説明

乾燥装置

【目的】特に小型乾燥装置としての適用に適した乾燥装置を提供する。
【構成】乾燥室20内に収容された被処理材を所定の温度および湿度条件の下で送風によって乾燥処理する乾燥装置において、乾燥室に面する少なくとも一面に、略垂直な回転軸44を中心として回転自在な首振り板41と、この首振り板の回転軸の両側にそれぞれ所定個数設置される第一および第二の送風ファン群43a,43bとを備えた首振りファン機構を設ける。第一および第二の送風ファン群のすべてを駆動する全駆動モードと、第一または第二の送風ファン群のみを駆動する片駆動モードとを所定タイミングで切替制御することにより、各駆動モードでの首振り板の回転角度位置、したがって送風ファンからの送風方向を自動的に変化させ、乾燥室内に満遍なく風を行き渡らせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜・果物・海産物・キノコなどの食材や花をその本来の新鮮な風味や色合いを損なうことなく商品価値の高い乾燥物に仕上げるために、被処理材を乾燥装置内に収容して乾燥処理を進行させることが行われている。
【0003】
このような乾燥装置としては高温で短時間に乾燥処理を行う装置が多用されてきたが、特に野菜や果物などの食材を高温で乾燥させるとその食材本来の新鮮な風味・食味や色合いが損なわれてしまい、また、魚介類などにあっては腐食を進行させてしまうという問題があった。
【0004】
この欠点を解消するため、本発明者は、比較的低温(たとえば30〜50℃)で風を利用した乾燥を行うことを提案した(特許文献1:特許第4448008号として特許成立,特許文献2)、その後の販売実績において優れた効果が確認され、評価されるに至っている。特許文献1記載の乾燥装置によれば、乾燥室内に所定時間インターバルでランダム流となるランダム風を生成し、この対流効果を利用して乾燥室内に配置した被処理材を乾燥することにより、比較的低温の乾燥室内でも均一で十分な乾燥処理効果を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−132855号公報
【特許文献2】特開2008−101901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2記載の乾燥装置は、装置の上面および側面にそれぞれ少なくとも数個の攪拌ファンを設置してこれらを所定の制御の下で断続的に運転することを前提とするため、必然的に大型の乾燥装置であることが要求される。このような大型の乾燥装置は、乾燥食材を製造業者など、乾燥処理を行うこと自体が本業であるような業者にとってはきわめて有用性が大きい。
【0007】
しかしながら、たとえば農家が生産した農作物のうち、台風や猛暑などの天候不順などの結果生育不良となってそのままでは市場に流通させることができなくなってしまったものや、必要とされる供給量を上回ってしまった余剰分などを乾燥食品に転向させるために乾燥処理を行うような場合は、より小型の乾燥装置で十分なことも多い。この場合も、前述したように高温での乾燥処理は商品価値を損なうので、常温に制御された乾燥室内の被処理材に対して風をランダムに当てることができる装置構成を採用することが望まれる。
【0008】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、上記特許文献1記載の乾燥装置において必須とされる多数の攪拌ファンを用いずとも、簡易な代替機構の採用によって、ほぼ同等の乾燥処理効率を実現することができ、特に小型乾燥装置としての適用に適した、新規な構成の乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために鋭意工夫の末に創案されたものである。