に連結されるバスケットと、
上面に開口部を有し、被処理物が挿入され且つ上下方向に連結された複数個のバスケットが当該上面開口部から収納されるカートリッジと、
カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体と、
カートリッジを収納して加熱し、当該カートリッジ内に収納された被処理物を乾溜処理する乾溜釜と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
被処理物は、まずバスケットに挿入され、その後、複数個のバスケットを上下に連結した状態でカートリッジに挿入することで、被処理物のカートリッジ内への挿入作業が容易になり、また乾溜処理後にバスケット内に残存する炭化物も取り出しやすくなって、作業性が向上する。
【0009】
ここで、上下方向に連結された各バスケットの間には間隙を形成することが好ましい。さらに、各バスケットの内部には、乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体を底面から上方に延出して設けるとともに、当該筒状体の周面には多数の通気孔を形成することが好ましい。
【0010】
このように構成すれば、カートリッジ内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。さらに、バスケットの内部に設けた筒状体も、周面に多数の通気孔が形成されているため、熱や乾溜ガスの流動を促進する。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0011】
各バスケットは、カートリッジの内周と対向する周壁が、熱伝導性を有する金属板で構成されていることが好ましい。この場合、乾溜釜の内壁と、その内部に収納されたカートリッジの周壁との間には隙間を形成しておき、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱がバスケットに伝えられる構成とする。
【0012】
これにより、カートリッジからの輻射熱によってバスケットが効率よく加熱されて、内部に挿入した被処理物を速やかに熱分解することが可能となる。
【0013】
また、連結された複数のバスケットは、底面に多数の通気孔を形成しておくことが好ましい。これにより、底面に設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出をいっそう促進することができる。
なお、連結された複数のバスケットうち、最下段に位置するバスケットには、挿入した被処理物の落下防止のために、底面に多数の通気孔を設けないでおくこともできる。
【0014】
一方、バスケットは、カートリッジの内周と対向する周壁を、金属製の網材で構成してもよい。この場合も、乾溜釜の内壁と、その内部に収納されたカートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱がバスケットを構成する網材の隙間から内部へ侵入する構成とする。
【0015】
このように構成すれば、バスケットを構成する網材の隙間からその内部へと直接輻射熱を侵入させることができ、バスネット内に挿入した被処理物をかかる輻射熱をもって加熱することができる。
【0016】
ここで、各バスケットは、連結部が着脱自在とし、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能な構成とすれば、各バスケットへの被処理物の挿入作業が容易となる。
【0017】
また、乾溜釜は、側壁上部に煙突を連通させるとともに、当該側壁上部に排ガス導出部を設けた構成とすることが好ましい。排ガス導出部は、乾溜釜内を内壁に沿って流動している熱風を煙突の連通口へと導く斜面を周方向に形成する構成とし、これにより、排ガスが滞留することなく円滑に煙突へと導かれ排出されていく。
【0018】
さらに、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体の頂部には、カートリッジ内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再びカートリッジ内に戻す補助凝縮装置を設けることもできる。
【0019】
このように構成すれば、乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分をカートリッジ内に戻して再加熱し、燃料となる油分に分解してガス化することができ、燃料の抽出効率を向上させることができる。
【0020】
また、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路を連通するとともに、カートリッジ内に蒸気を供給する蒸気供給手段を設けた構成とすることもできる。
【0021】
被処理物の熱分解処理が終了した後、カートリッジの蓋を開いてバスケットを取り出すが、このときカートリッジ内に乾溜ガスが残存していると、空気に触れた瞬間に乾溜ガスが発火するおそれがある。本発明によれば、蓋を開く前に蒸気供給手段によってカートリッジ内に蒸気を供給することで、蒸気の供給圧力をもってカートリッジ内に残存する乾溜ガスを押し出すことができる。
【0022】
ここで、各バスケットの内部に筒状体を複数本設け、そのうちの一本により各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成するとともに、蒸気供給手段が、当該貫通路を抜けてカートリッジの下部へ蒸気を供給する構成とすれば、カートリッジの下部から供給された蒸気によって、内部に残存する乾溜ガスを上方へと追いやり、蓋体に連通する乾溜ガス排出路から効率的に排出することができる。
【0023】
また、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、カートリッジ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を設けた構成とすることが好ましい。
供給する不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスを利用することができる。
【0024】
被処理物の熱分解処理が終了したカートリッジは、冷却した後に蓋を開放するが、冷却に際してカートリッジ内部が減圧されることが確認されている。カートリッジの内部が減圧されると、蓋の開放が困難になるばかりか、冷却途中にカートリッジと蓋の境界部分から空気が進入する可能性がある。そして、カートリッジ内に乾溜ガスが残存していた場合は、空気の進入により乾溜ガスが発火するおそれがある。
そこで、カートリッジ内に不活性ガスを供給することで、内部が減圧状態になることをを防止し、冷却途中における空気の進入を阻止するとともに、冷却後に蓋を容易に開放することができる。
【0025】
ここで、各バスケットの内部に筒状体を複数本設け、そのうちの一本により各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成するとともに、不活性ガス供給手段が、当該貫通路を抜けてカートリッジの下部へ不活性ガスを供給する構成とすれば、カートリッジの下部から供給された不活性ガスによって、内部に残存する乾溜ガスを上方へと追いやり、蓋体に連通する乾溜ガス排出路から効率的に排出することができる。
【0026】
また、乾溜油化システムに係る本発明は、上述した構成の乾溜装置と、この乾溜装置から排出されてきた乾溜ガスを冷却して当該乾溜ガスに含まれる油分を液化する主凝縮装置と、この主凝縮装置で液化した油分を蒸留して分離する蒸留装置と、主凝縮装置で液化されない油分を含む当該凝縮装置からの残渣ガスを再燃焼するための燃焼炉と、を備え、
燃焼炉内に生じる熱風を乾溜釜の内部へ送り、当該熱風により乾溜釜の内部を加熱する構成としたことを特徴とする。
【0027】
このように構成すれば、乾溜装置内で発生した乾溜ガスから油分を抽出して、再び燃料としてリサイクルできるとともに、最後に残った残渣ガスは燃焼炉で再燃焼させるので、安全な環境保全を実現することができる。しかも、燃焼炉内に発生する熱風を乾溜釜の加熱に利用することで、リサイクル効率をいっそう高め、省資源化に貢献することができる。
【0028】
なお、乾溜釜は、燃焼炉から送られてきた熱風とは別に、当該乾溜釜に設けたバーナーの燃焼をもって内部を加熱する構成としてもよい。これにより、被処理物の乾溜処理に十分な加熱温度を安定して確保することができる。
【0029】
この場合、さらに主凝縮装置で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器を備え、当該遠心分離器により異物が除去された油分をバーナーの燃料として利用する構成を付加することもできる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、複数個に分かれた籠状のバスケット内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙を設けて各バスケットを連結しカートリッジに収納するので、カートリッジ内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保され、その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る乾溜油化システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る乾溜装置の構成を拡大して示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る乾溜装置を分解して示す正面断面図である。
【図4】バスケットの構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】バスケットの構成例を示す斜視図である。
