亀裂形状算出方法及び亀裂生成履歴推定方法
【課題】 本発明は、亀裂を撮像した後に2値化処理を行った亀裂の2値画像に対して、亀裂の周りにできる分岐した短い髭のような亀裂(以下、髭)と本線となる亀裂(以下、主亀裂)の角度を安定して計算し、亀裂の生成履歴を推定するアルゴリズムを提供する。
【解決手段】 亀裂と髭とを検知し、両者の各付け根の角度を算出する際に各交わり部分の交わり角を、付け根の交わり点を中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部と髭部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、得た角度の分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法を与えるものである。
【解決手段】 亀裂と髭とを検知し、両者の各付け根の角度を算出する際に各交わり部分の交わり角を、付け根の交わり点を中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部と髭部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、得た角度の分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法を与えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建造物の劣化による亀裂の生成履歴を推定するための方法に関する。また、半導体等の微細電子素子の生産過程における素子の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は画像の処理によって、形状の認識を行うものである。特に、画像を2値化して幾何学形状を数値化し認識を行うものである。画像を2値化し、幾何学情報を抽出する方法に関しては、例えば、安居院猛、長尾智晴著の「画像の処理と認識」(昭晃堂 1992年発行)に詳しい。
【0003】
また、亀裂の形状を画像処理によって測定、認識する技術に関しては例えば、特許文献1参照。
【特許文献1】特開平6-148089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
亀裂の生成過程が図2の(a)に示すように両側からの引っ張られることにより生じるものの場合、図2(b),(c),(d)に示すように亀裂に髭の生成が起こることが知られている。(J. Fineberg, M. Marder, "Instability in Dyanmics Fracture" Physics Report 313 (1999) 1-108を参照。)このメカニズムは次のようなものである。(b)に示したものは亀裂が進行に先端に掛かる張力の絶対値を模式的に表示している。黒い方が張力絶対値が大きく、白い方が小さい。亀裂の存在のために張力の集中が非対称となり、ある種の不安定性があると(c)に示すように、亀裂のできる部分が分岐する場合がある。しかし、(d)に示すように、どちらかの内、より不安定である方に亀裂が進行し、やがてもう片方の方には張力が集中が途絶える。それはあたかも亀裂にそった髭が生えたように見えるので、本明細書ではそれを亀裂の髭と以下呼ぶこととする。このように亀裂の髭は亀裂のできる方向にが末広がりに広がるように生成される。このことは同時に髭の生成履歴が髭の亀裂との角度によって推定できることを意味することとなる。
【0005】
亀裂は多くの場合様々な弊害を生むことが容易に推測される。よってその発生原因の同定とのためにも、亀裂の生成過程及び初期亀裂の発生位置を推定することは産業的に重要な意味を持つ。
【0006】
本発明の関する課題はとしては図3に示す亀裂の髭と亀裂との角度を測定して、鋭角方向に亀裂が進行したとして、生成履歴を推定しようとするものである。
【0007】
しかしながら図4と図5に示すように、画素精度で定義されたものの角度を推定することは難しいという問題がある。図4は亀裂画像を所望の方法で2値化した後に細線化した細線図を示している。図3のある髭の付け根を拡大して見たのが図4及び図5である。図5において、図4の図形から分岐の角度を計算することを試みている。しかしながら、図5に示すように、画素解像度のために分岐点が一意に定まらず、そのため異なる分岐点と思われる始点から角度を計算しようとすると角度が様々な値を示すという困難が生じていることを示している。一般にパターンマッチング等による分岐点の決定は二値化処理に強く依存し、数画素程度のオーダーで揺らぐことが経験的に知られている。従って、このように分岐点の見なし方に強く依存する計測結果は信頼性の低いものと考えざるを得ない。