すなわち、請求項1に係る本発明は、乾燥室内に収容された被処理材を所定の温度および湿度条件の下で送風によって乾燥処理する乾燥装置において、乾燥室に面する少なくとも一面に、略垂直な回転軸を中心として回転自在な首振り板と、この首振り板の回転軸の両側にそれぞれ所定個数設置される第一および第二の送風ファン群とを有する首振りファン機構を設け、且つ、これら第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動する全駆動モードと、第一の送風ファン群のファンのみを駆動する第一の片駆動モードと、第二の送風ファン群のファンのみを駆動する第二の片駆動モードとを所定のタイミングで切替制御する制御手段を設け、第一または第二の片駆動モードでの送風時に首振り板を回転軸を中心として自動的に回転させることによって送風方向を変化させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の乾燥装置において、首振り板の両側部が外方に向けて折曲または屈曲されて風受け部が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る本発明は、請求項1または2記載の乾燥装置において、首振りファン機構の上方にクロスフローファンが設けられ、乾燥室内上部の空気を取り込んで首振り板の外側領域に送り込むことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る本発明は、請求項1ないし3のいずれか記載の乾燥装置において、前記制御手段は、前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の略正面方向に送風する正面送風と、前記第一の片駆動モードで第一の送風ファン群のファンのみを駆動することにより首振り板を回転軸を中心として一方向に回転させた後に前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の正面から見て一方の斜め方向に送風する第一の斜め送風と、前記第二の片駆動モードで第二の送風ファン群のファンのみを駆動して首振り板を回転軸を中心として前記一方向とは反対方向に回転させた後に前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の正面から見て他方の斜め方向に送風する第二の斜め送風と、を所定のタイミングで切り替えることを特徴とする、。
【0013】
請求項5に係る本発明は、請求項4記載の乾燥装置において、前記第一の片駆動モードで第一の送風ファン群のファンのみが駆動されたときに首振り板は前記首振り機構設置面に当接するまで前記一方向に回転して同位置で停止し、前記第二の片駆動モードで第二の送風ファン群のファンのみが駆動されたときに首振り板は前記首振り機構設置面に当接するまで前記反対方向に回転して同位置で停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、首振りファン機構の採用によって送風ファンからの送風方向を自動的に変えることができるので、乾燥室内の被処理材に対して満遍なく風を当てて均一な乾燥処理を行うことができる効果がある。首振り板は、送風ファンが第一または第二の片駆動モードで駆動されるときに該ファンからの送風によって自動的に回転し、モータなどの駆動機構を必要としないので、低コストで且つ小型化を実現することができる。したがって、比較的小容量の乾燥室を有する小型乾燥装置として採用するに適している。
【0015】
請求項2に係る本発明によれば、首振り板の両側部が外方に向けて折曲または屈曲されて風受け部が形成されているので、首振り板の外側領域に送り込まれる空気を逃がさずにこの風受け部で受け止めて送風ファンから乾燥室内に送風することができ、送風効率したがって乾燥効率を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によれば、首振りファン機構の上方に設けたクロスフローファンで乾燥室内上部の空気を取り込んで首振り板の外側領域に送り込むので、特に首振り板の両側の風受け部の作用と相俟って、送風効率したがって乾燥効率をさらに向上させることができる。
【0017】
請求項4に係る本発明によれば、制御手段による送風ファン駆動モード制御を介して、送風ファンからの送風方向を正面送風、第一の斜め送風および第二の斜め送風に切り替えるので、乾燥室内の隅々にまで送風を行き渡らせることができ、乾燥室内の背パネル近くの奥方や前パネル近くの前方に配置された被処理材に対しても乾燥空気を当てて効率的且つ均一な乾燥処理を行うことができる。
【0018】
請求項5に係る本発明によれば、首振り板が首振り機構設置面と当接したときの位置が最大首振り位置となるので、ストッパなどを使用する必要なしに首振り角度を自在に設定することができる。モータなどの駆動機構を用いていないので、最大首振り位置で停止した後もなお片駆動モードでファンからの送風が行われても、モータに負荷が生ずるなどの不都合はない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による乾燥装置の正面図である。