【図6】バスケットの連結部を拡大して示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を示す図である。
【図8】乾溜処理後に残った被処理物から活性炭を製造する工程を示す図である。
【図9】バスケットの他の構成例を、図5に対応させて示す斜視図である。
【図10】バスケットの他の構成例を、図4に対応させて示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図11】本発明に係る乾溜装置の他の構成例を、図2に対応させて示す正面断面図である。
【図12】本発明に係る乾溜油化システムの他の構成例を、図1に対応させて示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る乾溜油化システムの全体構成を示す構成図である。
同図に示すように、本実施形態の乾溜油化システムは、乾溜装置1と、この乾溜装置1から排出されてきた乾溜ガスを液化する主凝縮装置2と、液化された乾溜ガスを蒸留して3種類の油分を抽出する蒸留装置3と、この蒸留装置3から排出される残渣ガスを再燃焼するための燃焼炉4と、を備えている。
これら乾溜油化システムを構成する各装置は、図示しない制御室に施設された制御装置によって、集中制御されている。
【0033】
図2は、乾溜装置の構成を拡大して示す正面断面図、図3は乾溜装置を分解して示す正面断面図である。
乾溜装置1は、乾溜釜10と、カートリッジ20と、蓋体30と、バスケット40と、を備えている。すなわち、乾溜装置1は、上面が開口したカートリッジ20の内部に、被処理物を挿入したバスケット40を収納した後、当該カートリッジ20の上面開口部を蓋体30にて閉塞するとともに、当該カートリッジ20を乾溜釜10の内部へ収納し、当該乾溜釜10内でカートリッジ20に挿入した被処理物を加熱して乾溜処理する構成となっている。
【0034】
乾溜釜10は、下部に燃焼室11が形成されているとともに、上部が加熱室12を形成している。燃焼室11と加熱室12の間には仕切壁13が設けてある。仕切壁13には、複数の連通孔13aが形成してあり、燃焼室11内の熱風がこれら連通孔13aを通して加熱室12へ送られる。
【0035】
図1に示すように、燃焼室11には、後述する燃焼炉4からの熱風がダクト5を通して供給される。さらに、燃焼室11の側壁にはバーナー11aが設置してあり、適宜このバーナー11aからオイルを噴射して当該オイルを燃焼させ、燃焼室11内の温度を所望の温度まで上昇させることができるようになっている。
【0036】
図3に示すように、加熱室12は、側壁を耐熱レンガで形成してあり、上面が開口している。この開口部からカートリッジ20が挿入される。ここで、加熱室12の内壁とカートリッジ20の周壁との間には隙間が形成され(図2参照)、この隙間を燃焼室11からの熱風が流動してカートリッジ20が加熱される。
図2に示すように、加熱室12の側壁上部には、煙突14が連通している。さらに、加熱室12の側壁上部には、排ガス導出部12aが設けてある。排ガス導出部12aは、加熱室12の内壁に沿って流動している熱風を、煙突14の連通口へと導く斜面を周方向に形成した構成となっている。
これにより、排ガスが加熱室12の隙間内に滞留することなく円滑に煙突14へと導かれ排出されるため、均一で効率的な加熱が可能となる。
【0037】
図3に示すように、カートリッジ20は、上面が開口した有底円筒状の容器であり、耐熱性を有するステンレス等の金属板で形成してある。カートリッジ20の底部には外面から内側へ向かって凹部20aが形成してある。この凹部20aは、カートリッジ20の表面積を増加させるためのもので、燃焼室11から送られてきた熱風の接触面積を拡大し、カートリッジ20を効率的に加熱する機能を有している。
【0038】
カートリッジ20の内部には、上面の開口部からバスケット40が収納される。図2に示すように、カートリッジ20の内面下部には、バスケット40を支持するための複数の支持突起21が突き出している。バスケット40は、これら支持突起21の上に載置される。カートリッジ20の上面開口部は、蓋体30により閉塞される。
【0039】
カートリッジ20の内部に収納されたバスケット40には、被処理物が挿入される。その被処理物は、カートリッジ20からの輻射熱をもって加熱される。被処理物としては、廃プラスチックや、廃タイヤなどがあり、これらをカートリッジ20内部で加熱することで乾溜して、油分を含む乾溜ガスを発生させる。
【0040】
蓋体30には、温度圧力調整部31を介して乾溜ガス排出ダクト32(乾溜ガス排出路)が接続してあり、カートリッジ20の内部で発生した乾溜ガスは、この乾溜ガス排出ダクト32を通して主凝縮装置2へ送られる(図1参照)。
【0041】
乾溜ガス排出ダクト32には、中間部にゲートバルブ33が設置してあり、このゲートバルブ33の下流側は切り離し自在となっている。すなわち、本実施形態の乾溜釜10は、カートリッジ20と蓋体30とを一体に吊り上げて乾溜釜10から取り出し可能となっている。取り出しに際しては、ゲートバルブ33を閉めてその下流箇所を切り離し、乾溜ガス排出ダクト32の一部を蓋体30と一体に搬送する。
【0042】
図には示されていないが、乾溜釜10の近くには、準備と後処理を行うための処理ステーションが設けてあり、乾溜処理済みの被処理物が入ったカートリッジ20は、この処理ステーションまで搬送される。処理ステーションでは、カートリッジ20の内部にあるバスケット40を取り出す作業が行われる。また、処理前の被処理物が挿入されたバスケット40をカートリッジ20内に挿入して蓋体30を装着する準備作業もこの処理ステーションで行われる。
【0043】
一つの乾溜釜10に対して、カートリッジ20、蓋体30、バスケット40を含むユニットを複数用意しておき、処理ステーションでの準備作業や後処理作業と並行して、乾溜釜10での被処理物の乾溜処理を実行することで、作業の効率化を図ることができる。
【0044】
蓋体30の上面中央部にはパイプ差込部34が設けてある。このパイプ差込部34には、耐熱性を有する金属管で構成された供給パイプ35が挿脱自在に装着できる構造となっている。パイプ差込部34に装着した供給パイプ35の先端開口は、カートリッジ20内の底部付近に配置される。この供給パイプ35の基端開口には、配管36を介して図示しない蒸気供給源および窒素供給源が接続される。すなわち、供給パイプ35は、カートリッジ20の内部に蒸気を供給するための蒸気供給手段と、不活性ガス(窒素)を供給するための不活性ガス供給手段を構成している。
【0045】
被処理物の乾溜処理が終了した後、カーリッジ内を冷却するが、当該冷却工程に先立って、パイプ差込部34に装着した供給パイプ35を介して蒸気供給源からの蒸気をカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内に残留する乾溜ガスを蒸気により押し出すことができる。
続いて、カートリッジ20内の冷却工程においては、供給パイプ35を介して窒素供給源からの窒素ガスをカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内の冷却に伴う減圧が緩和され、カートリッジ20の変形や、蓋体30とカートリッジ20の境界部分からの空気の流入が防止される。ちなみに、カートリッジ20内に乾溜ガスが残存する状態で、内部に空気が流入すると、乾溜ガスが勢いよく発火するおそれがある。
【0046】
乾溜釜10には、適所に計器類が設けてあり、それら計器類からの情報は、制御室(図示せず)に送られて集中管理されている。例えば、図2に示すように、蓋体30には、カートリッジ20の内部圧力を測定する圧力計37aと、カートリッジ20の内部温度を測定する熱電対37bとが設けられている。また、供給パイプ35の基端(蓋体30から露出する端部)には、カートリッジ20内の温度を測定するための温度センサ37cが設けてある。さらに、乾溜釜10の燃焼室11には、同室の内部温度を測定するための熱電対15aを設置することが好ましく、加えて乾溜釜10の加熱室12にも、同室の内部温度を測定するための熱電対15bを設置することが好ましい。
【0047】
図4乃至図6は、バスケット40の構成例を示す図である。
バスケット40は、図4(b)に示すように、複数個(図では3個)が上下方向に連結した状態でカートリッジ20に収納される。ここで、各バスケット40の間には間隙Hが形成されている。このように、複数個に分かれた各バスケット40内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙Hを設けて各バスケット40を連結し、カートリッジ20に収納するので、カートリッジ20内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0048】
バスケット40は、連結部41が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっている。このため、各バスケット40への被処理物の挿入作業が容易となる。連結部41は、例えば、図6に示すようにリング部材41aで締結され、カンヌキ41bにより締結状態が保持される構成となっている。
【0049】
各々のバスケット40は、図4および図5に示すように、上面が開口した有底円筒形の籠状をしており、その周壁40aは良好な熱伝導性を有する金属板で形成してある。この周壁40aがカートリッジ20の内壁と対向し、カートリッジ20からの輻射熱がこの周壁40aに伝えられる。
【0050】
バスケット40の底面40bは、連結したとき最下段に配置されるものを除いて、多数の通気孔を有する網状に形成されている(図4(a)参照)。これにより、底面40bに設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出を促進することができる。
