説明

乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法

【課題】被乾燥物の乾燥中に被乾燥物の乾燥状態を判定することで被乾燥物の乾燥時間をさらに短縮することが可能な乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法によれば、被乾燥物20の乾燥中に被乾燥物20の重量を測定し、その測定結果に基づいて被乾燥物20が十分に乾燥したか否かを判定する。そして、被乾燥物20が十分に乾燥したと判定された場合、直ちに乾燥を終了する。よって、被乾燥物20の水分量等にバラつきが存在したとしても乾燥時間のマージンが不要となり、乾燥時間のさらなる短縮を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被乾燥物の乾燥状態を判定して鋳型の乾燥を短時間で行う乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な鋳物製品の製造方法としては、先ず製造する鋳物製品と同形状の模型をワックス(蝋体)、木、金属、樹脂、発泡スチロール等で作製する。次に、模型の周囲に鋳型砂や石膏等の耐火性セラミクスを所定の厚さで塗布、乾燥して鋳型を成形する。次に、模型を所定の手段によって除去した後、熱処理等を行うことで鋳型を完成させる。そして、完成した鋳型に溶融金属を注入、冷却した後、鋳型を破壊することで模型と同形状の鋳物製品を製造する。
【0003】
中でも模型をワックスで作製する精密鋳造法(ロストワックス法)は、模型を加熱により融解して除去することができるため、製造する鋳物製品が精密且つ複雑な形状である場合に特に好適である。
【0004】
ところで、上記の鋳型の乾燥は模型の材質に関わらず、均一且つ十分に行う必要がある。鋳型の乾燥を均一に行わないと、乾燥の途中で鋳型内部の乾燥状態が不均一となり鋳型にクラックが生じる可能性がある。また、鋳型の乾燥が不十分であると鋳型内に水分が残留し、この残留水分が溶融金属注入時にガス化して鋳型の破損や製造する鋳物製品にボイド(欠損)を生じさせる可能性がある。
【0005】
このため、鋳型の乾燥は自然乾燥や比較的低温の温風乾燥などにより長時間かけて行われてきた。これらの乾燥方法による乾燥時間はときに数十時間を要する場合があり、極めて非効率的なものである。特に、鋳型を鋳型砂等のスラリを塗布して作製する場合などでは、鋳型砂及びスラリの塗布、乾燥を要求される厚みが得られるまで繰り返すため、乾燥時間が極めて長時間化するという問題点がある。
【0006】
この問題点に対し下記[特許文献1]では、温風乾燥とマイクロ波による加熱乾燥とを併用した鋳型の乾燥方法に関する発明が開示されている。この[特許文献1]によれば、マイクロ波によって鋳型を加熱して乾燥するため、温風のみによる乾燥と比較して短時間での乾燥が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭54−109026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、鋳型の形状、大きさは様々であり、また鋳型砂スラリの塗布量、水分量にもバラつきが存在するため、これらのバラつきを考慮した上で鋳型の乾燥を十分に行うためには乾燥時間に余裕(マージン)を持たせる必要があり、乾燥時間短縮化の観点から更なる改善が望まれる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被乾燥物の乾燥中に被乾燥物の乾燥状態を判定することで被乾燥物の乾燥時間をさらに短縮することが可能な乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(1)マイクロ波を照射して被乾燥物20の乾燥を行うためのマイクロ波照射手段30と、所定の温度の空気を循環させて被乾燥物20の乾燥を補助する給排気手段32と、を有する乾燥装置において、
