説明

乾燥装置

【課題】乾燥装置の小型化や軽量化を図ること。
【解決手段】本発明では、被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取るように構成した乾燥装置において、回転体の近傍に励磁コイルを配設して、回転体の表面を電磁誘導加熱によって加熱することにした。特に、前記励磁コイルを回転体の回転方向に沿って複数個配設することにした。また、前記回転体の表面から乾燥固形物を剥ぎ取る剥取部と、前記回転体の表面に被乾燥液状物を吐出する吐出部との間に、励磁コイルを設けずに回転体を自然冷却する冷却領域を形成することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置に関するものであり、特に、被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取るように構成した乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品の製造工程や液状廃棄物の処理工程において、液状物を乾燥して固形物とする乾燥処理が行われており、この乾燥処理においては、加熱した回転体の表面で乾燥を行う乾燥装置が用いられている。
【0003】
この従来の乾燥装置としては、中空状の回転軸に中空円板状の回転体を連通連結するとともに、これら回転軸及び回転体にボイラーを連通連結して、ボイラーで生成した熱媒体としての蒸気を回転軸を介して回転体の内部に送り込み、回転体の表面を加熱するように構成していた。
【0004】
また、従来の乾燥装置では、被乾燥液状物を回転体の表面に吐出する吐出部と、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取る剥取部とを、回転体の回転方向に沿って形成し、吐出部から被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を加熱乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を剥取部で剥ぎ取るように構成していた(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−206856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の乾燥装置は、被乾燥液状物を連続して良好に乾燥させることができることから様々な用途に適用されているが、加熱手段として蒸気を生成するボイラーが必要であることから、乾燥装置が大型なものとなっていたために、乾燥装置のさらなる小型化や軽量化が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取るように構成した乾燥装置において、回転体の近傍に励磁コイルを配設して、回転体の表面を電磁誘導加熱によって加熱することにした。
【0007】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記励磁コイルを回転体の回転方向に沿って複数個配設することにした。
【0008】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記回転体の表面から乾燥固形物を剥ぎ取る剥取部と、前記回転体の表面に被乾燥液状物を吐出する吐出部との間に、励磁コイルを設けずに回転体を自然冷却する冷却領域を形成することにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、請求項1に係る本発明では、被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取るように構成した乾燥装置において、回転体の近傍に励磁コイルを配設して、回転体の表面を電磁誘導加熱によって加熱することにしているために、回転体の表面を加熱するための加熱手段を小型軽量化することができ、これに伴って乾燥装置の小型化や軽量化を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に係る本発明では、励磁コイルを回転体の回転方向に沿って複数個配設することにしているために、各励磁コイルの出力を個別制御することによって回転体の表面の温度分布を変化させることができ、被乾燥液状物に適した乾燥を行うことができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明では、回転体の表面から乾燥固形物を剥ぎ取る剥取部と、回転体の表面に被乾燥液状物を吐出する吐出部との間に、励磁コイルを設けずに回転体を自然冷却する冷却領域を形成することにしているために、回転体の過加熱を未然に防止することができるとともに、吐出部での回転体の表面の温度を下げることで被乾燥液状物を良好に回転体の表面に付着させることができ、被乾燥液状物の乾燥効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係る乾燥装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0014】
本発明に係る乾燥装置1は、図1〜図3に示すように、ケーシング2の内部に、被乾燥液状物を乾燥させるための乾燥機構3と、乾燥機構3を駆動するための駆動機構4と、乾燥機構3に被乾燥液状物を供給するための供給機構5と、乾燥機構3から被乾燥液状物の乾燥によって生じた乾燥固形物を回収するための回収機構6と、これら乾燥機構3、駆動機構4、供給機構5を制御するための制御機構7とを収容している。
【0015】
これら乾燥装置1を構成する乾燥機構3、駆動機構4、供給機構5、回収機構6、制御機構7の具体的な構造について以下に説明する。