一方、連結したとき最下段に配置されるバスケット40は、底面40bを、周壁40aと同様に良好な熱伝導性を有する金属板で形成してあり、多数の通気孔が形成されていない。バスケット40の内部には、被処理物が挿入されるが、最下段のバスケット40の底面40bに通気孔を設けないことにより、内部に挿入した被処理物の落下を当該底面40bでくい止めることができる。
なお、必要に応じて、最下段のバスケット40も、底面40bを多数の通気孔を有する網状に形成してもよい。
【0051】
各バスケット40の内側には、底面40bから上方へ延出するように複数本の筒状体42,43が設けてある。これらの各筒状体42,43は、周面が多数の通気孔を有する網状に形成され、内側は乾溜ガスの流動経路を形成している。すなわち、被処理物から発生した乾溜ガスの多くは、通気孔を通して筒状体42,43の内側にある中空部(流動経路)へ導かれ、この中空部を上方に向かって流動し、カートリッジ20の蓋体30に接続された乾溜ガス排出ダクト32から排出される。
各バスケット40の筒状体42,43は、同一軸上に配置して、乾溜ガスが直線的に上方へ流動できるようにすることが好ましい。各バスケット40の筒状体42,43の間には底面40bが存在するが、底面40bにも多数の通気孔が形成してあるので、乾溜ガスは、当該底面40bの通気孔を通過して速やかに上方にある筒状体42,43へと流動することができる。
【0052】
ここで、各バスケット40に設けた複数の筒状体のうち一本(43)は、各バスケット40を上下方向に貫通する貫通路を形成している。すなわち、各バスケット40の当該筒状体43は、同一軸上に配置されており、当該筒状体43の下端が当接する底面40b部分には貫通孔が形成されている。
このように筒状体43によって形成される貫通路に、既述した供給パイプ35が挿入されて、当該供給パイプ35の先端開口がカートリッジ20の底部付近に配置される。
【0053】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を説明する。
図7は、本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を示す図である。
まず、廃タイヤや廃プラスチック等の被処理物Aを適宜の大きさに裁断してバスケット40の内部へ挿入する(被処理物挿入工程)。次に、被処理物Aを挿入したバスケット40を、カートリッジ20の内部へ収納し、蓋体30によってカートリッジ20の上面開口部を閉塞する(バスケット収納工程)。続いて、カートリッジ20を乾溜釜10に収納するとともに、バルブ33に乾溜ガス排出ダクト32を接続する等、乾溜釜10の運転に必要なセッティングを行う。
【0054】
必要なセッティングが完了した後、乾溜釜10を加熱して被処理物を熱分解し、乾溜ガスを発生させる乾溜工程を実施する。本実施形態に係る乾溜油化システムには、重質油、軽質油、塔頂油をそれぞれ貯留するタンク6a、6b、6cが設置してあり、まずは軽質油をタンク6aから燃焼炉4のバーナーへ供給し、軽質油を燃焼炉4内で燃焼させて熱風を発生させる。このようにして燃焼炉4内に発生した熱風は、ダクト5を介して乾溜釜10の燃焼室11へ送られる。また、燃焼炉4から送られてきた熱風だけでは熱量が不足するときは、乾溜釜10の燃焼室11に設けたバーナー11aにも軽質油を供給し、燃焼室11内で軽質油を燃焼させて、所望の熱量を確保する。
【0055】
乾溜釜10の内部が加熱され、加熱室12に収容したカートリッジ20内の被処理物が熱分解すると、被処理物から油分を含んだ乾溜ガスが発生する。この乾溜ガスは乾溜ガス排出ダクト32を通して主凝縮装置2に搬送される。主凝縮装置2では、乾溜ガスを冷却して液化する。液化した乾溜ガスは凝縮油槽7に一時貯留される。
また、液化されずに残った残渣ガス(オフガスと称する)は、燃焼炉4に搬送され、ここで再燃焼される。この残渣ガスの燃焼により発生した熱風は、ダクト5を通して乾溜釜10の燃焼室11へ送られる。このように、燃焼炉4で残渣ガスを再燃焼させた際に発生する熱風を乾溜釜10の加熱に利用することで、リサイクル効率が向上する。
【0056】
続いて、液化した乾溜ガスは蒸留装置3に送られて、ここで蒸留され重質油、軽質油、塔頂油に分けられる。分留した各油は、それぞれ別個のタンク6a、6b、6cに貯留される。溜まった軽質油は燃焼炉4や乾溜釜10の燃焼に利用される。塔頂油も燃焼室11を加熱する燃料として利用される。また、重質油は、乾溜後の被処理物を炭製品に返還する際に用いる炭化炉やキルン式焼成炉を加熱する燃料として用いられるとともに、余りは他の用途に利用したり、販売したりしてリサイクルされる。
【0057】
燃焼炉4や乾溜釜10から出る排ガスは、煙突14に送られて戸外へ排気される。かかる排ガスは燃焼後の気体であるため、残留油分がきわめて少ない。
【0058】
被処理物の乾溜処理が終了した後、パイプ差込部34に装着した供給パイプ35を介して蒸気供給源からの蒸気をカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内に残留する乾溜ガスを蒸気により押し出すことができる。
続いて、カートリッジ20内を冷却する。このとき、供給パイプ35を介して窒素供給源からの窒素ガスをカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内の冷却に伴う減圧が緩和され、カートリッジ20の変形や、蓋体30とカートリッジ20の境界部分からの空気の流入が防止される。
【0059】
乾溜処理後に残った被処理物は、さらに破砕、焼成して炭製品に返還してリサイクルする。
図8は、乾溜処理後に残った被処理物から活性炭を製造する工程を示す図である。同図を参照して、活性炭の製造工程を説明する。
乾溜処理後に残った被処理物Bは、バスケット40から取り出し、磁選解砕機100にかけて破砕する。続いて、破砕した被処理物Bは、篩機200でふるいにかけた後、再度、篩機200に内蔵した磁選解砕機100aにかけて破砕する。このようにして細かく破砕された被処理物Bは、キルン式焼成炉300にて焼成されて、多孔質の活性炭Cとなる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0061】
図9及び図10は、バスケットの他の構成例を示す図である。
図9及び図10に示すバスケット50も、図10(b)に示すように、複数個(図では2個)が上下方向に連結した状態でカートリッジ20に収納される。ここで、各バスケット50の間には間隙Hが形成されている。このように、複数個に分かれた各バスケット50内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙Hを設けて各バスケット50を連結し、カートリッジ20に収納するので、カートリッジ20内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0062】
バスケット50も、連結部41が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっている。このため、各バスケット50への被処理物の挿入作業が容易となる。連結部41の構成は、先に示したバスケット40(図4及び図5)と同じく、例えば、図6に示すようにリング部材41aで締結され、カンヌキ41bにより締結状態が保持される構成となっている。よって、バスケット40と50とを組み合わせて上下に連結することも可能である。
【0063】
各々のバスケット50は、上面が開口した有底円筒形の籠状をしており、その周壁50aは耐熱性を有する金属製の網材で形成してある。この周壁50aがカートリッジ20の内壁と対向し、カートリッジ20からの輻射熱がこの周壁50aを構成する網材を透して、バスケット50の内部へ侵入する。
【0064】
バスケット50の底面50bは、多数の通気孔を有する網状に形成されている(図10(a)参照)。これにより、底面50bに設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出を促進することができる。なお、底面50bの中央部には、供給パイプ35を挿通するための透孔50cが設けてある。
【0065】
かかる構成のバスケット50は、例えば、ゴムクローラーや防舷材など、破断しにくい大寸法の被処理物の挿入に好適である。周知のとおり、ゴムクローラーは芯金と補強帯をエンドレスにゴムで包んだ履帯であり、大形特殊車両に用いられている。また、防舷材は船体と岸壁が直接接触して損傷しないようにするためのゴム製緩衝材である。これらの被処理物は、大形でしかも金属部材を内包しているため、切断作業がきわめて困難である。そこで、この種の被処理物は、裁断せずにそのままバスケット50に挿入して、カートリッジ20内へ搬送する。
【0066】
大寸法の被処理物をそのまま挿入した状態にあっては、バスケット50の内部は隙間が多く、バスケット50の網目から侵入してきた輻射熱が直接被処理物の表面に当たって、被処理物を加熱する。また、ゴムクローラーや防舷材に内包された金属部材が加熱されて、その熱がゴム材に伝わることで加熱が促進される。このように、バスケット50を用いれば、大寸法の被処理物に対し煩雑な切断作業を省略して、作業性の向上を図ることができる。
【0067】
図11は、本発明に係る乾溜装置の他の構成例を示す正面断面図である。
同図に示す乾溜装置は、蓋体30の頂部に補助凝縮装置60を備えている。補助凝縮装置60は、カートリッジ20内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再びカートリッジ20内に戻す機能を有している。
ゴム材等の被処理物を加熱して得られる乾溜ガスには、軽質油、塔頂油といった燃料となる油分のほかに、パラフィン系炭化水素が含有されていることがある。このパラフィン系炭化水素は、軽質油や塔頂油となる油分よりも高い温度(例えば、250〜300℃)で液化する。