被乾燥物20の重量を測定する重量測定手段34と、当該重量測定手段34から被乾燥物20の重量を所定の時間間隔でサンプリングして、最新の被乾燥物20の重量と直前の被乾燥物20の重量との差を算出し、当該差が所定の設定値以下であるか否かを判定し、さらに当該差が所定の設定値以下であるもしくは当該差が設定値以下である状態が複数回連続した場合に被乾燥物20が乾燥したと判定する判定部36と、を備えることを特徴とする乾燥装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)乾燥中の被乾燥物20の重量を所定の時間間隔で取得する測定ステップと、測定ステップで得られた被乾燥物20の重量と直前の測定ステップで得られた重量との差を算出する算出ステップと、算出ステップで得られた差が所定の設定値以下であるか否かを判定する判定ステップと、判定ステップにおいて前記差が前記設定値以下であるもしくは前記差が設定値以下である状態が所定の回数連続した場合に被乾燥物20が乾燥したと判定する乾燥判定ステップと、を有することを特徴とする上記(1)記載の乾燥装置50の乾燥状態判定方法を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)所定の位置に複数配置された上記(1)記載の乾燥装置50a、50b、50cと、被乾燥物20となるスラリを溜める槽と、被乾燥物20を搬送する搬送手段16と、を有し、前記槽により塗布された被乾燥物20を前記乾燥装置50a、50b、50cで乾燥することを特徴とする乾燥システム100を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法によれば、被乾燥物の乾燥中に被乾燥物の乾燥状態を判定して、被乾燥物が十分に乾燥したと判断された時点で被乾燥物の乾燥を終了する。従って、被乾燥物の乾燥時間のさらなる時間短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る乾燥装置を示す図である。
【図2】本発明に係る乾燥装置の使用時の状態を示す図である。
【図3】被乾燥物の重量と経過時間の関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る乾燥システム示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、ここでは、模型の材料として蝋体を用い鋳型の製法として鋳型砂スラリを塗布するロストワックス法による鋳型の作製を例に説明を行うが、本発明はロストワックス法に限定されるものではなく、模型としては木、金属、樹脂、発泡スチロール等の周知の模型用材料を用いても良いし、鋳型の材料として鋳型砂以外の石膏等の周知の鋳型用耐火性セラミクス材料を用いても良い。
【0014】
図1に示す本発明に係る乾燥装置50は、被乾燥物20を収容する乾燥室22と、被乾燥物20にマイクロ波を照射して被乾燥物20の乾燥を行うためのマイクロ波照射手段30と、乾燥室22内に所定の温度の空気を循環させて被乾燥物20の乾燥を補助する給排気手段32と、被乾燥物20の重量を測定する重量測定手段34と、当該重量測定手段34から得られる被乾燥物20の重量に基づいて被乾燥物20の乾燥状態を判定する判定部36と、を有している。尚、図1、図2においては、乾燥室22内部を図示するために扉部の記載を省略している。
【0015】
乾燥室22の外部にはマイクロ波照射手段30が複数台、例えば4台設置され、乾燥室22の奥側の面にはそれぞれのマイクロ波照射手段30から出射するマイクロ波を被乾燥物20に照射するための導波口30aが所定の間隔を取って例えば4つ形成されている。尚、マイクロ波照射手段30及び導波口30aの数には特に限定はなく1台であってもまた何台設置しても構わない。また、導波口30aの設置位置も特に限定はなく、奥面以外の側面に設置しても上面や底面に設置しても良い。また、必ずしも1つの面に全ての導波口30aを設ける必要もなく、複数の面に導波口30aを設けても良い。さらに、1つのマイクロ波照射手段30から出射するマイクロ波を分岐して複数の導波口30aから照射するようにしても良い。尚、1つの面に複数の導波口30aを設ける場合、複数の導波口30aから照射するそれぞれのマイクロ波が互いに干渉しない十分な間隔を設けて設置することが好ましい。特に、図1に示すように、1つの面に導波口30aを4つ設ける場合、導波口30aを交互に配置して千鳥格子状とすることが好ましい。
【0016】
また、乾燥室22の1つの側面には扉部(図示せず)が設置され、乾燥室22内に被乾燥物20を出し入れすることができる。また、乾燥室22の所定の位置には給気口32aが設置され、循環ファン等の給排気手段32からの空気を乾燥室22内に供給する。さらに、乾燥室22の所定の位置には排気口32bが設置され、乾燥室22内の湿度の高い空気を給排気手段32側に排出する。
【0017】