【0016】
まず、乾燥機構3の構造について説明すると、乾燥機構3は、基台8に回転軸9を軸受10を介して回動自在に取付けるとともに、この回転軸9の上端部に金属製の円板状の回転体11を水平状に取付けている。
【0017】
また、乾燥機構3は、ケーシング2に固定した基台8に円環状のコイル台12を取付けるとともに、このコイル台12の上部に6個の励磁コイル13〜18を回転軸9を中心として円周方向に50度間隔で並べて取付けている。これらの励磁コイル13〜18は、制御機構7で駆動制御されている。
【0018】
この励磁コイル13〜18は、回転体11の表面を電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)により加熱するためのものであり、そのため、回転体11の直下方位置にわずかな間隙をあけて配置している。そして、励磁コイル13〜18により生成される磁界の作用で回転体11の表面に渦電流を発生させ、この渦電流によって回転体11の上面をジュール発熱させるようにしている。
【0019】
また、励磁コイル13〜18は、図2に示すように、平面視では、後述する供給機構5の吐出部30と回収機構6の剥取部35との間の回転軸9を中心とした300度の範囲に並べて配置しており、回収機構6の剥取部35と供給機構5の吐出部30との間の回転軸9を中心とした60度の範囲には励磁コイル13〜18を配置しないようにしている。この励磁コイル13〜18の配置による効果については後述する。
【0020】
さらに、励磁コイル13〜18は、図1に示すように、回転体11の端縁部に下方へ向けて円環状に形成した裾部11aで側方を被覆されている。このように、乾燥機構3は、回転体11の端縁部に励磁コイル13〜18の下方まで伸延形成した裾部11aによって励磁コイル13〜18の側方を被覆しており、これにより、回転体11の表面に吐出した被乾燥液状物が飛散して励磁コイル13〜18に付着してしまうのを未然に防止するようにしている。
【0021】
この乾燥機構3では、励磁コイル13〜18を用いて回転体11を加熱し、この回転体11の表面で被乾燥液状物を乾燥させるようにしている。
【0022】
次に、駆動機構4の構造について説明すると、駆動機構4は、ケーシング2に固定したモータ19の駆動軸20に駆動スプロケット21を取付ける一方、回転軸9の下端に従動スプロケット22を取付け、これら駆動スプロケット21と従動スプロケット22との間に伝動チェーン23を懸架して、モータ19と回転軸9及び回転体11とを連動連結している。このモータ19は、制御機構7で駆動制御されている。
【0023】
この駆動機構4では、モータ19を駆動することによって回転軸9を図2において反時計回りに回転させ、それに伴って、回転体11を同方向に回転させるようにしている。
【0024】
次に、供給機構5の構造について説明すると、供給機構5は、被乾燥液状物を貯留した貯留タンク24に吸引ポンプ25を連結パイプ26を介して連通連結するとともに、この吸引ポンプ25にノズル27を連結パイプ28を介して連通連結している。この吸引ポンプ25は、制御機構7で駆動制御されている。
【0025】
ノズル27は、先端部を下方に向けて折曲し、先端部の吐出口29を回転体11の表面内周部の直上方位置に配置している。
【0026】
この供給機構5では、吸引ポンプ25を駆動することによって貯留タンク24から被乾燥液状物をノズル27に供給し、このノズル27の吐出口29から回転体11の表面内周部に向けて吐出するようにしている。
【0027】
このようにして、供給機構5では、ノズル27の直下方位置に被乾燥液状物を回転体11の表面に向けて吐出するための吐出部30を形成している。
【0028】
次に、回収機構6の構造について説明すると、回収機構6は、ケーシング2に固定した支持桿31にスクレーパ32を取付けている。このスクレーパ32は、回転体11の表面内周部から表面外周部までエッジ33を回転体11の表面に接触させるとともに回転体11の半径方向よりもわずかに傾斜させた状態で支持桿31に取付けられている。
【0029】
また、回収機構6は、スクレーパ32の基端部を回転体11の外側方にまで伸延させるとともに、スクレーパ32の基端部の直下方位置に回収ホッパー34を配置し、この回収ホッパー34に回収タンクを連結している。
【0030】
この回収機構6では、回転体11の表面において被乾燥液状物が乾燥することによって回転体11の表面に薄膜状に付着した乾燥固形物をスクレーパ32で剥ぎ取るとともに、剥ぎ取った乾燥固形物をスクレーパ32によって回転体11の表面上で回収ホッパー34へ案内して回収するようにしている。
【0031】
このようにして、回収機構6では、スクレーパ32の直下方位置に乾燥固形物を剥ぎ取るための剥取部35を形成している。
【0032】
次に、制御機構7の構造について説明すると、制御機構7は、駆動制御を実行するCPUや駆動プログラムを格納したメモリーや制御信号を送信するインターフェイスが内蔵されており、商用電源36が接続されている。
【0033】
この制御機構7には、インターフェイスを介して励磁コイル13〜18とモータ19と吸引ポンプ25を接続している。
【0034】
この制御機構7では、乾燥機構3の励磁コイル13〜18を個別に駆動制御して回転体11の表面を電磁誘導加熱方式で加熱するとともに、駆動機構4のモータ19を駆動して回転体11を回転させ、供給機構5の吸引ポンプ25を駆動して被乾燥液状物をノズル27から回転体11の表面に向けて吐出させるようにしている。
【0035】