【図2】この乾燥装置の首振りファン機構に用いる首振り板の正面図(a)および上面図(b)である。
【図3】該首振りファン機構による作用を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下添付図を参照して本発明の一実施形態による乾燥装置10について説明する。
【0021】
この乾燥装置10は、略箱体である本体11を有し、内部に乾燥室20を形成する。本体11は、天パネル12、底パネル13、前パネル14、背パネル15、左側パネル16および取り外し可能な右側パネル17を有する。
【0022】
前パネル14には、乾燥室内にアクセスするための開口部18が設けられるが、装置運転中(乾燥処理中)は通常はカバー(図示せず)で閉止される。図示しないが、他のパネル、たとえば左側パネル16にも必要に応じてカバーで閉止可能な開口部を形成することができる。
【0023】
左側パネル16には除湿機38が外付けされている。また、取り外し可能な右側パネル17には、ルーバー状の吸気口19および排気ファン21が設けられている。
【0024】
背パネル15には、天パネル12近くにクロスフローファン22が設けられ、その下方にクロスフローダクト23が底面パネル13に向けて下方に延長している。クロスフローダクト23は断面略コ字形に形成された金属板などからなり、背パネル15に取付けられることにより、クロスフローファン22の直下から底面に向けて下方に延長する断面矩形状の送風路を与える。また、クロスフローダクト23の内側にヒーター24が設けられる。クロスフローファン22およびクロスフローダクト23の構成や作用については本発明者による別途出願(特開2008−101901号公報)に詳述されており、本発明の主題には直接関係しないので、これ以上の説明を省略する。
【0025】
乾燥室20内には前後左右に計4本の垂直ポール25が天パネル12と底面パネル13との間に立設され、前方左右および後方左右の各2本の垂直ポール25,25間に所定の高さ間隔で複数の水平バー26,26が架け渡されている。これら前後の水平バー26,26は、食材などの被処理材を収容するトレイやバスケットなど(図示せず)を載置するための棚ないしラックとしての役割を果たす。
【0026】
本体11の上には制御ボックス27が載置されている。制御ボックス27には、この乾燥装置10の動作を制御するための制御回路や後述する首振りファン機構を作動させるためのモータなどが収容されているが、これらの構成自体は本発明の主題に直接関係しないので、詳細は割愛する。制御ボックス27の前面パネルには、電源ブレーカー28、スタートスイッチ29、温度調整ダイヤル30、湿度調整ダイヤル31、ホールドタイム用タイマー32、フィニッシュタイム用タイマー33、ヒータースイッチ34、殺菌灯スイッチ35およびクールダウン用スイッチ36が設けられている。
【0027】
乾燥室20の右側パネル17に近い領域(前面パネル14の奥方部分)には、天パネル12近くにクロスフローファン37が設けられると共に、その下方に首振りファン機構40が設けられる。
【0028】
首振りファン機構40について、さらに図2を参照して説明する。図2は首振りファン機構40の一構成要素としての首振り板41を示すものであり、ステンレスなどの矩形状金属板の両側部41b,41cを主面41aに対して所定角度(たとえば135°)をなすように一方側(乾燥装置10に組み込まれた状態において外方)に向けて折り曲げた形状を有する。主面41aには送風ファン42を挿入するための挿入穴43が左右2列にそれぞれ複数形成されている。便宜上、図2(a)左列の挿入穴を符号43a、右列の挿入穴を符号43bで示す。各列43a,43bにおいて上下に設けられる挿入穴の個数は任意であり、乾燥室20の容積などに応じて適宜選定することができる。
【0029】
送風ファン42については、図2において、左列の挿入穴43aに装着された送風ファン(この実施例では計5個)を符号42a、右列の挿入穴43bに装着された送風ファン(この実施例では計5個)を符号43bとして、それぞれを仮想線で示す。
【0030】