【0008】
また、髭は一般的には曲がっており、分岐点の髭が亀裂の生成時の情報をもっているのであって、例えば、図7の円で囲まれた部分の髭のように、髭の角度を分岐点から離れる方向の漸近的な振る舞いによって決めることは妥当ではない。よって、本発明の課題はこのような細線画像として与えられた亀裂細線図から、髭の付け根の角度を算出することにある。
【0009】
つまり、髭の付け根の角度を算出する合理的な方法とそれによる亀裂の生成過程を推定するのが本発明の課題であり、目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると亀裂を撮像した後に2値化処理を行った亀裂の2値画像に対して、所望の細線化処理を行い、亀裂に相当する連結された該細線化された亀裂画像の内最も弧として長い部分を主亀裂部と称し、該主亀裂部と該主亀裂部から分岐した短い複数の分岐亀裂部分とを検知し、両者の各付け根の角度を算出することにより、亀裂の形状を検知する方法において、該各付け根部分の交わり部分の交わり角を、付け根の交わりを中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部及び分岐亀裂部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、該亀裂形状算出方法を利用して得た角度分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
図6に示したように、本発明のアルゴリズムを利用すると、どこを分岐点と定めるかにあまり強くは依存せずに、角度が決まることがわかる。つまり、本発明の課題の部分で述べたことが解決されたことになる。このことにより亀裂の固有の形状を高精度で計算でき、亀裂の生成履歴の推定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の亀裂形状髭角度算出方法について述べる。
【0013】
図3において示したように亀裂は所望の方法で既に2値化され、画素解像度で細線化されている。それらは予め、パターンマッチング等により端点であるかどうかの判定ができ、それらによって、各髭の認識と端点から1画素ずつ同時に連結成分を模擬的に消去することにより亀裂の本線と、髭の区別も出来ており、髭と亀裂との分岐点も、所望のパターンマッチングによって同定されているとする。これにより、各髭には自然数Nが振られており、髭を表現している画素列が与えられているとしてよい。
【0014】
与えられた髭の番号に応じて、以下のアルゴリズムを実行する。図1に示したのが、ある髭の角度を算出するアルゴリズムである。
【0015】
適当なパターンマッチングによって分岐点を定め、その後、最小半径R0の円と最大半径R1の円(R0<R1)によってはさまれるドーナツ型の円盤内に含まれる画素に対して、平均角度を所望の方法で算出し、その平均角度を、髭部及び亀裂部に対して計算を行い、それから亀裂と髭の角度を算出する方法である。本実施例では以下に示すように領域内の角度の平均を利用しているが、その限りではない。図6に示すものが、本発明の方法を利用した角度の計算方法であるが、図から分かるように、分岐点を何処に指定するかに強く依存せず、ほぼ同程度の角度を算出している。上述したように、パターンマッチングによる分岐点の同定は二値化処理に強く依存することが経験的に知られているので、本発明の方法が分岐点での角度の計算方法のこの特徴は重要なものとなる。また、亀裂を表現する細線化された画像は予め亀裂に沿って一方向の向きが定義されており、その向きに対して、その角度が鋭角か鈍角かを測定する。
【0016】