給排気手段32と給気口32aとの間には温度制御手段24が設けられ、乾燥室22内に供給する空気を所定の温度とすることができる。尚、乾燥室22内に供給する空気は温風であっても良いが、被乾燥物20が比較的小型でマイクロ波照射手段30による加熱により必要以上に高温となる場合には、被乾燥物20の冷却を兼ねて冷風とすることが好ましい。乾燥室22内に温風を供給する場合には温度制御手段24はヒータ等の加熱手段となり、乾燥室22内に冷風を供給する場合には温度制御手段24はクーラ等の冷却手段となる。また、温度制御手段24を加熱冷却可能として、条件によって切り替えるようにしても良い。さらに、温度制御手段24には乾燥室22内に供給する空気の除湿を行う除湿手段を設けても良い。
【0018】
乾燥室22の上面には貫通孔が形成され、この貫通孔には回転軸26が回転可能に嵌入されている。回転軸26の下側又は上側には重量測定手段34が設置され、重量測定手段34の下側に位置する回転軸26には被乾燥物20を吊り下げるためのフック等の連結部26aが設置されている。また、回転軸26の上側は重量測定手段34を介してモータ等の回転手段28と連結されており、回転手段28の回転動作により被乾燥物20を回転軸26を介して所定の速度で回転させることができる。
【0019】
重量測定手段34は判定部36と電気的に接続され、判定部36は乾燥装置50の制御部44に電気的に接続されている。そして、制御部44は乾燥装置50の各部の動作を制御する。
【0020】
次に、図2を用いて本発明に係る乾燥装置50の動作を説明する。
【0021】
先ず、連結部26に吊り下げるハンガ40にはワックスからなる複数の模型42が設置されている。そして、模型42の表面及びハンガ40の一部には被乾燥物20である鋳型砂スラリが塗布されている。尚、ハンガ40に設置する模型42は一つでも良い。
【0022】
次に、乾燥室22の扉部を開け、図2に示すように、被乾燥物20が塗布されたハンガ40を乾燥装置50の連結部26aに吊り下げる。次に、扉部を閉める。尚、扉部の開閉、及びハンガ40の連結部26aへの設置は、乾燥装置50を単独で用いる場合には作業者等が行う。また、後述する乾燥システム100のように、ロボットアーム等の搬送手段16と連携して自動的に行うようにしても良い。
【0023】
扉部が閉まると、乾燥装置50の制御部44がマイクロ波照射手段30と給排気手段32と回転手段28とを動作させる。このマイクロ波照射手段30の動作により、それぞれのマイクロ波照射手段30から所定の出力(例えば850W)でマイクロ波が出射する。マイクロ波照射手段30から出射したマイクロ波は導波口30aから被乾燥物20に照射される。マイクロ波が被乾燥物20に照射されると被乾燥物20の水分子が発熱する。この発熱により被乾燥物20内の水分が蒸発して被乾燥物20の乾燥が進行する。
【0024】
また、回転手段28が動作することで、回転軸26が所定の速度(例えば2〜10rpm)で回転し、それに伴って被乾燥物20がハンガ40ごと回転する。これにより、マイクロ波が照射される被乾燥物20の面が徐々に移動し、被乾燥物20に対する加熱がほぼ均一に行われる。
【0025】
また、給排気手段32が動作することで、温度制御手段24により所定の温度に調整された空気が給気口32aから乾燥室22内に所定の流量(例えば9.2m/min)で供給される。これと同時に、排気口32bから乾燥室22内の湿度の高い空気が排出される。これにより、乾燥室22内の空気が循環し、被乾燥物20の乾燥がさらに促進されるとともに、乾燥室22内の温度分布の均一化が図られる。
【0026】
これらの動作と並行して重量測定手段34が被乾燥物20の重量を、重量測定手段34より下側の回転軸26(連結部26aを含む)の重量、ハンガ40の重量、模型42の重量ともども測定して判定部36に出力する。尚、以後は上記の重量測定手段34より下側の回転軸26の重量とハンガ40の重量と模型42の重量と被乾燥物20の重量とを合算したものを単に被乾燥物20の重量と記す。
【0027】
判定部36は重量測定手段34からの被乾燥物20の重量を所定の時間間隔で取得(サンプリング)する。このときの時間間隔は、被乾燥物20の塗布量、作製する鋳型の大きさ等によって変化するが、概ね1sec〜10min、好ましくは30sec〜1min程度である。
【0028】
ここで、図3を用いて本発明に係る乾燥状態判定方法を説明する。図3は、所定の時間Tnで判定部36が取得する被乾燥物20の重量Wnをグラフ化したものである。この図3において、横軸は経過時間Tを示し、縦軸は被乾燥物20の重量Wを示す。尚、横軸におけるT0−T1、T2−T1、・・・、T9−T8の値は一定の時間間隔Tである。