乾燥装置1は、以上に説明したように構成されており、制御機構7によって乾燥機構3、駆動機構4、供給機構5を制御することによって、被乾燥液状物を加熱した回転体11の表面に吐出し、回転体11の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体11の表面に付着した乾燥固形物を回転体11の表面から剥ぎ取って回収するようにしている。
【0036】
そして、上記乾燥装置1では、回転体11の回転方向に向けて被乾燥液状物を吐出するための吐出部30と乾燥固形物を剥ぎ取るための剥取部35を配置することによって、回転体11の表面への被乾燥液状物の吐出と回転体11の表面からの乾燥固形物の剥ぎ取りとを繰り返し連続して行えるようにしている。
【0037】
しかも、上記乾燥装置1では、吐出部30と剥取部35との間に6個の励磁コイル13〜18を円周方向に向けて配置することによって、第1〜第6の励磁コイル13〜18で回転体11を加熱するための第1〜第6の加熱領域A1〜A6を形成するとともに、剥取部35と吐出部30との間に励磁コイル13〜18を配置しないことによって、回転体11を加熱せずに自然冷却するための冷却領域A7を形成している。これにより、回転体11は、回転途中において、吐出部30から剥取部35までの間で加熱され、剥取部35から吐出部30までの間で自然冷却されるようになっている。なお、吐出部30から剥取部35までの間は、被乾燥液状物の乾燥処理には寄与していないために、ここに冷却領域A7を形成しても乾燥処理に支障はない。
【0038】
そして、各励磁コイル13〜18は、制御機構7によって印加する電圧や周波数を異ならせることによって、発生する磁力を異ならせることができ、これに伴って、回転体11の発熱量を異ならせることができる。そのため、上記乾燥装置1では、制御機構7で各励磁コイル13〜18を個別制御することによって、回転体11の表面の温度分布を変化させることができるようになっている。
【0039】
以上に説明したように、上記乾燥装置1では、回転体11の近傍に励磁コイル13〜18を配設して、回転体11の表面を電磁誘導加熱によって加熱するように構成しているために、回転体11の表面を加熱するための加熱手段を小型軽量化することができ、これに伴って乾燥装置1の小型化や軽量化を図ることができる。
【0040】
また、上記乾燥装置1では、励磁コイル13〜18を回転体11の回転方向に沿って複数個配設しているために、各励磁コイル13〜18の出力を個別制御することによって回転体11の表面の温度分布を変化させることができ、被乾燥液状物に適した乾燥を行うことができる。
【0041】
さらに、上記乾燥装置1では、回転体11の表面から乾燥固形物を剥ぎ取る剥取部35と、回転体11の表面に被乾燥液状物を吐出する吐出部30との間に、励磁コイル13〜18を設けずに回転体11を自然冷却する冷却領域A7を形成しているために、吐出部30から剥取部35までの間の加熱領域A1〜A6で加熱された回転体11を冷却領域A7において自然冷却することができ、回転体11の過加熱による変形や変質などを未然に防止することができるとともに、吐出部30での回転体11の表面の温度を下げることで吐出部30から吐出された被乾燥液状物が瞬時に蒸発して被乾燥液状物が飛散するのを防止することができるので、被乾燥液状物を良好に回転体11の表面に付着させることができ、被乾燥液状物の乾燥効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る乾燥装置を示す側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同ブロック図。
【符号の説明】
【0043】
1 乾燥装置 2 ケーシング
3 乾燥機構 4 駆動機構
5 供給機構 6 回収機構
7 制御機構 8 基台
9 回転軸 10 軸受
11 回転体 12 コイル台
13〜18 励磁コイル 19 モータ
20 駆動軸 21 駆動スプロケット
22 従動スプロケット 23 伝動チェーン
24 貯留タンク 25 吸引ポンプ
26 連結パイプ 27 ノズル
28 連結パイプ 29 吐出口
30 吐出部 31 支持桿
32 スクレーパ 33 エッジ
34 回収ホッパー 35 剥取部
36 商用電源
A1〜A6 加熱領域 A7 冷却領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥液状物を加熱した回転体の表面に吐出し、回転体の表面で被乾燥液状物を乾燥させるとともに、被乾燥液状物の乾燥によって回転体の表面に付着した乾燥固形物を回転体の表面から剥ぎ取るように構成した乾燥装置において、
回転体の近傍に励磁コイルを配設して、回転体の表面を電磁誘導加熱によって加熱することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記励磁コイルを回転体の回転方向に沿って複数個配設したことを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記回転体の表面から乾燥固形物を剥ぎ取る剥取部と、前記回転体の表面に被乾燥液状物を吐出する吐出部との間に、励磁コイルを設けずに回転体を自然冷却する冷却領域を形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−247999(P2007−247999A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73882(P2006−73882)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(596091978)株式会社西村鐵工所 (9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】