補助凝縮装置60では、カートリッジ20から上昇してきた乾溜ガスを補足し、適性温度(例えば、パラフィン系炭化水素が液化する温度)に保持する。補助凝縮装置60で液化されたパラフィン系炭化水素は、再びカートリッジ20内に滴下し、再加熱される。再加熱により、パラフィン系炭化水素は、軽質油、塔頂油といった燃料となる油分に分解してガス化される。このため、燃料の抽出効率を向上させることができる。
【0068】
なお、補助凝縮装置60で液化されない乾溜ガスは、乾溜ガス排出ダクト32を介して主凝縮装置2(図1参照)へ送られる。
【0069】
図12は、本発明に係る乾溜油化システムの他の構成例を示す図である。
同図に示す乾溜油化システムは、主凝縮装置2で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器70を備えている。この遠心分離器70により異物が除去された油分は、中継タンク71を経由して貯留タンク72に保存され、乾溜釜10の燃焼室11を加熱するバーナー11aの燃料として利用される。この構成によって、燃焼室11の燃焼効率をいっそう向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1:乾溜装置、2:主凝縮装置、3:蒸留装置、4:燃焼炉、5:ダクト、6a:重質油タンク、6b:軽質油タンク、6c:塔頂油タンク、7:凝縮油槽、
10:乾溜釜、11:燃焼室、11a:バーナー、12:加熱室、12a:排ガス導出部、13:仕切壁、13a:連通孔、14:煙突、15a,15b:熱電対、
20:カートリッジ、20a:凹部、21:支持突起、
30:蓋体、31:温度圧力調整部、32:乾溜ガス排出ダクト、33:バルブ、34:パイプ差込部、35:供給パイプ、36:配管、37a:圧力計、37b:熱電対、37c:温度センサ、
40:バスケット、40a:周壁、40b:底面、41:連結部、41a:リング部材、41b:カンヌキ、42,43:筒状体、
50:バスケット、50a:周壁、50b:底面、50c:透孔
60:補助凝縮装置、70:遠心分離器、71:中継タンク、72:貯留タンク、
100:磁選解砕機、200:篩機、300:キルン式焼成炉、
A:乾溜前の被処理物、B:乾溜後の被処理物、C:活性炭
H:間隙
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃タイヤゴムや廃プラスチックなどの被処理物を加熱分解して、油分を含む乾溜ガスを取り出す乾溜装置、および当該乾溜ガスから重質油、軽質油、塔頂油を分離抽出する装置構造を含む乾溜油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乾溜装置としては、特許文献1および特許文献2に開示された構成のものがある。
特許文献1には、被処理物を密封した容器を加熱し、被処理物の熱分解により高温の乾溜ガスを発生させる熱分解炉が開示されており、これが乾溜装置に相当する。廃タイヤなどの被処理物は容器内に投入され、この容器ごと熱分解炉の中空部内に収容配置される。熱分解炉は容器を周囲から加熱し、これにより容器内の被処理物が熱分解されて、油分を含んだ乾溜ガスが発生する。乾溜ガスは、容器の蓋に接続した連通パイプを通して一次冷却器に運ばれ、比重の違う油分に分離して抽出される。
特許文献2にも、同様に構成をした乾溜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−277767号公報
【特許文献2】特開2003−286490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、各特許文献に開示された乾溜装置は、熱分解炉と別体の容器を備えており、この容器を熱分解炉から取り出し、炉外で容器に被処理物を挿入した後、熱分解炉内に収容する構成となっていたので、例えば、複数の容器を用意しておき、熱分解炉に収容した容器内の被処理物に対する熱分解処理と並行して、他の容器に対する被処理物の挿入作業を実行し、逐次容器を交換して熱分解炉へ収容することができる。そのため、作業効率が高く生産性が向上するという利点を有している。
【0005】
しかし、廃タイヤなどの被処理物は、チップ状にして容器内に高密度に充填されるため、容器の周囲から放射される輻射熱が被処理物へ均等に伝わらず、容器の内壁近くにある被処理物に比べ、内部側にある被処理物が熱分解されにくい。このため、部分的に油分が分解しきれず生焼き状態の被処理物が残存してしまうおそれがあった。
また、被処理物から発生した乾溜ガスの容器内における流動性も悪く、乾溜ガスを円滑に容器外へ排出することができず、熱分解処理の作業工程が終了した後も、容器内に多量の乾溜ガスが残存し、その除去作業に長時間を要するおそれもあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、被処理物を均一かつ効率的に熱分解できるとともに、発生した乾溜ガスを円滑に外部へ排出することのできる乾溜装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の乾溜装置は、上面が開口しており当該上面開口から被処理物が挿入されるとともに、複数個が上下方向に連結されるバスケットと、
上面に開口部を有し、被処理物が挿入され且つ上下方向に連結された複数個のバスケットが当該上面開口部から収納されるカートリッジと、
カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体と、
カートリッジを収納して加熱し、当該カートリッジ内に収納された被処理物を乾溜処理する乾溜釜と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
被処理物は、まずバスケットに挿入され、その後、複数個のバスケットを上下に連結した状態でカートリッジに挿入することで、被処理物のカートリッジ内への挿入作業が容易になり、また乾溜処理後にバスケット内に残存する炭化物も取り出しやすくなって、作業性が向上する。
【0009】
ここで、上下方向に連結された各バスケットの間には間隙を形成することが好ましい。さらに、各バスケットの内部には、乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体を底面から上方に延出して設けるとともに、当該筒状体の周面には多数の通気孔を形成することが好ましい。
【0010】
このように構成すれば、カートリッジ内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。さらに、バスケットの内部に設けた筒状体も、周面に多数の通気孔が形成されているため、熱や乾溜ガスの流動を促進する。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0011】
各バスケットは、カートリッジの内周と対向する周壁が、熱伝導性を有する金属板で構成されていることが好ましい。この場合、乾溜釜の内壁と、その内部に収納されたカートリッジの周壁との間には隙間を形成しておき、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱がバスケットに伝えられる構成とする。
【0012】
これにより、カートリッジからの輻射熱によってバスケットが効率よく加熱されて、内部に挿入した被処理物を速やかに熱分解することが可能となる。
【0013】
また、連結された複数のバスケットは、底面に多数の通気孔を形成しておくことが好ましい。これにより、底面に設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出をいっそう促進することができる。
なお、連結された複数のバスケットうち、最下段に位置するバスケットには、挿入した被処理物の落下防止のために、底面に多数の通気孔を設けないでおくこともできる。
【0014】
一方、バスケットは、カートリッジの内周と対向する周壁を、金属製の網材で構成してもよい。この場合も、乾溜釜の内壁と、その内部に収納されたカートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱がバスケットを構成する網材の隙間から内部へ侵入する構成とする。
【0015】
このように構成すれば、バスケットを構成する網材の隙間からその内部へと直接輻射熱を侵入させることができ、バスネット内に挿入した被処理物をかかる輻射熱をもって加熱することができる。
【0016】
ここで、各バスケットは、連結部が着脱自在とし、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能な構成とすれば、各バスケットへの被処理物の挿入作業が容易となる。
【0017】
また、乾溜釜は、側壁上部に煙突を連通させるとともに、当該側壁上部に排ガス導出部を設けた構成とすることが好ましい。排ガス導出部は、乾溜釜内を内壁に沿って流動している熱風を煙突の連通口へと導く斜面を周方向に形成する構成とし、これにより、排ガスが滞留することなく円滑に煙突へと導かれ排出されていく。
【0018】
さらに、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体の頂部には、カートリッジ内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再びカートリッジ内に戻す補助凝縮装置を設けることもできる。
【0019】
このように構成すれば、乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分をカートリッジ内に戻して再加熱し、燃料となる油分に分解してガス化することができ、燃料の抽出効率を向上させることができる。
【0020】
また、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路を連通するとともに、カートリッジ内に蒸気を供給する蒸気供給手段を設けた構成とすることもできる。