このアルゴリズムは図13及び図14に示す計算機内のハードディスクに収められている。本実施例は図1に示したフローチャートに従って本発明を計算機上で行う場合を説明するものである。ここでいう計算機とは図13及び図14に示すようにCPU(116)やメモリ(118)等からなる演算処理部、ハードディスク(117)やフロッピー(登録商標)ディスク110からなる記憶装置部、キーボード115やマウス114等からなる入力部そしてディスプレイ112等からなる出力表示部などで構成されているシステムである。各演算部等は、本体111に収まっている。
【0017】
計算機はメモリ上に図1に示したフローチャートに沿って設計、コード化されたプログラムをロードし、必要な計算領域を確保し、適当な方法で入力された画像やパラメータに基づき所定の演算処理を行い、その結果得られた領域上での物理量の値をハードディスク等に書き込んで記憶させたり、ディスプレイ上に表示させる。
【0018】
ここで、本発明のアルゴリズムを流れ図1に沿って示す。上記に述べたように亀裂画像は所望の方法で既に2値化され、画素解像度で細線化されている。さらに、予め、パターンマッチング等により端点であるかどうかの判定ができ、それらによって、各髭の認識と端点から1画素ずつ同時に連結成分を模擬的に消去することにより亀裂の本線と、髭の区別も出来ており、髭と亀裂との分岐点も、所望のパターンマッチングによって同定されているとする。これにより、各髭には自然数Nが振られており、髭を表現している画素列が与えられている。
【0019】
番号付けられたある髭の1つに着目する。本発明は図1の流れ図に示すようにある窓パラメータとして2つの半径を用意して、それにより平均角度を計算した後にその差として亀裂と髭の角度を計算する。
【0020】
図1の流れ図で、初期化の後ステップS1で、分岐点を決定する。図6に示すように、本発明のアルゴリズムを利用すると算出される角度がこの分岐点の認定に強く依存しないので、所望方法で認定すればよい。本実施例ではパターンマッチングにより行っている。
【0021】
ステップS2で、パラメータR0とR1(R0 < R1)と設定する。本実施例ではパラメータは事前に決定されているとする。これが円の半径に相当し、分岐点から半径rがR0≦ r ≦ R1となる領域を窓領域とする。
【0022】
ステップS3で、該窓領域に入る対象画素をチェックする。但し、内外の判定は、例えば、各画素を2次元平面内の格子で構成された胞に相当すると考え、そのうちの何割がその領域の中に入っているかどうかも含め内外判定する。但し、1画素に相当する部分の面積は1とする。図8が、その計算結果を示した図である。平均角度はそれらの領域に内にはいった面積を重みとして掛けた画素中心の分岐点を中心とするあるリファレンス軸(本実施例では画像の横方向の軸)からの角度の和を全体の領域内の面積で割ることで算出される。ステップS3の結果を図8(b)に示している。図8(b)は各画素中心の角度に対する重みを示している。ステップS4で、各対象画素の角度を計算する。ステップS5で、髭部及び亀裂の平均角度をそれぞれ計算する。ステップS6で図6に示すように髭部と亀裂の分岐点の前部分と後の部分の3種類の平均角度θ1、θ2、θ3が算出されることとなる。
【0023】
このような処理を各髭について行い、全ての髭の亀裂との角度を算出することとなる。この結果を利用して、鋭角方向に亀裂が進むことを利用して、図9のように亀裂の進行履歴を推定することができる。矢印が亀裂の推定した進行方向を示している。本実施例では、このような処理もコンピュータ内の本アルゴリズムを利用したソフトウエアで行い、亀裂図形に記入するようになっている。また、これらの矢印が逆方向を向いているところを亀裂の発生点として、図9の灰色で示しように発生候補領域を図に書き入れることも行っている。
【0024】
図12に沿って、この流れを示す。ステップSSS0で初期化の中でIを1としている。SSS1でI番目の髭に対して角度の計算を行っている。SSS2で全部の髭の計算を終えたかどうかの判定を行い、まだであれば、SSS5に進みIをI+1に変更する。このような髭の付け根での角度計算を終えた後に、SSS3において、各髭の鋭角方向の判定を行い、SSS4で図9のような表示を行い、ステップSSS6に移行し終了する。
【0025】
<実施形態2>
実施例1では、2つの窓パラメータを手で用意したが、これらを自動的に与えてもよい。図7の円で囲んだ部分に示したように外側の窓の半径R1が大きすぎるのも、亀裂の髭の付け根の角度を測定したいという立場から考えると望ましくないことが分かっている。そこで、R1には上限が必須である。また、R0は図5に示したことと同じ理由で、R0が小さすぎると分岐点の取り方によって角度が大きく変化して望ましくない。しかしながら、欲する角度はなるたけ髭の付け根の情報のみから構成されていることが望ましい。