送風ファン42は、クロスフローファン37から首振り板41の外側(右側パネル17との間)に送り込まれた空気を乾燥室20の中央に向けて送風するものであり、制御ボックス27内の制御回路によって、左列のファン42aを駆動する左列駆動モードと、右列のファン42bを駆動する右列駆動モードと、すべてのファン42(42a,42b:この実施例では計10個)を駆動する全駆動モードの3つの駆動モードを所定時間インターバルで切替可能とされている。
【0031】
首振り板41の外面側の幅方向中央線に沿ってシャフト44(図1に点線、図2に仮想線で示す)が固着される。シャフト44の上下端は天パネル12および底パネル13上においてそれぞれ止め金具45,45で回転自在に支持されている。
【0032】
以上に述べた乾燥装置10の動作の一例について説明する。乾燥処理すべき食材などの被処理材を収容したトレイやバスケットなどを前後の水平バー26,26に掛け渡すようにして乾燥室20内に収容し、前パネル14の開口部18をカバー(図示せず)で閉止した後、スタートスイッチ29を押して乾燥装置10を始動させる。その際、温度調整ダイヤル30および湿度調整ダイヤル31を手動操作して乾燥処理に適した所望の温度および湿度を予め設定しておくか、あるいは始動直後に設定する。乾燥室20内で食材などの被処理材を乾燥処理するためには、乾燥室20内の湿度を0〜20%程度とすることが好ましく、また、乾燥室20内の温度は外気温にも左右されるが一般に30〜50℃程度とすることが好ましいので、これらの範囲において所望の温度および湿度を設定する。たとえば、外気の温度25℃、湿度60%である場合において、被処理温度を40℃、湿度を5%に設定する。なお、乾燥室20内の温度・湿度を検知するセンサーと共に外気の温度・湿度を検知するセンサーを設け(いずれも図示せず)、これらセンサーで検知された温度・湿度を制御ボックス27の前面パネルにディスプレイ表示するようにしても良い。
【0033】
乾燥装置10を始動させた後の乾燥処理は、制御ボックス27内の制御回路などによって所定の制御された条件の下で実行される。この制御は特に限定されるものではないが、たとえば、始動後にヒータースイッチ34を押すことによって開始される予熱工程と、予熱工程終了後に自動的に開始される定率乾燥工程とを経て行うことができる。
【0034】
予熱工程は、被処理材の温度が一般に10〜15℃と比較的低いため、これを所定量(たとえば最大30kg)を収容する乾燥室20内は温度が上がりにくいことから、始動直後には給排気を行わずに短時間で設定温度に到達させることを目的とする。予熱工程は、乾燥室20内の温度が設定温度に到達するか、あるいは所定時間を経過したときに終了する。乾燥室20内の温度が既に十分に高い場合は予熱工程を割愛することができる。
【0035】
定率乾燥工程は、クロスダクトファン22からの風をヒーター24で加熱してクロスフローダクト23の下端開口から乾燥室20内に送入させながら、除湿機38と排気ファン21を制御的に駆動することによって設定湿度まで除湿することを目的とする。乾燥室20内が比較的低温であるとき(たとえば20〜45℃)は除湿機38による除湿が有効であり、高温時(たとえば35℃以上)は排気ファン21による除湿が有効であるので、室内温度に応じてこれらを適宜単独で使用し、あるいは併用して除湿を行うと良い。
【0036】
また、乾燥室20内の相対湿度が20%までは活発な蒸発が得られるため、排気ファン21を2分間OFF/15秒ON(排気)を1サイクルとして通常運転を行い、20%未満からは被処理材の中心部(野菜の芯など)から表面への水分移動(薫蒸)を促すために、送風を停止する。すなわち、排気ファン21をOFF、首振り板41に装着した送風ファン42もOFF状態に維持することによって、被処理材に直接風が当たることを防止する。クロスフローダクト23からの風は被処理材に直接当たらないので、クロスフローファン22はON/OFFいずれでも良い。このときは比較的低温(たとえば20〜45℃)であっても除湿機38も停止する。こうして再び相対湿度が20%を上回ると前述の通常運転を再開し、20%を下回ると送風停止して薫蒸処理を行う。これを数回繰り返していくと相対湿度が20%未満に定着する。その後は5分間の通常運転と10分間の薫蒸処理を繰り返し、やがて設定湿度5%が得られたときにホールドタイム(HT)がスタートする。なお、上記説明では乾燥室20内の相対湿度を検知するセンサを用いて20%を閾値として通常運転と燻蒸処理とを切替制御するものとしたが、より簡便な制御手法として、経験則に基づいた時間を設定して通常運転と燻蒸処理とを切替制御しても良い。