【0021】
被処理物の熱分解処理が終了した後、カートリッジの蓋を開いてバスケットを取り出すが、このときカートリッジ内に乾溜ガスが残存していると、空気に触れた瞬間に乾溜ガスが発火するおそれがある。本発明によれば、蓋を開く前に蒸気供給手段によってカートリッジ内に蒸気を供給することで、蒸気の供給圧力をもってカートリッジ内に残存する乾溜ガスを押し出すことができる。
【0022】
ここで、各バスケットの内部に筒状体を複数本設け、そのうちの一本により各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成するとともに、蒸気供給手段が、当該貫通路を抜けてカートリッジの下部へ蒸気を供給する構成とすれば、カートリッジの下部から供給された蒸気によって、内部に残存する乾溜ガスを上方へと追いやり、蓋体に連通する乾溜ガス排出路から効率的に排出することができる。
【0023】
また、カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、カートリッジ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を設けた構成とすることが好ましい。
供給する不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスを利用することができる。
【0024】
被処理物の熱分解処理が終了したカートリッジは、冷却した後に蓋を開放するが、冷却に際してカートリッジ内部が減圧されることが確認されている。カートリッジの内部が減圧されると、蓋の開放が困難になるばかりか、冷却途中にカートリッジと蓋の境界部分から空気が進入する可能性がある。そして、カートリッジ内に乾溜ガスが残存していた場合は、空気の進入により乾溜ガスが発火するおそれがある。
そこで、カートリッジ内に不活性ガスを供給することで、内部が減圧状態になることをを防止し、冷却途中における空気の進入を阻止するとともに、冷却後に蓋を容易に開放することができる。
【0025】
ここで、各バスケットの内部に筒状体を複数本設け、そのうちの一本により各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成するとともに、不活性ガス供給手段が、当該貫通路を抜けてカートリッジの下部へ不活性ガスを供給する構成とすれば、カートリッジの下部から供給された不活性ガスによって、内部に残存する乾溜ガスを上方へと追いやり、蓋体に連通する乾溜ガス排出路から効率的に排出することができる。
【0026】
また、乾溜油化システムに係る本発明は、上述した構成の乾溜装置と、この乾溜装置から排出されてきた乾溜ガスを冷却して当該乾溜ガスに含まれる油分を液化する主凝縮装置と、この主凝縮装置で液化した油分を蒸留して分離する蒸留装置と、主凝縮装置で液化されない油分を含む当該凝縮装置からの残渣ガスを再燃焼するための燃焼炉と、を備え、
燃焼炉内に生じる熱風を乾溜釜の内部へ送り、当該熱風により乾溜釜の内部を加熱する構成としたことを特徴とする。
【0027】
このように構成すれば、乾溜装置内で発生した乾溜ガスから油分を抽出して、再び燃料としてリサイクルできるとともに、最後に残った残渣ガスは燃焼炉で再燃焼させるので、安全な環境保全を実現することができる。しかも、燃焼炉内に発生する熱風を乾溜釜の加熱に利用することで、リサイクル効率をいっそう高め、省資源化に貢献することができる。
【0028】
なお、乾溜釜は、燃焼炉から送られてきた熱風とは別に、当該乾溜釜に設けたバーナーの燃焼をもって内部を加熱する構成としてもよい。これにより、被処理物の乾溜処理に十分な加熱温度を安定して確保することができる。
【0029】
この場合、さらに主凝縮装置で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器を備え、当該遠心分離器により異物が除去された油分をバーナーの燃料として利用する構成を付加することもできる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、複数個に分かれた籠状のバスケット内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙を設けて各バスケットを連結しカートリッジに収納するので、カートリッジ内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保され、その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る乾溜油化システムの全体構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る乾溜装置の構成を拡大して示す正面断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る乾溜装置を分解して示す正面断面図である。
【図4】バスケットの構成例を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図5】バスケットの構成例を示す斜視図である。
【図6】バスケットの連結部を拡大して示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を示す図である。
【図8】乾溜処理後に残った被処理物から活性炭を製造する工程を示す図である。
【図9】バスケットの他の構成例を、図5に対応させて示す斜視図である。
【図10】バスケットの他の構成例を、図4に対応させて示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図である。
【図11】本発明に係る乾溜装置の他の構成例を、図2に対応させて示す正面断面図である。
【図12】本発明に係る乾溜油化システムの他の構成例を、図1に対応させて示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る乾溜油化システムの全体構成を示す構成図である。
同図に示すように、本実施形態の乾溜油化システムは、乾溜装置1と、この乾溜装置1から排出されてきた乾溜ガスを液化する主凝縮装置2と、液化された乾溜ガスを蒸留して3種類の油分を抽出する蒸留装置3と、この蒸留装置3から排出される残渣ガスを再燃焼するための燃焼炉4と、を備えている。
これら乾溜油化システムを構成する各装置は、図示しない制御室に施設された制御装置によって、集中制御されている。
【0033】
図2は、乾溜装置の構成を拡大して示す正面断面図、図3は乾溜装置を分解して示す正面断面図である。
乾溜装置1は、乾溜釜10と、カートリッジ20と、蓋体30と、バスケット40と、を備えている。すなわち、乾溜装置1は、上面が開口したカートリッジ20の内部に、被処理物を挿入したバスケット40を収納した後、当該カートリッジ20の上面開口部を蓋体30にて閉塞するとともに、当該カートリッジ20を乾溜釜10の内部へ収納し、当該乾溜釜10内でカートリッジ20に挿入した被処理物を加熱して乾溜処理する構成となっている。
【0034】
乾溜釜10は、下部に燃焼室11が形成されているとともに、上部が加熱室12を形成している。燃焼室11と加熱室12の間には仕切壁13が設けてある。仕切壁13には、複数の連通孔13aが形成してあり、燃焼室11内の熱風がこれら連通孔13aを通して加熱室12へ送られる。
【0035】
図1に示すように、燃焼室11には、後述する燃焼炉4からの熱風がダクト5を通して供給される。さらに、燃焼室11の側壁にはバーナー11aが設置してあり、適宜このバーナー11aからオイルを噴射して当該オイルを燃焼させ、燃焼室11内の温度を所望の温度まで上昇させることができるようになっている。
【0036】
図3に示すように、加熱室12は、側壁を耐熱レンガで形成してあり、上面が開口している。この開口部からカートリッジ20が挿入される。ここで、加熱室12の内壁とカートリッジ20の周壁との間には隙間が形成され(図2参照)、この隙間を燃焼室11からの熱風が流動してカートリッジ20が加熱される。
図2に示すように、加熱室12の側壁上部には、煙突14が連通している。さらに、加熱室12の側壁上部には、排ガス導出部12aが設けてある。排ガス導出部12aは、加熱室12の内壁に沿って流動している熱風を、煙突14の連通口へと導く斜面を周方向に形成した構成となっている。
これにより、排ガスが加熱室12の隙間内に滞留することなく円滑に煙突14へと導かれ排出されるため、均一で効率的な加熱が可能となる。
【0037】
図3に示すように、カートリッジ20は、上面が開口した有底円筒状の容器であり、耐熱性を有するステンレス等の金属板で形成してある。カートリッジ20の底部には外面から内側へ向かって凹部20aが形成してある。この凹部20aは、カートリッジ20の表面積を増加させるためのもので、燃焼室11から送られてきた熱風の接触面積を拡大し、カートリッジ20を効率的に加熱する機能を有している。
【0038】
カートリッジ20の内部には、上面の開口部からバスケット40が収納される。図2に示すように、カートリッジ20の内面下部には、バスケット40を支持するための複数の支持突起21が突き出している。バスケット40は、これら支持突起21の上に載置される。カートリッジ20の上面開口部は、蓋体30により閉塞される。
【0039】
カートリッジ20の内部に収納されたバスケット40には、被処理物が挿入される。その被処理物は、カートリッジ20からの輻射熱をもって加熱される。被処理物としては、廃プラスチックや、廃タイヤなどがあり、これらをカートリッジ20内部で加熱することで乾溜して、油分を含む乾溜ガスを発生させる。
【0040】
蓋体30には、温度圧力調整部31を介して乾溜ガス排出ダクト32(乾溜ガス排出路)が接続してあり、カートリッジ20の内部で発生した乾溜ガスは、この乾溜ガス排出ダクト32を通して主凝縮装置2へ送られる(図1参照)。