【0026】
これらの相矛盾するような問題を解決するために、図10に示すようにR1は最大値R1maxより小さい領域で、R0をパラメータとして変化させたときに、できるだけ小さいR0で、角度θ1を計算した際に、角度θ1のR1依存性が小さいところを探し出し、そこでの計算値を、着目する分岐点でのθ1とするアルゴリズムを採用する。図6の〇で囲んだ場所では、R1を変化させても計算されたθ1の変化が少なくなっている。本実施例ではこの領域での角度を採用するものである。これを流れ図として表現したものが図11である。
【0027】
SS0で開始したとして、R0を適当に定める。R0に対して、R1をSS1で設定する。SS2で実施例1で示したようなアルゴリズムで角度θ1を計算する。複数のR1に対する角度依存性を計算したかどうかの判定のためにSS3であるM(本実施例では3としている。)より、今までの回数が多いかどうかの判定をしている。もしも、十分計算されていれば、つまりMを超えていれば、SS4において今まで計算された計算値の現在のR1の近傍の値を比較して、それらの差がある値δより小さくあれば、その中の定期等な値をSS5のように設定して、SS6で正常終了をする。SS4では3つの値の比較を行っているが比較する数は2つでも、またこれより多くとも構わない。
【0028】
SS3で十分計算されていない場合あるいはSS4で差がδより大きい場合はSS7に移行する。ここで、R1がR1許容値の最大R1maxを超えていなければ、SS8に移り、R1を変化させSS2に向かう。R1は整数である必要はないので、SS8での変化量は1でなくともよい。
【0029】
また、SS7でR1がR1maxを超えた場合はSS9に移行し、R0がR0の許容値の最大値R0maxより大きくなければSS10でR0の大きさを更新する。SS10ではR0を1ずつ増やすようにしているが、R0も整数である必要はないので、他の値でもよい。このようにして新たなR0に対して、SS1から同様の処理を行う。もしも、このようなことでSS6の正常終了にたどり着かない場合は、SS11にたどり着き異常終了する。異常終了の場合はそこで、角度が計算されなかったとする。
【0030】
このような処理をθ2およびθ3について行い、自動的な窓を利用した角度計算が可能となる。
【0031】
この方法を利用することで、実施例1で示したように、図9に示すような亀裂の履歴推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の亀裂形状算出方法の流れ図。
【図2】本発明の亀裂生成履歴方法の根拠を示す説明図。
【図3】本実施例1、2で取り扱う亀裂画像を2値化細線化した後の髭のある亀裂図形の説明図。
【図4】本発明の対象となる髭と亀裂の分岐領域の説明図。
【図5】本発明の亀裂形状計算方法の課題の説明図。
【図6】本発明の亀裂形状計算方法の効果の説明図。
【図7】本発明の亀裂形状計算方法の効果の説明図。
【図8】本実施例1の平均角度を計算する際の説明図。
【図9】本実施例1の亀裂生成履歴推定方法の実施結果の説明図。
【図10】実施例2の亀裂形状計算方法の窓のサイズの最適化法の説明図。
【図11】実施例2の亀裂形状計算方法の窓のサイズの最適化法のアルゴリズムの流れ図。
【図12】実施例1の亀裂発生履歴推定方法のアルゴリズムの流れ図。
【図13】本発明の亀裂幅算出方法を搭載した装置の説明図。
【図14】本発明の亀裂幅算出方法を搭載した装置の説明図。
【符号の説明】
【0033】
111 計算機の本体
112 ディスプレイ
113 フロッピー(登録商標)ディスクドライブ
114 マウス
115 キーボード
110 フロッピー(登録商標)ディスク
116 CPU
117 ハードディスク
118 メモリ
【技術分野】
【0001】
建造物の劣化による亀裂の生成履歴を推定するための方法に関する。また、半導体等の微細電子素子の生産過程における素子の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は画像の処理によって、形状の認識を行うものである。特に、画像を2値化して幾何学形状を数値化し認識を行うものである。画像を2値化し、幾何学情報を抽出する方法に関しては、例えば、安居院猛、長尾智晴著の「画像の処理と認識」(昭晃堂 1992年発行)に詳しい。