【0037】
HTは設定温度・設定湿度での乾燥処理を行う時間であり、一般に3〜30時間の範囲内でHT用タイマー32によって任意に設定可能である。乾燥室20内に取り込まれる外気(すなわち乾燥装置10の設置場所の温度)が過剰に高温である場合は、適宜エアコンなどの冷房機を運転して外気温を下げておくことが好ましい。HTが終了するとフィニッシングタイム(FT)がスタートし、ヒーター24および排気ファン21を停止させ、外気を遮断して湿気の戻りを防止しながら乾燥室20をゆっくりと冷却していく。FTはFT用タイマー33で任意に設定可能であり、場合によっては省略しても良い。クールダウン用スイッチ35はHT終了後に有効となるスイッチであり、これを押すことにより、除湿機38とヒーター24を停止され、クロスダクトファン22,37、送風ファン42および排気ファン21を一斉に作動させて乾燥室20内の被処理材を回収可能な温度(たとえば30℃以下)まで下げる目的のクールダウン処理が行われる。
【0038】
HTにおける乾燥処理中、クロスフローファン22は所定時間インターバルでON/OFFを繰り返すように制御される。クロスフローファン22がONのとき、乾燥室20の上部から空気を取り込んで、直下のクロスフローダクト23の上端開口からクロスフローダクト23内部の通気路に送り込む。この通気路を通る間にヒーター24で所定温度に加熱された空気は、クロスフローダクト23の下端開口から乾燥室20に放出されて、乾燥室20内に高温乾燥空気の対流を形成する。
【0039】
一方、首振りファン機構40の上部に設置されたクロスフローファン37はHTにおける乾燥処理中常時ONであっても良く、周囲から取り込んだ空気を下方領域に送り込む。すなわち、クロスフローファン37からの空気は、右側パネル17と首振り板41との間のスペースに送り込まれるが、既述したように首振り板41の両側部41b,41cは装置外方に向けて所定角度で折り曲げられているので、クロスフローファン37からの空気はこの両側部41b,41cによって実質的に首振り板41の幅方向(装置の前後方向)への拡散が遮られることになる。すなわち、両側部41b,41cはクロスフローファン37からの空気を首振り板41の幅領域から逃がさないようにしてファン42からの送風を効果的に行うための風受け部として機能する。
【0040】
ここで、首振り板41はシャフト44を回転軸として(回転)首振り自在であり、シャフト44の両側に左右列のファン42a,42bが対称に振り分けられている。したがって、左右列のファン42a,42bのすべてを駆動する全駆動モードのときは、首振り板41は左右側パネル16,17と略平行な状態で実質的に静止するが、左列のファン42aのみを駆動する左列駆動モードのときは、該ファン42aから乾燥室20内に放出される風の反作用によって首振り板41はシャフト44を中心として図2(b)矢印X方向に回転し、右列のファン42bのみを駆動する右列駆動モードのときは、該ファン42bから乾燥室20内に放出される風の反作用によって首振り板41はシャフト44を中心として図2(b)矢印Y方向に回転する。
【0041】
この首振りファン機構40による作用についてさらに図3を参照して説明すると、左右列のファン42a,42bのすべてを駆動する全駆動モードのときは、図3(a)に示すように、首振り板41は左右側パネル16,17と略平行な状態で実質的に静止し、ファン42a,42bからは矢印A方向、すなわち乾燥室20の幅方向(図3上方向)に沿って真直ぐに風を送り込む。しかしながら、この全駆動モードだけでは、乾燥室20内の前方(前パネル14の近く)や奥方(背パネル15の近く)に配置された被処理材には風が行き渡りにくく、乾燥処理が十分に行われない。
【0042】
この状態から左列駆動モードに切り替えて左列のファン42aのみを駆動すると、首振り板41がシャフト44を中心として図2(b)矢印X方向に回転して、左側部41bの側端が右側パネル17の内面に当接するに至った回転角度位置で停止する。そして、この停止位置で再び全駆動モードに切り替えることにより、首振り板41の主面41aに対して直角方向、すなわち乾燥室20の幅方向に対しては所定の角度(+α)を持った矢印B方向に風を送り込むことができる(図3(b))。
【0043】