【0041】
乾溜ガス排出ダクト32には、中間部にゲートバルブ33が設置してあり、このゲートバルブ33の下流側は切り離し自在となっている。すなわち、本実施形態の乾溜釜10は、カートリッジ20と蓋体30とを一体に吊り上げて乾溜釜10から取り出し可能となっている。取り出しに際しては、ゲートバルブ33を閉めてその下流箇所を切り離し、乾溜ガス排出ダクト32の一部を蓋体30と一体に搬送する。
【0042】
図には示されていないが、乾溜釜10の近くには、準備と後処理を行うための処理ステーションが設けてあり、乾溜処理済みの被処理物が入ったカートリッジ20は、この処理ステーションまで搬送される。処理ステーションでは、カートリッジ20の内部にあるバスケット40を取り出す作業が行われる。また、処理前の被処理物が挿入されたバスケット40をカートリッジ20内に挿入して蓋体30を装着する準備作業もこの処理ステーションで行われる。
【0043】
一つの乾溜釜10に対して、カートリッジ20、蓋体30、バスケット40を含むユニットを複数用意しておき、処理ステーションでの準備作業や後処理作業と並行して、乾溜釜10での被処理物の乾溜処理を実行することで、作業の効率化を図ることができる。
【0044】
蓋体30の上面中央部にはパイプ差込部34が設けてある。このパイプ差込部34には、耐熱性を有する金属管で構成された供給パイプ35が挿脱自在に装着できる構造となっている。パイプ差込部34に装着した供給パイプ35の先端開口は、カートリッジ20内の底部付近に配置される。この供給パイプ35の基端開口には、配管36を介して図示しない蒸気供給源および窒素供給源が接続される。すなわち、供給パイプ35は、カートリッジ20の内部に蒸気を供給するための蒸気供給手段と、不活性ガス(窒素)を供給するための不活性ガス供給手段を構成している。
【0045】
被処理物の乾溜処理が終了した後、カーリッジ内を冷却するが、当該冷却工程に先立って、パイプ差込部34に装着した供給パイプ35を介して蒸気供給源からの蒸気をカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内に残留する乾溜ガスを蒸気により押し出すことができる。
続いて、カートリッジ20内の冷却工程においては、供給パイプ35を介して窒素供給源からの窒素ガスをカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内の冷却に伴う減圧が緩和され、カートリッジ20の変形や、蓋体30とカートリッジ20の境界部分からの空気の流入が防止される。ちなみに、カートリッジ20内に乾溜ガスが残存する状態で、内部に空気が流入すると、乾溜ガスが勢いよく発火するおそれがある。
【0046】
乾溜釜10には、適所に計器類が設けてあり、それら計器類からの情報は、制御室(図示せず)に送られて集中管理されている。例えば、図2に示すように、蓋体30には、カートリッジ20の内部圧力を測定する圧力計37aと、カートリッジ20の内部温度を測定する熱電対37bとが設けられている。また、供給パイプ35の基端(蓋体30から露出する端部)には、カートリッジ20内の温度を測定するための温度センサ37cが設けてある。さらに、乾溜釜10の燃焼室11には、同室の内部温度を測定するための熱電対15aを設置することが好ましく、加えて乾溜釜10の加熱室12にも、同室の内部温度を測定するための熱電対15bを設置することが好ましい。
【0047】
図4乃至図6は、バスケット40の構成例を示す図である。
バスケット40は、図4(b)に示すように、複数個(図では3個)が上下方向に連結した状態でカートリッジ20に収納される。ここで、各バスケット40の間には間隙Hが形成されている。このように、複数個に分かれた各バスケット40内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙Hを設けて各バスケット40を連結し、カートリッジ20に収納するので、カートリッジ20内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0048】
バスケット40は、連結部41が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっている。このため、各バスケット40への被処理物の挿入作業が容易となる。連結部41は、例えば、図6に示すようにリング部材41aで締結され、カンヌキ41bにより締結状態が保持される構成となっている。
【0049】
各々のバスケット40は、図4および図5に示すように、上面が開口した有底円筒形の籠状をしており、その周壁40aは良好な熱伝導性を有する金属板で形成してある。この周壁40aがカートリッジ20の内壁と対向し、カートリッジ20からの輻射熱がこの周壁40aに伝えられる。
【0050】
バスケット40の底面40bは、連結したとき最下段に配置されるものを除いて、多数の通気孔を有する網状に形成されている(図4(a)参照)。これにより、底面40bに設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出を促進することができる。
一方、連結したとき最下段に配置されるバスケット40は、底面40bを、周壁40aと同様に良好な熱伝導性を有する金属板で形成してあり、多数の通気孔が形成されていない。バスケット40の内部には、被処理物が挿入されるが、最下段のバスケット40の底面40bに通気孔を設けないことにより、内部に挿入した被処理物の落下を当該底面40bでくい止めることができる。
なお、必要に応じて、最下段のバスケット40も、底面40bを多数の通気孔を有する網状に形成してもよい。
【0051】
各バスケット40の内側には、底面40bから上方へ延出するように複数本の筒状体42,43が設けてある。これらの各筒状体42,43は、周面が多数の通気孔を有する網状に形成され、内側は乾溜ガスの流動経路を形成している。すなわち、被処理物から発生した乾溜ガスの多くは、通気孔を通して筒状体42,43の内側にある中空部(流動経路)へ導かれ、この中空部を上方に向かって流動し、カートリッジ20の蓋体30に接続された乾溜ガス排出ダクト32から排出される。
各バスケット40の筒状体42,43は、同一軸上に配置して、乾溜ガスが直線的に上方へ流動できるようにすることが好ましい。各バスケット40の筒状体42,43の間には底面40bが存在するが、底面40bにも多数の通気孔が形成してあるので、乾溜ガスは、当該底面40bの通気孔を通過して速やかに上方にある筒状体42,43へと流動することができる。
【0052】
ここで、各バスケット40に設けた複数の筒状体のうち一本(43)は、各バスケット40を上下方向に貫通する貫通路を形成している。すなわち、各バスケット40の当該筒状体43は、同一軸上に配置されており、当該筒状体43の下端が当接する底面40b部分には貫通孔が形成されている。
このように筒状体43によって形成される貫通路に、既述した供給パイプ35が挿入されて、当該供給パイプ35の先端開口がカートリッジ20の底部付近に配置される。
【0053】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を説明する。
図7は、本実施形態に係る乾溜油化システムの動作を示す図である。
まず、廃タイヤや廃プラスチック等の被処理物Aを適宜の大きさに裁断してバスケット40の内部へ挿入する(被処理物挿入工程)。次に、被処理物Aを挿入したバスケット40を、カートリッジ20の内部へ収納し、蓋体30によってカートリッジ20の上面開口部を閉塞する(バスケット収納工程)。続いて、カートリッジ20を乾溜釜10に収納するとともに、バルブ33に乾溜ガス排出ダクト32を接続する等、乾溜釜10の運転に必要なセッティングを行う。
【0054】
必要なセッティングが完了した後、乾溜釜10を加熱して被処理物を熱分解し、乾溜ガスを発生させる乾溜工程を実施する。本実施形態に係る乾溜油化システムには、重質油、軽質油、塔頂油をそれぞれ貯留するタンク6a、6b、6cが設置してあり、まずは軽質油をタンク6aから燃焼炉4のバーナーへ供給し、軽質油を燃焼炉4内で燃焼させて熱風を発生させる。このようにして燃焼炉4内に発生した熱風は、ダクト5を介して乾溜釜10の燃焼室11へ送られる。また、燃焼炉4から送られてきた熱風だけでは熱量が不足するときは、乾溜釜10の燃焼室11に設けたバーナー11aにも軽質油を供給し、燃焼室11内で軽質油を燃焼させて、所望の熱量を確保する。
【0055】
乾溜釜10の内部が加熱され、加熱室12に収容したカートリッジ20内の被処理物が熱分解すると、被処理物から油分を含んだ乾溜ガスが発生する。この乾溜ガスは乾溜ガス排出ダクト32を通して主凝縮装置2に搬送される。主凝縮装置2では、乾溜ガスを冷却して液化する。液化した乾溜ガスは凝縮油槽7に一時貯留される。
また、液化されずに残った残渣ガス(オフガスと称する)は、燃焼炉4に搬送され、ここで再燃焼される。この残渣ガスの燃焼により発生した熱風は、ダクト5を通して乾溜釜10の燃焼室11へ送られる。このように、燃焼炉4で残渣ガスを再燃焼させた際に発生する熱風を乾溜釜10の加熱に利用することで、リサイクル効率が向上する。
【0056】
続いて、液化した乾溜ガスは蒸留装置3に送られて、ここで蒸留され重質油、軽質油、塔頂油に分けられる。分留した各油は、それぞれ別個のタンク6a、6b、6cに貯留される。溜まった軽質油は燃焼炉4や乾溜釜10の燃焼に利用される。塔頂油も燃焼室11を加熱する燃料として利用される。また、重質油は、乾溜後の被処理物を炭製品に返還する際に用いる炭化炉やキルン式焼成炉を加熱する燃料として用いられるとともに、余りは他の用途に利用したり、販売したりしてリサイクルされる。
【0057】
燃焼炉4や乾溜釜10から出る排ガスは、煙突14に送られて戸外へ排気される。かかる排ガスは燃焼後の気体であるため、残留油分がきわめて少ない。