【0003】
また、亀裂の形状を画像処理によって測定、認識する技術に関しては例えば、特許文献1参照。
【特許文献1】特開平6-148089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
亀裂の生成過程が図2の(a)に示すように両側からの引っ張られることにより生じるものの場合、図2(b),(c),(d)に示すように亀裂に髭の生成が起こることが知られている。(J. Fineberg, M. Marder, "Instability in Dyanmics Fracture" Physics Report 313 (1999) 1-108を参照。)このメカニズムは次のようなものである。(b)に示したものは亀裂が進行に先端に掛かる張力の絶対値を模式的に表示している。黒い方が張力絶対値が大きく、白い方が小さい。亀裂の存在のために張力の集中が非対称となり、ある種の不安定性があると(c)に示すように、亀裂のできる部分が分岐する場合がある。しかし、(d)に示すように、どちらかの内、より不安定である方に亀裂が進行し、やがてもう片方の方には張力が集中が途絶える。それはあたかも亀裂にそった髭が生えたように見えるので、本明細書ではそれを亀裂の髭と以下呼ぶこととする。このように亀裂の髭は亀裂のできる方向にが末広がりに広がるように生成される。このことは同時に髭の生成履歴が髭の亀裂との角度によって推定できることを意味することとなる。
【0005】
亀裂は多くの場合様々な弊害を生むことが容易に推測される。よってその発生原因の同定とのためにも、亀裂の生成過程及び初期亀裂の発生位置を推定することは産業的に重要な意味を持つ。
【0006】
本発明の関する課題はとしては図3に示す亀裂の髭と亀裂との角度を測定して、鋭角方向に亀裂が進行したとして、生成履歴を推定しようとするものである。
【0007】
しかしながら図4と図5に示すように、画素精度で定義されたものの角度を推定することは難しいという問題がある。図4は亀裂画像を所望の方法で2値化した後に細線化した細線図を示している。図3のある髭の付け根を拡大して見たのが図4及び図5である。図5において、図4の図形から分岐の角度を計算することを試みている。しかしながら、図5に示すように、画素解像度のために分岐点が一意に定まらず、そのため異なる分岐点と思われる始点から角度を計算しようとすると角度が様々な値を示すという困難が生じていることを示している。一般にパターンマッチング等による分岐点の決定は二値化処理に強く依存し、数画素程度のオーダーで揺らぐことが経験的に知られている。従って、このように分岐点の見なし方に強く依存する計測結果は信頼性の低いものと考えざるを得ない。
【0008】
また、髭は一般的には曲がっており、分岐点の髭が亀裂の生成時の情報をもっているのであって、例えば、図7の円で囲まれた部分の髭のように、髭の角度を分岐点から離れる方向の漸近的な振る舞いによって決めることは妥当ではない。よって、本発明の課題はこのような細線画像として与えられた亀裂細線図から、髭の付け根の角度を算出することにある。
【0009】
つまり、髭の付け根の角度を算出する合理的な方法とそれによる亀裂の生成過程を推定するのが本発明の課題であり、目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると亀裂を撮像した後に2値化処理を行った亀裂の2値画像に対して、所望の細線化処理を行い、亀裂に相当する連結された該細線化された亀裂画像の内最も弧として長い部分を主亀裂部と称し、該主亀裂部と該主亀裂部から分岐した短い複数の分岐亀裂部分とを検知し、両者の各付け根の角度を算出することにより、亀裂の形状を検知する方法において、該各付け根部分の交わり部分の交わり角を、付け根の交わりを中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部及び分岐亀裂部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、該亀裂形状算出方法を利用して得た角度分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