この状態から右列駆動モードに切り替えて右列のファン42bのみを駆動すると、首振り板41がシャフト44を中心として図2(b)矢印Y方向に回転して、右側部41cの側端が右側パネル17の内面に当接するに至った回転角度位置で停止する。そして、この停止位置で再び全駆動モードに切り替えることにより、首振り板41の主面41aに対して直角方向、すなわち乾燥室20の幅方向に対しては所定の角度(−α)を持った矢印C方向に風を送り込むことができる(図3(c))。
【0044】
したがって、たとえば、全駆動モードですべてのファン42(42a,42b)を10分間作動させた後、左列駆動モードに切り替えて左列のファン42aのみを2分間作動させて図3(b)の状態が得られた後に再び全駆動モードに切り替えてすべてのファン42を10分間作動させ、次いで、右列駆動モードに切り替えて右列のファン42bのみを2分間作動させて図3(c)の状態が得られた後に再び全駆動モードに切り替えてすべてのファン42を10分間作動させるようなファン駆動サイクルを予め制御回路にプログラミングしておくことにより、乾燥室20の全体に満遍なく風を行き渡らせることができる。首振り板41は送風の反作用で回転して右側パネル17の内面に当接してその位置で停止するものであって、モータなどの駆動機構を使用しないので、低コスト且つ小型化に装置構成することができると共に、停止位置(図3(b)または図3(c))に到達した後においてもなお片側ファンのみの駆動が継続することによってさらに同方向に回転させようとする力が働いたとしても、モータに過剰な負荷をかけるような欠点を生じない。したがって、厳密な時間制御を行う必要がない。また、このようにファン駆動モードを切り替えることにより、乾燥室20内にランダム気流を生成させると共に、ファン42から略水平方向に送り込まれる気流がクロスフローダクト23の下端から放出される高温乾燥空気の上昇を妨げ、乾燥室20内に拡散する作用を果たすので、乾燥室20内の温度および湿度を均一にする効果がより顕著に得られることになる。
【0045】
以上に述べた実施形態は限定的なものではなく、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて様々に変更可能である。
【0046】
たとえば、上述の実施形態における首振りファン機構40は一例にすぎず、同様の作用効果を実現する限りにおいて他の構成を採用しても良い。この実施形態では、回転自在のシャフト44を首振り板41の幅方向中心に沿って固着したが、固定シャフトに対して首振り板41を回転自在とする構成であっても良い。
【0047】
また、首振り板41の両側部41b,41cを装置外方に向けて所定角度で折り曲げることによって風受け部として機能させているが、同様の機能を実現するものであればその形状は限定されず、たとえば両側部41b,41cを円弧状に屈曲させて風受け部としても良い。
【0048】
また、首振りファン機構40は乾燥室20に面した少なくとも一面に設けられるものであり、図示実施形態のように左右側パネル16,17のいずれか一方または両方に近接して設けても良いし、あるいは、背パネル15に近接して乾燥室20の奥方に設けても良い。この場合、クロスフローファン22およびクロスフローダクト23(およびその内部のヒーター24)は左右側パネル16,17のいずれか一方または両方に設けることができる。
【0049】
また、首振り板41に左右に振り分けて設置される左列および右列の送風ファン42a,42bの個数は乾燥室20の容量などに応じて任意に選定することができる。また、左列および右列のファン42a,42bは各1列に限定されず、乾燥室20の容量などに応じて各々複数列に送風ファンを設置しても良い。
【0050】
さらに、図示実施形態では、左列駆動モードでは左列のファン42aをすべて同時に駆動し、右列駆動モードでは右列のファン42bをすべて同時に駆動するように制御しているが、左右列のファン42a,42bの中で上下に並ぶ複数のファンを個別に駆動制御可能にして、より厳密な温度・湿度制御を行うようにしても良い。
【0051】
また、図示されていないが、首振りファン機構40における各ファン42(42a,42b)の外面側に光触媒メッシュを貼着しておくと、この光触媒メッシュを通過した空気がファン42から乾燥室20内に送り込まれることになるので、空気中の浮遊菌を除去する対策として有効である。
【符号の説明】