【0058】
被処理物の乾溜処理が終了した後、パイプ差込部34に装着した供給パイプ35を介して蒸気供給源からの蒸気をカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内に残留する乾溜ガスを蒸気により押し出すことができる。
続いて、カートリッジ20内を冷却する。このとき、供給パイプ35を介して窒素供給源からの窒素ガスをカートリッジ20の内部へ供給する。これにより、カートリッジ20内の冷却に伴う減圧が緩和され、カートリッジ20の変形や、蓋体30とカートリッジ20の境界部分からの空気の流入が防止される。
【0059】
乾溜処理後に残った被処理物は、さらに破砕、焼成して炭製品に返還してリサイクルする。
図8は、乾溜処理後に残った被処理物から活性炭を製造する工程を示す図である。同図を参照して、活性炭の製造工程を説明する。
乾溜処理後に残った被処理物Bは、バスケット40から取り出し、磁選解砕機100にかけて破砕する。続いて、破砕した被処理物Bは、篩機200でふるいにかけた後、再度、篩機200に内蔵した磁選解砕機100aにかけて破砕する。このようにして細かく破砕された被処理物Bは、キルン式焼成炉300にて焼成されて、多孔質の活性炭Cとなる。
【0060】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変形実施、応用実施が可能であることは勿論である。
【0061】
図9及び図10は、バスケットの他の構成例を示す図である。
図9及び図10に示すバスケット50も、図10(b)に示すように、複数個(図では2個)が上下方向に連結した状態でカートリッジ20に収納される。ここで、各バスケット50の間には間隙Hが形成されている。このように、複数個に分かれた各バスケット50内にそれぞれ被処理物を挿入するとともに、一定の間隙Hを設けて各バスケット50を連結し、カートリッジ20に収納するので、カートリッジ20内に熱や乾溜ガスの流動する隙間が多く確保される。その結果、被処理物へ熱が均一に伝わりやすく、しかも被処理物から発生した乾溜ガスも、隙間を通して円滑に排出することができる。
【0062】
バスケット50も、連結部41が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっている。このため、各バスケット50への被処理物の挿入作業が容易となる。連結部41の構成は、先に示したバスケット40(図4及び図5)と同じく、例えば、図6に示すようにリング部材41aで締結され、カンヌキ41bにより締結状態が保持される構成となっている。よって、バスケット40と50とを組み合わせて上下に連結することも可能である。
【0063】
各々のバスケット50は、上面が開口した有底円筒形の籠状をしており、その周壁50aは耐熱性を有する金属製の網材で形成してある。この周壁50aがカートリッジ20の内壁と対向し、カートリッジ20からの輻射熱がこの周壁50aを構成する網材を透して、バスケット50の内部へ侵入する。
【0064】
バスケット50の底面50bは、多数の通気孔を有する網状に形成されている(図10(a)参照)。これにより、底面50bに設けた多数の通気孔からも熱や乾溜ガスが流動するので、被処理物への熱伝導の均一化と、発生した乾溜ガスの円滑な排出を促進することができる。なお、底面50bの中央部には、供給パイプ35を挿通するための透孔50cが設けてある。
【0065】
かかる構成のバスケット50は、例えば、ゴムクローラーや防舷材など、破断しにくい大寸法の被処理物の挿入に好適である。周知のとおり、ゴムクローラーは芯金と補強帯をエンドレスにゴムで包んだ履帯であり、大形特殊車両に用いられている。また、防舷材は船体と岸壁が直接接触して損傷しないようにするためのゴム製緩衝材である。これらの被処理物は、大形でしかも金属部材を内包しているため、切断作業がきわめて困難である。そこで、この種の被処理物は、裁断せずにそのままバスケット50に挿入して、カートリッジ20内へ搬送する。
【0066】
大寸法の被処理物をそのまま挿入した状態にあっては、バスケット50の内部は隙間が多く、バスケット50の網目から侵入してきた輻射熱が直接被処理物の表面に当たって、被処理物を加熱する。また、ゴムクローラーや防舷材に内包された金属部材が加熱されて、その熱がゴム材に伝わることで加熱が促進される。このように、バスケット50を用いれば、大寸法の被処理物に対し煩雑な切断作業を省略して、作業性の向上を図ることができる。
【0067】
図11は、本発明に係る乾溜装置の他の構成例を示す正面断面図である。
同図に示す乾溜装置は、蓋体30の頂部に補助凝縮装置60を備えている。補助凝縮装置60は、カートリッジ20内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再びカートリッジ20内に戻す機能を有している。
ゴム材等の被処理物を加熱して得られる乾溜ガスには、軽質油、塔頂油といった燃料となる油分のほかに、パラフィン系炭化水素が含有されていることがある。このパラフィン系炭化水素は、軽質油や塔頂油となる油分よりも高い温度(例えば、250〜300℃)で液化する。
補助凝縮装置60では、カートリッジ20から上昇してきた乾溜ガスを補足し、適性温度(例えば、パラフィン系炭化水素が液化する温度)に保持する。補助凝縮装置60で液化されたパラフィン系炭化水素は、再びカートリッジ20内に滴下し、再加熱される。再加熱により、パラフィン系炭化水素は、軽質油、塔頂油といった燃料となる油分に分解してガス化される。このため、燃料の抽出効率を向上させることができる。
【0068】
なお、補助凝縮装置60で液化されない乾溜ガスは、乾溜ガス排出ダクト32を介して主凝縮装置2(図1参照)へ送られる。
【0069】
図12は、本発明に係る乾溜油化システムの他の構成例を示す図である。
同図に示す乾溜油化システムは、主凝縮装置2で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器70を備えている。この遠心分離器70により異物が除去された油分は、中継タンク71を経由して貯留タンク72に保存され、乾溜釜10の燃焼室11を加熱するバーナー11aの燃料として利用される。この構成によって、燃焼室11の燃焼効率をいっそう向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1:乾溜装置、2:主凝縮装置、3:蒸留装置、4:燃焼炉、5:ダクト、6a:重質油タンク、6b:軽質油タンク、6c:塔頂油タンク、7:凝縮油槽、
10:乾溜釜、11:燃焼室、11a:バーナー、12:加熱室、12a:排ガス導出部、13:仕切壁、13a:連通孔、14:煙突、15a,15b:熱電対、
20:カートリッジ、20a:凹部、21:支持突起、
30:蓋体、31:温度圧力調整部、32:乾溜ガス排出ダクト、33:バルブ、34:パイプ差込部、35:供給パイプ、36:配管、37a:圧力計、37b:熱電対、37c:温度センサ、
40:バスケット、40a:周壁、40b:底面、41:連結部、41a:リング部材、41b:カンヌキ、42,43:筒状体、
50:バスケット、50a:周壁、50b:底面、50c:透孔
60:補助凝縮装置、70:遠心分離器、71:中継タンク、72:貯留タンク、
100:磁選解砕機、200:篩機、300:キルン式焼成炉、
A:乾溜前の被処理物、B:乾溜後の被処理物、C:活性炭
H:間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口しており当該上面開口から被処理物が挿入されるとともに、複数個が上下方向に連結されるバスケットと、
上面に開口部を有し、被処理物が挿入され且つ上下方向に連結された複数個の前記バスケットが当該上面開口部から収納されるカートリッジと、
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体と、
前記カートリッジを収納して加熱し、当該カートリッジ内に収納された被処理物を乾溜処理する乾溜釜と、を備えたことを特徴とする乾溜装置。
【請求項2】
前記上下方向に連結された各バスケットの間には間隙が形成されるとともに、各バスケットの内部には乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体が底面から上方に延出して設けてあり、当該筒状体の周面には多数の通気孔が形成してあることを特徴とする請求項1の乾溜装置。
【請求項3】
前記バスケットは、前記カートリッジの内周と対向する周壁が、熱伝導性を有する金属板で構成されており、
前記乾溜釜の内壁と、その内部に収納された前記カートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱が前記バスケットに伝えられる構成であることを特徴とする請求項1又は2の乾溜装置。
【請求項4】
前記連結された複数のバスケットのうち、少なくとも最下段以外のバスケットは、底面に多数の通気孔が形成してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項5】
前記バスケットは、前記カートリッジの内周と対向する周壁が、金属製の網材で構成されており、
前記乾溜釜の内壁と、その内部に収納された前記カートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱が前記バスケットを構成する前記網材の隙間から内部へ侵入する構成であることを特徴とする請求項1又は2の乾溜装置。
【請求項6】
前記各バスケットは、連結部が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項7】