【0029】
先ず、判定部36は測定ステップとして、重量測定手段34から被乾燥物20の乾燥開始時の時間T0における重量W0を取得する。次に、判定部36は同じく測定ステップとして、乾燥開始時(時間T0)から所定の時間間隔T経過後の時間T1における被乾燥物20の重量W1を取得する。次に、判定部36は算出ステップとして、現在の測定ステップで得られた時間T1における被乾燥物20の重量W1と直前の測定ステップで得られた時間T0における被乾燥物20の重量W0との差ΔW1を算出する。次に、判定部36は判定ステップとして、算出ステップで得られた重量W1と重量W0との差ΔW1が所定の設定値以下か否かを判定する。ここで、仮に設定値AをΔW5とΔW6との間の値とすると、差ΔW1は設定値A以下ではないから、判定部36は乾燥判定ステップには進まずに、次の測定ステップとして時間T1から所定の時間間隔T経過後の時間T2における被乾燥物20の重量W2を取得する。そして、同様に算出ステップにおいて現在の測定ステップで得られた時間T2における被乾燥物20の重量W2と直前の測定ステップで得られた時間T1における被乾燥物20の重量W1との差ΔW2を算出し、判定ステップにおいて、重量W2と重量W1との差ΔW2が所定の設定値A以下か否かを判定する。
【0030】
ここで、被乾燥物20は乾燥の初期段階(図3におけるT0、T1の領域)では水分を多く含んでいるから、乾燥装置50の乾燥により多くの水分が蒸発し一定の時間間隔Tにおける重量の差ΔW(水分の減少量)は大きい。しかしながら、乾燥が進むにつれ被乾燥物20の水分は減少していくから、乾燥時間が経過するにつれ水分の蒸発量も減少し、よって一定の時間間隔Tにおける重量の差ΔWは徐々に小さくなる(図3におけるΔW1〜ΔW6)。そして、被乾燥物20が十分に乾燥すると被乾燥物20の水分はほとんど蒸発しないから、被乾燥物20の重量はある一定の値となりその差ΔWはほぼ0となる(図3におけるT6〜T8の領域)。
【0031】
従って、図3の例では、判定部36は時間T6における被乾燥物20の重量W6を取得するまで測定ステップと算出ステップと判定ステップとを繰り返す。そして、時間T6における重量W6と時間T5における重量W5との差ΔW6に対する判定ステップにおいて、差ΔW6が設定値A以下であると判定する。この場合、判定部36は乾燥判定ステップとして被乾燥物20が十分に乾燥したと判定し、制御部44に対し被乾燥物20が十分に乾燥したことを示す信号を出力する。
【0032】
尚、判定部36の乾燥判定ステップは以下のようにしても良い。先ず、判定ステップにおいて差ΔW6が設定値A以下であると判定すると、判定部36はこの判定結果を記録する。次に、測定ステップとして時間T7における被乾燥物20の重量W7を取得する。次に、算出ステップとして時間T7における被乾燥物20の重量W7と時間T6における被乾燥物20の重量W6との差ΔW7を算出する。次に、判定ステップにおいて、重量W7と重量W6との差ΔW7が所定の設定値A以下か否かを判定する。このとき、差ΔW7は設定値A以下であるから、設定値A以下の状態が2回連続することとなる。設定値A以下の状態が2回連続した場合、判定部36は乾燥判定ステップとして、被乾燥物20が十分に乾燥したと判定し制御部44に対し被乾燥物20が十分に乾燥したことを示す信号を出力する。
【0033】
この構成によれば、被乾燥物20の乾燥が十分でないにも関わらず、何らかの原因により差ΔWが設定値A以下を示した場合でも、判定部36は直ちに被乾燥物20が十分に乾燥したと判定しない。よって、乾燥状態の誤判定による乾燥装置50の誤作動を防止することができる。尚、上記の例では設定値A以下の状態が2回連続した場合に被乾燥物20が十分に乾燥したと判定する例を示したが、特に2回に限定されるものではなく、その回数は任意に設定可能である。
【0034】
尚、被乾燥物20は回転手段28によって回転動作しているから、被乾燥物20が十分に乾燥して実質的な重量の変化がほぼ0(図3におけるT6〜T8の領域)となっても、被乾燥物20の回転時の振動や偏心によって重量測定手段34が測定する被乾燥物20の重量が変化する可能性がある。この振動や偏心による重量の変化はほぼ一定の範囲内もしくは周期的なものとなるから、よって判定部36はこれら振動や偏心による重量の変化を予めメモリしておき、この振動や偏心による重量の変化を除いた上で、被乾燥物20の実質的な重量変化を割り出し、上記の算出ステップ、判定ステップ等を行うことが好ましい。この構成によれば、被乾燥物20が回転していても、より正確に被乾燥物20の乾燥状態の判定を行うことができる。