【0052】
10 乾燥装置
11 本体
12 天パネル
13 底パネル
14 前パネル
15 背パネル
16 左側パネル
17 右側パネル
18 開口部
19 吸気口
20 乾燥室
21 排気ファン
22 クロスフローファン
23 クロスフローダクト
24 ヒーター
25 垂直ポール
26 水平バー
27 制御ボックス(制御手段)
28 電源ブレーカー
29 スタートスイッチ
30 温度調整ダイヤル
31 湿度調整ダイヤル
32 ホールドタイム用タイマー
33 フィニッシュタイム用タイマー
34 ヒータースイッチ
35 殺菌灯スイッチ
36 クールダウン用スイッチ
37 クロスフローファン
38 除湿機(エアコン)
40 首振りファン機構
41 首振り板
41a 主面
41b,41c 両側部(風受け部)
42 送風ファン
42a 左列のファン(第一の送風ファン群)
42b 右列のファン(第二の送風ファン群)
43 挿入穴
43a 左列の挿入穴
43b 右列の挿入穴
44 シャフト(回転軸)
45 止め金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室内に収容された被処理材を所定の温度および湿度条件の下で送風によって乾燥処理する乾燥装置において、乾燥室に面する少なくとも一面に、略垂直な回転軸を中心として回転自在な首振り板と、この首振り板の回転軸の両側にそれぞれ所定個数設置される第一および第二の送風ファン群とを有する首振りファン機構を設け、且つ、これら第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動する全駆動モードと、第一の送風ファン群のファンのみを駆動する第一の片駆動モードと、第二の送風ファン群のファンのみを駆動する第二の片駆動モードとを所定のタイミングで切替制御する制御手段を設け、第一または第二の片駆動モードでの送風時に首振り板を回転軸を中心として自動的に回転させることによって送風方向を変化させるようにしたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
首振り板の両側部が外方に向けて折曲または屈曲されて風受け部が形成されることを特徴とする、請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
首振りファン機構の上方にクロスフローファンが設けられ、乾燥室内上部の空気を取り込んで首振り板の外側領域に送り込むことを特徴とする、請求項1または2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の略正面方向に送風する正面送風と、前記第一の片駆動モードで第一の送風ファン群のファンのみを駆動することにより首振り板を回転軸を中心として一方向に回転させた後に前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の正面から見て一方の斜め方向に送風する第一の斜め送風と、前記第二の片駆動モードで第二の送風ファン群のファンのみを駆動して首振り板を回転軸を中心として前記一方向とは反対方向に回転させた後に前記全駆動モードで第一および第二の送風ファン群のすべてのファンを駆動して首振りファン機構設置面の正面から見て他方の斜め方向に送風する第二の斜め送風と、を所定のタイミングで切り替えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記第一の片駆動モードで第一の送風ファン群のファンのみが駆動されたときに首振り板は前記首振り機構設置面に当接するまで前記一方向に回転して同位置で停止し、前記第二の片駆動モードで第二の送風ファン群のファンのみが駆動されたときに首振り板は前記首振り機構設置面に当接するまで前記反対方向に回転して同位置で停止することを特徴とする、請求項4記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167911(P2012−167911A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31498(P2011−31498)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(504412244)有限会社 サント電業 (5)
【Fターム(参考)】