前記乾溜釜は、側壁上部に煙突が連通しており、さらに当該側壁上部には、乾溜釜内を内壁に沿って流動している熱風を前記煙突の連通口へと導く斜面を周方向に形成してなる排ガス導出部が設けてあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項8】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体の頂部には、前記カートリッジ内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再び前記カートリッジ内に戻す補助凝縮装置が設けてあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項9】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、前記カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、前記カートリッジ内に蒸気を供給する蒸気供給手段が設けてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項10】
前記各バスケットの内部には、前記筒状体が複数本設けてあり、そのうちの一本は各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成しており、
前記蒸気供給手段は、当該貫通路を抜けて前記カートリッジの下部へ蒸気を供給する構成であることを特徴とする請求項9の乾溜装置。
【請求項11】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、前記カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、前記カートリッジ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が設けてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項12】
前記各バスケットの内部には、前記筒状体が複数本設けてあり、そのうちの一本は各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成しており、
前記不活性ガス供給手段は、当該貫通路を抜けて前記カートリッジの下部へ不活性ガスを供給する構成であることを特徴とする請求項11の乾溜装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載された乾溜装置と、この乾溜装置から排出されてきた乾溜ガスを冷却して当該乾溜ガスに含まれる油分を液化する主凝縮装置と、この主凝縮装置で液化した油分を蒸留して分離する蒸留装置と、前記主凝縮装置で液化されない油分を含む当該凝縮装置からの残渣ガスを燃焼するための燃焼炉と、を備えた乾溜油化システムであって、
前記燃焼炉内に生じる熱風を前記乾溜釜の内部へ送り、当該熱風により乾溜釜の内部を加熱する構成としたことを特徴とする乾溜油化システム。
【請求項14】
前記乾溜釜は、前記燃焼炉から送られてきた熱風とは別に、当該乾溜釜に設けたバーナーの燃焼をもって内部を加熱する構成を備えることを特徴とする請求項13の乾溜油化システム。
【請求項15】
前記主凝縮装置で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器を備え、当該遠心分離器により異物が除去された油分を前記バーナーの燃料として利用する構成としたことを特徴とする請求項14の乾溜油化システム。
【請求項1】
上面が開口しており当該上面開口から被処理物が挿入されるとともに、複数個が上下方向に連結されるバスケットと、
上面に開口部を有し、被処理物が挿入され且つ上下方向に連結された複数個の前記バスケットが当該上面開口部から収納されるカートリッジと、
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体と、
前記カートリッジを収納して加熱し、当該カートリッジ内に収納された被処理物を乾溜処理する乾溜釜と、を備えたことを特徴とする乾溜装置。
【請求項2】
前記上下方向に連結された各バスケットの間には間隙が形成されるとともに、各バスケットの内部には乾溜ガスの流動通路を形成する筒状体が底面から上方に延出して設けてあり、当該筒状体の周面には多数の通気孔が形成してあることを特徴とする請求項1の乾溜装置。
【請求項3】
前記バスケットは、前記カートリッジの内周と対向する周壁が、熱伝導性を有する金属板で構成されており、
前記乾溜釜の内壁と、その内部に収納された前記カートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱が前記バスケットに伝えられる構成であることを特徴とする請求項1又は2の乾溜装置。
【請求項4】
前記連結された複数のバスケットのうち、少なくとも最下段以外のバスケットは、底面に多数の通気孔が形成してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項5】
前記バスケットは、前記カートリッジの内周と対向する周壁が、金属製の網材で構成されており、
前記乾溜釜の内壁と、その内部に収納された前記カートリッジの周壁との間には、隙間が形成され、当該隙間に熱気が流動してカートリッジを加熱するとともに、当該カートリッジからの輻射熱が前記バスケットを構成する前記網材の隙間から内部へ侵入する構成であることを特徴とする請求項1又は2の乾溜装置。
【請求項6】
前記各バスケットは、連結部が着脱自在となっており、各々分離した状態で上面開口部から被処理物を挿入可能となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項7】
前記乾溜釜は、側壁上部に煙突が連通しており、さらに当該側壁上部には、乾溜釜内を内壁に沿って流動している熱風を前記煙突の連通口へと導く斜面を周方向に形成してなる排ガス導出部が設けてあることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項8】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体の頂部には、前記カートリッジ内で発生した乾溜ガスに含まれるパラフィン系炭化水素分を液化させ、再び前記カートリッジ内に戻す補助凝縮装置が設けてあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項9】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、前記カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、前記カートリッジ内に蒸気を供給する蒸気供給手段が設けてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項10】
前記各バスケットの内部には、前記筒状体が複数本設けてあり、そのうちの一本は各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成しており、
前記蒸気供給手段は、当該貫通路を抜けて前記カートリッジの下部へ蒸気を供給する構成であることを特徴とする請求項9の乾溜装置。
【請求項11】
前記カートリッジの上面開口部を閉塞する蓋体には、前記カートリッジの内部に発生した乾溜ガスを排出するための乾溜ガス排出路が連通するとともに、前記カートリッジ内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段が設けてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾溜装置。
【請求項12】
前記各バスケットの内部には、前記筒状体が複数本設けてあり、そのうちの一本は各バスケットを上下方向に貫通する貫通路を形成しており、
前記不活性ガス供給手段は、当該貫通路を抜けて前記カートリッジの下部へ不活性ガスを供給する構成であることを特徴とする請求項11の乾溜装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載された乾溜装置と、この乾溜装置から排出されてきた乾溜ガスを冷却して当該乾溜ガスに含まれる油分を液化する主凝縮装置と、この主凝縮装置で液化した油分を蒸留して分離する蒸留装置と、前記主凝縮装置で液化されない油分を含む当該凝縮装置からの残渣ガスを燃焼するための燃焼炉と、を備えた乾溜油化システムであって、
前記燃焼炉内に生じる熱風を前記乾溜釜の内部へ送り、当該熱風により乾溜釜の内部を加熱する構成としたことを特徴とする乾溜油化システム。
【請求項14】
前記乾溜釜は、前記燃焼炉から送られてきた熱風とは別に、当該乾溜釜に設けたバーナーの燃焼をもって内部を加熱する構成を備えることを特徴とする請求項13の乾溜油化システム。
【請求項15】
前記主凝縮装置で液化した油分から水分やスラッジ等の異物を除去するための遠心分離器を備え、当該遠心分離器により異物が除去された油分を前記バーナーの燃料として利用する構成としたことを特徴とする請求項14の乾溜油化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−1471(P2010−1471A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123987(P2009−123987)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508154265)株式会社アオキミツル商事 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508154265)株式会社アオキミツル商事 (1)
【Fターム(参考)】
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