図6に示したように、本発明のアルゴリズムを利用すると、どこを分岐点と定めるかにあまり強くは依存せずに、角度が決まることがわかる。つまり、本発明の課題の部分で述べたことが解決されたことになる。このことにより亀裂の固有の形状を高精度で計算でき、亀裂の生成履歴の推定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の亀裂形状髭角度算出方法について述べる。
【0013】
図3において示したように亀裂は所望の方法で既に2値化され、画素解像度で細線化されている。それらは予め、パターンマッチング等により端点であるかどうかの判定ができ、それらによって、各髭の認識と端点から1画素ずつ同時に連結成分を模擬的に消去することにより亀裂の本線と、髭の区別も出来ており、髭と亀裂との分岐点も、所望のパターンマッチングによって同定されているとする。これにより、各髭には自然数Nが振られており、髭を表現している画素列が与えられているとしてよい。
【0014】
与えられた髭の番号に応じて、以下のアルゴリズムを実行する。図1に示したのが、ある髭の角度を算出するアルゴリズムである。
【0015】
適当なパターンマッチングによって分岐点を定め、その後、最小半径R0の円と最大半径R1の円(R0<R1)によってはさまれるドーナツ型の円盤内に含まれる画素に対して、平均角度を所望の方法で算出し、その平均角度を、髭部及び亀裂部に対して計算を行い、それから亀裂と髭の角度を算出する方法である。本実施例では以下に示すように領域内の角度の平均を利用しているが、その限りではない。図6に示すものが、本発明の方法を利用した角度の計算方法であるが、図から分かるように、分岐点を何処に指定するかに強く依存せず、ほぼ同程度の角度を算出している。上述したように、パターンマッチングによる分岐点の同定は二値化処理に強く依存することが経験的に知られているので、本発明の方法が分岐点での角度の計算方法のこの特徴は重要なものとなる。また、亀裂を表現する細線化された画像は予め亀裂に沿って一方向の向きが定義されており、その向きに対して、その角度が鋭角か鈍角かを測定する。
【0016】
このアルゴリズムは図13及び図14に示す計算機内のハードディスクに収められている。本実施例は図1に示したフローチャートに従って本発明を計算機上で行う場合を説明するものである。ここでいう計算機とは図13及び図14に示すようにCPU(116)やメモリ(118)等からなる演算処理部、ハードディスク(117)やフロッピー(登録商標)ディスク110からなる記憶装置部、キーボード115やマウス114等からなる入力部そしてディスプレイ112等からなる出力表示部などで構成されているシステムである。各演算部等は、本体111に収まっている。
【0017】
計算機はメモリ上に図1に示したフローチャートに沿って設計、コード化されたプログラムをロードし、必要な計算領域を確保し、適当な方法で入力された画像やパラメータに基づき所定の演算処理を行い、その結果得られた領域上での物理量の値をハードディスク等に書き込んで記憶させたり、ディスプレイ上に表示させる。
【0018】
ここで、本発明のアルゴリズムを流れ図1に沿って示す。上記に述べたように亀裂画像は所望の方法で既に2値化され、画素解像度で細線化されている。さらに、予め、パターンマッチング等により端点であるかどうかの判定ができ、それらによって、各髭の認識と端点から1画素ずつ同時に連結成分を模擬的に消去することにより亀裂の本線と、髭の区別も出来ており、髭と亀裂との分岐点も、所望のパターンマッチングによって同定されているとする。これにより、各髭には自然数Nが振られており、髭を表現している画素列が与えられている。
【0019】
番号付けられたある髭の1つに着目する。本発明は図1の流れ図に示すようにある窓パラメータとして2つの半径を用意して、それにより平均角度を計算した後にその差として亀裂と髭の角度を計算する。
【0020】
図1の流れ図で、初期化の後ステップS1で、分岐点を決定する。図6に示すように、本発明のアルゴリズムを利用すると算出される角度がこの分岐点の認定に強く依存しないので、所望方法で認定すればよい。本実施例ではパターンマッチングにより行っている。
【0021】