【0035】
上記のようにして、判定部36から被乾燥物20が十分に乾燥したことを示す信号が出力されると、制御部44はマイクロ波照射手段30と給排気手段32と回転手段28とを停止させる。そして、乾燥装置50を単独で使用する場合には、ランプや報知音声によって被乾燥物20の乾燥が終了したことを作業者等に報知する。また、後述の乾燥システム100においては、扉部が自動的に開くとともに、搬送手段16が駆動して被乾燥物20をハンガ40ごと連結部26aから取り外し次工程に搬送する。
【0036】
次に、主に鋳型の作製に用いる本発明に係る乾燥システムの例を説明する。図4に示す本発明に係る乾燥システム100は、中央位置に設置され被乾燥物20等をハンガ40ごと搬送するためのロボットアームなどの搬送手段16と、脱脂槽10aと、被乾燥物20となる下地スラリが溜められた下地スラリ槽10bと、同じく被乾燥物20となる鋳型砂スラリが溜められた第1鋳型砂槽10cと第2鋳型砂槽10dと、本発明に係る乾燥装置50である第1の乾燥装置50aと第2の乾燥装置50bと第3の乾燥装置50cと、を有している。そして、脱脂槽10a、下地スラリ槽10b、第1鋳型砂槽10c、第2鋳型砂槽10d、乾燥装置50a、50b、50cは、搬送手段16を中心として略同心円状に配置されている。また、脱脂槽10aと第3の乾燥装置50cとの間には、模型42が設置されたハンガ40を乾燥システム100に搬入するローダ12と、最終段階の鋳型20a(被乾燥物20)が形成されたハンガ40を乾燥システム100から搬出するアンローダ14と、が設置されている。
【0037】
次に、乾燥システム100の動作を説明する。先ず、搬送手段16が駆動して、模型42が設置されたハンガ40をローダ12から取り出す。次に、搬送手段16は模型42が設置されたハンガ40を脱脂槽10a上に搬送し、ハンガ40の模型42を脱脂槽10a内の脱脂液に浸漬する。これにより模型42表面の油分や汚れ等が除去される。
【0038】
次に、搬送手段16はハンガ40の模型42を脱脂液から引き上げて余分な脱脂液を滴下した後、模型42をハンガ40ごと下地スラリ槽10b上に搬送し、模型42を下地スラリ槽10b内の下地スラリに浸漬する。この下地スラリは粘土等の周知の粘結材で主に構成されており、模型42もしくは乾燥後の被乾燥物20(乾燥後の鋳型砂)に対する鋳型砂スラリの塗布性を向上させる。
【0039】
次に、搬送手段16はハンガ40の模型42を下地スラリから引き上げて余分な下地スラリを滴下した後、模型42をハンガ40ごと第1鋳型砂槽10c上に搬送し、模型42を第1鋳型砂槽10c内の鋳型砂スラリに浸漬する。尚、鋳型砂スラリは鋳型砂と水とに加え周知の粘結材と各種添加剤等とを含有している。
【0040】
次に、搬送手段16はハンガ40の模型42を鋳型砂スラリから引き上げて余分な鋳型砂スラリを滴下する。これにより、模型42の表面には鋳型砂スラリが塗布され被乾燥物20が形成される。次に、搬送手段16は被乾燥物20をハンガ40ごと第1の乾燥条件に設定されている第1の乾燥装置50aに投入する。そして、第1の乾燥装置50aは被乾燥物20の乾燥を行うとともに、本発明に係る乾燥状態判定方法により被乾燥物20の乾燥状態を判定する。本発明に係る乾燥状態判定方法により被乾燥物20が十分に乾燥したと判定されると、搬送手段16は被乾燥物20をハンガ40ごと第1の乾燥装置50aから取り出し、再度下地スラリ槽10b内の下地スラリに浸漬する。
【0041】
次に、搬送手段16はハンガ40の被乾燥物20を第1鋳型砂槽10c上に搬送し、鋳型砂スラリに浸漬する。これにより、乾燥後の被乾燥物20表面に鋳型砂スラリが再度塗布され被乾燥物20が成長する。次に、搬送手段16は成長した被乾燥物20をハンガ40ごと第1の乾燥装置50aもしくは第2の乾燥装置50bに投入し、同様に乾燥と乾燥状態判定方法に基づく乾燥終了の判定を行う。そして、この動作を所定の回数繰り返す。尚、第1の乾燥装置50aと第2の乾燥装置50bとは乾燥条件が異なっており、被乾燥物20の成長に伴う鋳型砂スラリの塗布量の増大に応じて適宜使い分けられる。
【0042】