ステップS2で、パラメータR0とR1(R0 < R1)と設定する。本実施例ではパラメータは事前に決定されているとする。これが円の半径に相当し、分岐点から半径rがR0≦ r ≦ R1となる領域を窓領域とする。
【0022】
ステップS3で、該窓領域に入る対象画素をチェックする。但し、内外の判定は、例えば、各画素を2次元平面内の格子で構成された胞に相当すると考え、そのうちの何割がその領域の中に入っているかどうかも含め内外判定する。但し、1画素に相当する部分の面積は1とする。図8が、その計算結果を示した図である。平均角度はそれらの領域に内にはいった面積を重みとして掛けた画素中心の分岐点を中心とするあるリファレンス軸(本実施例では画像の横方向の軸)からの角度の和を全体の領域内の面積で割ることで算出される。ステップS3の結果を図8(b)に示している。図8(b)は各画素中心の角度に対する重みを示している。ステップS4で、各対象画素の角度を計算する。ステップS5で、髭部及び亀裂の平均角度をそれぞれ計算する。ステップS6で図6に示すように髭部と亀裂の分岐点の前部分と後の部分の3種類の平均角度θ1、θ2、θ3が算出されることとなる。
【0023】
このような処理を各髭について行い、全ての髭の亀裂との角度を算出することとなる。この結果を利用して、鋭角方向に亀裂が進むことを利用して、図9のように亀裂の進行履歴を推定することができる。矢印が亀裂の推定した進行方向を示している。本実施例では、このような処理もコンピュータ内の本アルゴリズムを利用したソフトウエアで行い、亀裂図形に記入するようになっている。また、これらの矢印が逆方向を向いているところを亀裂の発生点として、図9の灰色で示しように発生候補領域を図に書き入れることも行っている。
【0024】
図12に沿って、この流れを示す。ステップSSS0で初期化の中でIを1としている。SSS1でI番目の髭に対して角度の計算を行っている。SSS2で全部の髭の計算を終えたかどうかの判定を行い、まだであれば、SSS5に進みIをI+1に変更する。このような髭の付け根での角度計算を終えた後に、SSS3において、各髭の鋭角方向の判定を行い、SSS4で図9のような表示を行い、ステップSSS6に移行し終了する。
【0025】
<実施形態2>
実施例1では、2つの窓パラメータを手で用意したが、これらを自動的に与えてもよい。図7の円で囲んだ部分に示したように外側の窓の半径R1が大きすぎるのも、亀裂の髭の付け根の角度を測定したいという立場から考えると望ましくないことが分かっている。そこで、R1には上限が必須である。また、R0は図5に示したことと同じ理由で、R0が小さすぎると分岐点の取り方によって角度が大きく変化して望ましくない。しかしながら、欲する角度はなるたけ髭の付け根の情報のみから構成されていることが望ましい。
【0026】
これらの相矛盾するような問題を解決するために、図10に示すようにR1は最大値R1maxより小さい領域で、R0をパラメータとして変化させたときに、できるだけ小さいR0で、角度θ1を計算した際に、角度θ1のR1依存性が小さいところを探し出し、そこでの計算値を、着目する分岐点でのθ1とするアルゴリズムを採用する。図6の〇で囲んだ場所では、R1を変化させても計算されたθ1の変化が少なくなっている。本実施例ではこの領域での角度を採用するものである。これを流れ図として表現したものが図11である。
【0027】
SS0で開始したとして、R0を適当に定める。R0に対して、R1をSS1で設定する。SS2で実施例1で示したようなアルゴリズムで角度θ1を計算する。複数のR1に対する角度依存性を計算したかどうかの判定のためにSS3であるM(本実施例では3としている。)より、今までの回数が多いかどうかの判定をしている。もしも、十分計算されていれば、つまりMを超えていれば、SS4において今まで計算された計算値の現在のR1の近傍の値を比較して、それらの差がある値δより小さくあれば、その中の定期等な値をSS5のように設定して、SS6で正常終了をする。SS4では3つの値の比較を行っているが比較する数は2つでも、またこれより多くとも構わない。
【0028】
SS3で十分計算されていない場合あるいはSS4で差がδより大きい場合はSS7に移行する。ここで、R1がR1許容値の最大R1maxを超えていなければ、SS8に移り、R1を変化させSS2に向かう。R1は整数である必要はないので、SS8での変化量は1でなくともよい。
【0029】
また、SS7でR1がR1maxを超えた場合はSS9に移行し、R0がR0の許容値の最大値R0maxより大きくなければSS10でR0の大きさを更新する。SS10ではR0を1ずつ増やすようにしているが、R0も整数である必要はないので、他の値でもよい。このようにして新たなR0に対して、SS1から同様の処理を行う。もしも、このようなことでSS6の正常終了にたどり着かない場合は、SS11にたどり着き異常終了する。異常終了の場合はそこで、角度が計算されなかったとする。
【0030】
このような処理をθ2およびθ3について行い、自動的な窓を利用した角度計算が可能となる。
【0031】
この方法を利用することで、実施例1で示したように、図9に示すような亀裂の履歴推定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の亀裂形状算出方法の流れ図。
【図2】本発明の亀裂生成履歴方法の根拠を示す説明図。
【図3】本実施例1、2で取り扱う亀裂画像を2値化細線化した後の髭のある亀裂図形の説明図。
【図4】本発明の対象となる髭と亀裂の分岐領域の説明図。
【図5】本発明の亀裂形状計算方法の課題の説明図。
【図6】本発明の亀裂形状計算方法の効果の説明図。
【図7】本発明の亀裂形状計算方法の効果の説明図。
【図8】本実施例1の平均角度を計算する際の説明図。
【図9】本実施例1の亀裂生成履歴推定方法の実施結果の説明図。
【図10】実施例2の亀裂形状計算方法の窓のサイズの最適化法の説明図。
【図11】実施例2の亀裂形状計算方法の窓のサイズの最適化法のアルゴリズムの流れ図。
【図12】実施例1の亀裂発生履歴推定方法のアルゴリズムの流れ図。
【図13】本発明の亀裂幅算出方法を搭載した装置の説明図。
【図14】本発明の亀裂幅算出方法を搭載した装置の説明図。
【符号の説明】
【0033】
111 計算機の本体
112 ディスプレイ
113 フロッピー(登録商標)ディスクドライブ
114 マウス
115 キーボード
110 フロッピー(登録商標)ディスク
116 CPU
117 ハードディスク
118 メモリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亀裂を撮像した後に2値化処理を行った亀裂の2値画像に対して、所望の細線化処理を行い、亀裂に相当する連結された該細線化された亀裂画像の内最も弧として長い部分を主亀裂部と称し、該主亀裂部と該主亀裂部から分岐した短い複数の分岐亀裂部分とを検知し、両者の各付け根の角度を算出することにより、亀裂の形状を検知する方法において、該各付け根部分の交わり部分の交わり角を、付け根の交わりを中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部及び分岐亀裂部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、該亀裂形状算出方法を利用して得た角度分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法。
【請求項1】
亀裂を撮像した後に2値化処理を行った亀裂の2値画像に対して、所望の細線化処理を行い、亀裂に相当する連結された該細線化された亀裂画像の内最も弧として長い部分を主亀裂部と称し、該主亀裂部と該主亀裂部から分岐した短い複数の分岐亀裂部分とを検知し、両者の各付け根の角度を算出することにより、亀裂の形状を検知する方法において、該各付け根部分の交わり部分の交わり角を、付け根の交わりを中心とする2つの相異なる半径で指定されるドーナツ上の円盤内にある主亀裂部及び分岐亀裂部を構成する画素から算出することを特徴とする亀裂形状算出方法と、該亀裂形状算出方法を利用して得た角度分布より亀裂の生成履歴を推定する亀裂生成履歴推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−30128(P2006−30128A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212998(P2004−212998)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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