第1鋳型砂槽10cによる被乾燥物20の塗布及び乾燥が所定の回数行われて被乾燥物20が所定の厚さになると、搬送手段16は被乾燥物20を第2鋳型砂槽10d上に搬送し、乾燥後の被乾燥物20を第2鋳型砂槽10d内の仕上げ用鋳型砂スラリに浸漬する。これにより、乾燥後の被乾燥物20表面に仕上げ用鋳型砂スラリが塗布される。次に、搬送手段16は仕上げ用鋳型砂スラリが塗布された被乾燥物20を、仕上げ用鋳型砂スラリ用の乾燥条件に設定されている第3の乾燥装置50cに投入し、同様に乾燥と乾燥状態判定方法に基づく乾燥終了の判定を行う。
【0043】
そして、第3の乾燥装置50cによる被乾燥物20の乾燥が終了すると、搬送手段16は被乾燥物20を第3の乾燥装置50cから取り出す。この段階で被乾燥物20は最終段階の鋳型20aとなる。そして、搬送手段16は最終段階の鋳型20aをハンガ40ごとアンローダ14へ搬送する。アンローダ14は最終段階の鋳型20aをハンガ40ごと乾燥システム100から搬出する。
【0044】
その後、最終段階の鋳型20aはハンガ40ごとオートクレーブ等の加熱手段で所定の温度まで加熱される。これにより、模型42は融解し除去される。模型42が除去された鋳型20aは所定の温度で焼成されることで鋳型として完成する。
【0045】
尚、上記の乾燥システム100は一例であるから、各槽の個数、配置、内容物及び乾燥装置50の個数、配置等は適宜変更が可能である。また、搬送手段16、ローダ12、アンローダ14等の搬送系も適宜変更が可能である。
【0046】
以上のように、本発明に係る乾燥装置、乾燥システム及び乾燥状態判定方法によれば、被乾燥物20の乾燥中に被乾燥物20の重量を測定し、その測定結果に基づいて被乾燥物20が十分に乾燥したか否かを判定する。そして、被乾燥物20が十分に乾燥したと判定された場合、直ちに乾燥を終了する。よって、被乾燥物20の水分量等にバラつきが存在したとしても乾燥時間のマージンが不要となり、乾燥時間のさらなる短縮を図ることができる。
【0047】
尚、乾燥装置50、乾燥システム100の構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
16 搬送手段
20 被乾燥物
30 マイクロ波照射手段
32 給排気手段
34 重量測定手段
36 判定部
50、50a、50b、50c 乾燥装置
100 乾燥システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を照射して被乾燥物の乾燥を行うためのマイクロ波照射手段と、
所定の温度の空気を循環させて被乾燥物の乾燥を補助する給排気手段と、を有する乾燥装置において、
被乾燥物の重量を測定する重量測定手段と、
当該重量測定手段から被乾燥物の重量を所定の時間間隔でサンプリングして、最新の被乾燥物の重量と直前の被乾燥物の重量との差を算出し、当該差が所定の設定値以下であるか否かを判定し、さらに当該差が所定の設定値以下であるもしくは当該差が設定値以下である状態が複数回連続した場合に被乾燥物が乾燥したと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
乾燥中の被乾燥物の重量を所定の時間間隔で取得する測定ステップと、
測定ステップで得られた被乾燥物の重量と直前の測定ステップで得られた重量との差を算出する算出ステップと、
算出ステップで得られた差が所定の設定値以下であるか否かを判定する判定ステップと、
判定ステップにおいて前記差が前記設定値以下であるもしくは前記差が設定値以下である状態が所定の回数連続した場合に被乾燥物が乾燥したと判定する乾燥判定ステップと、
を有することを特徴とする請求項1記載の乾燥装置の乾燥状態判定方法。
【請求項3】
所定の位置に複数配置された請求項1記載の乾燥装置と、
被乾燥物となるスラリを溜める槽と、
被乾燥物を搬送する搬送手段と、を有し、
前記槽により塗布された被乾燥物を前記乾燥装置で乾燥することを特徴とする乾燥システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−286166(P2010−286166A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139974(P2009−139974)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(399018378)日本ハイコム株式会社 (3)
【出願人】(509165611)池貝金属株式会社 (1)
【Fターム(参考)】